(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155960
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
B08B 5/02 20060101AFI20241024BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B08B5/02 Z
F04D25/08 301Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139617
(22)【出願日】2024-08-21
(62)【分割の表示】P 2022544538の分割
【原出願日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2020145871
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】江尻 忠勝
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 顕司
(72)【発明者】
【氏名】神田 伊吹
(57)【要約】
【課題】送風ファンとモータをユニット化することによって、ハウジングの小型化を図り、組立性の向上を実現させた送風機を提供する。
【解決手段】モータ25及び送風ファン32を内部に収容し、空気流を内部に吸気する吸気口と、空気流を前方側に向かって排気する筒状の排気口12を備えるハウジング2を有する送風機であって、モータ25とファン32は、モータケース21に組み込まれた組立体20としてハウジング2の本体部3に収容される。モータ25としてはブラシレスDCモータを採用し、モータ25の前方側にモータ回路基板36を搭載する。モータ回路基板36には半導体スイッチング素子が搭載され、モータは40,000回転/秒以上で駆動される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流を内部に吸気する吸気口と、前記空気流を排気する排気口を有する排気管と、を備えるハウジングと、
前記ハウジングの内部に収容される組立体と、を有し、
前記組立体は、ロータと、ステータと、前記ロータと一体で回転する駆動軸を有するモータと、前記駆動軸に固定され、前記空気流を発生させるファンと、前記ファンを収容するとともに前記モータの少なくとも一部を収容するモータケースと、を含み、
前記モータの駆動を制御するモータ回路基板を有し、
前記駆動軸の軸線上に前記排気口が配置され、
前記駆動軸の前記軸線方向における前記ファンと前記排気口の間に前記モータが配置され、
前記モータケースは、前記ファンから排出された空気を前記ステータの外周面に沿って流す送風通路を形成し、
前記モータ回路基板は、前記軸線方向における前記モータと前記排気口の間に、前記軸線方向と交差する方向に延び、前記モータ回路基板の一部が前記送風通路を前記軸線方向の下流側に延長した領域内に位置するように配置され、
前記ファンは、複数の羽根を有する遠心ファンであって、前記軸線を中心とする直径が前記モータ回路基板よりも小さく、径方向における前記羽根の配置範囲が前記ステータと重なり、
前記排気口は、直径が前記ファン及び前記モータ回路基板よりも小さいことを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記排気管と前記駆動軸とは同方向に延びており、
前記組立体は、弾性体を介して前記ハウジング内部に保持されることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記組立体は、互いに異なる方向に延在する複数のアーム部を有し、
前記弾性体は、前記複数のアーム部の各々の先端に被さるように取り付けられて、前記アーム部と前記ハウジングとの間に介在する複数の前側ゴムブッシュを含む、請求項2に記載の送風機。
【請求項4】
前記モータケースは、前記駆動軸の軸線方向の端部に内側吸気口を有し、
前記弾性体は、前記内側吸気口の外周に配置されて前記ハウジングとの間に介在する円筒形の後側ゴムブッシュを含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の送風機。
【請求項5】
前記組立体は、前記モータ回路基板を含むことを特徴とする、請求項2乃至4の何れか一項に記載の送風機。
【請求項6】
前記モータケースは、内側吸気口を有し、
前記吸気口に設けられるフィルターと、前記ハウジングの内部に配置されて前記内側吸気口を覆う網と、を有することを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の送風機。
【請求項7】
バッテリパックが装着可能なバッテリパック装着部が前記ハウジングの下側に形成され、前記バッテリパックの底面を床面に当接させて自立可能であることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載の送風機。
【請求項8】
上方視において、前記モータ及び前記ファンが前記バッテリパックの外縁範囲内に収まることを特徴とする、請求項7に記載の送風機。
【請求項9】
前記ハウジングは、前記組立体を収容する本体部と、少なくとも一部が前記駆動軸の軸線と交差する方向に延びるハンドル部と、を有し、
前記吸気口は、前記ハンドル部に設けられることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか一項に記載の送風機。
【請求項10】
前記ハウジングは、前記組立体を収容する本体部と、少なくとも一部が前記駆動軸の軸線と交差する方向に延びるハンドル部と、を有し、
前記モータ回路基板は、前記モータへ電流を出力するインバータ回路を有し、
マイコンを搭載し前記インバータ回路を制御する制御回路基板が、前記ハンドル部に設けられる、請求項1乃至9の何れか一項に記載の送風機。
【請求項11】
前記排気管に着脱可能に取付けられる筒状のノズルを有する、請求項1乃至10の何れか一項に記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に収容されたファンの回転によって空気を吸気口からハウジング内に吸引し、排出口からハウジング外へ排出させる送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送風機の一例として、特許文献1のようなファンから送出される空気流で塵埃を吹き飛ばす送風機が知られている。このような携帯用の送風機は、モータにより駆動されるファンにより送風機のハウジングに形成された吸気口から外部の空気を取り込み、吸引された空気を排気口に取りつけられたノズルを介して任意の領域に吹き出す。作業者は、送風機のハンドル部を握りながら清掃作業を行う。この作業の一例は、ノズルを前方斜め下に向けて送風機本体を保持し、ノズルを左右に振りながら清掃対象に付着したごみ等を吹き飛ばすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の送風機では、モータのステータ及びロータを内部に収容するモータケースが設けられ、このモータケースの外側であって、ハウジングの風路内に露出するようにファンが配置されていたため、送風機の筐体の小型化を図るための設計上の阻害要因となっていた。また、携帯用の送風機では、送風機の組み立て効率を向上させることによる製造コストダウンが望まれていたが、組み立て工程においてモータケースをハウジングに取り付けた後に、別途ファンをモータの回転軸に取り付ける工程等が必要となるため組立工数が多くなっていた。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、送風ファンとモータの構造を変えることによって小型化を図った送風機を提供することにある。本発明の他の目的は、送風ファンとモータをユニット化することによって、ハウジングの実装効率を向上させ、組立性も改善した送風機を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、電池パックの装着位置を改良することにより、バランスがとれて吊り下げがしやすく、床等への載置もしやすくした送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。本発明の一つの特徴によれば、空気流を内部に吸気する吸気口と、空気流を排気する排気口を有する排気管と、を備えるハウジングと、ハウジングの内部に収容される組立体と、を有する送風機であって、組立体は、ロータと、ステータと、ロータと一体で回転する駆動軸を有するモータと、駆動軸に固定され、空気流を発生させるファンと、ファンとモータの少なくとも一部を収容するモータケースと、を含んで構成される。また、送風機は、モータの駆動を制御するモータ回路基板を有し、駆動軸の軸線上に排気口が配置され、駆動軸の軸線方向におけるステータと排気口の間に、モータ回路基板が配置される。また、排気管に着脱可能に取付けられる筒状のノズルを有する。
【0007】
本発明のさらに他の特徴によれば、駆動軸の軸線上に排気口が配置され、駆動軸の軸線方向におけるファンと排気口の間にモータが配置され、モータケースはファンから排出された空気をステータの外周面に沿って流す送風通路を形成する。また、モータ回路基板は、軸線方向におけるモータと排気口の間において、軸線方向と交差する方向に延びるように配置され、モータ回路基板の一部が送風通路を軸線方向の下流側に延長した領域内に位置する。排気口の直径は、モータ回路基板の直径よりも小さく形成される。モータケースは、ファンから排出された空気をステータの外周面に沿って流す送風通路を形成する。また、排気管と駆動軸とは同方向に延びており、組立体は、弾性体を介してハウジング内部に保持される。
【0008】
発明のさらに他の特徴によれば、送風機のハウジングに収容される組立体は、互いに異なる方向に延在する複数のアーム部を有し、弾性体は、複数のアーム部の各々の先端に被さるように取り付けられて、アーム部とハウジングとの間に介在する複数の前側ゴムブッシュと、モータの駆動を制御するモータ回路基板を含む。モータケースは、駆動軸の軸線方向の端部に内側吸気口を有し、弾性体は、内側吸気口の外周に配置されてハウジングとの間に介在する円筒形の後側ゴムブッシュを含んで構成され る。モータケースは、内側吸気口を有し、吸気口に設けられるフィルターと、ハウジングの内部に配置されて内側吸気口を覆う網と、を有する。
【0009】
発明のさらに他の特徴によれば、バッテリパックが装着可能なバッテリパック装着部がハウジングの下側に形成され、バッテリパックの底面を床面に当接させて自立可能である。また、送風機の上方視において、モータ及びファンがバッテリパックの外縁範囲内に収まるように配置される。さらに、ハウジングは、組立体を収容する本体部と、少なくとも一部が駆動軸の軸線と交差する方向に延びるハンドル部と、を有し、吸気口は、ハンドル部に設けられる。ハウジングは、組立体を収容する本体部と、少なくとも一部が駆動軸の軸線と交差する方向に延びるハンドル部と、を有し、モータ回路基板は、モータへ電流を出力するインバータ回路を有し、マイコンを搭載しインバータ回路を制御する制御回路基板が、ハンドル部に設けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータとステータは、モータケースに組み込まれた組立体としてハウジングの内部に収容されるので、組み立て効率が高い送風機を実現できた。また、ハウジングのモータ組立体の直下に電池パックを接続するようにしたので、床等に送風機を載置する際に、電池パックを脚部として利用して自立させることができる。この結果、ハウジング側に脚部を設けなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る送風機1の側面図である。
【
図3】
図2の送風機1のモータユニット20の状況を示す上面透視図である。
【
図4】
図2のモータユニット20の縦断面図である。
【
図5】
図2のモータユニット20の近辺の抜粋した図であり、モータ25と風路の大きさの関係を説明するための図である。
【
図7】
図6の状態からモータ25を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【
図8】
図6の状態を別の方向から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0013】
図1は本実施例に係る送風機1の側面図である。
図1に示す送風機(ブロワ)1は、コードレス方式であって、バッテリパック100の電力によりハウジング2内に内蔵されたモータ25(
図2で後述)を駆動し、これによりファン32(
図2で後述)を回転させ、強い空気流をノズル60から前方側(第1の方向)に噴射させる。ノズル60は、ハウジング2への取付側が直管状の円筒接続部61となり、円筒接続部61から先端部63に至るにつれて直径が絞り込まれたテーパー部62を有する。ノズル60はハウジング2に着脱可能であって、円筒接続部61の周方向の2カ所には径方向内側から外側に延在する突起64が形成され、ノズル60のハウジング2への取付け及び固定用に利用される。ノズル60は、ハウジング2の排気口12a(符号は
図2参照)から吐出される空気流の中心軸線A1と同軸に形成される。作業者は、送風機1のハンドル部4を握って、ノズル60からの空気を噴射対象に当てながら噴射対象に付着したゴミを吹き飛ばす作業をおこなう。例えば、床面や机上などの水平な面の清掃作業においては、ノズル60を水平よりも斜め下方に向けて送風機1を保持し、ハンドル部4を左右に振ることでノズル60を左右に振りながら清掃対象物に空気を噴射する。
【0014】
ハウジング2は合成樹脂製の成形によって一体に製造され、胴体部分となる本体部3とハンドル部4とバッテリパック装着部6を含んで構成される。本体部3はノズル60の中心軸線A1に長手方向を有する筒状の形状とされる。ハンドル部4は本体部3の上部から後部にかけて形成されるもので、作業者が把持する部分となる。ハンドル部4には、水平方向に延在する上側把持部4aと略鉛直方向に延在する後側把持部4bが形成され、上側把持部4aと本体部3と接続するために前側接続部4cが形成され、後側把持部4bと本体部3と接続するために下側接続部4dが形成される。本体部3とハンドル部4の間は、作業者が把持する際に指を通すための貫通部5となり、貫通部5の断面形状は、右側側面視では略L字状となる。ハウジング2は、左右中央の分割面で2分割された状態でそれぞれ成形され、図示しない複数のネジによって固定される。ハウジング2の分割面は、本実施例では中心軸線A1を通る鉛直面と一致するが、ハウジングの分割数や、分割面の配置は任意である。ハウジング2の外面の大部分にはエラストマの層が形成され、さらに後側把持部4bの一部のエラストマ部分には滑り止め用の凹凸面4eが形成される。
【0015】
ハンドル部4の上側把持部4aの上面には、モータ25(
図2で後述)のスイッチを設けたスイッチパネル50が設けられる。また、ハンドル部4の前側接続部4cの右側側面と左側側面には吸気口14が形成される。吸気口14は、外気をハウジング2の内部空間に吸引するための風窓であり、水平方向に細長い形状のスリットを複数形成したものである。各スリットは前側接続部4cの壁面を外側から内側に貫通することによって前側接続部4cの外部と内部に空気が出入りできるように構成したもので、ハウジング2の合成樹脂の成形射出時に形成される。吸気口14を構成する11本のスリットは、中心軸線A1と略平行方向に細長い形状であり、上下方向に並べて配置される。吸気口14を細長いスリットにて形成したのは、吸気口14から内部に異物の吸入を抑えるためである。また、細かい粉塵の吸入を防ぐために吸気口14にフィルターを設けるようにしても良い。
【0016】
ハンドル部4の上側把持部4aと後側把持部4bに吸気口を設けると、作業者が把持した際に吸気口を塞ぐ虞がある。よって、上側把持部4aと後側把持部4bには吸気口を設けることができないので、送風機1は前側接続部4cと下側接続部4dのいずれか一方、又は双方に吸気口14を設けることになる。本実施例では、前側接続部4cに吸気口14を設けることにより、吸気口14から後述するファン32(
図4参照)に至る通気通路を確保するようにした。
【0017】
ハウジング2の本体部3の下側にはバッテリパック装着部6が形成され、バッテリパック100がバッテリパック装着部6に、即ち、本体部3の中央下部に装着される。バッテリパック100は電動工具で広く用いられているものであって、合成樹脂製のケース101、102の内部に図示しない複数の電池セルを収容したものである。電池セルは、充電及び放電を繰り返し行うことのできる二次電池であり、例えばリチウムイオン電池セルを用いることができる。バッテリパック100の出力は、例えば直流18V、36Vである。バッテリパック装着部6は、左右方向に所定の距離を隔てて前後方向に水平に延びる2本のレール部(図では見えない)を形成すると共に、バッテリパック100との電気的な接続を確立するための接続端子群を配置する。バッテリパック100は、ハウジング2の後方側から前方側に水平移動させることによってハウジング2に装着される。また、バッテリパック100をハウジング2から取り外す際には、バッテリパック100の左右両側面に設けられるラッチボタン104a(後述する
図2参照)、104bを押し込みながらバッテリパック100をハウジング2の後方側に水平移動させる。
【0018】
ハウジング2にバッテリパック100が装着されると、バッテリパック100の底面を脚部として送風機1を机上等の載置面に安定して載置可能となる。つまり、バッテリパック100の底面を載置面との接触箇所とすることにより送風機1のハウジング2に専用の脚部を形成しなくても済む。このようにハウジング2に脚部を設けないことにより送風機1の更なる小型化が可能となる。尚、本発明はハウジング2側に脚部を形成することを除外する訳ではないので、バッテリパック100の底面だけでなく、別の脚部を設けても良い。脚部を設ける場合も同様に、ノズル60による送風方向の中心軸線A1が、バッテリパック100の床面の面方向、又は、レール部の延在方向に対して斜めになるようにして、排気方向が下流側にいくにつれて載置面に近づくように傾けると良い。
【0019】
バッテリパック100と本体部3の間のバッテリパック装着部6には、送風機1を作業者のベルトに吊り下げるためのフック75が取り付けられる。フック75は略U字状に折り曲げた金属製の着脱可能な部材であり、略U字状の一方側(外側)の延在部が前後方向に延びる爪部となる。略U字状の他方側(内側)の延在部にはネジ穴(図では見えない)が形成され、ネジ76によってハウジング2に固定される。略U字状のフック75の開口側はノズル60側(第1の方向側)に向いており、フック75にて送風機1を吊り下げた際にはノズル60の先端が下向きで後側把持部4bが上側になり、吊り下げ後に作業者が把持しやすい吊り下げ状態となる。尚、バッテリパック装着部6の左側側面だけでなく、右側側面にもフック75の取付用のネジ穴を形成すれば、フック75をハウジング2の右側側面又は左側側面の何れかに固定することが可能である。
【0020】
本実施例の送風機1は、従来の大型のファンを用いた送風機に比べて小型・軽量に構成される前後上下方向に見たバッテリパック100を取り外した際のハウジング2側の重心位置は96であり、バッテリパック100単体の重心位置は98である。ここでは、ハウジング2側全体の重量と、バッテリパック100の重量が近い値とされる。例えば、本発明者らによる試作では、ハウジング2側全体の重量が650gであり、バッテリパック100の重量が700gであった。この試作による送風機1では、バッテリパック100を装着した際の送風機1全体の重心位置は97となる。重心位置97は、フック75のネジ76による取り付け位置にきわめて近いため、フック75による吊り下げ時の安定性が良好となる。尚、装着するバッテリパック100は、
図1で示したような形状のもの以外にも、重量が975gの大型のバッテリパック、重量が680gの小型のバッテリパック等から選択可能である。装着するバッテリパック100のサイズによって全体の重心位置97は変わることになるが、バッテリパック100の質量は、バッテリパック100を除いた本体側の質量の0.8倍以上1.8倍未満とすると重量バランス的にきわめて好都合である。このようにして全体重心位置97がフック75の近傍位置に留まるようにすれば、吊り下げがしやすくなる。また、全体重心位置97が上側把持部4aの直下にあるので、作業者が上側把持部4aを把持した際の重量バランスが良好になる。
【0021】
図2は本実施例の送風機1の中心軸線A1を通る縦断面図である。本実施例ではモータ25(
図4参照)とファン32(
図4参照)とモータケース(22、23)等が一体の組立体、即ち、モータユニット20として事前に組み立てられる。モータユニット20は、製造組み立て工程において、ハウジング2の略円筒形の本体部3に組み込まれる。この際、本体部3の内壁とモータユニット20の外縁が所定の距離を隔てるようにして、モータ25の回転軸の軸線が送風機1の吐出方向の中心軸線A1と一致するように配置される。モータユニット20は、後方側に吸引用の開口(吸気口23a)を有し、モータユニット20の中心軸線A1方向中央付近の外周付近に排出口22dが形成され、排出口22dから矢印89のように前方に空気を排出する。
図2では矢印89を上側及び下側の2カ所しか示していないが、排出口22dは円環状にほぼ連続する開口であるので、周方向においてまんべんなく矢印89のような空気流が発生する。このようにハウジング2の内部に収容されたモータユニット20内に内蔵されるファン32(
図4参照)によって送風が行なわれる。このようにファン32は2重のハウジング(ハウジング2とモータケース21)の内部に収容されるため、作業者に伝わる動作音を小さくすることができる。
【0022】
バッテリパック100の電力によってモータ25が回転すると、モータ25の図示しない回転軸(出力軸)に取りつけられたファン32が回転することによってハウジング2の内部のうち、吸気口14よりも上流側(矢印86の付近)が負圧になるので、吸気口14から矢印80のように外気がハウジング2の内部に吸入される。ハンドル部4のうち前側接続部4cの内部空間は上側が開口して上側把持部4aの内部空間と連結される一方で、下側側が仕切り壁10で内部空間が閉鎖されている。一方、ハンドル部4は、前方側(第1の方向)とは反対側の後方側(第2の方向側)にて本体部3と内部空間が連通するように接続されている。従って、吸気口14から吸引された空気(外気)は矢印81~82のように上側把持部4a内を後方に流れて、上側把持部4aから後側把持部4bに流入して、後側把持部4b内を矢印83、84のように流れる。後側把持部4bは下側接続部4dの後端に内部空間が接続されるため、下側接続部4d内に流入した空気は前方側に向きを変えて、矢印85、86のように流れて
図4に示すファン32によってモータユニット20の内部空間に吸引される。
【0023】
ファン32(
図4参照)によって排出される空気は矢印89のようにモータユニット20から排出され、矢印90、91のように流れて、排気口12aに到達する。排気口12aを有する排気管12の前方(第1の方向側)には、空気通路の断面面積が下流側に行くにつれて絞り込まれるように形成されたノズル60が接続されている。ノズル60は、排気口12aから排出された空気の流路を矢印92のように絞ることによって流速を高めるためと、特定の対象物に矢印93のような空気流を当てやすくするために所定の軸方向長さを有する。ノズル60は合成樹脂の一体成形で製造され、その後端部には、径がほぼ一定の円筒接続部61が形成され、円筒接続部61から小さい径の吐出口65に至るまでが、徐々に径が小さくなるようなテーパー部62となる。
【0024】
本実施例ではハウジング2の内部空間のほぼすべて、即ちハンドル部4から本体部3の内部空間を矢印80~91に示すような空気の通路(流路)として活用する。ハンドル部4の前側接続部4cと本体部3との前方側の接続部分は、仕切り壁10によって空気の流れを阻害するように閉鎖される。但し、配線13a、13bを通すための必要最小限の貫通穴10a(符号は後述の
図5を参照)だけは構成される。ハンドル部4と本体部3との後方側の接続部分は内部空間が連通するように構成され、空気がハンドル部4と本体部3の間で流れる風路として利用される。このようにハンドル部4の側面に形成される吸気口14を形成したことで、ハウジング2の貫通部5の周りを、右側面視で反時計回りに、一方方向に回るような空気の流れを起こすことができる。この構成により、ハウジング2を小型化しても吸気通路の長さを十分確保でき、送風機1の吸入音を十分抑制することが可能となり、静粛性の高い送風機を実現できた。
【0025】
バッテリパック100の上側のケース101には、バッテリパック装着部6側のレール部と嵌合するためのレール溝103a、103b(図では103bは見えない)が設けられる。レール溝103a、103bの間には、複数のスリットとスリットの内部に配置された複数の端子を有するバッテリ側端子部106が形成される。また、レール溝103a、103bの後方側にはラッチボタン104a、104b(
図1参照)が形成される。バッテリパック装着部6にバッテリパック100が取り付けられると本体側接続端子57はバッテリ側端子部106と嵌合するので、バッテリパック100の電力をモータ25に供給することが可能となる。本体側接続端子57とモータ25及びスイッチパネル50は配線13a、13b、16a、16bと、複数の信号線16cにより接続される。
【0026】
スイッチパネル50は作業者によって操作される操作部であって、複数のタクタイルスイッチ又はソフトタッチスイッチが配置される。ここでは、モータ25の回転数を、強、弱の2段階に設定可能である。また、スイッチパネル50にはバッテリパック100の残量警告ランプ(LED54)が設けられ、残量が少なくなるとモータ25の運転中を示すLEDが点灯して、バッテリ不足を作業者に知らせるように構成される。本実施例では、モータ25のスイッチ回路として従来から広く用いられるスライド式の多接点スイッチやトリガスイッチを用いる代わりに、タクタイルスイッチ52~54を用いた。タクタイルスイッチ52~54のような薄型のスイッチを用いることにより、ハンドル部4の内部空間で占めるスイッチパネル50の厚さを薄くして、特にハンドル部4の内部空間で空気の流れる断面を塞ぐ面積を小さくすることが可能となる。スイッチパネル50の下側には、制御回路基板55が配置される。制御回路基板55はモータ25の回転制御を行う回路を搭載する基板であって、その回路には汎用のマイコンを含む。制御部は、バッテリパック100から供給される直流をPWM(Pulse Width Modulation)制御をすることによってモータ25の回転数を制御する。また、制御回路基板55とスイッチパネル50を一つの組立体として製造できるので、組立性が良くなるうえに、各スイッチから制御部5への必要な配線長を短くできる。
【0027】
図3は送風機1のモータユニット20の配置図(上面部)である。ハウジング2を形成する右側分割片2Aと左側分割片2Bは、ネジボス17a~17b(
図2参照)の部分を除いて、鉛直な分割面に対して左右対称に形成される。点線で示すハウジング2はモータユニット20よりもわずかに広い左右幅を有する。また、上方視でバッテリパック100の配置範囲内、つまり左右方向範囲内及び前後方向範囲内にモータユニット20が配置されるような構成とされる。このように上面から透視した際には、ファン、モータ、モータ回路基板36のすべてがバッテリパック100の外縁範囲内に収まる。このような配置は、送風機1の本体側の構成物のうち、一番の重量物(モータユニット20)が送風機1の中心(前後中心、左右中心)に近づく位置に配置されるので、マスの集中化による使いやすい送風機1が実現できる。
【0028】
バッテリパック装着部6(符号は
図1参照)には、ハウジング2側に形成されたレール部58a、58b(
図2参照)と係合するレール溝103a、103bが形成される。
図3にてわかるように、本実施例のモータユニット20の左右中心位置は、レール溝103a、103bの左右中心位置と一致しており、それらの左右中心位置は排気管12の中心軸線A1を通る鉛直面に位置する。
図3ではフック75が左側に装着されている状態を点線で示している。略U字状のフック75は開口75aが前方側となり、U字状に略U字状の一方側(外側)の延在部が爪部75bとなり、略U字状の底部分が掛止部75cとなる。フック75の取付位置は電池パック100の前後方向の範囲内に収まるように配置され、送風機1の吊り下げ時のバランスがとりやすいように構成される。
【0029】
図4は送風機1のモータユニット20の縦断面図である。モータユニット20は、モータ25と、ファン32と、モータ回路基板36をユニット化した組立体である。ここでは、吸気口23aが送風機1の後方側、即ち、モータ25に対してノズル60とは反対側に配置され、モータ25と吸気口23aの間にファン32が配置される。金属製のモータケース21の内側には、ブラシレスDC方式のモータ25が配置される。モータ25は、回転軸31に永久磁石を有するロータ26が固定され、ロータ26の周囲にステータコア27が配置されたものである。ステータコア27は積層鉄心で構成された3つの磁極を有し、前後に断面形状が磁極とほぼ同じ形状の合成樹脂製のインシュレータ29、30を回転軸線方向に接合させて、インシュレータ29、ステータコア27、インシュレータ29の磁極の周囲にエナメル線を巻くことによりステータコイルが形成される。モータ25の回転軸31は、ステータコア27の前側及び後側にて軸受24a、24bにて軸支される。前側の軸受24aは、取付部材33によって保持され、後側の軸受24bはメインケース22の後側に取り付けられる後壁部22cによって保持される。
【0030】
ステータコア27の前方側には、モータ25の回転制御用のモータ回路基板36が設けられる。モータ回路基板36は、略円形の多層基板であり、表面(前側)と裏面(後側)に、コンデンサや半導体スイッチング素子37等の多数の電子素子が搭載される。図では一部しか図示していないが、モータ回路基板36には半導体スイッチング素子37として6つのFET(電界効果トランジスタ)が搭載される。モータ回路基板36は、取付部材33を用いてステータコア27に固定される。取付部材33はアルミニウム合金の成形品であり、円筒部33aを有し、円筒部33aから後方側にはステータコア27に固定するためのネジボス33a~33c(図では33bしか見えない)が構成される。また、取付部材33には、モータユニット20をハウジング2に固定するために上方向及び下方向に延在する2つのアーム部34a、34bが形成される。アーム部34a、34bは、取付部材33と一体に形成されるものである。取付部材33の円筒部33aの外縁の2カ所から斜め前方に延在し、モータ回路基板36の径方向外側付近にて、上方向又は下方向に延在する。アーム部34a、34bの先端付近は、ハウジング2に固定するための爪部となり、それら先端付近にゴムブッシュ47a、47b(共に
図1参照)を被せるようにしてハウジング2の凹部9a、9b(
図2参照)に固定される。
【0031】
ブラシレスモータは、高回転での回転が可能であり、例えば、80,000回転/秒程度又はそれ以上の高い回転数が達成できる。従来のブラシ付き直流モータを使用する場合は、モータ25の回転数はせいぜい3万数千回転程度であった。本実施例では、ブラシレスDCモータを採用することにより、モータ25の駆動が“強”の場合は80,000回転/秒、“弱”の場合は40,000回転/秒を可能とした。このような送風機1の稼働時のモータの回転数を40,000回転/秒以上と、高い速度に設定することでモータユニット20の筐体内に収まる小さなファン32を用いつつも十分な風量を達成することができた。例えば、モータ25はノズル60において最も内径が小さい部分の内径が7~9mmと改定した際には、風速が130m/秒以上となるようにファンを回転可能である。尚、本実施例においてモータ25の形式は任意であり、モータケース21内に収容できて、ファン32を所望の高い速度で回転できるならば、ブラシレスDCモータ以外のモータを採用しても良い。
【0032】
モータケース21は、メインケース22とその後側に装着されるファンケース23によって構成される。メインケース22は、ステータコア27とほぼ同径に形成された内筒部22aと、外筒部22bと、内筒部22aと外筒部22bの後端付近を径方向に接続する後壁部22cを含んで構成される。つまり、外筒部22bと内筒部22aは、中心軸線方向に見た断面形状が円形である。後壁部22cは、全体を壁面で構成されるのではなく、内筒部22aと外筒部22bの間に接続用の支柱となる部分を形成した程度であり、支柱部分以外は回転軸線A1方向の後方から前方に貫通する送風通路38となっている。メインケース22の後壁部22cの後側には、中心軸線A1方向後方に回転軸31が突出し、回転軸31の先端にはブッシュ32dによってファン32が取り付けられる。ファン32は遠心ファンであって、前方側の円盤32aと後方側の円錐壁32bの間に複数の羽根32cが合成樹脂の一体成形により製造される。円錐壁32bの軸心部分には、円形の吸引口32eが形成される。
【0033】
ファンケース23は、後方の壁面の中心軸付近に吸気口23aが形成され、吸気口23aの周囲には円筒部23bが形成され、円筒部23bから外筒部23dの間が緩やかな円弧状の後壁面23cとなる。このようにファンケース23がメインケース22に取り付けられることで、メインケース22とファンケース23との間にファン32が回転する空間を画定する。ファン32が回転すると、モータ25の回転軸線の後方側から空気を吸引して(矢印86)、羽根32cの間を通って矢印87のように径方向外側に流れてファン32から排出される。ファン32から排出された空気は、ファンケース23とメインケース22の内壁部に案内されて、送風通路38内を矢印88の方向に流れて、メインケース22の排気側の開口たる排出口22dよりモータケース21の外側空間に排出される。
【0034】
モータケース21は合成樹脂の成形品であって、その一部がモータ25の円筒状のケースの一部に固定され、外周側の一部がハウジング2の内壁部に形成された取付リブ40(
図2を参照)に固定される。つまり、モータケース21は、ファン32の回転空間を画定するファンガイドの機能と、モータ25をハウジング2に固定するためのモータ保持部材としての機能を果たす。ファン32の外周面及び後方側はモータケース21によって覆われる。
【0035】
モータケース21の排出口22dから排出された空気は、ステータコア27の外周面に沿って前方側に流れて、取付部材33の径方向外側と、モータ回路基板36の径方向外側を通って、前方側に向けて排出される。このようにモータ25とファン32を収容するモータケース21の内部を通った空気は、前方側に向けて排出口22dより排出される。ファン32の外径はDf(43mm)である。尚、ファン32の外径は38mm以上50mm以下とすることが好適である。
【0036】
図5は、
図2のモータユニット20の近辺の抜粋した図であり、モータ25と風路の大きさの関係を説明するための図である。ハウジング2の凹部9a、9b(
図2参照)等の一部の記載は省略している。吸気口23aの外周側にはゴムブッシュ41を介在させることにより、ハウジング2の本体部3の壁面から中心軸線A1に近づくように突出する取付リブ40によってモータユニット20が保持される。図では取付リブ40の範囲がわかるようにハッチング線を付している。ゴムブッシュ41は円筒状であり、モータユニット20の後端部をハウジング2に保持するともに、モータユニット20の発する振動をハウジング2側に伝達させない制振材としての機能を果たす。さらに、吸気口23aに大きなゴミ等が入り込むことを防止するための網(図示せず。編み目は例えば1~2mm程度で、金属製又は合成樹脂製)を固定する固定具としてゴムブッシュ41を利用できる。網の固定方法は種々考えられるが、例えばゴムブッシュ41に網を鋳込むようにしも良い。さらには網を、ゴムブッシュ41に着脱可能に構成しても良いし、その他の固定方法であっても良い。
【0037】
モータユニット20は、ハウジング2に対して外周面との間に隙間42~44を有するように取付られる。但し、モータケース21の外側とハウジング2との間、即ち排出口22dと取付リブ40の間の部分は、風路として積極的に利用しないため、モータケース21とハウジング2との隙間44を更に小さくしたり、スポンジ等の弾性材を介在させるようにしても良い。吸気口23aからモータユニット20の内部に吸引された空気は、モータケース21の内筒部22a(
図4参照)と外筒部22b(
図4参照)の間を通って、排出口22dから隙間43の部分に排出される。吸気口23aの直径はD
1(17mm)である。ここで、モータユニット20の収容空間は、取付リブ40よりも中心軸線A1の前方側でほぼ一定であり、直径D
2(61mm)の円筒状の空間となっている。ファンの外径は、前記ステータの外径の1.5倍以内とするのが好ましい。モータケース21が位置する部分のモータユニット20の内径も一定である。略円形に形成されるモータ回路基板36は直径D
Cであって、直径D
C(48mm)は、モータ25のステータコア27の直径D
m(40mm)よりも大きく、収容空間の直径(内径)D
2よりも小さい関係となっている。D
mに対するD
fの比は0.8倍以上1.2倍程度が好適である。
【0038】
モータユニット20の前方側では、排出口22dから吐出される空気の流速を高めるため、風路はテーパー状に絞り込まれたテーパー部が形成される。つまり、空間44の部分(テーパー部)では外側の壁面が円錐状絞り込まれるように形成される。排気管12の内側となる空間45の部分では再び円筒状の風路とされ、空間45の前側の開口が排気口12aとなる。ここで、排気管12の内径(直径)はD
3(23mm)であり、D
2>D
C>D
f>D
m>D
3>D
1の関係となる。このようにモータ回路基板36の直径D
Cがステータコア27の直径D
mよりも大きく形成され、さらにモータ回路基板36は中央付近に貫通穴を有しないので、モータ回路基板36の実装面積を十分確保することが可能となり、モータ回路基板36上にインバータ回路を搭載することが容易になる。また、ファン32の風下側に晒される部分にモータ回路基板36が配置され、半導体スイッチング素子が搭載されるので、半導体スイッチング素子の冷却効率を高めることができる。さらに、モータ回路基板36から仕切り壁10を貫通させて配線13a、13bを制御回路基板55(
図2参照)まで接続できるので、短い距離で効率よく配線することが可能となる。
【0039】
空間44付近には、リブ19a~19cが設けられる。リブ19a~19cは、ハウジング2の内壁部分から中心軸線A1を通る鉛直面(=ハウジング2の分割面)に接近するように延在するものであり、ハウジング2の成形時に同時に形成される。リブ19a~19cは、空気の流れを整流する作用を奏する上に、ノズル60を取り外した際に排気口12aから手や異物を内部に入れることができないようにする機能を奏する。ハウジング2の左側部分から延在するリブ19a~19cと、右側部分から延在するリブ19a~19cは、分割面から左右対称に形成され、分割面付近で所定の距離、即ち作業者の指を入れることができない程度の近い距離まで接近する。尚、左右両側の内壁面から分割面方向に延在するリブ19a~19cの先端を互いに接触させるように構成しても良い。
【0040】
ハウジング2の前方側には排気口12aが配置される。右側分割片2Aの半筒部分と、左側分割片2Bの半筒部分を合わせることにより形成される。それぞれの半筒部分の内周面には、側面視でL字状の取付部8が形成される。
図5ではハウジング2の左側分割片に形成された部分だけしか見えないが、ハウジング2の右側分割片にも同様の取付部8が中心軸線A1を基準に回転対称となるように配置される。取付部8は排気口12aの開口面から中心軸線A1方向に延びる軸方向切り欠き部8aと、軸方向切り欠き部8aの後端付近から周方向に直角に曲がり、円周方向に円周角で約90度分延びる円周方向切り欠き部8bによって構成される。一方、
図3にて示したようにノズル60の円筒接続部61には、取付部8の内部に位置する突起64が周方向に180度離れた位置に設けられる。ノズル60を取りつけるには、ノズル60の突起64と取付部8の位置を合わせてから軸方向にノズル60を押し込み、周方向に相対回転させる。円周方向切り欠き部8bの一部には、ノズル60に形成された突起64が安定して円周方向切り欠き部8bの終端部に安定して位置するように、ラッチ用の凸部8cが形成される。
【0041】
図6は送風機1の分解斜視図である。ここでは、ハウジング2は右側分割片を取り外して左側分割片だけの状態を示している。モータユニット20は、ハウジング2の本体部3の内部に収容され、前方上側がゴムブッシュ47aを介してハウジング2に把持される。
図6では見えないが、モータユニット20の前方下側は、ゴムブッシュ47b(
図2参照)を介してハウジング2に保持される。モータユニット20の後方側は、円筒状のゴムブッシュ41によってハウジング2の取付リブ40により保持される。ハウジング2にモータユニット20を組み込む際には、
図4で示したように予め組み立てられた組立体を左右分割式のハウジング2に挟持させるので、組み立て性が良好である。
【0042】
モータユニット20の排出口22dから排出された空気は、モータ回路基板36に周囲を通ってノズル60側に流れる。ここで、モータ回路基板36は略円形であって、中央付近に開口穴を有しない形状である。また、モータ回路基板36は完全な円形でなく、左右両側にわずかに延在させたような長円形とすることにより、モータ回路基板36上にインバータ回路を構成する半導体スイッチング素子(図示せず)や、電解コンデンサ(図示せず)のような大きな電子素子を搭載することが可能となる。また、モータ回路基板36の中心軸線A1付近には基板の表側から裏側に貫通するための貫通穴が形成されないので、モータの回転制御を行うためのマイコン以外のほとんどの電子素子をモータ回路基板36上に搭載することが可能となった。
【0043】
モータ回路基板36の前方側には、中心軸線A1と平行に延在するリブ19a~19cが形成される。リブ19a~19cは排気管12よりもモータユニット20側に近い部分、即ち、テーパー状に絞り込まれた風路部分に形成される。
【0044】
モータユニット20の直下には、バッテリパック100が装着される。バッテリパックは左右方向に平行に配置されたレール溝103aが形成される。レール溝103aは、バッテリパック100の右側側面を凹状に窪ませた部分であり、窪ませた溝部分の前側端部は開口し、溝部分の後側端部は閉鎖されており、その後端部付近にラッチ爪105aが形成される。バッテリパック100の後方上部は、バッテリチェック用のスイッチ107が設けられ、スイッチ107を押すことによって電池電圧に対応した数のLED108が点灯することによって、作業者はバッテリパック100の残量を確認することができる。
図6では本体側接続端子57の一部が図示される。本体側接続端子57は前後及び上下方向に延在する金属板であり、左右方向に複数枚配置され、バッテリパック100の装着時に本体側接続端子57の先端が上ケース101内に入り込むことにより、バッテリ側端子部106(図では見えない)と嵌合する。
【0045】
送風機1の操作部となるスイッチパネル50には、モータ25のオンスイッチ(強、弱)としてタクタイルスイッチ53、54が設けられ、オフスイッチとしてタクタイルスイッチ52が割り当てられる。このようにタクタイルスイッチ53、54を一度押すとオフスイッチ(タクタイルスイッチ52)が押されるまでは、オンロック状態が維持され、さらに送風機1がバッテリパック100により自立可能であるので、作業者が把持しないで机上や床面に送風機1をおいた状態で送風作業を行うことが可能となる。モータ25が回転中にはLED51が点灯する。スイッチパネル50の下側には制御回路基板55が設けられ、モータ25の回転制御を行う制御部が搭載される。制御部には、モータ25の回転用の励磁電流を出力するインバータ回路を制御する。このようにインバータ回路を有するモータ回路基板36が、モータユニット20側に設けられるのに対して、インバータ回路の制御を行う制御部が制御回路基板55上に搭載されるため、実装効率が良くなる上にモータ25とファン32に必要な部品をモータユニット20としてプリアセンブルできるので、製造効率が良くなる。また、送風機1を制御する電気回路を、モータ回路基板36とは別に搭載するので、送風機1にモータの回転以外の新たな付加価値や、付加的な電気制御手段を設けるような場合にも、制御回路基板55側の構成を変えるだけで容易に実現できる。さらに、送風通路を圧迫しないようにモータ回路基板36を搭載することができるので、ハウジング2の小型化を図りつつもモータ回路基板36の搭載スペースを確保できる。
【0046】
ノズル60の内部は中心軸線A1に沿って後方から前方側に行くにつれて径が小さくなるため、空気が中心軸線A1付近に集められ、流速が更に高められた状態でノズル60から外部に排出される。ノズル60における内径の最小値は15.5mmである。モータ25は、ノズル60がハウジング2に取り付けた状態で、風量が1.02m3/分かつ風速が最大110.6m/秒となるように、ファン32を回転させることができる(風量及び風速はANSI B175.2で規定された方法で算出した)。つまり、モータ25は風量(単位:m3/分)に対する風速(単位:m/秒)の比が、108倍となるようにファンを駆動することが可能である。また、内径の最小値が8.0mmである図示しないノズルをハウジング2に取り付けた状態で、モータ25は、風量が0.46m3/分風速が最大185.6m/秒となるようにファン32を回転させることができる。つまり、モータ25は風量(単位:m3/分)に対する風速(単位:m/秒)の比が、403倍となるようにファンを駆動することが可能である。尚、ノズルを取り外した状態においてモータ25は、風量が1.33m3/分風速が最大30.2m/秒となるようにファン32を回転させることができる。つまり、モータ25は風量(単位:m3/分)に対する風速(単位:m/秒)の比が、23倍となるようにファンを駆動することが可能である。このように、モータ25はノズルの有無及び径を変更することで、風量(単位:m3/分)に対する風速(単位:m/秒)の比が、20倍以上500倍未満、より詳細には80倍以上500倍未満の範囲となるようにファンを駆動することが可能である。また、ノズルを取り外した状態と比較して、ノズルを取り付けた場合の風量を3.5倍以上6.5倍未満となるようにファンを駆動することが可能である。
【0047】
図7は
図6の状態からモータユニット20を取り外した状態を示す分解斜視図である。ハウジング2の左側分割片の本体部3内側上部には凹部9aが形成され、下部には凹部9bが形成される。凹部9aと凹部9bには、
図2で示したゴムブッシュ47a、47bが収容される空間である。
図7ではハウジング2の右側分割片は図示していないが、右側分割片にも同様に凹部9a、9bが形成される。また、本体部3の内側であって、モータユニット20の左側隙間部分には、空気の流れを整流するための5つのリブ19d~19hが形成される(本図では、リブ19d~19fは見えない)。本体部3の内側であって、モータユニット20の右側隙間部分にも19d~19hが形成される。このように凹部9aと凹部9bはハウジング2の右側分割片2Aと左側分割片2Bに跨ぐように配置され、それに合わせてゴムブッシュ47a、47bも右側分割片2Aと左側分割片2Bに跨ぐように配置されるので、モータユニット20を容易に本体部3に組み込むことが可能となり、組み立て効率が向上する。ハウジング2の本体部3内の後方側には、中央に貫通穴10aを有する仕切り壁10が形成される。仕切り壁10に上側には、吸入通路の吸気口14が形成される。
【0048】
図8は
図7の状態の送風機1を別の方向から見た分解斜視図である。モータ回路基板36には中央付近に風が通過可能な貫通穴は空けられていないので、モータケース21から排出される空気はすべてモータ回路基板36の径方向外側を通るようにしてノズル60に排出される。ゴムブッシュ47aは、外形が略長方形であり、ハウジング2の左側分割片2Bから右側分割片2Aまで延在する大きさである。
【0049】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本体部3とその前方側に絞り込まれた排気口(又は排気通路)が形成される送風機であれば、本実施例とは異なる構成の送風機にも適用できる。
【0050】
例えば、本発明を、ロータとステータと駆動軸を有するモータと、駆動軸に固定され吸引力により空気流を発生させるファンと、モータ及びファンを内部に収容し、空気流を内部に吸気する吸気口と、空気流を第1の方向に向かって外部に排気する筒状の排気口と、を備えるハウジングと、を有する送風機において、ファンとモータの少なくとも一部を収容するモータケースが設けられ、モータとファンとモータケースを含む組立体がハウジングの内部に収容されるように構成しても良い。ハウジングは、モータを収容する筒状の本体部と、本体部の軸方向に沿って延び、作業者によって把持されるハンドル部を有し、ハンドル部は、第1の方向とは反対側の第2の方向側にて本体部と内部空間が連通するように接続され、吸気口はハンドル部内に設けられる。そして、吸気口からハウジング内へ進入した空気流が、ハンドル部を通って本体部の第2の方向側から組立体の内部に吸引され、ハウジングの内部において組立体から第1の方向側に排出され、ハウジングの排気口から外部へ排気される。モータは、永久磁石を用いたロータと、ステータコアと、ステータコアに巻かれたコイルを有し、コイルに励磁電流を供給するインバータ回路を搭載する回路基板が組立体に含まれるように構成される。
【0051】
本発明のモータケースは、ファンに対して軸方向の一方側に位置する排出口と、ファンに対して軸方向の他方側に位置する吸引口を備え、ファンは、ステータに対して第2の方向側(後ろ側)に配置されるようにしても良い。モータのオン又はオフを切り替えるスイッチ部と、インバータ回路による駆動を制御することによりモータの回転制御を行う制御部を有し、制御部は、ハウジングの内部であってモータケースとは別の場所に配置される。また、回路基板は軸線方向においてステータの第1の方向側に配置される。ファンの外径は、ステータの外径の1.5倍以内とすると好ましい。
【0052】
本発明のハウジングには、モータへ電力を供給するための着脱式のバッテリパックが装着可能であり、送風機を載置面に置く場合は、バッテリパックの底面がハウジングを支持する脚部として機能するようにしても良い。ハウジングの排気口には、円錐状に絞り込まれたノズルが装着され、ノズルによる送風方向の中心軸線A1は排気方向下流側にいくにつれて載置面に近づくように斜めに傾けられる。また、脚部が載置面に置かれた状態において、中心軸線A1方向におけるモータの配置範囲が、バッテリパックと重なるように構成される。尚、モータは40,000回転/秒以上で回転可能である。
【0053】
本発明のモータは、ノズルにおいて最も内径が小さい部分の内径が7~9mmのときに、風速が130m/秒以上となるようにファンを回転可能であるように構成される。また、送風機は、ハウジング及びハウジングに取り付けられる本体部品からなる本体部と、ハウジングに取り付けられてモータに電力を供給するバッテリパックを備え、バッテリパックの質量は、本体部の質量の0.8倍以上1.8倍未満とする。さらに、送風機にはハウジングに取り付けられて、前後方向に延びる爪部を備えるフックが設けられ、フックの上下方向における位置が、ハウジングの重心とバッテリパックの重心の間になるように配置される。
1…送風機、2…ハウジング、2A…右側分割片、2B…左側分割片、3…本体部、4…ハンドル部、4a…(ハンドル部の)上側把持部、4b…(ハンドル部の)後側把持部、4c…(ハンドル部の)前側接続部、4d…(ハンドル部の)下側接続部、4e…(ハンドル部の)凹凸面、5…貫通部、6…バッテリパック装着部、8…取付部、8a…軸方向切り欠き部、8b…円周方向切り欠き部、8c…凸部、9a,9b…凹部、10…仕切り壁、10a…貫通穴、12…排気管、12a…排気口、13a,13b…配線、14…吸気口、16a,16b…配線、16c…信号線、17a~17h…ネジボス、19a~19h…リブ、20…モータユニット、21…モータケース、22…メインケース、22a…内筒部、22b…外筒部、22c…後壁部、22d…排出口、23…ファンケース、23a…吸気口、23b…円筒部、24a,24b…軸受、25…モータ、26…ロータ、27…ステータコア、29…インシュレータ、30…インシュレータ、31…回転軸、32…ファン、32a…円盤、32b…円錐壁、32c…羽根、32d…ブッシュ、32e…吸引口、33…取付部材、33a…円筒部、33b…ネジボス、34a,34b…アーム部、36…モータ回路基板、37…半導体スイッチング素子、38…送風通路、40…取付リブ、41…ゴムブッシュ、42~46…隙間、47a,47b…ゴムブッシュ、50…スイッチパネル(操作部)、51…LED、52~54…タクタイルスイッチ、55…制御回路基板、56…本体側端子ホルダ、57…本体側接続端子、58a,58b…レール部、60…ノズル、61…円筒接続部、62…テーパー部、63…先端部、64…突起、65…吐出口、75…フック、75a…(フックの)開口、75b…(フックの)爪部、75c…(フックの)掛止部、76…ネジ、81~93…空気の流れ、96…本体部の重心位置、97…全体の重心位置、98…バッテリパックの重心位置、100…バッテリパック、101,102…ケース、103a,103b…レール溝、104a,104b…ラッチボタン、105a…ラッチ爪、106…バッテリ側端子部、107…スイッチ、108…LED、A1…(吐出口12aの)中心軸線
バッテリパックが装着可能なバッテリパック装着部が前記ハウジングの下側に形成され、前記バッテリパックの底面を床面に当接させて自立可能であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の送風機。
発明のさらに他の特徴によれば、バッテリパックが装着可能なバッテリパック装着部がハウジングの下側に形成され、バッテリパックの底面を床面に当接させて自立可能である。また、送風機の上方視において、モータ及びファンがバッテリパックの外縁範囲内に収ま
るように配置される。さらに、ハウジングは、組立体を収容する本体部と、少なくとも一部が駆動軸の軸線と交差する方向に延びるハンドル部と、を有し、吸気口は、ハンドル部に設けられる。ハウジングは、組立体を収容する本体部と、少なくとも一部が駆動軸の軸線と交差する方向に延びるハンドル部を有し、モータ回路基板は、モータへ電流を出力するインバータ回路を有する。マイコンを搭載しインバータ回路を制御する制御回路基板が、ハンドル部に設けられる。組立体は、ロータよりも軸線方向の一方側に配置されて駆動軸を支持する第1軸受と、ロータよりも軸線方向の他方側に配置されて駆動軸を支持する第2軸受と、を含んで構成される。