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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001561
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20231227BHJP
   G02B 21/36 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100294
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】522250471
【氏名又は名称】NASU環境分析センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】和田 尚人
【テーマコード(参考)】
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB09
2G059EE02
2G059FF01
2G059FF03
2G059GG02
2G059HH01
2G059HH02
2G059KK04
2G059PP06
2H052AA14
2H052AC33
2H052AD10
2H052AF14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】検出対象物が特定物質を含んでいるか否かを検出する作業に関わる作業員の利便性を向上できる検出システムを提供する。
【解決手段】検出システム1は、個人携帯可能であり、検出対象物を撮影して画像データを取得する撮影手段(デジタルマイクロスコープ2)と、個人携帯可能であり、前記撮影手段と無線通信可能であり、前記撮影手段により取得された前記画像データに基づいて、前記検出対象物に特定物質が含まれているか否かを検出する個人携帯端末(スマートフォン4)と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人携帯可能であり、検出対象物を撮影して画像データを取得する撮影手段と、
個人携帯可能であり、前記撮影手段と無線通信可能であり、前記撮影手段により取得された前記画像データに基づいて、前記検出対象物に特定物質が含まれているか否かを検出する個人携帯端末と、
を備えることを特徴とする検出システム。
【請求項2】
個人携帯可能であり、検出対象物を撮影して画像データを取得する撮影手段と、
個人携帯可能であり、無線ローカルネットワークを構築する無線ローカルネットワークルータと、
個人携帯可能であり、前記無線ローカルネットワークルータを介して前記撮影手段と無線通信可能であり、前記撮影手段により取得された前記画像データに基づいて、前記検出対象物に特定物質が含まれているか否かを検出する個人携帯端末と、
を備え、
前記特定物質は、アスベストであることを特徴とする検出システム。
【請求項3】
前記撮影手段が前記検出対象物を撮影する際に、前記撮影手段と前記検出対象物の距離を一定の間隔に保つ補助具を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料などの検出対象物が特定物質(例えばアスベスト)を含んでいるか否かを検出する検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスベスト(別名:石綿)の検出方法として、特許文献1には、アスベストを観察するシステムが記載され、特許文献2には、位相差顕微鏡を用いてアスベスト繊維種を特定するシステムが記載されている。しかしながら、何れの検出方法も、検査対象物(アスベストを含有しているか否かを調べる対象)から試料を小さく切り出して顕微鏡システムにて観察するものであり、解体現場から離れた研究施設などにおいて試料が検査に供されることになるため、数日から週単位の時間を要することになり、その検査対象物にアスベストが含有しているか否かの確認が取れるまで解体等作業を開始できず、解体等作業の作業効率が極めて悪くなるおそれがあるという問題があった。
【0003】
また、災害時においては多数の被災建築物等の解体・補修や、大量の廃棄物が発生することから、アスベストの飛散のリスクが高まる。廃棄物を適切に除去、分別し、周辺住民や解体等工事に従事する作業員への曝露防止の措置を図ることが重要であり、そのためには平時よりも迅速にアスベスト検査できる方法が必要であった。
【0004】
このことに対応して、特許文献3には、簡単かつ低コストの構成でありながら、検出対象物(検査対象物)が特定物質(例えばアスベスト)を含んでいるか否かを、検出対象物から試料を抽出等して作成することなく、直接的かつ迅速に検出することができる特定物質検出装置として、検出対象物に近赤外線領域を含む照明光を照射する照明手段と、 特定物質に対応した所定波長の近赤外線光を通過させる近赤外分光フィルタを介して、検出対象物を撮影して画像データを取得する撮影手段と、 撮影手段により取得された画像データに基づいて、画素毎に前記所定波長の近赤外線光の反射強度データを取得し、該取得した反射強度データに基づいて画素毎の吸収ピークレベル推定値を取得し、該取得した吸収ピークレベル推定値に基づいて、検出対象物に特定物質が含まれているか否かを画素毎に検出する検出手段とを含んで構成した特定物質検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-49867号公報
【特許文献2】特開2011-33472号公報
【特許文献3】特開2013-64735公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載の特定物質検出装置においても、照明手段、拡散板、近赤外分光フィルタ、撮影手段の近赤外イメージングセンサ、検出手段のパーソナルコンピュータ等の比較的大型の機材を使用し、さらにこれらの機材を有線接続するため、作業員にとって非常に嵩張るものとなっている。
【0007】
本発明は、検出対象物が特定物質を含んでいるか否かを検出する作業に関わる作業員の利便性を向上できる検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明の検出システムは、個人携帯可能であり、検出対象物を撮影して画像データを取得する撮影手段と、個人携帯可能であり、前記撮影手段と無線通信可能であり、前記撮影手段により取得された前記画像データに基づいて、前記検出対象物に特定物質が含まれているか否かを検出する個人携帯端末と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明の検出システムは、個人携帯可能であり、検出対象物を撮影して画像データを取得する撮影手段と、個人携帯可能であり、無線ローカルネットワークを構築する無線ローカルネットワークルータと、個人携帯可能であり、前記無線ローカルネットワークルータを介して前記撮影手段と無線通信可能であり、前記撮影手段により取得された前記画像データに基づいて、前記検出対象物に特定物質が含まれているか否かを検出する個人携帯端末と、を備え、前記特定物質は、アスベストであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明の検出システムは、請求項1または2に記載の検出システムであって、前記撮影手段が前記検出対象物を撮影する際に、前記撮影手段と前記検出対象物の距離を一定の間隔に保つ補助具を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明における検出システムによって、検出対象物が特定物質を含んでいるか否かを検出する作業に関わる作業員の利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る検出システムを示す構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る検出システムのデジタルスコープ及び固定用台座を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る検出システムのデジタルスコープ及び固定用台座の組み立てた状態を示す斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る検出システムのデジタルスコープの回路構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る検出システムのスマートフォンの回路構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る検出システムを用いたアスベスト検出作業における試料採取時に使用される作業服及び使用器具を示す斜視図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る検出システムを用いたアスベスト検出作業における試料採取時に使用される作業服及び使用器具を示す斜視図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る検出システムを用いたアスベスト検出作業における撮像作業を示すフローチャートである。
図9】本発明の第1の実施形態に係る検出システムを用いたアスベスト検出作業における全体の処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2の実施形態に係る検出システムのデジタルスコープの先端側及び補助具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
<第1の実施形態の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムを示す構成図である。図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムのデジタルスコープを示す斜視図である。図2(b)は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムの固定用台座を示す斜視図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムのデジタルスコープ及び固定用台座の組み立てた状態を示す斜視図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムのデジタルスコープの回路構成を示すブロック図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムのスマートフォンの回路構成を示すブロック図である。
【0015】
<検出システムの全体構成>
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る検出システム1は、工事現場等に持ち込まれるものであり、デジタルマイクロスコープ2と、一般的にモバイルWi-Fi(登録商標)ルーターと呼ばれる携帯型無線ローカルネットワークルータ(携帯型無線LANルータ)3と、携帯端末のスマートフォン4とから構成されている。
【0016】
通信アンテナ5と通信会社6は、携帯型無線LANルータ3と遠距離通信を行うようになっている。
【0017】
携帯型無線LANルータ3は、デジタルマイクロスコープ2及びスマートフォン4と無線ローカルネットワークを構築する。
【0018】
また、デジタルマイクロスコープ2とスマートフォン4は、携帯型無線LANルータ3を介さずに直接無線通信することも可能である。
【0019】
スクレーパー7により採取された試料(検出対象物)8は、試料ケース9に乗せられる。
【0020】
デジタルマイクロスコープ2は、固定用台座10にとりつけられた状態、試料(検出対象物)8を撮影して画像データを取得する撮影手段になっている。
【0021】
スマートフォン4は、個人携帯可能であり、前記携帯型無線LANルータ3を介して前記デジタルマイクロスコープ2と無線通信可能であり、前記デジタルマイクロスコープ2により取得された前記画像データに基づいて、前記試料(検出対象物)8に特定物質(本実施形態の場合、アスベスト)が含まれているか否かを検出する。
【0022】
<デジタルマイクロスコープ及び固定用台座の構成>
図2(a)において、デジタルマイクロスコープ2は、ペン型のケース21の先端側に、カメラユニット22とLED発光部23を設け、ケース21の先端側の縁部に透明樹脂を先細りの筒状に形成した保護カバー24を取り付けたものである。
【0023】
ケース21の側面には、先端側から順に倍率ダイヤル25、起動/撮影ボタン26、LEDスイッチ27が設けられている。
【0024】
図2(b)において、固定用台座10は、下から順にベース31、アーム32、ホルダ33で構成されている。
【0025】
ベース31は、アーム32の下端側を垂直軸で回転可能な状態で取り付けている。アーム32の下端側は、ベース31に対して水平方向を軸として揺動可能になっている。アーム32の上端側は、水平方向を軸としてホルダ33を揺動可能な状態で取り付けている。
【0026】
ホルダ33は、弾力性のある合成樹脂で形成されていり、図3に示すように、C字状に形成された保持部34にデジタルマイクロスコープ2のケース21を取り付けるようになっている。
【0027】
<デジタルマイクロスコープの回路構成>
図4において、デジタルマイクロスコープ2の内部回路は、カメラユニット22と、LED発光部23と、LEDスイッチ27と、制御部41と、画像入力部42と、記憶部43と、ダイヤル入力部44と、ボタン入力部45と、近距離通信部46とから構成されている。
【0028】
カメラユニット22は、ズームレンズ及び撮像素子を備えており、試料(検出対象物)8を撮影して画像信号を出力する。画像入力部42は、制御部41からの制御に応じて、カメラユニット22の駆動制御を行い、カメラユニット22の画像信号を画像データに変換して制御部41に送信する。
【0029】
LED発光部23は、LEDスイッチ27のオン操作に基づく制御部41からの制御に応じてLEDを発光させて、試料(検出対象物)8の照明を行う。
【0030】
記憶部42は、制御部41の制御により、画像データを含む各種データの記憶及び読み出しを行う。
【0031】
ダイヤル入力部44は、倍率ダイヤル25の回転操作を検出しており、回転操作の検出結果を制御部41に送信する。制御部41は、ダイヤル入力部44の回転操作の検出結果に応じて画像入力部42を制御し、カメラユニット22のレンズの倍率を変更する。
【0032】
ボタン入力部45は、起動/撮影ボタン26の押圧操作を検出しており、押圧操作の検出結果を制御部41に送信する。制御部41は、ボタン入力部45からの押圧操作の検出結果に応じて、カメラ機能の起動、撮影等を行う。
【0033】
近距離通信部46は、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)による無線LAN等の近距離無線通信により携帯端末と通信を行うことができるユニットである。
【0034】
本検出システム1では、近距離通信部46は、Wi-Fi(登録商標)による無線LANにより携帯型無線LANルータ3と接続する。
【0035】
制御部41は、画像入力部42が取得した試料(検出対象物)8の画像データを近距離通信部46により携帯型無線LANルータ3またはスマートフォン4に送信する。
【0036】
携帯型無線LANルータ3は、近距離通信部46からの試料(検出対象物)8の画像データをスマートフォン4に送信する。
【0037】
<スマートフォンの回路構成>
【0038】
スマートフォン4は、制御部51と、遠距離通信部52と、近距離通信部53と、表示パネル54と、表示画面制御部55と、タッチパネル56と、タッチパネル制御部57と、カメラユニット58と、画像入力部59と、記憶部60とを備える。
【0039】
制御部51は、CPU61と、GPU62とを備えている。
【0040】
遠距離通信部52は、アンテナを用いて通信アンテナ5と通信会社6による遠距離通信回線に接続することでインターネットに接続する。
【0041】
近距離通信部53は、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)による無線LAN等の近距離無線通信により他の携帯端末やデジタルマイクロスコープ2と通信を行うことができるユニットである。
【0042】
本システムでは、近距離通信部53は、Wi-Fi(登録商標)による無線LANにより携帯型無線LANルータ3と接続する。
【0043】
これら遠距離通信部52及び近距離通信部53は、制御部51のCPU61に接続され、CPU61により制御される。
【0044】
スマートフォン4の筐体63(図1参照)の表面には、裏から順に表示パネル54及びタッチパネル56が重ねて設けられている。
【0045】
スマートフォン4の内部には、表示画面制御部55が設けられている。表示画面制御部55は、制御部51のGPU62による制御に基づいて、表示パネル54に表示される画像・動画等を制御する。
【0046】
タッチパネル56は、表示パネル54の表側に設けられている。タッチパネル56は、透明の素材で形成され、タッチパネル制御部57の制御により、ユーザの指による接触を検出する。タッチパネル制御部57は、タッチパネル56の検出結果を判別し、この判別結果をユーザのタッチ操作データとして制御部51のCPU61に送信する。
【0047】
カメラユニット58は、スマートフォン4の筐体63(図1参照)の裏側に設けられている。
【0048】
カメラユニット58は、スマートフォン4の裏側から撮影を行い、映像信号を生成して画像入力部59に送信する。画像入力部59は、カメラユニット58からの映像信号からビデオデータを生成して制御部51のGPU62に送信する。
【0049】
制御部51のGPU62は、カメラユニット58からのビデオデータの画像処理を行うとともに、スマートフォン4に予めインストールされた特定物質検出専用のアプリケーションにより、携帯型無線LANルータ3からの近距離通信部53を介して受信した試料(検出対象物)8の画像データ、またはデジタルマイクロスコープ2から直接受信した画像データに基づいて、試料(検出対象物)8に特定物質(アスベスト)が含まれているか否かを検出する。
【0050】
また、制御部51には記憶部60が接続される。記憶部60には、各種プログラム、各種コンテンツ(通信会社6から提供されたコンテンツである画像、スマートフォン4を利用するユーザが独自に作成したコンテンツ等を含む)、スピーカ(図示略)に出力するための音声、表示パネル54に表示するための画像、動画、画像入力部59からのビデオデータ、GPU62による画像判別結果、ユーザによる各種設定等が保存される。
【0051】
<検出システムによるアスベスト検出作業>
図6は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムを用いたアスベスト検出作業における試料採取時に使用される作業服及び使用器具を示す斜視図である。図7は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムを用いたアスベスト検出作業における試料採取時に使用される作業服及び使用器具を示す斜視図である。図8は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムを用いたアスベスト検出作業における撮像作業を示すフローチャートである。
【0052】
次に、図6を用いて試料採取時に使用される作業服及び使用器具を説明する。 図6において、作業者71は、アスベスト検出作業において、作業衣(又は保護衣)81、保護帽82、防塵マスク83、防護メガネ84、薄ビニール手袋85、軍手86、カメラ87、安全帯88、腕章89、懐中電灯90、スクレーパー91等を使用する。
【0053】
作業衣(又は保護衣)81は、粉塵付着が少ない生地を用いており、作業者71が上半身に着用する。粉塵 保護帽82は、作業者71が頭に着用する。
【0054】
防塵マスク83は、状況に応じて作業者71が顔の鼻と口を覆うように着用する。 防護メガネ84は、状況に応じて作業者71が顔の両目を覆うように着用する。
【0055】
薄ビニール手袋85は、作業者71が両手(図6では、右手側のみ表示)に着用するものであり、袖口のテーピングを行う。
【0056】
軍手86は、作業者71が薄ビニール手袋85の上から両手(図6では、左手側のみ表示)に着用するものであり、アスベスト検出作業終了後に破棄する。
【0057】
カメラ87は、ストラップを短くして作業者71の首に掛ける。 安全帯88は、状況に応じて作業者71がウエストに着用する。
【0058】
腕章89は、状況に応じて作業者71が左腕に着用するものであり、名札等が記載されている。 懐中電灯90、スクレーパー91は、作業者71が携帯するものである。
【0059】
次に、図7を用いて試料(検出対象物)の採取作業について説明する。 図7(a)に示すように、作業者71は、スプレ101を用いて、吹付け材で表面が覆われた屋根102に飛散抑制剤103を吹き付け、屋根102の吹付け材を湿潤化させる。
【0060】
この後、図7(b)に示すように、作業者71は、スクレーパー91を用いて屋根102の表面の吹付け材の一部104を剥ぎ取り、試料(検出対象物)8(図1参照)としてトレー105に収納する。
【0061】
この後、図7(c)に示すように、作業者71は、屋根102の一部104(図7(b)参照)が剥ぎ取られた部分106及びその周辺107に、スプレを用いて飛散防止剤108を吹き付け、残留した吹付け材とともに飛散防止剤108を固化させる。
【0062】
<検出システムによる情報処理>
以下、図8を用いてアスベスト検出作業における撮像作業を説明する。
図8に示すように、アスベスト検出作業における撮像作業では、まず、作業者71は、ステップS1において、デジタルマイクロスコープ2を専用の固定用台座10の保持部34にセットする。
【0063】
次に、作業者71は、ステップS2において、図7(b)で採取した試料(検出対象物)8をやくさじにより試料ケース9の上にのせる。尚、試料(検出対象物)8は、必要に応じて前処理を行う。
【0064】
次に、作業者71は、ステップS3において、デジタルマイクロスコープ2の起動/撮影ボタン26を一回押すことでデジタルマイクロスコープ2の電源を起動し、デジタルマイクロスコープ用のアプリを起動する。
【0065】
この状態で、作業者71は、ステップS4において、スマートフォン4でデジタルマイクロスコープ2のWi-Fi(登録商標)による無線LANの電波を探す。この場合、スマートフォン4は、デジタルマイクロスコープ2のWi-Fi(登録商標)の電波を直接探してもよく、携帯型無線LANルータ3を介してデジタルマイクロスコープ2のWi-Fi(登録商標)の電波を探してもよい。
【0066】
これにより、ステップS5において、スマートフォン4とデジタルマイクロスコープ2の通信接続が確立する。
【0067】
尚、スマートフォン4がデジタルマイクロスコープ2以外のWi-Fi(登録商標)を用いた機器と自動接続されない環境の場合、2回目起動時以降はステップS4、S5の処理は不要となる。
【0068】
次に、作業者71は、ステップS6において、デジタルマイクロスコープ2の倍率ダイヤル25を操作して倍率調整を行うことで、デジタルマイクロスコープ2のピントを合わせる。
【0069】
次に、作業者71は、ステップS7において、デジタルマイクロスコープ2の起動/撮影ボタン26をさらに一回押す(または、スマートフォン4のアプリ内に表示されている撮影ボタンを押す)ことで、試料(検出対象物)8の撮像を行う。
【0070】
<検出システムによる情報処理>
以下、図9を用いてアスベスト検出作業における撮像作業を説明する。
図9は、本発明の第1の実施形態に係る検出システムを用いたアスベスト検出作業における全体の処理を示すフローチャートである。
【0071】
図9に示すように、検出システム1の情報処理では、まず、ステップS11において、作業者71がデジタルマイクロスコープ2の起動/撮影ボタン26を一回押すことでデジタルマイクロスコープ2の電源を起動し、デジタルマイクロスコープ用のアプリを起動し、 ステップS12において、作業者71がスマートフォン4を操作して専用のアプリ(AI物体検出用のアプリ、アスベストAIチェッカー)を起動することで、専用のアプリをAI物体検出プラットフォーム{Microsoft Azure(登録商標)}と連携させる。
【0072】
尚、専用のアプリを連携させるプラットフォームとしては、Microsoft Azure(登録商標)以外のプラットフォームを利用することも可能である。
【0073】
次に、ステップS13において、デジタルマイクロスコープ2とスマートフォン4を、各々に内蔵されている近距離通信部{Wi-Fi(登録商標)}にて連携させ(図9では携帯型無線LANルータ3を介して通信を行っているが、デジタルマイクロスコープ2とスマートフォン4が直接通信を行うことも可能)、デジタルマイクロスコープ2で撮影した写真をスマートフォン4内に保存する準備を行う。
【0074】
この後、デジタルマイクロスコープ2は、ステップS14において、デジタルマイクロスコープ2の倍率ダイヤル25を操作して倍率調整を行うことで、デジタルマイクロスコープ2のピントを合わせる。
【0075】
次に、デジタルマイクロスコープ2は、ステップS15において、作業者71がデジタルマイクロスコープ2の起動/撮影ボタン26をさらに一回押す(または、スマートフォン4のアプリ内に表示されている撮影ボタンを押す)ことで、制御部41及び画像入力部42を用いて、カメラユニット22を制御して試料(検出対象物)8の撮像処理を行う。
【0076】
次に、デジタルマイクロスコープ2の画像入力部42は、ステップS16において、制御部41からの制御に応じて画像処理を行い、カメラユニット22の画像信号を画像データに変換して制御部41に送信する。
【0077】
次に、デジタルマイクロスコープ2の制御部41は、ステップS17において、画像データ出力処理として、画像入力部42からの画像データを送信用のデータに変換して、近距離通信部46を用いて携帯型無線LANルータ3に送信する。
【0078】
携帯型無線LANルータ3は、ステップS18において、デジタルマイクロスコープ2からの送信用のデータの中継処理を行い、スマートフォン4に送信する。
【0079】
スマートフォン4は、ステップS19において、画像データ入力処理として、携帯型無線LANルータ3からの送信用のデータを近距離通信部53で受信し、受信した送信用のデータから、デジタルマイクロスコープ2が撮像した画像データを復号して、記憶部60に記憶する。この場合、記憶部60には、デジタルマイクロスコープ2により複数回撮像された画像データが蓄積される。
【0080】
この後、スマートフォン4のCPU61は、ステップS20において、作業者71によるタッチパネル56の操作により、専用のアプリ(AI物体検出用のアプリ、アスベストAIチェッカー)の判定画面選択処理を行い、デジタルマイクロスコープ2が撮像した複数の画像データを判定画面に複数の写真として表示する。
【0081】
この後、スマートフォン4のCPU61は、専用のアプリにより、ステップS21において、作業者71によるタッチパネル56の操作に基づいて判定を行う写真の選択を行い、ステップS22において、作業者71によるタッチパネル56の操作に基づいて専用のアプリにより表示された判定ボタンの操作入力処理を行う。
【0082】
これにより、スマートフォン4のCPU61は、ステップS23において、選択された写真の画像データを、専用のアプリにより、GPU62に判定させることで、試料(検出対象物)8にアスベストが含まれる可能性を判定し、この判定結果を、ステップS24において、スマートフォン4の表示パネル54に表示(例えば、アスベスト含有の可能性86%の表示)する。
【0083】
尚、検出システム1において、本アプリでアスベストであると判定された場合、本格的な検査は「しない」予定となる。逆にアスベストがないと判定された場合は、法律上、本格的な検査が必要となる。本アプリで「アスベストあり」と判定されたものを「アスベスト含有みなし」として処理することで、分析費用、工期を短縮することができる。
【0084】
また、本格的な検査の結果を検出システム1のAI物体検出用のアプリ(アスベストAIチェッカー)にフィードバックなどして、AIの精度を上げる。また、例えば判定精度向上のため、撮影前に試料の断面をトーチ等で炙ったり、インク等を塗ったりするなどの作業を行ってもよい。
【0085】
<第1の実施形態の構成及び効果>
このような実施形態の第1の構成及び効果を纏めて説明すると、検出システム1は、個人携帯可能であり、試料(検出対象物)8を撮影して画像データを取得する撮影手段(デジタルマイクロスコープ2)と、個人携帯可能であり、前記撮影手段と無線通信可能であり、前記撮影手段により取得された前記画像データに基づいて、前記試料(検出対象物)8に特定物質(アスベスト)が含まれているか否かを検出する個人携帯端末(スマートフォン4)と、を備えることを特徴とする。
【0086】
また、検出システム1は、個人携帯可能であり、試料(検出対象物)8を撮影して画像データを取得する撮影手段(デジタルマイクロスコープ2)と、個人携帯可能であり、無線ローカルネットワークを構築する無線ローカルネットワークルータ(携帯型無線LANルータ3)と、個人携帯可能であり、前記無線ローカルネットワークルータを介して前記撮影手段と無線通信可能であり、前記撮影手段により取得された前記画像データに基づいて、前記試料(検出対象物)8に特定物質が含まれているか否かを検出する個人携帯端末(スマートフォン4)と、を備え、前記特定物質は、アスベストであることを特徴とする。
【0087】
このような構成を有することから、第1の実施形態の検出システム1は、個人携帯可能なデバイスのみで試料(検出対象物)8が特定物質(アスベスト)を含んでいるか否かを検出できるので、この作業に関わる作業員の利便性を向上できる。
【0088】
尚、図9を用いた説明では、デジタルマイクロスコープ2とスマートフォン4が携帯型無線LANルータ3を介して通信を行うことで、試料(検出対象物)8が特定物質(アスベスト)を含んでいるか否かを検出したが、デジタルマイクロスコープ2とスマートフォン4が直接通信を行うことで試料(検出対象物)8が特定物質(アスベスト)を含んでいるか否かを検出するようにしてもよく、携帯型無線LANルータ3を使用せずに検出システムを構成することも可能である。
【0089】
<第1の実施形態の変形例>
本発明の第1の実施形態の変形例では、デジタルマイクロスコープ2を使用せず、個人携帯端末(スマートフォン4)のカメラ(カメラユニット58)の前にクリップ式のマクロレンズを装着し、カメラ(カメラユニット58)を用いて試料(検出対象物)8を撮影して画像データを取得し、取得された前記画像データに基づいて、前記試料(検出対象物)8に特定物質(アスベスト)が含まれているか否かを検出するように構成してもよい。
【0090】
この変形例の場合も、アスベストがないと判定しても、再度、本格的な検査をすることになる。この場合、本格的な検査の結果を個人携帯端末(スマートフォン4)のAI物体検出用のアプリ(アスベストAIチェッカー)にフィードバックなどして、AIの精度を上げる。また、例えば判定精度向上のため、撮影前に試料の断面をトーチ等で炙ったり、インク等を塗ったりするなどの作業を行ってもよい。
【0091】
<第2の実施形態の構成>
図10は、本発明の第2の実施形態に係る検出システムのデジタルスコープの先端側及び補助具を示す斜視図である。
【0092】
図10に示すように、デジタルマイクロスコープ201は、ペン型のケース202の先端側に、カメラユニット203を設け、ケース202の先端側の縁部に透明樹脂を先細りの筒状に形成した保護カバー204を取り付けたものである。
【0093】
デジタルマイクロスコープ201は、図1乃至図9に示した第1の実施形態と同様に、携帯型無線LANルータ3及び個人携帯端末(スマートフォン4)と無線通信を行う。
【0094】
補助具301は、前記撮影手段のデジタルマイクロスコープ201が前記試料(検出対象物)8を撮影する際に、前記撮影手段と前記試料(検出対象物)8の距離を一定の間隔に保つものである。
【0095】
補助具301は、透明樹脂で形成された本体302と照明手段303とで構成される。本体302は、下側及び上側の円盤部311、312を半体ファネル面部313で接続した形状になっている。下側の円盤部311は、上側の円盤部312より大径に形成されている。補助具301の半体ファネル面部313の反対側は、開口部314となっている。
【0096】
半体ファネル面部313の外側には、照明手段303の電源部321が取り付けられる。
【0097】
上側の円盤部312の上面の縁寄りには、LEDによる発光部322が取り付けられている。電源部321と発光部322は、電源コード323によって接続されている。電源部321は、ボタン電池を収納し、電源スイッチが設けられ、電源スイッチをオンすることで電源コード323を介して発光部322に電力を供給して発光させる。
【0098】
発光部322は、上側の円盤部312を介して下側の円盤部311側に照明を行う。試料(検出対象物)8が乗せられた試料ケース9は、開口部314を介して下側の円盤部311の上面に乗せられる。下側の円盤部311に乗せられた試料ケース9内の試料(検出対象物)8は、上側の円盤部312を透過した発光部322の照明光により照明される。
【0099】
マイクロスコープ201は、撮像を行う際に、保護カバー204の先端を上側の円盤部312の上面に押し当て、起動/撮影ボタンを押して撮像を行う。
【0100】
この後のマイクロスコープ201、携帯型無線LANルータ3及び個人携帯端末(スマートフォン4)のデータ処理は、図1乃至図9に示した第1の実施形態と同様である。
【0101】
<第2の実施形態の構成及び効果>
このような第2の実施形態の構成及び効果を纏めて説明すると、第2の実施形態の検出システムは、撮影手段(マイクロスコープ201)が前記試料(検出対象物)8を撮影する際に、前記撮影手段と前記試料(検出対象物)8の距離を一定の間隔に保つ補助具301を更に備える。
【0102】
第2の実施形態に係る検出システムは、図1乃至図9示した第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、補助具301により撮影距離(マイクロスコープ201と試料の距離を一定化し、試料の状態(明るさ)を一定化することにより、測定誤差を少なくすることができる。そして、測定誤差が少なくなれば、AIの学習精度の向上も図れる。
【0103】
<第2の実施形態の第1の変形例>
本発明の第2の実施形態の変形例では、デジタルマイクロスコープ201を使用せず、個人携帯端末(スマートフォン4)のカメラ(カメラユニット58)の撮像面を補助具301の上側の円盤部312の上面に押し当て、個人携帯端末(スマートフォン4)に表示される撮影ボタンを押して撮像を行うように構成してもよい。これにより、個人携帯端末(スマートフォン4)は、画像データを取得し、取得された前記画像データに基づいて、前記試料(検出対象物)8に特定物質(アスベスト)が含まれているか否かを検出する。
【0104】
このような第2の実施形態の第1の変形例の場合も、アスベストがないと判定しても、再度、本格的な検査をすることになる。この場合、本格的な検査の結果を個人携帯端末(スマートフォン4)のAI物体検出用のアプリ(アスベストAIチェッカー)にフィードバックなどして、AIの精度を上げる。また、例えば判定精度向上のため、撮影前に試料の断面をトーチ等で炙ったり、インク等を塗ったりするなどの作業を行ってもよい。
【0105】
<第2の実施形態の第2の変形例>
第2の実施形態の第2の変形例では、図10に示した補助具301における本体302の上側の円盤部312のデジタルスコープ2を押し当てる部分を、デジタルスコープ2の幅に合わせて円形に穴をあけ、デジタルスコープの先端を穴に貫通、固定させるように構成する。
【0106】
このような第2の実施形態の第2の変形例によれば、撮影操作が更に簡易になるとともに、カメラと試料との距離も近くなるので、より拡大されて撮影できる。
【0107】
尚、第1及び第2の実施形態及びこれらの変形例において、特定物質として、アスベストを適用したが、特定物質を他の物質、例えば、毒性の植物、鉛等の重金属等に適用することも可能である。
【0108】
また、第1及び第2の実施形態において、試料(検出対象物)8として、屋根102の吹付け材を適用したが、検出対象物としては、例えば、建造物の保温材、断熱材、成形板、建築用仕上塗材等、各種適用可能である。
【0109】
さらに、第1及び第2の実施形態において、試料(検出対象物)8の採取用の器具として、スクレーパー91を使用したが、採取用の器具としては、例えば、タガネ、ドライバ、カッターナイフ、ハンマ等、各種使用可能である。
【0110】
さらに、第1及び第2の実施形態において、撮影手段としては、デジタルマイクロスコープ2に限らず、の撮影手段、例えば、他通信機能を備えたデジタルカメラを使用することも可能である。
【0111】
さらに、各手段をそれぞれ別個のものとして構成するのではなく、複数の機能を統合した手段として構成してもよい。
【0112】
さらに、上記第1及び第2の実施形態及びこれらの変形例は、あくまでも、現在のところの最良の形態またはそれに近い形態にすぎない。
さらに、データ処理の順序なども、所定の効果を有するのであれば、適宜変更可能である。
【0113】
<定義等>
本発明における特定物質は、撮影手段で撮像可能なものであればどのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 :検出システム2 :デジタルマイクロスコープ3 :携帯型無線LANルータ4 :携帯端末のスマートフォン5 :通信アンテナ6 :通信会社7 :スクレーパー8 :試料9 :試料ケース10 :固定用台座
21 :ケース
22 :カメラユニット
23 :LED発光部
24 :保護カバー
25 :倍率ダイヤル
26 :起動/撮影ボタン
27 :LEDスイッチ
31 :ベース
32 :アーム
33 :ホルダ
34 :保持部
41 :制御部42 :画像入力部43 :記憶部44 :ダイヤル入力部45 :ボタン入力部46 :近距離通信部51 :制御部52 :遠距離通信部53 :近距離通信部54 :表示パネル55 :表示画面制御部56 :タッチパネル57 :タッチパネル制御部58 :カメラユニット59 :画像入力部60 :記憶部61 :CPU62 :GPU71 :作業者81 :作業衣(又は保護衣)82 :保護帽83 :防塵マスク84 :防護メガネ85 :薄ビニール手袋86 :軍手87 :カメラ88 :安全帯89 :腕章90 :懐中電灯91 :スクレーパー101 :スプレ102 :屋根103 :飛散抑制剤104 :一部105 :トレー106 :部分107 :周辺108 :飛散防止剤
201 :デジタルマイクロスコープ
202 :ケース
203 :カメラユニット
204 :保護カバー
301 :補助具
302 :本体
303 :照明手段
311 :円盤部
312 :円盤部
313 :半体ファネル面部
314 :開口部
321 :電源部
322 :発光部
323 :コード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10