(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156225
(43)【公開日】2024-11-05
(54)【発明の名称】つる性植物の室内栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/12 20060101AFI20241028BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20241028BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20241028BHJP
【FI】
A01G9/12 A
A01G22/05 Z
A01G31/00 614
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070522
(22)【出願日】2023-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】313006234
【氏名又は名称】有限会社グリーンスペース造園
(74)【代理人】
【識別番号】100143362
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 謙二
(72)【発明者】
【氏名】小山 茂樹
【テーマコード(参考)】
2B022
2B023
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB15
2B023AA05
2B023AB10
2B023AF02
2B023AH01
2B314NC06
2B314NC38
2B314ND04
2B314ND05
2B314PC18
2B314PD59
2B314PD65
(57)【要約】
【課題】例えばマンション室内で行うトマトなどのつる性植物の水耕栽培などに好適な装置を提供する。
【解決手段】本栽培装置101は、水耕栽培装置100のタンク5の上方に設けられ、トマト9のつる先端を誘引するための誘引フック107を引っ掛け可能な誘引棚104を備え、誘引棚104を平面視でタンク5とLED105,106とより大きなものとした上で、誘引棚104に誘引フック107が引っ掛けられることにより、トマト9の枝がタンク5周りの室内床面102上でとぐろを巻くなるように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
つる性植物を室内に設置された装置本体内で育成可能な栽培装置であって、
前記装置本体の上方に設けられ、前記つる性植物のつる先端を誘引するための誘引手段と、前記誘引手段に係合して該誘引手段を案内可能な案内手段とを備え、
前記案内手段を平面視で前記装置本体より大きなものとした上で、前記案内手段に前記誘引手段が係合されて案内されることにより、前記つる性植物が前記装置本体周りで巻回可能となるように構成したことを特徴とするつる性植物の栽培装置。
【請求項2】
前記案内手段は、前記装置本体の周囲に立設された支柱の上部に横設されたことを特徴とする請求項1記載のつる性植物の栽培装置。
【請求項3】
人工光を照射可能な照射体を前記案内手段の下方に設けるとともに、前記案内手段を平面視で前記照射体より大きなものとした上で、前記案内手段に前記誘引手段が係合されて案内されることにより、前記つる性植物が前記照射体を回避可能となるように構成したことを特徴とする請求項1記載のつる性植物の栽培装置。
【請求項4】
前記誘引手段は、誘引フックであり、前記案内手段は、前記誘引フックを引っ掛け可能な網状又はレール状に形成された誘引棚であることを特徴とする請求項1又は3記載のつる性植物の栽培装置。
【請求項5】
前記つる性植物はトマトであることを特徴とする請求項1又は3記載のつる性植物の栽培装置。
【請求項6】
前記照射体は1又は複数段に設けられたLEDであることを特徴とする請求項3記載のつる性植物の栽培装置。
【請求項7】
前記装置本体は、前記つる性植物の根本周りを囲む発泡煉石と、前記発泡煉石で根本周りを囲んだ前記つる性植物を保持するメッシュポットと、前記メッシュポットを前記装置本体内に保持する栽培床とを備えた水耕栽培装置であることを特徴とする請求項1又は3記載のつる性植物の栽培装置。
【請求項8】
前記栽培床は、前記装置本体内に充填された培養液で浮遊する浮力体であることを特徴とする請求項7記載のつる性植物の栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つる性植物の室内栽培装置に関し、例えばマンション室内で行うトマトなどのつる性植物の水耕栽培などに好適である。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培は、観賞用や食用の植物をその育成状態を容易に観察できるため、趣味と実益とを兼ねて採用される傾向にある。この水耕栽培装置として、培養液を別の貯液槽に蓄えず、栽培槽に直接供給して必須養分を溶解させ、作物の生育に適した濃度に調合しているものがある(例えば特許文献1参照)。この装置は、循環ポンプや配管類を必要とせず、栽培槽だけで足り、簡易で比較的手軽に取り扱えるため、一般家庭の庭やベランダに設置されるものとして好適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、トマトやミニトマト(以下、トマトと総称する。)のようなつる性植物を、マンション室内で水耕栽培したのでは、つるの成長が早く、直ぐに天井に到達し、さらには天井を横に這って繁茂し、肝心の生長点のあるつる先端が痛みやすい。水耕栽培以外の土を使う栽培についても同様の欠点がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、例えばマンション室内で行うトマトなどのつる性植物の水耕栽培などに好適な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、つる性植物を室内に設置された装置本体で育成可能な栽培装置であって、前記装置本体の上方に設けられ、前記つる性植物のつる先端を誘引するための誘引手段と、前記誘引手段に係合して該誘引手段を案内可能な案内手段とを備え、前記案内手段を平面視で前記装置本体より大きなものとした上で、前記案内手段に前記誘引手段が係合されて案内されることにより、前記つる性植物が前記装置本体周りで巻回可能となるように構成したことを特徴とするものである。
【0006】
本発明によれば、前記装置本体の上方に設けられ、前記つる性植物のつる先端を誘引するための誘引手段と、前記誘引手段に係合して該誘引手段を案内可能な案内手段とを備えたので、つる性植物のつる先端に常に空間を有し、つるの成長を阻害しないようになる。
【0007】
また、前記案内手段を平面視で前記装置本体より大きなものとした上で、前記案内手段に前記誘引手段が係合されて案内されることにより、前記つる性植物が前記装置本体周りで巻回可能となるように構成したので、つる性植物の余った茎(枝)を装置本体の置かれた床面に巻回させることにより、室内の空間を効率的に利用できるようになる。その結果、例えばマンション室内で行うつる性植物の栽培に好適である。
【0008】
請求項2記載の発明のように、前記案内手段は、前記装置本体の周囲に立設された支柱の上部に横設されることが好ましい。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、前記案内手段は、前記装置本体の周囲に立設された支柱の上部に横設されたので、かかる支柱の存在により、前記つる性植物が前記装置本体周りで巻回可能となるように確実に案内される。
【0010】
請求項3記載の発明のように、人工光を照射可能な照射体を前記案内手段の下方に設けるとともに、前記案内手段を平面視で前記照射体より大きなものとした上で、前記案内手段に前記誘引手段が係合されて案内されることにより、前記つる性植物が前記照射体を回避可能となるように構成することが好ましい。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、人工光を照射可能な照射体を前記案内手段の下方に設けるとともに、前記案内手段を平面視で前記照射体より大きなものとした上で、前記案内手段に前記誘引手段が係合されて案内されることにより、前記つる性植物が前記照射体を回避可能となるように構成したので、つる性植物自身が照射体からの人工光を遮ることがなくなり、自然光(太陽光)の入りにくい室内であっても、つる性植物の効率的な育成を行うことができる。
【0012】
請求項4記載の発明のように、前記誘引手段は、誘引フックであり、前記案内手段は、前記誘引フックを引っ掛け可能な網状又はレール状に形成された誘引棚であることが好ましい。
【0013】
請求項4の発明によれば、前記誘引手段は、誘引フックであり、前記案内手段は、前記誘引フックを引っ掛け可能な網状又はレール状に形成された誘引棚であるので、誘引フックを確実に引っ掛けることができる。
【0014】
請求項5記載の発明のように、前記つる性植物はトマトであることが好ましい。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、前記つる性植物はトマトであるので、そのトマトの実を確実に収穫できるようになる。
【0016】
請求項6記載の発明のように、前記照射体は1又は複数段に設けられたLEDであることが好ましい。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、前記照射体は1又は複数段に設けられたLEDであるので、電力消費量を抑えて、低コストで効率的な育成を行うことができる。また。、LEDは発熱がほとんどないので、つる性植物が接触しても熱枯れを起こすことがない。
【0018】
さらに、LEDを複数段にすると、つる性植物の下方に、つる性以外の背丈の低い植物を同時期に栽培する場合であっても、人工光を照射できるようになり、全体としての育成効率が上がる。
【0019】
請求項7記載の発明のように、前記装置本体は、前記つる性植物の根本周りを囲む発泡煉石と、前記発泡煉石で根本周りを囲んだ前記つる性植物を保持するメッシュポットと、前記メッシュポットを前記装置本体内に保持する栽培床とを備えた水耕栽培装置であることが好ましい。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、前記装置本体は、前記つる性植物の根本周りを囲む発泡煉石と、前記発泡煉石で根本周りを囲んだ前記つる性植物を保持するメッシュポットと、前記メッシュポットを前記装置本体内に保持する栽培床とを備えた水耕栽培装置であるので、育成鉢からつる性植物の苗等を取り出してその根本周りを発泡煉石で固定した状態で植え替えることができる。これにより、植え替え時につる性植物の根を傷めてしまうおそれがなくなる。
【0021】
請求項8記載の発明のように、前記栽培床は、前記装置本体内に充填された培養液で浮遊する浮力体であることが好ましい。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、前記栽培床は、前記装置本体内に充填された培養液で浮遊する浮力体であるので、栽培床の沈下状態がすなわち培養液の液面を表わしており、培養液不足を素人でも一目で判断することができるため、培養液の管理が極めて容易で、この状態に至ったときに培養液を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、前記装置本体の上方に設けられ、前記つる性植物のつる先端を誘引するための誘引手段と、前記誘引手段に係合して該誘引手段を案内可能な案内手段とを備えたので、つる性植物のつる先端に常に空間を有し、つるの成長を阻害しないようになる。
【0024】
また、前記案内手段を平面視で前記装置本体より大きなものとした上で、前記案内手段に前記誘引手段が係合されて案内されることにより、前記つる性植物が前記装置本体周りで巻回可能となるように構成したので、つる性植物の余った枝を装置本体の置かれた床面に巻回させることにより、室内の空間を効率的に利用できるようになる。その結果、例えばマンション室内で行うつる性植物の栽培に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る栽培装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る誘引フックの正面図である。
【
図4】本実施形態に係る水耕栽培装置の縦断面図である。
【
図5】本実施形態に係る水耕栽培装置の平面図である。
【
図6】本実施形態に係るメッシュポットと浮力体との断面図である。
【
図7】本実施形態に係るつる性植物の成長過程を示す説明図である。
【
図8】水耕栽培による露地栽培可能期間を示す参考図である。
【
図9】本発明の変形例1に係る栽培装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図10】本発明の変形例2に係る栽培装置の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明の実施形態に係る栽培装置101の全体構成を示す斜視図、
図2は本実施形態に係る誘引フック107の正面図、
図3は本実施形態に係る誘引棚104の平面図、
図4は本実施形態に係る水耕栽培装置100の縦断面図、
図5は本実施形態に係る水耕栽培装置100の平面図、本実施形態に係るメッシュポット10と浮力体1との断面図である。本実施形態では、マンション室内に設置される水耕栽培装置100を使用する場合について説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る栽培装置101は、トマト(つる性植物の一種)9を例えばマンション室内の床面102上に設置された水耕栽培装置100で育成可能なものであって、水耕栽培装置100の周囲に立設された4本の支柱103の上部に設けられ、トマト9のつる先端を誘引するための誘引フック(誘引手段に相当する。)107を引っ掛け可能な誘引棚(案内手段に相当する。)104と、誘引棚104の下方に2段で設けられ、人工光を照射可能な照射体としてのLED(Light Emitting Diode)105,106とを備えている。
【0028】
誘引フック107は、例えば
図2に示すように、針金細工で作られた市販品のトマトフックと呼ばれるものであって、上下端の引っ掛け部107a,107bと、弓なり形状のハンドル部107cと、上下凹部107d,107eとからなっている。このうちの上下端の引っ掛け部107a,107bは、誘引棚104にそれらのいずれかを引っ掛けることができる部位、ハンドル部107cは、誘引作業を行う者が片手で握りしめることのできる部位、上下凹部107d,107eは、上下方向に回転させることにより、例えば合成樹脂製の誘引紐108を繰り出し自在に巻き付ける部位である。誘引フック107は、誘引紐108をローラに繰り出し自在に巻きかけた市販のローラフックと呼ばれるものであってもよい。
【0029】
誘引棚104は、例えば
図3に示すように、長方形状の枠104aと、枠104a内に張られたワイヤネット104bとからなる網状体であって、誘引フック107をその誘引棚104の枠104aとワイヤネット104bとのクロスポイント等に引っ掛けることで、誘引フック107を所定の位置に移動させるものである。誘引棚104は円形状又は楕円形状のレールであってもよいが、いずれも平面視で水耕栽培装置100とLED105,106とよりも大きいものとなっている。
【0030】
LED105は、誘引棚104の直下に固定されているが、LED106は、LED105と水耕栽培装置100との間で高さ調整可能に配置されている。LED105,106からの人工光(例えば白色光である。)の照射方向は、いずれも下向きとして、鑑賞時の防舷機能を持たせている。また、LED105,106は、図示しないスイッチで個別に点消灯できるようになっている。なお、LED105,106は、平面視で同じ大きさのものを2段に設けているが、必ずしも大きさを揃える必要はなく、それらのうちの1段だけ又は3段以上設けることとしてもよい。
【0031】
水耕栽培装置100は、
図4~
図6に示すように、トマト9の苗を土植えした図示しない育成鉢の内容物を取り出し、水洗により根を傷めない程度に土を取り除いたトマト9の苗の根本周りを発泡煉石3で囲んでメッシュポット10に入れ、このメッシュポット10を栽培床としての浮力体1で取り囲んでタンク5内の培養液4で浮かす一方、そのタンク5内の散気球12で培養液4中に散気されるようになっている。
【0032】
この散気は、培養液4中に有機物(藻類)が発生すると、培養液4中が酸素不足となり、トマトの根9が育成しにくくなるから、培養液4中に酸素を補充するものである。また、タンク5が深い場合は問題ないが、タンク5が浅い場合はこのタンク5の培養液4中に酸素が十分にいきわたるように浅井戸ポンプや水中ポンプで培養液4を撹拌するようにしてもよい。なお、培養液4は、例えばハイポネックス(商品名)を水で希釈して使用するものであり、発泡煉石3は、例えばハイドロボール(商品名)である。この発泡煉石3に代えて、グラスウールや軽石などを使用してもよい。
【0033】
タンク5は、上部が開放された直方体状をなしており、その各辺に設けられた枠体14において、底面を除く全ての周面(前後左右面)を構成するように、透明のガラス板がそれぞれ嵌め込まれている。透明のガラス板を使用しているのは、植物の根のはり具合など育成状態を観察するためである。かかる目的がない場合は、底面を含めて不透明の合成樹脂(プラスチック)や、抽出法ポリスチレンフォーム(例えばスタイロフォーム(登録商標))等で構成してもよい。
【0034】
浮力体1は、やや扁平な異型のものではあるが、平面視では長方形状をなしており、タンク5の上部の枠体14による開口よりもわずかに大きい寸法となっている。この枠体14が、タンク5の最上部において、浮力体1のさらなる上昇を止めて、トマトの苗9の過大な傾きを防止するストッパ手段としての機能を有する。また、浮力体1の平面視での略中央には、メッシュポット10を立姿勢で嵌め込み可能な貫通孔1aが1個だけ形成されている。
【0035】
メッシュポット10は、前記育成鉢を一回り大きくしたような円錐台形状をなしており、その周面10bと底面10cとには、その中に詰める発泡煉石3は通過できないが、植物の苗9の根がはり出したときに通過できるような大きさの貫通孔が複数形成されているものである。また、メッシュポット10の上端にはフランジ10aが形成されており、このフランジ10aが前記浮力体1の貫通孔1aに係止されて、メッシュポット10が浮力体1に一体化されるようになっている。
【0036】
そして、浮力体1の貫通孔1aの外側が二重構造1b、さらに外側が一重構造1cとなっている。二重構造1bは、中空とするか、或いは、発泡スチロールや抽出法ポリスチレンフォームを封入したものとする。そして、かかる構成の浮力体1で、メッシュポット10の上部のみを支持することができるようになっている。浮力体1に比べてメッシュポット10がかなり高い場合には、全体の重心が高くなって、その浮力体1を培養液4に浮かせたときに不安定となりやすいからである。一重構造1cの片隅には、給排水口11が設けられている。
【0037】
図4からは明らかでないが、透明なガラス製のタンク5の場合は、その周面が不透明で遮光性のある断熱材で覆われている。自然光の入りにくい室内では必須とはいえないが、遮光することで、極力有機物の発生を抑えるとともに、その断熱作用により、タンク5内の温度をほぼ一定に維持するためである。ただし、タンク5の上部は開放されているので、不透明で遮光性のある浮力体カバー2で覆われている。タンク5と同様に、遮光することで、極力有機物の発生を抑えるものである。
【0038】
それでも有機物が発生して培養液4が酸素不足となることがある。そのために、散気球12と、この散気球12にエアーホースジョイント8を介して接続されたエアーホース7と、このエアーホース7にエアーを供給するエアーポンプ6と、このエアーポンプ6に電力を供給する電源コード13とを備え、培養液4中に空気泡(酸素)を補充するようになっている。
【0039】
図7は本実施形態に係るつる性植物の成長過程を示す説明図、
図8は水耕栽培による露地栽培可能期間を示す参考図である。
図8では、トマト9の植え付けは同図中の平行破線で示す領域のように3月~5月で、トマト9の収穫は同図中の平行斜線で示す領域のように5月~11月となっている。これに基づく作付け計画を実行することで、同じ植物を連続して栽培することにより、トマト9を大量に収穫することができる。他の植物についても同様であり、いずれも生産効率が良くなる。室内栽培では、いつでも作付けできるので、さらに生産効率が良くなることはいうまでもない。なお、
図7では、説明の便宜上、トマト9の枝のみを表示し枝につく葉などを省略している。
【0040】
以下、
図1および
図7を参照して、本発明者が、かかるトマト9の作付け計画を水耕栽培において実行した結果を踏まえて、本栽培装置101の使用方法の一例を説明する。本栽培装置101では、マンション室内の床面102上に水耕栽培装置100のタンク5が設置され、タンク5の周囲の四隅に支柱103がそれぞれ立設されている。これらの支柱103の上部には誘引棚104が横設されており、誘引棚104のさらに下方にはLED105,106がともに消灯状態で付設されている。
【0041】
市販のトマトの苗9を土植えした育成鉢を用意しておく。そして、最初に発泡煉石3をメッシュポット10に少量入れておく。その一方で、育成鉢から取り出したトマトの苗9の根を傷めないように注意を払いながら水洗して土を取り除いておく。そして、土を取り除いたトマトの苗9を、前記発泡煉石3を少量入れたメッシュポット10の中に置き、そのトマトの苗9の枝周りに、さらに発泡煉石3を入れて、メッシュポット10の中にそのトマトの苗9を固定する。
【0042】
メッシュポット10を浮力体1の貫通孔1aに嵌め込み、浮力体1の表面を浮力体カバー2で覆う。タンク5の底部に、外部のエアーポンプ6とエアーホース7により接続された散気球12を設置し、エアーホース7をエアーホースジョイント8でタンク5の枠体14に固定する。
【0043】
タンク5内に培養液4を半分程度注ぎ入れ、浮力体1をタンク5に入れてから、前記給排水口11を通じて、タンク5内に培養液4を注ぎ入れて液量調整する。ここでタンク5内に培養液4を注ぎ入れると、浮力体1が上昇し、やがて枠体14に当接して止まる。このとき、タンク5内は最大液位WLまで培養液4で満たされているので、ただちにその注ぎ入れを中止する。電源コード13を図示しない電源に接続して、エアーポンプ6を駆動させると、空気泡が発生する。その後は、培養液4の補充を行う。
【0044】
トマト9の苗が根付くと、LED106を点灯する。そして、トマト9の苗が成長し、そのつる先端が15~20cm程度になると、自立しにくくなる。そこで、
図7(a)に示すように、誘引棚104に誘引フック107を引っ掛けて、そのトマト9の主枝に誘引紐108をくくりつける。これにより、4本の支柱103の包絡線外側にトマト9のつるを巻きつけるようにして、その主枝を、誘引棚104から吊り下げて軽く誘引する。すると、トマト9が成長し、そのつる先端が誘引紐108を伝わって、さらに上方に伸びてくる。ここでは、主枝だけを残し、わき芽を摘み取って、いわゆる1本仕立てとするが、トマト9の種類によっては、主枝の左右のわき芽をも残す2本仕立てや3本仕立て等であってもよい。その場合は、4本の支柱103の包絡線外側にトマト9のつるを巻きつけて枝分かれさせ、枝分かれした枝のそれぞれを誘引棚104に誘引フック107で引っ掛けて吊り下げる。
【0045】
やがて、
図7(b)に示すように、トマト9のつる先端がLED106を超えると、LED106を消灯しLED105を点灯する。そして、
図7(c)に示すように、トマト9のつる先端が誘導棚104に近づくと、一旦、誘導フック107を誘導棚104から外して誘導紐108が緩む向きに上下反転させる。すると、誘導紐108が緩むので、その分だけトマト9のつる先端が下がることになる。このとき、誘導フック107を
図1中のA方向に少しだけ移動させて、誘導棚104の同図中右側の部位に引っ掛ける。また、トマト9のつる先端が誘引紐108を伝わって上方に伸びてくる。
【0046】
これらの誘引作業を繰り返すことにより、トマト9の枝が、LED105,106を回避するとともに、多量の葉などのついた枝自身の重さで自然に落下する結果、
図1に示すように、タンク5の置かれた室内床面102上に、タンク5を中心として、反時計回りでとぐろを巻くようになる。一方、誘導フック107を
図1中のA方向と反対側に移動して、誘導棚104に引っ掛けると、トマト9の枝が、LED105,106を回避するとともに、タンク5の置かれた室内床面102上に、タンク5を中心として、時計回りでとぐろを巻くようになる。このようにして、トマト9の枝の伸び方向を制御できる。やがてトマト9が結実し、その実が所定の大きさと色合いになるのをみはからって収穫する。なお、トマト9の2本仕立てまたは3本仕立て等の場合には、それらの枝の案内方向は同一とすることにより、タンク5周りの室内床面102において、トマト9の枝のボリュームをできるだけコンパクトにすることができる。
【0047】
やがてトマト9が結実し、その実が所定の大きさと色合いになるのをみはからって収穫する。その後、LED105を消灯するとともに、エアーポンプ6を停止して水耕栽培装置100のタンク5内の散気を停止する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の栽培装置101の水耕栽培装置100では、育成鉢から取り出して水洗した植物の苗9を発泡煉石3で囲んでメッシュポット10に入れて固定し、このメッシュポット10を浮力体1で取り囲んでタンク5内の培養液4で浮かすように構成したので、育成鉢からトマト9の苗9を取り出して容易に植え替えることができる。これにより、植え替え時にトマト9の根を傷めてしまうおそれがなくなる。植え替え後は、トマト9の根を培養液4中に伸ばしていき、その培養液4の増減で浮力体1が昇降することで、培養液4の現在量を知ることができる。そして、適宜タイミングで培養液4を追加するなどして、トマト9の苗を確実に成長させることができる。
【0049】
そして、水耕栽培装置100のタンク5の上方に設けられ、トマト9のつる先端を誘引するための誘引フック107を引っ掛け可能な誘引棚104を備えたので、トマト9の枝先端に常に空間を有し、トマト9のつるの成長を阻害しないようになる。
【0050】
また、誘引棚104を平面視でタンク5やLED105,106より大きなものとした上で、誘引棚104に誘引フック107が引っ掛けられることにより、トマト9の枝がLED105,106を回避するとともに、そのトマト9の枝がタンク5回りの床上で巻回可能となるように構成したので、トマト9の余った枝をタンク5の置かれた室内床面102に巻回させることにより、室内の空間を効率的に利用できるようになる。その結果、例えばマンション室内で行うトマト9の栽培を行うことができた。
【0051】
本発明者による実際の作付けによると、トマト9では、一度実をつけた部分は再度実をつけることはなく、葉ばかりとなるので、枯れない程度に枝を下方に押し固めても問題はないことが確認できた。
【0052】
(変形例1)
上記実施形態の水耕栽培装置100では、育成鉢はトマト9の苗を土植えしたものを使用しているが、土中に挿し木したものを使用してもよく、それらを適宜組み合わせてもよい。さらに、上記本実施形態の栽培装置101では、トマト9のみを栽培しているが、例えばレタス9a等のつる性以外の植物を同時期に栽培したいことがある。
【0053】
図9は本発明の変形例1に係る栽培装置101aの全体構成を示す斜視図である。この栽培装置101aの水耕栽培装置100aでは、3つの貫通孔1aを有する浮力体1を備えており、トマト9とレタス9a,9aとを同時期に栽培してみることとした。
図8に示した水耕栽培による露地栽培可能期間では、レタス9aの植え付けは同図中の平行破線で示す領域のように9月~翌年の6月で、レタス9aの収穫は同図中の平行斜線で示す領域のように10月~翌年の6月となっているので、トマト9とレタス9a,9aとを同時期に栽培することがある。ただし、室内栽培では、いつでも栽培できる。なお、栽培装置101aの他の要素は栽培装置101と同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0054】
すなわち、栽培装置101aは、
図9に示すように、トマト9とレタス9aとを例えばマンション室内の床面102上に設置された水耕栽培装置100a内で同時期に育成するものであって、水耕栽培装置100aの周囲に立設された支柱103の上部に設けられ、トマト9のつる先端を誘引するための誘引フック107を引っ掛け可能な誘引棚104と、誘引棚104の下方に2段で設けられ、人工光を照射可能な照射体としてのLED105,106とを備えている。ここで、本変形例1では、さらなる照明体としての吊り下げタイプの補助灯106aを2つ設けているが、設置数や光の色調は任意であり、光量、設置高さもそれぞれ独立して調整可能なものである。これらの補助灯106aを設けたこと以外では、栽培装置101aの使用方法も、栽培装置101と同様である。
【0055】
大きく成長したトマト9の枝や葉などでLED105からの人工光がレタス9aには届きにくくなるので、LED106を点灯して、このLED106からの人工光をレタス9aに照射する。本変形例1では、さらに補助灯106aをも点灯して、それぞれ伸びようとしているレタス9aに向けて照射する。これにより、複数種類の植物を同時期に栽培できた。
【0056】
(変形例2)
ところで、上記実施形態と変形例1のいずれにおいても誘引フック107を誘引棚104に繰り返し引っ掛けなおすのに手間がかかる。特にマンション室内で天井や壁との間に狭い空間しかない場合はなおさらである。
【0057】
図10は本発明の変形例2に係る栽培装置101の全体構成を示す斜視図である。この栽培装置101では、水耕栽培装置100をキャスタ102aに載せて室内床面102上を移動可能としており、移動時の転倒等を防ぐための振れ止め枠103aを隣り合う支柱103間に設けている。振れ止め枠103aは平面視で四角形状をなす枠状をなしており、四隅に支柱103の貫通部が形成されている。キャスタ102aには図示しないストッパと把持部がついており、使用者が把持部を把持した状態で、ストッパを緩めて室内床面102上の任意の場所に移動したうえで、ストッパをかけてそこに固定することができるようになっている。なお、栽培装置101自体は上記実施形態と同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0058】
本変形例2では、キャスタ102aで移動が容易となるから、仮にマンション室内で天井や壁との間に狭い空間しかない場合でも、誘引フック107を誘引棚104に繰り返し引っ掛けなおすときの手間を軽減できる。また、本変形例2では、トマト9の枝はキャスタ2a上面にとぐろを巻くので、室内床面102を汚すことが少なくなり、掃除しやすいというメリットもある。
【0059】
また、図示はしていないが、例えば誘引棚104をラックからなる円形状又は楕円形状のレールで形成するとともに、誘引フック107をそのラックに噛合して走行可能なピニオンとモータとを備え、かつ、誘引紐108を当該走行動作に同期させて自動的に繰り出し可能なローラを備えたものとすることで、誘引フック107を誘引棚104に繰り返し引っ掛けなおす手間を完全になくすこともできる。モータ制御は、エアーポンプ6やLED105,106とは個別に行うこともできるが、そのすべてを図示しない集中制御盤等で行うこととしてもよい。
【0060】
なお、上記実施形態と変形例1、2のいずれにおいても、エアーポンプ6等の電源は特に規定していないが、例えばソーラー電源を使用して省エネを図ることができる。
【0061】
また、上記実施形態と変形例1、2のいずれにおいても、メッシュポット10を使用しているが、これに代えて、スリット構造やパンチングボードなどを使用してもよい。
【0062】
また、上記実施形態と変形例1、2のいずれにおいても、栽培床として、タンク5内の培養液4中にメッシュポット10を浮遊させる浮力体1を採用しているが、例えば自動給水設備を設けることにより、位置固定式の栽培床を採用することもできる。
【0063】
また、上記実施形態と変形例1、2のようにマンション室内での水耕栽培を行う場合には、その室内の湿度が高くなりがちである。かかる場合には、市販の除湿器等を用いて、その除湿水を再利用することにより、節水を図ることもできる。マンション以外のコンクリート建物内に置かれる場合も同様である。
【0064】
また、上記実施形態と変形例1、2では、ともに室内での水耕栽培を例示しているが、室外での水耕栽培であっても問題はない。ただし、室外の場合は、
図8による作付け計画を立てるのが好ましい。仮に土を使用した通常の栽培であっても、本発明を適用できるのはいうまでもない。
【0065】
また、上記変形例1の水耕栽培装置100aでは、3つの貫通孔1aを有する浮力体1を備えているが、上記実施形態の水耕栽培装置100を3セット並設して、そのうちの1セットでトマト9を栽培し、2セットでレタス9a,9aを栽培することとしてもよい。この場合も、上記変形例1と同様に、トマト9とレタス9a,9aとを同時期に栽培できるようになる。同様に、つる性植物であるクレマチスやつるバラなどについても栽培可能である。
【符号の説明】
【0066】
100,100a 水耕栽培装置(装置本体に相当する。)
101,101a 室内栽培装置
102 室内床面
102a キャスタ
103 支柱
103a 振れ止め枠
104 誘引棚(案内手段に相当する。)
105,106 LED(照射体に相当する。)
106a 補助灯(照射体に相当する。)
107 誘引フック(誘引手段に相当する。)
108 誘引紐
1 浮力体(栽培床に相当する。)
1a 貫通孔
4 培養液
5 タンク
6 エアーポンプ
9 トマト(つる性植物の一種である。その苗又は挿し木、茎(枝)、根)
9a レタス(つる性以外の植物の一種である。)
10 メッシュポット
12 散気球
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】