(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156011
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146219
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023049750の分割
【原出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】公門 保明
(72)【発明者】
【氏名】植松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大原 穂波
(72)【発明者】
【氏名】佐成 巧
(57)【要約】
【課題】ガス透過性に優れる多孔質体がガス流路内に充填された保持基板を備える保持装置の提供。
【解決手段】本発明の保持装置100は、対象物Wを保持する第1表面S1、それの反対側に配される第2表面S2を含み、セラミックスを主成分とする板状部材11と、その内部に形成されるガス流路12と、ガス流路12の一部に充填され、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体70とを有する保持基板を備える。ガス流路12は、第1表面S1側に開口したガス流出口12bを含み、ガス流出口12bから第2表面S2側に延びた縦流路部120と、縦流路部120と接続し、第1表面S1に対して平行に延びた横流路部130とを有する。多孔質体70は、その第2表面S2側であって横流路部130内に空間Vが形成されるように、縦流路部120に充填される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する第1表面、及び前記第1表面の反対側に配される第2表面を含み、セラミックスを主成分とする板状部材と、前記板状部材の内部に形成されるガス流路と、前記ガス流路の一部に充填され、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体とを有する保持基板を備える保持装置であって、
前記ガス流路は、前記第1表面側に開口したガス流出口を含み、前記ガス流出口から前記第2表面側に延びた縦流路部と、前記縦流路部と接続し、前記第1表面に対して平行に延びた横流路部とを有し、
前記多孔質体は、前記多孔質体の前記第2表面側であって前記横流路部内に空間が形成されるように、前記縦流路部に充填される保持装置。
【請求項2】
前記多孔質体は、前記空間に面する前記第2表面側の端面からなり、前記第2表面側に盛り上がった凸状端面を有する請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記多孔質体は、前記空間に面する前記第2表面側の端面からなり、前記第1表面側に窪んだ凹状端面を有する請求項1に記載の保持装置。
【請求項4】
前記横流路部は、前記多孔質体と対向する底面を含み、
前記多孔質体は、前記縦流路部に充填される本体部と、前記本体部の前記第2表面側に前記空間が形成されると共に前記底面上で前記本体部が支持されるように、前記本体部から前記底面まで延びた支持部とを有する請求項1に記載の保持装置。
【請求項5】
前記多孔質体は、前記ガス流出口よりも前記第2表面側に配され、かつ径方向において前記ガス流出口よりも大きい幅広部を有する請求項1に記載の保持装置。
【請求項6】
前記横流路部の一端に前記空間を有する請求項1から請求項5の何れか一項に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する際にウェハ(半導体ウェハ)を保持する保持装置の一例として、静電チャックが挙げられる(特許文献1参照)。静電チャックは、絶縁性のセラミックス(例えば、アルミナ)を主体とした保持基板(セラミック基板)を備えており、その保持基板の表面上でウェハが静電引力により保持される。静電引力は、保持基板の内部に設けられたチャック電極に電圧が印加されることで、発生する。
【0003】
この種の静電チャックでは、プラズマエッチング等のプラズマ処理において、保持基板とウェハとの間に、ヘリウムガス等の熱伝導ガスを供給して、ウェハから熱を取り除くことが行われている。そのため、静電チャックの保持基板の内部には、外部から供給された熱伝導ガスを、ウェハに向かって流すためのガス流路が形成されている。
【0004】
なお、プラズマ処理時に印加される高周波電力により、ガス流路内で異常放電(アーキング)が発生して、その異常放電により保持基板上のウェハが損傷することがあった。そのため、このような異常放電の発生を抑制するために、ガス流路の内部に、絶縁性のセラミック材料からなるガス透過性の多孔質体が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の保持装置の場合、ガス流路を利用して供給されるガス(熱伝導ガス等の不活性ガス)と、多孔質体の表面との接触面積が小さく、多孔質体におけるガスの圧力損失が大きい。そのため、外部よりガス流路に供給されるガス量と比べて、多孔質体を透過できるガス量が少なくなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、ガス透過性に優れる多孔質体がガス流路内に充填された保持基板を備える保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 対象物を保持する第1表面、及び前記第1表面の反対側に配される第2表面を含み、セラミックスを主成分とする板状部材と、前記板状部材の内部に形成されるガス流路と、前記ガス流路の一部に充填され、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体とを有する保持基板を備える保持装置であって、前記ガス流路は、前記第1表面側に開口したガス流出口を含み、前記ガス流出口から前記第2表面側に延びた縦流路部と、前記縦流路部と接続し、前記第1表面に対して平行に延びた横流路部とを有し、前記多孔質体は、前記多孔質体の前記第2表面側であって前記横流路部内に空間が形成されるように、前記縦流路部に充填される保持装置。
【0009】
<2> 前記多孔質体は、前記空間に面する前記第2表面側の端面からなり、前記第2表面側に盛り上がった凸状端面を有する前記<1>に記載の保持装置。
【0010】
<3> 前記多孔質体は、前記空間に面する前記第2表面側の端面からなり、前記第1表面側に窪んだ凹状端面を有する前記<1>に記載の保持装置。
【0011】
<4> 前記横流路部は、前記多孔質体と対向する底面を含み、前記多孔質体は、前記縦流路部に充填される本体部と、前記本体部の前記第2表面側に前記空間が形成されると共に前記底面上で前記本体部が支持されるように、前記本体部から前記底面まで延びた支持部とを有する前記<1>に記載の保持装置。
【0012】
<5> 前記多孔質体は、前記ガス流出口よりも前記第2表面側に配され、かつ径方向において前記ガス流出口よりも大きい幅広部を有する前記<1>~<4>の何れか1つに記載の保持装置。
【0013】
<6> 前記横流路部の一端に前記空間を有する前記<1>~<5>の何れか1つに記載の保持装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガス透過性に優れる多孔質体がガス流路内に充填された保持基板を備える保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る保持装置の外観構成を模式的に表した斜視図
【
図2】実施形態1に係る保持装置の内部構造を模式的に表した断面図
【
図3】基板側ガス流路の一部を拡大した保持基板の断面図
【
図7】実施形態2に係る保持基板の基板側ガス流路の一部を拡大した断面図
【
図8】実施形態3に係る保持基板の基板側ガス流路の一部を拡大した断面図
【
図9】実施形態4に係る保持基板の基板側ガス流路の一部を拡大した断面図
【
図10】実施形態5に係る保持基板の基板側ガス流路の一部を拡大した断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、実施形態1に係る保持装置100を、
図1~
図6を参照しつつ説明する。保持装置100は、対象物(例えば、ウェハW)を、静電引力によって吸着して保持する静電チャックである。静電チャックは、例えば減圧されたチャンバー内でプラズマを用いてエッチングを行うプロセスにおいて、ウェハWを載置するテーブルとして使用される。
【0017】
図1は、実施形態1に係る保持装置100の外観構成を模式的に表した斜視図であり、
図2は、実施形態1に係る保持装置100の内部構造を模式的に表した断面図である。保持装置100は、円板状の保持基板(セラミック基板)10と、その保持基板10よりも大きな円板状のベース部材20とを備える。例えば、保持基板10が、直径300mm及び厚み3mmの円板状をなす場合、ベース部材20は、直径340mm及び厚み20mmの円板状に設定される。なお、保持基板10及びベース部材20には、それぞれ、互いの位置合わせを行うための位置決め部(凹凸等)が設けられてもよい。
【0018】
保持基板10及びベース部材20は、保持基板10が上側に配され、かつベース部材20が下側に配された状態で、上下方向に互いに重ねられる。保持基板10及びベース部材20は、それらの間に介在される接合材30により、互いに接合される。
【0019】
保持基板10は、上側に配される略円形状の第1表面S1と、その第1表面S1の反対側(つまり、下側)に配され、かつベース部材20と対向する略円形状の第2表面S2とを有する。ベース部材20は、上側に配され、かつ保持基板10の第2表面S2と対向する略円形状の第3表面S3と、その第3表面S3の反対側(つまり、下側)に配される略円形状の第4表面S4とを有する。上述した接合材30は、保持基板10の第2表面S2とベース部材20の第3表面S3との間で挟まれつつ、層状に広がった状態となっている。
【0020】
保持基板10は、円板状の板状部材11と、その板状部材11の内部に形成された基板側ガス流路(ガス流路の一例)12とを備える。板状部材11の上側の表面が、保持基板10の第1表面S1となる。また、板状部材11の下側の表面が、保持基板10の第2表面S2となる。
【0021】
板状部材11は、セラミックスを主成分とする板状(円板状)をなした絶縁性の部材である。本明細書において、「主成分」とは、含有割合の最も多い成分を意味する。本実施形態の板状部材11は、アルミナ(Al2O3)からなる。なお、他の実施形態においては、窒化アルミニウム(AlN)等の他のセラミックスからなるものであってもよい。
【0022】
基板側ガス流路(ガス流路の一例)12は、保持装置100が備える不活性ガス(例えば、熱伝導ガスであるヘリウムガス)を流すための流路60の一部を構成する。基板側ガス流路12は、保持基板10の板状部材11の内部に形成される。基板側ガス流路12は、保持基板10の第2表面S2に開口した入口12aと、第1表面S1に開口したガス流出口12bとを含む、保持基板10内を貫通する孔からなる。入口12aから不活性ガスが供給されると、不活性ガスは、基板側ガス流路12内を通って最終的にガス流出口12bから外部に排出される。
【0023】
図3は、基板側ガス流路12の一部を拡大した保持基板10の断面図であり、
図4は、
図3のA-A線断面図である。
図3には、保持基板10を厚み方向に沿って切断した断面構造が示されている。基板側ガス流路12は、
図3等に示されるように、第1縦流路部120と、横流路部130と、第2縦流路部140とを備える。
【0024】
第1縦流路部120は、第1表面S1側に開口したガス流出口12bを含み、ガス流出口12bから第2表面S2側に、板状部材11の厚み方向に沿って延びた流路である。第1縦流路部120は、上下方向に延びた略円筒状をなしており、ガス流出口12bの反対側に、第1縦流路部120の入口であり、ガス流出口12bと略同径の開口部12cが設けられている。このような第1縦流路部120内に、後述する多孔質体70が充填される。なお、第1縦流路部120は、基板側ガス流路12におけるガス流出口12bと開口部12cとの間の区間からなる。
【0025】
横流路部130は、第1縦流路部120と接続し、第1表面S1に対して平行に延びた流路である。横流路部130の下流側が、第1縦流路部120の上流側にある開口部12cと接続している。なお、基板側ガス流路12において、入口12a側が上流側であり、ガス流出口12bが下流側である。
【0026】
横流路部130は、第1縦流路部120内に充填された多孔質体70と対向する底部131aを含む底横流路部131と、底横流路部131と第2縦流路部140との間を繋ぐ本体横流路部132とを備える。
【0027】
底横流路部131の底部131aは、平面視で略円形状をなしており、ガス流出口12b及び開口部12cと略同じ大きさに設定されている。また、底部131aの表面(底面)131a1は、扁平である。底横流路部131は、底部131aの周縁から第1表面S1側に向かって立ち上がる略円筒状の周壁部131bを備えている。この周壁部131cには、開口部131cが設けられており、この開口部131cが本体横流路部132の下流側と接続する。底横流路部131は、第1表面S1に対して平行に広がった偏平な流路を構成する。
【0028】
本体横流路部132は、上流側が第2縦流路部140と接続し、かつ下流側が底横流路部131の開口部131cと接続する第1表面S1に対して平行に細長く延びた流路を構成する。
【0029】
第2縦流路部140は、第2表面S2に開口した入口12aを含み、入口12aから第1表面S1側に、板状部材11の厚み方向に沿って延びた流路である。第2縦流路部140の下流側は、横流路部130の上流側と接続している。なお、入口12aは、基板側ガス流路12の入口をなす。第2縦流路部140は、上下方向に延びた略円筒状をなしている。
【0030】
また、保持基板10は、基板側ガス流路12の一部である第1縦流路部120に充填され、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体70を備える。多孔質体70の詳細は、後述する。
【0031】
保持基板10は、更に、電極部材であるチャック電極40を備える。チャック電極40は、全体的には、第1表面S1に略平行な平面状(層状)をなしている。チャック電極40は、例えば、タングステン、モリブデン、白金等の電電性材料から形成される。チャック電極40は、
図2に示されるように、保持基板10(板状部材11)の内部において、第1表面S1側に配されている。チャック電極40は、端子等を介して外部の電源に接続されており、チャック電極40に対して給電が行われると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが、保持基板10の第1表面S1に吸着保持される。なお、チャック電極40には、厚み方向(上下方向)に貫通する貫通孔41が形成されている。なお、他の実施形態において、電極部材として高周波電極、ヒータ電極を備えていてもよい。
【0032】
図1及び
図2に示されるように、保持基板10の第1表面S1には、複数のガス流出口12bが設けられている。第1表面S1の外周縁部は、それよりも内側の部分と比べて僅かに上方に突出しつつ、円環状に形成されている。そのため、第1表面S1にウェハWが吸着保持されると、
図2に示されるように、ウェハWと第1表面S1の内側の部分との間に隙間(ギャップ)Gが形成される。
【0033】
ベース部材20は、例えば、金属(アルミニウム、アルミニウム合金等)、金属とセラミックスの複合体(Al-SiC)、又はセラミックス(SiC)を主成分として構成される。
【0034】
ベース部材20の内部には、冷媒流路21が設けられている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体、水等)が流されることで、プラズマ熱の冷却が行われる。また、冷媒流路21に冷媒が流されると、ベース部材20が冷却され、接合材30を介したベース部材20と保持基板10との間の伝熱(熱引き)により、保持基板10が冷却される。その結果、保持基板10の第1表面S1で保持されたウェハWが冷却される。なお、冷媒流路21における冷媒の流量を適宜、調整することにより、第1表面S1で保持されたウェハWの温度を制御することができる。
【0035】
ベース部材20の内部には、流路60の一部を構成するベース側ガス流路22が設けられている。ベース側ガス流路22は、全体的には、ベース部材20の厚み方向に延びた貫通孔状をなしており、ベース部材20の第4表面S4に開口した入口22aと、第3表面S3に開口した出口22bとを備える。入口22aは、ベース側ガス流路22の入口をなすと共に、保持装置100に設けられた流路60全体の入口をなす。
【0036】
接合材30は、例えば、シリコーン系の有機接合剤、無機接合剤、又はAl系の金属接着剤を含むボンディングシート等により構成される。接合材30としては、保持基板10及びベース部材20の双方に対して高い接着力を備えつつ、高い耐圧性及び熱伝導性を備えるものが好ましい。
【0037】
接合材30にも、流路60の一部を構成する接合側ガス流路31が形成されている。接合側ガス流路31は、層状の接合材30を厚み方向に貫通する孔からなる。
【0038】
流路60は、保持装置100の第1表面S1側に、不活性ガス(ヘリウムガス等)を供給するものである。第1表面S1には、上述したように、流路60の出口であるガス流出口12bが多数設けられており、各ガス流出口12bから不活性ガスが排出される形で、第1表面S1側に不活性ガスが供給される。このような流路60は、上述したように、ベース側ガス流路22と、接合側ガス流路31と、基板側ガス流路(ガス流路)12とを備える。
【0039】
流路60の入口22aは、ベース部材20の第4表面S4に複数設けられている。各入口22aから不活性ガス(
図2中の矢印H)が供給されると、その不活性ガスは、各入口22aに接続したベース側ガス流路22、接合側ガス流路31及び基板側ガス流路(ガス流路)12を順次通過し、最終的に、第1表面S1に設けられた複数のガス流出口12bから排出される。
【0040】
ベース側ガス流路22の出口22bは、接合側ガス流路31の下側(ベース部材20側)の開口部と接続する。また、接合側ガス流路31の上側(保持基板10側)の開口部は、基板側ガス流路(ガス流路)12の入口12aと接続する。基板側ガス流路(ガス流路)12の入口12aは、保持基板10の第2表面S2に複数設けられている。
【0041】
このような基板側ガス流路(ガス流路)12の入口12aを含む第2縦流路部140は、その下流側で、複数の横流路部130と接続する。そして、各横流路部130には、それぞれ第1縦流路部120が接続されている。つまり、基板側ガス流路(ガス流路)12は、保持基板10(板状部材11)の内部において、上流側から下流側に向かって複数に分岐した形をなしている。
【0042】
次いで、多孔質体70及び多孔質体70が充填される基板側ガス流路12について、詳細に説明する。
【0043】
多孔質体70は、絶縁性のセラミックスを主成分とする、多数の気孔を含むガス透過性の部材である。多孔質体70は、基板側ガス流路12における複数の第1縦流路部120に対して、それぞれ充填される。多孔質体70は、全体的には、上下方向(保持基板10の厚み方向)に延びた円柱状をなしており、内部に不活性ガスを通過させる通気経路が網目状に形成されている。通気経路は、多孔質体70内において、多数の気孔が互いに連なったものからなる。気孔は、多孔質体70の製造時(焼成時)に、粒子状の造孔材が焼失(消失)した痕として形成される。造孔材としては、例えば、合成樹脂製のビーズや炭素粉末等が利用される。
【0044】
多孔質体70は、その下側に空間Vが形成されるように、第1縦流路部120に充填される。多孔質体70は、円形状の上端面70aがガス流出口12bから露出し、かつ円形状の下端面70bが開口部12cから空間V側に露出する形で、円筒状の第1縦流路部120内に充填される。なお、空間Vは、横流路部130の底横流路部131内に形成される。つまり、横流路部130は、その下流側の一端に配される底横流路部131内に空間Vを有する。空間Vは、多孔質体70の下端面70bと、底部131aの表面(底面)131a1と、周壁部131bの表面とで囲まれている。このような多孔質体70は、その多孔質体70の第2表面S2側(つまり、下端面70b側)であって横流路部130の底横流路部131内に空間Vが形成されるように、第1縦流路部120に充填されている。多孔質体70は、
図3に示されるように、ガス流出口12bよりも第2表面S2側であり、かつ横流路部130よりも第1表面S1側に配されている。本実施形態の場合、第1表面S1及び上端面70aは、互いに同一平面をなすように配されている。また、多孔質体70の周面70cは、上下方向に真っ直ぐに延びた円筒状をなしている。なお、多孔質体70と、第1縦流路部120を構成する周壁部111とは、互いに焼結して接合されている。
【0045】
多孔質体70の下端面70bは、横流路部130(底横流路部131)内の空間Vに面しており、基板側ガス流路(ガス流路)12の上流側から供給された不活性ガスが、この下端面70bから多孔質体70内に供給される。下端面70bは、多孔質状であり、その下端面70bが不活性ガスの入口となる。多孔質体70の下端面70bは、それと対向する円形状の底部131aと同程度の面積に設定されている。底横流路部131の底部131aは、平面視で、多孔質体70の下端面70b(上端面70b)と重なる位置に設けられている。
図4に示されるように、平面視した際、底横流路部131の底部131aは、横流路部130の本体横流路部132の幅よりも大きくなるように設定されている。
【0046】
そのような下端面70bでは、基板側ガス流路(ガス流路)12を利用して上流側から供給される不活性ガスと接触する面積(つまり、空間V側に露出する面積)が大きくなっている。そのため、多孔質体の下側に空間がなく、かつその多孔質体の周面の一部に対して横流路部が接続される従来品と比べて、本実施形態の保持装置100では、多孔質体70におけるガスの圧力損失を小さく抑えることができる。
【0047】
続いて、本実施形態の保持装置100の製造方法の一例を説明する。ここで、先ず
図5及び
図6を参照しつつ、保持装置100を構成する保持基板10の製造方法について説明する。
図5及び
図6は、保持基板10の製造方法を模式的に表した説明図である。この保持基板10の製造方法は、グリーンシート(セラミックグリーンシート)を利用するシート積層法を応用したものである。なお、
図5及び
図6において、保持基板10の下側(第2表面S2側)が各図の上側に対応し、かつ保持基板10の上側(第1表面S1側)が各図の下側に対応するように示される。
【0048】
先ず、
図5(A)に示されるように、保持基板10の板状部材11を形成するためのグリーンシートを複数枚積層して、第1積層物80aが形成される。なお、第1積層物80aを構成する所定のグリーンシートには、導体層9が形成されており、そのようなグリーンシートが、他のグリーンシートに積層される。
【0049】
グリーンシート用のスラリーは、例えば、アルミナ粉末、アクリル系バインダ、分散剤、可塑剤等を含む混合物に、更に有機溶剤を加えたものを、ボールミルを用いて混合することで得られる。このスラリーを、キャスティング装置でシート状に成形し、その後、得られた成形物を乾燥させることで、複数枚のグリーンシートが得られる。
【0050】
また、導体層9を形成するためのメタライズペーストは、例えば、アルミナ粉末、アクリル系バインダ、有機溶剤の混合物に、タングステンやモリブデン等の導電性粉末を添加して混錬することで得られる。このメタライズペーストを、例えばスクリーン印刷装置を用いて印刷することにより、特定のグリーンシート上に、導体層9が形成される。
【0051】
次いで、
図5(B)に示されるように、第1積層物80aの所定箇所に、第1縦流路部120を形成するための孔部81が形成される。孔部81は、第1積層物80aを厚み方向に貫通する形で円筒状に設けられる。孔部81は、公知の加工装置(ルーター等)を利用して、第1積層物80aの所定箇所に形成される。
【0052】
次いで、
図5(C)に示されるように、第1積層物80aの孔部81に対して、多孔質体70を形成するための多孔質体用ペースト7が充填される。多孔質体用ペースト7は、例えば、アルミナ粉末、造孔材、バインダ、有機溶剤等を含む混合物を混錬することで得られる。多孔質体用ペースト7を孔部81に充填する方法としては、例えば、射出成型装置を用いる方法、スクリーン印刷装置を用いる方法等が挙げられる。なお、孔部81に多孔質体用ペースト7が充填された第1積層物80aは、適宜、乾燥される。
【0053】
その後、
図6(D)に示されるように、第1積層物80aと、第2積層物80bとが積層される。第2積層物80bは、複数枚のグリーンシートが積層されたものからなる。なお、第2積層物80bの所定箇所には、第2縦流路部140を形成するための孔部82や、横流路部130を形成するための溝部83が設けられている。第1積層物80a及び第2積層物80bからなる積層物は、例えば、20枚のグリーンシートの積層物からなり、それらは互いに熱圧着される。前記積層物の外周は、適宜、切断されてもよい。そして、前記積層物をマシニングによって切削加工して円板状の成形体を作製する。その後、得られた成形体を脱脂焼成し、更に、脱脂焼成後の成形体を焼成(本焼成)することで焼成体が得られる。
【0054】
その後、焼成体の表面に、凸状の外周縁部に対応する部分を遮蔽するマスクを配置し、例えばセラミックス等の粒体を投射するショットブラストを行うことにより、焼成体の表面に凸状の外周縁部を形成する。その後、この焼成体の表面を研磨加工等することにより、
図6(E)に示されるような、板状部材11を有する保持基板10が得られる。
【0055】
なお、上述した脱脂焼成及び本焼成は、保持基板10の第1表面S1側が上側に、かつ第2表面S2側が下側となるように、第1積層物80a及び第2積層物80bの積層物を配置して行われる。このような脱脂焼成及び本焼成において、孔部81に充填された多孔質体用ペースト7(未焼成組成物)と、板状部材11等を形成するためのグリーンシートの積層物とが、同時に焼成される。
【0056】
ベース部材20の製造方法は、基本的に従来品の製造方法と同じである。そのため、その詳細説明は省略する。
【0057】
保持基板10及びベース部材20がそれぞれ作製された後、それらを、接合材30を利用して接合する。接合材30による保持基板10及びベース部材20の接合は、基本的には、従来品における接合と同じである。そのため、その詳細説明は省略する。このようにして、保持装置100が製造される。
【0058】
以上のように、本実施形態の保持装置100では、基板側ガス流路(ガス流路の一例)12の第1縦流路部(縦流路部の一例)120に充填される多孔質体70の下端面70bにおいて、横流路部130内に空間Vが設けられている。多孔質体70の下端面70bと、それと対向する底横流路部131の底部131aとの間に空間V(隙間)があり、この空間Vに面する下端面70b全体が、多孔質体70の内部に不活性ガスを供給するための入口として機能する。このような下端面70bは、上流側から供給される不活性ガスと接触する面積が大きいため、多孔質体70の内部を通過する不活性ガスの圧力損失を小さく抑えることができ、ガス透過性に優れる。本実施形態の保持装置100は、このようにガス透過性に優れる多孔質体70が基板側ガス流路(ガス流路の一例)12内に充填された保持基板10を備える。
【0059】
<実施形態2>
次いで、実施形態2に係る保持装置が備える保持基板10Aを、
図7を参照しつつ説明する。
図7は、実施形態2に係る保持基板10Aの基板側ガス流路12Aの一部を拡大した断面図である。本実施形態の保持基板10Aの基本的な構成は、実施形態1と同じである。そのため、
図7では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「A」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0060】
保持基板10Aは、円板状の板状部材11Aと、その内部に形成された基板側ガス流路12Aとを備える。板状部材11Aの上側の表面が、保持基板10Aの第1表面SA1となり、板状部材11Aの下側の表面が、保持基板10Aの第2表面SA2となる。保持基板10Aの内部には、チャック電極40Aが設けられている。
【0061】
基板側ガス流路12Aは、
図7に示されるように、第1縦流路部120Aと、横流路部130Aと、第2縦流路部140Aとを備える。そして、基板側ガス流路12Aの一部である第1縦流路部120Aに、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体70Aが充填される。
【0062】
第1縦流路部120Aは、第1表面SA1側に開口したガス流出口12Abを含み、ガス流出口12Abから第2表面SA2側に、板状部材11Aの厚み方向に沿って延びた流路である。第1縦流路部120Aは、上下方向に延びた略円筒状をなしており、ガス流出口12Abの反対側に、第1縦流路部120Aの入口であり、ガス流出口12Abと略同径の開口部12Acが設けられている。なお、第1縦流路部120Aは、基板側ガス流路12Aにおけるガス流出口12Abと開口部12Acとの間の区間からなる。
【0063】
横流路部130Aは、第1縦流路部120Aと接続し、第1表面SA1に対して平行に延びた流路である。横流路部130Aの下流側が、第1縦流路部120Aの上流側にある開口部12Acと接続している。
【0064】
横流路部130Aは、第1縦流路部120A内に充填された多孔質体70Aと対向する底部131Aaを含む底横流路部131Aと、底横流路部131Aと第2縦流路部140Aとの間を繋ぐ本体横流路部132Aとを備える。
【0065】
底横流路部131Aの底部131Aaは、平面視で略円形状をなしており、ガス流出口12Ab及び開口部12Acと略同じ大きさに設定されている。また、底部131Aaの表面(底面)131Aa1は、扁平である。底横流路部131Aは、底部131Aaの周縁から第1表面SA1側に向かって立ち上がる略円筒状の周壁部131Abを備えている。この周壁部131Abには、開口部131Acが設けられており、この開口部131Acが本体横流路部132Aの下流側と接続する。底横流路部131Aは、第1表面SA1に対して平行に広がった偏平な流路を構成する。
【0066】
本体横流路部132Aは、上流側が第2縦流路部140Aと接続し、かつ下流側が底横流路部131Aの開口部131Acと接続する、第1表面SA1に対して平行に細長く延びた流路を構成する。
【0067】
第2縦流路部140Aは、第2表面SA2に開口した入口12Aaを含み、入口12Aaから第1表面SA1側に、板状部材11Aの厚み方向に沿って延びた流路である。第2縦流路部140Aの下流側は、横流路部130Aの上流側と接続している。
【0068】
多孔質体70Aは、その下側に空間VAが形成されるように、第1縦流路部120Aに充填される。多孔質体70Aの上端面70Aaは平坦であり、平面視で円形状をなしている。この上端面70Aaは、ガス流出口12Abから露出している。本実施形態の場合、第1表面SA1及び上端面70Aaは、互いに同一平面をなすように配されている。
【0069】
これに対して、多孔質体70Aの下端面は、第2表面SA2側に盛り上がった凸状端面70Abとなっている。凸状端面70Abは、空間VAに面する多孔質体70Aの第2表面側の端面(下端面)からなる。凸状端面70Abは、平面視で略円形状をなしており、その周縁側から中心側に向かって、第2表面SA2側に徐々に盛り上がった形をなしている。
【0070】
多孔質体70Aは、このような凸状端面70Abが、開口部12Acから空間VA側に露出しつつ、底横流路部131A内に入り込む形で、円筒状の第1縦流路部120A内に充填される。空間VAは、多孔質体70Aの下端面である凸状端面70Abと、底部131Aaの表面(底面)131Aa1と、周壁部131Abの表面とで囲まれている。なお、横流路部130Aは、その下流側の一端に配される底横流路部131A内に空間VAを有する。底横流路部131Aの底部131Aaは、平面視で、多孔質体70Aの凸状端面70Ab(上端面70Ab)と重なる位置に設けられている。
【0071】
このような多孔質体70Aは、その多孔質体70Aの第2表面SA2側(つまり、凸状端面70Ab側)であって横流路部130Aの底横流路部131A内に空間VAが形成されるように、第1縦流路部120Aに充填されている。
【0072】
多孔質体70Aの周面70Acは、上下方向に真っ直ぐに延びた円筒状をなしている。多孔質体70Aと、第1縦流路部120Aを構成する周壁部111Aとは、互いに焼結して接合されている。
【0073】
多孔質体70Aの下端面である凸状端面70Abは、横流路部130A(底横流路部131A)内の空間VAに面しており、基板側ガス流路(ガス流路)12Aの上流側から供給された不活性ガスが、この凸状端面70Abから多孔質体70A内に供給される。凸状端面70Abは、多孔質状であり、その表面積は、平坦な端面の場合と比べて大きい。
【0074】
以上のような、本実施形態の保持装置では、基板側ガス流路(ガス流路の一例)12Aの第1縦流路部(縦流路部の一例)120Aに充填される多孔質体70Aは、その第2表面SA2側の端面である凸状端面(下端面)70Abが、横流路部130Aの一部である底横流路部131Aに入り込む形となっている。そのような凸状端面(下端面)70Abと、それと対向する底横流路部131Aの底部131Aaとの間には、空間VA(隙間)があり、その空間VAに面する凸状端面70Ab全体が、多孔質体70Aの内部に不活性ガスを供給するための入口として機能する。このような凸状端面70Abは、上流側から供給される不活性ガスと接触する面積が特に大きいため、多孔質体70Aの内部を通過する不活性ガスの圧力損失を小さく抑えることができ、ガス透過性に優れる。
【0075】
以上のように本実施形態の保持装置は、このようにガス透過性に優れる多孔質体70Aが基板側ガス流路12A内に充填された保持基板10Aを備える。
【0076】
<実施形態3>
次いで、実施形態3に係る保持装置が備える保持基板10Bを、
図8を参照しつつ説明する。
図8は、実施形態3に係る保持基板10Bの基板側ガス流路12Bの一部を拡大した断面図である。本実施形態の保持基板10Bの基本的な構成は、実施形態1と同じである。そのため、
図8では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「B」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
保持基板10Bは、円板状の板状部材11Bと、その内部に形成された基板側ガス流路12Bとを備える。板状部材11Bの上側の表面が、保持基板10Bの第1表面SB1となり、板状部材11Bの下側の表面が、保持基板10Bの第2表面SB2となる。保持基板10Bの内部には、チャック電極40Bが設けられている。
【0078】
基板側ガス流路12Bは、
図8に示されるように、第1縦流路部120Bと、横流路部130Bと、第2縦流路部140Bとを備える。そして、基板側ガス流路12Bの一部である第1縦流路部120Bに、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体70Bが充填される。
【0079】
第1縦流路部120Bは、第1表面SB1側に開口したガス流出口12Bbを含み、ガス流出口12Bbから第2表面SB2側に、板状部材11Bの厚み方向に沿って延びた流路である。第1縦流路部120Bは、上下方向に延びた略円筒状をなしており、ガス流出口12Bbの反対側に、第1縦流路部120Bの入口であり、ガス流出口12Bbと略同径の開口部12Bcが設けられている。なお、第1縦流路部120Bは、基板側ガス流路12Bにおけるガス流出口12Bbと開口部12Bcとの間の区間からなる。
【0080】
横流路部130Bは、第1縦流路部120Bと接続し、第1表面SB1に対して平行に延びた流路である。横流路部130Bの下流側が、第1縦流路部120Bの上流側にある開口部12Bcと接続している。
【0081】
横流路部130Bは、第1縦流路部120B内に充填された多孔質体70Bと対向する底部131Baを含む底横流路部131Bと、底横流路部131Bと第2縦流路部140Bとの間を繋ぐ本体横流路部132Bとを備える。
【0082】
底横流路部131Bの底部131Baは、平面視で略円形状をなしており、ガス流出口12Bb及び開口部12Bcと略同じ大きさに設定されている。また、底部131Baの表面(底面)131Ba1は、扁平である。底横流路部131Bは、底部131Baの周縁から第1表面SB1側に向かって立ち上がる略円筒状の周壁部131Bbを備えている。この周壁部131Bbには、開口部131Bcが設けられており、この開口部131Bcが本体横流路部132Bの下流側と接続する。底横流路部131Bは、第1表面SB1に対して平行に広がった偏平な流路を構成する。
【0083】
本体横流路部132Bは、上流側が第2縦流路部140Bと接続し、かつ下流側が底横流路部131Bの開口部131Bcと接続する、第1表面SB1に対して平行に細長く延びた流路を構成する。
【0084】
第2縦流路部140Bは、第2表面SB2に開口した入口12Baを含み、入口12Baから第1表面SB1側に、板状部材11Bの厚み方向に沿って延びた流路である。第2縦流路部140Bの下流側は、横流路部130Bの上流側と接続している。
【0085】
多孔質体70Bは、その下側に空間VBが形成されるように、第1縦流路部120Bに充填される。多孔質体70Bの上端面70Baは平坦であり、平面視で円形状をなしている。この上端面70Baは、ガス流出口12Bbから露出している。本実施形態の場合、第1表面SB1及び上端面70Baは、互いに同一平面をなすように配されている。
【0086】
これに対して、多孔質体70Bの下端面は、第1表面SB1側に窪んだ凹状端面70Bbとなっている。凹状端面70Bbは、空間VBに面する多孔質体70Bの第2表面側の端面(下端面)からなる。凹状端面70Bbは、平面視で略円形状をなしており、その周縁側から中心側に向かって、第1表面SB1側に徐々に窪んだ形をなしている。
【0087】
多孔質体70Bは、このような凹状端面70Bbが、開口部12Bcから空間VB側に露出しつつ、第1縦流路部120B内に引っ込んだ形で、円筒状の第1縦流路部120B内に充填される。空間VBは、多孔質体70Bの下端面である凹状端面70Bbと、底部131Baの表面(底面)131Ba1と、周壁部131Bbの表面とで囲まれている。なお、横流路部130Bは、その下流側の一端に配される底横流路部131B内に空間VBを有する。底横流路部131Bの底部131Baは、平面視で、多孔質体70Bの凹状端面70Bb(上端面70Bb)と重なる位置に設けられている。
【0088】
このような多孔質体70Bは、その多孔質体70Bの第2表面SB2側(つまり、凹状端面70Bb側)であって横流路部130Bの底横流路部131B内に空間VBが形成されるように、第1縦流路部120Bに充填されている。
【0089】
多孔質体70Bの周面70Bcは、上下方向に真っ直ぐに延びた円筒状をなしている。多孔質体70Bと、第1縦流路部120Bを構成する周壁部111Bとは、互いに焼結して接合されている。
【0090】
多孔質体70Bの下端面である凹状端面70Bbは、横流路部130B(底横流路部131B)内の空間VBに面しており、基板側ガス流路(ガス流路)12Bの上流側から供給された不活性ガスが、この凹状端面70Bbから多孔質体70B内に供給される。凹状端面70Bbは、多孔質状であり、その表面積は、平坦な端面の場合と比べて大きい。また、多孔質体70Bの厚み(高さ方向の長さ)については、平面視で凹状端面70Bbの中央側が、その周りと比べて小さくされている。
【0091】
以上のような、本実施形態の保持装置では、基板側ガス流路(ガス流路の一例)12Bの第1縦流路部(縦流路部の一例)120Bに充填される多孔質体70Bは、その第2表面SB2側の端面である凹状端面(下端面)70Bbが、第1縦流路部120B内に引っ込んだ形となっている。そのような凹状端面(下端面)70Bbと、それと対向する底横流路部131Bの底部131Baとの間には、空間VB(隙間)があり、その空間VBに面する凹状端面70Bb全体が、多孔質体70Bの内部に不活性ガスを供給するための入口として機能する。このような凹状端面70Bbは、上流側から供給される不活性ガスと接触する面積が特に大きいため、多孔質体70Bの内部を通過する不活性ガスの圧力損失を小さく抑えることができ、しかも、上述したように、多孔質体70Bの中央側の厚みが小さくされているため、ガス透過性に優れる。
【0092】
以上のように本実施形態の保持装置は、このようにガス透過性に優れる多孔質体70Bが基板側ガス流路12B内に充填された保持基板10Bを備える。
【0093】
<実施形態4>
次いで、実施形態4に係る保持装置が備える保持基板10Cを、
図9を参照しつつ説明する。
図9は、実施形態4に係る保持基板10Cの基板側ガス流路12Cの一部を拡大した断面図である。本実施形態の保持基板10Cの基本的な構成は、実施形態1と同じである。そのため、
図9では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「C」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0094】
保持基板10Cは、円板状の板状部材11Cと、その内部に形成された基板側ガス流路12Cとを備える。板状部材11Cの上側の表面が、保持基板10Cの第1表面SC1となり、板状部材11Cの下側の表面が、保持基板10Cの第2表面SC2となる。保持基板10Cの内部には、チャック電極40Cが設けられている。
【0095】
基板側ガス流路12Cは、
図9に示されるように、第1縦流路部120Cと、横流路部130Cと、第2縦流路部140Cとを備える。そして、基板側ガス流路12Cの一部である第1縦流路部120Cに、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体70Cが充填される。
【0096】
第1縦流路部120Cは、第1表面SC1側に開口したガス流出口12Cbを含み、ガス流出口12Cbから第2表面SC2側に、板状部材11Cの厚み方向に沿って延びた流路である。第1縦流路部120Cは、上下方向に延びた略円筒状をなしており、ガス流出口12Cbの反対側に、第1縦流路部120Cの入口であり、ガス流出口12Cbと略同径の開口部12Ccが設けられている。なお、第1縦流路部120Cは、基板側ガス流路12Cにおけるガス流出口12Cbと開口部12Ccとの間の区間からなる。
【0097】
横流路部130Cは、第1縦流路部120Cと接続し、第1表面SC1に対して平行に延びた流路である。横流路部130Cの下流側が、第1縦流路部120Cの上流側にある開口部12Ccと接続している。
【0098】
横流路部130Cは、第1縦流路部120C内に充填された多孔質体70Cと対向する底部131Caを含む底横流路部131Cと、底横流路部131Cと第2縦流路部140Cとの間を繋ぐ本体横流路部132Cとを備える。
【0099】
底横流路部131Cの底部131Caは、平面視で略円形状をなしており、ガス流出口12Cb及び開口部12Ccと略同じ大きさに設定されている。また、底部131Caの表面(底面)131Ca1は、扁平である。底横流路部131Cは、底部131Caの周縁から第1表面SC1側に向かって立ち上がる略円筒状の周壁部131Cbを備えている。この周壁部131Cbには、開口部131Ccが設けられており、この開口部131Ccが本体横流路部132Cの下流側と接続する。底横流路部131Cは、第1表面SC1に対して平行に広がった偏平な流路を構成する。
【0100】
本体横流路部132Cは、上流側が第2縦流路部140Cと接続し、かつ下流側が底横流路部131Cの開口部131Ccと接続する、第1表面SC1に対して平行に細長く延びた流路を構成する。
【0101】
第2縦流路部140Cは、第2表面SC2に開口した入口12Caを含み、入口12Caから第1表面SC1側に、板状部材11Cの厚み方向に沿って延びた流路である。第2縦流路部140Cの下流側は、横流路部130Cの上流側と接続している。
【0102】
多孔質体70Cは、その下側に空間VCが形成されるように、第1縦流路部120Cに充填される。このような多孔質体70Cは、第1縦流路部120Cに充填される略円柱状の本体部71Cと、この本体部71Cの第2表面SC2側に空間VCが形成されると共に底面131Ca1上で本体部71Cが支持されるように、本体部71Cから底面131Ca1まで延びた支持部72Cとを有する。
【0103】
多孔質体70Cの上端面70Caは、本体部71Cの平坦な上端面からなり、平面視で円形状をなしている。この上端面70Caは、ガス流出口12Cbから露出している。本実施形態の場合、第1表面SC1及び上端面70Caは、互いに同一平面をなすように配されている。
【0104】
多孔質体70Cにおける本体部71Cの下端面70Cbは、概ね平坦であり、開口部12Ccの高さ位置に設定される。このような下端面70Cbは、空間VCを間に置く形で、底部131Caの底面131Ca1と対向している。そして、下端面70Cbの縁側(底横流路部131Cにおける開口部131Ccの反対側)に、上述した支持部72Cが設けられている。支持部72Cは、本体部71Cの下端面70Cb側から、底横流路部131Cの底面131Ca1まで延びた形をなしている。
【0105】
このような下端面70Cbと支持部72Cbとを含む多孔質体70Cの下端側が、開口部12Ccから空間VC側に露出しつつ、支持部72Cbが底横流路部131Cの底面131Ca1まで延びた形で、多孔質体70Cが円筒状の第1縦流路部120C内に充填される。空間VCは、多孔質体70Cの下端側を構成する下端面70Cb及び支持部72Cbと、底部131Caの表面(底面)131Ca1と、周壁部131Cbの表面とで囲まれている。なお、横流路部130Cは、その下流側の一端に配される底横流路部131C内に空間VCを有する。底横流路部131Cの底部131Caは、平面視で、多孔質体70Bの下端側(上端面70Bb)と重なる位置に設けられている。
【0106】
このような多孔質体70Cは、その多孔質体70Cの第2表面SC2側(つまり、下端面70Cb側)であって横流路部130Cの底横流路部131C内に空間VCが形成されるように、第1縦流路部120Cに充填されている。
【0107】
多孔質体70Cの周面70Ccは、概ね上下方向に真っ直ぐに延びた円筒状をなしている。多孔質体70Cの本体部71Cと、第1縦流路部120Cを構成する周壁部111Cとは、互いに焼結して接合されている。また、本実施形態の場合、支持部72Cbの一部と周壁部131Cbの一部とが、互いに焼結して接合されている。
【0108】
多孔質体70Cの下端面70Cb及び支持部72Cbは、横流路部130C(底横流路部131C)内の空間VCに面しており、基板側ガス流路(ガス流路)12Cの上流側から供給された不活性ガスが、この下端面70Cb及び支持部72Cbから、多孔質体70C内に供給される。下端面70Cb及び支持部72Cbは、多孔質状であり、不活性ガスと接触可能な面積が大きくなっている。また、多孔質体70Cは、支持部72Cbにより、底部131Ca(底面131Ca1)上で支えられつつ、周壁部131Cbの一部に固定された状態となっている。
【0109】
以上のような、本実施形態の保持装置では、基板側ガス流路(ガス流路の一例)12Cの第1縦流路部(縦流路部の一例)120Cに充填される多孔質体70Cの第2表面SC2側の下端面70Cb等と、それと対向する底横流路部131Cの底部131Caとの間には、空間VC(隙間)があり、その空間VCに面する下端面70Cb及び支持部72Cbの全体が、多孔質体70Cの内部に不活性ガスを供給するための入口として機能する。このような下端面70Cb等は、上流側から供給される不活性ガスと接触する面積が大きいため、多孔質体70Cの内部を通過する不活性ガスの圧力損失を小さく抑えることができる。また、上述したように、多孔質体70Cの下端側は、支持部72Cbにより、底部131Ca(底面131Ca1)上で支えられた状態となっているため、保持装置(保持基板10C)の製造時(脱脂焼成及び本焼成時)において、第1縦流路部120Cを形成するための孔部から、空間VC側に多孔質体70Cが脱落等することが抑制される。
【0110】
以上のように本実施形態の保持装置は、このようにガス透過性に優れる多孔質体70Cが基板側ガス流路12C内に充填された保持基板10Cを備える。
【0111】
<実施形態5>
次いで、実施形態5に係る保持装置が備える保持基板10Dを、
図10を参照しつつ説明する。
図10は、実施形態5に係る保持基板10Dの基板側ガス流路12Dの一部を拡大した断面図である。本実施形態の保持基板10Dの基本的な構成は、実施形態1と同じである。そのため、
図10では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「D」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0112】
保持基板10Dは、円板状の板状部材11Dと、その内部に形成された基板側ガス流路12Dとを備える。板状部材11Dの上側の表面が、保持基板10Dの第1表面SD1となり、板状部材11Dの下側の表面が、保持基板10Dの第2表面SD2となる。保持基板10Dの内部には、チャック電極40Dが設けられている。
【0113】
基板側ガス流路12Dは、
図10に示されるように、第1縦流路部120Dと、横流路部130Dと、第2縦流路部140Dとを備える。そして、基板側ガス流路12Dの一部である第1縦流路部120Dに、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体70Dが充填される。
【0114】
第1縦流路部120Dは、第1表面SD1側に開口したガス流出口12Dbを含み、ガス流出口12Dbから第2表面SD2側に、板状部材11Dの厚み方向に沿って延びた流路である。第1縦流路部120Dは、上側の内径が小さく、かつ下側の内径が大きな筒状をなしており、ガス流出口12Dbの反対側に、第1縦流路部120Dの入口であり、ガス流出口12Dbの内径rよりも大きな内径を有する開口部12Dcが設けられている。なお、第1縦流路部120Dは、基板側ガス流路12Dにおけるガス流出口12Dbと開口部12Dcとの間の区間からなる。
【0115】
このような第1縦流路部120Dは、上端(第1表面SD1側)に配され、ガス流出口12Dbを含む小径収容部121と、小径収容部121の下端(第2表面SD2側)に接続し、小径収容部121Dよりも内径の大きい幅広収容部122Dとを備える。
【0116】
小径収容部121Dは、ガス流出口12Dbから第2表面SD2側に、板状部材11Dの厚み方向に沿って真っすぐに延びた周面を含む円筒状の孔部である。
【0117】
幅広収容部122Dは、小径収容部121Dの下端(第2表面SD2側)に接続する幅広傾斜収容部123Dと、幅広傾斜収容部123Dの下端(第2表面SD2側)に接続する幅広大径収容部124Dとからなる。
【0118】
幅広傾斜収容部123Dは、第1表面SD1側から第2表面SD2側に向かって外側に広がるように傾斜した円環状の傾斜周面を含む筒状の孔部である。幅広大径収容部124は、幅広傾斜収容部123から第2表面SD2側に、板状部材11Dの厚み方向に沿って真っ直ぐに延び、小径収容部121Dよりも内径の大きい周面を含む円筒状の孔部である。
【0119】
横流路部130Dは、第1縦流路部120Dと接続し、第1表面SD1に対して平行に延びた流路である。横流路部130Dの下流側が、第1縦流路部120Dの上流側にある開口部12Dcと接続している。
【0120】
横流路部130Dは、第1縦流路部120D内に充填された多孔質体70Dと対向する底部131Daを含む底横流路部131Dと、底横流路部131Dと第2縦流路部140Dとの間を繋ぐ本体横流路部132Dとを備える。
【0121】
底横流路部131Dの底部131Daは、平面視で略円形状をなしており、開口部12Dcと略同じ大きさに設定されている。また、底部131Daの表面(底面)131Da1は、扁平である。底横流路部131Dは、底部131Daの周縁から第1表面SD1側に向かって立ち上がる略円筒状の周壁部131Dbを備えている。この周壁部131Dbには、開口部131Dcが設けられており、この開口部131Dcが本体横流路部132Dの下流側と接続する。底横流路部131Dは、第1表面SD1に対して平行に広がった偏平な流路を構成する。
【0122】
本体横流路部132Dは、上流側が第2縦流路部140Dと接続し、かつ下流側が底横流路部131Dの開口部131Dcと接続する、第1表面SD1に対して平行に細長く延びた流路を構成する。
【0123】
第2縦流路部140Dは、第2表面SD2に開口した入口12Daを含み、入口12Daから第1表面SD1側に、板状部材11Dの厚み方向に沿って延びた流路である。第2縦流路部140Dの下流側は、横流路部130Dの上流側と接続している。
【0124】
多孔質体70Dは、その下側に空間VDが形成されるように、第1縦流路部120Dに充填される。多孔質体70Dの上端面70Daは平坦であり、平面視で円形状をなしている。この上端面70Daは、ガス流出口12Dbから露出している。本実施形態の場合、第1表面SD1及び上端面70Daは、互いに同一平面をなすように配されている。
【0125】
多孔質体70Dの下端面70Dbは、空間VDに面する多孔質体70Dの第2表面SD2側の端面であり、平面視で上端面70Daよりも大きな略円形状をなしている。
【0126】
多孔質体70Dは、第1縦流路部120D内において、第1表面SD1側に充填される円柱状の先端部71Dと、その先端部71Dの下端(第2表面SD2側)に接続する略円柱状の幅広部72Dとを備える。
【0127】
幅広部72Dは、ガス流出口12Dbよりも第2表面SD2側に配され、かつ径方向の大きさが、ガス流出口12Dbよりも大きい部分である。このような幅広部72Dは、第1表面SD1側から第2表面SD2側に向かって広がるように傾斜する円環状の傾斜面73Daを含む傾斜部73Dと、この傾斜部73Dから第2表面S2側に真っ直ぐに延びた円柱状の柱状部74Dとを有する。柱状部74Dの下端面70Dbは、横流路部130Dの上部と、略同じ高さ位置に設定される。
【0128】
下端面70Dbは、開口部12Dcから空間VD側に露出しており、この下端面70Dbから多孔質体70D内に不活性ガスが供給される。開口部12Dcは、ガス流出口12Dbの反対側であり、かつ底横流路部130Dよりも第1表面SD1側に配され、多孔質体70Dの第2表面SD2側を露出させるように底部131Da側に露出させるように底部131Da側に開口している。このような開口部12Dcから露出した多孔質体70D(柱状部74D)の下端面70Db(第2表面SD2側)が、底部131Daの表面(底面)131Da1と全面的に対向している。本実施形態の場合、底部131Daの表面(底面)131Da1の大きさは、下端面70Dbの大きさと同じである。そして、このような底部131Daを含む底横流路部130Dに、第1表面SD1に対して平行に延びた本体横流路部132Dが接続されている。
【0129】
このように多孔質体70Dの下端面70Dbが、多孔質体70Dが充填されない底横流路部131Dの底部131Daと全面的に対向することにより、十分な流量の不活性ガスを多孔質体70D内に導入することができる。
【0130】
本実施形態の多孔質体70Dでは、幅広部72D(傾斜部73D)の第1表面SD1側に接続する先端部71Dの周面71Dbと、傾斜部73Dの傾斜面73Daとの間の角度θが、90°<θ<180°となるように設定されている。このように設定されていると、保持基板10Dの製造時(脱脂焼成時等)に、多孔質体70Dを形成するための多孔質体用ペーストに対して、仮に、第2表面SD2側から第1表面SD1側に向かうような力が作用して、多孔質体用ペーストが第1縦流路部120Dを形成するための孔部内を第2表面SD2側から第1表面SD1側へ移動しようとしても、多孔質体70Dの幅広部72Dに対応する部分が、多孔質体70Dの周りに配置される、第1縦流路部120Dを構成する周壁部111Dの円環状の角部(小径収容部121Dの周り及び幅広傾斜収容部123Dの周りを構成する部分)111Daに対応する部分に対して引っ掛かる形(係止される形)となる。そのため、第1縦流路部120Dを形成するための孔部内の多孔質体用ペーストが変形等して、多孔質体70Dが第1縦流路部120Dの外部に脱落等することが抑制される。その結果、本実施形態の保持装置では、基板側ガス流路12Dの所定箇所に、多孔質体70Dを設置することができる。
【0131】
なお、多孔質体70Dの上端面70Daは、先端部71Dの上端面からなり、多孔質体70Dの下端面70Dbは、幅広部72D(柱状部72D2)の下端面からなる。多孔質体70Dの下端面70Dbは、開口部12Dcと略同じ高さ位置に設定される。
【0132】
多孔質体70Dは、下端面70Dbが、開口部12Dcから空間VD側に露出した状態で、第1縦流路部120D内に充填される。空間VDは、多孔質体70Dの下端面70Dbと、底部131Daの表面(底面)131Da1と、周壁部131Dbの表面とで囲まれている。なお、横流路部130Dは、その下流側の一端に配される底横流路部131D内に空間VDを有する。底横流路部131Dの底部131Daは、平面視で、多孔質体70Dの下端面70Dbと重なる位置に設けられている。
【0133】
このような多孔質体70Dは、その多孔質体70Dの第2表面SD2側(つまり、下端面70Db側)であって横流路部130Dの底横流路部131D内に空間VDが形成されるように、第1縦流路部120Dに充填されている。多孔質体70Dの周面と、第1縦流路部120Dを構成する周壁部111Dとは、互いに焼結して接合されている。
【0134】
多孔質体70Dの下端面70Dbは、横流路部130D(底横流路部131D)内の空間VDに面しており、基板側ガス流路12Dの上流側から供給された不活性ガスが、この下端面70Dbから多孔質体70D内に供給される。下端面70Dbは、不活性ガスと接触する面積(つまり、空間V側に露出する面積)が大きくなっている。
【0135】
以上のような、本実施形態の保持装置では、基板側ガス流路(ガス流路の一例)12Dの第1縦流路部(縦流路部の一例)120Dに充填される多孔質体70Dの下端面70Dbと、それと対向する底横流路部131Dの底部131Daとの間には、空間VD(隙間)があり、その空間VDに面する下端面70Db全体が、多孔質体70Dの内部に不活性ガスを供給するための入口として機能する。このような下端面70Dbは、上流側から供給される不活性ガスと接触する面積が特に大きいため、多孔質体70Dの内部を通過する不活性ガスの圧力損失を小さく抑えることができ、ガス透過性に優れる。
【0136】
以上のように本実施形態の保持装置は、このようにガス透過性に優れる多孔質体70Dが基板側ガス流路12D内に充填された保持基板10Dを備える。
【0137】
なお、本実施形態の場合、多孔質体70Dは、第2表面SD2側に、ガス流出口12Dbの内径rよりも大きな外径を有する幅広部72Dを備えているため、保持基板10Dの製造時(脱脂焼成時等)に、多孔質体70Dを形成するための多孔質体用ペーストに対して、仮に、第2表面SD2側から第1表面SD1側に向かうような力が作用して、多孔質体用ペーストが第1縦流路部120Dを形成するための孔部内を第2表面SD2側から第1表面SD1側へ移動しようとしても、多孔質体70Dの幅広部72D等に対応する部分が、多孔質体70Dの周りに配置される、第1縦流路部120Dを構成する周壁部111Dに対応する部分に引っ掛かる形となる。そのため、第1縦流路部120Dを形成するための孔部内の多孔質体用ペーストが変形等して、多孔質体70Dが第1縦流路部120Dの外部に脱落等することが抑制される。
【0138】
特に、本実施形態の多孔質体70Dは、第1表面SD1側から第2表面SD2側に、先端部71D、傾斜部73D及び幅広部74Dが、この順で繋がったものからなる。先端部71Dは、円柱状であり、この下端に、先端部71Dよりも幅広の傾斜部73Dが接続している。傾斜部73Dは、第1表面SD1側から第2表面SD2側に向かって広がるように傾斜する傾斜面73Da含んでおり、この傾斜面73Da(傾斜部73D)から第2表面SD2側に真っ直ぐに円柱状に延びる形で、円柱部74Dが設けられている。つまり、本実施形態の多孔質体70Dは、板状部材11Dの厚み方向において、傾斜面73Daを含む傾斜部73Dが、真っ直ぐに延びた円柱状の先端部71Dと、真っ直ぐに延びた円柱状の柱状部74Dとで挟まれている。
【0139】
多孔質体70Dがこのような構成を備えていると、多孔質体70Dが位置ずれし難く、しかも多孔質体70Dと、その周りに配される板状部材11D(周壁部111D)との密着性が良くなる。保持基板10Dの製造過程において、板状部材11Dを形成するためのグリーンシートの積層物(成形体)の焼成が行われる。積層物には、第1縦流路部120Dを形成するための孔部が形成されており、その孔部に、多孔質体70Dを形成するための多孔質体用ペーストが充填される。このような積層物を焼成すると、孔部内に充填された多孔質体70Dを形成するための多孔質体用ペーストよりも、その周りに配されるグリーンシートの積層物(周壁部111Dに対応する部分)の方が、収縮(特に、面内方向における収縮)が大きいため、孔部内の多孔質体用ペーストが、その周りに配されるグリーンシートの積層物によって締め付けられる形となる。そのため、例えば、先端部と傾斜部のみからなる多孔質体(傾斜部の下端面が開口部12Dcから露出する場合)や、ガス流出口12Db側(第1表面SD1側)から開口部12Dc側(第2表面SD2側)に向かって広がるように傾斜した円錐台状の多孔質体よりも、本実施形態の多孔質体70Dは、上述したように、位置ずれし難く、その周りに配される板状部材11D(周壁部111D)との密着性が良い。
【0140】
また、本実施形態の多孔質体70Dは、先端部71D、傾斜部73D及び柱状部74Dを備えているため、例えば、
図10に示される角度θが90°の場合の多孔質体と比べて、多孔質体70Dの体積を必要最小限に留めることができる。このような本実施形態の多孔質体70Dを備える保持基板10Dは、相対的に、板状部材11Dを構成するセラミックス部分(アルミナ)の比率を高めつつ、高い強度を維持できる。
【0141】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0142】
(1)ガス流出口から露出する多孔質体の上端面は、本発明の目的を損なわない限り、円形状以外の形(多角形状等)であってもよい。
【0143】
(2)多孔質体の上端面は、本発明の目的を損なわない限り、第1表面よりも下側に配されてもよい。
【0144】
(3)多孔質体の第2表面側に形成され、横流路部の底部(底面)で支持される支持部は、1つであってもよいし、2つ以上形成されてもよい。
【0145】
(4)不活性ガスを通すためのガス流路は、ベース部材に形成されていなくてもよく、保持基板のみに形成されていてもよい。
【0146】
(5)上記実施形態で示した保持装置の製造方法は、一例であり、本発明の目的を損なわない限り、他の方法で製造されてもよい。
【符号の説明】
【0147】
100…保持装置、10…保持基板、11…板状部材、12…基板側ガス流路(ガス流路)、12b…ガス流出口、120…第1縦流路部(縦流路部)130…横流路部、140…第2縦流路部、70…多孔質体、70a…上端面、70b…下端面、V…空間、S1…第1表面、S2…第2表面、W…ウェハ(対象物)
【手続補正書】
【提出日】2024-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する第1表面、及び前記第1表面の反対側に配される第2表面を含み、セラミックスを主成分とする板状部材と、前記板状部材の内部に形成されるガス流路と、前記ガス流路の一部に充填され、セラミックスを主成分とするガス透過性の多孔質体とを有する保持基板を備える保持装置であって、
前記ガス流路は、前記第1表面側に開口したガス流出口を含み、前記ガス流出口から前記第2表面側に延びた縦流路部と、前記縦流路部と接続し、前記第1表面に対して平行に延びた横流路部とを有し、
前記多孔質体は、前記多孔質体の前記第2表面側であって前記横流路部内に空間が形成されるように、前記縦流路部に充填され、
前記多孔質体の上端面は、前記第1表面よりも前記第2表面側に配されている保持装置。
【請求項2】
前記横流路部は、前記多孔質体と対向する底面と、前記底面と対向する天井面と、を含み、
前記多孔質体のうち前記縦流路部の内面と接触する側面は、前記横流路部の前記天井面まで延びている請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記多孔質体は、前記空間に面する前記第2表面側の端面からなり、前記第2表面側に盛り上がった凸状端面を有する請求項1に記載の保持装置。
【請求項4】
前記多孔質体は、前記空間に面する前記第2表面側の端面からなり、前記第1表面側に窪んだ凹状端面を有する請求項1に記載の保持装置。
【請求項5】
前記横流路部は、前記多孔質体と対向する底面を含み、
前記多孔質体は、前記縦流路部に充填される本体部と、前記本体部の前記第2表面側に前記空間が形成されると共に前記底面上で前記本体部が支持されるように、前記本体部から前記底面まで延びた支持部とを有する請求項1に記載の保持装置。
【請求項6】
前記多孔質体は、前記ガス流出口よりも前記第2表面側に配され、かつ径方向において前記ガス流出口よりも大きい幅広部を有する請求項1に記載の保持装置。
【請求項7】
前記横流路部の一端に前記空間を有する請求項1から請求項6の何れか一項に記載の保持装置。