(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156220
(43)【公開日】2024-11-05
(54)【発明の名称】浮桟橋の係留装置
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20241028BHJP
B63B 1/18 20060101ALI20241028BHJP
B63B 21/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
E02B3/06
B63B1/18 B
B63B21/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066003
(22)【出願日】2023-04-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000111395
【氏名又は名称】株式会社テクアノーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】岡 幸治
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118BA04
2D118CA03
2D118DA04
2D118FA08
(57)【要約】
【課題】浮桟橋を水上で平面的にある程度規制した状態で設置できるとともに、簡単に施工を行え、さらには、例えば、大きな波浪等の影響を受けても破損しにくい浮桟橋の係留装置を提供する。
【解決手段】陸LD側に固定される固定部12と、該固定部12に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アーム14と、該支持アーム14の他端と浮桟橋100とを上下方向に回動自在に連結する連結手段16と、を備える。連結手段16は、支持アーム14に対して浮桟橋100を所定の範囲での揺動可能又は前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段32からなることとしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、
陸側に固定される固定部と、
該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、
該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備えたことを特徴とする浮桟橋の係留装置。
【請求項2】
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなることを特徴とする請求項1記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項3】
連結手段は、支持アーム又は浮桟橋に所定以上の負荷がかかる際に支持アームと浮桟橋との連結を分離させるブレーカ装置を有することを特徴とする請求項1又は2記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項4】
ブレーカ装置は、浮桟橋を支持アームに対して前後方向に沿った軸周り揺動可能又は前後に移動可能に連結しており、
支持アームに対し浮桟橋が前方又は後方へ移動するのを緩衝しながら規制する弾性体と、
該弾性体による緩衝力を調整するプリロード調整機構と、を有することを特徴とする請求項3記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項5】
連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の前後方向に沿った軸周りの揺動範囲を規制する揺動規制機構を有することを特徴とする請求項2記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項6】
揺動規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方側に設けられ、回動軸回りに回動自在に軸支される第1ローラと、
支持アームと浮桟橋のいずれか他方側に設けられ、該第1ローラを前方又は後方から受けるとともに、第1ローラの上下方向の移動範囲を規制するストッパ部付きの第1ローラ受部と、を有することを特徴とする請求項5記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項7】
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有することを特徴とする請求項2,5,6のいずれかに記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項8】
左右規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方に設けられ、前後方向に向けた回動軸を介して回転自在に支持された第2ローラと、
支持アームと浮桟橋のいずれか他方に設けられ、該第2ローラに左側方又は右側方から当接して受ける第2ローラ受部と、を含むことを特徴とする請求項7記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項9】
支持アームは、複数の直状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられたことを特徴とする請求項1記載の浮桟橋の係留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上に浮力支持され水位に追従して上下動する浮桟橋を良好に係留するための浮桟橋の係留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海や湖、ダム、河川等の様々な水域において、ボートや船舶への乗降や荷の積み下ろし等の作業のための足場や船舶の係留施設等として浮桟橋が利用されている。浮桟橋は、フロート等を備えた浮体が水上に浮力支持される構造であるから、水位の変化に追従して上下動し水面に対して一定の高さ位置を保持するでき、漁港やマリーナ、船着き場等の種々の施設でも広く利用されている。
【0003】
従来の浮桟橋は、チェーン係留式のものや、杭係留式のものが知られている。チェーン係留式の浮桟橋は、水中又は水底に配置したアンカーに接続されたチェーンを介して浮桟橋を上下動自在に係留している。一方、杭係留式の浮桟橋は、鋼管杭を水底に打設し、該鋼管杭をガイドとして浮桟橋を上下動自在に係留している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のチェーン係留式の浮桟橋は、自在に撓むチェーンを介して係留するものであるから水上で平面的に浮動しやすく、浮桟橋の位置がずれやすい問題があった。また、従来や特許文献1の杭係留式の浮桟橋では、水上での平面的なずれを規制できる反面、浮桟橋を上下にガイドする鋼管杭を海底に打設する必要があるから、施工が煩雑かつ大掛かりで、労力、期間、コストがかかる問題があった。また、海底が軟弱地盤であったり水深がかなり深い場合には、杭の打設が困難であり施工場所が限定されるおそれがあった。さらに、波や風の影響により、浮桟橋にはいろいろな方向から力を受けるが浮桟橋は上下方向のみに移動可能な自由度が少ない構造であり、大きな波浪を受けた際に浮桟橋が負荷に耐え切れず破損してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、浮桟橋を水上で平面的にある程度規制した状態で設置できるとともに、簡単に施工を行え、さらには、例えば、大きな波浪等の影響を受けても破損しにくい浮桟橋の係留装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備えた浮桟橋の係留装置から構成される。
【0008】
また、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなることとしてもよい。連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の移動の際の負荷を軽減する緩衝手段を有することとよい。
【0009】
また、連結手段は、支持アーム又は浮桟橋に所定以上の負荷がかかる際に支持アームと浮桟橋との連結を分離させるブレーカ装置を有することとしてもよい。ブレーカ装置が緩衝手段を有することとしてもよい。
【0010】
また、ブレーカ装置は、浮桟橋を支持アームに対して前後方向に沿った軸周り揺動可能又は前後に移動可能に連結しており、支持アームに対し浮桟橋が前方又は後方へ移動するのを緩衝しながら規制する弾性体と、該弾性体による緩衝力を調整するプリロード調整機構と、を有することとしてもよい。
【0011】
また、連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の前後方向に沿った軸周りの揺動範囲を規制する揺動規制機構を有することとしてもよい。
【0012】
また、揺動規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方側に設けられ、回動軸回りに回動自在に軸支される第1ローラと、支持アームと浮桟橋のいずれか他方側に設けられ、該第1ローラを前方又は後方から受けるとともに、第1ローラの上下方向の移動範囲を規制するストッパ部付きの第1ローラ受部と、を有することとしてもよい。
【0013】
また、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有することとしてもよい。
【0014】
また、左右規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方に設けられ、前後方向に向けた回動軸を介して回転自在に支持された第2ローラと、支持アームと浮桟橋のいずれか他方に設けられ、該第2ローラに左側方又は右側方から当接して受ける第2ローラ受部と、を含むこととしてもよい。
【0015】
また、支持アームは、複数の直状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の浮桟橋の係留装置によれば、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備えた構成であるから、従来のような鋼管杭等の打設が不要であり、施工を比較的簡単に行うことができる。さらに、大きな波浪等を受けた際にある程度規制された範囲内で支持アームと浮桟橋が移動できるので、浮桟橋の損傷を良好に防止しうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浮桟橋の係留装置の平面図である。
【
図2】
図1の浮桟橋の係留装置の側面説明図である。
【
図3】
図1の浮桟橋の係留装置のブレーカ装置周辺の拡大図である。
【
図4】
図3の浮桟橋の係留装置のA-A線断面図である。
【
図5】
図1の浮桟橋の係留装置の揺動規制機構周辺の拡大図である。
【
図6】
図5の浮桟橋の係留装置のB-B線断面図である。
【
図7】
図1の浮桟橋の係留装置の左右規制機構周辺の拡大図であるである。
【
図8】
図7の浮桟橋の係留装置のC-C線断面図である。
【
図9】
図1の浮桟橋の係留装置の設置状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照しつつ本発明の浮桟橋の係留装置の実施形態について説明する。本発明に係る浮桟橋の係留装置は、例えば、海や河川等の水域に設置される浮桟橋を水位の変化に追従して上下動可能に係留するための係留システムである。
図1ないし
図9は、本発明の浮桟橋の係留装置の一実施形態を示している。
図1、
図2、に示すように、本実施形態に係る浮桟橋の係留装置10は、陸側に固定される固定部12と、固定部12に回動自在に軸支される支持アーム14と、支持アーム14と浮桟橋100とを回動自在に連結する連結手段16と、を備えている。
【0019】
本実施形態では、図に示すように、固定部12が設けられる陸LDに対して近接離隔する方向の水平方向を前後方向Xとし、陸から離隔する方向を前方向、陸に近接する方向を後方とする。また、前後方向Xに垂直な水平方向を左右方向Yとする。さらに、前後方向X及び左右方向Yに垂直な鉛直高さ方向を上下方向Zとする。
【0020】
本実施形態では、例えば、浮桟橋100は、従来周知のものでよく、例えば、平面視矩形状に設けられたアルミニウム合金等の金属製のフレーム102と、該フレーム102の下方に固定された複数個のフロート104と、該フレーム上に木材板等を敷設して設けられたデッキ106と、を有し、海上等の水域に少なくともデッキ部分を水上に出した状態で浮力支持される。浮桟橋100のフレーム102には、防舷材や係船用のクリート108等が取り付けられている。浮桟橋100は、チェーンやロープ等の係留索110を介して海底に設置されたコンクリートアンカー112や、陸LD側の係留金具114に接続されている。係留金具114は例えば、陸LD側や海底に打設させたアンカー材や後述の固定部12等を介して固定されることとしてもよい。なお、係留索110は、浮桟橋110の前端側及び後端側の隅部4か所にそれぞれ接続されるとともに前方側の2本の係留索110どうし及び後方側の2本の係留索110どうしが平面視で交差して配置されている。本実施形態では、浮桟橋100は、前後方向Xに沿って長い平面視長方形状に設けられている。なお、浮桟橋100の形状や大きさ等は任意でもよい。
【0021】
固定部12は、例えば、陸LD側の護岸等に直接に、又は護岸に設けられた施設・設備等を利用して間接的に固定され、支持アーム14を支持する陸側支持手段である。本実施形態では、例えば、
図9に示すような、護岸と浮桟橋100とを往来できるように繋ぐ可変階段200の支持脚202に固定部12が固定されている。
【0022】
図1、
図2に示すように、固定部12は、例えば、可変階段の支持脚202に装着される固定フレーム18と、該固定フレーム18の前端側に前方に向けて突設された固定ブラケット20と、を有している。固定フレーム18は、例えば、可変階段200の支持脚202に外側を囲むように装着されるような矩形枠状に組み合わせて設けられている。直線状の金属フレーム材が該支持脚202の前後に当着させて対向配置されるとともに、それらの前後のフレーム材を前後方向に沿って長い長軸ボルトとナットで締結して、支持脚202に固定されている。
【0023】
固定ブラケット20は、例えば、2個が左右方向Yに所定の間隔で離隔して配置されて固定フレーム18に固定されている。各固定ブラケット20は、対向配置された2枚の板部材の間に左右方向Yに水平方向に軸を向けた回転軸24が架設状に貫通して設けられている。固定ブラケット20に支持された回転軸24に支持アーム14の一端が軸支されている。
【0024】
なお、固定部12は、上記の構造に限らず、任意の構造でもよい。例えば、固定部は、固定ブラケット121を支持脚202や護岸等に直接固定する構造としてもよい。また、固定部12は、例えば、護岸の上面や側面等に直接的に固定したり、その他の港湾設備等に固定したり、その他任意の構造物に固定することとしてもよい。また、固定部12は、水上位置でも水中位置でも任意に設定してもよい。
【0025】
支持アーム14は、水位に追従して上下動する浮桟橋100を係留する係留手段である。支持アーム14は、例えば、金属等の剛体で形成されており、浮桟橋100の水上での平面的な位置が大きくずれないように保持又は規制しながら浮桟橋100を上下動自在に支持する。
図1,
図2に示すように、支持アーム14は、後端となる一端側が固定部12の回転軸22を介して固定部12に上下方向に回動自在に連結される。さらに、支持アーム14は、前端となる他端側が連結手段16を介して浮桟橋100に対して上下方向に回動自在に連結される。
【0026】
本実施形態では、支持アーム14は、複数の金属製の直線状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられている。支持アーム14は、例えば、平面視台形枠状の外形輪郭となるようにフレーム材で外枠が形成されるとともに、該台形枠状の内側にフレーム材を複数の三角形ができるように配置し、各フレーム材をボルトや溶接等により固定している。なお、各フレーム材をピン連結等して、フレーム材どうしが揺動できるようにしてもよい。
【0027】
支持アーム14の後端側のフレーム材には、後方に向けて突出した可動ブラケット24が設けられている。可動ブラケット24は、例えば、支持アーム14の後端側のフレーム材の左右両端にそれぞれ固定されており、固定部12の固定ブラケット20に支持された固定軸22を介して軸支されている。支持フレーム14の前端側のフレーム材には、前方側に突設されたブレーカ用ブラケット26が固定されている。ブレーカ用ブラケット26は、後述の連結手段16のブレーカ装置28を接続する要素であり、左右方向Yに沿って水平方向に軸を向けた回転軸30が支持されている。
【0028】
連結手段16は、支持アーム14の他端と浮桟橋100とを上下方向に回動自在に連結する、すなわち左右方向Yに沿った軸回りに回動自在に連結する連結手段である。本実施形態では、連結手段16は、支持アーム14と浮桟橋100とを上下方向に回動自在とした構成に加えて、支持アーム14に対して浮桟橋100を所定の範囲で左右に揺動可能(すなわち前後方向Xに沿った水平方向の軸回りに回動可能)及び所定の範囲で前後方向Xに沿って移動可能(陸に対して近接離間可能)としたルーズ連結手段32となっている。これにより、剛体からなる支持アーム14と浮桟橋100との連結部分がある程度の自由度で連結されたことにより、浮桟橋に大きな波浪等により大きな負荷がかかった際に、比較的高い自由度で可動させてある程度力を吸収・又は分散させることにより浮桟橋を破損しにくくできる。なお、ルーズ連結手段32は、浮桟橋100を左右に揺動可能か前後方向に移動可能かのいずれかの構成とすることとしてもよい。
【0029】
本実施形態では、連結手段16は、所定以上の大きな負荷がかかった際に支持アーム14と浮桟橋100との連結を分離させるブレーカ装置28と、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向に沿った軸周りに揺動する範囲を規制する揺動規制機構34と、同浮桟橋100が前方側へ移動するのを所定位置で規制する前方規制機構36と、同浮桟橋100が後方側へ移動するのを所定位置で規制する後方規制機構38と、同浮桟橋100が左右方向Yに移動するのを規制する左右規制機構40と、を有する。
【0030】
ブレーカ装置28は、例えば、破断部材42を有し、浮桟橋100が大きな波浪等の大きな外力を受けて所定以上の負荷がかかった際に、該破断部材42が破断されて支持アーム14と浮桟橋100を分離する破断手段である。これにより、大きな力が作用した場合に浮桟橋100自体が破損するのを防止できる。なお、上記のように浮桟橋100は、チェーン108を介してアンカー(錘)110に接続されているので、分離された浮桟橋100が遠方に流されるのが防止される。ブレーカ装置28は、
図3、
図4に示すように、例えば、一端がブレーカ用ブラケット26に回転軸30を介して軸支される第1接続部材44と、第1接続部材の端部に接続される破断部材42と、該破断部材42を介して第1接続部材44に直列状に接続される第2接続部材46と、第1部接続部材44の一部及び第2接続部材46を内部に嵌合させる外筒48と、を有する。
【0031】
破断部材42は、例えば、高負荷時の破断部分となるくびれ部が設けられた平板状部材から設けられている。第1接続部材44は、例えば、円柱状部材からなり、平板状の破断部材42を嵌合状に受け入れるスリットが設けられている。第1接続部材44と破断部材42とはピン等により接続される。第2接続部材46は、例えば、第1接続部材44とほぼ同様に円柱状部材からなり、平板状の破断部材42を嵌合状に受け入れるスリットが設けられている。第2接続部材46と破断部材42とはピン等により接続される。さらに第2接続部材46の前端部には、後述のボルト軸50が螺合する雌ネジ部が設けられている。第1接続部材44と破断部材42と第2接続部材46とは一直線状に連結されて前後方向Xに向けて配置される
【0032】
外筒48は、第1接続部材44と第2接続部材46を内部に挿入する挿入孔が設けられた略円筒状部材からなり、第1接続部材44と第2接続部材46を軸方向すなわち前後方向に沿って移動可能としている。外筒48は、前後中間位置に段差部48aが設けられ、前半部と後半部とで径が異なって設けられている。外筒48には、浮桟橋100のフレーム102に取付金具52を介して取り付けられた軸受54が装着されている。軸受54は、外筒48の径が小さい側の後半部の外周に外嵌されており、外筒48に対して軸周り回転自在となっているとともに、該軸受54の前方側への移動は段差部48aにより規制される。なお、軸受54の前方には座金が配置され、座金を介して外筒48の段差部48aに係合する。すなわち、ブレーカ装置28は、本実施形態では、支持アーム14に対して浮桟橋100の前方への移動を所定位置で規制する前方規制手段36を兼用しているといえる。同時に、ブレーカ装置28により、支持アーム14に対して浮桟橋100を前後方向Xに沿った軸(すなわち外筒48の軸)周りに揺動可能に連結しているとともに前後方向へ移動可能として、ルーズ連結手段32を構成しうる。
【0033】
ブレーカ装置28の第2接続部材46の前端側には前後方向Xに沿って外筒48の外部側へ伸びるボルト軸50が螺合されている。ボルト軸50には、前後に所定の間隔をあけて対向配置された2個1対の反力板56が貫通状に係合されており、該反力板56の対向間隙にゴム又はバネからなる弾性体58が配置されている。さらに、ボルト軸50に貫通された前方側の反力板56の外側にはナット60が螺合されている。一方の反力板56は、外筒54の前端に当接されており、ナット60のボルト軸50への螺合位置を変更させることにより、弾性体58の反力を調整することができる。このようなブレーカ装置28の構成により、支持アーム14に対して浮桟橋100が前方へ移動するような力が作用すると、該弾性体58の反力により力や衝撃を緩衝し、浮桟橋100の損傷を防止できる。すなわち、ブレーカ装置28は、緩衝手段と破断手段を備えた緩衝・破断装置ともいえる。さらに、ボルト軸50とナット60が弾性体58の緩衝力を調整するプリロード調整機構62を構成しており、浮桟橋100の設置状況に応じて緩衝力を調整することができる。なお、ブレーカ装置28は、例えば、上記構成とは逆に浮桟橋100側に軸支させ、支持アーム14側に弾性体58等を作用させる構成としたり、ブレーカ装置28が後方規制機構を兼ねる構成としてもよい。また、ブレーカ装置28とは別に前方規制手段を設けることとしてもよい。
【0034】
図5,
図6に示すように、揺動規制機構34は、例えば、支持アーム14に回動自在に軸支される第1ローラ64と、浮桟橋100に設けられた第1ローラ受部66と、を有する。第1ローラ64は、例えば、ゴムローラからなり、支持アーム14の前端側のフレーム材の左右両端側にそれぞれ配置されている。第1ローラ64は、支持アーム14の前端側のフレーム材に前方側に向けて突出して固定された第1ローラブラケット68に左右方向Yに沿った方向に軸を配した回動軸70を介して回転自在に軸支されている。第1ローラ受部66は、浮桟橋100のフレーム102の左右両端側にそれぞれ第1ローラ64の位置に合わせて配置されている。第1ローラ受部66は、略コ字状の金具からなり、該コ字内部側に第1ローラ64に前方側から当接して該第1ローラ64を受ける。第1ローラ受部66の上下の突設部分がストッパ部72となっており、第1ローラ64の移動の上限及び下限として規制する。これにより、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向Xに沿った軸周りに揺動した際に、第1ローラ64が第1ローラ受部66の上方又は下方のストッパ部72に当接する位置で揺動範囲が規制される。さらに、支持アーム14に対して浮桟橋100が後方に移動しようとする際に、第1ローラ64が第1ローラ受部66に当接する位置で規制される。よって、本実施形態では、揺動規制機構34を構成する第1ローラ64と第1ローラ受部66は、後方規制手段38を兼用している。一方、支持アーム14に対して浮桟橋100が前方に移動しようとする際には、第1ローラ64と第1ローラ受部66から若干離隔することとなるが、上述のような前方規制手段36を調整した、第1ローラ64が第1ローラ受け部66から完全に離脱しないように設定されるとよい。揺動規制機構34を設けることにより、例えば、浮桟橋100上を人が移動や作業等する際に過剰に浮桟橋が揺動するのを防止し、安全に浮桟橋を利用できる。なお、揺動規制機構34は、上記構成に限らず任意の構成としてもよい。例えば、揺動規制機構34は、上記とは逆に、浮桟橋100側に第1ローラ64を設け、支持アーム14側に第1ローラ受部66を設ける構成としてもよい。揺動規制機構34とは別に後方規制手段38を設けることとしてもよい。
【0035】
図7,
図8に示すように、左右規制機構40は、例えば、支持アーム14に回転自在に支持された第2ローラ74と、浮桟橋100に設けられた第2ローラ受部76と、を含む。第2ローラ74は、支持アーム14の前端側のフレーム材に所定の間隔をあけて2個が線対称状に配置されている。第2ローラ74は、支持アーム14のフレーム材に前方側に向けて突出して固定された第2ローラブラケット78に前後方向Xに沿った方向に軸を配した回動軸80を介して回転自在に軸支されている。すなわち、第2ローラ74の回動軸78は、第1ローラ66の回転軸とは垂直な水平方向に設定されている。第2ローラ74は、互いに外向き対向状に配置されている。第2ローラ受部76は、該第2ローラ74に左側方又は右側方から当接して受ける。第2ローラ受け部76は、例えば、第2ローラ74を受ける面が鉛直な平面で形成されている。2個の第2ローラ74のそれぞれの左右両外側となる側方に第2ローラ受部76が当接した構成であるので、浮桟橋100の左右方向Yへの移動が規制される。さらにその規制された状態でも第2ローラ74により、浮桟橋100は、前後方向Xに沿った軸周りのスムーズな揺動が許容される構成となっている。なお、左右規制機構40は、上記した構成に限らず任意の構成としてもよい。例えば、左右規制機構40は、上記とは逆に、浮桟橋100側に第2ローラ74を設け、支持アーム14側に第2ローラ受部76を設ける構成としてもよい。
【0036】
次に図を参照しつつ本実施形態に係る浮桟橋の係留装置10の作用について説明する。本実施形態の浮桟橋の係留装置10は、例えば、港湾等で小型ボートや中型船舶等を保管するマリーナ(図示せず)に並設して設置され、船舶等に乗降等する際に利用される。
図9に示すように、陸LDの岸壁から浮桟橋100に向けて可変階段200が設置されており、可変階段200を介して陸と浮桟橋を往来できる。浮桟橋100は、支持アーム14を介して上下方向に回動自在に係留されているので、干満により海水面WLの変化に追従して、上下動しうる。また支持アーム14と浮桟橋100は、ルーズ連結手段32により、支持アーム14に対して浮桟橋が前後方向Xに沿った軸周りすなわち支持アーム14と浮桟橋100の回動軸とは直交する水平方向の軸周りに揺動可能及び前後方向Xに若干移動可能であるので、連結部分の自由度が比較的高く、波浪等によりある程度大きな外力が作用しても支持アーム14や浮桟橋100に係る負荷・ストレスが軽減される。また、浮桟橋100が上下動する際には、支持アーム14の回動により若干前後方向Xに移動しうるが、左右方向Yへの移動が規制されるので、マリーナ等施設に対して水面上での平面的な位置は規制され、安定的に利用することができる。同時に、揺動規制機構34により、揺動範囲が規制されるので、利用者も安定して安全に浮桟橋100を利用できる。
【0037】
さらに、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向Xに移動しようとする力が作用する際には、ブレーカ装置28の弾性体58により緩衝して負荷を軽減することができる。なお、港湾等の設置環境に応じて弾性体58のプリロードを調整して、緩衝力を調整することができる。さらに、例えば、台風等で大きな波浪等により支持アーム14や浮桟橋100に大きな外力が係る場合には、ブレーカ装置28により、支持アーム14と浮桟橋100の連結を分離させて、浮桟橋100等の設備の破損を防止することができる。ブレーカ装置28により分離された浮桟橋100は、チェーン等の係留索110によって係留されるので、浮桟橋100が沖に流されてしまったり、他の設備や船舶にぶつかって損傷させたりするのを防止できる。
【0038】
以上説明した本発明の浮桟橋の係留装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の浮桟橋の係留装置は、例えば、海や河川等その他任意の水域に設置される浮桟橋を係留するのに利用できる。
【符号の説明】
【0040】
10 浮桟橋の係留装置
12 固定部
14 支持アーム
16 連結手段
28 ブレーカ装置
32 ルーズ連結手段
34 揺動規制機構
40 左右規制機構
58 弾性体
62 プリロード調整機構
64 第1ローラ
66 第1ローラ受部
72 ストッパ部
74 第2ローラ
76 第2ローラ受部
100 浮桟橋
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、 陸側に固定される固定部と、 該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、 該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、 連結手段は、支持アーム又は浮桟橋に所定以上の負荷がかかる際に支持アームと浮桟橋との連結を分離させるブレーカ装置を有することを特徴とする浮桟橋の係留装置。
【請求項2】
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなることを特徴とする請求項1記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項3】
ブレーカ装置は、浮桟橋を支持アームに対して前後方向に沿った軸周り揺動可能又は前後に移動可能に連結しており、 支持アームに対し浮桟橋が前方又は後方へ移動するのを緩衝しながら規制する弾性体と、 該弾性体による緩衝力を調整するプリロード調整機構と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項4】
水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、 陸側に固定される固定部と、 該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、 該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、 連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなり、 連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の前後方向に沿った軸周りの揺動範囲を規制する揺動規制機構を有することを特徴とする浮桟橋の係留装置。
【請求項5】
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有することを特徴とする請求項4記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項6】
揺動規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方側に設けられ、回動軸回りに回動自在に軸支される第1ローラと、 支持アームと浮桟橋のいずれか他方側に設けられ、該第1ローラを前方又は後方から受けるとともに、第1ローラの上下方向の移動範囲を規制するストッパ部付きの第1ローラ受部と、を有することを特徴とする請求項4又は5記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項7】
水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、 陸側に固定される固定部と、 該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、 該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、 連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなり、 連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有することを特徴とする浮桟橋の係留装置。
【請求項8】
左右規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方に設けられ、前後方向に向けた回動軸を介して回転自在に支持された第2ローラと、 支持アームと浮桟橋のいずれか他方に設けられ、該第2ローラに左側方又は右側方から当接して受ける第2ローラ受部と、を含むことを特徴とする請求項5又は7記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項9】
支持アームは、複数の直状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられたことを特徴とする請求項1,2,4,5,7のいずれかに記載の浮桟橋の係留装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上に浮力支持され水位に追従して上下動する浮桟橋を良好に係留するための浮桟橋の係留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海や湖、ダム、河川等の様々な水域において、ボートや船舶への乗降や荷の積み下ろし等の作業のための足場や船舶の係留施設等として浮桟橋が利用されている。浮桟橋は、フロート等を備えた浮体が水上に浮力支持される構造であるから、水位の変化に追従して上下動し水面に対して一定の高さ位置を保持するでき、漁港やマリーナ、船着き場等の種々の施設でも広く利用されている。
【0003】
従来の浮桟橋は、チェーン係留式のものや、杭係留式のものが知られている。チェーン係留式の浮桟橋は、水中又は水底に配置したアンカーに接続されたチェーンを介して浮桟橋を上下動自在に係留している。一方、杭係留式の浮桟橋は、鋼管杭を水底に打設し、該鋼管杭をガイドとして浮桟橋を上下動自在に係留している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のチェーン係留式の浮桟橋は、自在に撓むチェーンを介して係留するものであるから水上で平面的に浮動しやすく、浮桟橋の位置がずれやすい問題があった。また、従来や特許文献1の杭係留式の浮桟橋では、水上での平面的なずれを規制できる反面、浮桟橋を上下にガイドする鋼管杭を海底に打設する必要があるから、施工が煩雑かつ大掛かりで、労力、期間、コストがかかる問題があった。また、海底が軟弱地盤であったり水深がかなり深い場合には、杭の打設が困難であり施工場所が限定されるおそれがあった。さらに、波や風の影響により、浮桟橋にはいろいろな方向から力を受けるが浮桟橋は上下方向のみに移動可能な自由度が少ない構造であり、大きな波浪を受けた際に浮桟橋が負荷に耐え切れず破損してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、浮桟橋を水上で平面的にある程度規制した状態で設置できるとともに、簡単に施工を行え、さらには、例えば、大きな波浪等の影響を受けても破損しにくい浮桟橋の係留装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、連結手段は、支持アーム又は浮桟橋に所定以上の負荷がかかる際に支持アームと浮桟橋との連結を分離させるブレーカ装置を有する浮桟橋の係留装置から構成される。
【0008】
また、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなることとしてもよい。連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の移動の際の負荷を軽減する緩衝手段を有することとよい。ブレーカ装置が緩衝手段を有することとしてもよい。
【0009】
また、ブレーカ装置は、浮桟橋を支持アームに対して前後方向に沿った軸周り揺動可能又は前後に移動可能に連結しており、支持アームに対し浮桟橋が前方又は後方へ移動するのを緩衝しながら規制する弾性体と、該弾性体による緩衝力を調整するプリロード調整機構と、を有することとしてもよい。
【0010】
さらに本発明は、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、
陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなり、連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の前後方向に沿った軸周りの揺動範囲を規制する揺動規制機構を有する浮桟橋の係留装置から構成される。
【0011】
また、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有することとしてもよい。
【0012】
また、揺動規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方側に設けられ、回動軸回りに回動自在に軸支される第1ローラと、支持アームと浮桟橋のいずれか他方側に設けられ、該第1ローラを前方又は後方から受けるとともに、第1ローラの上下方向の移動範囲を規制するストッパ部付きの第1ローラ受部と、を有することとしてもよい。
【0013】
さらに本発明は、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなり、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有する浮桟橋の係留装置から構成される。
【0014】
また、左右規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方に設けられ、前後方向に向けた回動軸を介して回転自在に支持された第2ローラと、支持アームと浮桟橋のいずれか他方に設けられ、該第2ローラに左側方又は右側方から当接して受ける第2ローラ受部と、を含むこととしてもよい。
【0015】
また、支持アームは、複数の直状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の浮桟橋の係留装置によれば、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備えた構成であるから、従来のような鋼管杭等の打設が不要であり、施工を比較的簡単に行うことができる。さらに、大きな波浪等を受けた際にある程度規制された範囲内で支持アームと浮桟橋が移動できるので、浮桟橋の損傷を良好に防止しうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浮桟橋の係留装置の平面図である。
【
図2】
図1の浮桟橋の係留装置の側面説明図である。
【
図3】
図1の浮桟橋の係留装置のブレーカ装置周辺の拡大図である。
【
図4】
図3の浮桟橋の係留装置のA-A線断面図である。
【
図5】
図1の浮桟橋の係留装置の揺動規制機構周辺の拡大図である。
【
図6】
図5の浮桟橋の係留装置のB-B線断面図である。
【
図7】
図1の浮桟橋の係留装置の左右規制機構周辺の拡大図であるである。
【
図8】
図7の浮桟橋の係留装置のC-C線断面図である。
【
図9】
図1の浮桟橋の係留装置の設置状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照しつつ本発明の浮桟橋の係留装置の実施形態について説明する。本発明に係る浮桟橋の係留装置は、例えば、海や河川等の水域に設置される浮桟橋を水位の変化に追従して上下動可能に係留するための係留システムである。
図1ないし
図9は、本発明の浮桟橋の係留装置の一実施形態を示している。
図1、
図2、に示すように、本実施形態に係る浮桟橋の係留装置10は、陸側に固定される固定部12と、固定部12に回動自在に軸支される支持アーム14と、支持アーム14と浮桟橋100とを回動自在に連結する連結手段16と、を備えている。
【0019】
本実施形態では、図に示すように、固定部12が設けられる陸LDに対して近接離隔する方向の水平方向を前後方向Xとし、陸から離隔する方向を前方向、陸に近接する方向を後方とする。また、前後方向Xに垂直な水平方向を左右方向Yとする。さらに、前後方向X及び左右方向Yに垂直な鉛直高さ方向を上下方向Zとする。
【0020】
本実施形態では、例えば、浮桟橋100は、従来周知のものでよく、例えば、平面視矩形状に設けられたアルミニウム合金等の金属製のフレーム102と、該フレーム102の下方に固定された複数個のフロート104と、該フレーム上に木材板等を敷設して設けられたデッキ106と、を有し、海上等の水域に少なくともデッキ部分を水上に出した状態で浮力支持される。浮桟橋100のフレーム102には、防舷材や係船用のクリート108等が取り付けられている。浮桟橋100は、チェーンやロープ等の係留索110を介して海底に設置されたコンクリートアンカー112や、陸LD側の係留金具114に接続されている。係留金具114は陸LD側や海底に打設させたケミカルアンカーや後述の固定部12等を介して固定されることとしてもよい。なお、係留索110は、浮桟橋110の前端側及び後端側の隅部4か所にそれぞれ接続されるとともに前方側の2本の係留索110どうし及び後方側の2本の係留索110どうしが平面視で交差して配置されている。本実施形態では、浮桟橋100は、前後方向Xに沿って長い平面視長方形状に設けられている。なお、浮桟橋100の形状や大きさ等は任意でもよい。
【0021】
固定部12は、例えば、陸LD側の護岸等に直接に、又は護岸に設けられた施設・設備等を利用して間接的に固定され、支持アーム14を支持する陸側支持手段である。本実施形態では、例えば、
図9に示すような、護岸と浮桟橋100とを往来できるように繋ぐ可変階段200の支持脚202に固定部12が固定されている。
【0022】
図1、
図2に示すように、固定部12は、例えば、可変階段の支持脚202に装着される固定フレーム18と、該固定フレーム18の前端側に前方に向けて突設された固定ブラケット20と、を有している。固定フレーム18は、例えば、可変階段200の支持脚202に外側を囲むように装着されるような矩形枠状に組み合わせて設けられている。直線状の金属フレーム材が該支持脚202の前後に当着させて対向配置されるとともに、それらの前後のフレーム材を前後方向に沿って長い長軸ボルトとナットで締結して、支持脚202に固定されている。
【0023】
固定ブラケット20は、例えば、2個が左右方向Yに所定の間隔で離隔して配置されて固定フレーム18に固定されている。各固定ブラケット20は、対向配置された2枚の板部材の間に左右方向Yに水平方向に軸を向けた回転軸24が架設状に貫通して設けられている。固定ブラケット20に支持された回転軸24に支持アーム14の一端が軸支されている。
【0024】
なお、固定部12は、上記の構造に限らず、任意の構造でもよい。例えば、固定部は、固定ブラケット121を支持脚202や護岸等に直接固定する構造としてもよい。また、固定部12は、例えば、護岸の上面や側面等に直接的に固定したり、その他の港湾設備等に固定したり、その他任意の構造物に固定することとしてもよい。また、固定部12は、水上位置でも水中位置でも任意に設定してもよい。
【0025】
支持アーム14は、水位に追従して上下動する浮桟橋100を係留する係留手段である。支持アーム14は、例えば、金属等の剛体で形成されており、浮桟橋100の水上での平面的な位置が大きくずれないように保持又は規制しながら浮桟橋100を上下動自在に支持する。
図1,
図2に示すように、支持アーム14は、後端となる一端側が固定部12の回転軸22を介して固定部12に上下方向に回動自在に連結される。さらに、支持アーム14は、前端となる他端側が連結手段16を介して浮桟橋100に対して上下方向に回動自在に連結される。
【0026】
本実施形態では、支持アーム14は、複数の金属製の直線状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられている。支持アーム14は、例えば、平面視台形枠状の外形輪郭となるようにフレーム材で外枠が形成されるとともに、該台形枠状の内側にフレーム材を複数の三角形ができるように配置し、各フレーム材をボルトや溶接等により固定している。なお、各フレーム材をピン連結等して、フレーム材どうしが揺動できるようにしてもよい。
【0027】
支持アーム14の後端側のフレーム材には、後方に向けて突出した可動ブラケット24が設けられている。可動ブラケット24は、例えば、支持アーム14の後端側のフレーム材の左右両端にそれぞれ固定されており、固定部12の固定ブラケット20に支持された固定軸22を介して軸支されている。支持フレーム14の前端側のフレーム材には、前方側に突設されたブレーカ用ブラケット26が固定されている。ブレーカ用ブラケット26は、後述の連結手段16のブレーカ装置28を接続する要素であり、左右方向Yに沿って水平方向に軸を向けた回転軸30が支持されている。
【0028】
連結手段16は、支持アーム14の他端と浮桟橋100とを上下方向に回動自在に連結する、すなわち左右方向Yに沿った軸回りに回動自在に連結する連結手段である。本実施形態では、連結手段16は、支持アーム14と浮桟橋100とを上下方向に回動自在とした構成に加えて、支持アーム14に対して浮桟橋100を所定の範囲で左右に揺動可能(すなわち前後方向Xに沿った水平方向の軸回りに回動可能)及び所定の範囲で前後方向Xに沿って移動可能(陸に対して近接離間可能)としたルーズ連結手段32となっている。これにより、剛体からなる支持アーム14と浮桟橋100との連結部分がある程度の自由度で連結されたことにより、浮桟橋に大きな波浪等により大きな負荷がかかった際に、比較的高い自由度で可動させてある程度力を吸収・又は分散させることにより浮桟橋を破損しにくくできる。なお、ルーズ連結手段32は、浮桟橋100を左右に揺動可能か前後方向に移動可能かのいずれかの構成とすることとしてもよい。
【0029】
本実施形態では、連結手段16は、所定以上の大きな負荷がかかった際に支持アーム14と浮桟橋100との連結を分離させるブレーカ装置28と、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向に沿った軸周りに揺動する範囲を規制する揺動規制機構34と、同浮桟橋100が前方側へ移動するのを所定位置で規制する前方規制機構36と、同浮桟橋100が後方側へ移動するのを所定位置で規制する後方規制機構38と、同浮桟橋100が左右方向Yに移動するのを規制する左右規制機構40と、を有する。
【0030】
ブレーカ装置28は、例えば、破断部材42を有し、浮桟橋100が大きな波浪等の大きな外力を受けて所定以上の負荷がかかった際に、該破断部材42が破断されて支持アーム14と浮桟橋100を分離する破断手段である。これにより、大きな力が作用した場合に浮桟橋100自体が破損するのを防止できる。なお、上記のように浮桟橋100は、チェーン108を介してアンカー(錘)110に接続されているので、分離された浮桟橋100が遠方に流されるのが防止される。ブレーカ装置28は、
図3、
図4に示すように、例えば、一端がブレーカ用ブラケット26に回転軸30を介して軸支される第1接続部材44と、第1接続部材の端部に接続される破断部材42と、該破断部材42を介して第1接続部材44に直列状に接続される第2接続部材46と、第1部接続部材44の一部及び第2接続部材46を内部に嵌合させる外筒48と、を有する。
【0031】
破断部材42は、例えば、高負荷時の破断部分となるくびれ部が設けられた平板状部材から設けられている。第1接続部材44は、例えば、円柱状部材からなり、平板状の破断部材42を嵌合状に受け入れるスリットが設けられている。第1接続部材44と破断部材42とはピン等により接続される。第2接続部材46は、例えば、第1接続部材44とほぼ同様に円柱状部材からなり、平板状の破断部材42を嵌合状に受け入れるスリットが設けられている。第2接続部材46と破断部材42とはピン等により接続される。さらに第2接続部材46の前端部には、後述のボルト軸50が螺合する雌ネジ部が設けられている。第1接続部材44と破断部材42と第2接続部材46とは一直線状に連結されて前後方向Xに向けて配置される
【0032】
外筒48は、第1接続部材44と第2接続部材46を内部に挿入する挿入孔が設けられた略円筒状部材からなり、第1接続部材44と第2接続部材46を軸方向すなわち前後方向に沿って移動可能としている。外筒48は、前後中間位置に段差部48aが設けられ、前半部と後半部とで径が異なって設けられている。外筒48には、浮桟橋100のフレーム102に取付金具52を介して取り付けられた軸受54が装着されている。軸受54は、外筒48の径が小さい側の後半部の外周に外嵌されており、外筒48に対して軸周り回転自在となっているとともに、該軸受54の前方側への移動は段差部48aにより規制される。なお、軸受54の前方には座金が配置され、座金を介して外筒48の段差部48aに係合する。すなわち、ブレーカ装置28は、本実施形態では、支持アーム14に対して浮桟橋100の前方への移動を所定位置で規制する前方規制手段36を兼用しているといえる。同時に、ブレーカ装置28により、支持アーム14に対して浮桟橋100を前後方向Xに沿った軸(すなわち外筒48の軸)周りに揺動可能に連結しているとともに前後方向へ移動可能として、ルーズ連結手段32を構成しうる。
【0033】
ブレーカ装置28の第2接続部材46の前端側には前後方向Xに沿って外筒48の外部側へ伸びるボルト軸50が螺合されている。ボルト軸50には、前後に所定の間隔をあけて対向配置された2個1対の反力板56が貫通状に係合されており、該反力板56の対向間隙にゴム又はバネからなる弾性体58が配置されている。さらに、ボルト軸50に貫通された前方側の反力板56の外側にはナット60が螺合されている。一方の反力板56は、外筒54の前端に当接されており、ナット60のボルト軸50への螺合位置を変更させることにより、弾性体58の反力を調整することができる。このようなブレーカ装置28の構成により、支持アーム14に対して浮桟橋100が前方へ移動するような力が作用すると、該弾性体58の反力により力や衝撃を緩衝し、浮桟橋100の損傷を防止できる。すなわち、ブレーカ装置28は、緩衝手段と破断手段を備えた緩衝・破断装置ともいえる。さらに、ボルト軸50とナット60が弾性体58の緩衝力を調整するプリロード調整機構62を構成しており、浮桟橋100の設置状況に応じて緩衝力を調整することができる。なお、ブレーカ装置28は、例えば、上記構成とは逆に浮桟橋100側に軸支させ、支持アーム14側に弾性体58等を作用させる構成としたり、ブレーカ装置28が後方規制機構を兼ねる構成としてもよい。また、ブレーカ装置28とは別に前方規制手段を設けることとしてもよい。
【0034】
図5,
図6に示すように、揺動規制機構34は、例えば、支持アーム14に回動自在に軸支される第1ローラ64と、浮桟橋100に設けられた第1ローラ受部66と、を有する。第1ローラ64は、例えば、ゴムローラからなり、支持アーム14の前端側のフレーム材の左右両端側にそれぞれ配置されている。第1ローラ64は、支持アーム14の前端側のフレーム材に前方側に向けて突出して固定された第1ローラブラケット68に左右方向Yに沿った方向に軸を配した回動軸70を介して回転自在に軸支されている。第1ローラ受部66は、浮桟橋100のフレーム102の左右両端側にそれぞれ第1ローラ64の位置に合わせて配置されている。第1ローラ受部66は、略コ字状の金具からなり、該コ字内部側に第1ローラ64に前方側から当接して該第1ローラ64を受ける。第1ローラ受部66の上下の突設部分がストッパ部72となっており、第1ローラ64の移動の上限及び下限として規制する。これにより、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向Xに沿った軸周りに揺動した際に、第1ローラ64が第1ローラ受部66の上方又は下方のストッパ部72に当接する位置で揺動範囲が規制される。さらに、支持アーム14に対して浮桟橋100が後方に移動しようとする際に、第1ローラ64が第1ローラ受部66に当接する位置で規制される。よって、本実施形態では、揺動規制機構34を構成する第1ローラ64と第1ローラ受部66は、後方規制手段38を兼用している。一方、支持アーム14に対して浮桟橋100が前方に移動しようとする際には、第1ローラ64と第1ローラ受部66から若干離隔することとなるが、上述のような前方規制手段36を調整した、第1ローラ64が第1ローラ受け部66から完全に離脱しないように設定されるとよい。揺動規制機構34を設けることにより、例えば、浮桟橋100上を人が移動や作業等する際に過剰に浮桟橋が揺動するのを防止し、安全に浮桟橋を利用できる。なお、揺動規制機構34は、上記構成に限らず任意の構成としてもよい。例えば、揺動規制機構34は、上記とは逆に、浮桟橋100側に第1ローラ64を設け、支持アーム14側に第1ローラ受部66を設ける構成としてもよい。揺動規制機構34とは別に後方規制手段38を設けることとしてもよい。
【0035】
図7,
図8に示すように、左右規制機構40は、例えば、支持アーム14に回転自在に支持された第2ローラ74と、浮桟橋100に設けられた第2ローラ受部76と、を含む。第2ローラ74は、支持アーム14の前端側のフレーム材に所定の間隔をあけて2個が線対称状に配置されている。第2ローラ74は、支持アーム14のフレーム材に前方側に向けて突出して固定された第2ローラブラケット78に前後方向Xに沿った方向に軸を配した回動軸80を介して回転自在に軸支されている。すなわち、第2ローラ74の回動軸78は、第1ローラ66の回転軸とは垂直な水平方向に設定されている。第2ローラ74は、互いに外向き対向状に配置されている。第2ローラ受部76は、該第2ローラ74に左側方又は右側方から当接して受ける。第2ローラ受け部76は、例えば、第2ローラ74を受ける面が鉛直な平面で形成されている。2個の第2ローラ74のそれぞれの左右両外側となる側方に第2ローラ受部76が当接した構成であるので、浮桟橋100の左右方向Yへの移動が規制される。さらにその規制された状態でも第2ローラ74により、浮桟橋100は、前後方向Xに沿った軸周りのスムーズな揺動が許容される構成となっている。なお、左右規制機構40は、上記した構成に限らず任意の構成としてもよい。例えば、左右規制機構40は、上記とは逆に、浮桟橋100側に第2ローラ74を設け、支持アーム14側に第2ローラ受部76を設ける構成としてもよい。
【0036】
次に図を参照しつつ本実施形態に係る浮桟橋の係留装置10の作用について説明する。本実施形態の浮桟橋の係留装置10は、例えば、港湾等で小型ボートや中型船舶等を保管するマリーナ(図示せず)に並設して設置され、船舶等に乗降等する際に利用される。
図9に示すように、陸LDの岸壁から浮桟橋100に向けて可変階段200が設置されており、可変階段200を介して陸と浮桟橋を往来できる。浮桟橋100は、支持アーム14を介して上下方向に回動自在に係留されているので、干満により海水面WLの変化に追従して、上下動しうる。また支持アーム14と浮桟橋100は、ルーズ連結手段32により、支持アーム14に対して浮桟橋が前後方向Xに沿った軸周りすなわち支持アーム14と浮桟橋100の回動軸とは直交する水平方向の軸周りに揺動可能及び前後方向Xに若干移動可能であるので、連結部分の自由度が比較的高く、波浪等によりある程度大きな外力が作用しても支持アーム14や浮桟橋100にかかる負荷・ストレスが軽減される。また、浮桟橋100が上下動する際には、支持アーム14の回動により若干前後方向Xに移動しうるが、左右方向Yへの移動が規制されるので、マリーナ等施設に対して水面上での平面的な位置は規制され、安定的に利用することができる。同時に、揺動規制機構34により、揺動範囲が規制されるので、利用者も安定して安全に浮桟橋100を利用できる。
【0037】
さらに、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向Xに移動しようとする力が作用する際には、ブレーカ装置28の弾性体58により緩衝して負荷を軽減することができる。なお、港湾等の設置環境に応じて弾性体58のプリロードを調整して、緩衝力を調整することができる。さらに、例えば、台風等で大きな波浪等により支持アーム14や浮桟橋100に大きな外力が係る場合には、ブレーカ装置28により、支持アーム14と浮桟橋100の連結を分離させて、浮桟橋100等の設備の破損を防止することができる。ブレーカ装置28により分離された浮桟橋100は、チェーン等の係留索110によって係留されるので、浮桟橋100が沖に流されてしまったり、他の設備や船舶にぶつかって損傷させたりするのを防止できる。
【0038】
以上説明した本発明の浮桟橋の係留装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の浮桟橋の係留装置は、例えば、海や河川等その他任意の水域に設置される浮桟橋を係留するのに利用できる。
【符号の説明】
【0040】
10 浮桟橋の係留装置
12 固定部
14 支持アーム
16 連結手段
28 ブレーカ装置
32 ルーズ連結手段
34 揺動規制機構
40 左右規制機構
58 弾性体
62 プリロード調整機構
64 第1ローラ
66 第1ローラ受部
72 ストッパ部
74 第2ローラ
76 第2ローラ受部
100 浮桟橋
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、
陸側に固定される固定部と、
該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、
該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、
連結手段は、支持アーム又は浮桟橋に所定以上の負荷がかかる際に支持アームと浮桟橋との連結を分離させるブレーカ装置を有することを特徴とする浮桟橋の係留装置。
【請求項2】
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなることを特徴とする請求項1記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項3】
ブレーカ装置は、浮桟橋を支持アームに対して前後方向に沿った軸周り揺動可能又は前後に移動可能に連結しており、
支持アームに対し浮桟橋が前方又は後方へ移動するのを緩衝しながら規制する弾性体と、
該弾性体による緩衝力を調整するプリロード調整機構と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項4】
水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、
陸側に固定される固定部と、
該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、
該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなり、
連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の前後方向に沿った軸周りの揺動範囲を規制する揺動規制機構を有し、
揺動規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方側に設けられ、回動軸回りに回動自在に軸支される第1ローラと、
支持アームと浮桟橋のいずれか他方側に設けられ、該第1ローラを前方又は後方から受けるとともに、第1ローラの上下方向の移動範囲を規制するストッパ部付きの第1ローラ受部と、を有することを特徴とする浮桟橋の係留装置。
【請求項5】
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有することを特徴とする請求項4記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項6】
左右規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方に設けられ、前後方向に向けた回動軸を介して回転自在に支持された第2ローラと、
支持アームと浮桟橋のいずれか他方に設けられ、該第2ローラに左側方又は右側方から当接して受ける第2ローラ受部と、を含むことを特徴とする請求項5記載の浮桟橋の係留装置。
【請求項7】
水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、
陸側に固定される固定部と、
該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、
該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなり、
連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有し、
左右規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方に設けられ、前後方向に向けた回動軸を介して回転自在に支持された第2ローラと、
支持アームと浮桟橋のいずれか他方に設けられ、該第2ローラに左側方又は右側方から当接して受ける第2ローラ受部と、を含むことを特徴とする浮桟橋の係留装置。
【請求項8】
支持アームは、複数の直状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられたことを特徴とする請求項1,2,4,5,6,7のいずれかに記載の浮桟橋の係留装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上に浮力支持され水位に追従して上下動する浮桟橋を良好に係留するための浮桟橋の係留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海や湖、ダム、河川等の様々な水域において、ボートや船舶への乗降や荷の積み下ろし等の作業のための足場や船舶の係留施設等として浮桟橋が利用されている。浮桟橋は、フロート等を備えた浮体が水上に浮力支持される構造であるから、水位の変化に追従して上下動し水面に対して一定の高さ位置を保持するでき、漁港やマリーナ、船着き場等の種々の施設でも広く利用されている。
【0003】
従来の浮桟橋は、チェーン係留式のものや、杭係留式のものが知られている。チェーン係留式の浮桟橋は、水中又は水底に配置したアンカーに接続されたチェーンを介して浮桟橋を上下動自在に係留している。一方、杭係留式の浮桟橋は、鋼管杭を水底に打設し、該鋼管杭をガイドとして浮桟橋を上下動自在に係留している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のチェーン係留式の浮桟橋は、自在に撓むチェーンを介して係留するものであるから水上で平面的に浮動しやすく、浮桟橋の位置がずれやすい問題があった。また、従来や特許文献1の杭係留式の浮桟橋では、水上での平面的なずれを規制できる反面、浮桟橋を上下にガイドする鋼管杭を海底に打設する必要があるから、施工が煩雑かつ大掛かりで、労力、期間、コストがかかる問題があった。また、海底が軟弱地盤であったり水深がかなり深い場合には、杭の打設が困難であり施工場所が限定されるおそれがあった。さらに、波や風の影響により、浮桟橋にはいろいろな方向から力を受けるが浮桟橋は上下方向のみに移動可能な自由度が少ない構造であり、大きな波浪を受けた際に浮桟橋が負荷に耐え切れず破損してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、浮桟橋を水上で平面的にある程度規制した状態で設置できるとともに、簡単に施工を行え、さらには、例えば、大きな波浪等の影響を受けても破損しにくい浮桟橋の係留装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、連結手段は、支持アーム又は浮桟橋に所定以上の負荷がかかる際に支持アームと浮桟橋との連結を分離させるブレーカ装置を有する浮桟橋の係留装置から構成される。
【0008】
また、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなることとしてもよい。連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の移動の際の負荷を軽減する緩衝手段を有することとよい。ブレーカ装置が緩衝手段を有することとしてもよい。
【0009】
また、ブレーカ装置は、浮桟橋を支持アームに対して前後方向に沿った軸周り揺動可能又は前後に移動可能に連結しており、支持アームに対し浮桟橋が前方又は後方へ移動するのを緩衝しながら規制する弾性体と、該弾性体による緩衝力を調整するプリロード調整機構と、を有することとしてもよい。
【0010】
さらに本発明は、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、
陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなり、連結手段は、支持アームに対する浮桟橋の前後方向に沿った軸周りの揺動範囲を規制する揺動規制機構を有し、揺動規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方側に設けられ、回動軸回りに回動自在に軸支される第1ローラと、支持アームと浮桟橋のいずれか他方側に設けられ、該第1ローラを前方又は後方から受けるとともに、第1ローラの上下方向の移動範囲を規制するストッパ部付きの第1ローラ受部と、を有する浮桟橋の係留装置から構成される。
【0011】
また、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有することとしてもよい。
【0012】
また、左右規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方に設けられ、前後方向に向けた回動軸を介して回転自在に支持された第2ローラと、支持アームと浮桟橋のいずれか他方に設けられ、該第2ローラに左側方又は右側方から当接して受ける第2ローラ受部と、を含むこととしてもよい。
【0013】
さらに本発明は、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備え、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を所定の範囲での前後方向に沿った軸周りに揺動可能又は近接離間するような前後方向に移動可能にルーズに連結するルーズ連結手段からなり、連結手段は、支持アームに対して浮桟橋を左右方向への移動を規制しつつ、前後方向に沿った軸周りに揺動自在とする左右規制機構を有し、左右規制機構は、支持アームと浮桟橋のいずれか一方に設けられ、前後方向に向けた回動軸を介して回転自在に支持された第2ローラと、支持アームと浮桟橋のいずれか他方に設けられ、該第2ローラに左側方又は右側方から当接して受ける第2ローラ受部と、を含む浮桟橋の係留装置から構成される。
【0014】
また、支持アームは、複数の直状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の浮桟橋の係留装置によれば、水上に浮力支持される浮桟橋を係留する浮桟橋の係留装置であって、陸側に固定される固定部と、該固定部に一端側を軸支され上下方向に回動自在とした支持アームと、該支持アームの他端と浮桟橋とを上下方向に回動自在に連結する連結手段と、を備えた構成であるから、従来のような鋼管杭等の打設が不要であり、施工を比較的簡単に行うことができる。さらに、大きな波浪等を受けた際にある程度規制された範囲内で支持アームと浮桟橋が移動できるので、浮桟橋の損傷を良好に防止しうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浮桟橋の係留装置の平面図である。
【
図2】
図1の浮桟橋の係留装置の側面説明図である。
【
図3】
図1の浮桟橋の係留装置のブレーカ装置周辺の拡大図である。
【
図4】
図3の浮桟橋の係留装置のA-A線断面図である。
【
図5】
図1の浮桟橋の係留装置の揺動規制機構周辺の拡大図である。
【
図6】
図5の浮桟橋の係留装置のB-B線断面図である。
【
図7】
図1の浮桟橋の係留装置の左右規制機構周辺の拡大図であるである。
【
図8】
図7の浮桟橋の係留装置のC-C線断面図である。
【
図9】
図1の浮桟橋の係留装置の設置状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照しつつ本発明の浮桟橋の係留装置の実施形態について説明する。本発明に係る浮桟橋の係留装置は、例えば、海や河川等の水域に設置される浮桟橋を水位の変化に追従して上下動可能に係留するための係留システムである。
図1ないし
図9は、本発明の浮桟橋の係留装置の一実施形態を示している。
図1、
図2、に示すように、本実施形態に係る浮桟橋の係留装置10は、陸側に固定される固定部12と、固定部12に回動自在に軸支される支持アーム14と、支持アーム14と浮桟橋100とを回動自在に連結する連結手段16と、を備えている。
【0018】
本実施形態では、図に示すように、固定部12が設けられる陸LDに対して近接離隔する方向の水平方向を前後方向Xとし、陸から離隔する方向を前方向、陸に近接する方向を後方とする。また、前後方向Xに垂直な水平方向を左右方向Yとする。さらに、前後方向X及び左右方向Yに垂直な鉛直高さ方向を上下方向Zとする。
【0019】
本実施形態では、例えば、浮桟橋100は、従来周知のものでよく、例えば、平面視矩形状に設けられたアルミニウム合金等の金属製のフレーム102と、該フレーム102の下方に固定された複数個のフロート104と、該フレーム上に木材板等を敷設して設けられたデッキ106と、を有し、海上等の水域に少なくともデッキ部分を水上に出した状態で浮力支持される。浮桟橋100のフレーム102には、防舷材や係船用のクリート108等が取り付けられている。浮桟橋100は、チェーンやロープ等の係留索110を介して海底に設置されたコンクリートアンカー112や、陸LD側の係留金具114に接続されている。係留金具114は陸LD側や海底に打設させたケミカルアンカーや後述の固定部12等を介して固定されることとしてもよい。なお、係留索110は、浮桟橋110の前端側及び後端側の隅部4か所にそれぞれ接続されるとともに前方側の2本の係留索110どうし及び後方側の2本の係留索110どうしが平面視で交差して配置されている。本実施形態では、浮桟橋100は、前後方向Xに沿って長い平面視長方形状に設けられている。なお、浮桟橋100の形状や大きさ等は任意でもよい。
【0020】
固定部12は、例えば、陸LD側の護岸等に直接に、又は護岸に設けられた施設・設備等を利用して間接的に固定され、支持アーム14を支持する陸側支持手段である。本実施形態では、例えば、
図9に示すような、護岸と浮桟橋100とを往来できるように繋ぐ可変階段200の支持脚202に固定部12が固定されている。
【0021】
図1、
図2に示すように、固定部12は、例えば、可変階段の支持脚202に装着される固定フレーム18と、該固定フレーム18の前端側に前方に向けて突設された固定ブラケット20と、を有している。固定フレーム18は、例えば、可変階段200の支持脚202に外側を囲むように装着されるような矩形枠状に組み合わせて設けられている。直線状の金属フレーム材が該支持脚202の前後に当着させて対向配置されるとともに、それらの前後のフレーム材を前後方向に沿って長い長軸ボルトとナットで締結して、支持脚202に固定されている。
【0022】
固定ブラケット20は、例えば、2個が左右方向Yに所定の間隔で離隔して配置されて固定フレーム18に固定されている。各固定ブラケット20は、対向配置された2枚の板部材の間に左右方向Yに水平方向に軸を向けた回転軸24が架設状に貫通して設けられている。固定ブラケット20に支持された回転軸24に支持アーム14の一端が軸支されている。
【0023】
なお、固定部12は、上記の構造に限らず、任意の構造でもよい。例えば、固定部は、固定ブラケット121を支持脚202や護岸等に直接固定する構造としてもよい。また、固定部12は、例えば、護岸の上面や側面等に直接的に固定したり、その他の港湾設備等に固定したり、その他任意の構造物に固定することとしてもよい。また、固定部12は、水上位置でも水中位置でも任意に設定してもよい。
【0024】
支持アーム14は、水位に追従して上下動する浮桟橋100を係留する係留手段である。支持アーム14は、例えば、金属等の剛体で形成されており、浮桟橋100の水上での平面的な位置が大きくずれないように保持又は規制しながら浮桟橋100を上下動自在に支持する。
図1,
図2に示すように、支持アーム14は、後端となる一端側が固定部12の回転軸22を介して固定部12に上下方向に回動自在に連結される。さらに、支持アーム14は、前端となる他端側が連結手段16を介して浮桟橋100に対して上下方向に回動自在に連結される。
【0025】
本実施形態では、支持アーム14は、複数の金属製の直線状のフレーム材を三角形状に組み合わせて構成されたトラス状構造で設けられている。支持アーム14は、例えば、平面視台形枠状の外形輪郭となるようにフレーム材で外枠が形成されるとともに、該台形枠状の内側にフレーム材を複数の三角形ができるように配置し、各フレーム材をボルトや溶接等により固定している。なお、各フレーム材をピン連結等して、フレーム材どうしが揺動できるようにしてもよい。
【0026】
支持アーム14の後端側のフレーム材には、後方に向けて突出した可動ブラケット24が設けられている。可動ブラケット24は、例えば、支持アーム14の後端側のフレーム材の左右両端にそれぞれ固定されており、固定部12の固定ブラケット20に支持された固定軸22を介して軸支されている。支持フレーム14の前端側のフレーム材には、前方側に突設されたブレーカ用ブラケット26が固定されている。ブレーカ用ブラケット26は、後述の連結手段16のブレーカ装置28を接続する要素であり、左右方向Yに沿って水平方向に軸を向けた回転軸30が支持されている。
【0027】
連結手段16は、支持アーム14の他端と浮桟橋100とを上下方向に回動自在に連結する、すなわち左右方向Yに沿った軸回りに回動自在に連結する連結手段である。本実施形態では、連結手段16は、支持アーム14と浮桟橋100とを上下方向に回動自在とした構成に加えて、支持アーム14に対して浮桟橋100を所定の範囲で左右に揺動可能(すなわち前後方向Xに沿った水平方向の軸回りに回動可能)及び所定の範囲で前後方向Xに沿って移動可能(陸に対して近接離間可能)としたルーズ連結手段32となっている。これにより、剛体からなる支持アーム14と浮桟橋100との連結部分がある程度の自由度で連結されたことにより、浮桟橋に大きな波浪等により大きな負荷がかかった際に、比較的高い自由度で可動させてある程度力を吸収・又は分散させることにより浮桟橋を破損しにくくできる。なお、ルーズ連結手段32は、浮桟橋100を左右に揺動可能か前後方向に移動可能かのいずれかの構成とすることとしてもよい。
【0028】
本実施形態では、連結手段16は、所定以上の大きな負荷がかかった際に支持アーム14と浮桟橋100との連結を分離させるブレーカ装置28と、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向に沿った軸周りに揺動する範囲を規制する揺動規制機構34と、同浮桟橋100が前方側へ移動するのを所定位置で規制する前方規制機構36と、同浮桟橋100が後方側へ移動するのを所定位置で規制する後方規制機構38と、同浮桟橋100が左右方向Yに移動するのを規制する左右規制機構40と、を有する。
【0029】
ブレーカ装置28は、例えば、破断部材42を有し、浮桟橋100が大きな波浪等の大きな外力を受けて所定以上の負荷がかかった際に、該破断部材42が破断されて支持アーム14と浮桟橋100を分離する破断手段である。これにより、大きな力が作用した場合に浮桟橋100自体が破損するのを防止できる。なお、上記のように浮桟橋100は、チェーン108を介してアンカー(錘)110に接続されているので、分離された浮桟橋100が遠方に流されるのが防止される。ブレーカ装置28は、
図3、
図4に示すように、例えば、一端がブレーカ用ブラケット26に回転軸30を介して軸支される第1接続部材44と、第1接続部材の端部に接続される破断部材42と、該破断部材42を介して第1接続部材44に直列状に接続される第2接続部材46と、第1部接続部材44の一部及び第2接続部材46を内部に嵌合させる外筒48と、を有する。
【0030】
破断部材42は、例えば、高負荷時の破断部分となるくびれ部が設けられた平板状部材から設けられている。第1接続部材44は、例えば、円柱状部材からなり、平板状の破断部材42を嵌合状に受け入れるスリットが設けられている。第1接続部材44と破断部材42とはピン等により接続される。第2接続部材46は、例えば、第1接続部材44とほぼ同様に円柱状部材からなり、平板状の破断部材42を嵌合状に受け入れるスリットが設けられている。第2接続部材46と破断部材42とはピン等により接続される。さらに第2接続部材46の前端部には、後述のボルト軸50が螺合する雌ネジ部が設けられている。第1接続部材44と破断部材42と第2接続部材46とは一直線状に連結されて前後方向Xに向けて配置される
【0031】
外筒48は、第1接続部材44と第2接続部材46を内部に挿入する挿入孔が設けられた略円筒状部材からなり、第1接続部材44と第2接続部材46を軸方向すなわち前後方向に沿って移動可能としている。外筒48は、前後中間位置に段差部48aが設けられ、前半部と後半部とで径が異なって設けられている。外筒48には、浮桟橋100のフレーム102に取付金具52を介して取り付けられた軸受54が装着されている。軸受54は、外筒48の径が小さい側の後半部の外周に外嵌されており、外筒48に対して軸周り回転自在となっているとともに、該軸受54の前方側への移動は段差部48aにより規制される。なお、軸受54の前方には座金が配置され、座金を介して外筒48の段差部48aに係合する。すなわち、ブレーカ装置28は、本実施形態では、支持アーム14に対して浮桟橋100の前方への移動を所定位置で規制する前方規制手段36を兼用しているといえる。同時に、ブレーカ装置28により、支持アーム14に対して浮桟橋100を前後方向Xに沿った軸(すなわち外筒48の軸)周りに揺動可能に連結しているとともに前後方向へ移動可能として、ルーズ連結手段32を構成しうる。
【0032】
ブレーカ装置28の第2接続部材46の前端側には前後方向Xに沿って外筒48の外部側へ伸びるボルト軸50が螺合されている。ボルト軸50には、前後に所定の間隔をあけて対向配置された2個1対の反力板56が貫通状に係合されており、該反力板56の対向間隙にゴム又はバネからなる弾性体58が配置されている。さらに、ボルト軸50に貫通された前方側の反力板56の外側にはナット60が螺合されている。一方の反力板56は、外筒54の前端に当接されており、ナット60のボルト軸50への螺合位置を変更させることにより、弾性体58の反力を調整することができる。このようなブレーカ装置28の構成により、支持アーム14に対して浮桟橋100が前方へ移動するような力が作用すると、該弾性体58の反力により力や衝撃を緩衝し、浮桟橋100の損傷を防止できる。すなわち、ブレーカ装置28は、緩衝手段と破断手段を備えた緩衝・破断装置ともいえる。さらに、ボルト軸50とナット60が弾性体58の緩衝力を調整するプリロード調整機構62を構成しており、浮桟橋100の設置状況に応じて緩衝力を調整することができる。なお、ブレーカ装置28は、例えば、上記構成とは逆に浮桟橋100側に軸支させ、支持アーム14側に弾性体58等を作用させる構成としたり、ブレーカ装置28が後方規制機構を兼ねる構成としてもよい。また、ブレーカ装置28とは別に前方規制手段を設けることとしてもよい。
【0033】
図5,
図6に示すように、揺動規制機構34は、例えば、支持アーム14に回動自在に軸支される第1ローラ64と、浮桟橋100に設けられた第1ローラ受部66と、を有する。第1ローラ64は、例えば、ゴムローラからなり、支持アーム14の前端側のフレーム材の左右両端側にそれぞれ配置されている。第1ローラ64は、支持アーム14の前端側のフレーム材に前方側に向けて突出して固定された第1ローラブラケット68に左右方向Yに沿った方向に軸を配した回動軸70を介して回転自在に軸支されている。第1ローラ受部66は、浮桟橋100のフレーム102の左右両端側にそれぞれ第1ローラ64の位置に合わせて配置されている。第1ローラ受部66は、略コ字状の金具からなり、該コ字内部側に第1ローラ64に前方側から当接して該第1ローラ64を受ける。第1ローラ受部66の上下の突設部分がストッパ部72となっており、第1ローラ64の移動の上限及び下限として規制する。これにより、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向Xに沿った軸周りに揺動した際に、第1ローラ64が第1ローラ受部66の上方又は下方のストッパ部72に当接する位置で揺動範囲が規制される。さらに、支持アーム14に対して浮桟橋100が後方に移動しようとする際に、第1ローラ64が第1ローラ受部66に当接する位置で規制される。よって、本実施形態では、揺動規制機構34を構成する第1ローラ64と第1ローラ受部66は、後方規制手段38を兼用している。一方、支持アーム14に対して浮桟橋100が前方に移動しようとする際には、第1ローラ64と第1ローラ受部66から若干離隔することとなるが、上述のような前方規制手段36を調整した、第1ローラ64が第1ローラ受け部66から完全に離脱しないように設定されるとよい。揺動規制機構34を設けることにより、例えば、浮桟橋100上を人が移動や作業等する際に過剰に浮桟橋が揺動するのを防止し、安全に浮桟橋を利用できる。なお、揺動規制機構34は、上記構成に限らず任意の構成としてもよい。例えば、揺動規制機構34は、上記とは逆に、浮桟橋100側に第1ローラ64を設け、支持アーム14側に第1ローラ受部66を設ける構成としてもよい。揺動規制機構34とは別に後方規制手段38を設けることとしてもよい。
【0034】
図7,
図8に示すように、左右規制機構40は、例えば、支持アーム14に回転自在に支持された第2ローラ74と、浮桟橋100に設けられた第2ローラ受部76と、を含む。第2ローラ74は、支持アーム14の前端側のフレーム材に所定の間隔をあけて2個が線対称状に配置されている。第2ローラ74は、支持アーム14のフレーム材に前方側に向けて突出して固定された第2ローラブラケット78に前後方向Xに沿った方向に軸を配した回動軸80を介して回転自在に軸支されている。すなわち、第2ローラ74の回動軸78は、第1ローラ66の回転軸とは垂直な水平方向に設定されている。第2ローラ74は、互いに外向き対向状に配置されている。第2ローラ受部76は、該第2ローラ74に左側方又は右側方から当接して受ける。第2ローラ受け部76は、例えば、第2ローラ74を受ける面が鉛直な平面で形成されている。2個の第2ローラ74のそれぞれの左右両外側となる側方に第2ローラ受部76が当接した構成であるので、浮桟橋100の左右方向Yへの移動が規制される。さらにその規制された状態でも第2ローラ74により、浮桟橋100は、前後方向Xに沿った軸周りのスムーズな揺動が許容される構成となっている。なお、左右規制機構40は、上記した構成に限らず任意の構成としてもよい。例えば、左右規制機構40は、上記とは逆に、浮桟橋100側に第2ローラ74を設け、支持アーム14側に第2ローラ受部76を設ける構成としてもよい。
【0035】
次に図を参照しつつ本実施形態に係る浮桟橋の係留装置10の作用について説明する。本実施形態の浮桟橋の係留装置10は、例えば、港湾等で小型ボートや中型船舶等を保管するマリーナ(図示せず)に並設して設置され、船舶等に乗降等する際に利用される。
図9に示すように、陸LDの岸壁から浮桟橋100に向けて可変階段200が設置されており、可変階段200を介して陸と浮桟橋を往来できる。浮桟橋100は、支持アーム14を介して上下方向に回動自在に係留されているので、干満により海水面WLの変化に追従して、上下動しうる。また支持アーム14と浮桟橋100は、ルーズ連結手段32により、支持アーム14に対して浮桟橋が前後方向Xに沿った軸周りすなわち支持アーム14と浮桟橋100の回動軸とは直交する水平方向の軸周りに揺動可能及び前後方向Xに若干移動可能であるので、連結部分の自由度が比較的高く、波浪等によりある程度大きな外力が作用しても支持アーム14や浮桟橋100にかかる負荷・ストレスが軽減される。また、浮桟橋100が上下動する際には、支持アーム14の回動により若干前後方向Xに移動しうるが、左右方向Yへの移動が規制されるので、マリーナ等施設に対して水面上での平面的な位置は規制され、安定的に利用することができる。同時に、揺動規制機構34により、揺動範囲が規制されるので、利用者も安定して安全に浮桟橋100を利用できる。
【0036】
さらに、支持アーム14に対して浮桟橋100が前後方向Xに移動しようとする力が作用する際には、ブレーカ装置28の弾性体58により緩衝して負荷を軽減することができる。なお、港湾等の設置環境に応じて弾性体58のプリロードを調整して、緩衝力を調整することができる。さらに、例えば、台風等で大きな波浪等により支持アーム14や浮桟橋100に大きな外力が係る場合には、ブレーカ装置28により、支持アーム14と浮桟橋100の連結を分離させて、浮桟橋100等の設備の破損を防止することができる。ブレーカ装置28により分離された浮桟橋100は、チェーン等の係留索110によって係留されるので、浮桟橋100が沖に流されてしまったり、他の設備や船舶にぶつかって損傷させたりするのを防止できる。
【0037】
以上説明した本発明の浮桟橋の係留装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の浮桟橋の係留装置は、例えば、海や河川等その他任意の水域に設置される浮桟橋を係留するのに利用できる。
【符号の説明】
【0039】
10 浮桟橋の係留装置
12 固定部
14 支持アーム
16 連結手段
28 ブレーカ装置
32 ルーズ連結手段
34 揺動規制機構
40 左右規制機構
58 弾性体
62 プリロード調整機構
64 第1ローラ
66 第1ローラ受部
72 ストッパ部
74 第2ローラ
76 第2ローラ受部
100 浮桟橋