(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015613
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュールおよびそれを用いたモータ駆動システム
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240130BHJP
H01L 25/00 20060101ALI20240130BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240130BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L25/00 B
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117792
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 大介
(72)【発明者】
【氏名】増田 徹
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高柳 雄治
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA02Y
5H770HA07Z
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA12
5H770QA17
5H770QA22
(57)【要約】
【課題】
スナバコンデンサを備えたパワー半導体モジュールにおいて、高電流密度化とスナバコンデンサの加熱防止を両立可能なパワー半導体モジュールを提供する。
【解決手段】
正極端子と、平面視した際に少なくとも一部が前記正極端子に重なって配置された負極端子と、前記正極端子から分岐された第1の配線と、前記負極端子から分岐された第2の配線と、平面視した際の前記正極端子と前記負極端子とが重なる位置の外側に配置され、前記第1の配線と前記第2の配線とを介して接続されたスナバコンデンサと、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極端子と、
平面視した際に少なくとも一部が前記正極端子に重なって配置された負極端子と、
前記正極端子から分岐された第1の配線と、
前記負極端子から分岐された第2の配線と、
平面視した際の前記正極端子と前記負極端子とが重なる位置の外側に配置され、前記第1の配線と前記第2の配線とを介して接続されたスナバコンデンサと、
を有することを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記第1の配線と前記第2の配線は、バスバーまたは絶縁基板上に設けられた配線パターンであることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記正極端子と前記第1の配線、および前記負極端子と前記第2の配線は、それぞれネジで接続されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記スナバコンデンサと前記第1の配線との接続部、および前記スナバコンデンサと前記第2の配線との接続部は、前記スナバコンデンサの同じ主面上に配置されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記第1の配線と前記第2の配線の少なくとも何れか一方に屈曲部を有することを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項6】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記正極端子と前記第1の配線に流れる電流の向きが互いに逆方向であり、
前記負極端子と前記第2の配線に流れる電流の向きが互いに逆方向であることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記第1の配線は、前記正極端子と略平行な部分を有し、
前記第2の配線は、前記負極端子と略平行な部分を有することを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項8】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記スナバコンデンサを複数有し、
前記複数のスナバコンデンサは、前記正極端子もしくは前記負極端子の仮想的な中心線を境に対称配置されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項9】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記正極端子は、第1の正極端子と第2の正極端子とを有し、
前記負極端子は、第1の負極端子と第2の負極端子とを有し、
平面視した際に、前記第1の正極端子と前記第1の負極端子との少なくとも一部が重なって配置され、
前記第2の正極端子と前記第2の負極端子との少なくとも一部が重なって配置されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記スナバコンデンサは、前記第1の正極端子と前記第2の負極端子との間に電気的に接続された第1のスナバコンデンサと、前記第2の正極端子と前記第1の負極端子との間に電気的に接続された第2のスナバコンデンサと、を有することを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記第1の正極端子から前記第1のスナバコンデンサを経由して前記第2の負極端子に至る電流経路と、前記第2の正極端子から前記第2のスナバコンデンサを経由して前記第1の負極端子に至る電流経路とが、略平行な部分を有することを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項12】
請求項9に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記パワー半導体モジュール内部で前記第1の負極端子と前記第2の負極端子間を接続する配線を有することを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れか1項に記載のパワー半導体モジュールを用いたモータ駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体モジュールの構造に係り、特に、スナバコンデンサを備えたパワー半導体モジュールに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、電力の交流-直流変換、直流-交流変換、或いは交流電力の周波数変換や直流電力の電圧変換などの機能を備える。このような変換機能を果たすために、電力変換装置は、スイッチング機能を備えたパワー半導体モジュールのON、OFF動作により電力を変換する電力変換回路を備える。
【0003】
パワー半導体モジュール内部では、放熱用の金属ベースの上に、配線パターンを形成した絶縁基板をはんだ等で接合する。その絶縁基板の配線パターン上に単一もしくは複数並列接続されたスイッチング素子(半導体素子)が搭載された1in1モジュールや、スイッチング素子をモジュール内部で2直列接続し、1つのモジュールでハーフブリッジ回路を構成した2in1モジュールなどの形態がある。
【0004】
近年、スイッチング素子の性能向上により、低オン抵抗化もしくは低オン電圧化による導通損失の低減や高速スイッチング化によるスイッチング損失の低減が進んでいる。また、スイッチング素子の低損失化に伴い、パワー半導体モジュールの定格電流増加によるパワー半導体モジュール内部の高電流密度化が進んでいる。パワー半導体モジュールの定格電流やスイッチング速度が増加すると、ターンオフスイッチング時のdi/dtが増加し、di/dtと主回路の配線インダクタンスに比例するターンオフスイッチング時のサージ電圧が増加する。
【0005】
ここで、主回路の配線インダクタンスとは、例えばハーフブリッジ回路であれば、直流平滑コンデンサから上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子を通り、直流平滑コンデンサまで戻ってくる電力変換主回路の一巡ループの配線インダクタンスのことである。サージ電圧がパワー半導体モジュールの定格電圧を超えると過電圧故障となる恐れがあるため、サージ電圧は定格電圧以下に抑える必要がある。
【0006】
di/dtを保ったまま、サージ電圧を低減するためには、主回路の配線インダクタンスを低減すれば良いが、電力変換回路やパワー半導体モジュール内部の配線構造の変更による主回路の配線インダクタンス低減にも限度がある。
【0007】
モジュール内部の配線構造の変更以外でサージ電圧を低減する方法として、例えば2in1モジュールであれば、パワー半導体モジュール内部の正極端子と負極端子との間にスナバコンデンサを接続する方法がある。スナバコンデンサをパワー半導体モジュール内部に搭載して、上下アームのスイッチング素子の直近に配置することで、ターンオフスイッチング時にスナバコンデンサを介して流れる電流分については主回路の配線インダクタンスが小さくなるため、サージ電圧を低減することができる。
【0008】
スナバコンデンサは、パワー半導体モジュール内部の金属ベース上の絶縁基板に実装しても良いが、その場合はスナバコンデンサを実装する分、スイッチング素子の実装スペースが減少するため、スイッチング素子の搭載数を増やし、パワー半導体モジュールを高電力密度化したい場合にはその妨げとなる。
【0009】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1では、パワー半導体モジュール内の正極端子と負極端子との間にスナバコンデンサを挟み込む構造とすることで、パワー半導体モジュールの高電力密度化とスナバコンデンサ内蔵によるサージ電圧の抑制を両立する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1は、正極端子と負極端子の間にスナバコンデンサを挟み込む構造であるため、近年のパワー半導体モジュールの高電流密度化に伴う正極端子および負極端子の発熱量増加により、スナバコンデンサが過熱状態となり、最終的に故障に至る懸念があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、スナバコンデンサを備えたパワー半導体モジュールにおいて、高電流密度化とスナバコンデンサの加熱防止を両立可能なパワー半導体モジュール及びそれを用いたモータ駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、正極端子と、平面視した際に少なくとも一部が前記正極端子に重なって配置された負極端子と、前記正極端子から分岐された第1の配線と、前記負極端子から分岐された第2の配線と、平面視した際の前記正極端子と前記負極端子とが重なる位置の外側に配置され、前記第1の配線と前記第2の配線とを介して接続されたスナバコンデンサと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スナバコンデンサを備えたパワー半導体モジュールにおいて、高電流密度化とスナバコンデンサの加熱防止を両立可能なパワー半導体モジュール及びそれを用いたモータ駆動システムを実現することができる。
【0015】
これにより、パワー半導体モジュール及びそれを用いたモータ駆動システムの低損失化と信頼性向上に寄与できる。
【0016】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係るパワー半導体モジュールの内部構造を示す断面図である。
【
図2】
図1のスナバコンデンサ14の実装部分の拡大図である。
【
図3】
図2における電流の流れを概念的に示す図である。
【
図4】
図1のパワー半導体モジュールの平面図である。
【
図5】
図1のパワー半導体モジュールを用いて構成したハーフブリッジ回路の等価回路図である。
【
図6】
図5の回路構成におけるスイッチング波形のシミュレーション結果を示す図である。(スナバコンデンサなし)
【
図7】
図5の回路構成におけるスイッチング波形のシミュレーション結果を示す図である。(スナバコンデンサの静電容量50nF)
【
図8】本発明の実施例2に係るパワー半導体モジュールの平面図である。
【
図9】
図8のパワー半導体モジュールを用いて構成したハーフブリッジ回路の等価回路図である。
【
図10】本発明の実施例3に係るパワー半導体モジュールの平面図である。
【
図11】
図10のパワー半導体モジュール内部の第1のスナバコンデンサ14と第2のスナバコンデンサ32の実装部分の斜視図である。
【
図12】
図10のパワー半導体モジュール内部の等価回路図である。
【
図13】本発明の実施例4に係るモータ駆動システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0019】
図1から
図7を参照して、本発明の実施例1に係るパワー半導体モジュールについて説明する。本実施例では、先ず、
図1から
図4を用いて、本実施例のパワー半導体モジュールの構造ついて説明する。次に、
図5を用いて、本実施例のパワー半導体モジュールを用いてハーフブリッジ回路を構成した場合の等価回路図について説明する。最後に、
図6及び
図7を用いて、
図5の回路構成における本発明によるターンオフ時のサージ電圧低減効果について説明する。
【0020】
図1は、本実施例のパワー半導体モジュール1の内部構造を示す断面図である。本実施例のパワー半導体モジュール1は、いわゆる2in1モジュールである。
【0021】
図1に示すように、本実施例のパワー半導体モジュール1は、放熱用の金属ベース2の上に、上アームの絶縁基板3と、下アームの絶縁基板4と、上アームの絶縁子基板5と、下アームの絶縁子基板6が、それぞれはんだ7で接合されている。絶縁基板3,4及び絶縁子基板5,6は、それぞれ金属層8と、絶縁層9と、配線パターン10で構成される。
【0022】
上アームの絶縁基板3の配線パターン10上には、スイッチング素子SW11(
図1では図示せず)と、スイッチング素子SW12と、ダイオードD11(
図1では図示せず)と、ダイオードD12とがはんだ7で接合されている。接合材には、はんだの他、焼結銅などの材料を用いても良い。
【0023】
スイッチング素子SW11,SW12とダイオードD11,D12の高電位側電極間(ここでは、コレクタ電極とアノード電極間)は配線パターン10で電気的に接続され、低電位側電極間(ここでは、エミッタ電極とカソード電極間)はボンディングワイヤ11で電気的に接続される(
図4参照)。
【0024】
下アームの絶縁基板4の配線パターン10上には、スイッチング素子SW21(
図1では図示せず)と、スイッチング素子SW22と、ダイオードD21(
図1では図示せず)と、ダイオードD22とがはんだ7で接合されている。接合材には、はんだの他、焼結銅などの材料を用いても良い。
【0025】
スイッチング素子SW21,SW22とダイオードD21,D22の高電位側電極間(ここでは、コレクタ電極とアノード電極間)は配線パターン10で電気的に接続され、低電位側電極間(ここでは、エミッタ電極とカソード電極間)はボンディングワイヤ11で電気的に接続される(
図4参照)。
【0026】
スイッチング素子SW11,SW12,SW21,SW22としては、図示されているIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の他、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)等が適用される。また、ダイオードD11,D12,D21,D22としては、pn接合ダイオードの他、SBD(Schottky Barrier Diode)等が適用される。
【0027】
スイッチング素SW11,SW12,SW21,SW22及びダイオードD11,D12,D21,D22を構成する半導体材料は、Siでも良いし、SiC等のワイドギャップ半導体でも良い。
【0028】
なお、スイッチング素子SW11,SW12,SW21,SW22としてMOSFETが適用される場合、ダイオードD11,D12,D21,D22としてMOSFETの寄生ダイオード(ボディダイオード)を用いても良い。
【0029】
また、上アームの絶縁基板3には正極端子(第1の正極端子)P1、下アームの絶縁基板4には負極端子(第1の負極端子)N1、上アームの絶縁子基板5には上アームのゲート補助端子G1AUXと上アームのエミッタ補助端子E1AUX、下アームの絶縁子基板6には下アームのゲート補助端子G2AUXと下アームのエミッタ補助端子E2AUXが、それぞれの配線パターン10に超音波接合される。接合方法は、はんだ接合等、他の方法でも良い。パワー半導体モジュール1全体は、樹脂筐体(図示せず)に収まっており、内部はゲル47で封止される。封止材は樹脂等、別の材料でも良い。
【0030】
負極端子N1は、平面視したとき少なくともその一部が正極端子P1に重なって配置され、且つ両端子間の間隔は絶縁距離を確保したうえで極力短く設計される。これは、互いに逆方向の電流が流れる両端子を対向且つ近接配置することで、互いの端子に流れる電流が作る磁束を打ち消し合い、両端子の配線インダクタンスを低減するためである。
【0031】
本発明では、
図1のように平面視したとき正極端子P1に重なるように配置された負極端子N1に対して、負極端子N1から分岐した第1のバスバー12と正極端子P1から分岐した第2のバスバー13を介して、平面視したとき正極端子P1と負極端子N1とが重なる位置の外側でスナバコンデンサ(第1のスナバコンデンサ)14を接続したことを特徴としている。
【0032】
このように、電流通流により発熱する正極端子P1と負極端子N1とが重ならない位置で、すなわちパワー半導体モジュール1を平面視した際の正極端子P1と負極端子N1とが重なる位置の外側でスナバコンデンサ14を接続することで、正極端子P1と負極端子N1からの加熱により、スナバコンデンサ14の温度が過剰に増加することを防止できる。
【0033】
第1のバスバー12と負極端子N1との間、及び第2のバスバー13と正極端子P1との間はそれぞれネジ15で接続される。バスバーと端子間の接続は、ネジ15の代わりにはんだ接合等、電気的に接続できる他の方法でも良い。
【0034】
なお、スナバコンデンサ14の静電容量は数十nFから数百nFのオーダーとパワー半導体モジュール1と外部で接続される直流平滑コンデンサ(図示せず)の千分の一以下程度であることから、第1のバスバー12と第2のバスバー13の通流電流も正極端子P1と負極端子N1よりも十分小さくなるため、電流による発熱量も第1のバスバー12と第2のバスバー13は正極端子P1と負極端子N1と比較して十分小さくなり、第1のバスバー12と第2のバスバー13からのスナバコンデンサ14への加熱は小さい。
【0035】
スナバコンデンサ14には、チップ型のセラミックコンデンサ、薄膜コンデンサ、フィルムコンデンサ等を用い、ターンオフ時のサージ電圧を抑制するために、高周波特性が良いものやパワー半導体モジュール1の高温動作に耐えるために耐熱性が高いものが好ましい。
【0036】
また、第1のバスバー12と第2のバスバー13は、正極端子P1と負極端子N1をスナバコンデンサ14に電気的に接続できるものであれば、バスバーでなくても良い。例えば、絶縁基板上に第1の配線パターンと第2の配線パターンを設けて、第1の配線パターンの一方と第2の配線パターンの一方との間にスナバコンデンサ14を接続し、第1の配線パターンの他方と正極端子P1、第2の配線パターンの他方と負極端子N1とをそれぞれ接続した構成等でも良い。
【0037】
図2は、
図1のスナバコンデンサ14の実装部分の拡大図である。
【0038】
図2に示すように、本実施例では、スナバコンデンサ14と第1のバスバー12との接続部、及びスナバコンデンサ14と第2のバスバー13との接続部は、スナバコンデンサ14の同じ主面(
図2では下面)上に配置されている。
【0039】
本発明では、正極端子P1と負極端子N1間にスナバコンデンサ14を接続するために、第1のバスバー12と第2のバスバー13を立体的に配線する必要がある。そのため、プリント基板上に平面的にコンデンサを接合する場合と比較して、スナバコンデンサ14とバスバー間のはんだ接合部に発生する熱応力が増加する場合がある。例えば、
図2では垂直方向17に第2のバスバー13が熱膨張した場合に熱応力(圧縮応力)18がはんだ接合部に発生する。
【0040】
そこで、この熱応力18を低減するために、第2のバスバー13に屈曲部16を設けている。第2のバスバー13が熱膨張した場合にこの屈曲部16が水平方向19に変形することで、当該熱応力18を低減し、はんだ接合部のクラックを防止できる。屈曲部16は、バスバーの水平方向の熱応力を低減するために、バスバーの水平方向に設けても良く、また、バスバーの配線構造に応じて、第1のバスバー12に設けても良い。
【0041】
図3は、
図2における電流の流れを概念的に示す図である。
【0042】
ターンオフ時のサージ電圧の低減には、第1のバスバー12、第2のバスバー13、スナバコンデンサ14自体の配線インダクタンスも小さい方が、効果が高い。
【0043】
そこで、
図3に示すように、負極端子N1の電流方向21と負極端子N1に平行配置された第1のバスバー12及びスナバコンデンサ14に流れるスナバ電流方向45、正極端子P1の電流方向20と正極端子P1に平行配置された第2のバスバー13に流れるスナバ電流方向46をそれぞれ逆方向にすることで、互いに流れる電流が作る磁束を打ち消し合い、第1のバスバー12、第2のバスバー13、スナバコンデンサ14自体の配線インダクタンスを低減することができる。
【0044】
図4は、
図1のパワー半導体モジュール1の平面図である。
【0045】
図4に示すように、第1のバスバー12は負極端子N1から分岐して設けられ、第2のバスバー13は正極端子P1から分岐して設けられる。
【0046】
図5は、
図1のパワー半導体モジュール1を用いて構成したハーフブリッジ回路の等価回路図である。
【0047】
図5に示すように、パワー半導体モジュール1の正極端子P1と負極端子N1との間には、モジュール外部で直流平滑コンデンサ26及び直流電源24とが並列に接続される。また、正極端子P1と交流端子(第1の交流端子)AC1との間には、負荷インダクタンス28が接続される。スナバコンデンサ14は、モジュール内部で正極端子P1と負極端子N1との間に接続される。
【0048】
直流平滑コンデンサ26と比較して、スナバコンデンサ14を上アームのスイッチング素子(SW11とSW12)と下アームのスイッチング素子(SW21とSW22)で構成されるレッグに近い位置に配置することで、ターンオフスイッチング時にスナバコンデンサ14を介して流れる電流分ついては主回路の配線インダクタンス25が小さくなるため、ターンオフスイッチング時のサージ電圧を低減することができる。
【0049】
図6は、
図5の回路構成において、スナバコンデンサなしの場合のスイッチング波形のシミュレーション結果を示す図である。
【0050】
81μs付近におけるターンオフスイッチングでは、下アームのゲート電圧VgeLがオン時の+17Vからオフ時の-10Vに向かって減少することに伴い、下アームのスイッチング素子(SW21とSW22)に流れる電流の合計値であるIc1+Ic2が遮断される。電流遮断時のdi/dtにより配線インダクタンス25で発生するサージ電圧は、直流電圧Vccに加えて、下アームのスイッチング素子(SW21とSW22)の両端に印加される。
【0051】
その結果、下アームのコレクタ-エミッタ間電圧VceLは、直流電源電圧Vccの1200Vに加えて550Vのサージ電圧が印加され、1750V付近まで跳ね上がっている。
【0052】
図7は、
図5の回路構成において、スナバコンデンサ14の静電容量を50nFとした場合のスイッチング波形のシミュレーション結果を示す図である。
【0053】
図81μs付近におけるターンオフスイッチングでは、スイッチング時にスナバコンデンサ14を介して流れる電流分ついては主回路の配線インダクタンス25が小さくなり、サージ電圧を低減することができるため、サージ電圧は
図6のスナバコンデンサなしの場合の550Vに対して300Vまで低減されている。
【0054】
図6と
図7の比較から、本発明よるパワー半導体モジュール1に実装可能な数十nFから数百nFのオーダーのスナバコンデンサ14の静電容量でも、ターンオフ時のサージ電圧低減効果が十分に得られることが確認できる。
この場合、スナバコンデンサ電流により発生する配線インダクタンス25での電圧降下の影響が並列スイッチング素子間で異なることにより、並列スイッチング素子間で電位差が生じ、その電位差を解消するための循環電流が流れる場合がある。
また、複数のスナバコンデンサ14を対称配置とすることで、スナバコンデンサ14の複数並列接続により、スナバコンデンサ14の合成静電容量が増加し、サージ電圧の抑制効果を高めることができる。