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特開2024-156044積層セラミック電子部品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156044
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147555
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2019043611の分割
【原出願日】2019-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小和瀬 裕介
(57)【要約】
【課題】サイドマージン部の剥離が発生しにくい積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、積層体と、サイドマージン部と、を具備する。上記積層体は、第1方向に積層された複数の内部電極を含む機能部と、上記機能部を上記第1方向の両側から被覆する一対のカバー部と、を有し、上記機能部の上記第1方向の寸法をt1とし、上記一対のカバー部それぞれの上記第1方向の寸法をt2とすると、(2×t2)/t1≧0.6の関係を満足する。上記サイドマージン部は、上記積層体を上記第1方向と直交する第2方向から覆う。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された複数の内部電極を含む機能部と、前記機能部を前記第1方向の両側から被覆する一対のカバー部と、を有し、前記機能部の前記第1方向の寸法をt1とし、前記一対のカバー部それぞれの前記第1方向の寸法をt2とすると、(2×t2)/t1≧0.6の関係を満足する積層体と、
前記積層体を前記第1方向と直交する第2方向から覆うサイドマージン部と、
を具備する積層セラミック電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドマージン部が後付けされる積層セラミック電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造過程においてサイドマージン部を後付けする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、内部電極のパターニングの位置ずれによる内部電極の交差面積の誤差を抑制できるため、積層セラミックコンデンサの容量のばらつきを小さく抑えることができる。
【0003】
一例として、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法では、内部電極が印刷されたセラミックシートを積層した積層シートを切断し、内部電極が露出した切断面を側面とする複数の積層体を作製する。そして、積層体の側面でセラミックシートを打ち抜くことにより、積層体の側面にサイドマージン部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-209539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、積層体の側面にサイドマージン部を後付けする技術では、側面にサイドマージン部が設けられた積層体を焼成する際に、サイドマージン部が積層体の側面から剥離しやすい。これにより、積層セラミックコンデンサでは、内部電極が露出した積層体の側面に水分が侵入することによる絶縁不良が発生しやすくなる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、サイドマージン部の剥離が発生しにくい積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、積層体と、サイドマージン部と、を具備する。
上記積層体は、第1方向に積層された複数の内部電極を含む機能部と、上記機能部を上記第1方向の両側から被覆する一対のカバー部と、を有し、上記機能部の上記第1方向の寸法をt1とし、上記一対のカバー部それぞれの上記第1方向の寸法をt2とすると、(2×t2)/t1≧0.6の関係を満足する。
上記サイドマージン部は、上記積層体を上記第1方向と直交する第2方向から覆う。
【0008】
積層セラミック電子部品の製造過程における焼成時の積層体では、内部電極が配置された機能部と、内部電極が配置されていないカバー部と、で収縮挙動が異なる。このような焼成時の積層体における機能部とカバー部との収縮挙動のミスマッチによって、サイドマージン部が積層体の側面から剥離しやすくなる。
この点、上記の構成では、カバー部が厚く形成されているため高い剛性を有する。このため、この構成では、機能部を挟持する剛性の高いカバー部が、機能部におけるカバー部と異なる挙動での収縮を妨げる。これにより、この構成では、積層部における機能部とカバー部との間の収縮挙動のミスマッチが緩和される。
したがって、上記の構成の積層セラミック電子部品では、サイドマージン部が積層体の側面から剥離することを防止することができる。これにより、この構成の積層セラミック電子部品では、内部電極が露出した積層体の側面への水分の侵入に起因する絶縁不良の発生を抑制できるため、高い信頼性が得られる。
【0009】
上記積層セラミック電子部品では、上記第1方向の厚み寸法が、上記第2方向の寸法と、上記第1方向及び第2方向と直交する第3方向の寸法と、のうち小さい方の短手寸法よりも小さくてもよい。
上記厚み寸法が上記短手寸法の2分の1以下であってもよい。
上記厚み寸法が上記短手寸法の4分の1以下であってもよい。
これらの低背型の積層セラミック電子部品では、サイドマージン部の剥離がより発生しやすくなるため、本発明の構成が特に有効である。
【0010】
上記複数の内部電極の上記第2方向の端部の位置が、上記第2方向において0.5μm以内の範囲内に収まっていてもよい。
この構成では、内部電極の位置ずれによる性能のばらつきを小さく抑えることができる。特に、積層セラミックコンデンサの場合には、内部電極の交差面積の誤差が生じにくくなるため、容量のばらつきを小さく抑えることができる。
【0011】
本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品では、第1方向に積層された複数の内部電極を含む機能部と、上記機能部を上記第1方向の両側から被覆する一対のカバー部と、を有し、焼成後において、上記機能部の上記第1方向の寸法をt1とし、上記一対のカバー部それぞれの上記第1方向の寸法をt2とすると、(2×t2)/t1≧0.6の関係を満足する未焼成の積層体が準備される。
上記未焼成の積層体を上記第2方向から覆う未焼成のサイドマージン部を形成することで未焼成のセラミック素体が作製される。
上記未焼成のセラミック素体が焼成される。
【0012】
上記未焼成のサイドマージン部は、上記未焼成の積層体にセラミックシートを貼り付けることで形成されてもよい。
上記未焼成のサイドマージン部は、上記未焼成の積層体で上記セラミックシートを打ち抜くことで形成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、サイドマージン部の剥離が発生しにくい積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図5】上記製造方法のセラミックシート準備工程で準備されるセラミックシートの平面図である。
図6】上記製造方法の積層工程を示す斜視図である。
図7】上記製造方法の切断工程を示す平面図である。
図8】上記切断工程で得られる積層体の斜視図である。
図9】上記製造方法のサイドマージン部形成工程で得られる未焼成のセラミック素体の斜視図である。
図10】上記サイドマージン部形成工程を示す部分断面図である。
図11】一般的な構成のセラミック素体における焼成過程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。Z軸は、鉛直方向を向いた軸である。X軸及びY軸は、Z軸と直交する水平方向を向いた軸である。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0016】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を共通の姿勢で示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0017】
図1,2には、積層セラミックコンデンサ10について、X軸方向の長手寸法Lと、Y軸方向の短手寸法Wと、Z軸方向の厚み寸法Tと、が示されている。積層セラミックコンデンサ10では、X軸方向の最大寸法を長手寸法Lとし、Y軸方向の最大寸法を短手寸法Wとし、Z軸方向の最大寸法を厚み寸法Tとする。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10は、Z軸方向に薄い形状を有する低背型として構成される。つまり、積層セラミックコンデンサ10では、長手寸法Lが短手寸法Wよりも大きく、かつ厚み寸法Tが短手寸法Wよりも小さい。低背型の積層セラミックコンデンサ10は、薄型の電子部品に搭載される用途において特に有利である。
【0019】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、X軸方向に対向する一対の端面と、Y軸方向に対向する一対の側面と、Z軸方向に対向する一対の主面と、を有する6面体として構成される。
【0020】
各外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の各端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
【0021】
なお、外部電極14,15の形状は、図1に示すものに限定されない。例えば、外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面から一方の主面のみに延び、X-Z平面に平行な断面がL字状となっていてもよい。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、Z軸方向の厚み寸法Tをより小さく抑えることができる。
【0022】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0023】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成され、積層体16と、サイドマージン部17と、を有する。積層体16は、Y軸方向に対向する一対の側面Sを有する。また、積層体16は、セラミック素体11の端面の一部を構成する一対の端面と、セラミック素体11の主面の一部を構成する一対の主面と、を有する。
【0024】
積層体16は、X-Y平面に沿って延びるシート状の複数のセラミック層がZ軸方向に積層された構成を有する。積層体16は、容量を形成する機能部として構成される容量形成部18と、容量形成部18をZ軸方向上下から被覆する一対のカバー部19と、を有する。一対のカバー部19は、積層体16の一対の主面を構成している。
【0025】
容量形成部18は、複数のセラミック層の間に配置され、X-Y平面に沿って延びるシート状の複数の第1及び第2内部電極12,13を有する。内部電極12,13は、Z軸方向に沿って交互に配置されている。つまり、相互に隣接する内部電極12,13は、セラミック層を挟んでZ軸方向に対向している。
【0026】
第1内部電極12は、第1外部電極14に覆われた端面に引き出されている。一方、第2内部電極13は第2外部電極15に覆われた端面に引き出されている。これにより、第1内部電極12は第1外部電極14のみに接続され、第2内部電極13は第2外部電極15のみに接続されている。
【0027】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、積層体16の一対の側面Sにそれぞれ露出している。サイドマージン部17は、積層体16の一対の側面Sをそれぞれ覆っている。これにより、積層体16の両側面Sにおける内部電極12,13間の絶縁性を確保することができる。
【0028】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0029】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0030】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、酸化チタン(TiO2)などの組成系で構成してもよい。
【0031】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0032】
詳細については後述するが、積層セラミックコンデンサ10では、未焼成の段階において積層体16の側面Sにサイドマージン部17が後付けされる。このため、積層セラミックコンデンサ10では、セラミック素体11における複数の内部電極12,13のY軸方向の端部の位置が、Y軸方向において0.5μmの範囲内に収まる。
【0033】
これにより、積層セラミックコンデンサ10では、容量形成部18における内部電極12,13の交差面積の誤差が生じにくくなるため、容量のばらつきを小さく抑えることができる。また、積層セラミックコンデンサ10では、サイドマージン部17を薄くすることによって、小型化及び大容量化を図ることが可能である。
【0034】
また、図2,3には、積層体16について、容量形成部18のZ軸方向の厚み寸法t1と、各カバー部19のZ軸方向の厚み寸法t2と、が示されている。積層セラミックコンデンサ10では、積層体16の容量形成部18及びカバー部19が(2×t2)/t1≧0.6の関係を満足するように構成される。
【0035】
つまり、積層セラミックコンデンサ10では、一対のカバー部19のZ軸方向の合計寸法2×t2が、容量形成部18の寸法t1の60%以上となるように、カバー部19が厚く形成される。なお、一対のカバー部19の厚み寸法t2は、実質的に同一であることが好ましいが、相互に異なっていても構わない。
【0036】
このように、積層セラミックコンデンサ10の積層体16では、容量形成部18が、厚み寸法t2が大きく剛性の高いカバー部19によって挟持される。このため、焼成時の積層体16では、容量形成部18がカバー部19とは異なる収縮挙動を示しにくくなるため、側面Sからサイドマージン部17に加わる応力が抑制される。
【0037】
したがって、積層セラミックコンデンサ10では、焼成時にサイドマージン部17が積層体16の側面Sから剥離しにくくなる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、内部電極12,13が露出する積層体16の側面Sに水分が侵入することによる内部電極12,13間の絶縁不良の発生を抑制することができる。
【0038】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図5~10は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図4に沿って、図5~10を適宜参照しながら説明する。
【0039】
(ステップS01:セラミックシート準備)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を準備する。セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。
【0040】
セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102の厚さは、焼成後の容量形成部18におけるセラミック層の厚さに応じて調整される。第3セラミックシート103の厚さは適宜調整可能である。
【0041】
図5は、セラミックシート101,102,103の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102,103が、個片化されていない大判のシートとして構成される。図5には、各積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。
【0042】
図5に示すように、第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。なお、カバー部19に対応する第3セラミックシート103には内部電極が形成されていない。
【0043】
内部電極112,113は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0044】
内部電極112,113には、切断線Lyに沿ったX軸方向の隙間が、切断線Ly1本置きに形成されている。第1内部電極112の隙間と第2内部電極113の隙間とはX軸方向に互い違いに配置されている。つまり、第1内部電極112の隙間を通る切断線Lyと第2内部電極113の隙間を通る切断線Lyとが交互に並んでいる。
【0045】
(ステップS02:積層)
ステップS02では、ステップS01で準備したセラミックシート101,102,103を、図6に示すように積層することにより積層シート104を作製する。積層シート104では、容量形成部18に対応する第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層されている。
【0046】
また、積層シート104では、交互に積層されたセラミックシート101,102のZ軸方向上下面にカバー部19に対応する第3セラミックシート103が積層される。セラミックシート101,102,103の積層数は、積層セラミックコンデンサ10の構成に応じて決定可能である。
【0047】
特に、容量形成部18の厚み寸法t1は、セラミックシート101,102の厚さと、セラミックシート101,102の積層数と、によって調整可能である。また、一対のカバー部19の厚み寸法t2はそれぞれ、第3セラミックシート103の厚さと、第3セラミックシート103の積層数と、によって調整可能である。
【0048】
積層シート104は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
【0049】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート104を、切断線Lx,Lyに沿って切断することにより、未焼成の積層体116を作製する。積層体116は、焼成後の積層体16に対応する。積層シート104の切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを用いることができる。
【0050】
図7は、ステップS03後の積層シート104の平面図である。積層シート104は、発泡剥離シートなどの粘着シートF1によって保持された状態で、切断線Lx,Lyに沿って切断されている。このように、積層シート104が切り分けられることにより、積層体116が得られる。
【0051】
図8は、ステップS03で得られる未焼成の積層体116の斜視図である。積層体116には、未焼成の容量形成部118及びカバー部119が形成されている。また、積層体116では、切断面である側面Sに内部電極112,113が露出し、内部電極112,113のY軸方向の端部が側面S上において揃っている。
【0052】
(ステップS04:サイドマージン部形成)
ステップS04では、ステップS03で得られた積層体116の両側面Sに未焼成のサイドマージン部117を設ける。これにより、図9に示す未焼成のセラミック素体111が得られる。サイドマージン部117は、例えば、セラミックシート117sを積層体116の側面Sに貼り付けることで形成可能である。
【0053】
セラミックシート117sを積層体116の側面Sに貼り付けるためには、例えば、打ち抜き法を利用可能である。つまり、積層体116の側面Sでセラミックシート117sを打ち抜くことで、セラミックシート117sを、側面Sの輪郭に沿って切断すると同時に、側面Sに接着することができる。
【0054】
図10は、打ち抜き法によるサイドマージン部117の形成方法の過程を示す断面図である。図10に示す方法では、複数の積層体116の側面Sでセラミックシート117sを同時に打ち抜くことにより、複数の積層体116の側面Sに一括してサイドマージン部117を形成することが可能である。
【0055】
まず、図10Aに示すように、一方の側面Sを上方に向けた複数の積層体116を、他方の側面Sを保持する粘着シートF2上に配列する。次に、粘着シートF2の下面を平板状の保持部材Hで保持し、複数の積層体116の上方を向いた側面S上にセラミックシート117sを配置する。
【0056】
更に、複数の積層体116を覆うセラミックシート117sの上方に、弾性体で形成された平板状の弾性部材Dを対向させる。そして、図10Bに示すように、弾性部材Dを下方にセラミックシート117sに接触するまで移動させ、更に弾性部材Dでセラミックシート117sを下方に押し込む。
【0057】
このとき、弾性部材Dは、複数の積層体116の間の空間に食い込むことにより、セラミックシート117sにおける積層体116の側面Sに保持されていない領域を下方に押し下げる。これにより、セラミックシート117sは、上下方向に加わるせん断力によって、各積層体116の側面Sの輪郭に沿って切断される。
【0058】
続いて、図10Cに示すように、弾性部材Dを上方に移動させることにより、弾性部材Dをセラミックシート117sから離間させる。このとき、各積層体116の側面S上に残ったセラミックシート117sがサイドマージン部117となる。複数の積層体116の間の空間に残ったセラミックシート117sは除去する。
【0059】
そして、粘着シートF2に保持された複数の積層体116を他の粘着シートに転写することにより、複数の積層体116の向きを上下反転させる。これにより、複数の積層体116の他方の側面Sにも、上記と同様の手法によってサイドマージン部117を一括して形成することができる。
【0060】
なお、セラミックシート117sを積層体116の側面Sに貼り付ける方法は、打ち抜き法でなくてもよい。例えば、積層体116の側面Sの輪郭に合わせて切断したセラミックシート117sを積層体116の両側面Sに貼り付けることによっても、サイドマージン部117を形成することができる。
【0061】
また、サイドマージン部117の形成には、セラミックシート117sを用いなくてもよく、例えば、セラミックスラリーを用いてもよい。つまり、積層体116の側面Sをセラミックスラリーに浸漬させて、積層体116の側面Sにセラミックスラリーを付着させることによっても、サイドマージン部117を形成可能である。
【0062】
(ステップS05:焼成)
ステップS05では、ステップS04で得られた図9に示すセラミック素体111を焼成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS05によって、積層体116が積層体16になり、サイドマージン部117がサイドマージン部17になる。
【0063】
ステップS05における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000~1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0064】
積層体116では、内部電極112,113が配置された容量形成部118が、内部電極112,113が配置されていないカバー部119よりも高い焼結性を有する。このため、焼成時の積層体116では、容量形成部118が、カバー部119よりも早く収縮を開始し、カバー部119よりも大きく収縮しようとする。
【0065】
しかしながら、容量形成部118は、剛性の高いカバー部119によって挟持されているため、カバー部119によって収縮のタイミング及び収縮量が規制される。つまり、焼成時の積層体116では、カバー部119が、容量形成部118のカバー部119とは異なる挙動での収縮を妨げる。
【0066】
このため、焼成時の積層体116では、容量形成部118とカバー部119とが近い挙動で収縮し、つまり容量形成部118とカバー部119との間での収縮挙動のミスマッチが生じにくくなる。これにより、積層体116の側面Sからサイドマージン部117に加わる応力が抑制される。
【0067】
したがって、焼成時の積層体116では、サイドマージン部117が積層体116の側面Sから剥離することを防止することができる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、焼成後においても積層体16とサイドマージン部17との間に隙間が発生しにくくなるため、高い耐湿性が得られる。
【0068】
図11は、一般的なセラミック素体111aの焼成過程を模式的に示す断面図である。セラミック素体111aの積層体116aでは、大容量化及び小型化に有利となるように、容量形成部118aの厚み寸法t1が大きく、カバー部119aの厚み寸法t2が小さい構成が採用されている。
【0069】
つまり、セラミック素体111aでは、積層体116aにおけるカバー部119aが占める割合が、本実施形態に係る積層体116におけるカバー部119が占める割合よりも小さい。このため、セラミック素体111aのカバー部119aの剛性は、本実施形態に係るセラミック素体111のカバー部119の剛性よりも低い。
【0070】
したがって、セラミック素体111aでは、容量形成部118aの収縮挙動がカバー部119aによって規制されにくい。このため、焼成時の積層体116aでは、カバー部119aよりも早く容量形成部118aの収縮が開始し、カバー部119aよりも大きく容量形成部118aが収縮する。
【0071】
これにより、図11に示すように、サイドマージン部117aでは、Z軸方向両端部がカバー部119aによってY軸方向内側から規制を受けながら、Z軸方向中央部のみが容量形成部118aによってY軸方向内側に引き込まれる。これにより、サイドマージン部117aが積層体116aの側面Sから剥離しやすくなる。
【0072】
同様に、焼成時の積層体116aでは、容量形成部118aがサイドマージン部117aよりもZ軸方向に大きく収縮することにより、カバー部119aが容量形成部118aから剥離しやすくなる。これに対し、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10では、サイドマージン部117a及びカバー部119aの剥離が発生しにくい。
【0073】
焼成時におけるサイドマージン部117の剥離は、厚み寸法Tが小さく、つまり積層体116の側面SのZ軸方向の寸法が小さい積層セラミックコンデンサ10ほど発生しやすくなる。このため、本発明の構成は、厚み寸法Tの小さい積層セラミックコンデンサ10ほど有効となる。
【0074】
つまり、本発明によれば、より低背の積層セラミックコンデンサ10に対して、サイドマージン部117を後付けする技術を適用可能となる。具体的に、本発明は、厚み寸法Tが短手寸法Wの2分の1以下の構成により有効であり、厚み寸法Tが短手寸法Wの4分の1以下の構成に更に有効である。
【0075】
また、焼成時の積層体116では、容量形成部118のXY平面に沿った収縮量が小さく抑えられるため、内部電極112,113の交差面積の変化量が小さくなる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、内部電極12,13の交差面積の誤差が更に生じにくくなるため、容量のばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0076】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10が完成する。ステップS06における外部電極14,15の形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。
【0077】
[実施例及び比較例]
積層セラミックコンデンサ10の実施例及び比較例として、寸法L,W,T,t1,t2が様々に異なる構成1~12でサンプルを1000個ずつ作製した。各サンプルの構成1~12では、寸法L,W,T,t1,t2を表1に示すとおりとし、寸法L,W,T,t1,t2以外を共通とした。
【0078】
各構成1~12のサンプルについて耐湿性試験を行った。耐湿性試験では、各サンプルを温度45℃、湿度95%で、10Vの定格電圧を印加した状態で1000時間保持した。そして、耐湿性試験後の電気抵抗値が10MΩ未満のサンプルを絶縁不良による故障が発生しているものと判断した。
【0079】
表1には、各構成1~12について、耐湿性試験の評価結果として、1000個のサンプルのうちの故障が発生したサンプルの個数が示されている。また、表1には、各構成1~12について、容量形成部18の厚み寸法t1及びカバー部19の厚み寸法t2から算出した(2×t2)/t1の値が示されている。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すとおり、(2×t2)/t1が0.6以上の実施例に係る構成2,3,4,6,7,8,10,11,12では、いずれのサンプルでも故障が発生しなかった。この一方で、(2×t2)/t1が0.6未満の比較例に係る構成1,5,9ではいずれも、複数のサンプルで故障の発生が確認された。
【0082】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0083】
例えば、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15が、長手寸法L方向の両端部ではなく、短手寸法W方向の両端部に設けられていてもよい。この場合、積層体16では、外部電極14,15に覆われる側面に内部電極12,13が引き出され、内部電極12,13が露出する端面にサイドマージン部17が設けられる。
【0084】
また、本発明を適用可能な積層セラミックコンデンサ10は、厚み寸法Tが短手寸法Wよりも小さい低背型の構成に限定されない。積層セラミックコンデンサ10では、厚み寸法Tが短手寸法W以上となる構成においても、サイドマージン部17の剥離が発生しにくくなる本発明の効果が得られる。
【0085】
更に、本発明は、積層セラミックコンデンサのみならず、複数の内部電極が積層された機能部を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。本発明を適用可能な積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ以外に、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0086】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
12,13…内部電極
14,15…外部電極
16…積層体
17…サイドマージン部
18…容量形成部
19…カバー部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11