(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015610
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】畳表の転写方法、畳表
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20240130BHJP
D06P 5/26 20060101ALI20240130BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240130BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240130BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B44C1/17 F
D06P5/26
B41M5/00 120
C09D11/30
B41M5/00 100
B41M3/06 Z
B44C1/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117789
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】河崎 麦雄
(72)【発明者】
【氏名】荻原 正浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠介
(72)【発明者】
【氏名】藤森 信幸
【テーマコード(参考)】
2H113
2H186
3B005
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113BA00
2H113BA22
2H113BA23
2H113BA24
2H113BC01
2H113DA25
2H113EA02
2H113EA04
2H113EA09
2H186AB05
2H186AB13
2H186AB17
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB53
3B005EB03
3B005EB05
3B005EB09
3B005FA06
3B005FB37
3B005GA05
4H157AA02
4H157BA12
4H157CA29
4H157DA90
4H157GA05
4H157HA01
4H157HA02
4H157HA13
4J039BC09
4J039BE09
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039GA05
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】畳表の転写において、画像品質を向上させる。
【解決手段】畳表の転写方法は、昇華性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含む着色インク組成物によって、中間転写媒体に印刷を行う印刷工程と、印刷された前記中間転写媒体から畳表に転写する転写工程と、を含む畳表の転写方法であって、前記転写工程は、加熱温度が170℃以上180℃以下、圧力が0.5kg/cm
2以上0.6kg/cm
2以下、加熱時間が60秒以上180秒以下、の条件で転写を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含む着色インク組成物によって、中間転写媒体に印刷を行う印刷工程と、
印刷された前記中間転写媒体から畳表に転写する転写工程と、を含む畳表の転写方法であって、
前記転写工程は、
加熱温度が170℃以上180℃以下、圧力が0.5kg/cm2以上0.6kg/cm2以下、加熱時間が60秒以上180秒以下、の条件で転写を行う、畳表の転写方法。
【請求項2】
請求項1に記載の畳表の転写方法であって、
前記印刷工程の後であり、前記転写工程の前に、
加熱温度が170℃以上180℃以下、加熱時間が60秒以上180秒以下、の条件で前記畳表を加熱するプレヒート工程を有する、畳表の転写方法。
【請求項3】
請求項2に記載の畳表の転写方法であって、
前記プレヒート工程において、
圧力が0.5kg/cm2以上0.6kg/cm2以下、の条件で前記畳表を加圧する、畳表の転写方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の畳表の転写方法によって生産された畳表。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳表の転写方法、及び畳表に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、畳表に油性下地インキをスクリーン印刷し、その油性下地インキ上面に水性カラーインキからなる絵柄をインクジェット式カラー印刷機により印刷する畳の印刷方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、畳表が、例えば、フッ素などで表面加工されたものが存在するため、従来の印刷方法では、画像品質が低下してしまう、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
畳表の転写方法は、昇華性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含む着色インク組成物によって、中間転写媒体に印刷を行う印刷工程と、印刷された前記中間転写媒体から畳表に転写する転写工程と、を含む畳表の転写方法であって、前記転写工程は、加熱温度が170℃以上180℃以下、圧力が0.5kg/cm2以上0.6kg/cm2以下、加熱時間が60秒以上180秒以下、の条件で転写を行う。
また、畳表は、上記畳表の転写方法により生産される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
まず、畳表の転写方法について説明する。
図1に示すように、畳表の転写方法は、昇華性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含む着色インク組成物によって、中間転写媒体Maに印刷を行う印刷工程(ステップS11)と、印刷された中間転写媒体Maから畳表Mに転写する転写工程(ステップS12)と、を含む。
【0008】
まず、印刷工程(ステップS11)では、記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに対して着色インク組成物を吐出して、中間転写媒体Maに画像等を印刷(記録)する。
【0009】
図2に示すように、記録装置10は、中間転写媒体Maに着色インク組成物を付着させるインクジェットプリンターである。記録装置10は、搬送部11と、記録部12とを備える。搬送部11は、記録装置10に給送された中間転写媒体Maを記録部12へと搬送し、記録後の中間転写媒体Maを記録装置10の外に排出する。具体的には、搬送部11は、各送りローラーを有し、送られた中間転写媒体Maを副走査方向(+Y方向)へ搬送する。
【0010】
記録部12は、搬送部11から搬送された中間転写媒体Maに対して着色インク組成物を液滴として吐出するノズルを有するヘッド13と、ヘッド13を搭載するキャリッジ14と、キャリッジ14を中間転写媒体Maの主走査方向(X軸に沿った方向)に移動させるキャリッジ移動機構15と、を備える。
【0011】
本実施形態のヘッド13は、中間転写媒体MaのX軸に沿った幅寸法よりも小さい長さである。このため、ヘッド13がX軸に沿った方向に移動し、複数パス(マルチパス)することで記録が行われる。なお、パスを主走査ともいう。パスとパスの間には中間転写媒体Maを+Y方向に搬送する。これを副走査ともいう。すなわち、主走査と副走査とを交互に行って中間転写媒体Maに対する記録処理が実行される。
なお、記録装置10は、上記シリアル方式に限定されず、ライン方式の装置であってもよい。
【0012】
次に、着色インク組成物について説明する。
着色インク組成物は、昇華性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含み、必要に応じて、界面活性剤、分散剤等を含んでいてもよい。
【0013】
・昇華性染料
本実施形態においては「昇華性染料」とは、加熱により昇華する性質を有する染料である。このような昇華性染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.Disperse Yellow 3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.Disperse Orange 1、1:1、5、20、25:1、33、56、76;C.I.Disperse Brown 2;C.I.Disperse Red11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.Disperse Violet 8、17、23、27、28、29、36、57;C.I.Disperse Blue14、19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359等が挙げられる。
【0014】
・水溶性有機溶剤
水溶性有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、グリセリン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等の含窒素溶剤;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及びtert-ペンタノール等のアルコール類が挙げられる。なお、水溶性有機溶剤は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0015】
このなかでも、グリセリン、グリコール類、グリコールモノエーテル類が好ましく、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。このような水溶性有機溶剤を用いることにより、低Duty部における転写性がより向上する傾向にある。
【0016】
水溶性有機溶剤の含有量は、着色インク組成物の総量に対して、好ましくは7.5~35質量%が好ましく、より好ましくは10~30質量%であり、さらに好ましくは15~25質量%である。水溶性有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、吐出安定性がより向上し、また、中間転写媒体への濡れ性がより向上し、低Duty部における転写性がより向上する傾向にある。
【0017】
・水
水の含有量は、着色インク組成物の総量に対して、好ましくは60~90質量%が好ましく、より好ましくは65~85質量%であり、さらに好ましくは70~80質量%である。
【0018】
・界面活性剤
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。なお、界面活性剤は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0019】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。
【0020】
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。
【0021】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。
【0022】
このなかでもシリコーン系界面活性剤がより好ましい。このような界面活性剤を用いることにより、吐出安定性がより向上し、また、中間転写媒体への濡れ性がより向上し、低Duty部における転写性がより向上する傾向にある。
【0023】
界面活性剤の含有量は、着色インク組成物の総量に対して、好ましくは0.1~2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.2~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.3~1.0質量%である。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、吐出安定性がより向上し、また、中間転写媒体への濡れ性がより向上し、低Duty部における転写性がより向上する傾向にある。
【0024】
・分散剤
着色インク組成物は分散剤を含んでいてもよい。分散剤を含むことにより、昇華性染料の分散安定性がより向上する傾向にあり、保存安定性や吐出安定性等がより向上する傾向にある。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、高分子分散剤が挙げられる。なお、分散剤は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0025】
アニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、β - ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、及び、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物が挙げられる。
【0026】
上記芳香族スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸とβ-ナフトールスルホン酸との混合物、クレゾールスルホン酸と2-ナフトール-6-スルホン酸との混合物、リグニンスルホン酸等が挙げられる。
【0027】
ノニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0028】
高分子分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリル酸塩、スチレン-アクリル酸共重合物、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合物等が挙げられる。
【0029】
分散剤の含有量は、昇華性染料の総量に対して、好ましくは1~200質量%であり、より好ましくは50~150質量%である。分散剤の含有量が上記範囲であることにより、昇華性染料の分散安定性がより向上する傾向にあり、保存安定性や吐出安定性等がより向上する傾向にある。
【0030】
・その他の添加剤
着色インク組成物は、さらに必要に応じて、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、pH調整剤(例えば、トリエタノールアミン、アジピン酸、水酸化カリウム)、又は溶解助剤、その他、通常のインクにおいて用いることができる各種添加剤を含んでもよい。なお、各種添加剤は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0031】
次に、中間転写媒体Maについて説明する。
中間転写媒体Maとしては、例えば、普通紙等の紙、インク受容層が設けられた記録媒体(インクジェット用専用紙、コート紙等で呼称される)等を用いることができるが、シリカ等の無機粒子でインク受容層が設けられた紙がより好ましい。これにより、中間転写媒体Maに付与された着色インク組成物が乾燥する過程で、記録面に滲み等が抑制された中間転写媒体Maを得ることができる。また、このような中間転写媒体Maであれば、さらに記録面の表面に昇華性染料を留めやすく、後の転写工程において、昇華性染料の昇華をより効率的に行うことができる。
【0032】
次いで、転写工程(ステップS12)について説明する。転写工程(ステップS12)では、転写装置20を用いて、印刷された中間転写媒体Maから畳表Mに画像を転写する。本実施形態の転写装置20は、畳表Mに対して中間転写媒体Maの着色インク組成物を熱圧着させる。
畳表Mは、畳を構成する一部材料であり、畳の表層部である。畳表Mは、経糸にイグサを織り込んで形成されたござ状部材である。
【0033】
図3に示すように、転写装置20は、電源装置やコントロール装置等を備えた装置本体21と、装置本体21に設けられた作業台22と、装置本体21に接続されたハンドル23と、ハンドル23の上下動に伴って上下動可能に設けられた加熱プレート24と、を備える。
加熱プレート24は所定の温度に設定可能である。さらに、装置本体21にはタイマーが取付けられており、所定の時間が経過すると作業者に知らせるようになっている。
【0034】
転写工程(ステップS12)では、まず、作業台22から加熱プレート24が離間した状態で、作業台22の上に畳表Mを載せる。次いで、畳表Mと中間転写媒体Maの記録面とが対向するように、畳表M上に中間転写媒体Maを載せる。次いで、ハンドル23を手前に引くことでハンドル23を下方に移動させる。これに伴って、加熱プレート24が下方に移動し、加熱プレート24で畳表M及び中間転写媒体Maを所定の圧力で押し圧する。これにより、中間転写媒体Maの昇華性染料を昇華させて畳表Mに熱圧着させる。その後、所定の時間が経過したらハンドル23を上方に引き上げる。これに伴い、加熱プレート24が上方に移動し、作業台22から加熱プレート24が離間する。その後、作業台22から畳表M及び中間転写媒体Maを取り出し、中間転写媒体Maを畳表Mから引き剥がす。これにより、画像が転写された畳表Mが形成される。
【0035】
ここで、転写工程(ステップS12)における加熱温度は、170℃以上180℃以下であることが好ましい。加熱温度が170℃未満である場合、畳表Mへの転写効率が低下してしまう。また、畳表Mに転写された画像の発色性が低下する傾向にある。一方、加熱温度が180℃を越える場合、畳表Mに加熱による変色が発生してしまうおそれがある。
なお、加熱温度は、例えば、中間転写媒体Maの厚み等の形態によって適宜設定可能である。
【0036】
また、加熱時間は、60秒以上180秒以下であることが好ましい。また、転写工程における圧力は、0.5kg/cm2以上0.6kg/cm2以下であることが好ましい。なお、加熱時間は、例えば、中間転写媒体Maの厚み等の形態や加熱温度によって適宜設定可能である。
これにより、表面加工された畳表Mであっても、高画質を実現することができる。
【0037】
なお、印刷工程(ステップS11)の後であり、転写工程(ステップS12)の前に、加熱温度が170℃以上180℃以下、加熱時間が60秒以上180秒以下、の条件で畳表Mを加熱するプレヒート工程を設けてもよい。なお、プレヒート工程は、転写装置20を用いて、畳表Mの転写される表面を加熱する。
これにより、転写前に畳表Mが加熱されるため、転写時に着色インク組成物の馴染みが向上し、さらに発色性を向上させることができる。
【0038】
さらに、上記プレヒート工程において、圧力が0.5kg/cm2以上0.6kg/cm2以下、の条件で畳表Mを加圧してもよい。
これにより、畳表Mの表面の毛羽立ち等が加熱プレート24によって押しつぶされるため、着色インク組成物の転写を円滑に行うことができる。
【0039】
なお、本実施形態の転写工程(ステップS12)の前に、畳表Mに対して、例えば、ポリエステル溶剤等を塗布する前処理は不要である。これにより、作業が容易となり、作業性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態の転写工程では、畳表Mに対して中間転写媒体Maを1枚単位で転写するバッチ処理としたが、これに限定されない。例えば、長尺の中間転写媒体Maが巻き重ねられたロール体、及び長尺の畳表Mが巻き重ねられたロール体を用いて、ロール・ツー・ロールの構成の装置によって連続して転写処理を実行してもよい。この場合、各ロール体から中間転写媒体Ma、畳表Mを繰り出す繰出し部と、画像が転写された畳表M及び転写処理後の中間転写媒体Maのそれぞれを巻き取る巻取り部と、を備える。そして、繰出し部と巻取り部との間に、カレンダーローラーを配置する。カレンダーローラーは、加熱・加圧ローラー対であり、搬送される中間転写媒体Ma及び畳表Mをニップすることで、中間転写媒体Ma及び畳表Mが加熱・加圧され、中間転写媒体Maの昇華性染料を昇華させて畳表Mに熱圧着させる。このようにすれば、畳表Mの生産性を向上させることができる。
【0041】
次に、実施例について説明する。
図4は、実施例及び評価結果を示す図である。
【0042】
1-1.実施例1
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、昇華性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含む着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、170℃であった。また、圧力は0.6kg/cm2であった。また、加熱時間は90sec.であった。
【0043】
1-2.実施例2
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、170℃であった。また、圧力は0.6kg/cm2であった。また、加熱時間は120sec.であった。
【0044】
1-3.実施例3
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、170℃であった。また、圧力は0.6kg/cm2であった。また、加熱時間は180sec.であった。
【0045】
1-4.実施例4
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、180℃であった。また、圧力は0.5kg/cm2であった。また、加熱時間は60sec.であった。
【0046】
1-5.実施例5
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、180℃であった。また、圧力は0.5kg/cm2であった。また、加熱時間は90sec.であった。
【0047】
1-6.実施例6
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、180℃であった。また、圧力は0.5kg/cm2であった。また、加熱時間は120sec.であった。
【0048】
1-7.比較例1
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、150℃であった。また、圧力は0.6kg/cm2であった。また、加熱時間は180sec.であった。
【0049】
1-8.比較例2
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、160℃であった。また、圧力は0.6kg/cm2であった。また、加熱時間は180sec.であった。
【0050】
1-9.比較例3
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、185℃であった。また、圧力は0.6kg/cm2であった。また、加熱時間は60sec.であった。
【0051】
1-10.比較例4
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、190℃であった。また、圧力は0.6kg/cm2であった。また、加熱時間は60sec.であった。
【0052】
1-11.比較例5
記録装置10を用いて、中間転写媒体Maに画像を印刷した。具体的には、実施例1と同様の着色インク組成物を液滴として中間転写媒体Maに吐出し、画像を形成した。なお、中間転写媒体Maは、実施例1で用いたものと同じ材料である。また、形成した画像データ、記録条件は実施例1と同じである。
次いで、転写装置20を用いて、中間転写媒体Maに形成された画像を畳表Mに転写した。
転写処理における加熱温度は、200℃であった。また、圧力は0.6kg/cm2であった。また、加熱時間は60sec.であった。
【0053】
2.評価方法
次に、評価方法について説明する。
【0054】
2-1-1.畳表Mの変色の評価方法
転写処理後、畳表Mの転写された表面を目視検査した。
2-1-2.畳表Mの変色の評価基準
畳表Mに変色が有るか否かで評価した。
【0055】
2-2-1.画像のにじみの評価方法
転写処理後、畳表Mの転写された画像を目視検査した。
2-2-2.画像のにじみの評価基準
A:にじみが全く無い。
B:にじみが殆ど無い。
C:にじみは多少有るが可。
D:にじみが見立ち不可。
【0056】
2-3-1.画像の発色性の評価方法
転写処理後、畳表Mの転写された画像を目視検査した。
2-3-2.画像の発色性の評価基準
A:発色性が非常に良い。
B:発色性が良い。
C:発色性が可。
D:発色性が低く不可。
【0057】
2-4.総合評価
A:優
B:良
C:可
D:不可
【0058】
3.評価結果
3-1.畳表Mの変色について
加熱温度が180℃以下である場合、畳表Mに変色は発生しないが、加熱温度が180℃を越えると、畳表Mに変色が発生することが分かった。
3-2.画像のにじみについて
加熱温度が180℃以下である場合、画像ににじみが殆ど無い傾向であることが分かった。
3-3.画像の発色性について
加熱温度が170℃以上である場合、画像の発色性が良好であることが分かった。
3-4.総合評価
比較例1から比較例5と比較して、実施例1から実施例6は良好な結果であった。
【符号の説明】
【0059】
10…記録装置、11…搬送部、12…記録部、13…ヘッド、14…キャリッジ、15…キャリッジ移動機構、20…転写装置、21…装置本体、22…作業台、23…ハンドル、24…加熱プレート、Ma…中間転写媒体、M…畳表。