(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155930
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/38 20060101AFI20241024BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241024BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241024BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241024BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241024BHJP
H03F 3/70 20060101ALI20241024BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20241024BHJP
H03F 1/26 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H03F3/38
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H01L27/04 C
H03F3/70
H03F3/34 210
H03F1/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024133916
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2021541746の分割
【原出願日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2019156546
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(57)【要約】
【課題】アンプを有し、その精度を向上させた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、スイッチ、容量、チョッピング回路、及びアンプを有する。アンプは、非反転入力端子、反転入力端子、反転出力端子、及び非反転出力端子を有し、半導体装置は、スイッチと容量を用いて、第一の期間に入力された第一の電位及び第二の電位をサンプリング、及び保持する機能を有する。チョッピング回路は、アンプの入力端子側と出力端子側のそれぞれに設けられ、第一の電位及び第二の電位は、第二の期間において、それぞれ非反転入力端子及び反転入力端子のどちらかに入力される。第三の期間において、第一の電位及び第二の電位は、非反転入力端子及び反転入力端子のうち第二の期間とは異なる入力端子に入力される。反転出力端子と非反転出力端子に対しても同様に、第二の期間と第三の期間においてチョッピング回路による入れ替えが行われ、半導体装置から出力される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチと、
第一及び第二容量と、
第一及び第二チョッピング回路と、
アンプと、
第一及び第二入力端子と、
第一及び第二出力端子と、を有する半導体装置であって、
前記アンプは、非反転入力端子と、反転入力端子と、反転出力端子と、非反転出力端子とを有し、
前記半導体装置は、第一期間において、前記第一入力端子と前記第一容量の一方の端子とを電気的に接続、前記第二入力端子と前記第二容量の一方の端子とを電気的に接続、前記第一容量の他方の端子と前記第一出力端子とを電気的に接続、及び前記第二容量の他方の端子と前記第二出力端子とを電気的に接続し、
前記第一チョッピング回路は、前記第一期間において、前記第一容量の他方の端子と前記非反転入力端子とを電気的に接続、及び前記第二容量の他方の端子と前記反転入力端子とを電気的に接続し、
前記第二チョッピング回路は、前記第一期間において、前記反転出力端子と前記第一出力端子とを電気的に接続、及び前記非反転出力端子と前記第二出力端子とを電気的に接続し、
前記半導体装置は、第二期間において、前記第一容量の一方の端子と前記第一出力端子とを電気的に接続、前記第二容量の一方の端子と前記第二出力端子とを電気的に接続し、
前記第一チョッピング回路は、前記第二期間において、前記第一容量の他方の端子と前記非反転入力端子とを電気的に接続、及び前記第二容量の他方の端子と前記反転入力端子とを電気的に接続し、
前記第二チョッピング回路は、前記第二期間において、前記反転出力端子と前記第一出力端子とを電気的に接続、及び前記非反転出力端子と前記第二出力端子とを電気的に接続し、
前記半導体装置は、第三期間において、前記第一容量の一方の端子と前記第一出力端子とを電気的に接続、前記第二容量の一方の端子と前記第二出力端子とを電気的に接続し、
前記第一チョッピング回路は、前記第三期間において、前記第一容量の他方の端子と前記反転入力端子とを電気的に接続、及び前記第二容量の他方の端子と前記非反転入力端子とを電気的に接続し、
前記第二チョッピング回路は、前記第三期間において、前記非反転出力端子と前記第一出力端子とを電気的に接続、及び前記反転出力端子と前記第二出力端子とを電気的に接続し、
前記スイッチ、前記第一チョッピング回路、及び前記第二チョッピング回路は、トランジスタを有し、
前記トランジスタは、それぞれチャネル形成領域にIn酸化物を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及びその動作方法に関する。特に、アンプ(増幅回路、ともいう)を有し、その精度を向上させた半導体装置に関する。
【0002】
本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置のことであり、例えば、半導体素子(トランジスタ、ダイオード、フォトダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等のことである。また、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般のことであり、例えば、集積回路、集積回路を備えたチップや、パッケージにチップを収納した電子部品、集積回路を備えた電子機器は、半導体装置の一例である。
【0003】
なお、本発明の一形態は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一形態は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0004】
半導体回路技術の一つとして、スイッチ(スイッチング素子、ともいう)と容量(容量素子、ともいう)を組み合わせ、当該容量への充放電をスイッチによって制御するスイッチトキャパシタ回路が知られている。スイッチトキャパシタ回路は、電気特性の温度依存性が小さく、半導体回路内の抵抗(抵抗素子、ともいう)と置き換えて用いることができるため、温度依存性の小さな半導体装置を実現することができる。
【0005】
また、スイッチトキャパシタ回路とアンプを組み合わせて用いる技術が知られている(非特許文献1、参照)。スイッチトキャパシタ回路とアンプを組み合わせた半導体装置(スイッチトキャパシタアンプ、ともいう)は、当該半導体装置に入力される信号(電位)をサンプリングし、容量に保持することで、精度の高いアンプを実現することができる。
【0006】
一方、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物半導体または金属酸化物を有するトランジスタ(酸化物半導体トランジスタ、OS(Oxide Semiconductor)トランジスタ、ともいう)が注目されている。OSトランジスタは、トランジスタがオフ状態にあるときのドレイン電流(オフ電流、ともいう)が非常に小さい(例えば、非特許文献2、3、参照)特性を有し、例えば、OSトランジスタをDRAMのメモリセルに用いることで、容量素子に蓄積した電荷を長時間保持することができる。
【0007】
酸化物半導体では、単結晶でも非晶質でもないCAAC(c-axis aligned crystalline)構造、およびnc(nanocrystalline)構造が見出されている(非特許文献2及び非特許文献4、参照)。非特許文献2及び非特許文献4では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Behzad Razavi,黒田忠広 監訳,「アナログCMOS集積回路の設計 応用編」,丸善出版,2003年3月,p.495-498
【非特許文献2】S.Yamazaki et al.,“Properties of crystalline In-Ga-Zn-oxide semiconductor and its transistor characteristics,” Jpn.J.Appl.Phys.,vol.53,04ED18(2014).
【非特許文献3】K.Kato et al.,“Evaluation of Off-State Current Characteristics of Transistor Using Oxide Semiconductor Material, Indium-Gallium-Zinc Oxide,”Jpn.J.Appl.Phys.,vol.51,021201(2012).
【非特許文献4】S. Yamazaki et al., “SID Symposium Digest of Technical Papers”, 2012, volume 43, issue 1, p.183-186
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、非反転入力端子と反転入力端子を有するアンプにおいて、非反転入力端子と反転入力端子との電位差が0Vであっても出力されるオフセット電圧、パワーが周波数に反比例しフィルタでの除去が難しい1/fノイズ、熱エネルギーによって自由電子が不規則に動くことによって生じる熱雑音など、スイッチトキャパシタアンプが入力される信号をサンプリングし、容量に保持している期間においても、アンプ起因のノイズが出力に重畳されてしまい、その除去が難しいという問題があった。
【0010】
本発明の一形態は、アンプ起因のノイズが出力に与える影響を軽減したスイッチトキャパシタアンプを提供することを課題の一つとする。または、本発明の一形態は、アンプを有する半導体装置であって、アンプ起因のノイズが出力に与える影響を軽減した半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一形態は、アンプを有する半導体装置であって、アンプの精度を高めた半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0011】
なお、本発明の一形態は、必ずしも上記の課題の全てを解決する必要はなく、少なくとも一つの課題を解決できるものであればよい。また、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。これら以外の課題は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から自ずと明らかになるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態は、スイッチと、第一及び第二容量と、第一及び第二チョッピング回路と、アンプと、第一及び第二入力端子と、第一及び第二出力端子とを有する半導体装置である。アンプは、非反転入力端子と、反転入力端子と、反転出力端子と、非反転出力端子とを有する。第一期間において、半導体装置は、第一入力端子と第一容量の一方の端子とを電気的に接続、第二入力端子と第二容量の一方の端子とを電気的に接続、第一容量の他方の端子と第一出力端子とを電気的に接続、及び第二容量の他方の端子と第二出力端子とを電気的に接続し、第一チョッピング回路は、第一容量の他方の端子と非反転入力端子とを電気的に接続、及び第二容量の他方の端子と反転入力端子とを電気的に接続し、第二チョッピング回路は、反転出力端子と第一出力端子とを電気的に接続、及び非反転出力端子と第二出力端子とを電気的に接続する。第二期間において、半導体装置は、第一容量の一方の端子と第一出力端子とを電気的に接続、第二容量の一方の端子と第二出力端子とを電気的に接続し、第一チョッピング回路は、第一容量の他方の端子と非反転入力端子とを電気的に接続、及び第二容量の他方の端子と反転入力端子とを電気的に接続し、第二チョッピング回路は、反転出力端子と第一出力端子とを電気的に接続、及び非反転出力端子と第二出力端子とを電気的に接続する。第三期間において、半導体装置は、第一容量の一方の端子と第一出力端子とを電気的に接続、第二容量の一方の端子と第二出力端子とを電気的に接続し、第一チョッピング回路は、第一容量の他方の端子と反転入力端子とを電気的に接続、及び第二容量の他方の端子と非反転入力端子とを電気的に接続し、第二チョッピング回路は、非反転出力端子と第一出力端子とを電気的に接続、及び反転出力端子と第二出力端子とを電気的に接続する。
【0013】
また、上記形態において、スイッチ、第一チョッピング回路、及び第二チョッピング回路は、トランジスタを有し、トランジスタは、それぞれチャネル形成領域に金属酸化物を有する。
【0014】
また、本発明の一形態は、スイッチと、第一及び第二容量と、第一及び第二チョッピング回路と、アンプと、第一及び第二入力端子と、第一及び第二出力端子とを有する半導体装置の動作方法である。アンプは、非反転入力端子と、反転入力端子と、反転出力端子と、非反転出力端子とを有する。第一期間において、半導体装置は、第一入力端子と第一容量の一方の端子とを電気的に接続、第二入力端子と第二容量の一方の端子とを電気的に接続、第一容量の他方の端子と第一出力端子とを電気的に接続、及び第二容量の他方の端子と第二出力端子とを電気的に接続し、第一チョッピング回路は、第一容量の他方の端子と非反転入力端子とを電気的に接続、及び第二容量の他方の端子と反転入力端子とを電気的に接続し、第二チョッピング回路は、反転出力端子と第一出力端子とを電気的に接続、及び非反転出力端子と第二出力端子とを電気的に接続する。第二期間において、半導体装置は、第一容量の一方の端子と第一出力端子とを電気的に接続、第二容量の一方の端子と第二出力端子とを電気的に接続し、第一チョッピング回路は、第一容量の他方の端子と非反転入力端子とを電気的に接続、及び第二容量の他方の端子と反転入力端子とを電気的に接続し、第二チョッピング回路は、反転出力端子と第一出力端子とを電気的に接続、及び非反転出力端子と第二出力端子とを電気的に接続する。第三期間において、半導体装置は、第一容量の一方の端子と第一出力端子とを電気的に接続、第二容量の一方の端子と第二出力端子とを電気的に接続し、第一チョッピング回路は、第一容量の他方の端子と反転入力端子とを電気的に接続、及び第二容量の他方の端子と非反転入力端子とを電気的に接続し、第二チョッピング回路は、非反転出力端子と第一出力端子とを電気的に接続、及び反転出力端子と第二出力端子とを電気的に接続する。
【0015】
また、上記形態において、スイッチ、第一チョッピング回路、及び第二チョッピング回路は、トランジスタを有し、トランジスタは、それぞれチャネル形成領域に金属酸化物を有する。
【0016】
また、本発明の一形態は、第一乃至第六スイッチと、第一及び第二容量と、第一及び第二チョッピング回路と、アンプと、第一及び第二入力端子と、第一及び第二出力端子とを有する半導体装置である。アンプは、非反転入力端子と、反転入力端子と、反転出力端子と、非反転出力端子とを有し、第一チョッピング回路は、第一乃至第四端子を有し、第二チョッピング回路は、第五乃至第八端子を有する。第一入力端子は、第一スイッチの一方の端子と電気的に接続され、第二入力端子は、第二スイッチの一方の端子と電気的に接続され、第一スイッチの他方の端子は、第三スイッチの一方の端子、及び第一容量の一方の端子と電気的に接続され、第二スイッチの他方の端子は、第四スイッチの一方の端子、及び第二容量の一方の端子と電気的に接続され、第一容量の他方の端子は、第五スイッチの一方の端子、及び第一端子と電気的に接続され、第二容量の他方の端子は、第六スイッチの一方の端子、及び第二端子と電気的に接続される。第三端子は、非反転入力端子と電気的に接続され、第四端子は、反転入力端子と電気的に接続され、反転出力端子は、第五端子と電気的に接続され、非反転出力端子は、第六端子と電気的に接続され、第七端子は、第三スイッチの他方の端子、第五スイッチの他方の端子、及び第一出力端子と電気的に接続され、第八端子は、第四スイッチの他方の端子、第六スイッチの他方の端子、及び第二出力端子と電気的に接続される。第一期間において、第一チョッピング回路は、第一端子と第三端子を導通状態とする機能、及び第二端子と第四端子を導通状態とする機能を有し、第二チョッピング回路は、第五端子と第七端子を導通状態とする機能、及び第六端子と第八端子を導通状態とする機能を有する。第二期間において、第一チョッピング回路は、第一端子と第四端子を導通状態とする機能、及び第二端子と第三端子を導通状態とする機能を有し、第二チョッピング回路は、第五端子と第八端子を導通状態とする機能、及び第六端子と第七端子を導通状態とする機能を有する。
【0017】
また、上記形態において、第一乃至第六スイッチ、第一チョッピング回路、及び第二チョッピング回路は、トランジスタを有し、トランジスタは、それぞれチャネル形成領域に金属酸化物を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一形態により、アンプ起因のノイズが出力に与える影響を軽減したスイッチトキャパシタアンプを提供することができる。または、本発明の一形態により、アンプを有する半導体装置であって、アンプ起因のノイズが出力に与える影響を軽減した半導体装置を提供することができる。または、本発明の一形態により、アンプを有する半導体装置であって、アンプの精度を高めた半導体装置を提供することができる。
【0019】
なお、上記の効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。また、本発明の一形態は、必ずしも上記の効果の全てを有する必要はなく、少なくとも一つの効果を有するものであればよい。これら以外の効果は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から自ずと明らかになるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図2Aは、チョッピング回路を表すシンボルを示す図である。
図2Bは、チョッピング回路の構成例を示す回路図である。
図2Cは、アンプを表すシンボルを示す図である。
図2Dは、アンプの構成例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、半導体装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図7】
図7Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図7B、
図7Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
【
図8】
図8Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図8B、
図8Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
【
図9】
図9Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図9B、
図9Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
【
図16】
図16Aは、IGZOの結晶構造の分類を説明する図である。
図16Bは、CAAC-IGZO膜のXRDスペクトルを説明する図である。
図16Cは、CAAC-IGZO膜の極微電子線回折パターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
また、以下に示される複数の実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
なお、本明細書に添付した図面では、構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとしてブロック図を示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0024】
また、図面等において、大きさ、層の厚さ、領域等は、明瞭化のため誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。
【0025】
また、図面等において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0026】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0027】
また、本明細書等において、「上」や「下」などの配置を示す用語は、構成要素の位置関係が、「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0028】
また、本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0029】
また、本明細書等において、複数の要素に同じ符号を用いる場合、特にそれらを区別する必要があるときは、符号に、「_1」、「_2」、「[n]」、「[m,n]」等、識別用の符号を付して記載する場合がある。例えば、2番目の配線GLを、配線GL[2]と記載する。
【0030】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。また、「電気的に接続」と表現される場合であっても、実際の回路において、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
【0031】
また、本明細書等において、「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆も同様である。
【0032】
また、本明細書等において、電気回路における「端子」とは、電流または電位の入力(または、出力)や、信号の受信(または、送信)が行なわれる部位を言う。よって、配線または電極の一部が端子として機能する場合がある。
【0033】
一般に、「容量素子」は、2つの電極が絶縁体(誘電体)を介して向かい合う構成を有する。また、本明細書等において、「容量素子」は、2つの電極が絶縁体を介して向かい合う構成を有したもの以外に、2本の配線が絶縁体を介して向かい合う構成を有したもの、または、2本の配線が絶縁体を介して配置されたもの、である場合が含まれる。また、本明細書等において、「容量素子」を、「容量」、「コンデンサ」、または、「キャパシタ」、と呼ぶ場合がある。
【0034】
また、本明細書等において、「電圧」とは、ある電位と基準の電位(例えば、グラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位差とは言い換えることができる。
【0035】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ソースと、ドレインと、ゲートとを含む、少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ソース(ソース端子、ソース領域、または、ソース電極)とドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域、または、ドレイン電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0036】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを用いる場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等において、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0037】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型のトランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型のトランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。つまり、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流、という場合がある。
【0038】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソース電流をいう場合がある。また、オフ電流と同じ意味で、リーク電流という場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0039】
また、本明細書等において、オン電流とは、トランジスタがオン状態(導通状態、ともいう)にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0040】
また、本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体、を含む)、酸化物半導体などに分類される。
【0041】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、およびスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)と呼ぶことができる。すなわち、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタを、「酸化物半導体トランジスタ」、「OSトランジスタ」と呼ぶことができる。同様に、「酸化物半導体を用いたトランジスタ」も、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである。
【0042】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と呼称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。金属酸化物の詳細については後述する。
【0043】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一形態に係わる半導体装置の構成例および動作例について説明する。
【0044】
<半導体装置の構成例>
図1Aは、本発明の一形態に係わる半導体装置100の構成例を示すブロック図である。半導体装置100は、スイッチSW1_1、スイッチSW1_2、スイッチSW2_1、スイッチSW2_2、スイッチSW3_1、スイッチSW3_2、容量C11、容量C12、チョッピング回路20_1、チョッピング回路20_2、及びアンプ30を有する。
【0045】
また、半導体装置100は、入力端子INP、入力端子INM、出力端子OUTP、及び出力端子OUTMを有し、チョッピング回路20_1、チョッピング回路20_2、及びアンプ30は、それぞれ、第一端子乃至第四端子を有する。チョッピング回路20_1、チョッピング回路20_2、及びアンプ30が有する第一端子乃至第四端子については後述する。
【0046】
なお、本明細書等において、同様の機能を有する複数の要素を区別するために、「_1」あるいは[_2]などの符号が用いられる。すなわち、スイッチSW1_1、スイッチSW1_2について、任意のスイッチを指すときはスイッチSW1の符号を用いて説明し、1つを特定する必要があるときはスイッチSW1_1、またはスイッチSW1_2の符号を用いて説明する。
【0047】
また、本明細書等において、構成要素間の信号や電位の入出力を説明するために、「入力端子」、「出力端子」、「端子」といった表現を用いているが、実際の回路において「入力端子」、「出力端子」、「端子」といった物理的な接続部分は存在せず、配線または電極等によって電気的に接続されているだけの場合がある。
【0048】
半導体装置100において、入力端子INPは、スイッチSW1_1の一方の端子と電気的に接続され、入力端子INMは、スイッチSW1_2の一方の端子と電気的に接続され、スイッチSW1_1の他方の端子は、スイッチSW3_1の一方の端子及び容量C11の一方の端子と電気的に接続され、スイッチSW1_2の他方の端子は、スイッチSW3_2の一方の端子及び容量C12の一方の端子と電気的に接続される。
【0049】
容量C11の他方の端子は、スイッチSW2_1の一方の端子及びチョッピング回路20_1の第一端子と電気的に接続され、容量C12の他方の端子は、スイッチSW2_2の一方の端子及びチョッピング回路20_1の第二端子と電気的に接続され、チョッピング回路20_1の第三端子は、アンプ30の第一端子と電気的に接続され、チョッピング回路20_1の第四端子は、アンプ30の第二端子と電気的に接続される。
【0050】
アンプ30の第三端子は、チョッピング回路20_2の第一端子と電気的に接続され、アンプ30の第四端子は、チョッピング回路20_2の第二端子と電気的に接続され、チョッピング回路20_2の第三端子は、スイッチSW2_1の他方の端子、スイッチSW3_1の他方の端子、及び出力端子OUTMと電気的に接続され、チョッピング回路20_2の第四端子は、スイッチSW2_2の他方の端子、スイッチSW3_2の他方の端子、及び出力端子OUTPと電気的に接続される。
【0051】
<スイッチの構成例>
スイッチSW1は、例えば、トランジスタ11を用いて構成できる。
図1Bは、スイッチSW1を表すシンボルを示す図であり、
図1Cは、スイッチSW1の構成例を示す回路図である。なお、
図1B等では、スイッチSW1が有する2つの端子を、端子T11、端子T12と表記する。
【0052】
図1Cに示すように、スイッチSW1はトランジスタ11を有し、トランジスタ11のソースまたはドレインの一方は、端子T11と電気的に接続され、トランジスタ11のソースまたはドレインの他方は、端子T12と電気的に接続される。トランジスタ11のゲートには信号S1が入力され、スイッチSW1は、信号S1によって、導通状態または非導通状態が制御されるスイッチである。すなわち、信号S1がハイレベルの場合、端子T11と端子T12とが導通状態となり、信号S1がローレベルの場合、端子T11と端子T12とが非導通状態となる。
【0053】
スイッチSW2は、例えば、トランジスタ12を用いて構成できる。
図1Dは、スイッチSW2を表すシンボルを示す図であり、
図1Eは、スイッチSW2の構成例を示す回路図である。なお、
図1D等では、スイッチSW2が有する2つの端子を、端子T13、端子T14と表記する。スイッチSW2の構成例はスイッチSW1と同様のため、説明を省略する。スイッチSW2は、信号S2によって、導通状態または非導通状態が制御されるスイッチであり、信号S2がハイレベルの場合、端子T13と端子T14とが導通状態となり、信号S2がローレベルの場合、端子T13と端子T14とが非導通状態となる。
【0054】
スイッチSW3は、例えば、トランジスタ13を用いて構成できる。
図1Fは、スイッチSW3を表すシンボルを示す図であり、
図1Gは、スイッチSW3の構成例を示す回路図である。なお、
図1F等では、スイッチSW3が有する2つの端子を、端子T15、端子T16と表記する。スイッチSW3の構成例はスイッチSW1と同様のため、説明を省略する。スイッチSW3は、信号S3によって、導通状態または非導通状態が制御されるスイッチであり、信号S3がハイレベルの場合、端子T15と端子T16とが導通状態となり、信号S3がローレベルの場合、端子T15と端子T16とが非導通状態となる。
【0055】
<チョッピング回路の構成例>
チョッピング回路20は、例えば、トランジスタ21乃至トランジスタ24を用いて構成できる。
図2Aは、チョッピング回路20を表すシンボルを示す図であり、
図2Bは、チョッピング回路20の構成例を示す回路図である。
【0056】
図2A等では、チョッピング回路20が有する4つの端子を、端子T21乃至端子T24と表記する。なお、チョッピング回路20において、端子T21は、上述した第一端子に相当し、端子T22は、上述した第二端子に相当し、端子T23は、上述した第三端子に相当し、端子T24は、上述した第四端子に相当する。
【0057】
図2Bに示すように、チョッピング回路20はトランジスタ21乃至トランジスタ24を有し、端子T21は、トランジスタ21のソースまたはドレインの一方、及びトランジスタ22のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、端子T22は、トランジスタ23のソースまたはドレインの一方、及びトランジスタ24のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。端子T23は、トランジスタ21のソースまたはドレインの他方、及びトランジスタ24のソースまたはドレインの他方と電気的に接続され、端子T24は、トランジスタ23のソースまたはドレインの他方、及びトランジスタ22のソースまたはドレインの他方と電気的に接続される。
【0058】
トランジスタ21のゲート及びトランジスタ23のゲートには信号S4が入力され、トランジスタ21及びトランジスタ23は、信号S4によって導通状態または非導通状態が制御される。トランジスタ22のゲート及びトランジスタ24のゲートには信号S5が入力され、トランジスタ22及びトランジスタ24は、信号S5によって導通状態または非導通状態が制御される。
【0059】
なお、信号S5は、信号S4の反転信号である。信号S4がハイレベルの場合、信号S5はローレベルであり、信号S4がローレベルの場合、信号S5はハイレベルである。すなわち、信号S4がハイレベルの場合、端子T21と端子T23とが導通状態であり、端子T22と端子T24とが導通状態である。信号S4がローレベルの場合、端子T21と端子T24とが導通状態であり、端子T22と端子T23とが導通状態である。
【0060】
<トランジスタ1>
トランジスタ11乃至トランジスタ13、及びトランジスタ21乃至トランジスタ24には、OSトランジスタを用いることができる。酸化物半導体はバンドギャップが2eV以上であるため、オフ電流が非常に小さい特性を有する。OSトランジスタは、例えば、ソースとドレインとの間の電圧が10Vの状態で、チャネル幅1μmあたりに規格化されたオフ電流を10×10-21A(10ゼプトA)以下とすることが可能である。OSトランジスタの詳細については、実施の形態2および実施の形態3で説明する。
【0061】
また、OSトランジスタは、薄膜法などの手法を用いて形成できるため半導体基板上に積層して設けることができる、高温環境下でもオフ電流が増加しにくいため、例えばスイッチSW1乃至スイッチSW3を信頼性の高いスイッチとすることができる、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタと同様の製造装置を用いて作製できるため低コストでの作製が可能である、等の特徴を有する。
【0062】
トランジスタ11乃至トランジスタ13、及びトランジスタ21乃至トランジスタ24は、バックゲート(第2のゲート、ボトムゲート、ともいう)を有していてもよい。例えば、トランジスタ11がバックゲートを有する場合、トランジスタ11のバックゲートに所定の電位を印加することで、トランジスタ11のしきい値電圧を増減することができる。または、トランジスタ11のバックゲートを、トランジスタ11のゲート(バックゲートに対して、第1のゲート、トップゲート、フロントゲート、ともいう)と電気的に接続することで、トランジスタ11のオン電流を大きくすることができる。
【0063】
OSトランジスタのチャネル形成領域に用いられる金属酸化物は、少なくともIn、Ga、Sn、及びZnのうち1種類以上の元素を含有する酸化物であることが好ましい。このような酸化物として、In-Sn-Ga-Zn酸化物、In-Ga-Zn酸化物、In-Sn-Zn酸化物、In-Al-Zn酸化物、Sn-Ga-Zn酸化物、Al-Ga-Zn酸化物、Sn-Al-Zn酸化物、In-Zn酸化物、Sn-Zn酸化物、Al-Zn酸化物、Zn-Mg酸化物、Sn-Mg酸化物、In-Mg酸化物、In-Ga酸化物、In酸化物、Sn酸化物、Zn酸化物等を用いることができる。
【0064】
もしくは、トランジスタ11乃至トランジスタ13、及びトランジスタ21乃至トランジスタ24に、OSトランジスタ以外のトランジスタを用いてもよい。トランジスタ11乃至トランジスタ13、及びトランジスタ21乃至トランジスタ24には、オフ電流が小さなトランジスタが好ましく、例えば、チャネル形成領域にバンドギャップが大きい半導体を有するトランジスタを用いることができる。バンドギャップが大きい半導体とは、バンドギャップが2.2eV以上の半導体を指す場合があり、例えば、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ダイヤモンドなどが挙げられる。
【0065】
<アンプの構成例>
アンプ30は、例えば、トランジスタ31乃至トランジスタ39、及びトランジスタ41乃至トランジスタ44を用いて構成できる。
図2Cは、アンプ30を表すシンボルを示す図であり、
図2Dは、アンプ30の構成例を示す回路図である。
【0066】
図2C等では、アンプ30が有する4つの端子を、端子T31乃至端子T34と表記する。なお、アンプ30において、端子T31は、上述した第一端子に相当し、端子T32は、上述した第二端子に相当し、端子T33は、上述した第三端子に相当し、端子T34は、上述した第四端子に相当する。また、端子T31は、アンプ30の非反転入力端子としての性質を有することができ、端子T32は、アンプ30の反転入力端子としての性質を有することができ、端子T33は、アンプ30の反転出力端子としての性質を有することができ、端子T34は、アンプ30の非反転出力端子としての性質を有することができる。
【0067】
また、
図2Dに示すように、アンプ30は、端子T_VDD、端子T_BP、端子T_CP、端子T_COM、端子T_CN、及び端子T_BNを有する。
【0068】
図2Dに示すように、アンプ30は、トランジスタ31乃至トランジスタ39、及びトランジスタ41乃至トランジスタ44を有し、トランジスタ31のソースまたはドレインの一方は、端子T_VDDと電気的に接続され、トランジスタ31のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ32のソースまたはドレインの一方、トランジスタ33のソースまたはドレインの一方、トランジスタ34のソースまたはドレインの一方、及びトランジスタ35のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。
【0069】
トランジスタ32のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ41のソースまたはドレインの一方、及びトランジスタ43のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタ33のソースまたはドレインの他方は、基準の電位が供給される配線と電気的に接続される。トランジスタ34のソースまたはドレインの他方は、基準の電位が供給される配線と電気的に接続され、トランジスタ35のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ42のソースまたはドレインの一方、及びトランジスタ44のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。
【0070】
トランジスタ36のソースまたはドレインの一方、及びトランジスタ37のソースまたはドレインの一方は、端子T_VDDと電気的に接続され、トランジスタ36のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ38のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタ37のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ39のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ38のソースまたはドレインの他方は、端子T33及びトランジスタ41のソースまたはドレインの他方と電気的に接続され、トランジスタ39のソースまたはドレインの他方は、端子T34及びトランジスタ42のソースまたはドレインの他方と電気的に接続され、トランジスタ43のソースまたはドレインの他方、及びトランジスタ44のソースまたはドレインの他方は、基準の電位が供給される配線と電気的に接続される。
【0071】
また、トランジスタ31のゲート、トランジスタ36のゲート、及びトランジスタ37のゲートは、端子T_BPと電気的に接続され、トランジスタ38のゲート、及びトランジスタ39のゲートは、端子T_CPと電気的に接続され、トランジスタ32のゲートは、端子T31と電気的に接続され、トランジスタ35のゲートは、端子T32と電気的に接続される。トランジスタ33のゲート、及びトランジスタ34のゲートは、端子T_COMと電気的に接続され、トランジスタ41のゲート、及びトランジスタ42のゲートは、端子T_CNと電気的に接続され、トランジスタ43のゲート、及びトランジスタ44のゲートは、端子T_BNと電気的に接続される。
【0072】
なお、端子T_VDDには電源電位VDDが入力され、端子T_BP、端子T_CP、端子T_COM、端子T_CN、及び端子T_BNには、それぞれアンプ30の動作を調整するバイアス電位が入力される。例えば、端子T_COMには、端子T31と端子T32に入力される電位の中心電位を入力することが好ましい。
【0073】
<トランジスタ2>
トランジスタ31乃至トランジスタ39、及びトランジスタ41乃至トランジスタ44には、半導体基板に形成されたトランジスタを用いることができる。半導体基板は、トランジスタのチャネル領域を形成することが可能であれば、特に限定されない。例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、化合物半導体基板(SiC基板、GaN基板など)、SOI(Silicon on Insulator)基板などを用いることができる。
【0074】
SOI基板としては、例えば、鏡面研磨ウエハに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて形成されたSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)基板や、水素イオン注入により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開するスマートカット法、ELTRAN法(登録商標:Epitaxial Layer Transfer)などを用いて形成されたSOI基板を用いることができる。また、単結晶基板を用いて形成されたトランジスタは、チャネル形成領域に単結晶半導体を有する。
【0075】
本実施の形態では、半導体基板に単結晶シリコン基板を用いた例について説明する。単結晶シリコン基板に形成されたトランジスタを、「Siトランジスタ」と呼ぶ。なお、
図2Dに示したアンプ30の構成例において、トランジスタ31乃至トランジスタ39はpチャネル型であり、トランジスタ41乃至トランジスタ44はnチャネル型である。
【0076】
<半導体装置の動作例>
図3は、半導体装置100の動作例を示すタイミングチャートである。
図3に示すタイミングチャートは、時刻T1乃至時刻T10における、信号S1乃至信号S5の電位状態(ハイレベルまたはローレベル)を表している。
【0077】
時刻T1において、信号S1及び信号S2がローレベルからハイレベルへと変化する。信号S3及び信号S5はローレベルのままであり、信号S4はハイレベルのままである。すなわち、スイッチSW1及びスイッチSW2は導通状態であり、スイッチSW3は非導通状態である。時刻T1から時刻T2の期間において、入力端子INP及び入力端子INMに入力された電位のサンプリングが行われる。
【0078】
サンプリングが行われることで、容量C11の一方の端子に電荷+Q11が蓄えられるとすると、容量C11の他方の端子には電荷-Q11が蓄えられる。容量C12も同様に、容量C12の一方の端子に電荷+Q12が蓄えられるとすると、容量C12の他方の端子には電荷-Q12が蓄えられる。
【0079】
なお、時刻T1から時刻T5の期間において、チョッピング回路20_1及びチョッピング回路20_2は、第一端子と第三端子が導通状態であり、第二端子と第四端子が導通状態である。時刻T1から時刻T2の期間における、スイッチSW1乃至スイッチSW3、チョッピング回路20_1、及びチョッピング回路20_2の状態を反映した、半導体装置100の等価回路を
図4Aに示す。
【0080】
この状態で、時刻T2において信号S2がハイレベルからローレベルへと変化すると、スイッチSW2は非導通状態となる。また、時刻T3において信号S1がハイレベルからローレベルへと変化すると、スイッチSW1は非導通状態となる。スイッチSW1及びスイッチSW2が非導通状態となることで、容量C11及び容量C12はフローティング状態(電気的に浮遊な状態)となる。
【0081】
時刻T4において信号S3がローレベルからハイレベルへと変化すると、スイッチSW3は導通状態となる。このとき、容量C11の一方の端子には電荷+Q11が、他方の端子には電荷-Q11が蓄えられたままであり、また、容量C12の一方の端子には電荷+Q12が、他方の端子には電荷-Q12が蓄えられたままである。そのため、出力端子OUTPに出力される電位から出力端子OUTMに出力される電位を引いた差は、時刻T1から時刻T2の期間において入力端子INPに入力された電位から入力端子INMに入力された電位を引いた差と、等しくなる。
【0082】
時刻T4から時刻T5の期間における、スイッチSW1乃至スイッチSW3、チョッピング回路20_1、及びチョッピング回路20_2の状態を反映した、半導体装置100の等価回路を
図4Bに示す。
【0083】
時刻T4から時刻T10の期間において、スイッチSW1及びスイッチSW2は非導通状態であり、スイッチSW3は導通状態である。時刻T5において、信号S4がハイレベルからローレベルへと変化し、信号S5がローレベルからハイレベルへと変化する。すなわち、時刻T5から時刻T6の期間において、チョッピング回路20_1及びチョッピング回路20_2は、第一端子と第四端子が導通状態であり、第二端子と第三端子が導通状態である。
【0084】
時刻T5から時刻T6の期間における、スイッチSW1乃至スイッチSW3、チョッピング回路20_1、及びチョッピング回路20_2の状態を反映した、半導体装置100の等価回路を
図4Cに示す。
【0085】
時刻T4から時刻T10の期間において、スイッチSW1乃至スイッチSW3の状態は変わらず、チョッピング回路20_1及びチョッピング回路20_2の状態が変化する。すなわち、時刻T4から時刻T5の期間、時刻T6から時刻T7の期間、及び時刻T8から時刻T9の期間において、チョッピング回路20_1及びチョッピング回路20_2は、第一端子と第三端子が導通状態であり、第二端子と第四端子が導通状態である。半導体装置100は、
図4Bに示す等価回路の状態となる。
【0086】
また、時刻T5から時刻T6の期間、時刻T7から時刻T8の期間、及び時刻T9から時刻T10の期間において、チョッピング回路20_1及びチョッピング回路20_2は、第一端子と第四端子が導通状態であり、第二端子と第三端子が導通状態である。半導体装置100は、
図4Cに示す等価回路の状態となる。
【0087】
<半導体装置>
上述のように、半導体装置100は、時刻T1から時刻T2の期間において、入力端子INP及び入力端子INMに入力された電位のサンプリングを行い、時刻T4から時刻T10の期間において、出力端子OUTP及び出力端子OUTMに電位を出力する。この時、出力端子OUTPに出力される電位から出力端子OUTMに出力される電位を引いた差は、入力端子INPに入力された電位から入力端子INMに入力された電位を引いた差と、等しくなる。
【0088】
また、時刻T4から時刻T5の期間、時刻T6から時刻T7の期間、及び時刻T8から時刻T9の期間において、チョッピング回路20_1は、容量C11の他方の端子とアンプ30の第一端子とを電気的に接続し(導通状態とし)、容量C12の他方の端子とアンプ30の第二端子とを電気的に接続する。同様に、チョッピング回路20_2は、アンプ30の第三端子と出力端子OUTMとを電気的に接続し、アンプ30の第四端子と出力端子OUTPとを電気的に接続する(
図4Bに示す等価回路の状態)。
【0089】
時刻T5から時刻T6の期間、時刻T7から時刻T8の期間、及び時刻T9から時刻T10の期間において、チョッピング回路20_1は、容量C11の他方の端子とアンプ30の第二端子とを電気的に接続し(導通状態とし)、容量C12の他方の端子とアンプ30の第一端子とを電気的に接続する。同様に、チョッピング回路20_2は、アンプ30の第三端子と出力端子OUTPとを電気的に接続し、アンプ30の第四端子と出力端子OUTMとを電気的に接続する(
図4Cに示す等価回路の状態)。
【0090】
すなわち、半導体装置100は、
図4Bに示す等価回路の状態と
図4Cに示す等価回路の状態を交互にとることで、例えば、アンプ30に起因するオフセット電圧の影響をキャンセルすることができる。また、例えば、アンプ30が有する入力端子の極性を入れ替えることで、アンプ30に起因する1/fノイズ、熱雑音などが出力に与える影響を軽減することができる。
【0091】
また、半導体装置100は、トランジスタ11乃至トランジスタ13、及びトランジスタ21乃至トランジスタ24に、OSトランジスタ等オフ電流が小さなトランジスタを用いることで、時刻T1から時刻T2の期間においてサンプリングした電位を長時間保持することができる。
【0092】
半導体装置100を用いることで、アンプ30に起因するオフセット電圧やノイズの影響を軽減した高精度なアンプを実現でき、また、サンプリングした電位を長時間保持することが可能となるため、半導体装置100は、例えば、出力インピーダンスが高いセンサ等の高精度計測に好適である。
【0093】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0094】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置100を構成する、トランジスタの構成例について説明する。本実施の形態では、単結晶シリコン基板に形成されたSiトランジスタを有する層の上方に、OSトランジスタを有する層が積層して設けられた構造を有する。
【0095】
<半導体装置の構成例>
図5に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500、および容量素子600を有する。
図6Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図6Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図6Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0096】
トランジスタ500は、例えば、上記実施の形態に示したトランジスタ21に相当し、トランジスタ500は第1のゲート(トップゲート、フロントゲート、または単に、ゲート、ともいう)に加えて、第2のゲート(ボトムゲート、バックゲート、ともいう)を有する。また、トランジスタ300は、アンプ30を構成するSiトランジスタに相当し、容量素子600は、例えば、容量C11に相当する。
【0097】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、オフ電流が非常に小さい特性を有するため、上記実施の形態では、これをスイッチSW1乃至スイッチSW3、及びチョッピング回路20に用いることにより、半導体装置100は、サンプリングした電位を長時間保持することができる。
【0098】
図5に示すように、本実施の形態で説明する半導体装置において、トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600は、トランジスタ300およびトランジスタ500の上方に設けられている。
【0099】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。
【0100】
トランジスタ300は、
図6Cに示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0101】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0102】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0103】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0104】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0105】
なお、導電体の材料により、仕事関数が定まるため、導電体の材料を変更することで、トランジスタのVthを調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層して用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0106】
なお、
図5に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0107】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0108】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0109】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0110】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0111】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0112】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析(TDS分析)法などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0113】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0114】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0115】
各プラグ、および配線(導電体328、および導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0116】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図5において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0117】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0118】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0119】
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図5において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0120】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0121】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図5において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0122】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0123】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図5において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0124】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0125】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0126】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0127】
例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、例えば、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0128】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0129】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0130】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0131】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0132】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518、およびトランジスタ500を構成する導電体(導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0133】
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0134】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0135】
図6A、
図6Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514および絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516と導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に、互いに離して配置された導電体542a、および導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の中に配置された導電体560と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、導電体560と、の間に配置された絶縁体550と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、絶縁体550と、の間に配置された酸化物530cと、を有する。
【0136】
また、
図6A、
図6Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580の間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、
図6A、
図6Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図6A、
図6Bに示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0137】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。また、導電体542aおよび導電体542bをまとめて導電体542という場合がある。
【0138】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、
図5、及び
図6A、
図6Bに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0139】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0140】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0141】
導電体560は、第1のゲート電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のVthを制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のVthを0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0142】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、および導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界とがつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0143】
また、本明細書等において、S-channel構造は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは後述する、高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造及びプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0144】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。
【0145】
絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、および絶縁体550は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0146】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0147】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0148】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0149】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0150】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などを含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0151】
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0152】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0153】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
【0154】
なお、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0155】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0156】
なお、酸化物半導体として機能する金属酸化物の形成は、スパッタリング法で行なってもよいし、ALD(Atomic Layer Deposition)法で行なってもよい。酸化物半導体として機能する金属酸化物については、他の実施の形態で説明する。
【0157】
また、トランジスタ500には、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0158】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0159】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア密度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア密度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア密度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0160】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0161】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア密度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア密度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0162】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0163】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0164】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0165】
また、酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0166】
その他、酸化物530に用いることができる半導体材料は、上述の金属酸化物に限られない。酸化物530として、バンドギャップを有する半導体材料(ゼロギャップ半導体ではない半導体材料)を用いてもよい。例えば、シリコンなどの単体元素の半導体、ヒ化ガリウムなどの化合物半導体、半導体として機能する層状物質(原子層物質、2次元材料などともいう)などを半導体材料に用いることが好ましい。特に、半導体として機能する層状物質を半導体材料に用いると好適である。
【0167】
ここで、本明細書等において、層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合やイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス力のような、共有結合やイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0168】
層状物質として、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などがある。カルコゲン化物は、カルコゲンを含む化合物である。また、カルコゲンは、第16族に属する元素の総称であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、リバモリウムが含まれる。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。
【0169】
酸化物530として、例えば、半導体として機能する遷移金属カルコゲナイドを用いることが好ましい。酸化物530として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS2)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe2)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe2)、硫化タングステン(代表的にはWS2)、セレン化タングステン(代表的にはWSe2)、タングステンテルル(代表的にはWTe2)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS2)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe2)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS2)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe2)などが挙げられる。
【0170】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0171】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0172】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0173】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0174】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0175】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0176】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542(導電体542a、および導電体542b)が設けられる。導電体542としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0177】
また、
図6Aに示すように、酸化物530の、導電体542との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543(領域543a、および領域543b)が形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0178】
酸化物530と接するように上記導電体542を設けることで、領域543の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543に導電体542に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543のキャリア密度が増加し、領域543は、低抵抗領域となる。
【0179】
絶縁体544は、導電体542を覆うように設けられ、導電体542の酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0180】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0181】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542が耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0182】
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面および側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
【0183】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0184】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0185】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0186】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図6A、
図6Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0187】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0188】
また、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0189】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0190】
また、加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0191】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0192】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0193】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0194】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0195】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0196】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0197】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540aおよび導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546および導電体548と同様の構成である。
【0198】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0199】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0200】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0201】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
【0202】
導電体546、および導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0203】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0204】
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
【0205】
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0206】
図5では、導電体612、および導電体610は単層構造として示しているが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0207】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0208】
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0209】
本構造を用いることで、OSトランジスタを有する半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きいOSトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さいOSトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、OSトランジスタを有する半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0210】
<トランジスタの構造例>
なお、本実施の形態に示す半導体装置のトランジスタ500は、上記の構造に限られるものではない。以下、トランジスタ500に用いることができる構造例について説明する。
【0211】
<トランジスタの構造例1>
図7A、
図7Bおよび
図7Cを用いてトランジスタ510Aの構造例を説明する。
図7Aはトランジスタ510Aの上面図である。
図7Bは、
図7Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図7Cは、
図7Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図7Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0212】
図7A、
図7Bおよび
図7Cでは、トランジスタ510Aと、層間膜として機能する絶縁体511、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584を示している。また、トランジスタ510Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能する導電体546(導電体546a、および導電体546b)と、配線として機能する導電体503と、を示している。
【0213】
トランジスタ510Aは、第1のゲート電極として機能する導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、第2のゲート電極として機能する導電体505(導電体505a、および導電体505b)と、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁体550と、第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524と、チャネルが形成される領域を有する酸化物530(酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体542aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体542bと、絶縁体574とを有する。
【0214】
また、
図7Bに示すように、トランジスタ510Aでは、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して配置される。また、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560は、導電体542a、および導電体542bとの間に配置される。
【0215】
絶縁体511、および絶縁体512は、層間膜として機能する。
【0216】
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0217】
例えば、絶縁体511は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。
【0218】
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0219】
導電体503は、絶縁体512に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体503の上面の高さと、絶縁体512の上面の高さは同程度にできる。なお導電体503は、単層とする構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503を2層以上の多層膜構造としてもよい。なお、導電体503は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
【0220】
トランジスタ510Aにおいて、導電体560は、第1のゲート電極として機能する場合がある。また、導電体505は、第2のゲート電極として機能する場合がある。その場合、導電体505に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ510Aのしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体505に負の電位を印加することにより、トランジスタ510Aのしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体505に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0221】
また、例えば、導電体505と、導電体560とを重畳して設けることで、導電体560、および導電体505に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体505から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0222】
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体560の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体505の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。すなわち、先に記載のトランジスタ500と同様に、surrounded channel(S-channel)構造である。
【0223】
絶縁体514、および絶縁体516は、絶縁体511または絶縁体512と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体514は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0224】
第2のゲートとして機能する導電体505は、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体505aが形成され、さらに内側に導電体505bが形成されている。ここで、導電体505aおよび導電体505bの上面の高さと、絶縁体516の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ510Aでは、導電体505aおよび導電体505bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体505は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0225】
ここで、導電体505aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書等において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一つ、または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0226】
例えば、導電体505aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体505bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0227】
また、導電体505が配線の機能を兼ねる場合、導電体505bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体505bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0228】
絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0229】
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ510Aの周辺部からトランジスタ510Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0230】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化窒化物、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などを含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0231】
また、絶縁体521は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体521を得ることができる。
【0232】
なお、
図7B、
図7Cには、第2のゲート絶縁膜として、3層の積層構造を示したが、2層以下、または4層以上の積層構造としてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0233】
チャネル形成領域として機能する領域を有する酸化物530は、酸化物530aと、酸化物530a上の酸化物530bと、酸化物530b上の酸化物530cと、を有する。酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。酸化物530として、上述した金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
【0234】
なお、酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して設けられることが好ましい。絶縁体574がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
【0235】
導電体542は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0236】
導電体542aと、導電体542bとは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
【0237】
また、
図7Bでは単層構造を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0238】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0239】
また、導電体542上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、または水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体574を成膜する際に、導電体542が酸化することを抑制することができる。
【0240】
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
【0241】
バリア層を有することで、導電体542の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体542に、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0242】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、酸化物530c、および絶縁体574を介して設けられることが好ましい。
【0243】
トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0244】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0245】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0246】
酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0247】
導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560は、配線として機能するため、導電体560bに導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0248】
絶縁体580と、トランジスタ510Aとの間に絶縁体574を配置する。絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0249】
絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0250】
絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584は、層間膜として機能する。
【0251】
絶縁体582は、絶縁体514と同様に、水または水素などの不純物が、外部からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
【0252】
また、絶縁体580、および絶縁体584は、絶縁体516と同様に、絶縁体582よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0253】
また、トランジスタ510Aは、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584に埋め込まれた導電体546などのプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
【0254】
また、導電体546の材料としては、導電体505と同様に、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0255】
例えば、導電体546として、水素、および酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0256】
上記構造を有することで、オン電流が大きいOSトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さいOSトランジスタを提供することができる。または、OSトランジスタを有する半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。
【0257】
<トランジスタの構造例2>
図8A、
図8Bおよび
図8Cを用いてトランジスタ510Bの構造例を説明する。
図8Aはトランジスタ510Bの上面図である。
図8Bは、
図8Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図8Cは、
図8Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図8Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0258】
トランジスタ510Bはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0259】
トランジスタ510Bは、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560とが重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
【0260】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0261】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0262】
また、導電体560の上面および側面、絶縁体550の側面、および酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体574を設けることが好ましい。なお、絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0263】
絶縁体574を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ510Bへ拡散することを抑制することができる。
【0264】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0265】
また、バリア性を有する絶縁体576を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0266】
<トランジスタの構造例3>
図9A、
図9Bおよび
図9Cを用いてトランジスタ510Cの構造例を説明する。
図9Aはトランジスタ510Cの上面図である。
図9Bは、
図9Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図9Cは、
図9Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図9Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0267】
トランジスタ510Cはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0268】
図9A、
図9Bおよび
図9Cに示すトランジスタ510Cは、導電体542aと酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面および導電体560側の側面を越えて延在し、酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547は、導電体542に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547の膜厚は、少なくとも導電体542より厚いことが好ましい。
【0269】
図9A、
図9Bおよび
図9Cに示すトランジスタ510Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ510Aよりも、導電体542を導電体560に近づけることができる。または、導電体542aの端部および導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ510Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流および周波数特性の向上を図ることができる。
【0270】
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体546a(導電体546b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
【0271】
また、
図9A、
図9Bおよび
図9Cに示すトランジスタ510Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成にしてもよい。絶縁体544としては、水または水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ510Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
【0272】
また、
図9A、
図9Bおよび
図9Cに示すトランジスタ510Cは、
図7A、
図7Bおよび
図7Cに示すトランジスタ510Aと異なり、導電体505を単層構造で設けてもよい。この場合、パターン形成された導電体505の上に絶縁体516となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜の上部を、導電体505の上面が露出するまでCMP法などを用いて除去すればよい。ここで、導電体505の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体505上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体505の上に形成される、絶縁層の平坦性を良好にし、酸化物530bおよび酸化物530cの結晶性の向上を図ることができる。
【0273】
<トランジスタの構造例4>
図10A、
図10Bおよび
図10Cを用いてトランジスタ510Dの構造例を説明する。
図10Aはトランジスタ510Dの上面図である。
図10Bは、
図10Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図10Cは、
図10Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図10Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0274】
トランジスタ510Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0275】
図10A、
図10Bおよび
図10Cでは、導電体503を設けずに、第2のゲートとしての機能を有する導電体505を配線としても機能させている。また、酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
【0276】
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
【0277】
なお、金属酸化物552は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電層とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0278】
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減が可能となる。また、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0279】
トランジスタ510Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
【0280】
金属酸化物552を有することで、ゲート電極として機能する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ510Dのオン電流の向上を図ることができる。または、ゲート絶縁膜として機能する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、および金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と酸化物530との間の物理的な距離、および導電体560から酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0281】
具体的には、金属酸化物552として、酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0282】
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁層である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0283】
絶縁体570は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水または水素などの不純物が、導電体560および絶縁体550を介して、酸化物530に混入することを抑制することができる。
【0284】
絶縁体571はハードマスクとして機能する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
【0285】
なお、絶縁体571に、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
【0286】
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
【0287】
また、トランジスタ510Dは、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0288】
領域531aおよび領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて、露出した酸化物530b表面にリンまたはボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
【0289】
また、酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物530bに拡散させて領域531aおよび領域531bを形成することもできる。
【0290】
酸化物530bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531aおよび領域531bを「不純物領域」または「低抵抗領域」という場合がある。
【0291】
絶縁体571および/または導電体560をマスクとして用いることで、領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531aおよび/または領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531aまたは領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
【0292】
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
【0293】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
【0294】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体575、酸化物530上に絶縁体574を有する。絶縁体574は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水または水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体574として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
【0295】
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体574が酸化物530および絶縁体575から水素および水を吸収することで、酸化物530および絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
【0296】
<トランジスタの構造例5>
図11A、
図11Bおよび
図11Cを用いてトランジスタ510Eの構造例を説明する。
図11Aはトランジスタ510Eの上面図である。
図11Bは、
図11Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図11Cは、
図11Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図11Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0297】
トランジスタ510Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0298】
図11A、
図11Bおよび
図11Cでは、導電体542を設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物530bと、絶縁体574の間に、絶縁体573を有する。
【0299】
図11Bに示す、領域531(領域531a、および領域531b)は、酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
【0300】
具体的には、酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記酸化物530bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0301】
なお、酸化物530を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
【0302】
特に、ホウ素、及びリンは、低温ポリシリコン等の製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
【0303】
続いて、酸化物530b、およびダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531と、酸化物530cおよび絶縁体550とが重畳する領域を設けることができる。
【0304】
具体的には、絶縁体574となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体574、および絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、酸化物530bに設けられた領域531の一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理などにより、酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜の一部を除去することで、
図11A、
図11Bおよび
図11Cに示すトランジスタを形成することができる。
【0305】
なお、絶縁体573、および絶縁体574は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0306】
図11A、
図11Bおよび
図11Cに示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体542を設けないため、コストの低減を図ることができる。
【0307】
<トランジスタの構造例6>
図12A、
図12Bおよび
図12Cを用いてトランジスタ510Fの構造例を説明する。
図12Aはトランジスタ510Fの上面図である。
図12Bは、
図12Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図12Cは、
図12Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図12Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0308】
トランジスタ510Fはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0309】
トランジスタ510Aでは、絶縁体574の一部が絶縁体580に設けられた開口部内に設けられ、導電体560の側面を覆うように設けられている。一方で、トランジスタ510Fでは絶縁体580と絶縁体574の一部を除去して開口が形成されている。
【0310】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0311】
なお、酸化物530として酸化物半導体を用いる場合は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を用いることができる。
【0312】
酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cは、結晶性を有することが好ましく、特に、CAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OS等の結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損等)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物530bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。これにより、熱処理を行っても、酸化物530bから酸素が引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ510Fは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0313】
なお、酸化物530aおよび酸化物530cの一方または双方を省略してもよい。酸化物530を酸化物530bの単層としてもよい。酸化物530を、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの積層とする場合は、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、酸化物530cは、酸化物530aに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物530cに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0314】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0315】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウム等を用いてもよい。また、酸化物530cを積層構造としてもよい。例えば、In-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上のGa-Zn酸化物との積層構造、またはIn-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上の酸化ガリウムとの積層構造を用いることができる。別言すると、In-Ga-Zn酸化物と、Inを含まない酸化物との積層構造を、酸化物530cとして用いてもよい。
【0316】
具体的には、酸化物530aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、または3:1:2[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:1[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:5[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、酸化ガリウムとの積層構造等が挙げられる。
【0317】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ510Fは高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。なお、酸化物530cを積層構造とした場合、上述の酸化物530bと、酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くする効果に加え、酸化物530cが有する構成元素が、絶縁体550側に拡散するのを抑制することが期待される。より具体的には、酸化物530cを積層構造とし、積層構造の上方にInを含まない酸化物を位置させるため、絶縁体550側に拡散しうるInを抑制することができる。絶縁体550は、ゲート絶縁体として機能するため、Inが拡散した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、酸化物530cを積層構造とすることで、信頼性の高い表示装置を提供することが可能となる。
【0318】
酸化物530は、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530のチャネル形成領域となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0319】
<トランジスタの構造例7>
図13A、
図13Bを用いてトランジスタ510Gの構造例を説明する。トランジスタ510Gはトランジスタ500の変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。なお、
図13A、
図13Bに示す構成は、トランジスタ300等、本発明の一形態の半導体装置が有する他のトランジスタにも適用することができる。
【0320】
図13Aは、トランジスタ510Gのチャネル長方向の断面図であり、
図13Bは、トランジスタ510Gのチャネル幅方向の断面図である。
図13A、
図13Bに示すトランジスタ510Gは、絶縁体402及び絶縁体404を有する点が、
図6A、
図6Bに示すトランジスタ500と異なる。また、導電体540aの側面に接して絶縁体551が設けられ、導電体540bの側面に接して絶縁体551が設けられる点が、
図6A、
図6Bに示すトランジスタ500と異なる。さらに、絶縁体520を有さない点が、
図6A、
図6Bに示すトランジスタ500と異なる。
【0321】
図13A、
図13Bに示すトランジスタ510Gは、絶縁体512上に絶縁体402が設けられる。また、絶縁体574上、及び絶縁体402上に絶縁体404が設けられる。
【0322】
図13A、
図13Bに示すトランジスタ510Gでは、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、及び絶縁体574がパターニングされており、絶縁体404がこれらを覆う構造になっている。つまり、絶縁体404は、絶縁体574の上面、絶縁体574の側面、絶縁体580の側面、絶縁体544の側面、絶縁体524の側面、絶縁体522の側面、絶縁体516の側面、絶縁体514の側面、絶縁体402の上面とそれぞれ接する。これにより、酸化物530等は、絶縁体404と絶縁体402によって外部から隔離される。
【0323】
絶縁体402及び絶縁体404は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一つ)又は水分子の拡散を抑制する機能が高いことが好ましい。例えば、絶縁体402及び絶縁体404として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを用いることが好ましい。これにより、酸化物530に水素等が拡散することを抑制することができるので、トランジスタ510Gの特性が低下することを抑制することができる。よって、OSトランジスタを有する半導体装置において、信頼性を高めることができる。
【0324】
絶縁体551は、絶縁体581、絶縁体404、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に接して設けられる。絶縁体551は、水素又は水分子の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。たとえば、絶縁体551として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン、酸化アルミニウム、又は窒化酸化シリコン等の絶縁体を用いることが好ましい。特に、窒化シリコンは水素バリア性が高い材料であるので、絶縁体551として用いると好適である。絶縁体551として水素バリア性が高い材料を用いることにより、水又は水素等の不純物が、絶縁体580等から導電体540a及び導電体540bを通じて酸化物530に拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580に含まれる酸素が導電体540a及び導電体540bに吸収されることを抑制することができる。以上により、OSトランジスタを有する半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0325】
図14は、トランジスタ500及びトランジスタ300を、
図13A、
図13Bに示す構成とした場合における、半導体装置の構成例を示す断面図である。導電体546の側面に、絶縁体551が設けられている。
【0326】
【0327】
酸化物530c1は、絶縁体524の上面、酸化物530aの側面、酸化物530bの上面及び側面、導電体542a及び導電体542bの側面、絶縁体544の側面、及び絶縁体580の側面と接する。酸化物530c2は、絶縁体550と接する。
【0328】
酸化物530c1として、例えば、In-Zn酸化物を用いることができる。また、酸化物530c2として、酸化物530cが1層構造である場合に酸化物530cに用いることができる材料と同様の材料を用いることができる。例えば、酸化物530c2として、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いることができる。
【0329】
酸化物530cを酸化物530c1及び酸化物530c2の2層構造とすることにより、酸化物530cを1層構造とする場合より、トランジスタのオン電流を高めることができる。よって、トランジスタを、例えば、パワーMOSトランジスタとすることができる。なお、
図6A、
図6Bに示すトランジスタが有する酸化物530cも、酸化物530c1と酸化物530c2の2層構造とすることができる。
【0330】
図15A、
図15Bに示すトランジスタは、例えば、トランジスタ500、トランジスタ300、または、その双方に適用することができる。
【0331】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0332】
(実施の形態3)
本実施の形態では、金属酸化物の一種である酸化物半導体について説明する。
【0333】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウム、コバルトなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0334】
<結晶構造の分類>
まず、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、
図16Aを用いて説明を行う。
図16Aは、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
【0335】
図16Aに示すように、酸化物半導体は、大きく分けて「Amorphous(無定形)」と、「Crystalline(結晶性)」と、「Crystal(結晶)」と、に分類される。また、「Amorphous」の中には、completely amorphousが含まれる。また、「Crystalline」の中には、CAAC(c-axis-aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、及びCAC(cloud-aligned composite)が含まれる。なお、「Crystalline」の分類には、single crystal、poly crystal、及びcompletely amorphousは除かれる。また、「Crystal」の中には、single crystal、及びpoly crystalが含まれる。
【0336】
なお、
図16Aに示す太枠内の構造は、「Amorphous(無定形)」と、「Crystal(結晶)」との間の中間状態であり、新しい境界領域(New crystalline phase)に属する構造である。すなわち、当該構造は、エネルギー的に不安定な「Amorphous(無定形)」や、「Crystal(結晶)」とは全く異なる構造と言い換えることができる。
【0337】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)スペクトルを用いて評価することができる。ここで、「Crystalline」に分類されるCAAC-IGZO膜のGIXD(Grazing-Incidence XRD)測定で得られるXRDスペクトルを
図16Bに示す。なお、GIXD法は、薄膜法またはSeemann-Bohlin法ともいう。以降、
図16Bに示すGIXD測定で得られるXRDスペクトルを、単にXRDスペクトルと記す。なお、
図16Bに示すCAAC-IGZO膜の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、
図16Bに示すCAAC-IGZO膜の厚さは、500nmである。
【0338】
図16Bに示すように、CAAC-IGZO膜のXRDスペクトルでは、明確な結晶性を示すピークが検出される。具体的には、CAAC-IGZO膜のXRDスペクトルでは、2θ=31°近傍に、c軸配向を示すピークが検出される。なお、
図16Bに示すように、2θ=31°近傍のピークは、ピーク強度が検出された角度を軸に左右非対称である。
【0339】
また、膜または基板の結晶構造は、極微電子線回折法(NBED:Nano Beam Electron Diffraction)によって観察される回折パターン(極微電子線回折パターンともいう)にて評価することができる。CAAC-IGZO膜の回折パターンを、
図16Cに示す。
図16Cは、電子線を基板に対して平行に入射するNBEDによって観察される回折パターンである。なお、
図16Cに示すCAAC-IGZO膜の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、極微電子線回折法では、プローブ径を1nmとして電子線回折が行われる。
【0340】
図16Cに示すように、CAAC-IGZO膜の回折パターンでは、c軸配向を示す複数のスポットが観察される。
【0341】
<<酸化物半導体の構造>>
なお、酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、
図16Aとは異なる分類となる場合がある。例えば、酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、上述のCAAC-OS、及びnc-OSがある。また、非単結晶酸化物半導体には、多結晶酸化物半導体、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、非晶質酸化物半導体、などが含まれる。
【0342】
ここで、上述のCAAC-OS、nc-OS、及びa-like OSの詳細について、説明を行う。
【0343】
[CAAC-OS]
CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、またはCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。さらに、CAAC-OSは、a-b面方向において複数の結晶領域が連結する領域を有し、当該領域は歪みを有する場合がある。なお、歪みとは、複数の結晶領域が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。つまり、CAAC-OSは、c軸配向し、a-b面方向には明らかな配向をしていない酸化物半導体である。
【0344】
なお、上記複数の結晶領域のそれぞれは、1つまたは複数の微小な結晶(最大径が10nm未満である結晶)で構成される。結晶領域が1つの微小な結晶で構成されている場合、当該結晶領域の最大径は10nm未満となる。また、結晶領域が多数の微小な結晶で構成されている場合、当該結晶領域の大きさは、数十nm程度となる場合がある。
【0345】
また、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズ、チタンなどから選ばれた一種、または複数種)において、CAAC-OSは、インジウム(In)、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛(Zn)、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能である。よって、(M,Zn)層にはインジウムが含まれる場合がある。また、In層には元素Mが含まれる場合がある。なお、In層にはZnが含まれる場合もある。当該層状構造は、例えば、高分解能TEM像において、格子像として観察される。
【0346】
CAAC-OS膜に対し、例えば、XRD装置を用いて構造解析を行うと、θ/2θスキャンを用いたOut-of-plane XRD測定では、c軸配向を示すピークが2θ=31°またはその近傍に検出される。なお、c軸配向を示すピークの位置(2θの値)は、CAAC-OSを構成する金属元素の種類、組成などにより変動する場合がある。
【0347】
また、例えば、CAAC-OS膜の電子線回折パターンにおいて、複数の輝点(スポット)が観測される。なお、あるスポットと別のスポットとは、試料を透過した入射電子線のスポット(ダイレクトスポットともいう)を対称中心として、点対称の位置に観測される。
【0348】
上記特定の方向から結晶領域を観察した場合、当該結晶領域内の格子配列は、六方格子を基本とするが、単位格子は正六角形とは限らず、非正六角形である場合がある。また、上記歪みにおいて、五角形、七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属原子が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0349】
なお、明確な結晶粒界が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(polycrystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、電界効果移動度の低下などを引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、及びIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0350】
CAAC-OSは、結晶性が高く、明確な結晶粒界が確認されない酸化物半導体である。よって、CAAC-OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0351】
[nc-OS]
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。別言すると、nc-OSは、微小な結晶を有する。なお、当該微小な結晶の大きさは、例えば、1nm以上10nm以下、特に1nm以上3nm以下であることから、当該微小な結晶をナノ結晶ともいう。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、XRD装置を用いて構造解析を行うと、θ/2θスキャンを用いたOut-of-plane XRD測定では、結晶性を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、ナノ結晶よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、ナノ結晶の大きさと近いかナノ結晶より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう)を行うと、ダイレクトスポットを中心とするリング状の領域内に複数のスポットが観測される電子線回折パターンが取得される場合がある。
【0352】
[a-like OS]
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆又は低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。また、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、膜中の水素濃度が高い。
【0353】
<<酸化物半導体の構成>>
次に、上述のCAC-OSの詳細について、説明を行う。なお、CAC-OSは材料構成に関する。
【0354】
[CAC-OS]
CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つまたは複数の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0355】
さらに、CAC-OSとは、第1の領域と、第2の領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、当該第1の領域が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう)である。つまり、CAC-OSは、当該第1の領域と、当該第2の領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。
【0356】
ここで、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSを構成する金属元素に対するIn、Ga、およびZnの原子数比のそれぞれを、[In]、[Ga]、および[Zn]と表記する。例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSにおいて、第1の領域は、[In]が、CAC-OS膜の組成における[In]よりも大きい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、CAC-OS膜の組成における[Ga]よりも大きい領域である。または、例えば、第1の領域は、[In]が、第2の領域における[In]よりも大きく、且つ、[Ga]が、第2の領域における[Ga]よりも小さい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、第1の領域における[Ga]よりも大きく、且つ、[In]が、第1の領域における[In]よりも小さい領域である。
【0357】
具体的には、上記第1の領域は、インジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。また、上記第2の領域は、ガリウム酸化物、ガリウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。つまり、上記第1の領域を、Inを主成分とする領域と言い換えることができる。また、上記第2の領域を、Gaを主成分とする領域と言い換えることができる。
【0358】
なお、上記第1の領域と、上記第2の領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0359】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、Inを主成分とする領域(第1の領域)と、Gaを主成分とする領域(第2の領域)とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0360】
CAC-OSをトランジスタに用いる場合、第1の領域に起因する導電性と、第2の領域に起因する絶縁性とが、相補的に作用することにより、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。つまり、CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。導電性の機能と絶縁性の機能とを分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。よって、CAC-OSをトランジスタに用いることで、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および良好なスイッチング動作を実現することができる。
【0361】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、CAC-OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0362】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0363】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0364】
トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。例えば、酸化物半導体のキャリア濃度は1×1017cm-3以下、好ましくは1×1015cm-3以下、さらに好ましくは1×1013cm-3以下、より好ましくは1×1011cm-3以下、さらに好ましくは1×1010cm-3未満であり、1×10-9cm-3以上である。なお、酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性と言う。なお、キャリア濃度の低い酸化物半導体を、高純度真性又は実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ場合がある。
【0365】
また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0366】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0367】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0368】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0369】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0370】
また、酸化物半導体にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0371】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。または、酸化物半導体において、窒素が含まれると、トラップ準位が形成される場合がある。この結果、トランジスタの電気特性が不安定となる場合がある。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体中の窒素濃度を、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下にする。
【0372】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満にする。
【0373】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0374】
なお、本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態などに示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0375】
Q11:電荷、Q12:電荷、C11:容量、C12:容量、S1:信号、S2:信号、S3:信号、S4:信号、S5:信号、SW1:スイッチ、SW1_1:スイッチ、SW1_2:スイッチ、SW2:スイッチ、SW2_1:スイッチ、SW2_2:スイッチ、SW3:スイッチ、SW3_1:スイッチ、SW3_2:スイッチ、INP:入力端子、INM:入力端子、OUTP:出力端子、OUTM:出力端子、T11:端子、T12:端子、T13:端子、T14:端子、T15:端子、T16:端子、T21:端子、T22:端子、T23:端子、T24:端子、T31:端子、T32:端子、T33:端子、T34:端子、T_BN:端子、T_BP:端子、T_CN:端子、T_COM:端子、T_CP:端子、T_VDD:端子、VDD:電源電位、11:トランジスタ、12:トランジスタ、13:トランジスタ、20:チョッピング回路、20_1:チョッピング回路、20_2:チョッピング回路、21:トランジスタ、22:トランジスタ、23:トランジスタ、24:トランジスタ、30:アンプ、31:トランジスタ、32:トランジスタ、33:トランジスタ、34:トランジスタ、35:トランジスタ、36:トランジスタ、37:トランジスタ、38:トランジスタ、39:トランジスタ、41:トランジスタ、42:トランジスタ、43:トランジスタ、44:トランジスタ、100:半導体装置、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、402:絶縁体、404:絶縁体、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、505:導電体、505a:導電体、505b:導電体、510:絶縁体、510A:トランジスタ、510B:トランジスタ、510C:トランジスタ、510D:トランジスタ、510E:トランジスタ、510F:トランジスタ、510G:トランジスタ、511:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、521:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、530c1:酸化物、530c2:酸化物、531:領域、531a:領域、531b:領域、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543:領域、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、545:絶縁体、546:導電体、546a:導電体、546b:導電体、547:導電体、547a:導電体、547b:導電体、548:導電体、550:絶縁体、551:絶縁体、552:金属酸化物、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、570:絶縁体、571:絶縁体、573:絶縁体、574:絶縁体、575:絶縁体、576:絶縁体、576a:絶縁体、576b:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、584:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、610:導電体、612:導電体、620:導電体、630:絶縁体、650:絶縁体