(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156229
(43)【公開日】2024-11-05
(54)【発明の名称】サルコシン塩、サルコシン及びその誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 229/08 20060101AFI20241028BHJP
C07C 279/18 20060101ALI20241028BHJP
C07C 279/16 20060101ALI20241028BHJP
C07C 279/14 20060101ALI20241028BHJP
C07C 277/08 20060101ALI20241028BHJP
C07C 227/06 20060101ALI20241028BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
C07C229/08
C07C279/18
C07C279/16
C07C279/14
C07C277/08
C07C227/06
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155498
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】2023104398727
(32)【優先日】2023-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520336182
【氏名又は名称】チェンジャン ヨンアン ファーマシュティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シーチュエン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ フェン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャン
(72)【発明者】
【氏名】ウ ウェイハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ミンジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ナー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC52
4H006BA18
4H006BA23
4H006BA24
4H006BA25
4H006BA26
4H006BA55
4H006BA82
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC16
4H006BC35
4H006BC53
4H006BE01
4H006BE03
4H006BE10
4H006BE14
4H006BE20
4H006BE22
4H006BE23
4H006BE90
4H006BS10
4H006BU32
4H006NB16
4H039CA71
4H039CB30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サルコシン又はクレアチンなどのサルコシン誘導体の従来の生産プロセスにおいて猛毒化学品を原料として用いるという問題を解決する、サルコシン塩、サルコシン及びその誘導体の新たな製造方法を提供する。
【解決手段】グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩の溶液をアミン溶液と反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、製造したシッフ塩基溶液を触媒の存在下で水素化反応させるステップ2と、水素化反応後の溶液のpH値をアルカリ性に調整して、サルコシン塩を得るステップ3と、を含むサルコシン塩の製造方法である。ステップ3の水素化反応後の溶液のpH値を酸性に調整して、サルコシンを得る。ステップ3で得られたサルコシン塩溶液をシアナミドと反応させて、サルコシン誘導体を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルコシン塩の製造方法であって、
グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩の溶液をアミン溶液と反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、
製造したシッフ塩基溶液を触媒の存在下で水素化反応させるステップ2と、
水素化反応後の溶液のpH値をアルカリ性に調整して、サルコシン塩を得るステップ3と、を含む、ことを特徴とするサルコシン塩の製造方法。
【請求項2】
前記グリオキシル酸の化学構造の一般式は、
【化1】
(ここで、Mは、H
+である。)であり、
前記グリオキシル酸塩の化学構造の一般式は、
【化2】
(ここで、Mは、NH
4
+、RNH
3
+、Li
+、Na
+、K
+、Ca
2+、又はMg
2+である。)であり、
前記シッフ塩基の化学構造の一般式は、
【化3】
(ここで、R基は、-H、-Me、-Et、C1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C3~C8シクロアルキル、又はC6~C20アリールである。)である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記R基は、-H又は-Meである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ2において、前記水素化反応は、間欠接触水素化反応、固定床連続接触水素化反応又は固定床半連続接触水素化反応を用い、
前記水素化反応の溶媒は、H2O/R’OH(ここで、R’はC1~C6アルキルである。)であり、
前記間欠接触水素化反応の反応時間は、1時間以上24時間以下であり、
前記間欠接触水素化反応の触媒の使用量は、0.01%wt以上2%wt以下であり、
前記固定床連続接触水素化の質量空間速度は、0.1h-1以上1.0h-1以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記間欠接触水素化反応の反応時間は、8時間以上16時間以下であり、
前記固定床連続接触水素化の質量空間速度は、0.2h-1以上0.5h-1以下である、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ1において、前記アミン溶液中のアミンの使用量は、1当量以上6当量以下であり、
前記アミン溶液は、アミン濃度が10質量%以上60質量%以下のアミンの水溶液又はアルコール溶液であり、
前記アミンの化学構造の一般式は、RNH2(ここで、R基は、-H、-Me、-Et、C1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C3~C8シクロアルキル、又はC6~C20アリールである。)である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アミン溶液は、アミン濃度が30質量%以上40質量%以下のアミンの水溶液又はアルコール溶液であり、
前記アミンの化学構造の一般式は、RNH2(アンモニア、メチルアミン又はアリールアミンである。)である、ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記グリオキシル酸又は前記グリオキシル酸塩溶液を前記アミンと反応させる温度が、-10℃以上40℃以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ2において、前記水素化反応の溶媒系は、アルコール-水系又は水系であり、
水とアルコールとの体積比が、1:0~1:10である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記水とアルコールとの体積比が、1:0~1:2である、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ2において、前記触媒は、Pd、Ni、Pt、Ru、Rh、NaBH4、NaCNBH3、LiBH4、水素化ジイソブチルアルミニウム、鉄粉、及び亜鉛粉のうちの1種又は複数種であり、
前記触媒の担体は、アルミナ、ゼオライト、活性炭、SiO2、セラミックボール、海砂、グラファイト、無機ガラス、有機ガラス、光ファイバ、ガラスファイバ、天然粘土、発泡プラスチック、樹脂、木片、又は拡張パーライトの担体である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ2において、前記触媒は、Pd又はNi金属触媒であり、
前記触媒の担体は、活性炭、アルミナ、ゼオライト又はSiO2である、ことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ステップ2において、前記水素化反応の圧力範囲は、0.1MPa以上10MPa以下であり、前記水素化反応の温度範囲は、20℃以上150℃以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ2において、前記水素化反応の圧力範囲は、2MPa以上5MPa以下であり、前記水素化反応の温度範囲は、30℃以上100℃以下である、ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ3において、前記溶液のpH値は、酸、アルカリ、電気透析、又はイオン交換樹脂処理により、必要なアルカリ性に調整される、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ステップ3において、前記酸は、無機酸又は有機酸であり、前記アルカリは、無機金属水酸化物、無機アンモニア、又は有機アミンであり、
前記イオン交換樹脂は、酸性イオン交換樹脂、又はアルカリ性イオン交換樹脂である、ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ステップ3において、前記酸は、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、又は酢酸であり、前記アルカリは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、又はメチルアミンである、ことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の製造方法でサルコシン塩溶液を製造し、
前記サルコシン塩溶液をシアナミドと反応させて、サルコシン誘導体を製造するステップ4をさらに含む、ことを特徴とするサルコシン誘導体の製造方法。
【請求項19】
前記サルコシン誘導体は、クレアチン、クレアチン一水和物、又はクレアチン塩である、ことを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記サルコシン塩溶液をシアナミドと反応させた後、結晶化させて分離してクレアチン一水和物を得る、ことを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記サルコシン塩溶液をシアナミドと反応させた後、結晶化させて分離し、乾燥して脱水し、クレアチンを得る、ことを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項22】
前記水素化反応後の溶液のpH値を7よりも大きく11以下に調整する、ことを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項23】
前記サルコシン塩溶液にシアナミドを加えて反応を行った後、アルカリを加え、pHを7よりも大きく調整し、クレアチン塩を得る、ことを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項24】
前記サルコシン塩溶液にシアナミドを加えて反応を行った後、アルカリを加え、pHを7よりも大きく調整し、塩類のサルコシン誘導体を得る、ことを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項25】
サルコシンの製造方法であって、
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の製造方法のステップ3において、前記水素化反応後の溶液のpH値を酸性に調整して、サルコシンを得る、ことを特徴とするサルコシンの製造方法。
【請求項26】
前記ステップ3において、水素化後の反応液に酸、電気透析又は酸性イオン交換樹脂処理により、溶液pH値を酸性に調整する、ことを特徴とする請求項25に記載のサルコシンの製造方法。
【請求項27】
前記ステップ3において、前記酸は、無機酸又は有機酸、である、ことを特徴とする請求項26に記載のサルコシンの製造方法。
【請求項28】
前記ステップ3において、前記酸は、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、又は酢酸である、ことを特徴とする請求項27に記載のサルコシンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サルコシン及びその誘導体の製造技術に関し、特にサルコシン及びその誘導体の新たな製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サルコシンナトリウムはN-メチルグリシンナトリウムとも呼ばれ、アミノ酸型界面活性剤の1種であり、無色から淡黄色の外観を持つ液体である。サルコシンナトリウムは水に極めて溶けやすく、エタノールに微溶性であり、水溶液はアルカリ性であり、加熱により分解されやすく、ジメチルアミンと二酸化炭素に部分的に分解される。サルコシンナトリウムは刺激性がなく、生分解されやすく、殺菌ができるなどの特徴があり、デイリーケミカル用品、サプリメント、染料、製薬、化学工業などの分野で広く応用されている。デイリーケミカル用品の分野では、サルコシンナトリウムは活性剤として、高級薬用石鹸、シャンプー、歯磨き粉などの製品を作ることができる。サプリメントの分野では、サルコシンナトリウムは、細胞の成長を促進し、エネルギーを提供するなどの作用がある栄養剤であるクレアチンを製造することができる。染料の分野では、サルコシンナトリウムは助染剤として使用することができる。化学工業分野では、サルコシンナトリウムはクレアチン一水和物、クレアチン、N-アシルサルコシン及びナトリウム塩などを製造することができる。
【0003】
クレアチンはサルコシンの誘導体の1種であり、白色粉末状結晶で、臭いがなく、苦味があり、分子式がC4H9N3O2、分子量が131.13で、水に溶け、冷水に微溶性で、無水エタノール、エーテル及びアセトンに溶けない。クレアチンは人体に存在している天然栄養素で、人体内では肝臓、腎臓、膵臓で合成される。クレアチンは、核酸、タンパク質の合成を促進し、体内のエネルギー物質の蓄積を増加させ、筋肉の成長を促進し、疲労を遅らせ、体力の回復を促進するために重要な役割を果たしている。
【0004】
サルコシンナトリウムの製造方法は、主に3種類あり、1つは、クロロ酢酸とモノメチルアミンを水酸化ナトリウムの作用下で反応させるクロロ酢酸法である。クロロ酢酸法は、圧力が存在する条件下で行う必要があり、反応条件が比較的厳しく、工業化量産に使用する場合、設備への要件が高く、しかも、収率が不十分で、50%程度しかない。また、反応中に大量のメチルアミン塩酸塩が発生し、後続の製品の精製を困難にし、しかも、この方法で生産した製品は、苦味があるためチオ硫酸ナトリウムなどの脱苦味剤で処理する必要があり、後処理プロセスが複雑である。また、製造過程において、腐食性の強い塩化水素ガスの発生が伴い、塩化水素ガスは水に溶けやすく腐食性の強い塩酸を形成するため、反応設備やガス回収装置は酸腐食に強い材料を採用しなければならず、投資コストが高く、設備維持費も大きい。
【0005】
特許文献1及び特許文献2は、それぞれ、ヒドロキシアセトニトリル法によるサルコシンナトリウムの製造を開示している。ヒドロキシアセトニトリル法は青酸法とも呼ばれ、すなわち青酸とホルムアルデヒドが直接反応に関与する。主な過程はヒドロキシアセトニトリルとモノメチルアミンを反応させた後、液体アルカリでアルカリ加水分解してサルコシンナトリウムを生成する。ヒドロキシアセトニトリル法は現在中国国内でよく使用されているサルコシンナトリウムの生産方法であるが、この方法は、実際の応用において、収率が低いなどの問題がある。そして、青酸及びその誘導体は毒性が高く、監督管理類の猛毒化学品に属し、輸送、生産及び廃水処置が困難であり、その結果として、輸送や使用過程中の管理コストが高く、環境リスクが大きいなどの問題をもたらし、製品の品質管理の難度が大きい。
【0006】
また、特許文献3は、メチルモノエタノールアミンを用いてサルコシンナトリウムを製造する方法を提案している。この方法は、原料が単一であり、また、このプロセスは高温高圧が必要で、エネルギー消費コストが高く、工業的生産に不利である。
【0007】
現在、サルコシンナトリウムの工業的生産には主にヒドロキシアセトニトリル法が採用されており、この方法は、猛毒な原料を使用し、副生成物が多く、収率が低く、製品の品質が不安定で、生産操作のコントロールが難しいなどの問題に直面している。そのため、サルコシンナトリウム及びその誘導体の従来の生産に存在する、製品の品質が低く、生産コストが高く、「廃水、廃棄及び固体廃棄物」の汚染が多く、猛毒化学品が使用されるなどの問題を解決することが急務であり、サルコシンナトリウム及びその誘導体の新たな合成方法を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3479388号明細書
【特許文献2】中国特許第103664665号明細書
【特許文献3】中国特許第101003488号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、サルコシン又はクレアチンなどのサルコシン誘導体の従来の生産プロセスにおいて、猛毒化学品を原料として用い、プロセスが複雑で、生産コストが高いという問題を解決するために、サルコシン塩(sarcosinate)の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態はサルコシン塩の製造方法であって、グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩の溶液をアミン溶液と反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、製造したシッフ塩基溶液を触媒の存在下で水素化反応させるステップ2と、水素化反応後の溶液のpH値をアルカリ性に調整して、サルコシン塩を得るステップ3と、を含む。
【0011】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、グリオキシル酸の化学構造の一般式は、
【化1】
(ここで、Mは、H
+である。)であり、
グリオキシル酸塩の化学構造の一般式は、
【化2】
(ここで、Mは、NH
4
+、RNH
3
+、Li
+、Na
+、K
+、Ca
2+、又はMg
2+である。)であり、
シッフ塩基の化学構造の一般式は、
【化3】
(ここで、R基は、-H、-Me、-Et、C1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C3~C8シクロアルキル、又はC6~C20アリールであり、好ましくは、R基は、-H又は-Meである。)である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ2において、水素化反応は、間欠接触水素化反応、固定床連続接触水素化反応又は固定床半連続接触水素化反応を用い、
水素化反応の溶媒は、H2O/R’OH(ここで、R’はC1~C6アルキルである。)であり、
間欠接触水素化反応の反応時間は、1時間以上24時間以下、好ましくは、8時間以上16時間以下であり、
間欠接触水素化反応における触媒の使用量は、0.01%wt以上2%wt以下であり、
固定床連続接触水素化反応の重量空間速度は、0.1h-1以上1.0h-1以下、好ましくは、0.2h-1以上0.5h-1以下である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ1において、アミン溶液に使用されるアミンの量は1当量以上6当量以下であり、
アミン溶液は、アミン濃度が10質量%以上60質量%以下、好ましくは、30質量%以上40質量%以下の水溶液又はアルコール溶液であり、
アミンの化学構造の一般式は、RNH2(ここで、R基は、-H、-Me、-Et、C1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C3~C8シクロアルキル、又はC6~C20アリールであり、好ましくは、アンモニア、メチルアミン又はアリールアミンである。)である。
【0014】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩の溶液をアミン溶液と反応させる温度は、-10℃以上40℃以下である。
【0015】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ2において、水素化反応の溶媒系は、アルコール-水系又は水系であり、
水とアルコールとの体積比が、1:0から1:10、好ましくは、1:0から1:2である。
【0016】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ2において、触媒は、Pd、Ni、Pt、Ru、Rh、NaBH4、NaCNBH3、LiBH4、水素化ジイソブチルアルミニウム、鉄粉、及び亜鉛粉のうちの1種又は複数種であって、好ましくは、Pd又はNi金属触媒であり、
触媒の担体は、アルミナ、ゼオライト、活性炭、SiO2、セラミックボール、海砂、グラファイト、無機ガラス、有機ガラス、光ファイバ、ガラスファイバ、天然粘土、発泡プラスチック、樹脂、木片、又は拡張パーライトの担体であって、好ましくは、活性炭、アルミナ、ゼオライト又はSiO2である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ2において、水素化反応の圧力範囲は0.1MPa以上10MPa以下であり、好ましくは、2MPa以上5Mpa以下であり、水素化反応の温度範囲は20℃以上~150℃以下であり、好ましくは、30℃以上100℃以下である。
【0018】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ3において、溶液のpH値は、酸、アルカリ、電気透析、又はイオン交換樹脂処理により、所望のアルカリ性に調整する。
【0019】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ3において、酸は、無機酸又は有機酸、好ましくは、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、又は酢酸であり、アルカリは、無機金属水酸化物、無機アンモニア、又は有機アミンであり、好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、又はメチルアミンであり、
イオン交換樹脂は、酸性イオン交換樹脂、又はアルカリ性イオン交換樹脂である。
【0020】
本発明の一実施形態はさらにサルコシン誘導体の製造方法であって、上記の製造方法を用いてサルコシン塩溶液を製造し、
サルコシン塩溶液をシアナミドと反応させて、サルコシン誘導体を製造するステップ4をさらに含む、サルコシン誘導体の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、サルコシン誘導体は、クレアチン、クレアチン一水和物、又はクレアチン塩である。
【0022】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、サルコシン塩溶液をシアナミドと反応させた後、結晶化させて分離してクレアチン一水和物を得る。
【0023】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、サルコシン塩溶液をシアナミドと反応させた後、結晶化させて分離し、乾燥(ベーク)して脱水し、クレアチンを得る。
【0024】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、水素化反応後の溶液のpH値は7よりも大きく11以下に調整する。
【0025】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、サルコシン塩溶液にシアナミドを加えて反応させた後、アルカリを加え、pHを7よりも大きく調整し、クレアチン塩を得る。
【0026】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、サルコシン塩溶液にシアナミドを加えて反応させた後、アルカリを加え、pHを7よりも大きく調整し、サルコシン誘導体塩を得る。
【0027】
本発明の一実施形態はさらに、サルコシンの製造方法であって、上記の製造方法のステップ3において、水素化反応後の溶液のpH値を酸性に調整してサルコシンを得る、サルコシンの製造方法を提供する。
【0028】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ3において、水素化後の反応液に酸、電気透析又は酸性イオン交換樹脂処理により、溶液のpH値を酸性に調整する。
【0029】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ステップ3において、酸は、無機酸又は有機酸であって、好ましくは、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、又は酢酸である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、サルコシン又はクレアチンなどのサルコシン誘導体の従来の生産プロセスにおいて猛毒化学品を原料として用いるという問題を解決するとともに、より簡単かつ効率的であり、生産コストがより低く、重要な意義があるサルコシン及びその誘導体の新たな製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の目的、内容、及び利点をより明確にするために、以下では、実施例を参照して、本発明の具体的な実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0032】
以下では、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0033】
本発明者らは、グリシン、サルコシン、クレアチンなど、このような物質と類似した一般式の化学構造を有するサルコシン誘導体の従来の生産プロセスにおいて、ヒドロキシアセトニトリルなどの猛毒の原料が使用され、製造方法における原料が高価で、反応条件の要件が高いなどの問題に対して、長時間にわたって試験及び開発を行った結果、サルコシン及びその誘導体の新たな製造方法を得た。本発明は、化学一般構造式が類似している複数のサルコシン及びその誘導体の製造に適用でき、下記の実施例における具体的なサルコシン及びその誘導体に限定されるものではない。
【0034】
本発明の実施例1は、
グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩をアミンと反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、
得られたシッフ塩基溶液を触媒の存在下で水素化反応させるステップ2と、
ステップ2の水素化反応により得られた溶液のpH値をアルカリ性に調整して、サルコシン塩を得るステップ3と、を含むサルコシン塩の製造方法を提供する。
サルコシン塩を製造する化学反応は、ナトリウム塩を例にして、具体的には、以下のとおりである。
【化4】
ステップ1において、グリオキシル酸の濃度は10質量%以上50質量%以下であってもよく、
ステップ1において、グリオキシル酸塩は、グリオキシル酸とアルカリとの中和反応により製造され、使用されるアルカリは、無機金属水酸化物、無機アンモニア、有機アミン等であって、好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミンである。
ステップ1において、アミンの化学構造の一般式は、RNH
2(ここで、R基は、-H、-Me、-Et、C1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C3~C8シクロアルキル、又はC6~C20アリールである。)であり、アミンは、好ましくは、アンモニア、メチルアミン、又はアリールアミンである。
ステップ1において、アミンの使用量は、1当量以上6当量以下であり、好ましくは、1.0当量以上2.0当量以下に制御され、
ステップ1において、グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩の溶液をアミン溶液と反応させる温度は、-10℃以上40℃以下に制御される。
ステップ2において、反応液にはメタノール又はエタノールが加えられてもよく、水:アルコールの体積比が、好ましくは、1:0から1:2であり、
ステップ2では、水素化反応の触媒は、主に、Pd、Ni、Pt、Ru、Rh、NaBH
4、NaCNBH
3、LiBH
4、水素化ジイソブチルアルミニウム、鉄粉、亜鉛粉などであり、好ましくは、Pd、Ni金属触媒である。触媒は、アルミナ、ゼオライト、活性炭、SiO
2、セラミックボール、海砂、グラファイト、無機ガラス、有機ガラス、光ファイバ、ガラスファイバ、天然粘土、発泡プラスチック、樹脂、木片、拡張パーライトなどの担体上に担持されてもよい。
ステップ2において、金属触媒の使用量は0.01%wt以上2%wt以下であり、反応時間は1時間以上24時間以下である。
ステップ2において、水素化反応において、圧力範囲は0.1MPa以上10MPa以下であり、反応温度の範囲は20℃以上150℃以下であり、
ステップ2では、間欠反応であってもよいし、連続反応であってもよく、好ましくは、連続反応であり、ステップ2では、連続反応が採用される場合、反応材料の質量空間速度は0.1h
-1以上1.0h
-1以下であり、好ましくは、0.2h
-1以上0.5h
-1以下である。
本実施例では、ステップ3における処理方式は、ステップ2で反応させて得た溶液のpHにより決定され、得られた溶液のpHが酸性である場合、アルカリ(例えば、無機金属水酸化物、無機アンモニア、有機アミン、アルカリ性樹脂など)を用いてアルカリ性に調整すれば、サルコシン塩を得る。アルカリは、好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、アルカリ性樹脂である。
【0035】
本発明の実施例2は、
グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩をアミンと反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、
得られたシッフ塩基溶液を触媒の存在下で水素化反応させるステップ2と、
ステップ2の反応により得られた溶液のpH値を7よりも小さく調整して、サルコシンを得るステップ3と、を含むサルコシンの製造方法を提供する。
サルコシンを製造する化学反応は、ナトリウム塩を例にして、具体的には、以下のとおりである。
【化5】
本実施例では、ステップ2の反応により得られた溶液のpHがアルカリ性である場合、酸(例えば、無機酸、有機酸、酸性樹脂、電気透析など)を用いて酸性に調整して、サルコシンを得る。酸は、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸又は酸性イオン交換樹脂が好ましい。
【0036】
本発明の実施例3は、
グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩をアミンと反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、
得られたシッフ塩基溶液を触媒の存在下で水素化反応させるステップ2と、
ステップ2の反応により得られた溶液のpH値を7よりも大きく11以下に調整するステップ3と、
ステップ3で得た溶液をシアナミドと反応させてクレアチンを生成し、次に、結晶化させて分離し、クレアチン一水和物を得るステップ4と、を含むクレアチン一水和物の製造方法を提供する。
クレアチン一水和物とクレアチンは、主構造が同じであり、最終製品であるクレアチン一水和物には結晶水が含まれており、クレアチンには結晶水が含まれていない点が異なり、このため、クレアチン一水和物の化学構造はクレアチンの化学構造を参照することができる。
本実施例は、サルコシン塩の製造方法とは、ステップ1及びステップ2が同じである。ステップ3では、ステップ2の反応により得られた溶液のpHに応じて調整することができ、例えば、酸性化合物(例えば、無機酸、有機酸、酸性樹脂、電気透析など)又はアルカリ性化合物(例えば、無機金属水酸化物、無機アンモニア、有機アミン、アルカリ性樹脂など)を用いて、PHを7よりも大きく11以下に調整する。酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、又は酸性樹脂であり、アルカリは、好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン又はアルカリ性樹脂であり、pH値は、好ましくは、9~10である。
一方、ステップ4では、pH値がアルカリ性の範囲に調整されたサルコシン/サルコシン塩溶液をシアナミド水溶液と保温しながら所定時間反応させ、反応終了後、撹拌しながら緩やかに冷却し、温度を保ちながら晶析し、固液分離してクレアチン一水和物粗品を得た。クレアチン一水和物粗品を精製水で精製し、乾燥(ベーク)して、高純度のクレアチン一水和物完成品を得る。ここで、遠心分離して得た母液は前のステップ1~4に戻され、母液に必要な元素、例えば水、アルコール等を利用して母液のリサイクルが実現される。
【0037】
本発明の実施例4は、
グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩をアミンと反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、
得られたシッフ塩基溶液を触媒の存在下で水素化反応させるステップ2と、
ステップ2の反応により得られた溶液のpH値を7よりも大きく11以下に調整するステップ3と、
ステップ3で得られた溶液をシアナミドと反応させて、粗製クレアチン一水和物を生成し、さらに結晶化させて分離し、さらに乾燥(ベーク)して脱水し、クレアチンを得るステップ4と、を含む、無水クレアチンの製造方法を提供する。
クレアチンを製造する化学反応は、ナトリウム塩を例にして、具体的には、以下のとおりである。
【化6】
本実施例は、最初の3つのステップが実施例3のクレアチン一水和物の製造方法と同様であり、ただし、ステップ4の処理においては、得られたクレアチン一水和物を乾燥(ベーク)して脱水し、無水クレアチンを製造する。
【0038】
本発明の実施例5は、
グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩をアミンと反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、
得られたシッフ塩基溶液に触媒を加えて水素化反応を行うステップ2と、
ステップ2の反応により得られた溶液のpH値を7よりも大きく11以下に調整するステップ3と、
ステップ3で得た溶液をシアナミドと反応させてクレアチンを生成し、次にアルカリを加え、PHを7よりも大きく調整して、クレアチン塩を得るステップ4と、を含む、クレアチン塩の製造方法を提供する。
クレアチン塩を製造する化学反応は、ナトリウム塩を例にして、具体的には、以下のとおりである。
【化7】
本実施例は、ステップ1~ステップ3が、実施例3のクレアチン一水和物の製造方法と同じであり、ただし、ステップ4においてシアナミドと反応させた材料のpHを、7よりも大きく調整して、クレアチン塩を得る。アルカリ(例えば、無機金属水酸化物、無機アンモニア、有機アミン、アルカリ性樹脂等)を用いてpH値を7よりも大きく調整してもよい。アルカリは、好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、アルカリ性樹脂であり、pH値は、好ましくは、9よりも大きい。
【0039】
本発明の実施例6は、
グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩をアミンと反応させて、シッフ塩基溶液を製造するステップ1と、
得られたシッフ塩基溶液に触媒を加えて水素化反応を行うステップ2と、
ステップ2の反応により得られた溶液のpH値を7よりも大きく11以下に調整するステップ3と、
ステップ3で得られた溶液をシアナミドと反応させて、サルコシン誘導体を生成し、次にアルカリを加えて反応を行い、ステップ4で生成されたサルコシン誘導体に対応するサルコシン誘導体の塩を得るステップ4と、を含む、サルコシン誘導体及びその塩の製造方法を提供する。
サルコシン誘導体及びその塩を製造する化学反応の例は、具体的には、以下のとおりである。
【化8】
本実施例は、主にサルコシン誘導体及びその塩を製造する方法であり、本実施例の化学構造の一般式において、Mは、主にH
+、Li
+、Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、NH
4
+、RNH
3
+を含み、好ましくは、H
+、Na
+又はK
+である。R基は、主に、-H、-Me、-Et、C1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C3~C8シクロアルキル、又はC6~C20アリールを含み、好ましくは、-H又は-Meである。
以下では、本発明のサルコシン及びその誘導体の新たな製造方法の具体的な製造実施例を提供する。
【0040】
実施例7
水-アルコール系でグリオキシル酸ナトリウムを用いてサルコシン塩を製造する実施例
1L三ツ口フラスコに濃度50質量%のグリオキシル酸水溶液300gを加え、20%NaOH水溶液404gを滴下して、滴下終了後、10分間撹拌した。その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、反応温度を-10℃以上40℃以下に制御して、30分間撹拌した後、反応液を濃縮し、過量のメチルアミンを除去した。反応液を濃縮した後、濃縮反応液にメタノール1200mL、及びパラジウム含有量10%のパラジウム炭素1.6gを加えた。次に、反応液を水素化釜に移して、その後、水素化釜に水素ガスを5Mpaまで導入し、常温で8時間反応させた。反応後の材料をろ過した後、メタノールを濃縮により除去し、等モル量のアルカリ(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミンなど)を加えてPHを7よりも大きく調整し、目的のサルコシン塩溶液を得た。
【0041】
実施例8
水-アルコール系でグリオキシル酸を用いてサルコシン塩を製造する実施例
1L三ツ口フラスコに濃度50質量%のグリオキシル酸水溶液300gを加え、その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、反応温度を-10℃~40℃に制御して、30分間撹拌した後、反応液を濃縮し、過量のメチルアミンを除去した。反応液を濃縮した後、濃縮反応液にメタノール1200mL、及びパラジウム含有量10%のパラジウム炭素1.6gを加えた。次に、反応液を水素化釜に移して、その後、水素化釜に水素ガスを5Mpaまで導入し、室温で8時間反応させた。材料を排出してろ過した後、メタノールを濃縮により除去し、等モル量のアルカリ(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミンなど)を加えてPHを7よりも大きく調整し、目的のサルコシン塩溶液を得た。
【0042】
実施例9
水-アルコール系でグリオキシル酸ナトリウムを用いてサルコシンを製造する実施例
1L三ツ口フラスコに濃度50質量%のグリオキシル酸水溶液300gを加え、20%NaOH水溶液404gを滴下して、滴下終了後、10分間撹拌した。その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、反応温度を-10℃以上40℃以下に制御して、30分間撹拌した後、反応液を濃縮し、過量のメチルアミンを除去した。反応液を濃縮した後、濃縮反応液にメタノール1200mL、及びパラジウム含有量10%のパラジウム炭素1.6gを加えた。反応液を水素化釜に移して、その後、水素化釜に水素ガスを5Mpaまで導入し、室温で8時間反応させた。次に、材料を排出してろ過した後、メタノールを濃縮により除去し、酸(硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、酸性樹脂など)でPHを7よりも小さく調整し、サルコシン溶液を得て、濃縮して結晶化させ、サルコシンを得た。
【0043】
実施例10
水-アルコール系でグリオキシル酸ナトリウムを用いてクレアチン一水和物を得る実施例
1L三ツ口フラスコに濃度50質量%のグリオキシル酸水溶液300gを加え、20%NaOH水溶液404gを滴下して、10分間撹拌した。その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、反応温度を-10℃以上40℃以下に制御して、30分間撹拌した後、反応液を濃縮し、過量のメチルアミンを除去した。反応液を濃縮した後、濃縮反応液にメタノール800mL、及びパラジウム含有量10%のパラジウム炭素1.6gを加えた。反応液を水素化釜に移して、その後、水素化釜に水素ガスを5Mpaまで導入し、50℃で16時間撹拌して反応させた。次に、材料を排出してろ過した後、メタノールを濃縮により除去し、水を加えて1200mLまで希釈し、酢酸で溶液のPH値を9.6に調整した(濃縮液のpH値が9.6未満である場合、アルカリを用いてpH値を調整する)。50%シアナミド水溶液168gを加え、70℃に昇温し、2時間撹拌して反応し、溶液を30℃に自然冷却した。次に、溶液を遠心分離して、クレアチン一水和物粗品191gを得た。クレアチン一水和物粗品に精製水300mLを加え、クレアチン一水和物粗品水溶液を80℃に昇温して30分間撹拌し、その後、30℃に自然冷却し、遠心分離した。次に、真空乾燥をして、高純度のクレアチン一水和物141gを得た。クレアチン一水和物が脱水しないように温度などのパラメータを制御し、過度の乾燥によりクレアチン一水和物がクレアチンに変わることを防止した。高速液体クロマトグラフィーHPLCによれば、純度が99.8%であって、クレアチニン、ジシアノジアミド及びジシアノトリアジンなどの不純物は検出されなかった。
【0044】
実施例11
水系でグリオキシル酸を用いてクレアチン一水和物を製造した実施例
1L三ツ口フラスコに濃度50質量%のグリオキシル酸水溶液300gを加え、その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、反応温度を-10℃~40℃に制御して、30分間撹拌した。その後、活性炭を加えて前処理を行い、水を加えてろ液を1.5Lに希釈し、パラジウム含有量10%のパラジウム炭素1.6gを加えた。反応液を水素化釜に移して、その後、水素化釜に水素ガスを5Mpaまで導入し、50℃で16時間撹拌して反応させた。材料を排出して、ろ過して濃縮した後、アルカリでpH値を9.6に調整した。50%シアナミド水溶液168gを加え、滴下終了後、溶液を70℃に昇温し、1時間撹拌して反応し、20℃に自然冷却した。次に、溶液を遠心分離して、クレアチン一水和物粗品191gを得てた。クレアチン一水和物粗品に精製水300mLを加え、クレアチン一水和物粗品溶液を80℃に昇温して30分間撹拌し、その後、20℃に自然冷却し、遠心分離した。真空乾燥して、高純度のクレアチン一水和物136gを得た。クレアチン一水和物が脱水しないように温度などのパラメータを制御し、過度の乾燥によりクレアチン一水和物がクレアチンに変わることを防止した。高純度のクレアチン一水和物の高速液体クロマトグラフィーHPLCによれば、純度が99.7%で、高純度のクレアチン一水和物には、クレアチニン、ジシアノジアミド及びジシアノトリアジンなどの不純物は検出されなかった。
【0045】
実施例12
水-アルコール系でグリオキシル酸ナトリウムを用いてクレアチン一水和物を得る場合の水素化触媒の種類及び使用量の実施例
1L三ツ口フラスコに濃度50質量%のグリオキシル酸水溶液300gを加え、20%NaOH水溶液404gを滴下して、10分間撹拌した。その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、30分間撹拌した後、反応液を濃縮し、過量のメチルアミンを除去した。濃縮反応液にメタノール800mLを加え、所定量の触媒を加えて反応を行い、次に、反応液を水素化釜に移して、水素化釜に水素ガスを5Mpaまで導入し、室温で16時間反応させた。材料を排出してろ過した後、メタノールを濃縮により除去し、水を加えて1200mLまで希釈し、酢酸でpH値を9.3に調整し、50%シアナミド水溶液168gを加えた。滴下終了後、70℃に昇温し、2時間撹拌して反応し、15℃に自然冷却した。遠心分離して、クレアチン一水和物粗品195gを得た。クレアチン一水和物粗品に精製水800mLを加え、80℃に昇温して30分間撹拌し、その後、10℃に冷却し、遠心分離した。真空乾燥し、高純度のクレアチン一水和物140gを得た。クレアチン一水和物が脱水しないように温度などのパラメータを制御し、過度の乾燥によりクレアチン一水和物がクレアチンに変わることを防止した。高速液体クロマトグラフィーHPLCによれば、純度が99.7%で、クレアチニン、ジシアノジアミド及びジシアノトリアジンなどの不純物は検出されなかった。
【表1】
表1に、様々な触媒の種類及び使用量における水素化反応の実験結果を示す。
【0046】
実施例13
水系でグリオキシル酸ナトリウムを用いてクレアチン一水和物を得る場合の各圧力での水素化反応の実施例
1L三ツ口フラスコに濃度50質量%のグリオキシル酸水溶液300gを加え、32%NaOH水溶液282gを滴下して、10分間撹拌した。その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、30分間撹拌した後、反応液に活性炭2gを加え、15分間撹拌後、ろ過して、ろ液に水800mL、及びパラジウム含有量10%のパラジウム炭素1.6gを加えて反応させた。反応後の反応液を水素化釜に移して、その後、水素化釜に水素ガスを4Mpaまで導入し、室温で20時間反応させた。材料を排出してろ過し、ろ液を濃縮してメチルアミンを回収し、水を加えて1200mLまで希釈し、酸(硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、酸性樹脂など)でpH値を9.8に調整した。30%シアナミド水溶液280gを加え、70℃に昇温し、2時間撹拌して反応させ、20℃に冷却し、遠心分離して、クレアチン一水和物粗品236gを得た。クレアチン一水和物粗品に精製水900mLを加え、80℃に昇温して30分間撹拌し、その後、10℃に冷却し、遠心分離し、真空乾燥し、高純度のクレアチン一水和物完成品186gを得た。クレアチン一水和物が脱水しないように温度などのパラメータを制御し、過度の乾燥によりクレアチン一水和物がクレアチンに変わることを防止した。高速液体クロマトグラフィーHPLCによれば、純度が99.9%で、クレアチニン、ジシアノジアミド及びジシアノトリアジンなどの不純物は検出されなかった。
【表2】
表2に、各圧力での水素化反応の実験結果を示す。
【0047】
実施例14
水系でグリオキシル酸ナトリウムを用いてクレアチン一水和物と無水クレアチンを製造する固定床連続水素化の実施例
1L三ツ口フラスコに濃度40質量%のグリオキシル酸水溶液375gを加え、32%NaOH水溶液282gを滴下して、10分間撹拌した。その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、30分間撹拌し、反応材料を活性炭で前処理し、ろ過した。その後、定量ポンプによって、所定量のパラジウム炭素触媒が固定床に充填された管状固定床連続水素化反応器に注入し、それぞれ材料の空間速度を0.1h-1以上1.0h-1以下、反応圧力を5MPa、温度を20℃以上150℃以下に制御して、反応を行った。固定床からの材料をろ過して濃縮し、pH値を9.8に調整し、30%シアナミド水溶液280gを加え始め、70℃で保温して、2時間撹拌して反応させ、30℃に自然冷却した。遠心分離して、クレアチン一水和物粗品196gを得た。クレアチン一水和物粗品に精製水800mLを加え、50℃に昇温してスラリー化し、30分間撹拌し、その後、15℃に自然冷却し、遠心分離した。40℃で4h真空乾燥し、高純度のクレアチン一水和物142gを得た。高速液体クロマトグラフィーHPLCによれば、純度が99.9%であって、クレアチニン、ジシアノジアミド及びジシアノトリアジンなどの不純物は検出されなかった。さらに、クレアチン一水和物を乾燥(ベーク)して、クレアチン完成品124gを得た。
【0048】
実施例15
水系でグリオキシル酸ナトリウムを用いてクレアチン塩を製造するプロセスにおいて固定床連続水素化の実施例
1L三ツ口フラスコに濃度40質量%のグリオキシル酸水溶液375gを加え、32%NaOH水溶液282gを滴下して、10分間撹拌した。その後、40%メチルアミン水溶液252gを加え、30分間撹拌し、次に反応材料を活性炭で前処理し、ろ過した。その後、定量ポンプによって、所定量のパラジウム炭素触媒が固定床内に充填された管状固定床連続水素化反応器に注入し、それぞれ、材料の空間速度を0.1h-1以上1.0h-1以下、反応圧力を5MPa、温度を0℃以上150℃以下に制御し、反応を行った。固定床からの材料をろ過して濃縮し、pH値を9.8に調整し、30%シアナミド水溶液280gを加え始め、70℃で保温して、2時間撹拌して反応させ、30℃に自然冷却した。溶液に冷却後の生成物と等モル量のアルカリ(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン)を加え、目的のクレアチン塩製品を得た。
【0049】
【0050】
本発明は、サルコシン及びその誘導体の新たな製造方法を提供し、グリオキシル酸又はグリオキシル酸塩をアミンと反応させてシッフ塩基を得て、接触水素化方法でシッフ塩基を還元してサルコシン及びその誘導体を得る。イオン交換樹脂、酸、アルカリ及び/又は電気透析の方式でサルコシンの塩を遊離状態のサルコシンに転化させる。サルコシン塩溶液を必要なpH値に調整してから、精製を必要とせずに、その水溶液をそのままシアナミドと反応させて、クレアチン一水和物を得た。
【0051】
本発明では、無毒のグリオキシル酸又はグリオキシル酸塩を出発原料として用いることにより、従来のプロセスのように毒性原料を用いることが回避され、不純物系がシンプルで、反応条件が温和で、副生成物が少なく、収率が高く、反応における過量のアミンの回収・再利用が可能で、廃水、廃棄及び廃棄固体物が少なく、プロセスが安全で、操作されやすく、工業的生産に適している環境配慮型生産プロセスであるといえる。
【0052】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者であれば、本発明の技術的原理を逸脱することなく各種の改良及び変形を行うことができ、これらの改良及び変形も本発明の特許範囲内であるものとみなされるべきである。