IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成ファーマ株式会社の特許一覧

特開2024-1560051回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgである、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する製剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156005
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgである、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/427 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/427
A61P31/10
A61P43/00 123
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146111
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2022147197の分割
【原出願日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2021157657
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046299
【氏名又は名称】旭化成ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】白江 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】神崎 智仁
(57)【要約】
【課題】安全性に優れた、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgである、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する製剤等を提供すること。
【解決手段】特定の背景を有する者(例:日本人)に対して、経口又は静脈に投与すること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する静脈投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で200mgであり、日本人に対して静脈に投与するための静脈投与用製剤。
【請求項2】
イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する静脈投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で200mgであり、日本人に対して1時間を超過する時間をかけて静脈に投与するための静脈投与用製剤。
【請求項3】
イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する経口投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で200mgであり、日本人に対し投与するための経口投与用製剤。
【請求項4】
イサブコナゾールのプロドラッグが、イサブコナゾニウム硫酸塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
真菌症を治療するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgである、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する製剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
体表に局在する真菌による感染症は表在性真菌症と呼ばれるが、真菌が肺、肝臓、腎臓、脳など体の深部に入り込んで感染を起こすような状態は深在性真菌症と呼ばれている。深在性真菌症は、例えば、臓器移植を受けた後等免疫力が低下している患者に発症することがある感染症である。
【0003】
日本国内で経験される主な深在性真菌症は、アスペルギルス症、カンジダ症、次いで頻度はかなり落ちるが、クリプトコッカス症、ムーコル症などである(非特許文献1)。深在性真菌症における種々の病態は「炎症」そのものであり、起炎性刺激因子を演ずる真菌による生体損傷から身を守る防御反応の「表現」である(非特許文献1)。
【0004】
侵襲性アスペルギルス症(IA;invasive aspergillosis)は血液領域、特に急性白血病に対する化学療法や造血幹細胞移植における深在性真菌症として最も頻度が高いことが報告されている(非特許文献2)。また、慢性肺アスペルギルス症(CPA;chronic pulmonary aspergillosis)には、単純性肺アスペルギローマ(SPA;simple pulmonary aspergilloma)と慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA;chronic progressive pulmonary aspergillosis)があることも報告されている(非特許文献1)。
【0005】
深在性真菌症治療に用いられ得る抗真菌薬として、例えば、アムホテリシンB(AMPH-B)、アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)、ミコナゾール(MCZ)、フルコナゾール(FLCZ)、ホスフルコナゾール(F-FLCZ)、ボリコナゾール(VRCZ)、イトラコナゾール(ITCZ)、ミカファンギン(MCFG)等が知られている(非特許文献1)。
【0006】
海外において、新規アゾールであるイサブコナゾールが侵襲性アスペルギルス症(IA)をはじめとする深在性真菌症に対して有効であることが報告されている(非特許文献2)。例えば、侵襲性アスペルギルス症(IA)患者を対象にボリコナゾール(VRCZ)と比較した海外第III相試験において、イサブコナゾールは、有効性において、ボリコナゾール(VRCZ)との非劣性を示した(非特許文献3)。また、海外第III相試験におけるムーコル症患者におけるイサブコナゾールの有効性を、国際的なレジストリデータベースを用いたMatched-Case Control研究により評価した結果、イサブコナゾールはアムホテリシンBと大きく異ならない有効性を示すことが確認されている(非特許文献4)。
【0007】
先の2つの海外第III相試験において、イサブコナゾールは、プロドラックであるイサブコナゾニウム硫酸塩として、2日間にわたって、1日3回、イサブコナゾール換算で200mg投与され、その後、1日1回、イサブコナゾール換算で200mg投与されたことが報告されている(非特許文献3~4)。
【0008】
ところで、日本人と外国人との間で薬物の体内動態等が異なることがあり、また、外国人での臨床試験結果に基づき設定された推奨用量が日本人での推奨用量であると結論付けることは困難である場合もみられる(非特許文献7)。そのため、日本人に投与する場合には、日本人に適した用量を設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3787307号公報
【特許文献2】特許第5576279号公報
【特許文献3】特許第6334529号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】深在性真菌症の診断・治療ガイドライン(2014)共和企画
【非特許文献2】Med.Mycol.J.(2016)、Vol.57J、J77-J88
【非特許文献3】Lancet(2016)、Vol.387、pp760~769
【非特許文献4】Lancet Infect Dis(2016)、Vol.16、828~837
【非特許文献5】CRESEMBA(登録商標)添付文書(2015)
【非特許文献6】抗がん剤の血管外漏出の予防と対応ガイド(2019)キッセイ薬品工業株式会社
【非特許文献7】厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知(薬食審査発第0928010号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、安全性に優れた、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgである、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する製剤等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する静脈投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgである、特定の背景を有する者に対して静脈に投与するための静脈投与用製剤である。
【0013】
本発明の一態様は、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する経口投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgであり、特定の背景を有する者に対し投与するための経口投与用製剤である。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の発明等に関する。
【0015】
[1]イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する静脈投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgであり、特定の背景を有する者に対して静脈に投与するための静脈投与用製剤。
【0016】
[2]イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する静脈投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgであり、特定の背景を有する者に対して1時間を超過する時間をかけて静脈に投与するための静脈投与用製剤。
【0017】
[3]イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する経口投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100~400mgであり、特定の背景を有する者に対し投与するための経口投与用製剤。
【0018】
[4]イサブコナゾールのプロドラッグが、イサブコナゾニウム硫酸塩である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の製剤。
【0019】
[5]特定の背景を有する者が、日本人である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の製剤。
【0020】
[6]1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で200mgである、前記[1]~[5]のいずれかに記載の製剤。
【0021】
[7]1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で100mgである、前記[1]~[5]のいずれかに記載の製剤。
【0022】
[8]1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で400mgである、前記[1]~[5]のいずれかに記載の製剤。
【0023】
[9]真菌症を治療するための、前記[1]~[8]のいずれかに記載の製剤。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.有効成分
本発明において、イサブコナゾールとは、下記式(I)で示される化合物を意味する(特許文献1)。
【0025】
【化1】
【0026】
イサブコナゾールは、Isavuconazoleやアイサブコナゾールと称されることもある。イサブコナゾールのCAS番号は241479-67-4である。米国において、イサブコナゾールのプロドラッグであるイサブコナゾニウム硫酸塩を含有する製剤が臨床応用されている(非特許文献5)。イサブコナゾニウム硫酸塩は、下記式(II)で示される化合物である。イサブコナゾニウム硫酸塩は、生体内で加水分解され、イサブコナゾールとなり得る。
【0027】
【化2】
【0028】
イサブコナゾール又はそのプロドラッグは自体公知の方法で製造又は調製できる(特許文献1、非特許文献5等)。イサブコナゾールのプロドラッグとして、イサブコナゾニウム硫酸塩を好ましく挙げることができる。
【0029】
2.製剤
(2-1)投与経路
本発明の製剤は、その投与経路が、経口投与又は静脈投与である点に1つの特徴を有する。本発明の製剤を静脈投与する際、持続的に投与される形態を採用することが好ましく、例えば、ボトルやバック入れて吊るした本発明の製剤を含む溶液を、静脈内に留置した注射針から少量ずつ投与する方法(点滴静注注射;intravenous drip)を採用することが好ましい。
【0030】
(2-2)投与頻度
本発明の製剤の投与頻度は、医師等によって決定され得る。例えば、有効成分、病態や障害の進行状況、患者の年齢、体重、基礎疾患、病因などによって、投与頻度を適宜に調節することが可能である。例えば、本発明の製剤を使用する場合、1日1回または1日1回以上、例えば1日に1回または3回投与する用法などを好適に挙げることができる。
【0031】
(2-3)投与量
本発明の製剤は、有効成分の1回投与当たりの用量が、イサブコナゾール換算量として、100mg~400mg(例えば、100mg、200mg、400mg)である点に1つの特徴を有する。本発明において、好ましい有効成分の1回投与当たりの用量として、イサブコナゾール換算量として、200mgを挙げることができる。有効成分としてイサブコナゾニウム硫酸塩を用いる場合、イサブコナゾール換算で200mgは、イサブコナゾニウム硫酸塩の372.6mgに相当する。単にイサブコナゾニウム硫酸塩の372mgに相当すると記載することもある。
【0032】
(2-4)剤型
本発明の製剤の剤型は特に限定されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、注射剤などを挙げることができる。本発明の製剤を経口投与用製剤とする場合、その剤型として、カプセル剤を好ましく挙げることができ、本発明の製剤を静脈投与用製剤とする場合、その剤型として注射剤を好ましく挙げることができる。
【0033】
本発明の製剤が注射剤である場合、予め液剤化されている注射剤であってもよく、凍結乾燥製剤を再溶解する注射剤であってもよい。
【0034】
(2-5)添加剤
本発明の製剤の添加剤は特に限定されず、剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、製剤とすることができる。
【0035】
本発明の製剤をカプセル剤とする場合、例えば、海外で臨床応用されているイサブコナゾニウム硫酸塩製剤を参考にすることができる(CRESEMBA(登録商標);非特許文献5)。具体的には、慣用の方法を用いて、有効成分及び添加剤(クエン酸マグネシウム、結晶セルロース、タルク、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸)を混交し、それらを、ヒプロメロースを主成分とするカプセル基材に充填することで本発明のカプセル剤を製造することができる。
【0036】
本発明の製剤を凍結乾燥製剤とする場合も、海外で臨床応用されているイサブコナゾニウム硫酸塩製剤を参考にすることができる(CRESEMBA(登録商標);非特許文献5)。具体的には、マンニトール、pH調整剤として硫酸を本発明の有効成分と配合し、慣用の方法で、本発明の凍結乾燥製剤を製造することができる。
【0037】
(2-6)投与対象
本発明の製剤は、特定の背景を有する者に投与されることに1つの特徴を有する。投与対象として、最も典型的には、日本人を挙げることができる。
【0038】
日本人とは、日本国内に古来より居住してきた、日本列島に起源、祖先、由来等を持つヒトをいい、一般に日本国籍を有する者をいう。性別、年齢は問わないが、成人であることが好ましい。男性成人であれば、身長165~175cm程度であって体重は55~70kg程度であることが好ましく、女性成人であれば、身長153~163cm程度であって体重は50~60kg程度であることが好ましい。
【0039】
2.薬物動態
本発明の製剤が示す薬物動態は、特に限定されないが、経口投与用製剤の絶対的生物学的利用率(%)は、70~100%程度であることが好ましい。
【0040】
薬物動態のパラメーターは、当業者であれば、自体公知の方法により容易に推算し得る。薬物動態のパラメーターとして、AUC(薬物濃度時間曲線下面積;Area Under the Curve)、Cmax(最高血中濃度;Maximum drug concentration in plasma)、Tmax(最高血中濃度到達時間;)、T1/2(血中濃度半減期;Biological half life)などを挙げることができる。
【0041】
薬物動態学的パラメータを、算出する際には、十分な測定時点数を確保することが好ましい。例えば、単回投与における薬物動態学的パラメーターを算出する際、投与初日においては、投与前、投与後30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、96時間、120時間、240時間、及び480時間に血液試料を採取して、血漿中のイサブコナゾール濃度を測定し、薬物動態モデルに依存しない解析方法、即ちNCA(Non Compartmental Analysis)によって算出され得る。
【0042】
3.安全性
(3-1)有害事象、副作用、及び安全性の評価
一般的に、薬剤を投与された者に生じた全ての好ましくないまたは意図しない疾病やその徴候を有害事象(Adverse event;AE)と称することができる。薬剤投与後に発現した有害事象を特にTEAE(Treatment-emergent adverse event)と称することがある。
【0043】
有害事象のうち、薬剤との因果関係が否定できないものを副作用と称することができる。ここで、因果関係が否定できないとは、因果関係の合理的な可能性が認められることの他、因果関係の合理的な可能性がないと評価できないことを含む。
【0044】
有害事象は、「重篤な有害事象」および「非重篤な有害事象」に分類され得る。有害事象の程度は、「軽度」「中等度」「高度」に分類され得る。このような分類は、例えば、臨床試験において、治験責任医師や治験分担医師が当該分野の慣用な方法に従ってなすことができる。
【0045】
有害事象は、経時的変化の観点から、その転帰を、例えば、回復(recovered/resolved)、軽快(recovering/resolving)、未回復(not recovered/not resolved)、回復したが後遺症あり(recovered/resolved with sequelae)、死亡、不明、と分類することもできる。
【0046】
ある薬剤と別の薬剤を安全性で比較する場合の方法は、特に制限されず、例えば、ある有害事象に着目し、その発現頻度、重篤性、因果関係、転帰、及び/又は程度に関して比較することもできる。あるいは、有害事象全体やその一部又は副作用全体やその一部に起因する投与中断の観点で、両剤を比較することもできる。有害事象は、臨床検査値やバイタルサインの異常を含むことができる。
【0047】
有害事象は、特に限定されず、器官別大分類(System Organ Class;SOC)によっても分類され得る。有害事象に係る器官別大分類は、以下のように例示され得る。
【0048】
1)感染症および寄生虫症
2)胃腸障害
3)筋骨格系および結合組織障害
4)障害、中毒、および処置合併症
5)一般・全身障害および投与部位の状態
6)皮膚および皮下組織障害
7)神経系障害
8)呼吸器、胸郭および縦隔障害
9)眼障害
10)代謝および栄養障害
11)臨床検査
12)良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)
13)耳および迷路障害
14)心臓障害
15)血管障害
【0049】
本発明の製剤を本発明の投与対象に投与する際、有害事象全体の発生頻度の観点から、投与経路として経口投与が採用されることが好ましい。
【0050】
(3-2)肝機能に関する安全性
前述の通り、イサブコナゾニウム硫酸塩製剤は既に海外で臨床応用されている(CRESEMBA(登録商標);非特許文献5)。非特許文献5において、肝臓の副作用が海外の臨床試験において観察されたことが報告されている(5.1 Hepatic Adverse Drug Reactions欄)。同欄において、肝臓の副作用は、例えば、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ;GPTと称されることもある)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;GOTと称されることもある)、ALP(アルカリフォスファターゼ)、総ビリルビンといった肝機能関連の臨床検査値の上昇として捉えられている。
【0051】
従って、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する製剤をヒトに投与する際の肝機能に関する安全性を高める臨床意義は十分に存在すると考えられる。
【0052】
ALTは、肝細胞で作られる酵素の1つであり、肝臓になんらかの異常があり肝細胞が壊れすぎると、血液中に放出される酵素と言われている。
【0053】
ASTも肝細胞で作られる酵素の1つであり、血液中のASTの数値が高い場合、肝臓や心臓にどの程度の障害が起きているかを知ることができると言われている。
【0054】
ALPは、リン酸化合物を分解する酵素の1つであり、胆汁うっ滞や肝機能低下によって、胆汁中のALPが逆流して血液中に流れ込むことが知られている。
【0055】
総ビリルビンは、肝臓で処理される前の間接ビリルビンと処理後の直接ビリルビンの総和であり、肝障害により肝臓から排出されず血中に放出され、色素の関係で皮膚が黄色くなる黄疸が起こることがある。
【0056】
その他、γ-GTP(γ―グルタミルトランスフェラーゼ)、LDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)、総蛋白、アルブミンなどが代表的な肝機能検査のための臨床検査指標として知られている。
【0057】
以上のことから、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する製剤をヒトに投与して得られる、ALT、AST、ALP、総ビリルビン、γ-GTP、LDH、総蛋白、アルブミン(計8種類)の臨床検査値変動により、同製剤が肝機能にいかに影響を与えるかを推察し得ると考えられる。
【0058】
本発明の製剤を本発明の投与対象に投与する際、肝機能に関する有害事象の発生頻度の観点から、投与経路として静脈投与が採用されることが好ましい。
【0059】
(3-3)投与部位反応に関する安全性
前述の通り、本発明の製剤をヒトに静脈投与することでき、持続的に点滴静注注射で投与され得る。一般的に、静脈注射した薬剤や輸液が、カテーテルの先端の移動などによって、血管外の周辺組織に漏れることがあり、組織の炎症や壊死がもたらされることがある(非特許文献6)。このような状態は、血管外漏出(extravasion;EV)又は注入部位血管外漏出と呼ばれることがあり、例えば、抗癌剤を静脈投与した際に、0.1~4%程度の割合で、血管外漏出が発生してしまうことが報告されている(非特許文献6)。
【0060】
本発明の製剤を本発明の投与対象に静脈投与する際、投与部位反応(血管外漏出を含む。)に関する有害事象の発生頻度を下げる観点から、1時間を超過して静脈投与されることが好ましい。1時間を超過してとは、例えば、1時間1分を超過、1時間2分を超過、1時間30分以上、2時間以上、3時間以上を挙げることができ、中でも2時間以上とすることが好ましい。製剤の投与速度と投与部位反応との間に関連があることは知られていないところ、本発明の製剤を投与する場合には、驚くべきことに、投与速度を遅くすることにより、投与部位反応を抑えることができる。投与時間の上限は特に限定されないが、例えば、5時間、4時間、3時間、又は2時間30分としてもよい。
【0061】
本発明の製剤を持続的に点滴静注注射する場合、
イサブコナゾール又はそのプロドラッグを200mg含む、全量が好ましくは150~350mL、より好ましくは200~300mL、更に好ましくは250mLの製剤を、
イサブコナゾール又はそのプロドラッグを100mg含む、全量が好ましくは150~350mL、より好ましくは200~300mL、更に好ましくは250mLの製剤を、又は
イサブコナゾール又はそのプロドラッグを400mg含む、全量が好ましくは400~600mL、より好ましくは450~550mL、更に好ましくは495mLの製剤を、
上述の投与時間にわたって、投与することが好ましい。
【0062】
4.医薬製剤、投与方法
本発明の製剤は、例えば、真菌症治療用医薬製剤として用いることもできる。すなわち、真菌症患者に対して本発明の製剤を投与することで、真菌症治療をすることもできる。真菌症治療を目的に本発明の製剤を投与する際の、投与経路、投与頻度、投与量、投与対象については、前記に記載の内容に沿って決め得る。
【0063】
本発明の一態様における真菌症としては、深在性真菌症が例示される。深在性真菌症としては、アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコッカス症、又はムーコル症が例示される。アスペルギルス症の具体的としては、侵襲性アスペルギルス症又は慢性肺アスペルギルス症が例示される。さらに慢性肺アスペルギルス症としては、単純性肺アスペルギローマ(SPA;simple pulmonary aspergilloma)又は慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA;chronic progressive pulmonary aspergillosis)が例示される。
【実施例0064】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例にも束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0065】
[実施例1]製剤の調製
(1)経口投与用カプセル製剤(100、200、又は、400mg投与用)の調製
実施例2の試験に用いる3種類の経口投与用カプセル製剤を調製した。具体的には、以下の表1に沿って、慣用の方法を用いて、有効成分及び添加剤を混交し、それらをカプセル基材に充填することで、経口投与用カプセル製剤(100mg投与用)を調製した(カプセル基材は、以下の表2に沿って、慣用の方法を用いて製造されたものであった)。経口投与用カプセル製剤(200mg投与用)は、経口投与用カプセル製剤(100mg投与用)2剤とした。経口投与用カプセル製剤(400mg投与用)は、経口投与用カプセル製剤(100mg投与用)4剤とした。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
(2)静脈投与用凍結乾燥製剤(100、200、400mg投与用)の調製
実施例2の試験に用いる3種類の静脈投与用凍結乾燥製剤を調製した。具体的には、以下の表3に沿って、慣用の方法を用いて、静脈投与用凍結乾燥製剤(200mg投与用)を調製した。静脈投与用凍結乾燥製剤(400mg投与用)は、静脈投与用凍結乾燥製剤(200mg投与用)2剤とした。静脈投与用凍結乾燥製剤(100mg投与用)は、静脈投与用凍結乾燥製剤(200mg投与用)の半量を用いる製剤とした。なお、静脈投与の際に、静脈投与用凍結乾燥製剤(100mg投与用)、及び静脈投与用凍結乾燥製剤(200mg投与用)は、全量が250mLとなるように溶解し、静脈投与用凍結乾燥製剤(400mg投与用)は、全量が495mLとなるように溶解した。
【0069】
【表3】
【0070】
[実施例2]日本人を対象とする臨床試験
(1)試験方法
(1-1)単回投与試験の試験方法
被験製剤として、経口投与用カプセル製剤(100mg投与用)、経口投与用カプセル製剤(200mg投与用)又は経口投与用カプセル製剤(400mg投与用)を、若しくはそれらに対応するプラセボ製剤(対照製剤)を、健康な日本人成人男性(以降、日本人被験者と称することもある)に対して、経口投与した。
【0071】
被験製剤として、静脈投与用凍結乾燥製剤(100mg投与用)、静脈投与用凍結乾燥製剤(200mg投与用)又は静脈投与用凍結乾燥製剤(400mg投与用)を、若しくはそれらに対応するプラセボ製剤(対照製剤)を、それぞれ用時溶解し、日本人被験者に対して、溶解して得られた溶液を静脈投与した。
【0072】
本試験において、1回投与当たりの有効成分量別に、3つのコホートを設けた。さらに各コホートを投与経路別に2つに分けた。加えて、各コホートの投与経路毎に被験製剤群と対照製剤群を設け、被験製剤群に対して8例の日本人被験者を、対照製剤群に対して2例の日本人被験者を、それぞれ無作為に割付けた上で、二重盲検下、本試験を実施した。経口投与前後1時間は絶食とした。各コホートの概要を以下の表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
(1-2)反復投与試験の試験方法
被験製剤として、経口投与用カプセル製剤(200mg投与用)を、日本人被験者に対して、16日間にわたり、経口投与した。投与開始日及びその翌日においては、1日3回8時間毎に、投与開始3日目から16日目迄においては、1日1回の頻度で、投与された。
【0075】
被験製剤として、静脈投与用凍結乾燥製剤(200mg投与用)を、用時溶解し、日本人被験者に対して、投与開始日及びその翌日においては、1日3回8時間毎に、投与開始3日目から16日目迄においては、1日1回の頻度で、投与した。
【0076】
すなわち、本試験において、1つのコホートを設け、投与経路別に2つに分けた。加えて、各投与経路に応じた被験製剤群を設け、各被験製剤群に対して8例の日本人被験者を割付けた上で、非盲検下、本試験を実施した。経口投与前後1時間は絶食とした。本コホートの概要を以下の表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
(1-3)両試験における日本人被験者
日本人被験者は、健康な日本人成人男性であって、臨床試験同意時の年齢が20歳以上かつ45歳未満の者であるとした。また、日本人被験者は、以下の除外基準(1)~(20)のいずれにも該当しない者であることとして、試験が実施された。
【0079】
除外基準(1):治験医師等により、臨床的に異常と判断される
除外基準(2):AST,ALT,γ―GTPの値が基準値上限を超える
除外基準(3):QTcFが360msecを下回る
除外基準(4):体重が50.0kg未満である
除外基準(5):BMIが18.5未満または25.0以上である
除外基準(6):HBs抗原、HCV抗体、HIV抗原・抗体または梅毒定性検査が陽性
除外基準(7):アルコール依存や薬物依存の既往を有すると判断される
除外基準(8):腎臓、肝臓、心臓、脳などに不適当と考えられる疾患の既往を有する
除外基準(9):アゾール系化合物に過敏症の既往を有する
除外基準(10):薬物アレルギーの合併または既往を有する
除外基準(11):QT短縮症候群の既往を有する
除外基準(12):入院期間中、禁煙が保てない
除外基準(13):評価に影響を与え得る薬剤を投与前4週以内に使用した実績を有する
除外基準(14):投与前12週以内に入院又は手術の治療を受けた
除外基準(15):投与前16週以内に他の治療薬の投与を受けた、もしくは、試験同意時までに観察が終了していない
除外基準(16):投与前所定期間以内に所定の献血を行った
除外基準(17):被験者の女性パートナーが医学的に適切な避妊を行う意思がない
除外基準(18):投与開始日までの7日以内にグレープフルーツ・セイヨウオトギリソウ及びその含有飲食品を摂取した
除外基準(19):精神疾患の既往を有する
除外基準(20):治験医師等により、不適当と判断された
【0080】
(1-4)両試験における評価等
両試験において、薬物動態及び安全性の評価等を実施した。
【0081】
薬物動態においては、血漿中のイサブコナゾール濃度を経時的に観察し、モデルによらない(Non Compartment model)方法で、AUC(薬物濃度時間曲線下面積;Area Under the Curve)、Cmax(最高血中濃度;Maximum drug concentration in plasma)、Tmax(最高血中濃度到達時間;)、T1/2(血中濃度半減期;Biological half life)などの薬物動態パラメーターを推算した。単回投与試験における血漿の採取日は、投与開始日、2日目、3日目、4日目、5日目、7日目、11日目、15日目、19日目、及び21日目とした。反復投与試験における血漿の採取日は、投与開始日から20日目までの全日、22日目、26日目、30日目、34日目、及び36日目とした。なお、血漿中のイサブコナゾール濃度は、バリデートされたLC-MS/MS法により測定された。
【0082】
安全性においては、治験医師が日本人被験者を経時的に診察し、自覚症状及び他覚所見を確認、評価した。単回投与試験における診察日は、投与開始日、2日目、3日目、4日目、5日目、7日目、11日目、15日目、19日目、及び21日目とした。反復投与試験における診察日は、投与開始日から20日目までの全日、22日目、26日目、30日目、34日目、及び36日目とした。ただし、試験を中止した日本人被験者に対しては中止時にも安全性を評価した。
【0083】
薬物動態や安全性の評価において又は加えて、体重の観察、バイタルサインの観察、12誘導心電図の取得、臨床検査(血液、生化学、尿)を実施した。臨床検査日は、投与開始日、2日目、4日目、7日目、15日目、及び21日目であった。ただし、試験を中止した日本人被験者に対しては中止時にも安全性を評価した。
【0084】
臨床検査(血液)項目は、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数、白血球分画、血小板数であった。
【0085】
臨床検査(生化学)項目は、AST、ALT、LDH、ALP、γ-GTP、CK、総ビリルビン、直接ビリルビン、総蛋白、アルブミン、中性脂肪、血糖、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、総コレステロール、カルシウム、無機リン、ナトリウム、カリウム、クロール、マグネシウムであった。
【0086】
臨床検査(尿)項目は、蛋白(定性)、糖(定性)、潜血(定性)、ウロビリノーゲン(定性)、pHであった。
【0087】
(2)試験結果
(2-1)日本人被験者の背景
以下の表6が示すように、各被験製剤群間において被験者背景に大きな差はなかった。
【0088】
【表6】
【0089】
以下の表7が示すように、被験製剤群(ここでは、代表として、2つの被験製剤群を挙げている)と対照製剤群間においても被験者背景に大きな差はなかった。
【表7】
【0090】
(2-2)薬物動態
以下の表が示す通り、経口投与用製剤の絶対生物学的利用率は約80~100%程度であり、経口投与と静脈投与の間で生物学的利用率に大きな差がないあるいはやや静脈投与の方が優位であるという結果であった。
【0091】
【表8】
【0092】
(2-3)1回投与当たりの有効成分量200mgが経口投与される製剤が示す安全性
投与製剤の種別が「被験製剤」であり、かつ、1回投与当たりの有効成分量がイサブコナゾール換算で「200mg」又は「400mg」である6群の各群において、製剤投与後になんらかの有害事象を示した例数を同群の全体例数(8例)で除して100を乗じて得た数値を「有害事象発生率(%)」として算出した。結果を以下の表9に示す。
【表9】
【0093】
この結果は、日本人被験者に対して1回投与当たりの有効成分量をイサブコナゾール換算で200~400mgの有効成分を投与する投与態様において、中でも、200mgを経口投与すると優れた包括的な安全性を示すことを示唆している、と発明者は考える。
【0094】
(2-4)1回投与当たりの有効成分量200mgが静脈投与される製剤が示す安全性
前述の通り、ALT、AST、ALP、総ビリルビン、γ―GTP、LDH、総蛋白、アルブミン(計8種類)の臨床検査値変動により、同製剤が肝機能にいかに影響を与えるかを検討した。
【0095】
投与製剤の種別が「被験製剤」であり、かつ、1回投与当たりの有効成分量がイサブコナゾール換算で「200mg」又は「400mg」である6群の各群において、上記8種類の少なくともいずれかの臨床検査指標が正常範囲を逸脱した例数を同群の全体例数(8例)で除して100を乗じて得た数値を「肝機能に関する有害事象発生率(%)」として算出した。結果を以下の表10に示す。
【0096】
【表10】
【0097】
この結果は、日本人被験者に対して1回投与当たりの有効成分量をイサブコナゾール換算で200~400mgの有効成分を投与する投与態様において、中でも、200mgを静脈投与すると優れた肝機能に関する安全性を示すことを示唆している、と発明者は考える。
【0098】
前述の通り、日本人被験者に対して1回投与当たりの有効成分量をイサブコナゾール換算で200~400mgの有効成分を投与する投与態様において、経口投与と静脈投与の間で生物学的利用率に大きな差がないあるいはやや静脈投与の方が優位であるという結果であった。この薬物動態の結果も考慮に入れると、「200mg」「静脈投与」の組合せがとりわけ優れた肝機能に関する安全性を示唆したこの結果は、極めて意外であり、画期的な成果である、と発明者は考える。
【0099】
(2-5)1回投与当たりの有効成分量200~400mgが1時間を超過する時間をかけて静脈投与される製剤が示す安全性
前述の通り、本発明の製剤をヒトに静脈投与することでき、持続的に点滴静注注射で投与され得るが、一般的には、静脈注射した薬剤等が、血管外の周辺組織に漏れることがあり、組織の炎症や壊死がもたらされることがある。このように静脈注射による薬剤投与の際には、血管外漏出を抑制することの臨床意義は高い。
【0100】
投与製剤の種別が「被験製剤」であり、1回投与当たりの有効成分量がイサブコナゾール換算で「200mg」又は「400mg」であり、かつ、「投与経路が静脈」である、3群の各群において、投与部位血管外漏出の有害事象を発生した例数を同群の全体例数(8例)で除して100を乗じて得た数値を「投与部位血管外漏出の有害事象発生率(%)」として算出した。結果を以下の表11に示す。
【0101】
【表11】
【0102】
前述の通り、日本人被験者に対して1回投与当たりの有効成分量をイサブコナゾール換算で200又は400mgの有効成分を静脈投与する投与態様において、有効成分量の増加に応じて薬剤への暴露が上昇した。一般的に、有害事象は、有効成分の暴露量が高まれば高まるほどその発生率が上昇していく傾向となる。従って、コホート2,3の結果の関係に影響を与える因子を考察する際、有効成分の暴露量に起因して有害事象の発生頻度が大きく低下することは考え難い。
【0103】
従って、上記の結果は、日本人被験者に対して1回投与当たりの有効成分量をイサブコナゾール換算で200~400mgの有効成分を静脈投与する投与態様においては、静脈投与する際の投与にかける時間(投与部位が投与状況に置かれている時間)によって投与部位反応(血管外漏出を含む。)の発生頻度が影響を受けることを示す結果と考えることが合理的である、と発明者は考察している。
【0104】
すなわち、上記の表は、同投与態様において、約1時間を超過する時間(より具体的には、例えば、1時間2分超過、あるいは、2時間以上)をかけて静脈投与することにより、極めて優れて投与部位反応(血管外漏出を含む。)の発生頻度を抑制できることを示唆する、と発明者は考えている。
【0105】
[参考例1]海外での外国人を対象とする臨床試験
(1)試験方法
(1-1)単回経口投与試験の試験方法
被験製剤として、経口投与用カプセル製剤(100mg投与用)、経口投与用カプセル製剤(200mg投与用)、経口投与用カプセル製剤(400mg投与用)又はプラセボ製剤を、健康な外国人成人男性(以降、外国人被験者と称することもある)に対して、経口投与し、安全性及び薬物動態を検討した。これら製剤で使用されている添加剤は実施例における経口用製剤で使用されている添加剤と実質的に同一であった。
【0106】
(1-2)単回静脈投与試験の試験方法
被験製剤として、静脈投与用凍結乾燥製剤(50mg投与用)、静脈投与用凍結乾燥製剤(100mg投与用)、静脈投与用凍結乾燥製剤(200mg投与用)又はプラセボ製剤を、それぞれ用時溶解し、外国人被験者に対して、溶解して得られた溶液を静脈投与した。投与時間は1時間であった。これら製剤で使用されている添加剤は実施例における凍結乾燥製剤で使用されている添加剤と実質的に同一であった。
【0107】
(2)試験結果
(2-1)単回経口投与試験の試験結果
【表12】
【0108】
【表13】
【0109】
(2-2)単回静脈投与試験の試験結果
【表14】
【0110】
【表15】
【0111】
【表16】
【0112】
上述の実施例及び参考例の結果から、外国人に投与した場合と比較して、日本人に投与した場合において、用法用量が同一であっても、より高い安全性が得られると考えられる。一般的に、日本人は欧米人より体格が小さく、相対的な投与量が多くなるため(言い換えると、曝露量が多くなるため)、安全性が低下することが予想されるところ、日本人のほうがより安全性が高くなるということは驚くべきことである。また、製剤の投与速度を遅くすることにより、投与部位反応を抑制できることも驚くべきことである。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の製剤は安全性に優れる製剤である。本発明は医薬品産業において極めて有用である。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する経口投与用製剤であって、1回当たりの投与量がイサブコナゾール換算で200mgであり、日本人に対し投与するための経口投与用製剤。
【請求項2】
イサブコナゾールのプロドラッグが、イサブコナゾニウム硫酸塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
真菌症を治療するための、請求項1又は2に記載の製剤。