(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155897
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】水成膜泡消火薬剤
(51)【国際特許分類】
A62D 1/02 20060101AFI20241024BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20241024BHJP
C09K 23/18 20220101ALI20241024BHJP
C09K 23/16 20220101ALI20241024BHJP
【FI】
A62D1/02
C09K23/52
C09K23/18
C09K23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068583
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2023070503
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000192338
【氏名又は名称】深田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 恵
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】高久 豊
【テーマコード(参考)】
2E191
4D077
【Fターム(参考)】
2E191AA03
2E191AB13
2E191AB22
2E191AB41
4D077AA10
4D077AB20
4D077AC07
4D077BA12
4D077BA13
4D077BA14
4D077DC02X
4D077DC15X
4D077DC28X
4D077DC42X
4D077DC42Z
4D077DC47Z
4D077DC59X
4D077DC72X
(57)【要約】
【課題】PFOS及びPFOAを含まない水成膜泡消火薬剤を提供する。
【解決手段】以下の(1)に示す組成を有し、下記アニオン性界面活性剤(A)は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下であり(パーフルオロへプチル基を有するものを除く)、かつ、下記両性界面活性剤(C)は、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリン酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる少なくとも一種である水成膜泡消火薬剤である。
(1)フッ素化炭化水素基を有するアニオン性界面活性剤(A)及び両性界面活性剤(C)を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)に示す組成を有し、
下記アニオン性界面活性剤(A)は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下であり(パーフルオロへプチル基を有するものを除く)、かつ、
下記両性界面活性剤(C)は、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリン酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる少なくとも一種である、水成膜泡消火薬剤。
(1)フッ素化炭化水素基を有するアニオン性界面活性剤(A)及び両性界面活性剤(C)を含む。
【請求項2】
更に、フッ素化炭化水素基を有するカチオン性界面活性剤(B)を含み、
前記カチオン性界面活性剤(B)は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である(パーフルオロへプチル基を有するものを除く)、請求項1に記載の水成膜泡消火薬剤。
【請求項3】
更に、数平均分子量が5000以上の水溶性高分子(D)を含む請求項1に記載の水成膜泡消火薬剤。
【請求項4】
前記水溶性高分子(D)が、窒素原子を含む請求項3に記載の水成膜泡消火薬剤。
【請求項5】
更に、多塩基酸(E)を含む請求項1又は請求項2に記載の水成膜泡消火薬剤。
【請求項6】
更に、炭素数1~5の脂肪族ジオール及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる化合物(F)を含む請求項1又は請求項2に記載の水成膜泡消火薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水成膜泡消火薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
泡消火薬剤は、水では消火が困難な油火災(石油やガソリン等の火災)の消火に用いられており、水成膜泡消火薬剤、たん白泡消火薬剤、合成界面活性剤泡消火薬剤などの種類がある。
【0003】
水成膜泡消火薬剤は、耐油性、耐油汚染性に優れ、流動性、展開性にも優れることから、駐車場用の泡消火設備、航空機火災、及び危険物施設等での火災などに使用されてきた。特に駐車場に設置される泡消火設備としては、法令で定める設備基準との関係から、使用される泡消火薬剤の殆どが水成膜泡消火薬剤である。
【0004】
水成膜泡消火薬剤には、一般にフッ素系界面活性剤が使用されている。フッ素系界面活性剤は、撥油性や撥水性等の性質を有するため、優れた消火性能を発現する水成膜泡を提供するには必要不可欠な成分である。
【0005】
消火薬剤の例として、アニオン性親水基含有界面活性剤として、炭素数3~20のフッ素化脂肪族基を有する含フッ素系界面活性剤を用いた消火薬剤が開示されたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フッ素系界面活性剤には、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及び/又はパーフルオロオクタン酸(PFOA)が主成分もしくは副生成物として含有されている。PFOS及びPFOAは、難分解性、生体蓄積性、健康影響等の観点から、近年、製造、使用等に対する規制が国際的に強化されてきており、日本国内でもいわゆる化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)の第一種特定化学物質として規制されている成分である。従来の水成膜泡消火薬剤には、含有されるフッ素系界面活性剤に起因してPFOS及び/又はPFOAを主成分もしくは副生成物として含まれていることがあるため、泡消火薬剤を使用した場合の環境等への影響が懸念されている。
【0008】
一方、泡消火薬剤のうち、合成界面活性剤泡消火薬剤はフッ素系界面活性剤を含有しないが、水成膜泡消火薬剤と比較して耐油性、耐油汚染性、流動性等に劣る傾向にあり、消火が困難な石油タンク及び危険物施設等での火災には使用できない。また、たん白泡消火薬剤は、フッ素系界面活性剤を含有せず、かつ、耐火性、耐熱性等に優れ、石油タンク及び危険物施設での火災に使用されるが、例えば駐車場に設置される泡消火設備では、殆ど使用されていない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、PFOS及びPFOAを含まない水成膜泡消火薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 以下の(1)に示す組成を有し、
下記アニオン性界面活性剤(A)は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下であり(パーフルオロへプチル基を有するものを除く)、かつ、
下記両性界面活性剤(C)は、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリン酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる少なくとも一種である、水成膜泡消火薬剤。
(1)フッ素化炭化水素基を有するアニオン性界面活性剤(A)及び両性界面活性剤(C)を含む。
【0011】
<2> 更に、フッ素化炭化水素基を有するカチオン性界面活性剤(B)を含み、
前記カチオン性界面活性剤(B)は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である(パーフルオロへプチル基を有するものを除く)、<1>に記載の水成膜泡消火薬剤。
<3> 更に、数平均分子量が5000以上の水溶性高分子(D)を含む<1>または<2>に記載の水成膜泡消火薬剤。
<4> 前記水溶性高分子(D)が、窒素原子を含む<3>に記載の水成膜泡消火薬剤。
<5> 更に、多塩基酸(E)を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の水成膜泡消火薬剤。
<6> 更に、炭素数1~5の脂肪族ジオール及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる化合物(F)を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の水成膜泡消火薬剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、PFOS及びPFOAを含まない水成膜泡消火薬剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
本開示は、以下の実施形態に何ら制限されない。以下の実施形態は、本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。
【0014】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前に記載される数値を下限値として、「~」の後に記載される数値を上限値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、(実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけでなく、所期の目的が達成される場合には他の工程と明確に区別できない工程も包含する。
【0017】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0018】
本発明の水成膜泡消火薬剤は、以下の(1)に示す組成を有し、各組成は、必要に応じて、更に他の成分を含んでいてもよい。
組成(1):フッ素化炭化水素基を有するアニオン性界面活性剤(A)及び両性界面活性剤(C)を含む。
組成(1)において、アニオン性界面活性剤(A)は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である(パーフルオロへプチル基を有するものを除く)。両性界面活性剤(C)は、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリン酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる少なくとも一種である。本発明の水成膜泡消火薬剤は、更に、フッ素化炭化水素基を有するカチオン性界面活性剤(B)を含んでいてもよく、前記カチオン性界面活性剤(B)は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である(パーフルオロへプチル基を有するものを除く)。
【0019】
本発明の水成膜泡消火薬剤は、フッ素系界面活性剤として、特定のアニオン性界面活性剤(A)を含み、必要に応じ特定のカチオン性界面活性剤(B)を含む。水成膜泡消火薬剤に含まれるアニオン性界面活性剤(A)及び必要に応じ含まれるカチオン性界面活性剤(B)は、いずれも炭素原子数≦7の短鎖又は分岐鎖の分子構造であることで、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を含まない薬剤組成を実現している。換言すると、例えば分子鎖を形成する炭素原子の数が多い界面活性剤では、パーフルオロヘプチル構造から例えば副生成するPFOS及びPFOAが混入しやすいが、水成膜泡消火薬剤に含まれる各界面活性剤の分子構造が短鎖又は分岐鎖であることで、界面活性剤に由来して混入するPFOS及びPFOAを減じることができる。したがって、水成膜泡消火薬剤におけるPFOS及びPFOAを含まない組成としながらも、フッ素系の界面活性剤を用いて従来と同等以上の水成膜泡消火薬剤の性能、すなわち耐油性、流動性、展開性を維持することができる。これにより、駐車場用の泡消火設備、航空機火災、及び危険物施設等での火災などの消火作業において、環境に与える悪影響(作業環境の悪化等)を小さく抑えて良好な消火能力を発現することができる。
【0020】
「フッ素化炭化水素基」は、炭化水素基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された基を指し、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルキニル基等が含まれ、例えば、炭化水素基中の水素原子の全てがフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基であってもよい。
【0021】
なお、「PFOS及びPFOAを含まない」とは、フッ素系界面活性剤中に含有されるPFOS量及びPFOA量が検出限界以下であることを指し、好ましくは含有量が0(ゼロ)である。PFOS量及びPFOA量は、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)を用いた高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により測定される値であり、検出限界は10ppbである。LC-MS/MSは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)と三連四重極型質量分析計(MS/MS)を組み合わせた装置であり、例えば、ABSCIEX社製のAPI-3200を用いることができる。
【0022】
本発明の水成膜泡消火薬剤は、前記(1)に示す組成(以下、組成(1))を有するものである。組成(1)に含まれるアニオン性界面活性剤(A)は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下であり、パーフルオロへプチル基を有しない。
【0023】
水成膜泡消火薬剤は、フッ素化炭化水素基を有するアニオン性界面活性剤(A)及び所定の両性界面活性剤(C)を少なくとも含む。本発明の泡消火薬剤は、水溶性高分子、多塩基酸、脂肪族ジオール等を含むことが好ましく、必要に応じて更に他の成分を含んでもよい。
【0024】
-アニオン性界面活性剤(A)-
アニオン性界面活性剤(A)は、水中で親水基が陰イオンに電離する界面活性剤であり、少なくともフッ素化炭化水素基を有し、かつ、1分子を形成する炭素原子のうち、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である。ただし、アニオン性界面活性剤(A)は、分子中にパーフルオロへプチル基(-C7F15)を有しない。
【0025】
アニオン性界面活性剤(A)は、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下であるフッ素化炭化水素基を有する化合物であることが好ましく、連続して結合する炭素原子の数が7以下の短鎖又は分岐鎖であるフッ素化炭化水素基を有する化合物が好ましい。
更には、「フッ素原子が結合した炭素原子の数」としては、PFOS及びPFOAを含有しにくい点で、4個以上7個以下がより好ましい。
【0026】
アニオン性界面活性剤(A)としては、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である分岐鎖構造を有する化合物が好ましく、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である分岐鎖構造を有するパーフルオロアルケニル基を有する化合物がより好ましく、下記の式(1)又は式(2)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する化合物が更に好ましい。
なお、式(1)及び式(2)中の「*」は、結合手を表す。
【0027】
【0028】
アニオン性界面活性剤(A)の具体例としては、パーフルオロアルケニルオキシベンゼンスルホン酸塩(例えばパーフルオロアルケニルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム)、パーフルオロアルケニルオキシベンジルホスホン酸、パーフルオロアルケニルオキシフェニルスルホニル-N-メチルカルボン酸塩(例えばパーフルオロアルケニルオキシフェニルスルホニル-N-メチルカルボン酸ナトリウム)などが挙げられる。
【0029】
アニオン性界面活性剤(A)の含有量としては、発泡性能及び表面張力の観点から、水成膜泡消火薬剤の全質量に対して、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましい。
【0030】
-水溶性高分子(D)-
本発明の水成膜泡消火薬剤は、泡もちの観点から、更に、数平均分子量が5000以上の水溶性高分子(D)を含むことが好ましい。
【0031】
なお、「水溶性」とは、25℃の水100質量部に対する水溶性高分子の溶解量が3質量部以上(好ましくは5質量部以上)であることを意味する。
【0032】
水溶性高分子の具体例としては、例えば、タンパク質、デンプン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリエチレングリコール、多糖類が挙げられる。
【0033】
多糖類としては、例えば、キサンタンガム、ペクチン、カラギナン、グァーガム、アラビアガム、セルロース系誘導体(例:メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)が挙げられる。
【0034】
水溶性高分子の数平均分子量は、5000以上である。数平均分子量が5000以上の高分子量であることで、生成した泡を保持(泡もち)しやすい。数平均分子量としては、50000以上がより好ましく、80000~150000の範囲がより好ましい。
【0035】
水溶性高分子の数平均分子量は、粘度法により測定した数平均分子量の値である。
【0036】
水溶性高分子(D)としては、カチオン性を呈して界面活性剤等のアニオン性部位と相互作用する観点から、カチオン性の水溶性高分子が好ましく、窒素原子を含む水溶性高分子が好ましい。窒素原子を含む水溶性高分子としては、上記同様の理由から、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアミン等が好適に挙げられ、ポリエチレンイミンが好ましい。
【0037】
水溶性高分子(D)を含有する場合の水溶性高分子の含有量としては、泡もち及び水成膜泡消火薬剤の粘度の観点から、水成膜泡消火薬剤の質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.2質量%~5質量%がより好ましい。
【0038】
-多塩基酸(E)-
本発明の水成膜泡消火薬剤は、更に、多塩基酸(E)を含むことが好ましい。多塩基酸を含むことにより、pHを所望に調整することができ、また一塩基酸を用いる場合に比べ、泡もちをより向上させることができる。
【0039】
多塩基酸(E)としては、例えば、芳香族基、脂肪族基、又は複素環を有する炭素原子数3~24の多塩基酸が挙げられ、二塩基酸、三塩基酸、四塩基酸、五塩基酸、六塩基酸、並びに、これらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、等が挙げられる。酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0040】
多塩基酸の具体例を以下に示す。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
中でも、多塩基酸としては、炭素原子数4~18の多塩基酸が好ましく、泡もちの観点から、下記式で表される脂肪族ジカルボン酸(二塩基酸)がより好ましい。式中のnは、4~18を表し、好ましくは4~10である。
【0045】
【0046】
多塩基酸を含有する場合の多塩基酸の含有量としては、泡もちの観点から、水溶性高分子の質量に対して、20質量%~200質量%が好ましく、40質量%~100質量%がより好ましい。
【0047】
-脂肪族ジオール・グリコールエーテル系化合物(F)-
本発明の水成膜泡消火薬剤は、更に、炭素原子数2~5の脂肪族ジオール及びグリコールエーテル系化合物(F)から選ばれる化合物を含むことができる。脂肪族ジオール及び/又はグリコールエーテル系化合物を含むことで、上記の界面活性剤の溶解性を向上し、また不凍性を付与する。
【0048】
炭素原子数2~5の脂肪族ジオール及びグリコールエーテル系化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトールが挙げられる。
【0049】
脂肪族ジオール及びグリコールエーテル系化合物を含有する場合の脂肪族ジオール及びグリコールエーテル系化合物の含有量としては、界面活性剤の溶解性及び不凍性の観点から、水成膜泡消火薬剤の質量に対して、10質量%~50質量%が好ましく、15質量%~40質量%がより好ましい。
【0050】
-カチオン性界面活性剤(B)-
カチオン性界面活性剤(B)は、水中で親水基が陽イオンに電離する界面活性剤であり、1分子を形成する炭素原子のうち、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である。ただし、カチオン性界面活性剤(B)は、分子中にパーフルオロへプチル基(-C7F15)を有しない。中でも、連続して結合する炭素原子の数が7以下の短鎖又は分岐鎖のフッ素化炭化水素基を有するカチオン性界面活性剤が好ましい。
【0051】
カチオン性界面活性剤(B)としては、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である分岐鎖構造を有する化合物が好ましく、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である分岐鎖構造を有するパーフルオロアルケニル基を有する化合物がより好ましく、上記の式(1)又は式(2)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する化合物が更に好ましい。
【0052】
カチオン性界面活性剤(B)としては、例えば、パーフルオロアルケニル第4級アンモニウム塩などが挙げられる。なお、パーフルオロアルケニル第4級アンモニウム塩は、前記式(1)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する化合物の具体例である。
【0053】
水成膜泡消火薬剤がアニオン性界面活性剤(A)及びカチオン性界面活性剤(B)を含有する場合、溶解性及び表面張力の観点から、アニオン性界面活性剤(A)とカチオン性界面活性剤(B)との含有比率(A:B[質量比])としては、1:0.1~1:2の範囲が好ましく、1:0.5~1:1の範囲がより好ましい。
【0054】
カチオン性界面活性剤(B)を含む場合、カチオン性界面活性剤(B)の含有量としては、溶解性及び表面張力の観点から、水成膜泡消火薬剤の全質量に対して、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.2質量%~2.5質量%がより好ましい。
【0055】
-両性界面活性剤(C)-
両性界面活性剤(C)は、水中でpHによって親水基がプラス又はマイナスに変化して帯電する界面活性剤である。本発明の水成膜泡消火薬剤が含む両性界面活性剤(C)は、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリン酸アミドプロピルベタインからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
水成膜泡消火薬剤は両性界面活性剤(C)以外の両性界面活性剤(以下「他の両性界面活性剤」という)を含んでいてもよい。他の両性界面活性剤は、炭化水素系界面活性剤であってもよく、分子内にフッ素化炭化水素基を有する場合は、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である(パーフルオロへプチル基を有するものを除く)界面活性剤であってもよい。
【0056】
他の両性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(C1)~(C4)で表される構造を有する化合物(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリン酸アミドプロピルベタインを除く)が挙げられる。
【0057】
【0058】
一般式(C1)~(C4)において、Rは、炭素原子数7~18の炭化水素基を表す。
Rである炭素原子数7~18の炭化水素基としては、例えば、直鎖状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基が挙げられる。直鎖状の飽和炭化水素基としては、例えば、C7H15-、C9H19-、C11H23-、C13H27、C17H35-等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等の脂肪酸に由来の不飽和炭化水素基が挙げられる。また、脂肪酸には、ヤシ油由来脂肪酸等の混合物を用いてもよい。
【0059】
前記一般式(C1)で表される界面活性剤としては、例えば、下記に示す構造を有する化合物が挙げられる。
【0060】
【0061】
前記一般式(C2)で表される界面活性剤としては、例えば、下記に示す構造を有する化合物が挙げられる。
【0062】
【0063】
前記一般式(C3)で表される界面活性剤としては、例えば、下記に示す構造を有する化合物が挙げられる。
【0064】
【0065】
前記一般式(C4)で表される界面活性剤としては、例えば、下記に示す構造を有する化合物が挙げられる。
【0066】
【0067】
一般式(C1)で表される構造を有する化合物の具体例としては、アミドプロピルベタイン型の両性界面活性剤等が挙げられる。
一般式(C2)で表される構造を有する化合物の具体例としては、アミノ酢酸ベタイン型の両性界面活性剤等が挙げられる。
一般式(C3)で表される構造を有する化合物の具体例としては、イミダゾリン型の両性界面活性剤等が挙げられる。
一般式(C4)で表される構造を有する化合物の具体例としては、ヒドロキシスルホベタイン型の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0068】
水成膜消火薬剤中の両性界面活性剤(C)の含有量としては、発泡性及び表面張力の観点から、水成膜泡消火薬剤の全質量に対して、8質量%~30質量%が好ましく、10質量%~20質量%がより好ましい。
【0069】
水成膜泡消火薬剤がアニオン性界面活性剤(A)及び両性界面活性剤(C)を含有する場合、発泡性及び表面張力の観点から、アニオン性界面活性剤(A)に対する両性界面活性剤(C)の含有比(C/A[質量比])としては、3/1~30/1の範囲が好ましく、5/1~20/1の範囲がより好ましい。
【0070】
更には、水成膜泡消火薬剤がアニオン性界面活性剤(A)とカチオン性界面活性剤(B)と両性界面活性剤(C)を含有する場合、発泡性及び表面張力の観点から、アニオン性界面活性剤(A)及びカチオン性界面活性剤(B)に対する両性界面活性剤(C)の含有比(C/(A+B)[質量比])としては、3/1~30/1の範囲が好ましく、5/1~20/1の範囲がより好ましい。
【0071】
本発明の水成膜泡消火薬剤としては、アニオン性界面活性剤(A)、カチオン性界面活性剤(B)及び両性界面活性剤(C)を含む態様が好ましい。
本発明におけるアニオン性界面活性剤(A)及びカチオン性界面活性剤(B)はいずれも、炭素原子数≦7の短鎖又は分岐鎖の分子構造であることにより表面張力を低く調整しにくい場合があるが、本発明におけるアニオン性界面活性剤(A)及びカチオン性界面活性剤(B)の2種を含む組成にすることで、表面張力を低めに調整しやすくなる。
【0072】
-他の成分-
本発明の水成膜泡消火薬剤は、上記の成分に加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、上記のアニオン性界面活性剤(A)以外のアニオン性界面活性剤、上記のカチオン性界面活性剤(B)以外のカチオン性界面活性剤、付加的泡安定剤、凝固点降下剤、防錆剤、pH調整剤等を含むことができる。
【0073】
水成膜泡が使用される固定消火設備の例としては、泡消火設備(特に駐車場用、その他にタンク向け、SSI等)、特殊水噴霧設備、消防車車載(特に民間、自衛隊等の空港、航空機火災向け等)などが挙げられる。消防車車両に据え付けたり、消防隊が保持する等の場合、消火活動に用いられる発泡器、ノズルには、低発泡ノズル、中発泡ノズル等のアスピレート型;コンスタントフローノズル、管鎗ノズル等のノンアスピレート型;があり、燃焼物の種類及び火災状況に応じて使い分けることがある。
【0074】
本発明の水成膜泡消火薬剤の20℃での表面張力としては、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、18.5mN/m~20.5mN/mであることが好ましい。従来の水成膜泡消火薬剤の表面張力は、同条件で17.0mN/m~19.0mN/mであり、概ね同等である。
【0075】
また、危険物又は可燃物を取り扱う施設の泡消火設備に用いられる発泡器及びノズルには、フォームヘッド、固定泡放出口(I~IV型、特型)等のアスピレート型があり、組み合わせる泡消火薬剤によって性能が変化する。そのため、設置する発泡器は、実際に使用する泡消火薬剤で発泡させて泡性状を確認して用いる。泡性状が基準の性能を満たさない場合は、発泡器の設計変更を要する場合がある。フォームヘッドは、駐車場及び航空機の格納庫、危険物の屋内貯蔵所及び取り扱い施設に設置されている。固定泡放出口は、屋外貯蔵タンクに設置される。
発泡器ではないが、スプレーヘッド、スプリンクラーヘッド等のノンアスピレート型ヘッドを用いる消火設備では、水成膜泡消火薬剤を混合して放出することで消火効果が得られる。表面張力の低さによる浸透効果から、従来の水成膜泡消火薬剤と同様にクラスA火災の消火効果が高められる。
【0076】
本発明の水成膜泡消火薬剤は、フォームヘッドで発泡させた場合の泡性状としては、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が5倍以上であり、かつ、25%還元時間が1分以上であることが好ましい。従来の水成膜泡消火薬剤をフォームヘッドで発泡させた場合、フォームヘッドにおける泡性状は、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が6.5倍~9.0倍程度、25%還元時間が90秒~180秒程度であり、本発明の水成膜泡消火薬剤を用いた場合、従来の水成膜泡消火薬剤と概ね同等の泡性状が得られる。
また、本発明の水成膜泡消火薬剤は、固定式泡放出口(I型、II型、特型)で発泡させた場合の泡性状としては、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が5倍以上であり、25%還元時間が1分以上であることが好ましい。従来の水成膜泡消火薬剤を固定泡放出口(I型、II型、特型)で発泡させた場合、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が7.5倍~10.0倍程度、25%還元時間は150秒~300秒程度であり、本発明の水成膜泡消火薬剤を用いた場合、従来の水成膜泡消火薬剤と概ね同等の泡性状が得られる。さらに、本発明の水成膜泡消火薬剤は、固定式泡放出口(III型、IV型)で発泡させた場合の泡性状としては、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が2倍~4倍であり、25%還元時間が1分以上であることが好ましい。
【0077】
発明の水成膜泡消火薬剤は、低発泡ノズルで発泡させた場合の泡性状としては、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が5倍以上であり、25%還元時間が1分以上であることが好ましい。従来の水成膜泡消火薬剤を低発泡ノズルで発泡させた場合、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が8.0倍~12.0倍、25%還元時間が180秒~300秒であり、従来の水成膜泡消火薬剤と概ね同等の性能が得られる。
発明の水成膜泡消火薬剤は、中発泡ノズルで発泡させた場合の泡性状としては、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が20倍以上であり、25%還元時間が1分以上であることが好ましい。従来の水成膜泡消火薬剤を中発泡ノズルで発泡させた場合、泡水溶液中の泡消火薬剤濃度を約3%とした場合において、発泡倍率が50倍~80倍、25%還元時間が約3分~5分であり、従来の水成膜泡消火薬剤と概ね同等の性能が得られる。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準であり、「Mn」は数平均分子量を示す。
【0079】
(試験例1)
撹拌機、温度計及び窒素導入ラインを備えた四ツ口フラスコに窒素雰囲気下、下記組成中の水、溶剤、及び炭化水素系界面活性剤を投入し、均一になるまで攪拌した。続いて、さらにフッ素系界面活性剤を加え、再び均一になるまで攪拌した。撹拌後、水溶性高分子、及び有機酸を加え、さらに均一になるまで攪拌を行った。このようにして、水成膜泡消火薬剤(サンプル1)を調製した。
-組成-
・フッ素系界面活性剤(アニオン性) ・・・1%
(パーフルオロノネニルオキシベンゼンスルホン酸塩)
・フッ素系界面活性剤(カチオン性) ・・・1%
(パーフルオロノネニルトリメチルアンモニウム塩)
・炭化水素系界面活性剤(両性) ・・・20%
(ラウリン酸アミドプロピルベタイン)
・水溶性高分子(カチオン性) ・・・2%
(ポリエチレンイミン、Mn=10万)
・有機酸(アジピン酸(多塩基酸)) ・・・1%
・溶剤(ブチルジグリコール) ・・・12%
・溶剤(エチレングリコール) ・・・6%
・水 ・・・残部
【0080】
(試験例2)
撹拌機、温度計及び窒素導入ラインを備えた四ツ口フラスコに窒素雰囲気下、下記組成中の水、溶剤、及び炭化水素系界面活性剤を投入し、均一になるまで攪拌した。続いて、さらにフッ素系界面活性剤を加え、再び均一になるまで攪拌した。撹拌後、水溶性高分子及び有機酸を加え、さらに均一になるまで攪拌を行った。このようにして、水成膜泡消火薬剤(サンプル2)を調製した。
-組成-
・フッ素系界面活性剤(アニオン性) ・・・1%
(パーフルオロノネニルオキシベンゼンスルホン酸塩)
・フッ素系界面活性剤(カチオン性) ・・・1%
(パーフルオロノネニルトリメチルアンモニウム塩)
・炭化水素系界面活性剤(両性) ・・・20%
(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)
・水溶性高分子(カチオン性) ・・・2%
(ポリエチレンイミン、Mn=10万)
・有機酸(アジピン酸(多塩基酸)) ・・・1%
・溶剤(ブチルジグリコール) ・・・12%
・溶剤(エチレングリコール) ・・・6%
・水 ・・・残部
【0081】
(試験例3)
撹拌機、温度計及び窒素導入ラインを備えた四ツ口フラスコに窒素雰囲気下、下記組成中の水、溶剤、及び炭化水素系界面活性剤を投入し、均一になるまで攪拌した。続いて、さらにフッ素系界面活性剤を加え、再び均一になるまで攪拌した。撹拌後、水溶性高分子及び有機酸を加え、さらに均一になるまで攪拌を行った。このようにして、水成膜泡消火薬剤(サンプル3)を調製した。
-組成-
・フッ素系界面活性剤(アニオン性) ・・・1%
(パーフルオロノネニルオキシベンゼンスルホン酸塩)
・フッ素系界面活性剤(カチオン性) ・・・1%
(パーフルオロノネニルトリメチルアンモニウム塩)
・炭化水素系界面活性剤(両性) ・・・20%
(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)
・水溶性高分子(カチオン性) ・・・5%
(ポリエチレンイミン、Mn=10万)
・有機酸(アジピン酸(多塩基酸)) ・・・1%
・溶剤(ブチルジグリコール) ・・・12%
・溶剤(エチレングリコール) ・・・6%
・水 ・・・残部
【0082】
(参考試験例1)
撹拌機、温度計及び窒素導入ラインを備えた四ツ口フラスコに窒素雰囲気下、下記組成中の水、溶剤、及び炭化水素系界面活性剤を投入し、均一になるまで攪拌した。続いて、さらにフッ素系界面活性剤を加え、再び均一になるまで攪拌した。撹拌後、水溶性高分子と有機酸を加え、さらに均一になるまで攪拌を行った。このようにして、水成膜泡消火薬剤(サンプル4)を調製した。
-組成-
・フッ素系界面活性剤(アニオン性) ・・・1%
(パーフルオロノネニルオキシベンゼンスルホン酸塩)
・フッ素系界面活性剤(カチオン性) ・・・1%
(パーフルオロノネニルトリメチルアンモニウム塩)
・炭化水素系界面活性剤(両性) ・・・20%
(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン)
・水溶性高分子(カチオン性) ・・・2%
(ポリエチレンイミン、Mn=5万~10万)
・有機酸(アジピン酸(多塩基酸)) ・・・1%
・溶剤(ブチルジグリコール) ・・・12%
・溶剤(エチレングリコール) ・・・6%
・水 ・・・残部
【0083】
上記の試験例及び参考試験例で調製したサンプル1~4(水成膜泡消火薬剤)を用いて、発泡性能試験及び消火試験を行った。発泡性能試験は昭和50年自治省令第26号第12条第1項に規定する方法により行った。大規模消火試験は昭和50年自治省令第26号第13条第1項に規定する方法により行った。小規模消火試験は以下の方法により行った。試験の結果を表1に示す。
【0084】
(小規模消火試験)
燃料として400mL~500mLのシクロヘキサンを直径14cm×深さ7.5cmの容器に入れ、1分間の予燃後に規格省令に定められている水成膜泡消火薬剤試験用標準発泡ノズル(水成膜泡用検定ノズル)を用いて発泡させた泡を約120mL投入し、消炎、消泡等の状況を確認し、消火もしくは消泡までの時間を測定した。さらに、泡に接炎して泡の燃焼、消泡等の状況を確認した。その後、燃料上の泡を取り除き、水成膜泡用検定ノズルで発泡させた泡を約600mL投入して静置し、泡投入後約10分経過した後、泡に接炎し、泡の消泡、燃焼等の状況を確認した。さらにその後、十分に泡が残っている場合は、容器中央付近に直径約2cmの燃料面を露出させて着火し、燃料面の拡大などの状況を確認した。
【0085】
(大規模消火試験)
320Lの水及び燃料として200Lのノルマルヘプタンを1辺2m×深さ0.3mの正方形の容器に入れ、1分間の予燃後に規格省令に定められている水成膜泡消火薬剤試験用標準発泡ノズル(水成膜泡用検定ノズル)を用いて発泡させた泡を5分間連続して供給する。発泡終了後15分間、点火器を用いて泡面に炎を近づけて再燃性(密封性)を確認する。発泡終了15分後に泡面の中央部に油面を一辺15cmの正方形となるように露出させ、点火し、5分間燃焼させて燃焼面積を確認した。燃焼面積が900cm2以下であれば耐火性は合格(表中「〇」と表記)と判断し、燃焼面積が900cm2を超えた場合の耐火性は不合格(表中「×」と表記)と判断した。
【0086】
【0087】
表1に示すように、1分子中の、フッ素原子が結合した炭素原子の数が7個以下である(パーフルオロへプチル基を有しない)アニオン性界面活性剤(A)及び所定の両性界面活性剤(C)を含有する本発明の水成膜泡消火薬剤は、各成分がPFOS及びPFOAを含まないので環境等に優れるとともに、炭素原子数≦7の短鎖又は分岐鎖の分子構造でありながら、消火能力を保持していることが分かる。