(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155941
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】難燃剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 21/04 20060101AFI20241024BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20241024BHJP
C09K 21/14 20060101ALI20241024BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C09K21/04
C09K21/12
C09K21/14
C09K21/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134639
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2020191032の分割
【原出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉隆
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦史
(57)【要約】
【課題】 組成物中の粉体が沈降し難い、難燃剤組成物の提供。
【解決手段】 分散媒、粉体難燃剤、シリカ系粒子及びシリコーン系界面活性剤を含む組成物であって、樹脂発泡体の製造用であることを特徴とする、難燃剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒、粉体難燃剤、シリカ系粒子及びシリコーン系界面活性剤を含む組成物であって、樹脂発泡体の製造用であることを特徴とする、難燃剤組成物。
【請求項2】
前記シリコーン系界面活性剤と前記シリカ系粒子との重量比(前記シリコーン系界面活性剤:前記シリカ系粒子)が、1:1~1:150であることを特徴とする、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項3】
前記分散媒が、ポリオール化合物及び/又はリン酸エステルを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の難燃剤組成物。
【請求項4】
前記シリカ系粒子が、ヒュームドシリカを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の難燃剤組成物。
【請求項5】
前記シリコーン系界面活性剤は、
HLB値が3~19であり、
ポリアルキルシリルエーテルとポリオキシアルキレンエーテルがグラフト共重合した分子構造又はリニアブロック共重合した分子構造を有する
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の難燃剤組成物。
【請求項6】
前記粉体難燃剤が、赤リン、リン酸塩、ホスフィン酸塩、セルロース及び膨張黒鉛から選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の難燃剤組成物。
【請求項7】
25℃におけるチキソトロピー・インデックス値が、2.0以上5.0以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の難燃剤組成物。
【請求項8】
樹脂発泡体の製造方法であって、
請求項1~7のいずれかに記載の難燃剤組成物を含む原料組成物を発泡させる工程を含むことを特徴とする、樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体等の樹脂発泡体は、建築用材、石油及びガス運搬用船舶並びに冷蔵庫等の電化製品の保温材、断熱材等として使用されている。
【0003】
ここで、ポリウレタン発泡体単独では難燃性が低く、ポリウレタン発泡体の難燃性を改善する検討がなされてきた。
【0004】
先行文献1では、赤リンを含めた複数の難燃剤を使用することで、ポリウレタン発泡体の難燃性を改善し、燃焼時の収縮、膨張、変形を抑制した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術においては、赤リンのような粉体難燃剤を多量に使用することで、難燃剤組成物における経時での粉体難燃剤の凝集等が発生し、使用時に問題が生じるという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、粉体難燃剤が凝集し難い、難燃剤組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行い、所定の難燃剤組成物によって、上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0009】
本発明は、分散媒、粉体難燃剤、シリカ系粒子及びシリコーン系界面活性剤を含む組成物であって、樹脂発泡体の製造用である、難燃剤組成物である。
前記シリコーン系界面活性剤と前記シリカ系粒子との重量比(前記シリコーン系界面活性剤:前記シリカ系粒子)が、1:1~1:150であってもよい。
前記分散媒が、ポリオール化合物及び/又はリン酸エステルを含んでもよい。
前記シリカ系粒子が、ヒュームドシリカを含んでもよい。
前記シリコーン系界面活性剤は、HLB値が3~19であり、ポリアルキルシリルエーテルとポリオキシアルキレンエーテルがグラフト共重合した分子構造又はリニアブロック共重合した分子構造を有してもよい。
前記粉体難燃剤が、赤リン、リン酸塩、ホスフィン酸塩、セルロース及び膨張黒鉛から選択される1種以上を含んでもよい。
前記難燃剤組成物は、25℃におけるチキソトロピー・インデックス値が、2.0以上5.0以下であってもよい。
【0010】
また本発明は、前記難燃剤組成物を含む原料組成物を発泡させる工程を含む樹脂発泡体の製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粉体難燃剤が凝集し難い、難燃剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
難燃剤組成物の、組成、物性/性質、製造方法、用途等について説明するが、本発明は以下に何ら限定されない。
【0013】
ある要素について、上限値と下限値とが別々に記載されている場合、上限値と下限値とを適宜自由に組み合わせて、新たな数値範囲とすることができる。また、「以上」と「超」、「以下」と「未満」を自由に読み替えることが可能である。
【0014】
説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体を使用可能である。
【0015】
以下において、「粒子」については、一般的に「粒子」と判断できるものであればその形状(例えば、アスペクト比)は限定されず、球状、楕円球状、板状、鱗片状、針状、中空状等とすることができる。
【0016】
粒子の平均径(平均粒径)は、特に断らない限り、レーザー回折法によって測定される粒度分布のD50の値とする。
【0017】
<<<<難燃剤組成物の組成>>>>
<<<成分>>>
難燃剤組成物は、分散媒、粉体難燃剤、シリカ系粒子及びシリコーン系界面活性剤を含む。また、難燃剤組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。
【0018】
<<分散媒>>
分散媒は、各成分を分散可能な液体媒体であれば特に限定されず、ポリオール化合物及び/又はリン酸エステルを含むことが好ましい。
【0019】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリウレタン発泡原料として使用可能なものを挙げることができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール等を挙げることができる。
【0020】
リン酸エステルとしては、例えば、常温常圧で液状のリン酸エステル系難燃剤を使用することができ、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル、レゾルシノールポリホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステル、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン化リン酸エステル等を挙げることができる。また、リン酸エステルとしては、常温常圧で液状であればよいため、上記のホスフェート類の他にも、ジエチル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート等のホスホネート類や、ホスフィネート類、ホスファイト類等も使用可能である。
【0021】
その他の分散媒としては、塩素化パラフィン等のハロゲン化パラフィン、臭素化ジアルキルフタレート等の臭素化カルボン酸エステル化合物、ハロゲン化ポリエーテルポリオール等のハロゲン化ポリ(オキシアルキレン)化合物、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル等の石油系潤滑油、ひまし油、菜種油等の天然物系潤滑油、ヒンダードアミン類、低分子量活性水素化合物(モノアルコール、グリコール、フェノール化合物、アミン化合物)から誘導されたポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)共重合体、及びグリセリン及び糖類等の多価アルコールから誘導されたポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)共重合体等のノニオン系界面活性剤、エポキシ化合物、ポリアミン化合物やポリチオール化合物等の活性水素化合物、イソシアネート化合物、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、ビニルトルエン化合物、酢酸ビニル化合物等のビニルモノマー化合物等が挙げられる。
【0022】
分散媒は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0023】
<<粉体難燃剤>>
粉体難燃剤は、特に限定されず、例えば、従来公知の粉体状の難燃剤を使用することができ、赤リン、リン酸塩、ホスフィン酸塩、セルロース及び膨張黒鉛から選択される1種以上を含むことが好ましい。また、粉体難燃剤は、その他の成分(例えば、その他の粉体難燃剤)を含んでいてもよい。
【0024】
<赤リン>
赤リンは、特に限定されず、未処理の赤リンであっても、表面処理又は表面被覆された赤リンであってもよい。
【0025】
赤リンの平均径は、300μm以下、200μm以下、又は、100μm以下とすることが好ましく、また、25μm以上、50μm以上、又は、75μm以上とすることが好ましい。
【0026】
<リン酸塩>
リン酸塩は、特に限定されず、モノリン酸塩であってもポリリン酸塩であってもよい。
【0027】
モノリン酸塩としては、例えば、
リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩;
リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩;
リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩;
リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩;
リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩;
リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩;
リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩、第一リン酸アルミニウム、第二リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸アルミニウム等のアルミニウム塩;
等を挙げることができる。
【0028】
ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等を挙げることができる。
【0029】
リン酸塩は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0030】
リン酸塩の平均径は、1~100μmとすることが好ましい。
【0031】
<ホスフィン酸塩>
ホスフィン酸塩は、特に限定されず、例えば下記式で表されるホスフィン酸金属塩を使用することができる。
【0032】
【0033】
式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、又は、直鎖状若しくは分枝鎖状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。炭化水素基は、例えば、炭素数1~6のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基等とすることができる。
【0034】
式中、Mはn価の金属イオンを表す。金属イオンMは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K等とすることができる。Mは、Alであることが好ましい。
【0035】
ホスフィン酸塩は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0036】
ホスフィン酸塩の平均径は、1~100μmであることが好ましい。
【0037】
<セルロース>
セルロースは、特に限定されず、例えば、一般的な天然物由来の成分を使用することができ、マイクロセルロースやセルロースナノファイバー(CNF)等を使用することができる。セルロースは、例えば、公知の方法で原料(例えばパルプ)を解繊処理(機械的処理/化学的処理)したものを使用することができる。また、セルロースは、変性されていてもよい。CNFを用いる場合には、更に表面処理されていてもよい。
【0038】
セルロースの平均径は、15~35μmであることが好ましい。セルロースの平均径は、レーザー回折法により測定されたものとすることができる。
また、セルロースの平均長は10~1000μmであることが好ましい。セルロースの平均長は、ISO 16065-1:2001に基づき測定された値とすることができる。
【0039】
<膨張黒鉛>
膨張黒鉛は、特に限定されず、公知の膨張黒鉛、例えば、天然黒鉛を硫酸、硝酸等の混合液に浸漬し、過酸化水素や塩酸等の酸化剤を添加したもの等を使用することができる。
【0040】
膨張黒鉛は、例えば、膨張開始温度が130~300℃程度、膨張容積が50~300cc/gのものを使用することができる。
【0041】
膨張黒鉛の膨張前の平均径は、50~500μmとすることが好ましい。
【0042】
<その他の粉体難燃剤>
その他の粉体難燃剤としては、固体リン酸エステル系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、針状フィラー、臭素含有難燃剤、窒素系難燃剤、アンチモン含有難燃剤及び金属水酸化物等が挙げられる。
【0043】
<<シリカ系粒子>>
シリカ系粒子としては、特に限定されず、公知のものを使用でき、沈降法シリカ、ゾルゲル法シリカ、コロイダルシリカ等の湿式シリカ、爆燃法シリカ、ヒュームドシリカ等の乾式シリカ等を例示できる。シリカ系粒子としては、粉体難燃剤の分散性を向上させることができるため、ヒュームドシリカが好ましい。
【0044】
シリカ系粒子は、平均径が50~300μmであることが好ましく、150~250μmであることがより好ましい。
【0045】
粉体難燃剤の平均径とシリカ系粒子の平均径との比(粉体難燃剤の平均径/シリカ系粒子の平均径)が、2/1~1/20、3/2~1/15、又は、1/1~1/10であることが好ましい。
【0046】
<<シリコーン系界面活性剤>>
シリコーン系界面活性剤は、シロキサン結合を骨格として含む界面活性剤であり、典型的には、ポリエーテル変性シリコーンを使用することができる。
【0047】
シリコーン系界面活性剤は、ポリアルキルシリルエーテル(例えば、ポリジメチルシロキサン)とポリオキシアルキレンエーテル(例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテル)が、グラフト共重合した分子構造又はリニアブロック共重合した分子構造を有することが好ましい。シリコーン系界面活性剤は適宜変性されていてもよい。
【0048】
シリコーン系界面活性剤は、下記式で示される成分であることが特に好ましい。
【0049】
【0050】
【0051】
式中、Rは炭素数が1以上10以下(好ましくは1以上3以下、好ましくは1)のアルキル基を示し、mは0以上の整数を示し、nは1以上の整数を示し、c、dは、共に0以上であり、c+dが1以上(好ましくは、cが1以上)となる整数を示す。
【0052】
シリコーン系界面活性剤は、市販品を使用することもできる。
市販品としては、
ダウ東レ社製の、DOWSIL SH-192、DOWSIL SH-193、DOWSIL SF-2904、DOWSIL SF-2936、DOWSIL SF-2937、DOWSIL SF-2938、DOWSIL SZ-1333、DOWSIL SZ-1671、DOWSIL SZ-1718、DOWSIL SZ-580、DOWSIL SRX-298、DOWSIL SZ-1142、DOWSIL SZ-1968、DOWSIL 8868 additive;
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の、Niax L-6887、Niax L-6888、Niax L-6120、Niax L-5420、Niax Y-16248、Niax L-6978、Niax L-6100、Niax L-626、Niax L-540、Niax L-580、Niax L-618、Niax L-620、Niax L-639;
エボニック社製の、TEGOSTAB B8481、TEGOSTAB B84817、TEGOSTAB B8465、TEGOSTAB B8462、TEGOSTAB B8460、TEGOSTAB B84711、TEGOSTAB B8450、TEGOSTAB B8110、TEGOSTAB BF2470、TEGOSTAB B8266、TEGOSTAB B8255;
信越化学社製の、X-22-4952、X-22-4972、KF-6123、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003、KF-9701、X-22-170BX、KF-945、KF-6011、X-22-2516、KF-6004;
等が挙げられる。
【0053】
シリコーン系界面活性剤は、HLB値が3以上、3.5以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、又は、12以上であることが好ましく、また、19以下、18.5以下、18以下、17以下、16以下、15以下、又は、14以下であることが好ましい。一例として、HLB値は、3~19、3.5~19、5~18.5、7~17、又は、10~15であることが好ましい。
【0054】
シリコーン系界面活性剤としては、重量平均分子量が300~100,000(好ましくは1,000~50,000)のものを使用することができる。重量平均分子量は、GPCで測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
【0055】
本発明に係る組成物によれば、粉体難燃剤と、シリカ系粒子及びシリコーン系界面活性剤と、を併用することで、粒子が分散媒に濡れることで樹脂原料(例えばポリオール等)に混合しやすくなり、更に、粉体難燃剤の粒子同士の凝集(2次凝集)を抑えることができる。また、本発明に係る組成物によれば、適度に増粘された組成物となり、経時での固形分の沈降やケーキングの発生を防止することが可能となる。更には、本発明に係る組成物によれば、ハンドリング性の向上や、樹脂発泡体の原料組成物との混合容易性を向上させることができる。
【0056】
<<その他の成分>>
難燃剤組成物は、適宜、その他の成分を含んでいてもよい。
【0057】
その他の成分としては、公知の分散剤が挙げられる。分散剤としては、アミン塩系分散剤、カルボン酸ポリマー系分散剤、エステル系高分子分散剤、リン酸系分散剤等を使用することができる。
【0058】
また、その他の成分は、その他の公知の添加剤を含んでいてもよく、また、その他の公知の添加剤は、樹脂発泡体の製造に際して必要となる乃至は樹脂発泡体としたときに効果を奏する添加剤であってもよい。その他の公知の添加剤としては、例えば、整泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、触媒等が挙げられる。
【0059】
<<<各成分の含有量>>>
難燃剤組成物中の分散媒の量を100重量部とする。
難燃剤組成物中の粉体難燃剤の含有量は、40重量部以上、50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、80重量部以上、又は、90重量部以上であることが好ましく、また、99重量部以下、98重量部以下、又は、97重量部以下であることが好ましい。
難燃剤組成物中のシリカ系粒子の含有量は、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.5重量部以上、1重量部以上、2重量部以上、又は、5重量部以上であることが好ましく、また、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、又は、10重量部以下であることが好ましい。
難燃剤組成物中のシリコーン系界面活性剤の含有量は、0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部以上、又は、0.15重量部以上であることが好ましく、また、5重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、又は、0.5重量部以下であることが好ましい。
その他の成分については、残余分とすればよい。
【0060】
シリコーン系界面活性剤とシリカ系粒子との重量比(シリコーン系界面活性剤:シリカ系粒子)は、2:1~1:200、1:1~1:150、1:2~1:100、1:5~1:50、又は、1:20~1:50であることが好ましい。
【0061】
難燃剤組成物中の分散媒の含有量は、分散媒の種類や使用する樹脂発泡体の原料組成物の組成/物性等に応じて適宜調整すればよい。例えば、難燃剤組成物中の粉体難燃剤、シリカ系粒子、及び、シリコーン系界面活性剤の合計の含有量を100重量部とした場合、分散媒の含有量は、50~500重量部、又は、50~200重量部であることが好ましい。
【0062】
<<<<難燃剤組成物の物性/性質>>>>
<<<25℃におけるチキソトロピー・インデックス値>>>
難燃剤組成物は、25℃におけるチキソトロピー・インデックス値(25℃TI値)が、1.0~6.0、1.5~5.5、又は、2.0~5.0であることが好ましい。
【0063】
25℃TI値は、以下の方法によって測定することができる。
試料50mLをサンプル瓶に移した後、25℃の恒温槽に入れて試料を25℃に保持し、B型粘度計(ブルックフィールド社製、ローターNo.4)を用いて、回転速度1rpm、及び、回転速度10rpmで粘度を測定し、その粘度の比(回転速度1rpmの粘度/回転速度10rpmの粘度)を25℃TIとする。
【0064】
難燃剤組成物の25℃TI値は、シリカ系粒子とシリコーン系界面活性剤の量比を適切な範囲にすることや、分散媒の量を調整することで、前記範囲に調整できる。
【0065】
<<<25℃粘度>>>
難燃剤組成物は、25℃粘度が、12,000mPa・s以上、15,000mPa・s以上、又は、20,000mPa・s以上であることが好ましく、また、100,000mPa・s以下、75,000mPa・s以下、又は、50,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0066】
25℃粘度は、以下の方法によって測定することができる。
試料50mLをサンプル瓶に移した後、25℃の恒温槽に入れて試料を25℃に保持し、B型粘度計(ブルックフィールド社製、ローターNo.4)を用いて、回転速度6rpmとして粘度を測定する。
【0067】
難燃剤組成物の25℃粘度は、シリカ系粒子とシリコーン系界面活性剤の量比を適切な範囲にすることや、分散媒の量を調整することで、前記範囲に調整できる。
【0068】
<<<<難燃剤組成物の製造方法>>>>
難燃剤組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、各種成分を含む組成物を撹拌機等により攪拌混合し、必要に応じて脱泡することで製造できる。各種成分は、同時に組成物に添加されてもよいし、適宜の順番で別々に組成物に添加されてもよい。例えば、固形成分と液性成分とを別々に調整し混合させる等してもよい。
【0069】
<<<<難燃剤組成物の用途>>>>
難燃剤組成物は、樹脂発泡体の製造用とすることができる。より詳細には、樹脂発泡体原料組成物の製造用とすることができる。
【0070】
具体的には、難燃剤組成物は、原料組成物を発泡させる工程を実施して樹脂発泡体を製造する際の、原料組成物に更に添加される成分として使用することができる。より具体的には、樹脂発泡体の原料と難燃剤組成物とを混合して原料組成物を調製し、原料組成物を発泡及び硬化し、必要に応じて加工等することで、難燃性の樹脂発泡体を製造することができる。
【0071】
難燃剤組成物を適用する樹脂発泡体の種類は特に限定されないが、ウレタン系発泡体乃至はポリイソシアヌレート系発泡体であることが好ましい。難燃剤組成物は、ポリウレア系発泡体、ポリエステル系発泡体、ポリスチレン系発泡体、ポリオレフィン系発泡体、ポリアクリレート系発泡体、エポキシ樹脂発泡体等に適用することも可能である。
【0072】
樹脂発泡体は、吹付によって製造されるものであってもよい。樹脂発泡体が吹付によって製造される場合、原料組成物は、2液系組成物とする等、複数の組成物として分割して保管される場合もある。このような場合、難燃剤組成物は、これら複数の組成物を混合する際に同時に添加されてもよいし、予めいずれかの組成物に添加されていてもよい。
【実施例0073】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下には限定されない。
【0074】
<<<原料>>>
<<分散媒>>
<リン酸エステル1>
塩素化リン酸エステル
<リン酸エステル2>
芳香族系リン酸エステル
<ポリオール化合物>
芳香族系エステルポリオール
【0075】
<<粉体難燃剤>>
<FR-1>
赤リン
Exolit RP607(クラリアント社製)
平均径:100μm
<FR-2>
ポリリン酸アンモニウム
Exolit Ap-422(クラリアント社製)
平均径:50μm
<FR-3>
ジエチルホスフィン酸アルミニウム
Exolit OP-930(クラリアント社製)
平均径:20μm
<FR-4>
膨張黒鉛
9550250(伊藤黒鉛社製)
平均径:300μm
【0076】
<<シリコーン系界面活性剤>>
<S-1>
DOWSIL SF-2937F(ダウ東レ社製)
PDMS-PPG/PEG共重合体、ペンダント型、HLB:13.0
重量平均分子量:8878
<S-2>
DOWSIL SH-192(ダウ東レ社製)
PDMS-PPG/PEG共重合体、ペンダント型、HLB:18.0
重量平均分子量:19891
<S-3>
DOWSIL SH-193(ダウ東レ社製)
PDMS-PPG/PEG共重合体、ペンダント型、HLB:19.0
重量平均分子量:2789
<S-4>
DOWSIL SZ-1333(ダウ東レ社製)
PDMS-PPG/PEG共重合体、直鎖型、HLB:3.5
重量平均分子量:24381
<<非シリコーン系界面活性剤>>
<S-5>
サンニックスLP-3000(三洋化成工業社製)
高級アルコール付加PEG-PPG共重合体 HLB:17.2
重量平均分子量:17348
【0077】
<<シリカ系粒子>>
<HS-1>
AEROSIL #200 (ヒュームドシリカ,粒径:200μm)
<HS-2>
AEROSIL #100 (ヒュームドシリカ,粒径:100μm)
【0078】
<<分散剤>>
<D-1>
不飽和カルボン酸ポリマー(BYK P-105)
<D-2>
ポリエーテルリン酸エステル(ディスパロンAQ-330)
<D-3>
ポリアクリル酸アンモニウム塩(SNディスパーサント5027)
【0079】
<<<難燃剤組成物の調製>>>
以下のようにして、各実施例及び比較例に係る難燃剤組成物を調製した。
難燃剤組成物に使用した各原料の配合量は表に示す通りである。
ディスポカップに、分散媒、分散剤を添加し、攪拌機を用いて、1,000rpmで10分間攪拌した。
粉体難燃剤を添加し、均一になるまで混合した。
界面活性剤を投入し、均一になるまで攪拌混合した。
減圧ポンプを用いて、組成物を減圧脱泡した。
【0080】
<<<評価>>>
各難燃剤組成物について、25℃粘度の変化、25℃TI値、濾過残量、外観・ケーキングを評価した。
【0081】
<<25℃粘度の変化>>
製造直後の難燃剤組成物の25℃粘度に対する、製造後に40℃の加熱炉内で1か月間静置した難燃剤組成物の25℃粘度の変化率を測定した。
25℃粘度の測定は、前述の方法に基づいて行った。
【0082】
<評価基準>
20%未満の増粘 :2点
20%~30%の増粘 :1点
30%超の増粘または減粘:0点
【0083】
<<25℃TI値>>
製造直後の難燃剤組成物と、製造後に40℃の加熱炉内で1か月間静置した難燃剤組成物と、25℃TI値と、を測定した。
25℃TI値の測定は、前述の方法に基づいて行った。
【0084】
<評価基準>
3.5以上5.0以下 :3点
2.0~3.5 :1点
2.0未満又は5.0超:0点
【0085】
<<濾過残量>>
難燃剤組成物を20g採取し、これを40メッシュのフィルターを用いて吸引ろ過を行い、濾過前後のフィルターの重量差(フィルター上に残った組成物残量)と、濾過に用いたサンプル重量から、濾過残量を求めた。
濾過残量の測定は、製造直後の難燃剤組成物と、製造後に40℃の加熱炉内で1か月間静置した難燃剤組成物とについて実施した。液体と固相に分離して、粉体をろ過できない場合には測定不可と判断した。
【0086】
<評価基準>
2.0%以下 :2点
2.0%超5.0%以下:1点
5.0%超又は測定不可:0点
【0087】
<<外観>>
40℃の加熱炉で1か月静置した難燃剤組成物について、サンプルの外観を目視で確認し、透明な液体(リン酸エステル)と、粉体成分とに分離していないかを確認した。
【0088】
<評価基準>
分離なし :〇(2点)
固相と液相に分離:×(0点)
【0089】
<<ケーキング>>
40℃の加熱炉で1か月静置した難燃剤組成物について、薬さじで組成物を触診し、薬さじの先端が動くかどうかを確認した。
【0090】
<評価基準>
薬さじの先端が抵抗なく自由に動く(ケーキングなし):〇(2点)
薬さじの先端を動かすことができない :×(0点)
【0091】
<<総合判定>>
各評価を参照し、総合得点が、15点以上を◎、10~14点を○、5~9点を△、4点以下を×と評価した。
【0092】
【0093】
【0094】