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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015609
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】投射光学装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/16 20060101AFI20240130BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240130BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240130BHJP
   G02B 7/195 20210101ALI20240130BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G03B21/16
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G02B7/195
G02B5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117788
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】上條 光翔
【テーマコード(参考)】
2H042
2H043
2K203
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA08
2H042DA11
2H042DC02
2H042DD05
2H042DE00
2H043CB01
2H043CB03
2H043CE00
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA43
2K203FB03
2K203GC05
2K203GC20
2K203HA04
2K203HB22
2K203HB26
2K203KA07
2K203KA08
2K203LA04
2K203LA13
2K203LA37
2K203LA38
2K203LA54
2K203MA07
2K203MA12
(57)【要約】
【課題】熱に起因する投射画像の画素移動を抑制することができる、投射光学装置およびプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明の投射光学装置は、画像光が入射する光学系と、光学系から射出された画像光を反射する反射素子と、光学系と、反射素子の少なくとも一部とを収容する筐体と、を備え、反射素子は、画像光が入射する第1面と第1面と反対の第2面とを有する基材と、基材の第1面に設けられた反射層と、基材の第2面に設けられ、第2面から突出する突出部を含む放熱部材と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光が入射する光学系と、
前記光学系から射出された前記画像光を反射する反射素子と、
前記光学系と、前記反射素子の少なくとも一部とを収容する筐体と、を備え、
前記反射素子は、
前記画像光が入射する第1面と前記第1面と反対の第2面とを有する基材と、
前記基材の前記第1面に設けられた反射層と、
前記基材の前記第2面に設けられ、前記第2面から突出する突出部を含む放熱部材と、を有する、
ことを特徴とする投射光学装置。
【請求項2】
前記画像光が前記反射層に形成する照度分布は、照度が所定値よりも高い第1領域を含み、
前記放熱部材は、前記第2面のうちの少なくとも、前記第1領域に対応する第2領域に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射光学装置。
【請求項3】
前記放熱部材は、前記突出部として放熱フィンを有するヒートシンクであり、
前記放熱フィンの少なくとも一部は前記筐体の外部に露出している、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射光学装置。
【請求項4】
前記放熱部材は、前記突出部としてヒートパイプを含み、
前記ヒートパイプの少なくとも一部が前記筐体の外部に露出している、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項5】
前記ヒートパイプは、前記筐体の外部に露出している部分に放熱フィンが設けられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の投射光学装置。
【請求項6】
前記筐体は、前記光学系および前記反射素子を収容する収容空間を密閉する密閉構造を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項7】
前記基材は、プラスチック材料で構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項8】
前記反射層は凹面形状を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項9】
前記放熱部材は、前記筐体に設けられた開口部の少なくとも一部を覆うカバー部材を兼ねる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項10】
前記光学系には、縮小側共役面から射出された前記画像光が入射し、
前記反射素子は、反射した前記画像光を拡大側共役面上に投射する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【請求項11】
光を射出する光源装置と、
前記光源装置からの光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された画像光を投射する、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置と、を備えた、
ことを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射光学装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型でありながら大画面の投射画像を表示できる短焦点型のプロジェクターが求められている。このような短焦点型のプロジェクターとして、レンズと凹面鏡からなるミラーとを組み合わせた構成の投射光学装置を用い、ミラーで反射した画像をスクリーンに拡大投射する技術がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-085922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような短焦点型のプロジェクターでは、投射光学装置のミラーに対して画像光が集光された状態で入射する。このため、ミラーは、画像光の照度が局所的に高くなることで生じた熱によって変形するおそれがある。このように変形したミラーで反射された画像光は、スクリーン上の所定位置からずれた位置に投射されてしまう。これにより、投射された画像光が部分的に移動することで投射画像の画質が低下するといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様によれば、画像光が入射する光学系と、前記光学系から射出された前記画像光を反射する反射素子と、前記光学系と、前記反射素子の少なくとも一部とを収容する筐体と、を備え、前記反射素子は、前記画像光が入射する第1面と前記第1面と反対の第2面とを有する基材と、前記基材の前記第1面に設けられた反射層と、前記基材の前記第2面に設けられ、前記第2面から突出する突出部を含む放熱部材と、を有する、投射光学装置が提供される。
【0006】
本発明の一つの態様によれば、光を射出する光源装置と、前記光源装置からの光を変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された画像光を投射する、上記態様の投射光学装置と、を備えた、プロジェクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。
図2】プロジェクターが備える投射光学装置の概略構成を示す断面図である。
図3】反射ミラーに形成される照度分布を示した図である。
図4】第2実施形態の投射光学装置の概略構成を示す断面図である。
図5】第3実施形態の投射光学装置の概略構成を示す断面図である。
図6】第4実施形態の投射光学装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0009】
本実施形態に係るプロジェクターの一例について説明する。
本実施形態のプロジェクターは、スクリーン(被投射面)上にフルカラーの画像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクターは、赤色光、緑色光、青色光の各色光を変調する液晶ライトバルブからなる3つの光変調装置を備えている。
【0010】
図1は、本実施形態に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、本体部20と、外装筐体2aと、投射光学装置6と、を備えている。本体部20は、外装筐体2aに収納されている。外装筐体2aは、例えば樹脂材料からなり、複数の部材が組み合わされた構成を有する。
【0011】
投射光学装置6は、外装筐体2aから一部が突出して配置される。本実施形態の投射光学装置6は、超短焦点対応の投射レンズユニットである。投射光学装置6を装着した状態では、プロジェクター1をスクリーンに近接した位置に設置し、画像を投射することができる。ただし、投射光学装置6は、必ずしも本体部20に対して着脱可能に構成されていなくてもよい。投射光学装置6の詳細な構成については、後述する。
【0012】
本体部20は、照明光学系としての光源装置2と、色分離光学系3と、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bと、合成光学系5とを備えている。
【0013】
光源装置2は、光源21と、第1レンズアレイ22と、第2レンズアレイ23と、偏光変換素子24と、重畳レンズ25と、を備えている。第1レンズアレイ22および第2レンズアレイ23は、複数のマイクロレンズが光軸と直交する面内にマトリクス状に配列された構成を有する。
【0014】
本実施形態のプロジェクター1においては、光源21として放電型光源であるランプが採用されているが、光源21の方式は放電型光源に限定されない。光源21として、例えば発光ダイオード、レーザーなどの固体光源が採用されてもよいし、励起光の照射によって蛍光発光が生じる蛍光体を含む波長変換素子を含む光源装置が採用されてもよい。
【0015】
光源21から射出された光は、第1レンズアレイ22によって複数の部分光束に分割される。複数の部分光束は、第2レンズアレイ23と重畳レンズ25とによって、照明対象である3つの光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bの有効表示領域において重畳される。すなわち、第1レンズアレイ22、第2レンズアレイ23および重畳レンズ25は、光源21から射出された光によって光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bを略均一な照度分布で照明するインテグレーター光学系を構成する。
【0016】
偏光変換素子24は、光源21から射出された非偏光の光を、3つの光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bで利用可能な直線偏光に揃える。
【0017】
色分離光学系3は、光源装置2からの照明光WLを赤色光LRと、緑色光LGと、青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aおよび第2ダイクロイックミラー7bと、第1全反射ミラー8a、第2全反射ミラー8bおよび第3全反射ミラー8cと、第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bとを概略備えている。
【0018】
第1ダイクロイックミラー7aは、光源装置2からの照明光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。第1ダイクロイックミラー7aは、分離された赤色光LRを透過すると共に、緑色光LGおよび青色光LBを反射する。一方、第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射すると共に青色光LBを透過することによって、その他の光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。
【0019】
第1全反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置されて、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置11Rに向けて反射する。一方、第2全反射ミラー8bおよび第3全反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置されて、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置11Bに導く。緑色光LGは、第2ダイクロイックミラー7bから光変調装置11Gに向けて反射される。
【0020】
第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路中における第2ダイクロイックミラー7bの後段に配置されている。
【0021】
光変調装置11Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置11Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置11Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0022】
光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられている。液晶パネルには画素が配列され、画像情報に応じて画素毎に変調している。また、液晶パネルの入射側および射出側各々には、図示しない偏光板が配置されている。
【0023】
また、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bの入射側には、それぞれフィールドレンズ10R,フィールドレンズ10G,フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10R,フィールドレンズ10G,フィールドレンズ10Bは、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bそれぞれに入射する赤色光LR,緑色光LG,青色光LBそれぞれを平行化する。
【0024】
合成光学系5には、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bからの画像光が入射する。合成光学系5は、各々が赤色光LR,緑色光LG,青色光LBに対応した画像光を合成し、この合成された画像光を投射光学装置6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられている。合成光学系5によって生成された合成光は、投射光学装置6に向かって射出される。
【0025】
本体部20から射出された合成光は、画像光ILとして、投射光学装置6を介して、図示しないスクリーンなどの被投射面上に投射される。
【0026】
以下、投射光学装置6について説明する。
本実施形態の投射光学装置6は、縮小側共役面上の表示画像を拡大側共役面上に投射して投射画像を生成する。本実施形態において、縮小側共役面は、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bにおける各液晶パネルの表示面に対応し、拡大側共役面は、被投射面であるスクリーンに対応する。
本実施形態の投射光学装置6は、縮小側共役面である光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bの各表示面と共役な位置に表示画像の中間像を形成するとともに、中間像を拡大側共役面であるスクリーン上に拡大投射する。
【0027】
以下、図面においては、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明する。Z軸は、投射光学装置6がスクリーン上に投射する投射画像の上下方向に沿う軸である。X軸は、投射光学装置6の光軸AX1と平行な軸である。Y軸は、X軸およびZ軸に直交する軸であり、投射光学装置6がスクリーン上に投射する投射画像の左右方向に沿う軸である。
【0028】
図2は、本実施形態の投射光学装置6の概略構成を示す断面図である。図2はXZ面と平行な面による投射光学装置の断面図である。
図2に示すように、投射光学装置6は、レンズ群(光学系)61と、第1反射ミラー(反射素子)62と、レンズ群61および第1反射ミラー62を収容する第1レンズユニット筐体(筐体)63と、を有する。
レンズ群61は、複数のレンズから構成され、本体部20からの画像光ILを第1反射ミラー62に向けて射出する。レンズ群61は、複数のレンズが光軸AX1上に配置される。なお、レンズ群61を構成する複数のレンズには、凸レンズ、凹レンズ等の種々の形状のレンズが含まれている。なお、レンズ群61を構成するレンズの枚数、形状、寸法および配置は、特に限定されない。
【0029】
第1反射ミラー62は、レンズ群61から射出された画像光ILを反射させて光路を折り曲げる。第1反射ミラー62は、反射した画像光ILを拡大側共役面である被投射面上に投射する。第1反射ミラー62の反射面62aは、画像光ILを反射して広角化させる非球面ミラーで構成される。第1反射ミラー62は、反射面62aがレンズ群61からの光射出方向と反対側(-X側)かつ上側(+Z側)を向くように配置される。本実施形態において、第1反射ミラー62は、レンズ群61の光軸AX1に沿う画像光ILの主光線を光軸AX1に対して鋭角をなす斜め後方に向けて反射する。第1反射ミラー62で反射された画像光ILは、後述する第1レンズユニット筐体63の光射出部633からスクリーンに向けて射出される。
【0030】
このような構成に基づき、本実施形態の投射光学装置6は、プロジェクター1に対して短距離に配置されたスクリーン上に画像光ILを拡大して投影可能となっている。
【0031】
第1レンズユニット筐体63は、鏡筒部630と、ミラー保持部631と、光入射部632と、光射出部633と、第1カバー部材634と、を有する。なお、第1レンズユニット筐体63の構成材料、形状、寸法等については、特に限定されない。
【0032】
鏡筒部630は、レンズ群61を収容する部位であり、ミラー保持部631は、第1反射ミラー62を保持するための部位である。図示は省略するが、鏡筒部630はレンズ群61を構成する個々のレンズを支持するための支持部を含む。本実施形態において、ミラー保持部631は第1反射ミラー62を支持するための支持部631aを含む。第1反射ミラー62は、ミラー保持部631の支持部631aに対してねじ部材64により取り付けられている。
【0033】
光入射部632は、本体部20から射出された画像光ILを投射光学装置6内に取り込む。光射出部633は、第1反射ミラー62で反射された画像光ILを投射光学装置6外に射出する。光入射部632および光射出部633は、例えば、透光性を有する窓部材で構成される。本実施形態の場合、例えば、光入射部632はレンズ形状を有するため、画像光ILを効率良く取り込み可能となっている。
【0034】
第1レンズユニット筐体63には第1開口部63aが設けられている。本実施形態の場合、第1開口部63aは、第1レンズユニット筐体63のミラー保持部631に設けられている。
第1開口部63aは、第1レンズユニット筐体63の内部空間と外部とを連通させる。レンズ群61および第1反射ミラー62は、第1開口部63aを介して第1レンズユニット筐体63の内部に着脱可能とされる。第1カバー部材634は、第1開口部63aを覆うように第1レンズユニット筐体63に着脱可能とされている。
【0035】
第1カバー部材634は、第1レンズユニット筐体63の内部空間を密閉状態で封止する。つまり、本実施形態の第1レンズユニット筐体63は、レンズ群61および第1反射ミラー62を収容する収容空間Sを密閉する密閉構造を有している。このため、第1レンズユニット筐体63は、内部の収容空間Sへの塵埃の侵入を抑制することで、塵埃が付着することでレンズ群61および第1反射ミラー62における光学特性の低下や、塵埃が発熱することでレンズ群61および第1反射ミラー62が変形や破損することを抑制できる。
【0036】
一般的に短焦点型のプロジェクターでは、反射ミラーで反射させることでスクリーン上に画像光を拡大して投射する構成を採用するため、反射ミラー上において画像光の光密度に偏りが生じてしまい、反射ミラー上に形成された照度分布が局所的に照度の高い領域を含んだものとなってしまう。
【0037】
本実施形態の投射光学装置6においても、本体部20から射出された画像光ILが第1反射ミラー62上に形成する照度分布は局所的に照度が高い領域を含んだものとなる。
図3は本実施形態の第1反射ミラー62に形成される照度分布を示した図である。具体的に図3は、反射層621上に形成される画像光ILの照度分布を示した図であり、画像光ILの照度の最大値(黒色)、画像光ILの最小値(白色)で示している。
【0038】
図3に示すように、本実施形態の第1反射ミラー62では、反射面62aのうち下側(図2に示される-Z側)における画像光ILの照度が局所的に高くなっている。画像光ILの照度分布SPは、照度が所定値よりも高い第1領域SP1を含む。つまり、第1領域SP1とは、反射面62aのうち、画像光ILの照度が局所的に高くなる領域を意味している。
第1領域SP1を規定する所定値としては、照度50%以上とすることが好ましく、照度60%以上とすることがより好ましく、照度70%以上とすることが最も好ましい。
【0039】
本実施形態の投射光学装置6では、第1反射ミラー62における放熱性を高めて第1反射ミラー62の温度を低減し、第1反射ミラー62の局所的な変形を抑制することで熱に起因する投射画像の部分的な画素の移動を抑制するようにしている。
【0040】
以下、本実施形態の投射光学装置6の要部構成について説明する。
本実施形態の投射光学装置6において、第1反射ミラー62は、基材620と、反射層621と、第1放熱部材622と、を有する。基材620は、画像光が入射する内面(第1面)620aと、内面620aとは反対側の外面(第2面)620bと、を有する。基材620の内面620aは、凹面形状を有する。具体的に内面620aは、例えば、球面形状、非球面形状、あるいは自由曲面形状のいずれかを有する。
【0041】
本実施形態において、基材620はプラスチック材料で構成される。プラスチックはガラスと比べて加工性が高いため、内面620aを所望の形状に容易且つ高精度に形成することができる。一方、プラスチックは熱による形状変化も生じやすく、反射層621の温度が高くなり過ぎると基材620が変形するおそれがある。
【0042】
本実施形態の第1反射ミラー62は、後述のように第1放熱部材622によって反射層621の放熱性を向上させることで熱による基材620の形状変化を抑制可能である。よって、第1反射ミラー62は、加工性に優れつつ熱による変形が抑制されたものとされている。
【0043】
反射層621は内面620aに沿って形成される。このため、反射層621の表面621aは内面620aに倣った凹面形状を有する。本実施形態の場合、反射層621の表面621aが第1反射ミラー62の反射面62aに相当する。
【0044】
本実施形態の反射層621は、金属膜または誘電体膜で構成される。反射層621を構成する金属膜の材料としては、例えば、アルミニウム、銀等が用いられる。反射層621を構成する誘電体膜としては、例えば、400nm~700nmの可視光を反射する膜が用いられる。本実施形態の場合、蒸着法を用いて反射層621を形成した。つまり、反射層621は基材620の内面620aに一体に形成されている。
反射層621の厚みは、例えば1μm以下に設定され、反射層621の表面621aは準鏡面あるいは鏡面とされている。具体的に反射層621の表面621aにおける表面粗さ(Rz)が0.2μm以下となるように基材620の内面620aを形成する。
【0045】
第1放熱部材622は、基材620の外面620bと当接している。
ここで、当接とは、第1放熱部材622と基材620の外面とが直接、接していてもよいし、第1放熱部材622と基材620との間に放熱グリス等の熱伝導性部材626を含んでいてもよい。なお、熱伝導性部材626に代えて、熱伝導粒子を含有した接着剤を用いてもよい。
【0046】
第1放熱部材622は、基材620の外面620bの少なくとも一部に設けられる。
本実施形態の場合、第1放熱部材622は、図2に示すように、外面620bのうちの少なくとも第2領域SP2に設けられる。第2領域SP2は、反射層621の第1領域SP1に対応する領域である。
【0047】
具体的に第1領域SP1に対応する第2領域SP2とは、反射層621および基材620の最短厚さ方向において第1領域SP1の外形と重なる外面620b上における領域である。反射層621の最短厚さ方向とは反射層621の表面621aの面法線に沿う方向に相当し、基材620の最短厚さ方向とは基材620の表面(内面620aおよび外面620b)の面法線に沿う方向に相当する。
【0048】
ここで、反射層621の第1領域SP1は照度が局所的に高くなるため、反射層621の表面621aの中で最も高温となる。つまり、基材620の外面620bのうち、第1領域SP1に対応する第2領域SP2は、第1領域SP1の熱が伝わり易いため、最も高温になる。
【0049】
本実施形態の場合、上述のように第1放熱部材622が外面620bの第2領域SP2に少なくとも設けられるため、反射層621の表面621aで最も高温となる第1領域SP1の熱を第1放熱部材622へ放熱させることができる。よって、第1領域SP1の温度を効率良く低下させることができるので、第1反射ミラー62の温度を効率良く低下させることができる。
【0050】
なお、第1放熱部材622は第2領域SP2を含む外面620b全体の80%以上の面積に設けられることが好ましく、外面620bの全体に設けられることがより好ましい。このようにすれば、第1反射ミラー62の放熱性をより高めることができる。
【0051】
本実施形態の投射光学装置6では、第1レンズユニット筐体63が密閉構造を採用したことで内部に熱がこもり易い。これに対して、第1反射ミラー62は第1放熱部材622により放熱性が高められているため、筐体内に籠った熱の影響を受け難い。よって、本実施形態の投射光学装置6によれば、第1レンズユニット筐体63内の防塵性の向上と第1反射ミラー62の冷却とを両立可能である。
【0052】
本実施形態の第1放熱部材622は、基材620の外面620bに沿って設けられた板金部材623と、板金部材623に接続され、外面620bから突出するヒートパイプ624と、を有する。つまり、本実施形態の第1放熱部材622は、外面620bから突出する突出部としてヒートパイプ624を含む。ヒートパイプ624は板金部材623にねじ部材あるいは接着剤を介して固定されている。ヒートパイプ624は、基材620の外面620bの背面側における斜め下方(+X側かつ-Z側)に向かって延びる。板金部材623は、ねじ部材64を介して基材620とともにミラー保持部631に固定される。これにより、第1放熱部材622と基材620の外面620bとが当接される。このようにして第1反射ミラー62は、ねじ部材64を介してミラー保持部631の支持部631aに固定される。
【0053】
ヒートパイプ624は冷媒を収容したパイプで構成される。ヒートパイプ624は、一端側に設けられた受熱部65と、他端側に設けられた放熱部66と、を有する。ヒートパイプ624は、受熱部65が板金部材623に接続され、放熱部66が第1レンズユニット筐体63の外部に露出している。ヒートパイプ624は、受熱部65が受熱した熱により蒸発されて気体化された冷媒を放熱部66で放熱させることで凝縮して液体化することで板金部材623を冷却することができる。なお、ヒートパイプ624の材料としては、熱伝導性に優れた、銀、銅、金、アルミニウム等の金属製のパイプが用いられる。
【0054】
ヒートパイプ624は、一部が第1レンズユニット筐体63の外部に露出している。本実施形態の場合、ヒートパイプ624の放熱部66が第1レンズユニット筐体63の外部に露出している。より具体的にヒートパイプ624の放熱部66は、第1カバー部材634に設けられた第1スリット634aを介して第1レンズユニット筐体63の外部に露出している。放熱部66と第1スリット634aとの隙間は封止部材68で封止されている。これにより、第1レンズユニット筐体63の内部の密閉状態が保たれている。
【0055】
また、ヒートパイプ624は、第1レンズユニット筐体63の外部に露出する部分である放熱部66に放熱フィン67が設けられている。これにより、ヒートパイプ624は、放熱フィン67によって放熱部66の放熱性を高めている。
なお、放熱フィン67の材料としては、ヒートパイプ624と同様、熱伝導性に優れた、銀、銅、金、アルミニウム等の金属が用いられる。
【0056】
続いて、本実施形態の投射光学装置6の組み立て工程について説明する。
はじめに、反射層621を成膜した基材620の外面620bに熱伝導性部材626を介して第1放熱部材622をねじ部材64により当接させ、第2反射ミラー162を組み立てる。
続いて、第1開口部63aを覆うように第1カバー部材634を第1レンズユニット筐体63に取り付ける。このとき、第1カバー部材634の第1スリット634aを介してヒートパイプ624の放熱部66を第1レンズユニット筐体63から外部に露出させる。
続いて、第1レンズユニット筐体63から露出するヒートパイプ624の放熱部66に放熱フィン67を取り付ける。
最後に、第1カバー部材634の第1スリット634aとヒートパイプ624との隙間を封止部材68で封止する。このようにして投射光学装置6の組み立てが完了する。
【0057】
以下のように、本実施形態の投射光学装置6は、画像光ILが入射するレンズ群61と、レンズ群61から射出された画像光ILを反射する第1反射ミラー62と、レンズ群61と、第1反射ミラー62の少なくとも一部とを収容する第1レンズユニット筐体63と、を備え、第1反射ミラー62は、画像光ILが入射する内面620aと内面620aと反対の外面620bとを有する基材620と、基材620の内面620aに設けられた反射層621と、基材620の外面620bに設けられ、外面620bから突出するヒートパイプ624を含む第2放熱部材625と、を有している。
【0058】
本実施形態の投射光学装置6によれば、画像光ILを反射する第1反射ミラー62が反射層621の反対側に第1放熱部材622を有するため、第1放熱部材622が反射層621から吸熱した熱をヒートパイプ624から放熱することで第1反射ミラー62の温度を低下させることができる。
また、局所的に強い照度を含むムラのある照度分布の画像光ILが反射層621に入射する場合でも、反射層621の温度を良好に低下させることで、反射層621に局所的な温度ムラが生じることも抑制できる。
したがって、本実施形態の投射光学装置6によれば、第1反射ミラー62の反射層621が局所的に高温となり難いため、第1反射ミラー62の高温部分が変形することが抑制される。よって、第1反射ミラー62の熱に起因する投射画像の部分的な画素の移動を抑制した良質な画像を投射できる。
【0059】
本実施形態のプロジェクター1は、照明光を射出する光源装置2と、光源装置2からの照明光を変調する光変調装置11R,11G,11Bと、光変調装置11R,11G,11Bにより変調された光を投射する投射光学装置6と、を備える。
【0060】
本実施形態のプロジェクター1によれば、第1反射ミラー62の熱に起因する投射画像の部分的な画素移動を抑制した投射光学装置6を備えることで、高品質な画像を近距離からスクリーン上に投射する単焦点型のプロジェクターを提供できる。
【0061】
また、本実施形態のプロジェクター1は、例えば、スクリーン上で検出した位置情報を投射画像に反映させるインタラクティブ機能を有するインタラクティブ型プロジェクター用途に最適である。
【0062】
一般的にインタラクティブ型プロジェクターは、投射光学装置とは異なる光学系からスクリーン上に赤外線からなる格子パターンを照射し、格子パターンに基づいてユーザーの指先やペン先等が指し示す投射画像上の位置情報を取得している。インタラクティブ型プロジェクターでは、投射画像の座標と格子パターンの座標とが一致することが前提となる。このため、仮に投射画像の画素が移動してしまうと投射画像の座標と格子パターンの座標とが一致せず、インタラクティブ機能を十分に発揮させることができなくなってしまう。これに対して本実施形態のプロジェクター1によれば、第1反射ミラー62の熱に起因する投射画像の画素移動を抑制できるため、インタラクティブ機能を安定して発揮させることができる。
【0063】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態として投射光学装置の別構成を説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは反射ミラーの構造であるため、以下では反射ミラーの周辺構成を主に説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と共通の構成あるいは部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0064】
図4は、本実施形態の投射光学装置の概略構成を示す断面図である。
図4に示すように、本実施形態の投射光学装置106は、レンズ群61と、第2反射ミラー(反射素子)162と、レンズ群61および第2反射ミラー162を収容する第2レンズユニット筐体(筐体)163と、を有する。
【0065】
本実施形態の第2レンズユニット筐体163は、鏡筒部630と、ミラー保持部631と、光入射部632と、光射出部633と、第2カバー部材635と、を有する。
第2レンズユニット筐体163のミラー保持部631には第2開口部163aが設けられている。第2開口部163aは、第2レンズユニット筐体163の内部空間と外部とを連通させる。レンズ群61は、第2開口部163aを介して第2レンズユニット筐体163の内部に着脱可能とされる。第2カバー部材635は、第2開口部163aの一部を覆うように第1レンズユニット筐体63に着脱可能とされる。第2カバー部材635は、例えば、プラスチック材料で構成されている。なお、第2カバー部材635は単一の部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
【0066】
本実施形態の第2反射ミラー162は、内面620aに反射層621が形成された基材620と、第2放熱部材625と、を有する。第2放熱部材625は基材620の外面620bの一部に設けられる。本実施形態の第2放熱部材625は、第1開口部63aの一部を覆うカバー部材を兼ねている。第2放熱部材625は、第2カバー部材635とともに第1開口部63aを覆っている。より具体的に第2放熱部材625は、第1開口部63aのうち第2カバー部材635が覆わない部分を覆う。つまり、本実施形態の場合、第2反射ミラー162の第2放熱部材625の全体が第2レンズユニット筐体163の外部に露出している。
【0067】
第2放熱部材625および第2カバー部材635は、第1レンズユニット筐体63の内部空間を密閉状態で封止することで、内部に収容されるレンズ群61および反射層621に塵埃が付着することによる光学特性の低下や、塵埃が発熱することでレンズ群61および反射層621が変形や破損することを抑制できる。
【0068】
本実施形態の第2放熱部材625は、基材620の外面620bに接着されている。本実施形態の場合、第2放熱部材625と基材620の外面620bとの間に、例えば、放熱グリス等の熱伝導性部材626が挟まれている。このため、第2放熱部材625と基材620との間の熱伝導性を向上することができる。
【0069】
第2放熱部材625は、ベース部625aと、ベース部625aに接続された放熱フィン625bと、を有するヒートシンクである。ベース部625aは外面620bに沿って設けられた金属板である。放熱フィン625bは複数のフィン状部材で構成され、外面620bから突出する突出部に相当する。なお、放熱フィン625bのうちベース部625aの外縁に設けられた部分は、後述のように第2放熱部材625を第2カバー部材635に固定する固定部として機能する。
【0070】
本実施形態の第2反射ミラー162において、反射層621を成膜した基材620は、第1ねじ部材71を介してミラー保持部631の支持部631aに固定される。第2放熱部材625は、第2ねじ部材72を介して第2カバー部材635とともに第2レンズユニット筐体163に固定される。基材620および第2放熱部材625は熱伝導性部材626を介して接着されている。
【0071】
ここで、本実施形態の投射光学装置106の組み立て工程について説明する。
はじめに、反射層621を成膜した基材620の外面620bに熱伝導性部材626を介して第2放熱部材625を接着し、第2反射ミラー162を組み立てる。
続いて、第2開口部163aを介して第2レンズユニット筐体163の内部に第2反射ミラー162を配置した後、第2反射ミラー162をミラー保持部631の支持部631aに第1ねじ部材71で固定する。そして、第2カバー部材635を第2レンズユニット筐体163に取り付ける。これにより、第2レンズユニット筐体163の第2開口部163aが、第2反射ミラー162の第2放熱部材625と第2カバー部材635とで覆われる。
最後に、第2反射ミラー162の第2放熱部材625と第2カバー部材635とを第2ねじ部材72によって第2レンズユニット筐体163と固定する。
このようにして投射光学装置106の組み立てが完了する。
【0072】
本実施形態の投射光学装置106によれば、画像光ILを反射する反射層621と反対側に設けられた第2放熱部材625を有する第2反射ミラー162を備えるため、第2放熱部材625によって反射層621の熱を放出することで第2反射ミラー162の温度を低下することができる。よって、本実施形態の投射光学装置106によれば、反射層621が局所的に高温となることによる第2反射ミラー162の変形が抑制されるため、第2反射ミラー162の熱に起因する投射画像の部分的な画素の移動を抑制した良質な画像を投射できる。
【0073】
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態として投射光学装置の別構成を説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは反射ミラーの構造であるため、以下では反射ミラーの周辺構成を主に説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と共通の構成あるいは部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0074】
図5は、本実施形態の投射光学装置の概略構成を示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態の投射光学装置206は、レンズ群61と、第3反射ミラー(反射素子)262と、レンズ群61および第3反射ミラー262を収容する第3レンズユニット筐体(筐体)263と、を有する。
【0075】
本実施形態の第3レンズユニット筐体263は、鏡筒部630と、ミラー保持部631と、光入射部632と、光射出部633と、第3カバー部材636と、を有する。
第3レンズユニット筐体263のミラー保持部631には第3開口部263aが設けられている。第3開口部263aは、第3レンズユニット筐体263の内部空間と外部とを連通させる。レンズ群61および第3反射ミラー262は、第3開口部263aを介して第3レンズユニット筐体263の内部に着脱可能とされる。第3カバー部材636は、第3開口部263aを覆うように第3レンズユニット筐体263に着脱可能とされる。第3カバー部材636は、例えば、プラスチック材料で構成されている。なお、第3カバー部材636は単一の部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
【0076】
本実施形態の第3反射ミラー262は、内面620aに反射層621が形成された基材620と、第3放熱部材627と、熱伝導性部材626と、を有する。
本実施形態の第3放熱部材627は、基材620の外面620bに沿って設けられた板金部材623と、板金部材623に接続され、外面620bから突出するヒートパイプ624と、を有する。
【0077】
本実施形態の第3反射ミラー262と第1実施形態の第1反射ミラー62とは、ヒートパイプが延在する方向が異なっている。第1実施形態のヒートパイプ624は基材620の外面620bの背面側の斜め下方(+X側かつ-Z側)に延在していた。これに対して、本実施形態のヒートパイプ624は、基材620の外面620bの背面側から少し離れるように斜め上方(+X側かつ+Z側)に延在した後、上方(+Z側)に向かうように延在している。
【0078】
本実施形態において、ヒートパイプ624の放熱部66は、第3カバー部材636に設けられた第3スリット636aを介して第1レンズユニット筐体63の外部に露出している。ヒートパイプ624は、第1レンズユニット筐体63の外部に露出する放熱部66に放熱フィン67が設けられている。放熱部66と第3スリット636aとの隙間は封止部材68で封止されている。これにより、第1レンズユニット筐体63の内部の密閉状態が保たれている。
【0079】
本実施形態の第3カバー部材636は、ヒートパイプ624の一部を保持するパイプ保持部636bを有する。これにより、ヒートパイプ624が第3カバー部材636を介して第3レンズユニット筐体263に保持されるため、ヒートパイプ624を安定して保持できる。よって、ヒートパイプ624に生じるガタツキを抑制し、ヒートパイプ624と板金部材623との接続部分が剥離する等の不具合の発生を抑制できる。
【0080】
ここで、本実施形態の投射光学装置206の組み立て工程について説明する。
はじめに、反射層621を成膜した基材620の外面620bに熱伝導性部材626を介して第3放熱部材627をねじ部材64により当接させ、第3反射ミラー262を組み立てる。
続いて、第3開口部263aを覆うように第3カバー部材636を第2レンズユニット筐体163に取り付ける。このとき、第3カバー部材636の第3スリット636aを介してヒートパイプ624の放熱部66を第2レンズユニット筐体163から外部に露出させる。
続いて、第2レンズユニット筐体163から露出するヒートパイプ624の放熱部66に放熱フィン67を取り付ける。
最後に、第3カバー部材636の第3スリット636aとヒートパイプ624との隙間を封止部材68で封止する。このようにして投射光学装置206の組み立てが完了する。
【0081】
本実施形態の投射光学装置206においても、第3放熱部材627を有する第3反射ミラー262を備えることで、反射層621が局所的に高温となることによる第3反射ミラー262の変形を抑制できるので、第3反射ミラー262の熱に起因する投射画像の部分的な画素の移動を抑制した良質な画像を投射できる。
【0082】
(第4実施形態)
続いて、本発明の第4実施形態として投射光学装置の別構成を説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは反射ミラーの構造であるため、以下では反射ミラーの周辺構成を主に説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と共通の構成あるいは部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0083】
図6は、本実施形態の投射光学装置の概略構成を示す断面図である。図6はXY面と平行な面による投射光学装置の断面図である。
図6に示すように、本実施形態の投射光学装置306は、レンズ群61と、第4反射ミラー(反射素子)362と、レンズ群61および第4反射ミラー362を収容する第4レンズユニット筐体(筐体)363と、を有する。
【0084】
本実施形態の第4レンズユニット筐体363は、鏡筒部630と、ミラー保持部631と、光入射部632と、光射出部633と、第4カバー部材637と、を有する。
第4レンズユニット筐体363のミラー保持部631には第4開口部363aが設けられている。第4開口部363aは、第4レンズユニット筐体363の内部空間と外部とを連通させる。レンズ群61および第4反射ミラー362は、第4開口部363aを介して第4レンズユニット筐体363の内部に着脱可能とされる。第4カバー部材637は、第4開口部363aを覆うように第4レンズユニット筐体363に着脱可能とされる。第4カバー部材637は、例えば、プラスチック材料で構成されている。なお、第4カバー部材637は単一の部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
【0085】
本実施形態の第4反射ミラー362は、内面620aに反射層621が形成された基材620と、第4放熱部材628と、熱伝導性部材626と、を有する。
本実施形態の第4放熱部材628は、基材620の外面620bに沿って設けられた板金部材623と、板金部材623に接続され、外面620bから突出するヒートパイプ624と、を有する。
【0086】
本実施形態の第4反射ミラー362と第3実施形態の第4反射ミラー362とは、ヒートパイプが延在する方向が異なっている。第3実施形態のヒートパイプ624は、基材620の外面620bの背面側から少し離れるように斜め上方(+X側かつ+Z側)に延在した後、上方(+Z側)に向かうように延在していた。これに対して、本実施形態のヒートパイプ624は、基材620の外面620bの背面に沿って設けられ、左右方向(Y軸方向)の両側に向かって延在している。
【0087】
本実施形態の第4カバー部材637は、ヒートパイプ624の左右方向の両端をそれぞれ保持するパイプ保持部638を有する。これにより、ヒートパイプ624が第4カバー部材637を介して第1レンズユニット筐体63に保持されるため、ヒートパイプ624を安定して保持できる。よって、ヒートパイプ624に生じるガタツキを抑制し、ヒートパイプ624と板金部材623との接続部分が剥離する等の不具合の発生を抑制できる。
【0088】
本実施形態において、ヒートパイプ624の放熱部66は、第4カバー部材637のパイプ保持部638に設けられた第4スリット638aを介して第1レンズユニット筐体63の外部に露出している。ヒートパイプ624は、第1レンズユニット筐体63の外部に露出する放熱部66に放熱フィン67が設けられている。放熱部66と第4スリット638aとの隙間は封止部材68で封止されている。これにより、第1レンズユニット筐体63の内部の密閉状態が保たれている。
【0089】
ここで、本実施形態の投射光学装置306の組み立て工程について説明する。
はじめに、反射層621を成膜した基材620の外面620bに熱伝導性部材626を介して第4放熱部材628をねじ部材64により当接させ、第4反射ミラー362を組み立てる。
続いて、第4開口部363aを覆うように第4カバー部材637を第2レンズユニット筐体163に取り付ける。このとき、第4カバー部材637のパイプ保持部638の第4スリット638aを介してヒートパイプ624の放熱部66を第2レンズユニット筐体163から外部に露出させる。
続いて、第2レンズユニット筐体163から露出するヒートパイプ624の放熱部66に放熱フィン67を取り付ける。
最後に、パイプ保持部638の第4スリット638aとヒートパイプ624との隙間を封止部材68で封止する。このようにして投射光学装置306の組み立てが完了する。
【0090】
本実施形態の投射光学装置306においても、第4放熱部材628を有する第4反射ミラー362を備えることで、反射層621が局所的に高温となることによる第4反射ミラー362の変形を抑制できるので、第4反射ミラー362の熱に起因する投射画像の部分的な画素の移動を抑制した良質な画像を投射できる。
【0091】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、光源装置を構成する各種構成要素の数、配置、形状および材料等の具体的な構成は、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態では、第1反射ミラー62として反射面62aが凹面形状を有するミラーを例に挙げたが、反射面が凸面形状や平面形状を有する反射ミラーを用いた投射光学装置にも本発明は適用可能である。
【0093】
また、上記実施形態では、放熱部材の一部である突出部がレンズユニット筐体の外部に突出する場合を例示したが、放熱部材の全体がレンズユニット筐体の内部に収容されていてもよい。この構成の投射光学装置においても、放熱部材を備えることで反射ミラーの放熱が向上するので、反射ミラーの熱に起因する投射画像の部分的な画素の移動を抑制した良質な画像を投射できる。
【0094】
また、上記実施形態では、画像光として可視光をスクリーンに投射するプロジェクター1に用いる投射光学装置6を例に挙げた。このため、投射光学装置6が投射する光は可視光を用いたが、プロジェクターの光源の種類や用途に応じて、反射層621を構成する誘電体膜として近赤外光や赤外光を反射させる膜を用いてもよい。
【0095】
また、光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bは透過型の液晶パネルに限定されない。光変調装置11R,光変調装置11G,光変調装置11Bとして、反射型の液晶パネルなどの反射型の光変調装置が採用されてもよい。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源21から射出された光を変調するデジタルマイクロミラーデバイスなどが採用されてもよい。さらに、複数の色光毎にそれぞれ光変調装置を備える構成に限定されず、1つの光変調装置によって複数の色光を時分割して変調する構成が採用されてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、本発明による光源装置をプロジェクターに応用する例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置を自動車用ヘッドライトなどの照明器具にも適用することができる。
【0097】
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
画像光が入射する光学系と、
前記光学系から射出された前記光を反射する反射素子と、
前記光学系と、前記反射素子の少なくとも一部とを収容する筐体と、を備え、
前記反射素子は、
前記画像光が入射する第1面と前記第1面と反対の第2面とを有する基材と、
前記基材の前記第1面に設けられた反射層と、
前記基材の前記第2面に設けられ、前記第2面から突出する突出部を含む放熱部材と、を有する、
ことを特徴とする投射光学装置。
【0098】
この構成の投射光学装置によれば、光を反射する反射素子が反射層の反対側に放熱部材を有するため、放熱部材が反射層から吸熱した熱を突出部から放熱することで反射素子の温度を低下させることができる。
また、局所的に強い照度を含むムラのある照度分布の光が反射層に入射する場合でも、反射層の温度を良好に低下させることで、反射層に局所的な温度ムラが生じることを抑制できる。
したがって、本構成の投射光学装置によれば、反射素子の反射層が局所的に高温となり難いため、反射素子の高温部分が変形することが抑制される。よって、反射素子の熱に起因する投射された画像光の部分的な移動を抑制した良質な画像を投射することができる。
【0099】
(付記2)
前記光が前記反射層に形成する照度分布は、照度が所定値よりも高い第1領域を含み、
前記放熱部材は、前記第2面のうちの少なくとも、前記第1領域に対応する第2領域に設けられる、
ことを特徴とする付記1に記載の投射光学装置。
【0100】
この構成によれば、上述のように熱伝導層が第2面の第2領域に少なくとも設けられるため、反射層の表面で最も高温となる第1領域から熱伝導層側へ効率良く放熱することができる。よって、最も高温となる第1領域の温度が効率良く低下するため、反射素子の温度を効率良く低下させることができる。
【0101】
(付記3)
前記放熱部材は、前記突出部として放熱フィンを含むヒートシンクであり、
前記放熱フィンの少なくとも一部が前記筐体の外部に露出している、
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の投射光学装置。
【0102】
この構成によれば、ヒートシンクが反射層から吸熱した熱を筐体の外部に露出する部分から効率良く放出できる。これにより、反射素子の冷却性能を高めることができる。また、ヒートシンクが筐体内部で熱を放出しないため、筐体内部の温度上昇を抑制できる。
【0103】
(付記4)
前記放熱部材は、前記突出部としてヒートパイプを含み、
前記ヒートパイプの少なくとも一部が前記筐体の外部に露出している、
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の投射光学装置。
【0104】
この構成によれば、ヒートパイプが反射層から吸熱した熱を筐体の外部に露出する部分から効率良く放出できる。これにより、反射素子の冷却性能を高めることができる。また、ヒートパイプが筐体内部で熱を放出しないため、筐体内部の温度上昇を抑制できる。
【0105】
(付記5)
前記ヒートパイプは、前記筐体の外部に露出している部分に放熱フィンが設けられている、
ことを特徴とする付記4に記載の投射光学装置。
【0106】
この構成によれば、放熱フィンによりヒートパイプの放熱性が向上するため、反射素子の冷却性能をより高めることができる。
【0107】
(付記6)
前記筐体は、前記光学系および前記反射素子を収容する収容空間を密閉する密閉構造を有する、
ことを特徴とする付記1から付記5のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0108】
この構成によれば、筐体の内部における収容空間への塵埃の侵入を抑制することで、塵埃が付着することによる光学系および反射素子における光学特性の低下や、塵埃が発熱や発火することで光学系および反射素子が変形や破損することを抑制できる。
【0109】
(付記7)
前記基材は、プラスチック材料で構成される、
ことを特徴とする付記1から付記6のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0110】
この構成によれば、反射素子における加工性を向上させることができる。よって、反射素子を所望の形状に容易に加工できる。
【0111】
(付記8)
前記反射層は凹面形状を有する、
ことを特徴とする付記1から付記7のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0112】
この構成によれば、凹面形状の反射層を有する反射素子を備えることで単焦点型の投射光学装置を提供できる。
【0113】
(付記9)
前記放熱部材は、前記筐体に設けられた開口部を覆うカバー部材を兼ねている、
ことを特徴とする付記1から付記8のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0114】
この構成によれば、放熱部材が筐体の開口部を覆うカバー部材を兼ねるため、投射光学装置を構成する部品点数を少なくすることができる。これにより、投射光学装置のコストを低減できる。
【0115】
(付記10)
前記光学系には、縮小側共役面から射出された前記画像光が入射し、
前記反射素子は、反射した前記画像光を拡大側共役面上に投射する、
ことを特徴とする付記1から付記9のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置。
【0116】
この構成によれば、縮小側共役面上の表示画像を拡大側共役面上に投射して投射された画像光を生成する単焦点型の投射光学装置を提供できる。
【0117】
(付記11)
光を射出する光源装置と、
前記光源装置からの光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された画像光を投射する、付記1から付記10のうちのいずれか一項に記載の投射光学装置と、を備えた、
ことを特徴とするプロジェクター。
【0118】
この構成のプロジェクターによれば、反射素子の熱に起因する投射された画像光の部分的な移動を抑制した投射光学装置を備えることで、高品質な画像を近距離からスクリーンに投射する単焦点型のプロジェクターを提供できる。
また、本構成のプロジェクターは、スクリーン上において投射された画像光の部分的な移動を抑制できるため、スクリーン上で検出した位置情報を投射画像に反映させるインタラクティブ機能を有するプロジェクター用途として最適である。
【符号の説明】
【0119】
1…プロジェクター、2…光源装置、6,106,206,306…投射光学装置、11B,11G,11R…光変調装置、21…光源、61…レンズ群(光学系)、62…第1反射ミラー(反射素子)、63…第1レンズユニット筐体(筐体)、66…放熱部、67,625b…放熱フィン、162…第2反射ミラー(反射素子)、163…第2レンズユニット筐体(筐体)、262…第3反射ミラー(反射素子)、263…第3レンズユニット筐体(筐体)、362…第4反射ミラー(反射素子)、363…第4レンズユニット筐体(筐体)、620…基材、621…反射層、624…ヒートパイプ、S…収容空間、SP…照度分布、SP1…第1領域、SP2…第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6