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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015620
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電子ユニット及び車両用モータ
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240130BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20240130BHJP
   B62M 6/70 20100101ALI20240130BHJP
【FI】
H05K1/02 A
B62M6/55
B62M6/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117808
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】深堀 賢司
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA18
5E338BB19
5E338BB61
5E338BB63
5E338BB75
5E338EE11
(57)【要約】
【課題】線状の異物による半導体集積回路の端子間の短絡を抑制し得る電子ユニット及びこれを含むインバータを備えた車両用モータを提供する。
【解決手段】電子ユニットは、複数の接続部を有する配線を含む基板と、基板に実装され、接続部に対応して半田で接合された複数の端子を有する半導体集積回路を備える。電子ユニットは、基板における端子同士の隣接領域に凸部及び凹部の少なくとも一方を有し、凸部の高さが端子を覆う半田の高さよりも高く、凹部の最深部が端子の下面よりも低い位置にある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続部を有する配線を含む基板と、該基板に実装され、該接続部に対応して半田で接合された複数の端子を有する半導体集積回路を備え、
上記基板における上記端子同士の隣接領域に凸部及び凹部の少なくとも一方を有し、
上記凸部は、その高さが上記端子を覆う半田の高さよりも高く、
上記凹部は、その最深部が上記端子の下面よりも低い位置にある
ことを特徴とする電子ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ユニットを含むインバータを備えた車両用モータであって、
上記車両用モータのハウジング内において上記基板が上記半導体集積回路に対して鉛直方向において上側に配置されている
ことを特徴とする車両用モータ。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ユニットを含むインバータを備えた車両用モータであって、
上記電子ユニットが、上記凸部を有し、
上記車両用モータのハウジング内において、該モータのシャフトが水平方向に沿って配置されており、かつ、上記基板が該シャフトが貫通した環状の板材に取り付けられており、
上記凸部が、上記端子の延伸方向において、上記端子を覆う半田よりも突出している
ことを特徴とする車両用モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ユニット及び車両用モータに係り、線状の異物による半導体集積回路の端子間の短絡を抑制し得る電子ユニット及びこれを含むインバータを備えた車両用モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錆等の導電性腐食成分により、パッド間でのパターンショートを容易に防ぐことができる配線基板が提案されている(特許文献1参照)。この配線基板は、誘電体層上に設けられる複数の導電性パッドと、それら導電性パッドを露出させる形で誘電体層を覆うソルダーレジスト層と、導電性パッドの互いに隣接するもの同士の間に介在する領域において、導電性パッドから流出する導電性腐食成分により、両導電性パッドが相互に連結させることを阻止する腐食成分連結阻止部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-8175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような配線基板においては、線状の異物による半導体集積回路の端子間の短絡を十分に抑制できないという問題点があった。特に、線状の異物は、数ミクロン幅の極細導電性異物であることがあるので、自動外観検査機や作業者の目視検査で観察できるものではなく、検査で不合格品とすることは困難である。また、このような線状の異物が半田に固着した場合には、エアブローやブラッシングだけで線状の異物を除去することは困難である。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、線状の異物による半導体集積回路の端子間の短絡を抑制し得る電子ユニット及びこれを含むインバータを備えた車両用モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、基板における半導体集積回路の端子同士の隣接領域に所定の凸部及び凹部の少なくとも一方を備えることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の電子ユニットは、複数の接続部を有する配線を含む基板と、基板に実装され、接続部に対応して半田で接合された複数の端子を有する半導体集積回路を備える。
この電子ユニットは、基板における端子同士の隣接領域に凸部及び凹部の少なくとも一方を有する。凸部は、その高さが端子を覆う半田の高さよりも高い。凹部は、その最深部が端子の下面よりも低い位置にある。
【0008】
また、本発明の車両用モータは、上述の電子ユニットを含むインバータを備える。
この車両用モータは、車両用モータのハウジング内において基板が半導体集積回路に対して鉛直方向において上側に配置されている。
【0009】
さらに、本発明の他の車両用モータは、上述の凸部を有する電子ユニットを含むインバータを備える。
この車両用モータにおいては、車両用モータのハウジング内において、モータのシャフト軸が水平方向に沿って配置されており、かつ、基板がシャフト軸が貫通した環状の板材に取り付けられている。
凸部が、端子の延伸方向において、端子を覆う半田よりも突出している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板における半導体集積回路の端子同士の隣接領域に上述の凸部及び凹部の少なくとも一方を備えることとしたため、線状の異物による半導体集積回路の端子間の短絡を抑制し得る電子ユニット及びこれを含むインバータを備えた車両用モータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電子ユニットの第1実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示した第1実施形態の電子ユニットの実施例1-1及び実施例1-2の一部を模式的に示す部分断面図である。
図3】第1実施形態の電子ユニットの他の配置状態を模式的に示す斜視図である。
図4】本発明の電子ユニットの第2実施形態を模式的に示す斜視図である。
図5図4に示した第2実施形態の電子ユニットの実施例2-1及び実施例2-2の一部を模式的に示す部分断面図である。
図6】実施例2-1の電子ユニットにおいて短絡原因となる線状の異物を除去する様子を模式的に示す部分断面図である。
図7】本発明の車両用モータの第1実施形態を示す断面図である。
図8】本発明の車両用モータの第2実施形態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電子ユニット及び車両用モータについて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
[電子ユニット]
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電子ユニットを模式的に示す斜視図である。また、図2の上側は実施例1-1の電子ユニットの凸部近傍を模式的に示す部分断面図であり、図2の下側は実施例1-2の電子ユニットの凸部近傍を模式的に示す部分断面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施形態の電子ユニット1は、複数の接続部13,13を有する配線11,11を含む基板10と、基板10に実装され、接続部13,13に対応して半田30で接合された複数の端子21,21を有する半導体集積回路20を備えている。
【0015】
そして、本実施形態の電子ユニット1は、基板10における端子21,21同士の隣接領域10aに凸部10bを有している。この凸部10bの高さは、端子21,21を覆う半田30の表面の高さよりも高くなっている。
【0016】
ここで、基板10は、例えば、ガラスなどの基材10Aとエポキシ樹脂などのレジスト10Bで形成されている。しかしながら、これらに限定されず、従来公知の基材やレジストを適用できる。また、実施例1-1においては、部分的にレジストリ10Bを多く配置することにより凸部10bが形成されており、実施例1-2においては、部分的に基材10Aを多く配置することにより凸部10bが形成されている。実施例1-2の凸部10bは、例えば、基材10Aを厚めに形成した後、不要な基材10Aを削ることで形成できる。また、半導体集積回路20としては、例えば、従来公知のケイ素(Si)や炭化ケイ素(SiC)を用いた半導体を適用することができる。さらに、半田30としては、従来公知の半田を適用できる。
【0017】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、基板10における端子21,21同士の隣接領域10aに高さが端子21,21を覆う半田30の高さよりも高い凸部10bを有しているので、線状異物が端子21,21間を繋ぐことが妨げられる。これにより、線状異物による半導体集積回路の端子間の短絡を抑制できる。また、このような構造であるため、実装後のコーティングを廃止することも可能である。さらに、図示しないが、端子間で起こり得る半田ブリッジを抑制できるという副次的な利点がある。また、凸部を設けない場合と比較して端子間の沿面距離や空間絶縁を大きく確保できるため、マイグレーションを抑制できるという副次的な利点もある。さらに、詳しくは後述するが、半導体集積回路を半田溶接によって実装する際の部品ずれを抑制できるという副次的な利点もある(図3参照)。
【0018】
図3は、第1実施形態の電子ユニットの他の配置状態、具体的には、電子ユニットの基板の厚み方向を水平方向に沿って配置した状態を模式的に示す斜視図である。図3に示すように、本実施形態においては、凸部10bが、端子21の延伸方向(図3中の矢印Zで示す上下方向)において、端子21を覆う半田(図示せず)よりも突出していることが好ましい。図3に示すように、このような凸部10bは、線状異物Cが図3中の上側から接近してきた場合にも端子間の短絡を抑制することができる。また、凸部10bがあると、半導体集積回路を半田溶接によって実装する際の図3中の矢印Yで示すような回転による部品ずれを抑制できるという副次的な利点もある。
【0019】
図4図8は、第2実施形態の電子ユニット、第1及び第2実施形態の車両用モータを説明する図である。以下の説明では、上述した構成部位と同じ構成部位に同一符号を付して詳細な発明を省略する。
【0020】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の電子ユニットを模式的に示す斜視図である。また、図5の上側は実施例2-1の電子ユニットの凹部近傍を模式的に示す部分断面図であり、図5の下側は実施例2-2の電子ユニットの凹部近傍を模式的に示す部分断面図である。
【0021】
図4及び図5に示すように、本実施形態の電子ユニット2は、基板10における端子21,21同士の隣接領域10aに凹部10cを有し、凹部10cの最深部10dが端子21の下面21aよりも低い位置にあること以外は、第1実施形態の電子ユニット1と同じ構成を有している。
【0022】
ここで、凹部の最深部とは、基板の厚み方向において、基板表面から最も遠い位置にある凹部の部位を意味する。なお、基板の厚み方向における基板表面の位置は、通常、基板表面に配置される端子21の下面21aの位置で定義する。また、実施例2-1においては、基板10を貫通する穴により凹部10cが形成されており、その最深部10dは貫通穴における端子21が配置されていない側の開口部となる。さらに、実施例2-2においては、基板10を貫通しない穴により凹部10cが形成されており、その最深部10dは非貫通穴における底部となる。なお、このような凹部10cは、ビルドアップ基板を適用することや、レーザ加工による成形によって形成できる。なお、一般的な半導体集積回路の端子間ピッチは1~2mm程度であり、ビルドアップ基板では、例えば0.1mm程度の穴開けが可能である。
【0023】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、基板10における端子21,21同士の隣接領域10aに凹部10cを有しているので、線状異物が凹部10cに収まるなどして線状異物が端子21,21間を繋ぐことが妨げられる。これにより、線状異物による半導体集積回路の端子間の短絡を抑制できる。また、このような構造であるため、実装後のコーティングを廃止することも可能である。さらに、図示しないが、端子間で起こり得る半田ブリッジを抑制できるという副次的な利点がある。また、凹部を設けない場合と比較して沿面距離を大きく確保できるため、マイグレーションを抑制できるという副次的な利点もある。さらに、詳しくは後述するが、治具を凹部に押し込むことによって短絡の原因となる線状異物を容易に除去することができるという副次的な利点もある(図6参照)。
【0024】
図6は、実施例2-1の電子ユニットにおいて短絡原因となる線状異物を治具によって除去する様子を模式的に示す部分断面図である。図6に示すように、仮に線状異物Cが端子21,21間を繋いでいた場合でも、凹部10cの開口サイズと同程度の大きさのカッターなどの治具Jを図6中矢印Xで示すように凹部10cに押し込むことにより線状異物Cを切断して、短絡の原因となる異物を除去することができる。
【0025】
[車両用モータ]
(第1実施形態)
図7は、第1実施形態の車両用モータを示す断面図であって、モータの軸方向に沿って切った断面図である。図7に示すように、本実施形態の車両用モータ50Aは、シャフト51と、シャフト51の外周に設けられたロータ52と、ロータ52の外側に設けられたステータ53と、シャフト51を支持する軸受け54と、これらを収容するハウジング55を備えている。また、本実施形態の車両用モータ50Aは、インバータ56を備えている。さらに、インバータ56は、上述した電子ユニット(図示せず)を含んでいる。
【0026】
本実施形態の車両用モータ50Aにおいては、ハウジング55内のステータ53より外側でハウジング55の内径壁55aにおいて、基板10が半導体集積回路20に対して鉛直方向(図7中矢印Vで示す方向)において上側に配置されている。なお、このような配置に際して、基板は固定具により内径壁に固定されている(図示せず)。また、このような配置は、図1図2図4及び図5に示した電子ユニット1,2を逆さにした配置である。さらに、図示しないが、この車両用モータ50Aには、図7の左側にモータと一体化される減速機が設けられる。
【0027】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、電子ユニットの第1及び第2実施形態の利点に加えて、電子ユニットを車両用モータのハウジングに固定する際に、ハウジングのバリやネジ締結時の切子等が付着しても自重で落下しやすく、端子間の短絡を抑制できる。
【0028】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の車両用モータを模式的に示す斜視図である。図8に示すように、本実施形態の車両用モータ50Bは、第1実施形態の電子ユニット1を含むインバータ56を備えている。
【0029】
本実施形態の車両用モータ50Bにおいては、ハウジング55内において、モータ50Bのシャフト51が水平方向に沿って配置されており、かつ、厚み方向が水平方向に沿った状態の基板10がシャフト51が貫通した環状の板材57に取り付けられている。さらに、例えば、図8中の半導体集積回路20A~20Fのうちの半導体集積回路20Aを例に挙げれば、図3に示すように、凸部10bが、端子21の延伸方向において、端子21を覆う半田(図示せず)よりも突出している。
【0030】
次に本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、電子ユニットの第1実施形態の利点に加えて、電子ユニットを車両用モータのハウジングに固定する際に、ハウジングのバリやネジ締結時の切子等が付着しても自重で落下しやすく、端子間の短絡を抑制できる。
【0031】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0032】
本発明においては、線状異物による半導体集積回路の端子間の短絡を抑制するべく、基板における半導体集積回路の端子同士の隣接領域に上述した凸部や凹部を設けて、端子間の短絡の原因となる端子間を繋ぐ線状異物が存在することを妨げることを骨子とする。
【0033】
従って、凸部や凹部が、端子の延伸方向において、端子を覆う半田よりも突出している場合を例示して説明したが、端子間の短絡を抑制できれば、端子よりも突出している必要はない。平面方向や高さ方向の実装密度、基板の強度などが著しく低下しない範囲で、凸部や凹部は大きくすることが好ましい。
【0034】
また、例えば、上述した構成要素は、各実施形態に示した構成要素に限定されるものではなく、基板、半導体集積回路、半田、車両用モータの仕様の細部を変更することや、各実施形態の構成要素を他の実施形態に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1,2 電子ユニット
10 基板
10A 基材
10B レジスト
10a 隣接領域
10b 凸部
10c 凹部
10d 最深部
11 配線
13 接続部
20,20A,20B,20C,20D,20E,20F 半導体集積回路
21 端子
21a 下面
30 半田
50A,50B 車両用モータ
51 シャフト
52 ロータ
53 ステータ
54 軸受け
55 ハウジング
56 インバータ
57 板材
C 線状異物
J 治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8