(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156004
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】偏心揺動型減速装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20241024BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20241024BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20241024BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20241024BHJP
F16C 35/06 20060101ALI20241024BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16C19/06
F16C19/36
F16C19/54
F16C35/06
F16C33/58
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146092
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2019192109の分割
【原出願日】2019-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】田村 光拡
(72)【発明者】
【氏名】山中 悌二郎
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の偏心揺動型減速装置の課題に鑑みてなされたもので、剛性を向上可能な偏心揺動型減速装置を提供することにある。
【解決手段】偏心揺動型減速装置100は、ケーシング22に設けられた内歯歯車16と、外歯歯車14と、外歯歯車14を揺動させる偏心体12aと、外歯歯車14の軸方向一側と他側とに配置される第1、第2キャリヤ18、20と、第1、第2キャリヤ18、20を連結する連結ピン32、36と、ケーシング22と第1キャリヤ18との間に配置された第1主軸受26と、ケーシング22と第2キャリヤ20との間に配置された第2主軸受28と、を備えた偏心揺動型減速装置であって、第1主軸受26は、ラジアル荷重、スラスト荷重およびモーメントを受けられる軸受で構成され、第2主軸受28は、ラジアル荷重を受けられるとともに、モーメントを受ける能力が第1主軸受26よりも低い軸受で構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに設けられた内歯歯車と、外歯歯車と、前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、前記外歯歯車の軸方向一側に配置される第1キャリヤと、前記外歯歯車の軸方向他側に配置される第2キャリヤと、前記第1キャリヤと前記第2キャリヤとを連結する連結ピンと、前記ケーシングと前記第1キャリヤとの間に配置された第1主軸受と、前記ケーシングと前記第2キャリヤとの間に配置された第2主軸受と、を備えた偏心揺動型減速装置であって、
前記第1主軸受は、ラジアル荷重、スラスト荷重およびモーメントを受けられる軸受で構成され、
前記第2主軸受は、ラジアル荷重を受けられるとともに、モーメントを受ける能力が前記第1主軸受よりも低い軸受で構成されることを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【請求項2】
前記第1主軸受はクロスローラ軸受であり、前記第2主軸受は玉軸受であることを特徴とする請求項1に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項3】
前記第2主軸受は、その外輪および内輪の少なくとも一方がすき間嵌めされることを特徴とする請求項1または2に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項4】
前記第2主軸受は、前記第1主軸受よりも内部すき間が大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項5】
前記第1主軸受は、その内輪に雌ねじが設けられており、前記第1キャリヤの雄ねじと螺合することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項6】
前記第1主軸受の前記内輪は、前記第1キャリヤとインロー嵌合するインロー部を有することを特徴とする請求項5に記載の偏心揺動型減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心揺動型減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに噛み合う内歯歯車および外歯歯車を有する偏心揺動型減速機が知られている。特許文献1には、入力軸、外歯歯車、出力軸、キャリアと、内歯歯車とがケーシング内に設けられる差動減速機が記載されている。この減速機は、入力軸を支持するボールベアリングと、出力軸とキャリアを連結する連結ピンと、入力軸の外周に設けられ外歯歯車を支持するニードルベアリングと、ケーシングに設けられ出力軸を支持するクロスローラベアリングとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の減速機では、ケーシングと出力軸との間に設けられたクロスローラベアリングによって出力軸を支えることにより減速機としての剛性を得る構造となっている。このため、この構成で剛性を高めようとすると、クロスローラベアリングを大型化する必要があり、ベアリングの大型化にともなって減速機が大きくなる。これらのことから、従来の偏心揺動型減速機には減速機の剛性向上に関して改善の余地があると言える。
【0005】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、剛性を向上可能な偏心揺動型減速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の偏心揺動型減速装置は、ケーシングに設けられた内歯歯車と、外歯歯車と、外歯歯車を揺動させる偏心体と、外歯歯車の軸方向一側に配置される第1キャリヤと、外歯歯車の軸方向他側に配置される第2キャリヤと、第1キャリヤと第2キャリヤとを連結する連結ピンと、ケーシングと第1キャリヤとの間に配置された第1主軸受と、ケーシングと第2キャリヤとの間に配置された第2主軸受と、を備えた偏心揺動型減速装置であって、第1主軸受は、ラジアル荷重、スラスト荷重およびモーメントを受けられる軸受で構成され、第2主軸受は、ラジアル荷重を受けられるとともに、モーメントを受ける能力が第1主軸受よりも低い軸受で構成される。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剛性を向上可能な偏心揺動型減速装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る偏心揺動型減速装置を概略的に示す側面視の断面図である。
【
図2】
図1の偏心揺動型減速装置を概略的に示す正面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施の形態]
以下、図面を参照して、実施の形態に係る偏心揺動型減速装置100の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る偏心揺動型減速装置100を概略的に示す側面視の断面図である。
図2は、偏心揺動型減速装置100の正面視の断面図である。この図では、説明に重要でない部材を省略して示している。本実施形態の偏心揺動型減速装置100は、内歯歯車と噛み合う外歯歯車を揺動させることで、内歯歯車及び外歯歯車の一方の自転を生じさせ、その生じた運動成分を出力部材から被駆動装置に出力するように構成されている。
【0013】
偏心揺動型減速装置100は、主に、クランク軸12と、外歯歯車14と、内歯歯車16と、キャリヤ18、20と、ケーシング22と、主軸受26、28と、偏心体軸受30と、連結ピン32、36と、クランク軸軸受34とを備える。本実施形態は、連結ピン32、36として、内ピン32と、キャリヤピン36とを備える。以下、内歯歯車16の中心軸線Laに沿った方向を「軸方向」といい、その中心軸線Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸方向の一方側(図中右側)を「入力側」といい、他方側(図中左側)を「反入力側」または「出力側」という。
【0014】
本実施形態の偏心揺動型減速装置100は、クランク軸12の回転中心線が内歯歯車16の中心軸線Laと同軸線上に設けられるセンタークランクタイプである。クランク軸12は、駆動装置(不図示)から入力される回転動力によって回転中心線周りに回転させられる。駆動装置は、たとえば、モータ、ギヤモータ、エンジン等である。クランク軸12には、駆動装置の出力軸に連結されるための中空筒状のカップリング38が結合されている。カップリング38には、駆動装置の出力軸が嵌入される凹部38cが設けられている。また、後述する第5ケーシング22fには、駆動装置のケーシングと嵌合するための嵌合凹部22jが設けられている。
【0015】
本実施形態のクランク軸12は、外歯歯車14を揺動させるための複数の偏心体12aを有する偏心体軸である。偏心体12aは、軸本体と一体に形成されてもよいが、この例では別々に形成されてキー圧入により一体化されている。クランク軸12は、中空軸であってもよいが本実施形態では中実軸である。偏心体12aの軸芯は、クランク軸12の回転中心線に対して偏心している。本実施形態では2個の偏心体12aが設けられ、隣り合う偏心体12aの偏心位相は180°ずれている。
【0016】
各偏心体12aの外周には、偏心体軸受30を介して外歯歯車14が組み込まれている。本実施形態の偏心体軸受30は球状の転動体を有する。偏心体軸受30の転動体としては、球状の他に、ころ(円筒体)や錐体など公知の転動体を採用できる。各外歯歯車14は、内歯歯車16に内接噛合している。外歯歯車14が2列に並んで組み込まれているのは、負荷容量の増大、および偏心位相をずらすことによる低振動、低騒音化を意図したためである。各列の構成は、偏心位相が異なっている以外は同一である。
【0017】
外歯歯車14は、複数の偏心体12aのそれぞれに対応して個別に設けられる。外歯歯車14は、偏心体軸受30を介して対応する偏心体12aに回転自在に支持される。外歯歯車14には、内ピン32が貫通する内ピン孔13と、偏心体軸受30が当接する中心孔15と、キャリヤピン36が貫通するキャリヤピン孔17とが設けられる。
【0018】
内ピン孔13とキャリヤピン孔17とは、外歯歯車14の中心からオフセットして設けられる。内ピン孔13は、後述する内ピン32に対応して複数設けられる。この例では、周方向に60°間隔で6つの内ピン孔13が設けられる。キャリヤピン孔17は、後述するキャリヤピン36に対応して複数設けられる。この例では、周方向に120°間隔で3つのキャリヤピン孔17が設けられる。中心孔15は、外歯歯車14の中心に設けられ、偏心体12aが挿通される孔である。
【0019】
図1に示すように、ケーシング22は、全体として筒状をなし、その内周部には内歯歯車16が設けられる。本実施形態のケーシング22は、軸方向で反入力側から入力側に順に連結された第1ケーシング22bと、第2ケーシング22cと、第3ケーシング22dと、第4ケーシング22eと、第5ケーシング22fとを含んでいる。内歯歯車16は、第3ケーシング22dの内周部に設けられている。第1~第5ケーシング22b~22fは、略中空筒状をなしており、例えば、ボルト締めにより一体化される。この例では、第3ケーシング22dは、第2ケーシング22cにボルトB1により連結されている。さらに、第1~第5ケーシング22b~22fは、ボルトB2により連結されている。具体的には、第2ケーシング22cと第3ケーシング22dは、第3ケーシング22dの入力側から挿入され、第2ケーシング22cに螺合されたボルトB1により連結されている。また、第1ケーシング22bの出力側から挿入され、第5ケーシング22fに螺合されたボルトB2により、第1~第5ケーシング22b~22fが共締め連結されている。
【0020】
内歯歯車16は、外歯歯車14と噛み合う。本実施形態の内歯歯車16は、ケーシング22と一体化された内歯歯車本体と、この内歯歯車本体に回転自在に支持され、当該内歯歯車16の内歯を構成する外ピン16a(ピン部材)とで構成されている。内歯歯車16の内歯数(外ピン16aの数)は、外歯歯車14の外歯数よりも僅かだけ(この例では1だけ)多い。
【0021】
キャリヤ18、20は、外歯歯車14の軸方向側部に配置される。キャリヤ18、20には、外歯歯車14の反入力側の側部に配置される第1キャリヤ18と、外歯歯車14の入力側の側部に配置される第2キャリヤ20とを含む。キャリヤ18、20は円盤状をなし、クランク軸軸受34を介してクランク軸12を回転自在に支持する。
【0022】
第1キャリヤ18と第2キャリヤ20とは、内ピン32およびキャリヤピン36を介して連結される。内ピン32およびキャリヤピン36は、外歯歯車14の軸芯から径方向にオフセットした位置において、複数の外歯歯車14を軸方向に貫通する。内ピン32は、内歯歯車16の中心軸線La周りに所定の間隔で複数設けられる。本実施形態では、周方向に60°間隔で6つの内ピン32が設けられる。本実施形態の内ピン32は、キャリヤ18、20と別体に設けられている。内ピン32は、キャリヤ18、20のいずれか一方と一体的に設けられていてもよい。
【0023】
内ピン32およびキャリヤピン36は、第1キャリヤ18と第2キャリヤ20を連結する連結ピンである。内ピン32は、入力側の先端部が第2キャリヤ20に形成された有底凹部20cに嵌入されており、反入力側の先端部が第1キャリヤ18に形成された有底凹部18cに嵌入されている。内ピン32は、両先端部が各キャリヤの凹部に嵌入されることにより、第1キャリヤ18と第2キャリヤ20とを連結している。
【0024】
内ピン32は、外歯歯車14に形成された内ピン孔13を貫通している。内ピン32は、第2キャリヤ20の反入力側と、第1キャリヤ18の入力側とによって軸方向に移動規制される。内ピン32と内ピン孔13の間には外歯歯車14の揺動成分を吸収するための遊びとなる隙間が設けられる。内ピン32と内ピン孔13の内壁面とは一部で接触する。
【0025】
キャリヤピン36は、内歯歯車16の中心軸線La周りに所定の間隔で複数設けられる。本実施形態では、周方向に120°間隔で3つのキャリヤピン36が設けられる。キャリヤピン36は、入力側の先端部が第2キャリヤ20に形成された有底凹部20dに嵌入されており、反入力側の先端部が第1キャリヤ18に形成された有底凹部18dに嵌入されている。キャリヤピン36は、両先端部が各キャリヤの凹部に嵌入されることにより、第1キャリヤ18と第2キャリヤ20とを連結している。なお、キャリヤピン36は、キャリヤ18、20のいずれか一方と一体的に設けられていてもよい。
【0026】
キャリヤピン36は、外歯歯車14に形成されたキャリヤピン孔17を貫通している。キャリヤピン36とキャリヤピン孔17の内壁面とは接触しない。キャリヤピン36の外周にはスリーブ状の円筒部材36sが被せられている。円筒部材36s各端面は、第2キャリヤ20の端面と第1キャリヤ18端面とに当接してスペーサとして機能する。
【0027】
被駆動装置(不図示)に回転動力を出力する部材を出力部材とし、偏心揺動型減速装置100を支持するための外部部材に固定される部材を被固定部材とする。本実施形態の出力部材は第1キャリヤ18であり、被固定部材はケーシング22である。出力部材は、主軸受26、28を介して被固定部材に回転自在に支持される。
【0028】
クランク軸軸受34には、第2キャリヤ20とクランク軸12の間に配置される入力側クランク軸軸受34と、第1キャリヤ18とクランク軸12の間に配置される反入力側クランク軸軸受34とが含まれる。クランク軸軸受34としては、公知の様々な種類の軸受を採用できる。本実施形態では、クランク軸軸受34として、玉軸受けを採用している。
【0029】
次に、本実施形態の偏心揺動型減速装置100の特徴的な構成を説明する。
【0030】
特許文献1に記載の減速機は、出力トルクを取り出すためのピンがケーシングに対して出力側だけで支持される片持ち構造であるため、剛性が高いとはいえない。ピンが1つのクロスローラベアリングだけで支持されている構成では、軸受の負荷容量が不足する。このため、この減速機の剛性を高めるためには、大きなクロスローラベアリングを用いる必要があり、減速機のサイズが大きくなってしまう。そこで、本実施形態の偏心揺動型減速装置100は、ケーシング22に対して連結ピン(内ピン32およびキャリヤピン36)が出力側と入力側とで支持される両持ち構造を採用している。この構成によれば、剛性を高めつつ大型化を抑制できる。本実施形態は、連結ピンの両持ち構造を実現するために、入力側に第2キャリヤ20および第2主軸受28を備える。
【0031】
主軸受26、28には、第1キャリヤ18とケーシング22の間に配置される第1主軸受26と、第2キャリヤ20とケーシング22の間に配置される第2主軸受28とが含まれる。本実施形態の第1主軸受26は、第1、第2ケーシング22b、22cに支持され、第2主軸受28は、第4、第5ケーシング22e、22fに支持されている。
【0032】
偏心揺動型減速装置100の出力側には、入力側よりも大きな荷重およびモーメントが加えられる。このため、第1キャリヤ18とケーシング22の間に配置される第1主軸受26は、第2キャリヤ20とケーシング22の間に配置される第2主軸受28よりも大きなラジアル荷重、スラスト荷重およびモーメントが加えられる。そこで、本実施形態では、第1主軸受26は、ラジアル荷重、(両方向の)スラスト荷重およびモーメントを受けられる軸受で構成され、第2主軸受28は、ラジアル荷重を受けられるとともに、モーメントを受ける能力が第1主軸受26よりも低い軸受で構成される。
【0033】
この構成によれば、第1キャリヤ18とケーシング22の間に、荷重やモーメントを受ける能力が低い軸受を配置する場合と比べて、偏心揺動型減速装置100の剛性を高め負荷容量を大きくできる。また、入力側と出力側とに能力が高い軸受を配置する場合と比べて、コスト的に有利である。
【0034】
第1主軸受26、第2主軸受28の構成に限定はないが、本実施形態の第1主軸受26はクロスローラ軸受であり、第2主軸受28は玉軸受である。第1主軸受26にクロスローラ軸受を用いることにより、第1キャリヤ18とケーシング22の間に加わる多方向の荷重やモーメントを支持できる。第2主軸受28に玉軸受を用いることにより、両持ち構造を安価に実現でき、第2主軸受28のロストルクを減らして減速装置の伝達効率を向上できる。第1主軸受26は、内輪26nと、外輪26eと、転動体26bとを有する。第2主軸受28は、内輪28nと、外輪28eと、転動体28bとを有する。
【0035】
第1主軸受26を、ラジアル荷重、(両方向の)スラスト荷重およびモーメントを受けられる軸受(クロスローラ軸受)で構成し、さらに第2主軸受28を配置すると、第1キャリヤ18および第2キャリヤ20は、3点支持された状態となるので、2つの主軸受間の芯ずれにより軸受に大きなラジアル荷重が発生し、軸受負荷が過大になるおそれがある。そこで、本実施形態の第2主軸受28は、その外輪28eおよび内輪28nの少なくとも一方がすき間嵌めされる。この場合、すき間の大きさに応じて2つの主軸受間の芯ずれの許容範囲を拡大できる。
【0036】
本実施形態の第2主軸受28は、第1主軸受26よりも内部すき間が大きく構成されている。この場合、内部すき間の大きさに応じて芯ずれの許容範囲を一層拡大できる。
【0037】
本実施形態の第1主軸受26は、その内輪26nに雌ねじ26mが設けられており、雌ねじ26mは、第1キャリヤ18の雄ねじ18fと螺合する。この場合、第1主軸受26と第1キャリヤ18との結合強度を高められる。また、結合後に直ぐに次工程を行うことができる。また、本実施形態の第2主軸受28も、その内輪28nに雌ねじ28mが設けられており、雌ねじ28mは、第2キャリヤ20の雄ねじ20fと螺合する。
【0038】
本実施形態では、第1キャリヤ18の外周に、雄ねじ18fの入力側に隣接して円筒状の嵌合部18jが設けられ、第1主軸受26の内輪26nの内周に、雌ねじ26mの入力側に隣接して第1キャリヤ18の嵌合部18jとインロー嵌合するインロー部26jが設けられる。インロー部26jの内径は、雄ねじ18fの外径よりも大きい。インロー嵌合することにより、第1キャリヤ18および第1主軸受26の軸心のずれを小さくできる。また、第2主軸受28の内輪28nの内周に、第2キャリヤ20に設けられた嵌合部20jとインロー嵌合するインロー部28jが第1主軸受26と同様に設けられる。
【0039】
以上のように構成された偏心揺動型減速装置100の動作を説明する。駆動装置からクランク軸12に回転動力が伝達されると、クランク軸12の偏心体12aがクランク軸12を通る回転中心線周りに回転する。偏心運動する偏心体12aが、偏心体軸受30を介して中心孔15と部分的に接触することにより外歯歯車14が揺動する。このとき、外歯歯車14は、自らの軸芯がクランク軸12の回転中心線周りを回転するように揺動する。外歯歯車14が揺動すると、外歯歯車14と内歯歯車16の噛合位置が順次ずれる。この結果、クランク軸12が一回転する毎に、外歯歯車14と内歯歯車16との歯数差に相当する分、外歯歯車14及び内歯歯車16の一方の自転が発生する。本実施形態においては、外歯歯車14が自転し、内ピン32を介して第1キャリヤ18から減速回転が出力される。
【0040】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0041】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0042】
[変形例]
実施の形態の説明では、偏心揺動型減速装置が、センタークランクタイプの偏心揺動型減速装置である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の偏心揺動型減速装置は、外歯歯車を貫通する連結ピンと、その連結ピンを支持するキャリヤを有する種々の原理に基づく減速装置であってもよい。例えば、偏心揺動型減速装置は、内歯歯車の軸心からオフセットした位置に複数のクランク軸が配置されるいわゆる振り分けタイプの偏心揺動型減速装置などであってもよい。
【0043】
実施の形態では、第1主軸受26がクロスローラ軸受である例を示したが、第1主軸受26は、ラジアル荷重、(両方向の)スラスト荷重およびモーメントを受けられるものであれば他の種類の軸受であってもよく、例えば4点接触玉軸受でもよい。
【0044】
実施の形態では、第2主軸受28が玉軸受である例を示したが、第2主軸受28は、ラジアル荷重を受けられ、モーメントを受ける能力が第1主軸受26よりも低いものであれば他の種類の軸受であってもよく、例えば、ころ軸受けであってもよい。
【0045】
実施の形態では、内ピン32およびキャリヤピン36のすべてが第1、第2キャリヤ18、20の両方に支持される例を示したがこれに限られない。例えば、内ピン32は、第1、第2キャリヤ18、20の一方にのみ支持され、他方には支持されない構成であってもよい。また、キャリヤピン36はなくてもよい。
【0046】
実施の形態では、外歯歯車14が2枚の例を示したが、外歯歯車14は、所望の特性に応じて1枚または3枚以上であってもよい。
【0047】
実施の形態では、主軸受26、28が内輪を有する例を説明したが、本発明はこれに限られない。主軸受26、28の一方または双方は、内輪を有しない構成であってもよい。
【0048】
実施形態の出力部材はキャリヤ18であり、外部部材にはケーシング22が固定される例を説明した。この他にも、出力部材はケーシング22であり、外部部材にはキャリヤ18が固定されてもよい。
【0049】
上述の各変形例は実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0050】
上述した実施形態の構成要素と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0051】
12 クランク軸、 12a 偏心体、 14 外歯歯車、 16 内歯歯車、 18 第1キャリヤ、 18f 雄ねじ、 20 第2キャリヤ、 20f 雄ねじ、 20j 嵌合部、 22 ケーシング、 26 第1主軸受、 26j インロー部、 26m 雌ねじ、 26n 内輪、 28 第2主軸受、 28j インロー部、 28m 雌ねじ、 28n 内輪、 32、36 連結ピン、 100 偏心揺動型減速装置。