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特開2024-155882車両用レードームおよび車両用レードームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155882
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用レードームおよび車両用レードームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20241024BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241024BHJP
   B62D 29/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B29C45/14
B62D29/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068295
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】23382380.6
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517009486
【氏名又は名称】ザニニ オート グループ,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】アウグスト マイヤー プハダス
(72)【発明者】
【氏名】ホルディ マルトス アラゴネス
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト プイグフェラット ペレス
【テーマコード(参考)】
3D203
4F206
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BB33
3D203CA09
3D203CA79
3D203DB02
4F206AA36
4F206AA42
4F206AD05
4F206AE03
4F206AG03
4F206AH17
4F206AR03
4F206AR06
4F206AR12
4F206JA01
4F206JB12
4F206JB22
4F206JF05
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】より良好なRF性能を有する車両用レードームおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】車両用レードーム(1)は、透明層(11)と少なくとも1つの装飾層(5,6)とを含む第1の部分(8)と、第2の部分(10)と、第1の部分(8)と第2の部分(10)との間に配置される中間部分(9)とを含み、中間部分(9)は、熱硬化性化合物から作られる。レードームを製造する方法は、第1の部分(8)および第2の部分(10)の両方をモールド内に挿入するステップと、中間部品(9)を形成するために第1の部分(8)および第2の部分(8,10)の間に熱硬化性化合物を注入するステップとを含む。それは、より良好なRF性能を有する車両用レードームを提供することを可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のレードームであって、
透明層と、少なくとも1つの装飾層とを含む、第1の部分と、
第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置される中間部分と、を含み、
前記中間部分は、熱硬化性化合物から作られることを特徴とする、
レードーム。
【請求項2】
前記熱硬化性化合物は、ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂である、請求項1に記載のレードーム。
【請求項3】
当該レードームは、前記第1の部分、前記第2の部分および前記中間部分内の視野を画定し、前記中間部分は、少なくとも前記視野内で前記第1の部分および前記第2の部分と接触する、請求項1に記載のレードーム。
【請求項4】
前記中間部分の厚さは、最小厚さTiを持つその部分において、0.1mmよりも大きい、請求項1に記載のレードーム。
【請求項5】
前記透明層は、凹部を含む、請求項1に記載のレードーム。
【請求項6】
前記中間部分は、前記中間部分の残余よりも大きい厚さを持つ中間突起を含む、請求項1に記載のレードーム。
【請求項7】
前記第2の部分は、前記透明層の前記凹部と相補的な後方突起を含む、請求項5に記載のレードーム。
【請求項8】
前記第1の部分は、保護層を含む、請求項1に記載のレードーム。
【請求項9】
前記保護層は、熱硬化性化合物から作られる、請求項8に記載のレードーム。
【請求項10】
前記保護層の前記熱硬化性化合物は、ポリウレタン熱硬化性樹脂またはポリウレア熱硬化性樹脂である、請求項9に記載のレードーム。
【請求項11】
前記第2の部分は、加熱層を含む、請求項1に記載のレードーム。
【請求項12】
請求項1~11のうちのいずれか1項に記載の車両用のレードームを製造する方法であって、
前記レードームは、第1の部分と、第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置される中間部分と、を含み、当該方法は、
前記第1の部分および前記第2の部分の両方をモールド内に挿入するステップと、
前記中間部分を形成するために前記第1の部分と前記第2の部分との間に熱硬化性化合物を注入するステップと、を含むことを特徴とする、
車両用のレードームを製造する方法。
【請求項13】
前記熱硬化性化合物の前記注入は、100℃より下の温度で行われる、請求項12に記載の車両用のレードームを製造する方法。
【請求項14】
前記熱硬化性化合物の前記注入は、40MPaより下の圧力で行われる、請求項12に記載の車両用のレードームを製造する方法。
【請求項15】
前記第1の部分内に保護層を形成するために、熱硬化性化合物が前記モールド内に注入される、請求項12に記載の車両用のレードームを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用レードーム(radome)および車両用レードームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用途のレードームは、通常、審美的要件と機能的要件とを組み合わせるという課題を有する。
【0003】
審美的要件は、自動車のフロントグリル(front grille)のような非常に見やすい場所に自動車製造会社のロゴを表現する必要性から生じる。このエンブレムは、一般に、金属のように見えるエリアと濃い色のエリアとの間のコントラストによって表現される。
【0004】
機能的要件は、レーダの世代進化によって要求される制限的な無線周波数(RF)伝送限界(transmission limits)と関連付けられる。多くの場合、前面(front face)から雪または氷を除去するための加熱能力を統合して、悪天候条件で作動することがますます要求される。
【0005】
審美的要件と機能的要件との組み合わせは、多くの場合、2つの異なる部分によって解決される。前方部分は、望ましい視覚的外観を提供する。後方部分は、通常、グリルへの固定またはその後方での何らかの電気的接続を通じた加熱および/または照明のような、機械的機能性を有する。
【0006】
両方の部分は、第3の材料を追加してあるいは追加しないで接合されることがあり、場合によっては、それらの間に空隙(エアギャップ)を残すことがある。プラスチック材料の誘電率と比較して有意に異なる誘電率を有する中間における空隙の存在は、レーダ波の追加の反射を引き起こして、レードームが提供できる伝送性能(transmission performance)を低下させることがある。
【0007】
本出願の同一出願人の特許文献1は、前述の空隙の変動性および寸法を低減するために、視野内に幾つか溶接セグメントを含めることによってこの効果を低減する、レードームを開示している。
【0008】
特許文献2は、中間コンポーネントを追加することによって両方の部分を接合する一例であり、前方部分及び後方部分と同等の物理的特性および化学的性質を持つプラスチックが両方の部分の間に存在する空間内に成形される。しかしながら、それは、前方部分の後面に通常存在する装飾の外観に対する損傷を解消しない。この損傷は、中間熱可塑性層を直接成形するために必要とされる高温および高圧によって引き起こされる。加えて、熱可塑性材料は、金属のように見える領域を形成するために使用される金属および半金属への不十分な接着性を示す。
【0009】
前述の問題は、装飾層と注入されるべきプラスチックとの間に追加の材料層を含めることによって対処される。
【0010】
これらの解決策の1つは、接着促進層および任意のインク層が装飾層に適用される必要があるレードームを開示する、同一出願人の特許文献3に示されている。これは、成形された熱可塑性部分の装飾への接着を増大させ、熱可塑性材料の射出に関連する高温及び高圧の前での装飾の保護を増大させる。しかしながら、それはプロセスを複雑にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、より良好なRF性能を有する車両用レードームおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による車両用レードームおよび方法では、前述の欠点が解決され、以下に説明する他の利点を提供する。
【0013】
本発明による車両用レードーム及びその製造方法は、対応する独立項において定義される。追加の選択的な構成(features)は、従属項に含まれる。
【0014】
具体的には、車両用レードームは、
- 透明層と、少なくとも1つの装飾層とを含む、第1の部分と、
- 第2の部分と、
- 第1の部分と第2の部分との間に配置される中間部分と、を含み、中間部分は、熱硬化性化合物から作られる。
【0015】
熱硬化性化合物は、好ましくは、ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂である。
【0016】
さらに、レードームは、第1の部分、第2の部分および中間部分の視野を画定し、中間部分は、少なくとも前記視野内の第1の部分および第2の部分と接触して、それらの間に空気の間隙(ギャップ)を残さない。
【0017】
好ましくは、その部分における中間部分の厚さは、0.1mmを超える最小厚さを有する。
【0018】
可能な実施形態によれば、中間部分は、中間部分の残余よりも厚い厚さを持つ中間突起を含み、および/または、透明層は、凹部を含む。さらに、第2の部分は、透明層の凹部と相補的な後方突起を含むことができる。
【0019】
第1の部分は、好ましくは、ポリウレタンまたはポリウレア熱硬化性樹脂のような、熱硬化性化合物から作られる、保護層を含むこともできる。
【0020】
車両用レードームを製造する方法は、
- 第1の部分および第2の部分の両方をモールド内に挿入するステップと、
- 中間部分を形成するために、第1の部分と第2の部分との間に熱硬化性化合物を注入するステップと、を含む。
【0021】
好ましくは、熱硬化性化合物の注入は、100℃より低い温度および/または40MPaより低い圧力で行われる。
【0022】
可能な実施形態によれば、熱硬化性化合物が、第1の部分内に保護層を形成するために、モールド内に注入される。
【0023】
本発明による車両用レードームおよびその製造方法は、とりわけ、以下の利点を提供する。
- 第1の部分と第2の部分との間の空隙を除去することによるより良いRF性能。
- 第1の部分および第2の部分を接合するために中間熱可塑性部分を使用するものと比較して全厚を薄くすることによるより良いRF性能。
- 製造会社のエンブレムの外観に影響を与える、前面での加熱要素の位置決めを必要としない、加熱要素と前面との間の距離の短縮および空隙の除去による、内部加熱の性能向上。
- 保護部分または層を必要としない、中間熱可塑性樹脂の注入によってもたらされる、金属のように見える装飾層に対する損傷の回避。
- 接着物質の添加を伴わない、金属のように見える層への中間部分の接着性の向上。
- 溶剤を持つ空気噴霧ワニスと関連付けられる環境負荷を低減する、中間部分および前方保護のために注入される熱硬化性樹脂が採用されるときの、統合製造プロセスの最適化。
- 接着溶剤が第1の部分と第2の部分との間で使用されるときに三次元エンブレムに要求される許容差の縮小。
【0024】
記載されている事項をより良く理解するために、幾つかの図面が添付されており、図面中には、概略的に、ほんの非限定的な例として、実施形態の実際の事例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】グリルアセンブリ内に位置付けられた本発明に従って構成されかつ具現されたレードームと、レードームの背後に位置付けられたレーダアンテナとを有する、車両の断片的な等角図である。
図2】製造会社のエンブレムが、着色されたエリアおよび金属のようなエリアのコントラストによって識別されることがある、レードームの正面図である。
図3図2のA-Aによる概略的な断面図であり、実質的に平坦な第1の部分の後面および第2の部分の前面を備える第1の実施形態を示している。
図4図2のA-Aによる概略的な断面図であり、実質的に平坦でない第1の部分の後面が実質的に平坦でなく、エンブレムの三次元的外観と実質的に平坦な第2の部分の前面を提供する、第2の実施形態を示している。
図5図2のA-Aによる概略的な断面図であり、実質的に平坦でない第1の部分の後面および第2の部分の前面を有する第3の実施形態を示している。
図6】提案される概念と従来技術との間の加熱性能比較を有するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで図面を詳細に参照すると、図面を通じて同様のコンポーネント(構成要素)を示すために同様の数字が使用され、図1に示されるように、参照数字1は、一般に、自動車3のグリルアセンブリ2内に取り付けるように構成された本発明に従って構成されかつ具現される装飾的レードームを示す。
【0027】
車両3内には、装飾的レードーム1の後方で装飾的レードーム1と位置合わせされて、レーダアンテナ4が位置付けられている。
【0028】
図2は、レードーム1の正面図であり、図1には、例えば、製造会社のエンブレムを表す、着色された装飾層5と、金属のように見える装飾層6とが見える。それは、不連続線によって画定される視野7内で、保護されたレーダアンテナ4によって放射されかつ受信される信号のために高い伝送性能(transmittance performance)を維持する。
【0029】
一般に、全ての図に適用可能であるのは、異なる層の厚さが、原寸通りでないことである。何故ならば、それらの間の関係は、オーダの大きさであることがあるからである。1つのコンポーネントの前面(front face)または前表面(front surface)は、車両の外部のレードームの前方の外部オブザーバにより近いその面として理解される一方で、コンポーネントの後面(rear face)または後表面(rear surface)は、レーダ4により近いその面として理解される。
【0030】
(第1の実施形態)
以下、熱硬化性化合物からなる中間部分9(intermediate part)を有するレードームの第1の実施形態が、図3を参照して記載される。
【0031】
この実施形態は、図2のA-Aによる断面に対応し、二次元の外観を有するエンブレム(emblem)を提供することができる。それは視野7を表し、視野7から外れたエリアを表すこともある。
【0032】
好ましくは前方である第1の部分8と、好ましくは熱硬化性である中間部分9と、好ましくは後方である第2の部分10とが示されている。第1の部分8は、車両3の外側に面する一方で、第2の部分10は、レーダに面する。
【0033】
第1の部分8は、前方透明層11と、着色装飾層5と、金属のような装飾層6と、任意の保護層12とによって形成される。
【0034】
前方透明層11は、可視光および保護されたレーダ4によって放射されかつ受信される信号の両方に対して高い伝送能力(transmission capability)を持つ材料で作られる。それは、ポリカーボネート(PC)のような熱可塑性樹脂で作られてよく、射出成形によって得られてよくあるいは同じ材料の積層箔であってよい。
【0035】
着色装飾層5は、保護されたレーダ4によって放射されかつ受信される信号の高い伝送度(degree of transmission)を維持しながら、可視光に対して不透明度(opacity)を提供する。それは、透明層11の後面を部分的に覆って、幾らかのカバーされていないエリアを残す。それは、上記の製造方法のいずれかによって製造された透明熱可塑性層11の後面に装飾インクを印刷することによって得られてよい。この印刷プロセスは、幾らかのカバーされていないエリアを残すためにマスクの使用を必要とする。それは、ホイル転写またはホットスタンピングによって得られてもよい。
【0036】
代替的に、着色装飾層5は、幾つかの不透明相溶性材料を用いて、透明層11との製造組み合わせ成形プロセス(manufacturing combined molding process)において射出成形することによって得られてもよい。着色装飾層5は、透明層11の後面に表されている。しかしながら、それはその前面に配置されてよい。
【0037】
金属のように見える装飾層6は、透明層11および着色装飾層5によって形成されるセットの(レーダ4により近い)後面に堆積される。金属のように見える装飾層6は、着色装飾層5によって残されたカバーされていないエリアを通じて外部オブザーバによって見られてよい。金属のように見える装飾層6および着色装飾層5の不透明エリアの組み合わせは、図2に示すように、外部オブザーバが明確に見ることがあるエンブレムを生成する。
【0038】
金属のように見える装飾層6は、広範な文献に記載されているように、金属、半金属および/または酸化物の使用のお陰で、明るい外観を提供する。いずれにしても、それは、保護されたレーダ4によって放射されかつ受信される信号に生じる減衰を低減するために、高い電気抵抗率を保証しなければならない。この薄く制御された厚さの層は、層の組成に依存して、例えば、物理蒸着(PVD)マグネトロンスパッタリングプロセスによって、またはプラズマ強化化学蒸着(PECVD)プロセスによって、または他のプロセスによって堆積されてよい。
【0039】
使用される材料の特性に依存じて、第1の部分8は、その前面に保護層12を必要とすることがある。保護層12は、空気噴霧法によって塗布されるワニス、または、例えば、反応注入成形プロセス(RIM)によって塗布されるポリウレタンまたはポリウレア熱硬化性樹脂であってよい。
【0040】
第2の部分10は、通常、グリルアセンブリ2(または自動車の他の部分)への固定部13(fixations)を含む。場合によっては、レードームは、レードームの前面に存在することがある氷または雪を除去する加熱機能を提供する。この機能は、第2の部分10の前面上の加熱層18によって実行されてよい。加熱層18は、前記第2の部分10の前面に埋め込まれる加熱要素14によって形成されてよい。図示しない電気コネクタが、車両からの電源に接続されるように、第2の部分10の後面に存在してもよい。
【0041】
第2の部分10は、保護されたレーダ4によって放射されかつ受信される信号に対して高い伝送能力を有し、その固定のために良好な耐化学性および良好な機械的特性を示す、材料で作られる。それは、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)またはポリカーボネートとアクリロニトリルブタジエンスチレンとの混合物(PC/ABS)の射出成形によって得られてよい。
【0042】
中間部分9は、第1の部分8と第2の部分10とを接合し、第1の部分8の後面と第2の部分10の前面との空間を完全に埋めて、それらの間の空隙(エアギャップ)を解消する。
【0043】
中間部分9の材料は、ポリウレタン樹脂(PUR)またはポリウレア樹脂である。それらは、例えば、反応注入成形プロセス(RIM)によって適用される。このプロセスは、高温および高圧が適用される熱可塑性射出成形とは異なる。反応注入成形は、2つの成分を混合し、それらの間の化学反応は、固体化合物を形成する。
【0044】
本発明によるレードームの製造は、第1の部分8および第2の部分10の両方をモールド内に挿入し、それらの間に熱硬化性化合物を注入することからなることがある。
【0045】
これらの化合物の極めて低い粘度は、ポリカーボネートについての280℃~320℃、アクリロニトリルブタジエンスチレンについての200℃~238℃またはPC/ABSについての何らかの中間値と比較して、典型的には65℃程度の低さであり、常に100℃を下回る、注入温度を使用することを可能にする。これらの化合物についての注入圧力は、ポリカーボネートについての80MPa~120MPaまたはABSについての60MPa~150MPaまたはPC/ABSについての何らかの中間値と比較して、典型的には2~6MPaの範囲内にあり、常に40MPaを下回る。
【0046】
この極端に低い粘度は、典型的なレードーム寸法で非常に薄い内壁を得ることを可能にする。これらの化合物で作られた第1の部分8の後面と第2の部分10の前面との間の中間部分9の最小厚さTiは、典型的な上述の熱可塑性成分の1つについて必要とされる1.0mm未満でないこと(通常1.0mm~3.0mmの間)と比較して、0.1mm程度の低さであることがある。
【0047】
レードームの無線周波数(RF)反射を最小化するために、それらは、ラムダ/2の倍数である全厚(図3のTf+Ti+Tr)を目標に設計され、ここで、ラムダは、レーダ4によって放射されかつ受信される信号の波長である。
【0048】
加えて、ラムダ/2のステップにおける全厚の減少は、レードームのRF減衰を減少させる。
【0049】
提案される熱硬化性樹脂を用いることは、全厚をラムダ/2の1倍以上だけ減少させることを可能にし、その結果、レードームのRF減衰性能の向上がもたらされる。
【0050】
これらの熱硬化性化合物は、第1の部分8および第2の部分10の熱可塑性材料の誘電率(約2.7または2.8)と同様の誘電率を示すように策定されてよい。これは、空気の誘電率が1.0である空隙を有するレードームと比較されるときに、RF性能の向上をもたらす。
【0051】
前記の適用される低注入温度および圧力は、金属のように見える装飾層6を損傷しない。さらに、熱硬化性樹脂は、装飾層6の材料への良好な接着性を示す。これに基づいて、熱可塑性材料が接合要素として注入される他の解決策について必要とされる、高価な軽減または抑制部材、防食層または接着促進層のいずれも必要とされない。
【0052】
この目的のために熱可塑性樹脂を使用するとき、注入パラメータは、金属のように見える装飾層6への損傷を避けるために実現可能範囲の限界に導かれて、その結果、非常に狭い製造ウィンドウおよび低い信頼性プロセスがもたらされる。
【0053】
レードーム内の加熱機能は、第1の部分8の前面に位置付けられる加熱層によって提供されてよい。これは、最適な加熱性能を示す。何故ならば、雪または氷は、この面に堆積されるからである。しかしながら、加熱要素は、外部オブザーバによって見られることがあり、エンブレムの知覚されるイメージを損ない、自動車製造会社に受け入れられないことがある。
【0054】
これを回避するために、加熱層18は、第2の部分10の前面に位置付けられ、着色装飾層5および金属のように見える層6によって外部オブザーバに隠される。加熱層18は、加熱要素14を含む誘電体箔で構成されてよく、あるいは、第2の部分10の前面に直接位置付けられる加熱要素14で構成されてよい。加熱要素14は、電気的に動力供給され、それらは、導電性加熱ワイヤ内に存してよい。
【0055】
幾つかの車両製造会社は、レードームの表面の所与の面積のパーセンテージで一定の温度を達成するのにどれだけの時間が必要かという観点から、レードームの加熱性能を規定する。
【0056】
中間部分9としてのポリウレタンまたはポリウレアの使用も、先行技術の熱可塑性材料と比較して、加熱性能の点で改良をもたらす。
【0057】
提案される熱硬化性材料の低い粘度による厚さの減少は、加熱層18とレードームの前面との間の距離を減少させる効果を有する。この改良された設計は、加熱層18からレードームの前面に熱を伝達するための移行時間を短縮する。
【0058】
加えて、これらの材料は、通常の熱可塑性材料(約0.20W/mK)の1つと比較して、幾らかの良好な熱伝導率(約0.24W/mK)を示す。それらの熱伝導率も、潜在的な空隙の1つ(約0.026W/mK)よりはるかに良好である。
【0059】
図6のグラフは、特定の表面温度が55℃で、一点鎖線(dash-dotted lines)がそれを達成するための特定の面積パーセンテージ(80%)および特定の最大時間(360s)を示す、加熱性能のシミュレーション結果を示す。
【0060】
空隙を有する(細い一点鎖線)または空隙を有さない(太い一点鎖線)熱可塑性材料から作られた中間部分に基づく先行技術は、要件を満たすことができないことが分かることがある。
【0061】
提案される概念(太い実線)は、要件を満たしている。何故ならば、より薄い厚さ、改良された導電率、および空隙の除去の効果を組み合わせているからである。
【0062】
さらに、0.1の中間部分9の最小厚さTiは、加熱要素14がその前面に直接位置付けられるならば、第2の部分10から突出することがある加熱要素14を覆うのに十分であり、直接接触する加熱要素14によって放散される熱の長期的な効果によって影響を受けることがある、金属のように見える層6との如何なる接触も回避する。
【0063】
この保護は、開示される中間部分9の代替と考えられることがある接着剤によって提供されない。接着剤の厚さは、通常、より小さく、より厚い厚さが適用される場合ならば、それらの通常は有意に異なる誘電率は、レードーム上で使用される熱可塑性材料と比較されるときに、RF性能を低下させる。
【0064】
RIMは、中間部分9のために採用されるプロセスであり、保護層12のための任意のプロセスであるので、それは、それらを2段階のプロセスとして組み合わせるように考えられてよい。第1の部分8および第2の部分10は、モールド内に挿入され、中間部分9は、第1の段階において射出され、保護層12は、保護層12を塗布するためにモールドから如何なる部品も除去する必要なく、第2の段階において射出される。
【0065】
その結果として得られるのは、ワニスを用いた古典的な空気噴霧法の溶剤(solvents)が存在しないため、より低い環境負荷の最適化された製造プロセスである。
【0066】
(第2の実施形態)
以下、中間部分9を有するレードームの第2の実施形態が、図4を参照して記載される。
【0067】
第2の実施形態では、同一の参照番号が、第1の実施形態の対応するコンポーネントに極めて類似するコンポーネントに付与され、冗長な説明は、ここでは省略される。
【0068】
この実施形態は、図2のA-Aによる断面に対応し、三次元的な外観を有するエンブレムを提供することができる。それは視野7を表し、視野7から外れたエリアを表すこともある。
【0069】
この第2の実施形態において、透明層11は、その後面に幾つかの凹部15(depressions)を示す。この場合、透明な前層11は、射出成形によって得られる。
【0070】
この第2実施形態の着色装飾層5は、凹部15を有しない透明層11の後面を覆う。それは、透明熱可塑性層11の非凹部に装飾インクを印刷することによって得られてよい。それは、ホイル転写またはホットスタンピングによって得られてもよい。
【0071】
代替的に、着色装飾層5は、幾つかの不透明相溶性材料を用いて、透明層11との製造組み合わせ成形プロセスにおいて射出成形によって得られてよい。
【0072】
この第2実施形態の金属のように見える装飾層6は、透明層11と、凹部15を含む着色装飾層5とによって形成されるセットのプロフィールに従って、表現されたエンブレムに三次元的な外観をもたらす。
【0073】
この第2の実施形態の任意の保護層12は、第1の実施形態におけると同じ材料および製造プロセスであってよい。
【0074】
この第2の実施形態の第2の部分10は、第1の実施形態について記載されたのと同じ特徴を有する。
【0075】
第1の部分8と第2の部分10とを接合する、この第2の実施形態の中間部分9は、非常に可変の厚さを示す。それは、凹部15を満たす幾つかの中間突起16をその前面に含んで、RF性能を低下させることがある空隙の存在を回避する。
【0076】
この第2の実施形態の中間部分9についての材料特性および製造プロセスは、第1の実施形態について記載されたものと同じである。
【0077】
加熱要素14によって形成される加熱層18は、第1の実施形態におけると同じ位置にあり、第1の部分8と第2の部分10との間に空隙を伴うまたは伴わない中間部分について熱可塑性を有する従来技術と比較して、加熱性能において同じ利点を提供する。
【0078】
この第2の実施形態は、接着剤を使用することによっては実現可能ではない。何故ならば、それらは、中間突起16の厚さ(約1mm以上)を提供することができないからである。もし提供されるならば、その異なる誘電率の故に、RF性能を低下させる。
【0079】
第1の実施形態について記載された同じ最適化された製造プロセスが適用可能である。
【0080】
(第3の実施形態)
以下、中間部分9を有するレードームの第3の実施形態が、図5を参照して記載される。
【0081】
第3の実施形態では、同一の参照番号が、第1および第2の実施形態の対応するコンポーネントと非常に類似するコンポーネントに付与され、冗長な説明は、省略される。
【0082】
この構成は、図2のA-Aによる断面に対応し、エンブレムに三次元的な外観を提供することもできる。それは視野7を表し、視野7から外れたエリアを表すこともある。
【0083】
この第3の構成の第1の部分8のコンポーネントの特徴は、第2の実施形態のものと同じである。
【0084】
この第3の実施形態の第2の部分10は、凹部15を部分的に満たす幾つかの後方突起17を含む。
【0085】
この第3の実施形態の中間部分9も、第1の部分8と第2の部分10とを接合して、第1の部分8の後面と第2の部分10の前面との間の全ての空間を満たして、RF性能を低下させることがある空隙の存在を回避する。
【0086】
後方突起17は、凹部15を部分的に充填するにすぎないので、中間部分9の厚さは、図に見られるように、その厚さに幾分のばらつきを示す。
【0087】
異なる厚さを採用する熱硬化性材料のこの能力は、接着溶液(adhesive solution)が採用される場合に、第1の部分8と第2の部分10との間の正確な整合の必要性を回避する。
【0088】
この第3の実施形態は、この可変の厚さを提供することができないので、接着剤を使用することは実現可能でなく、その結果、多少の局所的な空隙が生じる。
【0089】
第3の実施形態の中間部分9のための材料特性および製造プロセスは、第1および第2の実施形態について記載されたものと同じである。
【0090】
加熱要素14によって形成される加熱層18は、第1および第2の実施形態と同じ位置にあり、第1の部分8と第2の部分10との間に空隙を伴うまたは伴わない中間部分について熱可塑性を有する従来技術と比較して、加熱性能に関して同じ利点を提供する。
【0091】
第1の実施形態について記載された同じ最適化された製造プロセスが適用可能である。
【0092】
本発明の特定の実施形態を参照したという事実にもかかわらず、記載された車両用レードームおよびその製造方法は、多数の変更および修正を受けやすいこと、ならびに、全ての上述の詳細は、添付の請求の範囲によって定義される保護の範囲から逸脱することなく、技術的に均等な他のものによって置き換えられることができることが、当業者に明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】米国特許第11,276,919B2号明細書
【特許文献2】独国特許第10156699B4号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第4124880A1号明細書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】