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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015608
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】投射光学装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/16 20060101AFI20240130BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240130BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240130BHJP
   G02B 7/192 20210101ALI20240130BHJP
   G02B 5/08 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
G03B21/16
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G02B7/192
G02B5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117786
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄太
【テーマコード(参考)】
2H042
2H043
2K203
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA08
2H042DA11
2H042DA12
2H042DC02
2H042DD05
2H042DE00
2H043CB01
2H043CB03
2H043CE00
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA43
2K203FB03
2K203GC05
2K203GC20
2K203HA04
2K203HB22
2K203HB26
2K203KA07
2K203LA04
2K203LA13
2K203LA36
2K203LA54
2K203MA07
2K203MA12
(57)【要約】
【課題】熱に起因する投射画像の画像光の移動を抑制することができる、投射光学装置およびプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明の投射光学装置は、画像光が入射する光学系と、光学系から射出された画像光を反射する反射素子と、光学系および反射素子を収容する筐体と、を備え、反射素子は、光が入射する第1面と第1面と反対の第2面とを有する基材と、基材の第1面に設けられた反射層と、基材の第2面に設けられた熱伝導層と、を有する。熱伝導層は基材よりも熱伝導率が高い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光が入射する光学系と、
前記光学系から射出された前記画像光を反射する反射素子と、
前記光学系および前記反射素子を収容する筐体と、を備え、
前記反射素子は、
前記画像光が入射する第1面と前記第1面と反対の第2面とを有する基材と、
前記基材の前記第1面に設けられた反射層と、
前記基材の前記第2面に設けられた熱伝導層と、を有し、
前記熱伝導層は、前記基材よりも熱伝導率が高い、
ことを特徴とする投射光学装置。
【請求項2】
前記画像光が前記反射層に形成する照度分布は、照度が所定値よりも高い第1領域を含み、
前記熱伝導層は、前記第2面のうちの少なくとも、前記第1領域に対応する第2領域に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射光学装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記光学系および前記反射素子を収容する収容空間を密閉する密閉構造を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射光学装置。
【請求項4】
前記基材は、プラスチック材料で構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項5】
前記反射層および前記熱伝導層は金属材料で構成され、
前記熱伝導層の厚さは前記反射層の厚さよりも厚い、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項6】
前記熱伝導層の表面粗さは、前記反射層の表面粗さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項7】
前記反射層は凹面形状を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項8】
前記光学系には、縮小側共役面から射出された前記画像光が入射し、
前記反射素子は、反射した前記画像光を拡大側共役面上に投射する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項9】
光を射出する光源装置と、
前記光源装置からの光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された画像光を投射する、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置と、を備えた、
ことを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射光学装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型でありながら大画面の投射画像を表示できる短焦点型のプロジェクターが求められている。このような短焦点型のプロジェクターとして、レンズと凹面鏡からなるミラーとを組み合わせた構成の投射光学装置を用い、ミラーで反射した画像をスクリーンに拡大投射する技術がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-085922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような短焦点型のプロジェクターでは、投射光学装置のミラーに対して画像光が集光された状態で入射する。このため、ミラーは、画像光の照度が局所的に高くなることで生じた熱によって変形するおそれがある。このように変形したミラーで反射された画像光は、スクリーン上の所定位置からずれた位置に投射されてしまう。これにより投射された画像光が部分的に移動することで投射画像の画質が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様によれば、画像光が入射する光学系と、前記光学系から射出された前記画像光を反射する反射素子と、前記光学系および前記反射素子を収容する筐体と、を備え、前記反射素子は、前記画像光が入射する第1面と前記第1面と反対の第2面とを有する基材と、前記基材の前記第1面に設けられた反射層と、前記基材の前記第2面に設けられた熱伝導層と、を有し、前記熱伝導層は、前記基材よりも熱伝導率が高い、投射光学装置が提供される。
【0006】
本発明の一つの態様によれば、光を射出する光源装置と、前記光源装置からの光を変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された画像光を投射する、上記態様の投射光学装置と、を備えた、プロジェクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。
図2】プロジェクターが備える投射光学装置の概略構成を示す断面図である。
図3】反射ミラーに形成される照度分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0009】
本実施形態に係るプロジェクターの一例について説明する。
本実施形態のプロジェクターは、スクリーン(被投射面)上にフルカラーの画像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクターは、赤色光、緑色光、青色光の各色光を変調する液晶ライトバルブからなる3つの光変調装置を備えている。
【0010】
図1は、本実施形態に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。図2は、本実施形態のプロジェクターが備える投射光学装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、本体部20と、外装筐体2aと、投射光学装置6と、を備えている。本体部20は、外装筐体2aに収納されている。外装筐体2aは、例えば樹脂材料からなり、複数の部材が組み合わされた構成を有する。
【0011】
投射光学装置6は、外装筐体2aから一部が突出して配置される。本実施形態の投射光学装置6は、超短焦点対応の投射レンズユニットである。投射光学装置6を装着した状態では、プロジェクター1をスクリーンに近接した位置に設置し、画像を投射することができる。ただし、投射光学装置6は、必ずしも本体部20に対して着脱可能に構成されていなくてもよい。投射光学装置6の詳細な構成については、後述する。
【0012】
本体部20は、照明光学系としての光源装置2と、色分離光学系3と、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bと、合成光学系5とを備えている。
【0013】
光源装置2は、光源21と、第1レンズアレイ22と、第2レンズアレイ23と、偏光変換素子24と、重畳レンズ25と、を備えている。第1レンズアレイ22および第2レンズアレイ23は、複数のマイクロレンズが光軸と直交する面内にマトリクス状に配列された構成を有する。
【0014】
本実施形態のプロジェクター1においては、光源21として放電型光源であるランプが採用されているが、光源21の方式は放電型光源に限定されない。光源21として、例えば発光ダイオード、レーザーなどの固体光源が採用されてもよいし、励起光の照射によって蛍光発光が生じる蛍光体を含む波長変換素子を含む光源装置が採用されてもよい。
【0015】
光源21から射出された光は、第1レンズアレイ22によって複数の部分光束に分割される。複数の部分光束は、第2レンズアレイ23と重畳レンズ25とによって、照明対象である3つの光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bの有効表示領域において重畳される。すなわち、第1レンズアレイ22、第2レンズアレイ23および重畳レンズ25は、光源21から射出された光によって光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bを略均一な照度分布で照明するインテグレーター光学系を構成する。
【0016】
偏光変換素子24は、光源21から射出された非偏光の光を、3つの光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bで利用可能な直線偏光に揃える。
【0017】
色分離光学系3は、光源装置2からの照明光WLを赤色光LRと、緑色光LGと、青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aおよび第2ダイクロイックミラー7bと、第1全反射ミラー8a、第2全反射ミラー8bおよび第3全反射ミラー8cと、第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bとを概略備えている。
【0018】
第1ダイクロイックミラー7aは、光源装置2からの照明光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。第1ダイクロイックミラー7aは、分離された赤色光LRを透過すると共に、緑色光LGおよび青色光LBを反射する。一方、第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射すると共に青色光LBを透過することによって、その他の光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。
【0019】
第1全反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置されて、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置11Rに向けて反射する。一方、第2全反射ミラー8bおよび第3全反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置されて、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置11Bに導く。緑色光LGは、第2ダイクロイックミラー7bから光変調装置11Gに向けて反射される。
【0020】
第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路中における第2ダイクロイックミラー7bの後段に配置されている。
【0021】
光変調装置11Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置11Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置11Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0022】
光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられている。液晶パネルには画素が配列され、画像情報に応じて画素毎に変調している。また、液晶パネルの入射側および射出側各々には、図示しない偏光板が配置されている。
【0023】
また、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bの入射側には、それぞれフィールドレンズ10R,フィールドレンズ10G,フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10R,フィールドレンズ10G,フィールドレンズ10Bは、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bそれぞれに入射する赤色光LR,緑色光LG,青色光LBそれぞれを平行化する。
【0024】
合成光学系5には、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bからの画像光が入射する。合成光学系5は、各々が赤色光LR,緑色光LG,青色光LBに対応した画像光を合成し、この合成された画像光を投射光学装置6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられている。合成光学系5によって生成された合成光は、投射光学装置6に向かって射出される。
【0025】
本体部20から射出された合成光は、画像光ILとして、投射光学装置6を介して、図示しないスクリーンなどの被投射面上に投射される。
【0026】
以下、投射光学装置6について説明する。
本実施形態の投射光学装置6は、縮小側共役面上の表示画像を拡大側共役面上に投射して投射画像を生成する。本実施形態において、縮小側共役面は、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bにおける各液晶パネルの表示面に対応し、拡大側共役面は、被投射面であるスクリーンに対応する。
本実施形態の投射光学装置6は、縮小側共役面である光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bの各表示面と共役な位置に表示画像の中間像を形成するとともに、中間像を拡大側共役面であるスクリーン上に拡大投射する。
【0027】
以下、図面においては、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明する。Z軸は、投射光学装置6がスクリーン上に投射する投射画像の上下方向に沿う軸である。X軸は、投射光学装置6の光軸AX1と平行な軸である。Y軸は、X軸およびZ軸に直交する軸であり、投射光学装置6がスクリーン上に投射する投射画像の左右方向に沿う軸である。
【0028】
図2は、本実施形態の投射光学装置6の概略構成を示す断面図である。
図2に示すように、投射光学装置6は、レンズ群(光学系)61と、反射ミラー(反射素子)62と、レンズ群61および反射ミラー62を収容するレンズユニット筐体(筐体)63と、を有する。
レンズ群61は、複数のレンズから構成され、本体部20からの画像光ILを反射ミラー62に向けて射出する。レンズ群61は、複数のレンズが光軸AX1上に配置される。なお、レンズ群61を構成する複数のレンズには、凸レンズ、凹レンズ等の種々の形状のレンズが含まれている。なお、レンズ群61を構成するレンズの枚数、形状、寸法および配置は、特に限定されない。
【0029】
反射ミラー62は、レンズ群61から射出された画像光ILを反射させて光路を折り曲げる。反射ミラー62は、反射した画像光ILを拡大側共役面である被投射面上に投射する。反射ミラー62の反射面62aは、画像光ILを反射して広角化させる非球面ミラーで構成される。反射ミラー62は、反射面62aがレンズ群61からの光射出方向と反対側(-X側)かつ上側(+Z側)を向くように配置される。本実施形態において、反射ミラー62は、レンズ群61の光軸AX1に沿う画像光ILの主光線を光軸AX1に対して鋭角をなす斜め後方に向けて反射する。反射ミラー62で反射された画像光ILは、後述するレンズユニット筐体63の光射出部633からスクリーンに向けて射出される。
【0030】
このような構成に基づき、本実施形態の投射光学装置6は、プロジェクター1に対して短距離に配置されたスクリーン上に画像光ILを拡大して投影可能となっている。
【0031】
レンズユニット筐体63は、鏡筒部630と、ミラー保持部631と、光入射部632と、光射出部633と、カバー部材634と、を有する。なお、レンズユニット筐体63の構成材料、形状、寸法等については、特に限定されない。
【0032】
鏡筒部630は、レンズ群61を収容する部位であり、ミラー保持部631は、反射ミラー62を保持するための部位である。図示は省略するが、鏡筒部630はレンズ群61を構成する個々のレンズを支持するための支持部を含み、ミラー保持部631は反射ミラー62を支持するための支持部を含む。
【0033】
光入射部632は、本体部20から射出された画像光ILを投射光学装置6内に取り込む。光射出部633は、反射ミラー62で反射された画像光ILを投射光学装置6外に射出する。光入射部632および光射出部633は、例えば、透光性を有する窓部材で構成される。本実施形態の場合、例えば、光入射部632はレンズ形状を有するため、画像光ILを効率良く取り込み可能となっている。
【0034】
レンズユニット筐体63には開口部63aが設けられている。本実施形態の場合、開口部63aは、レンズユニット筐体63のミラー保持部631に設けられている。
開口部63aは、レンズユニット筐体63の内部空間と外部とを連通させる。レンズ群61および反射ミラー62は、開口部63aを介してレンズユニット筐体63の内部に着脱可能とされる。カバー部材634は、開口部63aを覆うようにレンズユニット筐体63に着脱可能とされている。
【0035】
カバー部材634は、レンズユニット筐体63の内部空間を密閉状態で封止する。つまり、本実施形態のレンズユニット筐体63は、レンズ群61および反射ミラー62を収容する収容空間Sを密閉する密閉構造を有している。このため、レンズユニット筐体63は、内部の収容空間Sへの塵埃の侵入を抑制することで、塵埃が付着することでレンズ群61および反射ミラー62における光学特性の低下や、塵埃が発熱することでレンズ群61および反射ミラー62が変形や破損することを抑制できる。
【0036】
一般的に短焦点型のプロジェクターでは、反射ミラーで反射させることでスクリーン上に画像光を拡大して投射する構成を採用するため、反射ミラー上において画像光の光密度に偏りが生じてしまい、反射ミラー上に形成された照度分布が局所的に照度の高い領域を含んだものとなってしまう。
【0037】
本実施形態の投射光学装置6においても、本体部20から射出された画像光ILが反射ミラー62上に形成する照度分布は局所的に照度が高い領域を含んだものとなる。
図3は本実施形態の反射ミラー62に形成される照度分布を示した図である。具体的に図3は、反射層621上に形成される画像光ILの照度分布を示した図であり、画像光ILの照度の最大値(黒色)、画像光ILの最小値(白色)で示している。
【0038】
図3に示すように、本実施形態の反射ミラー62では、反射面62aのうち下側(図2に示される-Z側)における画像光ILの照度が局所的に高くなっている。画像光ILの照度分布SPは、照度が所定値よりも高い第1領域SP1を含む。つまり、第1領域SP1とは、反射面62aのうち、画像光ILの照度が局所的に高くなる領域を意味している。
第1領域SP1を規定する所定値としては、照度50%以上とすることが好ましく、照度60%以上とすることがより好ましく、照度70%以上とすることが最も好ましい。
【0039】
本実施形態の投射光学装置6では、反射ミラー62における放熱性を高めて反射ミラー62の温度を低減し、反射ミラー62の局所的な変形を抑制することで熱に起因する投射画像の部分的な画像光の移動を抑制するようにしている。
【0040】
以下、本実施形態の反射ミラー62の要部構成について説明する。
本実施形態の反射ミラー62は、基材620と、反射層621と、熱伝導層622と、を有する。基材620は、画像光が入射する内面(第1面)620aと、内面620aとは反対側の外面(第2面)620bと、を有する。基材620の内面620aは、凹面形状を有する。具体的に内面620aは、例えば、球面形状、非球面形状、あるいは自由曲面形状のいずれかを有する。
【0041】
本実施形態において、基材620はプラスチック材料で構成されているが、ガラス材料を用いてもよい。特に、プラスチックはガラスと比べて加工性が高いため、内面620aを所望の形状に容易且つ高精度に形成することができる。一方、プラスチックは熱による形状変化も生じやすく、反射層621の温度が高くなり過ぎると基材620が変形するおそれがある。
【0042】
反射層621は内面620aに沿って形成される。このため、反射層621の表面621aは内面620aに倣った凹面形状を有する。本実施形態の場合、反射層621の表面621aが反射ミラー62の反射面62aに相当する。
【0043】
本実施形態の反射層621は、金属膜または誘電体膜で構成される。反射層621を構成する金属膜の材料としては、例えば、アルミニウム、銀等が用いられる。反射層621を構成する誘電体膜としては、例えば、400nm~700nmの可視光を反射する膜が用いられる。
本実施形態の場合、蒸着法を用いて反射層621を形成した。反射層621の厚さは例えば、1μm以下に設定した。反射層621の表面621aは準鏡面あるいは鏡面とした。具体的に反射層621の表面621aにおける表面粗さ(Rz)は0.2μm以下となるように基材620の内面620aを形成する。
【0044】
熱伝導層622は、基材620の外面620bの少なくとも一部に設けられる。
本実施形態の場合、熱伝導層622は、図2に示すように、外面620bのうちの少なくとも第2領域SP2に設けられる。第2領域SP2は、反射層621の第1領域SP1に対応する領域である。
【0045】
具体的に第1領域SP1に対応する第2領域SP2とは、反射層621および基材620の最短厚さ方向において第1領域SP1の外形と重なる外面620b上における領域である。反射層621の最短厚さ方向とは反射層621の表面621aの面法線に沿う方向に相当し、基材620の最短厚さ方向とは基材620の表面である内面620aの面法線に沿う方向に相当する。
【0046】
ここで、反射層621の第1領域SP1は照度が局所的に高くなるため、反射層621の表面621aの中で最も高温となる。つまり、基材620の外面620bのうち、第1領域SP1に対応する第2領域SP2は、第1領域SP1の熱が伝わり易いため、最も高温となると言える。
【0047】
本実施形態の場合、上述のように熱伝導層622が外面620bの第2領域SP2に少なくとも設けられるため、反射層621の表面621aで最も高温となる第1領域SP1の熱を熱伝導層622へ伝導させて放熱することができる。よって、第1領域SP1の温度を効率良く低下させることができるので、反射ミラー62の温度を効率良く低下させることができる。
【0048】
なお、熱伝導層622は第2領域SP2を含む外面620bの80%以上の面積に設けられることが好ましく、外面620bの全体に設けられることがより好ましい。このようにすれば、反射ミラー62の放熱性をより高めることができる。
【0049】
本実施形態の投射光学装置6では、レンズユニット筐体63が密閉構造を採用したことで内部に熱がこもり易い。これに対して、反射ミラー62は熱伝導層622により放熱性が高められているため、筐体内に籠った熱の影響を受け難い。よって、本実施形態の投射光学装置6によれば、レンズユニット筐体63内の防塵性の向上と反射ミラー62の冷却とを両立可能である。
【0050】
本実施形態の熱伝導層622は、基材620よりも熱伝導率が高い材料であればよく、熱伝導層622の材料としては、熱伝導性に優れた、銀、銅、金、アルミニウム等の金属が用いられる。熱伝導層622の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法、あるいは、めっき法を用いることができる。なお、めっき法には、無電解めっきと電解めっきとが含まれる。
【0051】
本実施形態の場合、めっき法を用いて熱伝導層622を形成した。めっき法を用いた場合、数μm以上の厚さの熱伝導層622を低コストで形成することができる。めっき法で形成された熱伝導層622の表面粗さ(Rz)は1μm以上となる。
【0052】
このため、本実施形態において、熱伝導層622の厚さは反射層621の厚さよりも厚くなっている。この構成によれば、熱伝導層622の厚さを増やすことで、熱伝導層622における熱伝導量が向上し、反射層621の熱を熱伝導層622側に効率良く伝導することができる。よって、反射層621から効率良く放熱させることで反射ミラー62の温度を効率良く低下させることができる。
【0053】
本実施形態の場合、熱伝導層622の表面粗さ(Rz)は、反射層621の表面粗さ(Rz)よりも大きくなっている。この構成によれば、熱伝導層622の表面粗さが増すため、熱伝導層622の表面に微細な凹凸が形成される。よって、熱伝導層622の表面における空気との接触面積が増加し、熱伝導層622の放熱性を高め、結果的に反射層621の放熱性を高めて反射ミラー62の温度上昇を抑制することができる。
【0054】
なお、基材620の外面620bを粗面加工し、複数の凹凸構造を設けてもよい。この場合、熱伝導層622の表面には、外面620bの凹凸構造に倣った凹凸形状が形成されるので、熱伝導層622の表面積を増やすことができる。
【0055】
本実施形態の場合、反射層621の蒸着条件は面精度も含めて管理する必要があるため、反射ミラー62を形成する際、反射層621を基材620の内面620aに蒸着した後、熱伝導層622を基材620の外面620bに形成するのが望ましい。
このようにすれば、反射層621の成膜条件の自由度を確保できるので、面精度の高い反射層621を備えた反射ミラー62を製造できる。
【0056】
以下のように、本実施形態の投射光学装置6は、画像光ILが入射するレンズ群61と、レンズ群61から射出された画像光ILを反射する反射ミラー62と、レンズ群61および反射ミラー62を収容するレンズユニット筐体63と、を備え、反射ミラー62は、画像光ILが入射する内面620aと内面620aと反対の外面620bとを有する基材620と、基材620の内面620aに設けられた反射層621と、基材620の外面620bに設けられた熱伝導層622と、を有している。
【0057】
本実施形態の投射光学装置6によれば、画像光ILを反射する反射ミラー62が反射層621と反対側に熱伝導層622を有するため、反射層621の熱を熱伝導層622から放熱することで反射ミラー62の温度を低下させることができる。
また、局所的に強い照度を含む照度分布の画像光ILが反射層621に入射する場合でも、反射層621の温度を良好に低下させることで、反射層621に局所的な温度ムラが生じることも抑制できる。
したがって、本実施形態の投射光学装置6によれば、反射層621が局所的に高温となることによる反射ミラー62の変形が抑制されるため、反射ミラー62の熱に起因する投射画像光の部分的な移動を抑制した良質な画像を投射することができる。
【0058】
本実施形態のプロジェクター1は、照明光を射出する光源装置2と、光源装置2からの照明光を変調する光変調装置11R,11G,11Bと、光変調装置11R,11G,11Bにより変調された光を投射する投射光学装置6と、を備える。
【0059】
本実施形態のプロジェクター1によれば、反射ミラー62の熱に起因する投射画像の部分的な画像光の移動を抑制した投射光学装置6を備えることで、高品質な画像を近距離からスクリーン上に投射する単焦点型のプロジェクターを提供できる。
【0060】
また、本実施形態のプロジェクター1は、例えば、スクリーン上で検出した位置情報を投射画像に反映させるインタラクティブ機能を有するインタラクティブ型プロジェクター用途に最適である。
【0061】
一般的にインタラクティブ型プロジェクターは、投射光学装置とは異なる光学系からスクリーン上に赤外線からなる格子パターンを照射し、格子パターンに基づいてユーザーの指先やペン先等が指し示す投射画像上の位置情報を取得している。インタラクティブ型プロジェクターでは、投射画像の座標と格子パターンの座標とが一致することが前提となる。このため、仮に投射画像の画像光が移動してしまうと投射画像の座標と格子パターンの座標とが一致せず、インタラクティブ機能を十分に発揮させることができなくなってしまう。これに対して本実施形態のプロジェクター1によれば、反射ミラー62の熱に起因する投射画像の画像光の移動を抑制できるため、インタラクティブ機能を安定して発揮させることができる。
【0062】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、光源装置を構成する各種構成要素の数、配置、形状および材料等の具体的な構成は、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、反射ミラー62として反射面62aが凹面形状を有するミラーを例に挙げたが、反射面が凸面形状や平面形状を有する反射ミラーを用いた投射光学装置にも本発明は適用可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、画像光として可視光をスクリーンに投射するプロジェクター1に用いる投射光学装置6を例に挙げた。このため、投射光学装置6が投射する光は可視光を用いたが、プロジェクターの光源の種類や用途に応じて、反射層621を構成する誘電体膜として近赤外光や赤外光を反射させる膜を用いてもよい。
【0065】
また、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bは透過型の液晶パネルに限定されない。光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bとして、反射型の液晶パネルなどの反射型の光変調装置が採用されてもよい。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源21から射出された光を変調するデジタルマイクロミラーデバイスなどが採用されてもよい。さらに、複数の色光毎にそれぞれ光変調装置を備える構成に限定されず、1つの光変調装置によって複数の色光を時分割して変調する構成が採用されてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、本発明による光源装置をプロジェクターに応用する例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置を自動車用ヘッドライトなどの照明器具にも適用することができる。
【0067】
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
画像光が入射する光学系と、
前記光学系から射出された前記画像光を反射する反射素子と、
前記光学系および前記反射素子を収容する筐体と、を備え、
前記反射素子は、
前記画像光が入射する第1面と前記第1面と反対の第2面とを有する基材と、
前記基材の前記第1面に設けられた反射層と、
前記基材の前記第2面に設けられた熱伝導層と、を有し、
前記熱伝導層は、前記基材よりも熱伝導率が高い、
ことを特徴とする投射光学装置。
【0068】
この構成の投射光学装置によれば、光を反射する反射素子が反射層と反対側に熱伝導層を有するため、反射層の熱を熱伝導層から放熱することで反射素子の温度を低下させることができる。
また、反射層を照明する光が局所的に強い照度を含む分布を有する場合であっても、反射層の温度を良好に低下させることで、反射層に局所的な温度ムラが生じることを抑制できる。
したがって、本構成の投射光学装置によれば、反射素子の反射層が局所的に高温となり難いため、反射素子の高温部分が変形することが抑制される。よって、反射素子の熱に起因する投射画像光の部分的な移動を抑制した良質な画像を投射することができる。
【0069】
(付記2)
前記画像光が前記反射層に形成する照度分布は、照度が所定値よりも高い第1領域を含み、
前記熱伝導層は、前記第2面のうちの少なくとも、前記第1領域に対応する第2領域に設けられる、
ことを特徴とする付記1に記載の投射光学装置。
【0070】
この構成によれば、上述のように熱伝導層が第2面の第2領域に少なくとも設けられるため、反射層の表面で最も高温となる第1領域から熱伝導層側へ効率良く放熱することができる。よって、最も高温となる第1領域の温度が効率良く低下するため、反射素子の温度を効率良く低下させることができる。
【0071】
(付記3)
前記筐体は、前記光学系および前記反射素子を収容する収容空間を密閉する密閉構造を有する、
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の投射光学装置。
【0072】
この構成によれば、筐体の内部における収容空間への塵埃の侵入を抑制することで、塵埃が付着することによる光学系および反射素子における光学特性の低下や、塵埃が発熱や発火することで光学系および反射素子が変形や破損することを抑制できる。
【0073】
(付記4)
前記基材は、プラスチック材料で構成される、
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0074】
この構成によれば、反射素子における加工性を向上させることができる。よって、反射素子を所望の形状に容易に加工できる。
【0075】
(付記5)
前記反射層および前記熱伝導層は金属材料で構成され、
前記熱伝導層の厚さは前記反射層の厚さよりも厚い、
ことを特徴とする付記1から付記4のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0076】
この構成によれば、熱伝導層における熱伝導量が向上し、反射層の熱を熱伝導層側に効率良く伝導することができる。よって、反射層から効率良く放熱させることで反射素子の温度を効率良く低下させることができる。
【0077】
(付記6)
前記熱伝導層の表面粗さは、前記反射層の表面粗さよりも大きい、
ことを特徴とする付記1から付記5のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0078】
この構成によれば、熱伝導層の表面粗さが増すため、熱伝導層の表面に微細な凹凸が形成される。よって、熱伝導層の表面と空気との接触面積が増加し、熱伝導層の放熱性を高め、結果的に反射層の放熱性を高めて反射素子の温度上昇を抑制することができる。
【0079】
(付記7)
前記反射層は凹面形状を有する、
ことを特徴とする付記1から付記6のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0080】
この構成によれば、凹面形状の反射層を有する反射素子を備えることで単焦点型の投射光学装置を提供できる。
【0081】
(付記8)
前記光学系には、縮小側共役面から射出された前記画像光が入射し、
前記反射素子は、反射した前記光を拡大側共役面上に投射する、
ことを特徴とする付記1から付記7のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0082】
この構成によれば、縮小側共役面上の表示画像を拡大側共役面上に投射して投射画像を生成する単焦点型の投射光学装置を提供できる。
【0083】
(付記9)
光を射出する光源装置と、
前記光源装置からの光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された画像光を投射する、付記1から付記8のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置と、を備えた、
ことを特徴とするプロジェクター。
【0084】
この構成のプロジェクターによれば、反射素子の熱に起因する投射画像の部分的な画像光の移動を抑制した投射光学装置を備えることで、高品質な画像を近距離からスクリーンに投射する単焦点型のプロジェクターを提供できる。
また、本構成のプロジェクターは、スクリーン上において投射された画像光の部分的な移動を抑制できるため、スクリーン上で検出した位置情報を投射画像に反映させるインタラクティブ機能を有するプロジェクター用途として最適である。
【符号の説明】
【0085】
1…プロジェクター、2…光源装置、6…投射光学装置、11B,11G,11R…光変調装置、21…光源、61…レンズ群(光学系)、62…反射ミラー(反射素子)、63…レンズユニット筐体(筐体)、620…基材、621…反射層、622…熱伝導層、S…収容空間、SP…照度分布、SP1…第1領域、SP2…第2領域。
図1
図2
図3