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特開2024-155902完全に数値的なライナーのインピーダンス推測プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155902
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】完全に数値的なライナーのインピーダンス推測プロセス
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/28 20200101AFI20241024BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20241024BHJP
   G06F 111/10 20200101ALN20241024BHJP
   G06F 113/08 20200101ALN20241024BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20241024BHJP
【FI】
G06F30/28
G06F30/23
G06F111:10
G06F113:08
G06F119:14
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024069219
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】63/497,349
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/458,531
(32)【優先日】2023-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514180812
【氏名又は名称】ダッソー システムズ アメリカス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ チェリッザ
(72)【発明者】
【氏名】ダミアーノ カサリーノ
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DJ03
5B146DJ07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】完全に数値的なライナーのインピーダンス推測プロセスを創出する方法を提供する。
【解決手段】方法は、ライナーの3Dコンピュータベースのモデルを定義したモデルを使用して、環境でライナーのデジタル実験を実施する。デジタル実験を実施する結果は、基準伝達関数を含む。環境の2Dモデルを、インピーダンス値が抵抗値、リアクタンス値及び非線形係数値によって定義されるインピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件によってライナーが表される場合に生成し、2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数が基準伝達関数と一致するまで、反復的に、インピーダンス値を修正し、修正されたインピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件によって、環境の生成された2Dモデルを使用して2Dシミュレーションを実施する。基準伝達関数に一致する伝達関数をもたらす修正されたインピーダンス値は、ライナーの音響インピーダンスである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナーの音響インピーダンスを決定するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法が、
ライナーの三次元(3D)コンピュータベースのモデルを定義することと、
前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルを使用して、環境で前記ライナーのデジタル実験を実施することであって、前記デジタル実験を実施する結果が、基準伝達関数を含む、実施することと、
前記環境の二次元(2D)モデルを生成することであって、前記ライナーが、インピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件によって、前記環境の前記生成された2Dモデルで表され、前記インピーダンス値が、抵抗値、リアクタンス値、および非線形係数値によって定義される、生成することと、
2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数が前記基準伝達関数と一致するまで、反復的に(i)前記インピーダンス値を修正し、(ii)前記修正されたインピーダンス値を有する前記音響インピーダンス境界条件により、前記環境の前記生成された2Dモデルを使用して、2Dシミュレーションを実施することであって、前記基準伝達関数に一致する前記伝達関数をもたらす、前記2Dシミュレーションで使用された前記修正されたインピーダンス値が、前記ライナーの音響インピーダンスである、ことと、を含む方法。
【請求項2】
前記ライナーの前記3Dコンピュータベースのモデルを定義することが、
前記ライナーのコンピュータ支援設計(CAD)モデルを受信することと、
(i)前記ライナーの一つ以上の部品および(ii)前記受信したCADモデルに基づいて前記一つ以上の部品の寸法を識別することと、
前記ライナーの前記識別された一つ以上の部品および前記一つ以上の部品の寸法に基づいて、前記ライナーを表す計算的な表面メッシュを生成することであって、前記生成された計算的な表面メッシュが、前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルである、生成することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環境の3Dモデルを生成することであって、前記環境の前記生成された3Dモデルが、チャネルおよび前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルを含み、前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルが、前記チャネルの底面上に配置されることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ライナーの前記3Dモデルを生成することが、
流れ内の圧力波の波長に従って前記チャネルの長さを定義することと、
前記流れの速度に基づいて、前記3Dモデル内の固体トリップの位置を定義することと、のうちの少なくとも一つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
試験条件の表示を受信することと、
(i)前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)前記環境の前記生成された3Dモデル、および(iii)前記試験条件の受信された表示を使用して、前記環境で前記ライナーの前記デジタル実験を実施することと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記試験条件の受信された表示が、流れ条件を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(i)前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)前記環境の前記生成された3Dモデル、および(iii)前記試験条件の受信された表示を使用して、前記環境で前記ライナーの前記デジタル実験を実施することが、
前記環境の前記生成された3Dモデルにおける前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルを前記試験条件に供する間に、前記チャネル内の一つ以上のデジタルセンサから圧力データを収集することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記収集された圧力データのフーリエ変換を計算することによって、前記基準伝達関数を生成することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記デジタル実験が計算流体力学(CFD)シミュレーションであり、(i)前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)前記環境の前記生成された3Dモデル、および(iii)前記試験条件の受信された表示を使用して、前記環境で前記ライナーの前記デジタル実験を実施することが、
(i)前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)前記環境の前記生成された3Dモデル、および(iii)前記試験条件の受信された表示に基づいて、CFD入力ファイルを生成することと、
前記生成されたCFD入力ファイルを使用して、前記CFDシミュレーションを実施することと、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記2Dシミュレーションの実施から生じる前記伝達関数が、(i)前記2Dシミュレーションの実施から生じる前記伝達関数と(ii)前記基準伝達関数との間の差分メトリックが閾値を下回るときに、前記基準伝達関数と一致する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
所与の反復において、(i)前記2Dシミュレーションを実施することから生じる所与の伝達関数と、(ii)前記基準伝達関数との間の差に基づいて、前記修正されたインピーダンス値を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記インピーダンス値を修正することが、
前記抵抗値、前記リアクタンス値、および前記非線形係数値のうちの少なくとも一つを修正することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記非線形係数値が、流れの局所速度の第一の微分値に依存する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記環境の前記生成された2Dモデルが、メッシュベースのモデルであり、前記方法が、
圧力波を定義することと、
前記メッシュベースのモデルの解像度を、前記定義された圧力波の波束波長の関数として設定することと、
流れ収束シミュレーションを実施して、フィールドデータを決定することと、のうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ライナーの音響インピーダンスを決定するためのシステムであって、前記システムが、
プロセッサと、
コンピュータコード命令がその上に格納されたメモリとを含み、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
ライナーの三次元(3D)コンピュータベースのモデルを定義させることと、
前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルを使用して、環境で前記ライナーのデジタル実験を実施させることであって、前記デジタル実験を実施する結果が、基準伝達関数を含む、実施させることと、
前記環境の二次元(2D)モデルを生成させることであって、前記ライナーが、インピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件によって、前記環境の前記生成された2Dモデルで表され、前記インピーダンス値が、抵抗値、リアクタンス値、および非線形係数値によって定義される、生成させることと、
2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数が前記基準伝達関数と一致するまで、反復的に、(i)前記インピーダンス値を修正させ、(ii)前記修正されたインピーダンス値を有する前記音響インピーダンス境界条件によって、前記環境の前記生成された2Dモデルを使用して2Dシミュレーションを実施させることであって、前記基準伝達関数に一致する前記伝達関数をもたらす、前記2Dシミュレーションの実施に使用される前記修正されたインピーダンス値が、前記ライナーの音響インピーダンスである、ことと、を行わせるように構成される、システム。
【請求項16】
前記ライナーの前記3Dコンピュータベースのモデルを定義する際に、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記ライナーのコンピュータ支援設計(CAD)モデルを受信させることと、
(i)前記ライナーの一つ以上の部品および(ii)前記受信したCADモデルに基づいて前記一つ以上の部品の寸法を識別させることと、
前記ライナーの前記識別された一つ以上の部品および前記一つ以上の部品の前記寸法に基づいて、前記ライナーを表す計算的な表面メッシュを生成させることであって、前記生成された計算的な表面メッシュが、前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルである、生成させることと、を行わせるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記環境の3Dモデルを生成させることであって、前記環境の前記生成された3Dモデルが、チャネルおよび前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルを含み、前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルが、前記チャネルの底面上に配置される、こと、を行わせるようにさらに構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
試験条件の表示を受信させることと、
(i)前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)前記環境の前記生成された3Dモデル、および(iii)前記試験条件の受信された表示を使用して、前記環境で前記ライナーの前記デジタル実験を実施させることと、を行わせるようにさらに構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記インピーダンス値を修正する際に、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記抵抗値、前記リアクタンス値、および前記非線形係数値のうちの少なくとも一つを修正させるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
ライナーの音響インピーダンスを決定するためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が、
一つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶装置と、前記一つ以上の記憶装置のうちの少なくとも一つに記憶されたプログラム命令と、を含み、前記プログラム命令が、プロセッサによって読み込まれ実行されるとき、前記プロセッサに関連付けられた装置に、
ライナーの三次元(3D)コンピュータベースのモデルを定義させることと、
前記ライナーの前記定義された3Dコンピュータベースのモデルを使用して、環境で前記ライナーのデジタル実験を実施させることであって、前記デジタル実験を実施する結果が、基準伝達関数を含む、実施させることと、
前記環境の二次元(2D)モデルを生成させることであって、前記ライナーが、インピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件によって、前記環境の前記生成された2Dモデルで表され、前記インピーダンス値が、抵抗値、リアクタンス値、および非線形係数値によって定義される、生成させることと、
2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数が前記基準伝達関数と一致するまで、反復的に、(i)前記インピーダンス値を修正させ、(ii)前記修正されたインピーダンス値を有する前記音響インピーダンス境界条件によって、前記環境の前記生成された2Dモデルを使用して2Dシミュレーションを実施させることであって、前記基準伝達関数に一致する前記伝達関数をもたらす、前記2Dシミュレーションの実施に使用される前記修正されたインピーダンス値が、前記ライナーの音響インピーダンスである、ことと、を行わせる、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
物体、例えば車両などの設計およびシミュレーションのために、多くの既存の製品およびシミュレーションシステムが市場で提供されている。こうしたシステムは、典型的には、コンピュータ支援設計(CAD)プログラムおよびコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)プログラムを採用する。これらのシステムは、ユーザが、物体または物体の組立品の複雑な三次元モデルを構築、操作、およびシミュレーションすることを可能にする。これらのCADシステムおよびCAEシステムは、縁または線、特定の事例では面を有する縁または線を使用して、物体、例えば、現実世界の物体のモデル表現を提供する。線、縁、面、または多角形は、例えば、非一様有理Bスプライン(NURBS)などの様々な様式で表され得る。
【背景技術】
【0002】
こうしたシステムは、主に形状の仕様である、モデル化された物体の部品または部品の組立品を管理する。特に、CADファイルには形状が生成される仕様が含まれる。形状から、三次元CADモデルまたはモデル表現が生成される。仕様、形状、およびCADモデル/表現は、単一のCADファイルまたは複数のCADファイルに保存されてもよい。CADシステムまたは他のこうしたCAEシステムは、設計者に三次元空間で表されるように、モデル化された物体を視覚的に表すためのグラフィックツールを含み、これらのツールは、複雑な現実世界の物体の表示専用である。例えば、組立品は数千個の部品を含み得る。
【0003】
CADシステムおよびCAEシステムの出現により、物体に対するCADモデルなどの幅広い表現の可能性が可能になる。コンピュータベースのモデルは、モデルが表す基礎となる現実世界の物体の特性(例えば、物理的、材料、または他の物理学に基づく)をモデルが有するようにプログラムされてもよい。例示的な特性としては、とりわけ、剛性(変位に対する力の比)、可塑性(不可逆的な歪み)、および粘度(隣接する層上の一つの層の流れに対する抵抗)が挙げられる。当技術分野で公知のCADモデルまたは他のこうしたコンピュータベースのモデルがそのような方法でプログラムされる場合、それはモデルが表す物体のシミュレーションを実施するために使用され得る。例えば、メッシュベースのモデルを使用して、車両の内部空洞、構造を囲む音響流体、または任意の数の現実世界の物体を表し得る。さらに、CADシステムおよびCAEシステムは、コンピュータベースのモデルと共に、他の実施例の中でもとりわけ、現実世界の物理システム、例えば、自動車、飛行機、建物および橋などのエンジニアリングシステムをシミュレーションするために利用され得る。さらに、CAEシステムを使用して、ノイズおよび振動などのこれらの物理学に基づくシステムの挙動の任意の多様性および組み合わせをシミュレーションすることができる。
【発明の概要】
【0004】
ノイズのシミュレーションは、既存のシミュレーション方法によって実装されるタスクであり、多くの場合、これらの既存の方法は、現実世界の物体、例えばライナーの特性、例えば、ノイズ低減能力を決定する。しかしながら、最近では、関心のある物体、例えば、ライナーはますます複雑になり、物体をシミュレーションし、前記物体の特性を決定するための改善された方法が必要である。実施形態は、こうした機能性を提供する。
【0005】
こうした一実施形態は、ライナーの音響インピーダンスを決定するためのコンピュータ実装方法を対象とする。方法は、ライナーの三次元(3D)コンピュータベースのモデルを定義し、ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルを使用して、環境でライナーのデジタル実験を実施する。デジタル実験を実施する結果は、基準伝達関数を含む。続行するには、環境の二次元(2D)モデルが生成され、その中で、ライナーは、インピーダンス値が抵抗値、リアクタンス値、および非線形係数値によって定義されるインピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件によって、環境の生成された2Dモデルで表される。次いで、方法は、2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数が基準伝達関数と一致するまで、反復的に(i)インピーダンス値を修正し、(ii)修正されたインピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件により、環境の生成された2Dモデルを使用して2Dシミュレーションを実施する。基準伝達関数に一致する伝達関数をもたらす、2Dシミュレーションの実施に使用される修正されたインピーダンス値は、ライナーの音響インピーダンスである。
【0006】
一実施形態によれば、ライナーの3Dコンピュータベースのモデルを定義することは、ライナーのコンピュータ支援設計(CAD)モデルを受信することと、(i)ライナーの一つ以上の部品、および(ii)受信したCADモデルに基づいて一つ以上の部品の寸法を識別することと、を含む。次に、ライナーを表す計算的な表面メッシュは、ライナーの識別された一つ以上の部品および一つ以上の部品の寸法に基づいて生成される。こうした実施形態では、生成された計算的な表面メッシュは、ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルである。
【0007】
別の実施形態は、環境の3Dモデルを生成する。こうした実施形態によれば、環境の生成された3Dモデルは、チャネルおよびライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルを含み、ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルは、チャネルの底面上に配置される。例示的な実施形態では、ライナーの3Dモデルを生成することは、(i)流れ内の圧力波の波長に従ってチャネルの長さを定義することと、(ii)流れの速度に基づいて3Dモデル内の固体トリップの位置を定義することと、のうちの少なくとも一つを含む。
【0008】
さらに別の実施形態は、試験条件の表示を受信し、(i)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)環境の生成された3Dモデル、および(iii)試験条件の受信された表示を使用して、環境でライナーのデジタル実験を実施する。一実施形態では、試験条件の受信された表示は、流れ条件を含む。さらに、試験条件の受信された表示はまた、ライナーのインピーダンス境界条件(環境の2Dモデルの作成に使用される)の初期推測などの境界条件を含み得る。さらに、別の実施形態では、(i)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)環境の生成された3Dモデル、および(iii)試験条件の受信された表示を使用して、環境でライナーのデジタル実験を実施することは、環境の生成された3Dモデル内のライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルを試験条件に供しながら、チャネル内の一つ以上のデジタルセンサから圧力データを収集することを含む。こうした実施形態は、収集された圧力データのフーリエ変換を計算することによって、基準伝達関数を生成し得る。
【0009】
一実施形態では、デジタル実験は、計算流体力学(CFD)シミュレーションである。こうした実施形態では、(i)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)環境の生成された3Dモデル、および(iii)試験条件の受信された表示を使用して、環境でライナーのデジタル実験を実施することは、(1)(a)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデル、(b)環境の生成された3Dモデル、および(c)試験条件の受信された表示に基づいて、CFD入力ファイルを生成することと、(2)生成されたCFD入力ファイルを使用してCFDシミュレーションを実施することと、を含む。
【0010】
一実施形態では、環境の生成された2Dモデルは、メッシュベースのモデルである。一つのこうした実施形態では、方法は、圧力波を定義することと、メッシュベースのモデルの解像度を、定義された圧力波の波束波長の関数として設定することと、流れ収束シミュレーションを実施して、フィールドデータを決定することと、のうちの少なくとも一つをさらに含む。
【0011】
一実施形態によれば、2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数は、(i)2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数と(ii)基準伝達関数との間の差分メトリックが閾値を下回るときに、基準伝達関数と一致する。
【0012】
さらに別の実施形態は、所与の反復で、修正されたインピーダンス値を決定することを含む。一実施形態は、(i)2Dシミュレーションの実施から生じる所与の伝達関数と(ii)基準伝達関数との間の差(または複数の差)に基づいて、修正されたインピーダンス値を決定する。実施形態はまた、最適化アルゴリズムを使用して、修正されたインピーダンス値を決定し得る。さらに、一実施形態によれば、所与の伝達関数は、所与の反復前の反復からのものであってもよい。さらになおも、一実施形態は、(i)複数の伝達関数、例えば、最良の結果をもたらした伝達関数のサブセットと、(ii)基準伝達関数との間の差を考慮することによって、修正されたインピーダンス値(すなわち、試験対象の次のインピーダンス値)を決定する。
【0013】
例示的な実施形態では、インピーダンス値を修正することは、抵抗値、リアクタンス値、および非線形係数値のうちの少なくとも一つを修正することを含む。さらに、なおも別の実施形態によると、非線形係数値は、流れの局所速度の第一の微分値に依存する。
【0014】
別の実施形態は、ライナーの音響インピーダンスを決定するためのシステムを対象とする。こうした実施形態では、システムは、プロセッサと、その上に格納されたコンピュータコード命令を有するメモリと、を含む。プロセッサおよびメモリは、コンピュータコード命令を用いて、システムに、本明細書に記載される任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実装させるように構成される。
【0015】
さらに別の実施形態は、ライナーの音響インピーダンスを決定するためのコンピュータプログラム製品を対象とする。コンピュータプログラム製品は、一つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶装置と、一つ以上の記憶装置のうちの少なくとも一つに記憶されたプログラム命令と、を含み、プログラム命令は、プロセッサによって読み込まれ実行されるとき、プロセッサに関連付けられた装置に、本明細書に記載の任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実装させる。
【0016】
実施形態の一態様は、3D数値実験のセットアップを自動的に生成することを含む。このセットアップでは、一実施形態によると、ライナーは、進行波が生成される平面チャネル内に配置される。これは、現実世界の実験的試験の数値的等価物を表す。
【0017】
別の態様は、数値シミュレーションからいくつかの測定値を収集することを含む。こうした実施形態では、ライナーの上方の圧力信号は、一連のマイクロホンで記録される。さらなる態様は、シミュレーション測定値の処理、およびライナーのインピーダンスを計算するための縮約モデルの生成を含む。一実施形態におけるさらに別の態様は、縮約モデルのライナーのインピーダンスを調整することによって、所与の目標パラメータに関して数値試験結果および縮約モデルに一致する最適化方法である。
【0018】
一実施形態によれば、ライナー数値実験のセットアップは、所与のライナー3Dモデルをインポートし、付随的な形状実体およびシミュレーションデータを記憶するための測定領域を有する完全な仮想試験環境を生成する前処理ツールを使用して生成される。
【0019】
一実施形態では、シミュレーションデータ(すなわち、3Dデジタル実験からのデータ)は、時間領域データを読み取り、周波数領域空間に変換し、最適化ループ内のいくつかの縮約モデル分析を提出して、ライナーのインピーダンス(すなわち、基準伝達関数)を取得することができる、一連のスクリプトを使用して処理される。さらに別の実施形態は、出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia CorporationによるSIMULIA PowerACOUSTICS(登録商標)などのツールを利用して、数値試験から収集された一連の時間領域圧力信号の複素フーリエ変換を計算する。
【0020】
例示的なワークフローでは、ユーザは、関連する表面に使用する命名法を指定する一連のガイドラインに従って、ライナーの形状、例えば、表面メッシュを準備する。一実施形態によれば、ガイドラインは、ライナーCADモデル内のライナー表面グループおよびライナーの多孔板の穴表面に割り当てられる所与の名称を指示する。これにより、こうした実施形態は、ライナーの主要セクションを自動的に識別し、ライナーのデジタル実験等価物を生成することができる。追加的に、さらに別の実施形態では、例えば、流れ条件および目標周波数を含む一連の入力パラメータが、例えば、ユーザによって指定される入力として提供される。
【0021】
一実施形態は、入力(例えば、ライナーの形状および流れパラメータ)を使用して、ライナーのインピーダンス推測プロセスを開始する。こうした実施形態では、プロセスは三つの段階で発生する。段階1では、ライナーの物理試験の数値等価物が構築される。言い換えれば、現実世界でのライナー試験のデジタルツインが作成される。段階2は、デジタルツインを使用して数値試験を実行し、いくつかの測定値が、その後のインピーダンス計算プロセスで保存および使用される。段階3は、3Dシミュレーション結果、すなわち、保存された測定値を処理して、基準伝達関数を取得することを含む。一実施形態では、段階3は、時間領域データを周波数ドメインデータに変換することと、周波数ドメインデータを使用して基準伝達関数を取得することと、を含む。段階3では、3Dシミュレーションの等価2D縮約モデルが生成される。次いで、ライナーに対する等価インピーダンス値を識別するために、3D結果と2D結果との間の一致を探す最適化ループが実行される。
【0022】
他の態様には、非一時的コンピュータ可読媒体上に有形に格納されたコンピュータプログラム製品、ならびにコンピュータシステムおよびコンピュータサーバなどの計算システムが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
前述は、異なる図全体を通して同様の参照文字が同じ部分を指す添付図面に図示されるように、例示的な実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、代わりに実施形態を図示することを強調するものである。
【0024】
図1図1は、一実施形態によるライナーのインピーダンスを決定するための方法のフローチャートである。
図2A図2Aは、実施形態を使用して分析され得るライナーの3Dコンピュータベースのモデルである。
図2B図2Bは、図2Aのライナーの上板を示す。
図2C図2Cは、図2Aのライナーのセルアレイを示す。
図3A図3Aは、一実施形態による3D数値実験のセットアップの視覚的描写である。
図3B図3Bは、一実施形態による3D数値実験のセットアップの視覚的描写である。
図4A図4Aは、図3Aの実験の2D縮約モデルの視覚的描写である。
図4B図4Bは、図3Bの実験の2D縮約モデルの視覚的描写である。
図5図5は、一実施形態によるライナーのインピーダンス推測プロセスのフローチャートである。
図6図6は、一実施形態によるライナーのインピーダンスを決定するための方法のフローチャートである。
図7A図7Aは、一実施形態によるグレージング流れの実験セットアップを視覚化したものである。
図7B図7Bは、ライナー上のグレージング流れの図である。
図8図8は、一実施形態によるライナーのインピーダンスを決定するためのコンピュータシステムの簡略化ブロック図である。
図9図9は、実施形態が実装され得るコンピュータネットワーク環境の簡略化ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示的な実施形態の説明を、以下に記載する。
【0026】
上述のように、ノイズのシミュレーションは、既存のシミュレーション方法によって実装されるタスクであり、多くの場合、これらの既存の方法は、現実世界の物体、例えばライナーの特性、例えば、ノイズ低減能力を決定する。しかしながら、最近では、関心のある物体、例えば、ライナーはますます複雑になり、物体をシミュレーションし、こうした物体の特性を決定するための改善された方法が必要である。実施形態は、こうした機能性を提供する。
【0027】
実施形態は、ライナーのインピーダンスの間接的推測のための新しい完全な数値プロセスに関する。実施形態では、ライナーは、任意に複雑な形状を有し得る。複雑なライナーのインピーダンスを決定する能力は、他の産業の中でも特に航空機産業においてますます重要になっている。
【0028】
航空機のターボファンエンジンは、特定量の摂取された空気を圧縮、燃焼、および膨張させることによってスラストを生成する。同時に、エンジンの外側セクションでは、ファンは冷気を引き出し、熱サイクルを受けることなく冷気を加速する。この二次セクションはバイパスと呼ばれ、エンジン排気を増加させることなくスラストを生成する。
【0029】
近年、エンジンは低排出量レイアウトに向けて進化している。これらの低排出量レイアウトを実装する主要なエンジン製造業者の一般的な傾向は、より大きなバイパス比(すなわち、より大きなバイパスセクションとより大きなファン)を有するエンジンに向けて移行することであった。この傾向は、排気を低減するだけでなく、エンジンの主要なノイズ発生機構も変化させた。古いバイパス比の低いエンジンでは、ほとんどのノイズはエンジンジェットによって生成される。しかしながら、現代のエンジン(すなわち、バイパス比がより大きい低公害エンジン)では、エンジンファンおよびファンの後流と、流れをまっすぐにするためにファンの下流に配置される段階である出口ガイドベーン(OGV)との相互作用が、エンジンノイズの主な原因である。
【0030】
ファンによって生成されるノイズを低減するために、エンジン製造業者はいくつかの異なる解決策を試験した。こうした一つの解決策は、エンジンナセル内面における音響ライナーの配置である。ライナーは、エンジンによって放射されるノイズを低減するために壁近くの圧力変動を吸収することができる、受動素子である。その基本的なレイアウトでは、ライナーは、一連の中空セルの上に穿孔された表面を含む。多孔板を通るセル内外への空気の通過は、所与の周波数範囲における圧力変動の強度を低減することができる外部圧力変動に対するダンプ反応を生成する。セルの形状および寸法は、ライナーが大きなまたは小さなノイズ低減を提供する周波数の範囲に影響を与える。
【0031】
近年、ノイズ低減能力が強化された新しいライナーレイアウトが出現した。一連の長方形セルの上部に多孔板を有するより基本的な形態から離れて、新しい設計は、不均一な穿孔パターンおよびセルレイアウトを利用する。これらの新しいライナーは、ノイズを低減することができる周波数の範囲を増加させた。
【0032】
所与の周波数のノイズを低減する能力は、インピーダンスの観点から測定される。インピーダンスは、複雑な空間における抵抗と同等であり、単純なライナーの形状の実験的試験を介して計算することができる。しかしながら、より複雑なライナー設計の外観では、インピーダンスを測定するための標準の経験的方法は失敗に終わっている。このため、近年、新しい間接的な方法(経験的および数値的の両方)が人気を集めている。これらの間接的な方法は、一般的に、ライナーの近傍での局所速度および圧力測定値を、圧力波がライナーの上部を移動する際の圧力波の強度の変化の分析で置き換える。
【0033】
同時に、いくつかの刊行物は、ライナー内の流れ挙動を数値的にモデル化できる方法を詳細に示している。格子ボルツマン法(LBM)に基づくソルバーは、特に、複雑な形状に対処する能力、および高忠実度の音響計算において重要な要因である、その固有の低い数値的散逸のため、この種の用途によく適している。
【0034】
実施形態は、任意に複雑なライナーの等価インピーダンスを計算するために、新規シミュレーションベースのプロセスを提案する。一実施形態は、出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia CorporationによるSIMULIA PowerFLOW(登録商標)を使用して、ライナーからリアルタイム測定値を取得し(現実世界の試験に対する必要性を置き換え)、ライナーからのリアルタイム測定値を、元のライナーの等価音響モデル上でいくつかの縮約シミュレーションを実行することによってライナーのインピーダンスを決定する間接的インピーダンス推測方法とペアリングさせる。
【0035】
ライナーのインピーダンスを数値的に計算することができることで、物理試験において多大な時間が節約される。さらに、現実世界のシナリオにおける音響測定は、大きな不確実性から必然的に影響を受ける。本明細書に提示される実施形態は、汎用ライナーの等価インピーダンスを計算するための自動化プロセスを実装する。実施形態は、特定のライナーのレイアウトとは無関係であり、任意の複雑なライナーの形状に採用され得る。
【0036】
図1は、一実施形態によるライナーのインピーダンスを決定するための方法100のフローチャートである。方法100は、コンピュータ実装され、そのため、機能および効果的な動作、例えば、工程101~104は、一つ以上のデジタルプロセッサによって自動的に実装され得る。さらに、方法100は、当技術分野で公知の任意のコンピュータ装置または計算装置の組み合わせを使用して実装することができる。他の実施例の中でも特に、方法100は、図8に関連して本明細書で以下に記載するコンピュータシステム880、および図9に関連して以下に説明されるコンピュータネットワーク環境990を使用して実装され得る。
【0037】
方法100は、工程101で、ライナーの3Dコンピュータベースのモデルを定義することによって開始する。次に、工程102で、ライナーのデジタル実験は、ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルを使用して環境で実施される。一実施形態は、当業者に公知の手順に従ってデジタル実験を実装する。例えば、一つのこうした実施形態は、メッシュサイズおよびサンプリング周波数を設定するための既知の手順を利用する。工程102でデジタル実験を実施する結果は、基準伝達関数を含む。続行するには、工程103で、環境の2Dモデルが生成される。ライナーは、インピーダンス値が抵抗値、リアクタンス値、および非線形係数値によって定義されるインピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件によって、環境の生成された2Dモデルで表される。次いで、工程104で、方法100は、2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数が基準伝達関数と一致するまで、反復的に(i)インピーダンス値を修正し、(ii)修正されたインピーダンス値を有する音響インピーダンス境界条件により、環境の生成された2Dモデルを使用して2Dシミュレーションを実施する。言い換えれば、工程104での反復は、境界条件(ライナーを表す)のインピーダンス値を設定し、前記設定されたインピーダンス値を使用して2Dシミュレーションを実施して、結果として生じる伝達関数を決定し、結果として生じる伝達関数を基準伝達関数(工程102で決定される)と比較する。この機能は、二つの伝達関数(工程102で決定された伝達関数および工程104で決定された伝達関数)が一致するまで繰り返される。方法100で、基準伝達関数に一致する伝達関数をもたらす、2Dシミュレーションの実施に使用される修正されたインピーダンス値は、ライナーの音響インピーダンスである。
【0038】
一実施形態は、当業者に公知の手順に従って2Dシミュレーションを実装する。例えば、一つのこうした実施形態は、2Dシミュレーションのメッシュサイズおよびサンプリング周波数を設定するための既知の手順を利用する。
【0039】
一実施形態によれば、工程101でライナーの3Dコンピュータベースのモデルを定義することは、ライナーのコンピュータ支援設計(CAD)モデルを受信することと、(i)ライナーの一つ以上の部品、および(ii)受信したCADモデルに基づいて一つ以上の部品の寸法を識別することと、を含む。一実施形態では、ライナーのCADモデルは、形成される、すなわち、点、線、および表面要素などの実体によって定義される。こうした実施形態では、受信されたモデル内の要素はグループ化され、グループは、例えば、モデルを受信する前に命名される。一実施形態は、グループ化およびグループ名データにアクセスし、そこから、各グループを構成する三角形の最小/最大座標を計算することによって、部品およびライナー部品の位置、ならびに部品の寸法を識別する。続行するには、ライナーを表す計算的な表面メッシュは、ライナーの識別された一つ以上の部品および一つ以上の部品の寸法に基づいて生成される。こうした実施形態では、生成された計算的な表面メッシュは、工程101でライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルである。さらに、方法100の実施形態で使用され得るライナーのCADモデル220の例を、図2Aに関連して本明細書で以下に記載する。さらに、別の実施形態では、現実世界のライナーの寸法を測定し、工程101で寸法を使用して、ライナーのコンピュータベースのモデルを生成する。
【0040】
方法100の別の実施形態は、環境の3Dモデルを生成する。こうした実施形態によれば、環境の生成された3Dモデルは、チャネルおよび(工程101からの)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルを含む。こうした実施形態では、ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルは、チャネルの底面に配置される。こうした環境モデル330の例を、図3Aに関連して本明細書で以下に記載する。一実施形態では、環境の3Dモデルを生成することは、(i)(例えば、チャネル内の)流れ内の圧力波の波長に従ってチャネルの長さを定義することと、(ii)(例えば、流れが存在する場合の)流れの速度に基づいて3Dモデル内の固体トリップの位置を定義することと、のうちの少なくとも一つを含む。
【0041】
方法100のさらに別の実施形態は、試験条件の表示を受信する。受信され得る試験条件の例を表1に列挙する。こうした実施形態は、(i)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)環境の生成された3Dモデル、および(iii)試験条件の受信された表示を使用して、工程102で、環境でライナーのデジタル実験を実施する。一実施形態では、試験条件の受信された表示は、流れ条件を含む。さらに、別の実施形態では、(i)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)環境の生成された3Dモデル、および(iii)試験条件の受信された表示を使用して、工程102で、環境でライナーのデジタル実験を実施することは、環境の生成された3Dモデル内のライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデルを試験条件に供しながら、チャネル内の一つ以上のデジタルセンサから圧力データを収集することを含む。こうした実施形態は、収集された圧力データのフーリエ変換を計算することによって、基準伝達関数を生成し得る。工程102で生成され得る例示的な伝達関数662を図6に示し、本明細書で以下に記載する。
【0042】
一実施形態では、工程102で実施されるデジタル実験は、計算流体力学(CFD)シミュレーションである。こうした実施形態では、環境でのライナーのデジタル実験は、(i)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)環境の生成された3Dモデル、および(iii)試験条件の受信された表示を使用して、工程102で実施される。さらに、工程102で実験を実施することは、(1)(i)ライナーの定義された3Dコンピュータベースのモデル、(ii)環境の生成された3Dモデル、および(iii)試験条件の受信された表示に基づいて、CFD入力ファイルを生成することと、(2)生成されたCFD入力ファイルを使用して、CFDシミュレーションを実施することと、を含む。一実施形態は、CFD入力ファイルを生成し、当業者に既知の手順を使用してCFDシミュレーションを実施する。例えば、一つのこうした実施形態は、CFDシミュレーションのメッシュサイズおよびサンプリング周波数を設定するための既知の手順を利用する。
【0043】
方法100の一実施形態では、3D環境のチャネルは細長いボックスであり、工程103で、2Dモデルは、細長いボックスを細長いボックスと同様の寸法の長方形で置き換えることによって生成される。さらに、3Dライナーは、インピーダンス境界条件が適用された、2D領域内の線、すなわち、2Dモデルによって置き換えられる。一実施形態では、このインピーダンス境界条件は、3Dライナー軸方向位置および長さと一致する。方法100のなおも別の実施形態では、工程103で生成される環境の生成された2Dモデルは、メッシュベースのモデルである。方法100の一つのこうした実施形態は、圧力波を定義することと、メッシュベースのモデルの解像度を、定義された圧力波の波束波長の関数として設定することと、流れ収束シミュレーションを実施して、フィールドデータを決定することと、のうちの少なくとも一つをさらに含む。一実施形態によれば、流れ収束シミュレーションは、自動的に決定されたセットアップ(例えば、流れがトリップからライナーに移動するのに必要な時間に基づくセットアップ)を使用して、チャネル内の安定した速度および圧力場が達成される期間をシミュレーションするために実施される。一実施形態では、流れ収束シミュレーションが開始すると、圧力と速度との間の運動量収支に到達し、流れ量が時間的に静止するまで、圧力は徐々に上昇する(定常流条件)。さらに、一実施形態によると、例示的なフィールドデータは、圧力、温度、密度、速度および乱流量(Kおよびオメガ)を含む。
【0044】
方法100の一実施形態によれば、(工程102での)2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数は、(i)2Dシミュレーションの実施から生じる伝達関数と(ii)基準伝達関数との間の差分メトリックが閾値を下回るときに、(工程104での)基準伝達関数と一致する。実施形態で利用され得る差分メトリックには、他の実施例の中でも特に、最小二乗誤差およびL2ノルムが含まれる。
【0045】
上述のように、方法100では、インピーダンス値は、抵抗値、リアクタンス値、および非線形係数値によって定義される。そのため、一実施形態では、工程104でインピーダンス値を修正することは、抵抗値、リアクタンス値、および非線形係数値のうちの少なくとも一つを修正することを含む。例示的な実施形態によると、抵抗およびリアクタンスはそれぞれ、複素インピーダンスの実数部および虚数部であり、非線形係数は、抵抗に影響を与える追加の実数パラメータである。一実施形態では、非線形係数値は、流れの局所速度、例えばライナーを横切る気流の第一の微分値に依存する。一実施形態によれば、流れの局所速度は、ライナーの壁に近い速度に関連する。
【0046】
図2Aは、実施形態を使用してインピーダンスを決定することができる、多孔板221および基礎となるセルの配列222を含むライナー形状220の例を示す。さらに、図2Bは、板221の上面図223であり、図2Cは、セルの配列222の上面図である。一実施形態では、ライナー形状220は、現実世界のライナーの一部分のデジタル表現を含むCADファイルに記憶される。一実施形態では、ユーザは、多孔板221の穴を形状の残りの部分から分離することによって、形状220を準備する。形状220は、方法100の工程101で受信され、ライナーの3Dコンピュータベースのモデルを定義するために使用され得る。
【0047】
図3Aは、一実施形態による3D数値実験のセットアップ330を示す。セットアップ330は、方法100の工程102で利用され得る3D数値実験のセットアップの例である。一実施形態では、セットアップ330は、3Dライナーモデル331をインポートし、チャネル332の床面にある多孔板を有する平坦なチャネル332内にモデル331を配置することによって作成される。チャネル332では、空気は、流入セクション333から流出334(グレージング流れケース、すなわち、ライナー上を移動して、ライナーの表面を「スクレイピング」する流れ)まで流れ方向に流れることができるか、または平均的な流れ移動はない(流れケースなし)。一実施形態では、固体トリップ335は、グレージング流れケースにおける乱流遷移を強制するために、ライナー331の上流に配置され得る。一実施形態によれば、固体トリップ335は、チャネル332内の段状構造である固体要素である。固体トリップ335は、チャネル332床の近くで流れに乱流を生成する。セットアップ330では、進行圧力波336は、ライナー331の上流で生成され、セットアップ330を使用して実施されるシミュレーション中に流れ方向に移動する。
【0048】
実験セットアップ330では、ライナー3Dモジュール331は、チャネルの流れ方向およびスパン方向の両方に沿った周期的な形状である。このモデル331は、より大きなライナーの一部分を表す。一実施形態によれば、ライナーモジュール331は、8~10個のセルを流れ方向にモデル化し、一方、スパン方向に沿って、最小1個のセルがモデル化される。
【0049】
セットアップ330はまた、ライナー331の上方に配置される、マイクロホン337の線形ラック、または他のこうした測定器具を含む。一実施形態により、マイクロホン番号および位置は、ユーザによって修正され得る。マイクロホン337の複数のラックも使用され得る。一実施形態は、中央チャネル332の高さで単一の線形ラック上に配置された100個のマイクロホン337を利用する。さらに、実施形態は、複数の線形ラック上のプローブ、例えばマイクロホンを利用することができることに留意されたい。
【0050】
図3Bは、別の実施形態による3D数値実験のセットアップ340の視覚的描写である。セットアップ340は、ライナー341およびチャネル342を含む。チャネル342は、様々な特性を有する要素から構成される。例えば、チャネル342は、入口343、出口344、自由滑り壁部分(摩耗、すなわち摩擦のない壁)345a~c、測定平面348、およびスポンジ領域(流れ粘度の高い領域)347a~bを含む。グレージング流れの場合、チャネル342は、非滑り壁部分(摩耗を有する壁)部分346a~bおよび固体トリップ349を含むように定義される。セットアップ330と同様に、セットアップ340では、進行圧力波350は、ライナー341の上流で生成され、セットアップ340を使用して実施されるシミュレーション中に流れ方向351に移動する。セットアップ340はまた、マイクロホン351の線形ラックを含む。
【0051】
実施形態では、チャネル、例えば、332および342の長さは、ライナー、例えば、331および341の前後の特定数の波(15+)を収容するように設定することができる。さらに、グレージング流れをシミュレーションする実施形態では、PowerFLOW(登録商標)シミュレーションがプロセスの開始時に実行され、ライナー上に開発された境界層を得る。セットアップ330および340は、特定の平面波形状で一度に単一の周波数のシミュレーションを実行するために使用され得る。一実施形態は、3Dシミュレーション結果ファイルにアクセスして操作することができる専用コード(OptydB_fieldmod)を介して、ライナーの上流に、例えば、331、341に、所与の圧力波、例えば、336、350を設定する。さらに、一実施形態では、追加された圧力波を有する3D流れ場のスナップショットが、音響実行の初期条件として使用される。
【0052】
一実施形態では、(例えば、方法100の工程102で)3D数値実験を行った後、(例えば、方法100の工程103で)縮約2Dモデルが導出される。図4Aは、図3Aのセットアップ330から導出された、一実施形態による、例示的な2Dモデル440を示す。モデル440は、図1の方法100の工程103で生成され得る環境モデルの実施例である。モデル440は、3Dモデルと類似のチャネル長さを有するチャネル441を含み、3Dライナー、例えば、331は、3Dライナーの同じ流れ方向の延長部およびライナーの音響効果をモデル化する境界インピーダンス条件442を有するパッチによって置き換えられる。2Dモデル440は、平均気流の効果を考慮するために、3Dシミュレーションから取られた時間平均速度、圧力、温度、および乱流場データセットを使用する(このデータセットは、流れなしのケースには必要とされない)。進行波443は、同じ周波数で、3Dのケースと同様に設定される。さらに、チャネル441は、例えば、圧力データを収集するためのマイクロホン444の線形ラックを含む。
【0053】
図4Bは、図3Bのセットアップ340を使用して生成された結果から導出された、一実施形態による、例示的な2Dモデル450を示す。モデル450は、標準部分452およびスポンジ領域453から構成されるチャネル451を含む。チャネル451は、入口454および出口455を有する。モデル450では、圧力波458が入口454に設定される。2Dモデル450は、3Dセットアップ340からのフィルタ341を壁パッチインピーダンス条件456で置き換える。さらに、チャネル451は、データを収集するためのマイクロホン457の線形ラックを含む。
【0054】
一実施形態では、2Dモデル、例えば、440および450は、長方形の要素メッシュによって表される。さらに、一実施形態によると、縮約2Dモデル(例えば、440、450)は、2Dチャネル内の音響波伝播を解決する有限要素方法(FEM)コード(OptydB_gfd)を使用することによって、音響の周波数領域で解決される。周波数領域で作業することは、ライナー、例えば、442、456の複素インピーダンス境界条件を使用することを可能にするものである。一実施形態によれば、シミュレーションは、一度に単一の周波数に対して実行され、インピーダンス境界条件(周波数領域)を利用してライナーをモデル化する。グレージング流れの場合、平均流れ場は、PowerFLOW(登録商標)シミュレーション(3Dシミュレーション)の時間平均結果を使用して、2Dメッシュ上で補間される。平面圧力波は、ドメインの入口に設定される。メッシュ解像度は、チャネル高さを100で割ったものと圧力波波長の1/30の間の最小値として定義される。
【0055】
図5は、一実施形態によるライナーのインピーダンス推測プロセス550のフローチャートである。プロセス550は、段階1、段階2および段階3という三つの段階を含む。段階1は、工程551~553を含む前処理段階である。段階2は、工程554を含む3Dシミュレーション段階であり、段階3は、工程555~558を含む。
【0056】
前処理(段階1)中、3D数値の実験的試験は、ライナー形状およびユーザによって指定された一連の入力パラメータに基づいて自動的に生成される。具体的には、段階1は、ライナー形状、すなわち、モデル、およびセットアップの流れ条件をインポートまたはその他の方法で定義することによって、工程551で開始する。工程552で、ライナーモデルはメッシュ化され、モデルの部品名は所与のガイドラインに従って割り当てられる。一実施形態では、ライナーモデルはメッシュ化され、モデルの部品名は、出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia CorporationによるSIMULIA PowerDELTA(登録商標)を使用して割り当てられる。次に、工程553で、ソルバー入力ファイルが構築される。工程553でソルバー入力ファイルを構築することは、デジタルモデル(モデル330など)を構築すること、およびデジタルモデルに基づいてソルバー入力ファイルを生成することを含む。一実施形態は、デジタルモデルを構築し、出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia CorporationによるSIMULIA PowerCASE(登録商標)内の機能を使用して、ソルバー入力ファイルを生成し、ここで、パイソンに基づく環境は、ライナーモデルを自動的にインポートし、シミュレーション実体を生成し、測定領域を設定し、SIMULIA PowerFLOW(登録商標)入力ファイルを生成するようにスクリプトされる。
【0057】
次いで、工程554で、3Dシミュレーションが、ローカルクラスタまたはリモートクラスタ(段階2)上で実施される。一実施形態によれば、SIMULIA PowerFLOW(登録商標)は、工程554でシミュレーションを実施するために使用される。シミュレーション(554)中に、圧力信号は、ライナーの上方に配置されたマイクロホンの線形ラック上に収集され、記録および記憶される。一実施形態は、出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia CorporationによるSIMULIA PowerACOUSTICS(登録商標)を使用して、このデータを収集する。
【0058】
3Dシミュレーションが完了すると(工程554)、段階3が開始する。工程555で、(工程554でのシミュレーションから生じる)3Dシミュレーションデータが処理される。工程555での処理は、各マイクロホン信号の複素フーリエ変換を計算することを含む。一実施形態によれば、フーリエ変換は、SIMULIA PowerACOUSTICS(登録商標)を使用して計算される。基準伝達関数は、工程555で、所定の関心のある周波数での各マイクロホンの複素音圧とラックの第一のマイクロホン(最も上流位置におけるもの)との間の比の基準から決定される。得られた曲線、すなわち、基準伝達関数は、(工程554で実施される)シミュレーションの対象となるライナーの上部を移動する圧力波の選択された周波数に対する強度の変化を測定する。
【0059】
工程555で基準伝達関数が得られると、プロセス550は、工程556に移動し、2D縮約モデル(例えば、440)が、3Dシミュレーションデータから構築される。次いで、工程557で、最適化ループが開始され、ここで、いくつかのシミュレーションが、(工程556で生成される)2D縮約モデルを使用して提出される。一実施形態によれば、最適化ループは、周波数領域で一連の2Dシミュレーションを実行して、2Dモデルからの結果を用いて3Dモデルを使用して生成されたPowerFLOW(登録商標)の結果から計算された伝達関数と一致させる。
【0060】
抵抗およびリアクタンスは、ライナーの複素インピーダンスの実数部および虚数部である。工程557で実装される最適化ループは、これら2つの量を第三のパラメータ、すなわち、非線形係数値と一緒に独立して修正して、縮約モデル(すなわち、2Dモデル)のライナーのインピーダンスを偏向することによって機能する。一実施形態によれば、この第三のパラメータは、ライナーを横切る流れの第一の速度の微分値に依存する追加のインピーダンス係数である。一実施形態によれば、速度は、局所速度、例えば、ライナーの壁に近い流れの速度である。一実施形態では、第三のパラメータは、特定のライナーのレイアウトに対して無視できない非線形効果をある程度考慮するために使用される。抵抗、リアクタンス、および非線形係数の初期推測値から、(最適化ループ557の)各最適化工程で、ライナーをモデル化する境界条件が変更され、伝達関数が再評価される。このプロセスは、(工程554からの3Dシミュレーションデータに基づいて工程555で生成される)基準伝達関数と、縮約モデルからの伝達関数との間の誤差が指定された閾値を下回るまで継続する。これが発生すると、最適化ループ557は、工程558で収束されたと見なされ、縮約モデルにおける境界条件として使用されるインピーダンスの最後の値は、元の3Dライナー等価インピーダンスとして仮定される。
【0061】
図示されたプロセス550は、所与の周波数に対するライナーのインピーダンスを提供することに留意されたい。このように、プロセス550は、追加的な関心のある周波数それぞれに対して繰り返され得る。さらに、方法550の実施形態では、標準的なSIMPLEXアルゴリズムは、例えば、工程557で、段階3で使用され得る。SIMPLEXは、堅牢かつ単純であるが、任意のマルチパラメータ最適化アルゴリズムは、実施形態で実装され得る。
【0062】
実施形態、例えば、プロセス550は、入力パラメータを利用することができる。以下の表1は、実施形態によって使用され得る例示的な入力パラメータを列挙する。表1は、段階1で使用されるパラメータの例示的なセット、例えば、プロセス550の工程551~553を表す。
【0063】
【表1】
【0064】
図6は、一実施形態によるインピーダンス推測方法660の概略図である。プロセス660は、3D数値実験セットアップ661を使用して、基準伝達関数662を生成することによって開始する。3D数値実験セットアップ661はまた、2D縮約モデル663を生成するために使用される。2Dモデル663は、インピーダンス値を有する境界条件を有し、このモデル663は、縮約モデルの伝達関数664を決定するために使用される。基準伝達関数662および縮約モデルの伝達関数664を比較して665、伝達関数662および伝達関数664が一致するかどうかを決定する。伝達関数(662および644)が一致する場合、インピーダンスが見出される666。具体的には、伝達関数662に一致する伝達関数664を生成するために使用される縮約モデル663のインピーダンス値は、ライナーのインピーダンスである。しかしながら、関数662および664によって示されるインピーダンスが、工程665で一致しないと判断される場合、プロセス660は、ライナーのインピーダンスが修正される工程667に移動する。この修正された667インピーダンスは、モデル663で使用され、プロセス660は、工程665で一致が見つかるまで継続する。
【0065】
一実施形態では、OptydB_gfd FEMソルバーは、ライナーをモデル化するときに追加のパラメータを処理することができる。この追加のパラメータは、壁近くの速度の第一の微分値に比例する非線形寄与を追加する係数である。次いで、こうした実施形態は、(1)ライナーの抵抗、(2)ライナーのリアクタンス、および(3)ライナーの非線形係数という3つのパラメータを修正することによって、基準伝達関数(例えば、662)と縮約モデルの伝達関数(例えば、664)との間の誤差を最小化することによって機能する。
【0066】
実施形態はまた、グレージング流れがあるケースを処理することができる。図7Aは、一実施形態によるグレージング流れ2Dの実験セットアップ770の視覚化である。セットアップ770は、ライナー771およびチャネル772を含む。チャネル772は、様々な特性を有する要素から構成される。より具体的には、チャネル772は、入口773、出口774、自由滑り壁部分775a~c、非滑り壁部分776a~b、スポンジ領域777a~b、および固体トリップ778を含む。ライナー771からの上流にある時間平均壁境界層速度プロファイル779が、プロセスへの入力で与えられる。
【0067】
グレージング流れのケースでは、一実施形態は、所与の速度プロファイル779に一致するように、ライナー771から固体トリップ778の距離を自動的に計算する。さらに、チャネル床の近傍のメッシュ解像度は、トリップ778とライナー771との間の境界層を解決するのに十分に精密化される。こうした実施形態はまた、プロセスの開始時に追加の流れ収束シミュレーションを実行して、初期フィールドデータを取得してもよい。
【0068】
図7Bは、ライナー上のグレージング流れの視覚化780である。視覚化780は、自由滑り上板781、固体トリップ782、および乱流783を示す。
【0069】
一実施形態は、汎用ライナーのインピーダンスを計算するための完全に自動プロセスを提供する。一実施形態による例示的なプロセスは、(1)ライナーの周期的3Dモジュールを使用して仮想試験モデルを生成する工程と、(2)3D高忠実度CFD分析を実行する工程と、(3)元のライナーのインピーダンスに一致するように、2D縮約モデルを使用して最適化ループを実行する工程と、という3つの工程に分割される。一実施形態によれば、3Dモデルと縮約2Dモデルとの間の一致は、両方の場合に測定される特定の伝達関数の類似性の程度によって測定される。
【0070】
実施形態は、前述の三つの工程の完全な自動化の実行を可能にする。さらに、実施形態は、コンピュータクラスタ上で実行され、元のライナーの高忠実度の音響シミュレーションで現実世界の実験的試験を置き換えることができる。こうした完全に計算されたプロセスは、ライナーのインピーダンスを決定するために通常必要とされる、時間のかかる複雑な実験的試験を置き換えることができる。
【0071】
例示的な実施形態は、任意に複雑なライナーの等価インピーダンスを計算するためのコンピュータ実装自動方法論を対象とする。こうした実施形態は、ライナーが平坦なチャネルの床上に取り付けられ、グレージング流れおよび進行圧力波を有する、仮想試験環境における三次元ライナー形状のデジタル化された表現を含むファイルをインポートする。次いで、こうした実施形態は、ライナーの上方に配置された一連のマイクロホンに沿って伝達関数を計算するために、高忠実度CFDシミュレーションを実施する。次に、以前にシミュレーションされた3D数値試験環境と同等である縮約2Dモデルが生成される。2Dモデルでは、ライナーは、音響インピーダンス境界条件によって置き換えられる。続行するには、いくつかの短いシミュレーションが、ライナーのインピーダンスが3Dシミュレーションから得られた基準伝達関数に一致するように調整される、最適化ループにおける縮約モデルを使用して実施される。
【0072】
一実施形態では、ファイルをインポートすることは、元のライナーCADモデルを読み取ることと、ライナーの主要部分を名前(例えば、ライナー表面および多孔板の穴)で識別することと、計算的な表面メッシュを生成することと、ライナーメッシュ要素の座標にアクセスすることによってライナーの前述の主要部品の寸法を得ることと、を含む。さらに、一実施形態は、ライナーの周りにチャネル、測定面および点、ならびにチャネルサブドメインなどの付随的な仮想実体を生成して、ライナーがチャネル床面上にある平坦なチャネルを含む3D仮想試験環境を作り出す。仮想試験セットアップの一部として、流れ条件は、(i)ユーザ入力、および(ii)ライナー上のグレージング流れおよびチャネル内の進行圧力波の両方を生成することができる境界条件に基づいて、設定することができる。さらに、インポート中の処理の一部として、CFDソルバー入力ファイルを生成することができる。
【0073】
別の実施形態によれば、CFDシミュレーションを実施することは、
スケジューリングシステムを使用して、リモートクラスタまたはローカルクラスタ上で単一または複数の実行を提出することと、集中型記憶メモリを使用して、後続の後処理のために3Dエンジンシミュレーションによって生成されたデータを記憶することと、を含む。
【0074】
さらに、一実施形態では、縮約2Dモデルを生成することは、スクリプトまたは他のこうした自動手順を実行して、3Dソルバー入力ファイルを読み、3Dソルバー入力ファイルから2D縮約モデルを生成することを含む。生成された2D縮約モデルでは、ライナーは、所与のインピーダンス境界条件を有する表面パッチによって置き換えられる。
【0075】
一実施形態では、スクリプトまたは代替的な自動化プロセスを実行することによって実施される前述の2Dシミュレーションは、以前に生成された2D縮約モデルを使用してシミュレーションを実行する、縮約モデルのライナー伝達関数を計算する、ライナーの基準伝達関数と縮約モデルの伝達関数との間の誤差に基づいて新しい一時的インピーダンス値を識別することができる最適化アルゴリズムを実装する、誤差が所与の閾値を下回るときに、元の3Dライナー等価インピーダンスを定義するように、最適化ループの収束を宣言することと、を行うことができるスクリプトまたはプロセスを使用する。
【0076】
有利なことに、実施形態は、自動的な方法でライナーのインピーダンス計算を実行することができ、これは、一実施形態によると、実施形態を実装するために利用されるツールから、および本明細書に提示される提案される方法論から生じる。
【0077】
さらに、実施形態は、正確なライナーのインピーダンス値を得るために必要なコストおよび時間を低減する。
【0078】
実施形態は、現実世界に存在するライナーのインピーダンスを決定することができる。こうした実施形態では、現実世界のライナーは分析、例えば、測定され、結果は、実施形態で使用されるモデルを構築するために使用される。このようにして、こうした実施形態は、現実世界のライナーのインピーダンスを決定することができる。
【0079】
さらに、実施形態の結果を使用して、複数の異なるライナー候補の中から選択することができる。例えば、複数の現実世界のライナーは、実施形態を使用して評価することができ、各ライナーの決定されたインピーダンスに基づいて、複数の中から所与のライナーを選択することができ、例えば、インピーダンス要件を満たすライナーを選択することができる。さらに、こうしたライナーは、別の現実世界の物体、例えば、ジェットエンジンに組み込まれ得る。さらに、ライナーのインピーダンスを決定した後、実施形態は、現実世界の用途のために前記ライナーを製造できる。
【0080】
コンピュータサポート
図8は、本明細書に記載の本発明の任意の様々な実施形態を実装するために使用され得るコンピュータベースのシステム880の簡略化ブロック図である。システム880は、バス883を備える。バス883は、システム880の様々な構成要素間の相互接続として機能する。バス883に接続されるのは、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカなどの様々な入力および出力デバイスをシステム880に接続するための入力/出力デバイスインターフェース886である。中央処理装置(CPU)882は、バス883に接続され、実施形態、例えば、方法100、550、660などを実装するコンピュータ命令の実行を提供する。メモリ885は、本明細書の上記で前述した実施形態など、本明細書に記載する実施形態を実装するコンピュータ命令を実行するために使用されるデータ用の揮発性記憶装置を提供する。記憶装置884は、オペレーティングシステム(図示せず)および実施形態構成などのソフトウェア命令のための不揮発性記憶装置を提供する。システム880はまた、ワイドエリアネットワーク(WAN)およびローカルエリアネットワーク(LAN)を含む、当技術分野で既知の任意の様々なネットワークに接続するためのネットワークインターフェース881を備える。
【0081】
当然のことながら、本明細書に記載の例示的な実施形態は、多くの異なる方法で実装されてもよい。一部の実例では、本明細書に記載の様々な方法およびシステムは各々、コンピュータシステム880、または図9に関連して本明細書で以下に記載されるコンピュータ環境990などのコンピュータネットワーク環境などの物理的コンピュータ、仮想コンピュータ、またはハイブリッド型汎用コンピュータによって実装され得る。コンピュータシステム880は、例えば、CPU 882によって実行するために、メモリ885または不揮発性記憶装置884のいずれかにソフトウェア命令を読み込むことによって、本明細書に記載の方法(例えば、100、550、660)を実行するシステムに変換され得る。当業者であれば、システム880およびその様々な構成要素が、本明細書に記載される本発明の任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実施するように構成され得ることを、さらに理解するべきである。さらに、システム880は、システム880に内部または外部で動作可能に結合されたハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアモジュールの任意の組み合わせを利用して、本明細書に記載の様々な実施形態を実装し得る。
【0082】
図9は、本発明の実施形態を実装することができるコンピュータネットワーク環境990を示す。コンピュータネットワーク環境990では、サーバ991は、通信ネットワーク992を介してクライアント993a~nにリンクされる。環境990は、クライアント993a~nが、単独で、またはサーバ991と組み合わせて、本明細書に記載される実施形態のいずれかを実行することを可能にするために使用され得る。非限定的な例として、コンピュータネットワーク環境990は、クラウドコンピューティング実施形態、サービスとしてのソフトウェア(SAAS)実施形態などを提供する。
【0083】
実施形態またはその態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形態で実装されてもよい。ソフトウェアに実装される場合、ソフトウェアは、プロセッサがソフトウェアまたはその命令のサブセットを読み込むことを可能にするように構成された任意の非一時的コンピュータ可読媒体上に格納され得る。次に、プロセッサは命令を実行し、装置を動作するか、または本明細書に記載の方法で動作させるように構成される。
【0084】
さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、データプロセッサの特定の動作および/または機能を実行するものとして本明細書に記述されてもよい。しかしながら、当然のことながら、本明細書に包含されるこうした記述は単に便宜上のものであり、こうした動作は実際には、計算装置、プロセッサ、コントローラ、またはファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行する他の装置に起因する。
【0085】
当然のことながら、フロー図、ブロック図、およびネットワーク図は、より多くまたはより少ない要素を含んでもよく、異なるように配置されてもよく、または異なるように表されてもよい。しかし、さらに当然のことながら、特定の実装は、ブロック図およびネットワーク図、ならびに実施形態の実行を示すブロック図およびネットワーク図の数を特定の方法で実装することができる。
【0086】
したがって、さらなる実施形態はまた、様々なコンピュータアーキテクチャ、物理的コンピュータ、仮想コンピュータ、クラウドコンピュータ、および/またはいくつかのそれらの組み合わせに実装されてもよく、したがって、本明細書に記載のデータプロセッサは、実施形態を制限するものとしてではなく、例示のみを目的としている。
【0087】
本明細書に引用されるすべての特許、公開された出願、および参考文献の教示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0088】
例示的な実施形態が特に示され、説明されてきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更をその中に行うことができることを理解するであろう。
【0089】
例えば、図中の実施形態の前述の説明および詳細は、例示の目的で、出願人-譲受人(Dassault Systemes Simulia Corporation)およびDassault Systemes、ツールおよびプラットフォームを参照するが、制限するものではない。その他の類似のツールおよびプラットフォームが適切である。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
【外国語明細書】