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特開2024-155977パーフルオロアルカジエン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155977
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】パーフルオロアルカジエン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/23 20060101AFI20241024BHJP
   C07C 21/20 20060101ALI20241024BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20241024BHJP
   C07C 19/10 20060101ALI20241024BHJP
   C07C 19/14 20060101ALI20241024BHJP
   C07C 19/16 20060101ALI20241024BHJP
   C09K 5/10 20060101ALI20241024BHJP
   C07C 21/19 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07C17/23
C07C21/20
C07C21/18
C07C19/10
C07C19/14
C07C19/16
C09K5/10 F
C07C21/19
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024144193
(22)【出願日】2024-08-26
(62)【分割の表示】P 2022186425の分割
【原出願日】2018-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 友亮
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 敦
(72)【発明者】
【氏名】中井 勝也
(72)【発明者】
【氏名】太刀川 祥平
(57)【要約】
【課題】分離しにくい不純物の生成量を少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物を高収率に得ることができる方法を提供する。
【解決手段】一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法であって、
有機溶媒中で、含窒素化合物、並びに亜鉛若しくは亜鉛合金の存在下に、
一般式(2):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2X3 (2)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2及びX3は同一又は異なって、X1及びX2はハロゲン
原子を示し、X3は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物を反応させる反応工程を備え、
前記反応工程は、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と、含窒素化合物と、前記一般式(2)で表される化合物とを逐次的に混合する混合工程を含む、製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法であって、
有機溶媒中で、含窒素化合物、並びに亜鉛若しくは亜鉛合金の存在下に、
一般式(2):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2X3 (2)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2及びX3は同一又は異なって、X1及びX2はハロゲン
原子を示し、X3は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物を反応させる反応工程を備え、
前記反応工程は、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と、含窒素化合物と、前記一般式(2)で表される化合物とを逐次的に混合する混合工程を含む、製造方法。
【請求項2】
前記混合工程は、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と、含窒素化合物とを混合する工程を含み、
前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に対して、前記含窒素化合物を前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.1~600mol/時間の添加速度で添加する、請求項1
に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程は、前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と前記一般式(2
)で表される化合物とを混合し、次いで、得られた混合液と前記含窒素化合物とを混合する工程である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記混合工程は、前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と、前記含窒素化合物とを混合し、次いで、得られた混合液と前記一般式(2)で表される化合物とを混合
する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程は、前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と前記含窒素化合物との混合液に対して、前記一般式(2)で表される化合物を前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.05~30mol/時間の添加速度で添加する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記混合工程は、前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と前記含窒素化合物とを混合する際に前記溶液が50~200℃の温度である、請求項3~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記含窒素化合物がN,N-ジメチルホルムアミドである、請求項1~6のいずれか1項に記
載の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒の沸点が、前記含窒素化合物の沸点以下である、請求項1~7のいずれか1
項に記載の製造方法。
【請求項9】
一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物と、
一般式(3):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF2-CF2H (3)
[式中、nは前記に同じである。]
で表される化合物と、
一般式(4A):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF=CF2 (4A)
[式中、nは前記に同じである。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。た
だし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物、及び/又は一般式(4B):
CF2H-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2H (4B)
[式中、nは前記に同じである。X2はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
一般式(5):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2H (5)
[式中、nは前記に同じである。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。た
だし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物と
を含有する、パーフルオロアルカジエン組成物。
【請求項10】
前記パーフルオロアルカジエン組成物の総量を100モル%として、前記一般式(1)で表さ
れるパーフルオロアルカジエン化合物の含有量が30~99.8モル%である、請求項9に記載
のパーフルオロアルカジエン組成物。
【請求項11】
前記一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物が、ヘキサフルオロブタジ
エンである、請求項9又は10に記載のパーフルオロアルカジエン組成物。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載のパーフルオロアルカジエン組成物からなる、エッ
チングガス、冷媒、熱移動媒体、発泡剤又は樹脂モノマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーフルオロアルカジエン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロアルカジエン化合物は、半導体用ドライエッチングガスの他、各種冷媒、発泡剤、熱移動媒体等として有用な化合物であり、炭素-炭素間に2つの二重結合を有し
ている。特に、炭素数が4個であり両末端に二重結合を有するヘキサフルオロブタジエン
は、様々な用途に活用されている。
【0003】
このパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法としては、有機溶媒の存在下、所望の温度でMg、Zn、Cd、Li等の有機金属化合物を反応剤として用いて、ICF2CF2CF2CF2I等の化合物を脱IFさせることによる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。一方、パーフルオロアルカジエン化合物の製造方法としては、ICF2CF2CF2CF2I等の化合物の脱IFを金属亜鉛及び含窒素化合物の存在下で行うことも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-26240号公報
【特許文献2】特開2001-192345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、分離しにくい不純物の生成量を少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物を高収率に得ることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の構成を包含する。
項1.一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法であって、
有機溶媒中で、含窒素化合物、並びに亜鉛若しくは亜鉛合金の存在下に、
一般式(2):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2X3 (2)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2及びX3は同一又は異なって、X1及びX2はハロゲン
原子を示し、X3は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物を反応させる反応工程を備え、
前記反応工程は、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と、含窒素化合物と、前記一般式(2)で表される化合物とを逐次的に混合する混合工程を含む、製造方法。
項2.前記混合工程は、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と、含窒素化合物とを混合する工程を含み、
前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に対して、前記含窒素化合物を前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.1~600mol/時間の添加速度で添加する、項1に記
載の製造方法。
項3.前記混合工程は、前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と前記一般
式(2)で表される化合物とを混合し、次いで、得られた混合液と前記含窒素化合物とを
混合する工程である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.前記混合工程は、前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と、前記含窒素化合物とを混合し、次いで、得られた混合液と前記一般式(2)で表される化合物と
を混合する、項1又は2に記載の製造方法。
項5.前記混合工程は、前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と前記含窒素化合物との混合液に対して、前記一般式(2)で表される化合物を前記亜鉛若しくは亜
鉛合金1モルに対して0.05~30mol/時間の添加速度で添加する、項4に記載の製造方法。
項6.前記混合工程は、前記亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と前記含窒素化合物とを混合する際に前記溶液が50~200℃の温度である、項3~5のいずれか1項に記載の製造方法。
項7.前記含窒素化合物がN,N-ジメチルホルムアミドである、項1~6のいずれか1項に
記載の製造方法。
項8.前記有機溶媒の沸点が、前記含窒素化合物の沸点以下である、項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
項9.一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物と、
一般式(3):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF2-CF2H (3)
[式中、nは前記に同じである。]
で表される化合物と、
一般式(4A):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF=CF2 (4A)
[式中、nは前記に同じである。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。た
だし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物、及び/又は一般式(4B):
CF2H-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2H (4B)
[式中、nは前記に同じである。X2はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
一般式(5):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2H (5)
[式中、nは前記に同じである。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。た
だし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物と
を含有する、パーフルオロアルカジエン組成物。
項10.前記パーフルオロアルカジエン組成物の総量を100モル%として、前記一般式(1
)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の含有量が30~99.8モル%である、項9に
記載のパーフルオロアルカジエン組成物。
項11.前記一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物が、ヘキサフルオ
ロブタジエンである、項9又は10に記載のパーフルオロアルカジエン組成物。
項12.項9~11のいずれか1項に記載のパーフルオロアルカジエン組成物からなる、
エッチングガス、冷媒、熱移動媒体、発泡剤又は樹脂モノマー。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、分離しにくい不純物の生成量を少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物を高収率に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0009】
本開示のパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法は、一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法であって、
有機溶媒中で、含窒素化合物、並びに亜鉛若しくは亜鉛合金の存在下に、
一般式(2):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2X3 (2)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2及びX3は同一又は異なって、X1及びX2はハロゲン
原子を示し、X3は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物を反応させる反応工程を備え、前記反応工程は、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に対して、含窒素化合物を混合する混合工程を含む。
【0010】
本開示においては、特許文献1及び2の方法と比べて収率よく、しかも、特許文献2と比べて1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン等の分離しにくい不純物を抑制して、目
的物を得ることができる。
【0011】
特に、一般式(2)で表される化合物は、CF2X3基と隣接する基がCF2であるため、ClCF2CFClCF2CF2H、ICF2CF2CF2CF2H、BrCF2CF2CF2CF2H等の不純物(後述の一般式(5)で表さ
れる化合物)が、捕集ボンベの液相中に生成し、気相中にはほとんど存在しない。このため、捕集ボンベの気相のみを採取する場合には問題とならない不純物であるが、後述のように捕集ボンベの気相及び液相を採取する場合には問題となる不純物である。本開示では、上記のとおり、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と含窒素化合物とを混合する(特に、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に対して含窒素化合物を添加する)ことにより、この不純物の生成量を減少させることができる。
【0012】
一般式(1)及び(2)において、nは4~20の整数、より好ましくは4~10の整数である
。この範囲とすることにより、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得ることができる。
【0013】
つまり、製造しようとする一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物は
、ヘキサフルオロブタジエン(CF2=CF-CF=CF2)、オクタフルオロペンタジエン(CF2=CF-CF2-CF=CF2)、デカフルオロヘキサジエン(CF2=CF-CF2-CF2-CF=CF2)等が挙げられる。
【0014】
一般式(2)において、X1及びX2はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素
原子、ヨウ素原子等が挙げられる。一般式(2)において、X3は塩素原子、臭素原子又は
ヨウ素原子である。X1、X2及びX3は同一でも異なっていてもよい。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となる場合は反応が進行せずパーフルオロアルカジエン化合物が得られないことから、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。なかでも、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得ることができる観点から、X1としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等(特に塩素原子、臭素原子等)が好ましく、X2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等(特にフッ素原子、塩素原子等)が好ましく、X3としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等(特に臭素原子、ヨウ素原子等)が好ましい。
【0015】
このような条件を満たす一般式(2)で表される化合物としては、例えば、ClCF2-CFCl-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2I、ICF2-CF2-CF2-CF2I、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF2I、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2I、BrCF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br等が挙げられ、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得ることができる観点から、ClCF2-CFCl-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2I、BrCF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br等が好ましく、ClCF2-CFCl-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2I等がより好ましい。
【0016】
この一般式(2)で表される化合物の使用量は、分離しにくい不純物の生成量をより少
なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、後述の亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して、0.05~30モルが好ましく、0.1~10モルがより好ましく、0.2~5モルがさらに好ましい。
【0017】
亜鉛若しくは亜鉛合金において、亜鉛合金を使用する場合に含まれ得る元素としては、例えば、鉛、カドミウム、鉄等が挙げられる。なお、市販の亜鉛には、鉛、カドミウム、鉄等の不純物が含まれていることもある。本開示ではこれらの不純物を含むものも包含される。
【0018】
有機溶媒としては、特に一般式(2)で表される化合物等を溶解させる観点から非極性
有機溶媒が好ましい。この有機溶媒は、反応系内から含窒素化合物が揮発することを抑制してパーフルオロアルカジエン化合物の収率を特に向上させる観点から、沸点が含窒素化合物の沸点以下であることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物等が挙げられる。
【0019】
有機溶媒の使用量は、溶媒量であれば特に制限はなく、亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに
対して、0.01~10モルが好ましく、0.1~5モルがより好ましい。
【0020】
含窒素化合物としては、窒素原子を含有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、アミド化合物(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジイソプロピルホルムアミド等)、アミン化合物(トリエチルアミン等)、ピリジン化合物(ピリジン、メチルピリジン、N-メチル-2-ピロリドン等)、キノリン化合物(キノリン、メチルキノリン等)等が挙げられる
。これら含窒素化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもで
きる。なかでも、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、アミド化合物が好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドがより好ましい。
【0021】
この含窒素化合物は、常温で液体である化合物も含まれるが、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、溶媒ではなく添加剤として使用する(少量使用する)ことが好ましい。含窒素化合物の使用量は、亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して、0.25~4モルが好ましく、0.5~2モルがより好ましい。
【0022】
本開示の製造方法では、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、上記した混合工程は、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と、含窒素化合物と、前記一般式(2)で表される
化合物とを逐次的に混合することが好ましい。このような混合工程としては、例えば、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と含窒素化合物とを混合する、特に、亜鉛
若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に対して、含窒素化合物を添加することができる。亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液において、各成分の含有量は上記した各成分の含有割合を満たすように調整することが好ましい。なお、一般式(2)で表
される化合物を後の工程で混合(特に添加)する場合は、混合(特に添加)する予定の一般式(2)で表される化合物の量を考慮のうえで各成分の含有量を調整することが好まし
い。
【0023】
亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と含窒素化合物とを混合する(亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に対して含窒素化合物を添加する)際には、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液を好ましくは50~200℃、より好ましくは100~150℃の温度で、含窒素化合物と混合することが好ましい。特に、亜鉛若しくは亜鉛
合金並びに有機溶媒を含む溶液を上記温度まで加熱しながら含窒素化合物を添加することが好ましい。また、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液を還流しながら含窒素化合物を添加することで、溶媒が反応温度より低いために反応温度となると揮発し、それを冷却してまた反応器へ戻すことができる。亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液を還流しながら含窒素化合物を添加する場合は、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液を還流温度下に加熱することが最も好ましい。
【0024】
有機溶媒の沸点が含窒素化合物の沸点以下であれば、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液を加熱した後に、この溶液と含窒素化合物とを混合する際に混合しやすくなるため好ましい。
【0025】
加熱(特に還流温度下に加熱)後、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と含窒素化合物とを混合する、例えば、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に含窒素化合物を添加する場合は、その添加速度(滴下速度)は、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつ一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物をより
高収率に得られる観点から、亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.1~600mol/時間が好
ましく、0.33~60mol/時間がより好ましい。添加時間は反応が十分に進行する程度とすることが好ましく、特に、含窒素化合物を添加した総量が上記した範囲になるように調整することが好ましい。具体的には、添加時間は0.002~10時間が好ましく、0.02~3時間がより好ましい。
【0026】
上記した本開示の製造方法において、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と含窒素化合物とを混合する(特に、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に対して含窒素化合物を添加する)場合、基質である一般式(2)で表される化合物は、亜
鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と混合した後に得られた混合液と含窒素化合物とを混合してもよい(以下、「基質前添加」と言うこともある)し、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液と含窒素化合物とを混合した(特に、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に含窒素化合物を添加した)後に、このようにして得られた混合液と基質である一般式(2)で表される化合物と混合(特に、このようにして得ら
れた混合液に基質である一般式(2)で表される化合物を添加)してもよい(以下、「基
質後添加」と言うこともある)。これらのなかでも、亜鉛若しくは亜鉛合金と含窒素化合物とをあらかじめ反応させておくことで、一般式(2)で表される化合物と含窒素化合物
とが反応して分離しにくい不純物が生成することをより抑制し、結果的にパーフルオロアルカジエン化合物の収率もより向上させる観点から、基質後添加が特に好ましい。
【0027】
基質前添加を採用する場合、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液中に含まれる一般式(2)で表される化合物の含有量が、上記した各成分の含有割合を満たすよう
に調整することが好ましい。
【0028】
基質後添加を採用する場合、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液に含窒素化合物を添加した後に、このようにして得られた混合液に基質である一般式(2)で表さ
れる化合物を添加する場合における一般式(2)で表される化合物の添加速度(滴下速度
)は、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつ一般式(1)で表されるパーフル
オロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、亜鉛若しくは亜鉛合金1モル
に対して0.05~30mol/時間が好ましく、0.17~6mol/時間がより好ましい。添加時間は反
応が十分に進行する程度とすることが好ましく、特に、一般式(2)で表される化合物を
添加した総量が上記した範囲になるように調整することが好ましい。具体的には、添加時間は0.02~10時間が好ましく、0.08~3時間がより好ましい。
【0029】
本開示では、反応の際に、含ヨウ素無機材料を使用することもできる。これにより、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつ一般式(1)で表されるパーフルオロアル
カジエン化合物をより高収率に得ることが可能である。
【0030】
含ヨウ素無機材料としては、ヨウ素原子を含有する無機材料であれば特に制限はなく、例えば、ヨウ素;典型金属ヨウ化物(ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等)、遷移金属ヨウ化物(ヨウ化亜鉛等)等の金属ヨウ化物等が挙げられる。なお、本開示の製造方法によれば、生成物中に不純物としてハロゲン化亜鉛(フッ化亜鉛、塩化亜鉛及びヨウ化亜鉛の混合物)が生成され得る。この生成物中に含まれる不純物としてのハロゲン化亜鉛を、含ヨウ素無機材料として使用し、本開示の製造方法に再利用することも可能である。これら含ヨウ素無機材料は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なかでも、分離しにくい不純物の生成量を
より少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、ヨウ素、遷移金属ヨウ化物、本開示の製造方法による生成物中の不純物としてのハロゲン化亜鉛等が好ましく、ヨウ素がより好ましい。
【0031】
この含ヨウ素無機化合物の使用量は、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.0005モル以上であり、且つ、有機溶媒の溶解度以下であることが好ま
しく、亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.001~0.1モルがより好ましい。
【0032】
本開示において含ヨウ素無機材料を使用する場合、基質前添加及び基質後添加のいずれを採用する場合においても、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつ一般式(1
)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得るため、含ヨウ素無機材料は、亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液中に含ませることが好ましい。この場合、亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液中に含まれる含ヨウ素無機材料の含有量が、上記した各成分の含有割合を満たすように調整することが好ましい。
【0033】
なお、上記以外の反応条件は特に制限はなく、例えば、反応雰囲気は不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等)が好ましく、反応時間(最高到達温度における維持時間)は反応が十分に進行する程度とすることができる。反応終了後は、常法にしたがって精製処理を行い、一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物を得
ることができる。
【0034】
このような本開示の製造方法によれば、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつ一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の収率を高くしたものであり
、分離しにくい不純物の単離の労力を低減するとともに効率的に一般式(1)で表される
パーフルオロアルカジエン化合物を得ることができる。なお、分離しにくい不純物は、例えば一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物としてヘキサフルオロブタ
ジエンを得ようとする場合は、1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン(CF3CF=CHCF3
等が挙げられる。
【0035】
このようにして得られる一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物は、
半導体、液晶等の最先端の微細構造を形成するためのエッチングガスをはじめとして、冷媒、熱移動媒体、発泡剤、樹脂モノマー等の各種用途に有効利用できる。
【0036】
このようにして、一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物を得ること
ができるが、一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物と、一般式(3):CF2=CF-(CF2)n-4-CF2-CF2H (3)
[式中、nは前記に同じである。]
で表される化合物と、一般式(4A):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF=CF2 (4A)
[式中、nは前記に同じである。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。た
だし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物、及び/又は一般式(4B):
CF2H-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2H (4B)
[式中、nは前記に同じである。X2はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、一般式(5):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF2-CF2H (5)
[式中、nは前記に同じである。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。た
だし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物とを含有する、パーフルオロアルカジエン組成物の形で得られることもある。
【0037】
このような条件を満たす一般式(3)で表される化合物としては、例えば、CF2=CF-CF2-CF2H、CF2=CF-CF2-CF2-CF2H、CF2=CF-CF2-CF2-CF2-CF2H等が挙げられる。
【0038】
一般式(4A)において、X1及びX2はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X1及びX2は同一でも異なっていてもよい。ただし、一般式(2)と同様に、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。一般式(2)と同様に、X1としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等(特に塩素原子、臭素原子等)が好ましく、X2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等(特にフッ素原子、塩素原子等)が好ましい。このような一般式(4A)で表される化合物としては、例えば、ClCF2-CFCl-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF=CF2、ICF2-CF2-CF=CF2、ICF2-CF2-CF2-CF=CF2、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF=CF2等が挙げられ、一般式(2)と同様の理由で、ClCF2-CFCl-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF=CF2等が好ましく、ClCF2-CFCl-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF=CF2等がより好ましい。
【0039】
一般式(4B)において、X2はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。一般式(2)と同様に、X2としてはフッ素原子、塩素原子、
臭素原子等(特にフッ素原子、塩素原子等)が好ましい。このような条件を満たす一般式(4B)で表される化合物としては、例えば、HCF2-CFCl-CF2-CF2H、HCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H等が挙げられ、一般式(2)と同様の理由で、HCF2-CFCl-CF2-CF2H、HCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2H等が好ましい。
【0040】
一般式(5)において、X1及びX2はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素
原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X1及びX2は同一でも異なっていてもよい。ただし、一
般式(2)と同様に、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。一般式(2)と同様に、X1としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等(特に塩素原子、臭素原子等)が好ましく、X2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等(特にフッ素原子、塩素原子等)が好ましい。この一般式(5)で表される化合物は、基質である一般式(2)で表される化合物においてCF2X3基と隣接する基がCF2であるために生成される化合物であるが、液相中に多く発生し気相中にはほとんど存在しないため、捕集ボンベの気相のみを分析した場合は検出されない。つまり、本開示のパーフルオロアルカジエン組成物は、捕集ボンベの気相及び液相の双方に存在する不純物から構成されるものであり、捕集ボンベの気相のみから採取した場合には本開示のパーフルオロアルカジエン組成物は得られない。このような条件を満たす一般式(5)で表される化合物としては、例えば、ClCF2-CFCl-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2H、ICF2-CF2-CF2-CF2H、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H等が挙げられ、一般式(2)と同様の理由で、ClCF2-CFCl-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H等が好ましく、ClCF2-CFCl-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2H等がより好ましい。
【0041】
この本開示のパーフルオロアルカジエン組成物において、本開示のパーフルオロアルカジエン組成物の総量を100モル%として、一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエ
ン化合物の含有量は30~99.8モル%(特に50~99モル%)が好ましく、一般式(3)で表さ
れる化合物の含有量は0.1~30モル%(特に2~25モル%)が好ましく、一般式(4A)及び/又は(4B)で表される化合物の総含有量は0.01~5モル%(特に0.02~3モル%)が好ましく、一般式(5)で表される化合物の含有量は0.05~35モル%(特に0.1~5モル%)が好まし
い。また、本開示のパーフルオロアルカジエン組成物において、上記以外の成分(その他成分)の含有量は、0~30モル%(特に0.01~10モル%)が好ましい。本開示では、基質で
ある一般式(2)で表される化合物においてCF2X3基と隣接する基がCF2であるために一般
式(5)で表される化合物が液相中に生成し得るが、その場合であっても生成される一般
式(5)で表される化合物の量を少なくすることが可能である。また、その他成分には分
離しにくい不純物(一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物としてヘキ
サフルオロブタジエンを得ようとする場合は、1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン
(CF3CF=CHCF3)等)が含まれ得ることからその他成分の含有量は極力少なくすることが
好ましい。
【0042】
このような本開示のパーフルオロアルカジエン組成物は、上記したパーフルオロアルカジエン化合物単独の場合と同様に、半導体、液晶等の最先端の微細構造を形成するためのエッチングガスをはじめとして、冷媒、熱移動媒体、発泡剤、樹脂モノマー等の各種用途に有効利用できる。
【0043】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能である。
【実施例0044】
以下に実施例を示し、本開示の特徴を明確にする。本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例1:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;前添加;含ヨウ素無機材料なし
-78℃に冷却したトラップが連結されたコンデンサー付きナスフラスコに200g(0.53mol)のキシレン及び34.93g(0.53mol)の亜鉛を加え、さらに、92g(0.24mol)の原料(ClCF2CFClCF2CF2I)を加え、撹拌下、内温が140℃になるまで加熱した。内温が一定になった後、還流しながらN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を滴下速度0.53mol/時間(亜鉛1モル
に対して1mol/時間)で1時間滴下し、撹拌しながら 3時間加熱還流を続けた。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が46モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが0.35モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が1.7
モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが26モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計26モル%であった。
【0046】
実施例2:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;後添加;含ヨウ素無機材料なし
-78℃に冷却したトラップが連結されたコンデンサー付きナスフラスコに200g(0.53mol)のキシレン、34.93g(0.53mol)の亜鉛を加え、撹拌下、内温が140℃になるまで加熱した。内温が一定になった後、還流しながらN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を滴下速度0.52mol/時間(亜鉛1モルに対して1.04mol/時間)で1時間滴下し、撹拌しながら0.5時間加熱還流を続けた。次いで、還流しながら原料(ClCF2-CFCl-CF2-CF2I)を滴下速度0.24mol/時間(亜鉛1モルに対して0.48 mol/時間)で1時間滴下し、攪拌しながら3時間加熱還流を続け反応させた。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が78モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが14モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.66モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが1.5モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計5.9モル%であった。
【0047】
実施例3:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;後添加;ZnI 2 0.18モル%
亜鉛を含むキシレンの溶液中に、0.30g(0.001mol;亜鉛対して0.18mol%)のZnI2を含ませたこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相
及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が88モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが8.2モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.051モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.32モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計3.4モル%であった。
【0048】
実施例4:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;後添加;ZnI 2 0.6モル%
亜鉛を含むキシレンの溶液中に、0.95g(0.003mol;亜鉛に対して0.56mol%)のZnI2を含ませたこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液
相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が91モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが6.8モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.042モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.18モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計2.0モル%であった。
【0049】
実施例5:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;後添加;ZnI 2 1.6モル%
亜鉛を含むキシレンの溶液中に、2.70g(0.53mol;亜鉛に対して1.6mol%)のZnI2を含ませたこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相
及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が93モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが5.6モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.082モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.27モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計1.0モル%であった。
【0050】
実施例6:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;後添加;I 2 1.6モル%
亜鉛を含むキシレンの溶液中に、2.20g(0.009mol;亜鉛に対して1.6mol%)のI2を含
ませたこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相
及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が96モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが2.6モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.031モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2H
が0.17モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計1.2モル%であった。
【0051】
実施例7:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;後添加;NaI 1.6モル%
亜鉛を含むキシレンの溶液中に、1.27g(0.0085mol;亜鉛対して1.6mol%)のNaIを含
ませたこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相
及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が91モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが6.1モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.053モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.32モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計2.5モル%であった。
【0052】
実施例8:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;後添加;NaI 3.2モル%
亜鉛を含むキシレンの溶液中に、2.54g(0.017mol;亜鉛に対して3.2mol%)のNaIを含ませたこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相
及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が94モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが5.1モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.044モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.12モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計0.74モル%であった。
【0053】
実施例9:ICF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 I;前添加;含ヨウ素無機材料なし
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくICF2-CF2-CF2-CF2Iを使用したこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロ
トマトグラフィえーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が35モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが10モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが4.2モル%、ICF2-CF2-CF2-CF2Hが30モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計21モル%であった。
【0054】
実施例10:ICF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 I;後添加;含ヨウ素無機材料なし
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくICF2-CF2-CF2-CF2Iを使用したこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロ
トマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が63モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが25モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが2.2モル%、ICF2-CF2-CF2-CF2Hが2.1モル%、その他副生成
物(CF3CF=CHCF3等)が合計7.7モル%であった。
【0055】
実施例11:ICF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 I;後添加;ZnI 2 1.6モル%
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくICF2-CF2-CF2-CF2Iを使用し、亜鉛を含むキシレンの溶液中に、2.70g(0.53mol;亜鉛に対して1.6mol%)のZnI2を含ませたこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガス
クロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が87モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが5.4モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが2.2モル%、ICF2-CF2-CF2-CF2Hが2.1モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計3.3モル%であった。
【0056】
実施例12:BrCF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 Br;前添加;含ヨウ素無機材料なし
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくBrCF2-CF2-CF2-CF2Brを使用したこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスク
ロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が49モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが1.2モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが3.8モル%、BrCF2-CF2-CF2-CF2Hが25モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計21モル%であった。
【0057】
実施例13:BrCF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 Br;後添加;含ヨウ素無機材料なし
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくBrCF2-CF2-CF2-CF2Brを使用したこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスク
ロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が76モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが13モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが1.9モル%、BrCF2-CF2-CF2-CF2Hが2.1モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計7.0モル%であった。
【0058】
実施例14:BrCF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 Br;後添加;ZnI 2 1.6モル%
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくBrCF2-CF2-CF2-CF2Brを使用し、亜鉛を含むキシレンの溶液中に、2.70g(0.53mol;亜鉛に対して1.6mol%)のZnI2を含ませたこと以外は実施例2と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガ
スクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が96モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが3.0モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが0.51モル%、BrCF2-CF2-CF2-CF2Hが0.28モル%、そ
の他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計0.21モル%であった。
【0059】
結果を表1~2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】