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特開2024-15621エレベータのブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015621
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】エレベータのブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240130BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20240130BHJP
   G01L 5/28 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B11/08 G
G01L5/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117813
(22)【出願日】2022-07-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 宗郷
【テーマコード(参考)】
2F051
3F304
3F306
【Fターム(参考)】
2F051AA01
2F051AB09
3F304BA13
3F306AA02
3F306BA09
3F306BB01
(57)【要約】
【課題】 綱車に対して綱車の回転方向に正確に荷重を負荷することができるエレベータのブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置を提供する。
【解決手段】 エレベータの綱車を制動するブレーキの制動能力を検査する、エレベータのブレーキ制動能力検査方法であって、ブレーキによって停止状態にある綱車又は綱車と一体となった筒体の外周面に紐状部材の一端側を固定する固定工程と、紐状部材を外周面に巻き掛ける巻き掛け工程と、紐状部材の他端側を綱車から離れるように外周面の接線方向に引っ張りながら、紐状部材に負荷される引張荷重を測定する測定工程と、を含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの綱車を制動するブレーキの制動能力を検査する、エレベータのブレーキ制動能力検査方法であって、
前記ブレーキによって停止状態にある前記綱車又は前記綱車と一体となった筒体の外周面に紐状部材の一端側を固定する固定工程と、
前記紐状部材を前記外周面に巻き掛ける巻き掛け工程と、
前記紐状部材の他端側を前記綱車から離れるように前記外周面の接線方向に引っ張りながら、前記紐状部材に負荷される引張荷重を測定する測定工程と、を含む、エレベータのブレーキ制動能力検査方法。
【請求項2】
前記固定工程において、前記紐状部材の一端側が接続された固定部材を前記外周面に取り付ける、請求項1に記載のエレベータのブレーキ制動能力検査方法。
【請求項3】
前記紐状部材は、長さ方向に沿って平坦面を有しており、
前記巻き掛け工程において、前記紐状部材は、前記平坦面が前記外周面に接触するように巻き掛けられる、請求項1に記載のエレベータのブレーキ制動能力検査方法。
【請求項4】
前記固定工程において、前記筒体は前記綱車の軸方向端面に接続される、請求項1に記載のエレベータのブレーキ制動能力検査方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のエレベータのブレーキ制動能力検査方法に用いられるブレーキ制動能力検査装置であって、
前記紐状部材の一端側が接続された固定部材と、
前記綱車に設けられ、前記固定部材を前記外周面に取り付けるための取付部と、を備える、ブレーキ制動能力検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータのブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータは、かごと、釣合錘と、かごと釣合錘とを接続するかごロープと、かごロープが巻き掛けられる綱車と、綱車を制動するブレーキとを備えている。
【0003】
エレベータの点検において、ブレーキが所定の制動能力を発揮できることを確認する必要がある。ブレーキの制動能力を検査する方法としては、例えば、綱車の回転軸の端部にレバーを装着し、レバーを介して綱車の回転軸を強制的に回転させ、そのときのレバーに加えた荷重を測定し、この荷重に基づいてブレーキの制動能力を検査している(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の検査方法では、レバーに垂直な方向、すなわち綱車の回転方向(綱車の外周面の接線方向)に荷重を負荷しないと、測定誤差が発生するが、レバーによって綱車に対して綱車の回転方向に荷重を負荷することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53-128377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、課題は、綱車に対して綱車の回転方向に正確に荷重を負荷することができるエレベータのブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
エレベータのブレーキ制動能力検査方法は、エレベータの綱車を制動するブレーキの制動能力を検査する、エレベータのブレーキ制動能力検査方法であって、
前記ブレーキによって停止状態にある前記綱車又は前記綱車と一体となった筒体の外周面に紐状部材の一端側を固定する固定工程と、
前記紐状部材を前記外周面に巻き掛ける巻き掛け工程と、
前記紐状部材の他端側を前記綱車から離れるように前記外周面の接線方向に引っ張りながら、前記紐状部材に負荷される引張荷重を測定する測定工程と、を含む。
【0008】
[2]
また、上記[1]のエレベータのブレーキ制動能力検査方法においては、前記固定工程において、前記紐状部材の一端側が接続された固定部材を前記外周面に取り付ける、という方法でもよい。
【0009】
[3]
また、上記[1]又は[2]のエレベータのブレーキ制動能力検査方法においては、前記紐状部材は、長さ方向に沿って平坦面を有しており、
前記巻き掛け工程において、前記紐状部材は、前記平坦面が前記外周面に接触するように巻き掛けられる、という方法でもよい。
【0010】
[4]
また、上記[1]~[3]の何れか一つのエレベータのブレーキ制動能力検査方法においては、前記固定工程において、前記筒体は前記綱車の軸方向端面に接続される、という方法でもよい。
【0011】
[5]
また、エレベータのブレーキ制動能力検査装置は、上記[1]~[4]の何れか一つのエレベータのブレーキ制動能力検査方法に用いられるブレーキ制動能力検査装置であって、
前記紐状部材の一端側が接続された固定部材と、
前記綱車に設けられ、前記固定部材を前記外周面に取り付けるための取付部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るエレベータの全体図
図2】一実施形態に係るエレベータの巻上機の概要図
図3】一実施形態に係る制動能力検査装置の概要図
図4図3のIV-IV線断面図
図5】別実施形態に係る制動能力検査装置の主要部を分解して示す断面図
図6】別実施形態に係る測定用治具の正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、エレベータのブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置における一実施形態について、図1図4を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
まず、ブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置を説明することに先立って、検査対象のブレーキを備えるエレベータについて、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、エレベータの構成は、以下の構成に限定されない。
【0015】
図1に示すように、エレベータ1は、例えば、人が乗るためのかご2と、かご2に接続されるかごロープ3と、かごロープ3に接続されるエレベータ用釣合錘(以下、単に「釣合錘」ともいう)4と、かごロープ3を駆動してかご2及び釣合錘4を上下方向D3へ走行させる巻上機5と、かご2を案内するかごレール6と、釣合錘4を案内する錘レール7と、エレベータ1の各部を制御する処理部8とを備えていてもよい。
【0016】
なお、本実施形態に係るエレベータ1は、巻上機5を機械室X2の内部に配置する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、機械室X2が備えられておらず、エレベータ1は、巻上機5を昇降路X1の内部に配置する、という構成でもよい。
【0017】
また、各図において、第1方向D1は、第1横方向D1であり、第2方向D2は、第1横方向D1と直交する横方向である第2横方向D2であって、乗客がかご2に出入りするために進む出入方向であり、第3方向D3は、各横方向D1,D2とそれぞれ直交する上下方向D3であり、かご2及び釣合錘4が昇降する昇降方向である。
【0018】
図2に示すように、巻上機5は、例えば、かごロープ3が巻き掛けられる綱車5aと、綱車5aに回転駆動を与える電動機5bと、綱車5aを回転可能に支持する機枠5c,5cと、綱車5aと一体となって回転する回転部材5dと、綱車5aを制動するために、回転部材5dに加圧して接触するブレーキ5eとを備えていてもよい。回転部材5dの外径は、例えば、綱車5aの外径よりも大きくなっており、円環状で且つ板状に形成されていてもよい。また、巻上機5は、電動機5bの駆動を綱車5aに伝える軸部5fを備え、機枠5cは、軸部5fを回転可能に支持することによって、綱車5aを回転可能に支持している。
【0019】
なお、特に限定されないが、本実施形態においては、回転部材5dは、綱車5aに連結されている。即ち、回転部材5dは、綱車5aと一体的に形成されている。なお、例えば、回転部材5dが綱車5aと離れており、綱車5a及び回転部材5dがそれぞれ軸部5fに連結されることによって、回転部材5dは、綱車5aと一体となって回転する、という構成でもよい。
【0020】
ブレーキ5eは、例えば、綱車5a及び回転部材5dの回転軸方向である第1横方向D1で回転部材5dを挟むことによって、回転部材5dに加圧して接触する、という構成でもよい。なお、ブレーキ5eは、例えば、回転部材5dの外周面に加圧して接触する、という構成でもよい。また、ブレーキ5eの個数は、特に限定されない。
【0021】
ブレーキ5eは、回転部材5dとの間に作用する摩擦力によって制動能力を発揮する。本出願において、ブレーキ5eと回転部材5dとの間に作用する静止摩擦力によるトルクを保持トルクと呼び、ブレーキ5eと回転部材5dとの間に作用する動摩擦力によるトルクを制動トルクと呼び、保持トルクと制動トルクを合わせてブレーキ5eの制動能力と呼ぶ。例えば、綱車5aがブレーキ5eによって停止状態で保持されているときに綱車5aに作用しているトルクが保持トルクであり、綱車5aがブレーキ5eによって減速されているときに綱車5aに作用しているトルクが制動トルクである。例えば、点検の際、制動トルクを測定することによって、緊急時に所定の制動能力を発揮できることを確認しておく必要がある。
【0022】
次に、本実施形態に係るブレーキ5eの制動能力検査装置について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0023】
ブレーキ制動能力検査装置10は、一端11a側が綱車5aに固定され、綱車5aの外周面50に巻き掛けられる紐状部材11と、紐状部材11の他端11b側に接続される測定装置12と、測定装置12を介して紐状部材11を直線的に引っ張る引張装置13と、を備えていてもよい。
【0024】
また、ブレーキ制動能力検査装置10は、紐状部材11の一端11a側を綱車5aに固定するための固定部材14を備えていてもよい。すなわち、紐状部材11の一端11a側は、固定部材14を介して綱車5aの外周面50に固定されるようにしてもよい。固定部材14は、紐状部材11の一端11a側に予め接続されていてもよい。固定部材14は、例えば、アイボルトであってもよい。
【0025】
また、ブレーキ制動能力検査装置10は、固定部材14を綱車5aの外周面50に取り付けるための取付部15を備えていてもよい。取付部15は、綱車5aの外周面50に設けられてもよい。取付部15は、例えば、アイボルトを螺合可能なねじ孔であってもよい。
【0026】
なお、図4に示すように、綱車5aの外周面50は、かごロープ3が巻き掛けられる複数のロープ溝が形成された溝領域50aと、溝領域50aに隣接する、ロープ溝が形成されていない取付領域50bとを有する。取付部15は、綱車5aの外周面50のうち取付領域50bに形成される。取付領域50bは、例えば、綱車5aの外周面50のうち第1横方向D1において溝領域50aを挟んで回転部材5dの反対側に位置している。なお、取付領域50bは、例えば、綱車5aの外周面50のうち第1横方向D1において溝領域50aよりも回転部材5dの近くに位置していてもよい。
【0027】
紐状部材11は、線状又は帯状の紐やワイヤであってもよい。また、紐状部材11としては、特に限定されないが、例えば、ベルトスリングであってもよい。好ましくは、紐状部材11は、長さ方向に沿って平坦面を有する。紐状部材11は、平坦面が綱車5aの外周面50に接触するように巻き掛けられることで、第1横方向D1にずれにくい。
【0028】
測定装置12は、引張荷重を測定してもよい。測定装置12は、例えば、ロードセルであってもよい。測定装置12は、測定した引張荷重を不図示の表示部に表示してもよく、また、不図示の演算装置へ向けて出力してもよい。
【0029】
引張装置13は、例えば、チェーンブロックであってもよい。引張装置13の一端13aは、測定装置12に接続され、引張装置13の他端13bは、例えば機械室X2の天井に取り付けられたフック16に接続される。引張装置13は、一端13aと他端13bの間の距離を調整することができる。これにより、測定装置12が引張装置13によって上方へ引っ張られることによって、測定装置12に上方向への力が加えられるため、測定装置12を介して、紐状部材11は上方へ引っ張られる。このとき、紐状部材11は、綱車5aの外周面50に巻き掛けられているため、紐状部材11には、綱車5aの外周面50の接線方向への引張荷重が負荷される。これにより、綱車5aに対して綱車5aの回転方向に荷重が負荷される。
【0030】
次に、本実施形態に係るブレーキ制動能力検査方法について説明する。
【0031】
ブレーキ5eの制動能力の検査は、ブレーキ5eによって綱車5aを停止させた状態から開始される。初めに、図3に示すように、この停止状態にある綱車5aの外周面50に紐状部材11の一端11a側を固定する。このとき、紐状部材11の一端11a側が接続された固定部材14を、綱車5aの外周面50の取付部15に取り付けるようにしてもよい。
【0032】
次に、紐状部材11を綱車5aの外周面50に巻き掛ける。好ましくは、紐状部材11は、綱車5aの外周面50の取付領域50bに巻き掛けられる。また、紐状部材11は、長さ方向に沿って平坦面を有し、この平坦面が綱車5aの外周面50に接触するように巻き掛けられることが好ましい。
【0033】
次に、引張装置13によって紐状部材11の他端11b側を綱車5aから離れるように外周面50の接線方向に引っ張りながら、測定装置12によって紐状部材11に負荷される引張荷重を測定する。このとき、紐状部材11は、綱車5aの外周面50に巻き掛けられているため、紐状部材11の他端11b側を綱車5aから離れるように外周面50の接線方向に引っ張ると、紐状部材11には綱車5aの外周面50の接線方向への引張荷重が負荷される。これにより、綱車5aに対して綱車5aの回転方向に正確に荷重を負荷することができる。よって、測定装置12によって測定される引張荷重は、綱車5aに対して綱車5aの回転方向に負荷される荷重である。
【0034】
以上のように、引張装置13によって紐状部材11を引っ張ることにより、綱車5aを回転させる方向に荷重が負荷される。そして、引張装置13による引っ張り力を徐々に大きくしていくと、ブレーキ5eが回転部材5dとの間で滑り始め、綱車5aは停止状態から回転を開始する。
【0035】
次に、測定装置12によって測定された引張荷重Pと、綱車5aの外周面の半径rとに基づいて、制動能力を算出するようにしてもよい。ブレーキ5eが回転部材5dとの間で滑り始め、綱車5aが停止状態から回転を開始したときの引張荷重Paに、綱車5aの外周面50の半径rを掛けたものが保持トルクTaであり、綱車5aが回転を開始した後の引張荷重Pbに、綱車5aの外周面50の半径rを掛けたものが制動トルクTbである。算出された保持トルクTa及び制動トルクTbによってブレーキ5eの制動能力を評価することができる。保持トルクTa及び制動トルクTbが、例えば、予め設定した閾値を超えたか否かにより、ブレーキ5eが所定の制動能力を発揮できているか否かを確認することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係るブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置10によれば、紐状部材11が綱車5aの外周面50に巻き掛けられているため、紐状部材11の他端11b側を綱車5aから離れるように外周面50の接線方向に引っ張ると、紐状部材11には綱車5aの外周面50の接線方向への引張荷重Pが負荷される。これにより、綱車5aに対して綱車5aの回転方向に正確に荷重を負荷することができる。また、測定される引張荷重Pは、綱車5aの外周面50の接線方向へ負荷される引張荷重Pであるため、測定した引張荷重Pに綱車5aの外周面50の半径rを掛けることで、ブレーキ5eの制動能力(保持トルク又は制動トルク)を正確に算出して検査することができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置10によれば、綱車5aに固定される紐状部材11の一端11a側の位置によらず、綱車5aの外周面50の接線方向の引張荷重Pを測定することができるため、検査のために停止させる際の綱車5aの角度を気にする必要がない。
【0038】
また、本実施形態に係るブレーキ制動能力検査方法においては、巻き掛け工程において、紐状部材11は、外周面50のうち周方向に10度以上の角度に亘って巻き掛けられる、という方法が好ましい。斯かる方法によれば、ブレーキ5eが滑り始めた後の所定期間、具体的には綱車5aを少なくとも10度回転させるまでの期間における引張荷重Pを測定することができるため、制動トルクTbをより正確に測定することが可能となる。本実施形態では、紐状部材11は、綱車5aの外周面50のうち約180度の角度に亘って巻き掛けられている。
【0039】
以上より、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法は、本実施形態のように、エレベータ1の綱車5aを制動するブレーキ5eの制動能力を検査する、エレベータのブレーキ制動能力検査方法であって、前記ブレーキ5eによって停止状態にある前記綱車5aの外周面50に紐状部材11の一端11a側を固定する固定工程と、前記紐状部材11を前記外周面50に巻き掛ける巻き掛け工程と、前記紐状部材11の他端11b側を前記綱車5aから離れるように前記外周面50の接線方向に引っ張りながら、前記紐状部材11に負荷される引張荷重Pを測定する測定工程と、を含む、という構成が好ましい。
【0040】
斯かる方法によれば、紐状部材11が綱車5aに巻き掛けられているため、紐状部材11の他端11b側を綱車5aから離れるように外周面50の接線方向に引っ張ると、紐状部材11には綱車5aの外周面50の接線方向への引張荷重Pが負荷される。これにより、綱車5aに対して綱車5aの回転方向に正確に荷重を負荷することができる。
【0041】
また、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法においては、本実施形態のように、前記固定工程において、前記紐状部材11の一端11a側が接続された固定部材14を前記外周面50に取り付ける、という方法が好ましい。
【0042】
斯かる方法によれば、紐状部材11の一端11a側を綱車5aの外周面50に容易に固定することができる。
【0043】
また、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法においては、本実施形態のように、前記紐状部材11は、長さ方向に沿って平坦面を有しており、前記巻き掛け工程において、前記紐状部材11は、前記平坦面が前記外周面50に接触するように巻き掛けられる、という方法が好ましい。
【0044】
斯かる方法によれば、紐状部材11が綱車5aの外周面50上で軸方向にずれにくい。
【0045】
また、エレベータ1のブレーキ制動能力検査装置は、上記のエレベータ1のブレーキ制動能力検査方法に用いられるブレーキ制動能力検査装置であって、前記紐状部材11の一端11a側が接続された固定部材14と、前記綱車5aに設けられ、前記固定部材14を前記外周面50に取り付けるための取付部15と、を備える、という構成が好ましい。
【0046】
斯かる構成によれば、綱車5aに対して綱車5aの回転方向に正確に荷重を負荷することができる。
【0047】
なお、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置10は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法及びブレーキ制動能力検査装置10は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0048】
(A)上記実施形態に係るエレベータ1のブレーキ制動能力検査方法においては、固定工程において、紐状部材11の一端11a側が接続された固定部材14を外周面50に取り付ける、という方法である。しかしながら、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法は、斯かる方法に限られない。例えば、紐状部材11の一端11a側を外周面50に直接取り付けるようにしてもよい。
【0049】
(B)また、上記実施形態に係るエレベータ1のブレーキ制動能力検査方法においては、紐状部材11は、長さ方向に沿って平坦面を有しており、巻き掛け工程において、紐状部材11は、平坦面が外周面50に接触するように巻き掛けられる、という方法である。しかしながら、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法は、斯かる方法に限られない。例えば、紐状部材11は、円形断面を有するロープである、という方法でもよい。すなわち、紐状部材11は、長さ方向に沿って平坦面を有していない、という方法でもよい。
【0050】
(C)また、上記実施形態に係るエレベータ1のブレーキ制動能力検査装置10は、紐状部材11の一端11a側が接続された固定部材14と、綱車5aに設けられ、固定部材14を外周面50に取り付けるための取付部15と、を備える、という構成である。しかしながら、エレベータ1のブレーキ制動能力検査装置10は、斯かる構成に限られない。
【0051】
例えば、図5及び図6に示すように、ブレーキ制動能力検査装置10は、紐状部材11の一端11a側が接続された測定用治具17と、綱車5aに設けられ、測定用治具17を綱車5aの軸方向端面51に接続するための接続部18と、を備える、という構成でもよい。測定用治具17は、円環状の第1リング17aと、円環状の第2リング17bと、第1リング17aと第2リング17bを連結する第1連結部材17c及び第2連結部材17dと、を有していてもよい。第1リング17aは、綱車5aの軸方向端面51に当接される。第2リング17bは、第1リング17aから軸方向に離れている。
【0052】
図6に示すように、第1連結部材17cは、第1リング17a及び第2リング17bの周方向に間欠的に配置される円弧板状の部材である。第2連結部材17dは、一部が内側へ向かって凹んだ略円筒状の筒体である。図5に示すように、第2連結部材17dの外周面は、例えば、綱車5aの外周面50と同じ半径を有しており、綱車5aの外周面50と同軸上に配置される。なお、第2連結部材17dの外周面は、綱車5aの外周面50の半径よりも大きい半径を有していてもよく、綱車5aの外周面50の半径よりも小さい半径を有していてもよい。
【0053】
測定用治具17は、治具固定ボルト19によって綱車5aの軸方向端面51に接続される。接続部18は、治具固定ボルト19を螺合可能なねじ孔であってもよい。
【0054】
測定用治具17は、紐状部材11の一端11a側が固定される端部固定ボルト17eを有する。端部固定ボルト17eは、第2リング17bの貫通孔を挿通し、第1リング17aのねじ孔に螺合する。
【0055】
紐状部材11は、第2連結部材17dの外周面に巻き掛けられる。軸方向の幅が狭い薄型の綱車5aの場合、綱車5aの外周面50は、上記の取付領域50bを有することが難しい。この場合であっても、綱車5aの軸方向端面51に測定用治具17を接続することで、綱車5aと一体となった筒体(ここでは第2連結部材17d)の外周面に紐状部材11を巻き掛けることができる。すなわち、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法においては、固定工程において、筒体(ここでは第2連結部材17d)は綱車5aの軸方向端面51に接続される、という方法が好ましい。斯かる方法によれば、綱車5aが薄型であって、綱車5aの外周面50に紐状部材11を巻き掛けるスペースがない場合であっても、筒体の外周面に紐状部材11を巻き掛けることが可能となる。これにより、紐状部材11を綱車5aの外周面50に巻き掛けた場合と同様に制動能力を検査することができる。
【0056】
(D)また、上記実施形態に係るエレベータ1のブレーキ制動能力検査方法は、紐状部材11の他端11b側を上方向へ引っ張りながら、紐状部材11に負荷される引張荷重を測定する、という方法である。しかしながら、エレベータ1のブレーキ制動能力検査装置方法は、斯かる方法に限られない。例えば、図6に示すように、エレベータ1のブレーキ制動能力検査方法は、紐状部材11の他端11b側を横方向へ引っ張りながら、紐状部材11に負荷される引張荷重を測定する、という方法でもよい。このとき、引張装置13の他端13bは、例えば機械室X2の側壁に取り付けられたフック16に接続される。
【0057】
(E)なお、例えば、特許請求の範囲、明細書及び図面において示した方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各工程の実行順序は、前の工程での生成物を後の工程で用いるものでない限り、任意の順序で実現できる。例えば、便宜上、「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0058】
1…エレベータ、2…かご、3…かごロープ、4…釣合錘、5…巻上機、5a…綱車、5b…電動機、5c…機枠、5d…回転部材、5e…ブレーキ、5f…軸部、6…かごレール、7…錘レール、8…処理部、10…ブレーキ制動能力検査装置、11…紐状部材、11a…紐状部材の一端、11b…紐状部材の他端、12…測定装置、13…引張装置、13a…引張装置の一端、13b…引張装置の他端、14…固定部材、15…取付部、16…フック、17…測定用治具、17a…第1リング、17b…第2リング、17c…第1連結部材、17d…第2連結部材、17e…端部固定ボルト、18…接続部、19…治具固定ボルト、50…綱車の外周面、50a…溝領域、50b…取付領域、51…綱車の軸方向端面、P…引張荷重、Pa…引張荷重、Pb…引張荷重、r…綱車の外周面の半径、Ta…保持トルク、Tb…制動トルク、D1…第1横方向、D2…第2横方向、D3…上下方向、X1…昇降路、X2…機械室
図1
図2
図3
図4
図5
図6