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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156240
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】水晶発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20241029BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03H9/19 F
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070536
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 秀也
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA43
5J079FA01
5J079HA03
5J079HA07
5J079HA22
5J079JA03
5J108AA04
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108FF04
5J108GG03
5J108GG16
(57)【要約】
【課題】周波数ドリフト特性を小さく抑えることが可能な構造を有した水晶発振器を提供する。
【解決手段】水晶発振器は、平面視長方形で表裏に励振用電極を備える水晶振動素子と、水晶振動素子の発振回路及び温度補償回路を備える半導体チップと、水晶振動素子用の振動子室及び半導体チップ用の半導体室を背中合わせに有し、半導体チップ及び水晶振動素子を実装していて外部端子を有するパッケージと、を備える。水晶振動素子は、第一の短辺でパッケージに片持ち支持で実装されかつ接続端子に接続されている。励振用電極は、長辺寸法が水晶振動素子の長辺寸法Vの40~65%と小さく、第一の短辺に対向する第二の短辺の方向に偏心して設けてある。偏心量Lは、前記Vに対し16~18%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視長方形で表裏に励振用電極を備える水晶振動素子と、前記水晶振動素子用発振回路及び温度補償回路を備える半導体チップと、前記水晶振動素子及び前記半導体チップを実装していて当該水晶発振器を外部に接続する複数の接続端子を有するパッケージと、を備える水晶発振器において、
前記水晶振動素子は、平面視長方形状であり、その第一の辺で前記パッケージに片持ち支持で接続してあり、
前記励振用電極は、前記第一の短辺に対向する第二の短辺の方向に偏心して設けてあることを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
前記偏心量は、外部から当該水晶発振器に及ぶ所定の熱変動条件に起因して前記励振用電極に及ぶ熱影響を、所定量減少させ得る量であることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項3】
前記励振用電極は平面視長方形状であり、前記励振用電極の長辺寸法は前記水晶振動素子の長辺寸法に対し40~65%の寸法であることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項4】
前記偏心量は、外部から当該水晶発振器に及ぶ所定の熱変動条件に起因して前記励振用電極に及ぶ熱影響を、所定量減少させ得る量であり、
前記所定の熱変動条件は、時間t1をかけて温度がΔT上昇して時間t2をかけて元の温度に戻る予め定めた温度条件であることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項5】
前記偏心量は、前記水晶振動素子の中心点と前記励振用電極の中心点との距離をLと表し、前記水晶振動素子の長辺寸法をVと表したとき、L/Vが16~18%であることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項6】
前記水晶発振器は、外形の長辺寸法が1.6mm、外形の短辺寸法が1.2mm外形の高さ寸法が0.55mmであり、
前記偏心量は、前記水晶振動素子の中心点と前記励振用電極の中心点との距離をLと表し、前記水晶振動素子の長辺寸法をVと表したとき、L/Vが16~18%であることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項7】
前記水晶発振器は、外形の長辺寸法が1.6mm、外形の短辺寸法が1.2mm外形の高さ寸法が0.55mmであり、
前記水晶振動素子は、ATカットの周波数32MHzであり、長辺寸法が1.04mm、短辺寸法が0.67mmであり、
前記励振用電極は、平面視で長方形であり、長辺寸法が0.57mm、短辺寸法が0.54mmであり、
前記偏心量は、前記水晶振動素子の中心点と前記励振用電極の中心点との距離をLと表し、前記水晶振動素子の長辺寸法をVと表したとき、L/Vが16~18%であることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項8】
前記パッケージは、前記水晶振動素子を実装した振動子室と、前記半導体チップを実装した半導体室を背中合わせに接合した、H型構造をしていることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数ドリフト特性の低減が可能な水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器は基準信号源として種々の電子機器で使用されている。電子機器としての例えばスマートフォンは、通話やメールだけでなく、それ1台で様々な機能が使用できる。その様々な機能を実現するために、スマートフォン内部の限られたスペースに多くの電子部品が搭載されており、温度補償型水晶発振器もその1つである。温度補償型水晶発振器において、発振周波数のドリフトは小さいことが望ましいが、スマートフォンのように多くの電子部品が搭載されていると、電子部品の各々が内部発熱を起こし、その発熱(熱源)により発振周波数がドリフトしてしまい、高精度な温度補償ができないことがある。
これを解決する1つの手段として特許文献1には、圧電振動素子及び感温部品が容器に収容された圧電デバイスにおいて、圧電振動素子と感温部品の温度が等しくなるよう、熱容量を考慮し設計した容器の構造が記載されている。具体的には、圧電振動素子及び感温部品の熱平衡が素早く達成されるように、外部実装端子及び圧電振動素子間の熱伝導経路と、外部実装端子及び感温部品間の熱伝導経路とを設定している(特許文献1の段落56)。また、水晶振動素子の平面的な中心点と、この水晶振動片の表裏目に設けた励振用電極の平面的な中心点とが一致した構造の水晶振動片が図示されている(特許文献1の図1(a))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013―102315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている容器の構造は、確かに圧電振動素子と感温部品の温度差を小さくすることができ、周波数ドリフト特性を良化する手段として有効と思えるが、この出願に係る発明者の検討によれば、周波数ドリフト特性を良化する余地はまだあることが分かった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、従ってこの出願の目的は、周波数ドリフト特性を小さく抑えることが可能な構造を有した水晶発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この出願に係る発明者は、平面視長方形で表裏に励振用電極を備える水晶振動素子と、前記水晶振動素子用発振回路及び温度補償回路を備える半導体チップと、前記水晶振動素子及び前記半導体チップを実装していて当該水晶発振器を外部に接続する複数の接続端子を有するパッケージと、を備える水晶発振器であって、前記水晶振動素子が第一の短辺で前記パッケージに片持ち支持で実装された水晶発振器について以下のシミュレーション及び試作を実施した。すなわち、後述する図1に示す構造のシミュレーションモデルを作成し、また、図1に示す構造の試作品を作製し、水晶振動素子の平面的な中心点と、励振用電極の中心点とを一致させたものと、前記励振用電極を水晶振動素子の前記第一の短辺と対向する第二の短辺側に偏心させたいくつかの水準のものとに、所定の条件の熱変動を与え、その際の半導体チップの所定の複数箇所と、水晶振動素子の所定の複数箇所各々での温度変化と、それぞれの水晶発振器の出力の本来の出力周波数からの変動量、すなわち周波数ドリフトとを、シミュレーション及び試作品によって、検討した。その結果、励振用電極を水晶振動素子に対し上記のような偏心をさせ、かつ、偏心量を所定範囲にすると、周波数ドリフトの低減が図れることを見出した。
従って、この出願の水晶発振器の発明によれば、平面視長方形で表裏に励振用電極を備える水晶振動素子と、前記水晶振動素子用発振回路及び温度補償回路を備える半導体チップと、前記水晶振動素子及び前記半導体チップを実装していて当該水晶発振器を外部に接続する複数の接続端子を有するパッケージと、を備える水晶発振器において、
前記励振用電極は、前記第一の短辺に対向する第二の短辺の方向に偏心して設けてあることを特徴とする。
この発明を実施するに当たり、前記偏心量は、外部から当該水晶発振器に及ぶ所定の熱変動条件に起因して前記励振用電極に及ぶ熱影響を、所定量減少させ得る量であることが好ましい。
この発明を実施するに当たり、前記励振用電極は平面視長方形状であり、前記励振用電極の長辺寸法は前記水晶振動素子の長辺寸法に対し40~65%の寸法であることが好ましい。このような寸法範囲であると、励振用電極を上記偏心させた際に水晶振動素子における振動領域を前記第2の辺側に有意に偏心させることができるからである。
この発明を実施するに当たり、前記所定の熱変動条件は、時間t1をかけて温度がΔT上昇して時間t2をかけて元の温度に戻る予め定めた温度条件とすることが好ましい。
この発明を実施するに当たり、当該水晶発振器は、長辺寸法が約1.6mm、短辺寸法が約1.2mm、高さ寸法が約0.55mmである水晶発振器であることが好ましい。少なくともこの構造のもので、本発明の効果を確認できている。ここで、約とは、水晶発振器の外形寸法に対し許容される公差、例えば±0.1mmである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の水晶発振器によれば、水晶振動素子に備えられた励振用電極を所定量偏心させ、片持ち支持部から遠ざけることにより、接続端子を経由して水晶振動素子に伝わる外部の熱の影響を減少させることができる。これにより、水晶発振器周辺の外部温度が所定温度に上昇した後に元の温度に戻る熱変化の場合にも、水晶振動素子に熱が伝わりきる前に外部熱の温度変化が完了するため、水晶振動素子は熱変動に追従せずかつ熱応力の影響も小さいと考えられる。従って、水晶振動素子の温度特性起因(熱応力も含む)で生じる周波数変化も小さくできるため温度補償の補償値も小さくできるので、総合的に温度補償の誤差を小さくできると考えられるので、周波数ドリフトを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)、(B)、(C)図は、本発明の水晶発振器の実施形態を説明するための図である。
図2】本発明の水晶振動素子を説明するための図である。
図3】偏心量を振ったときの周波数ドリフト特性結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照してこの発明の水晶発振器10について説明する。
なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明で述べる形状、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
図1及び図2を参照して、本発明の水晶発振器10の第1の実施形態について説明する。
図1(A)は、振動子室41の上面図、図1(B)は、半導体室42の上面図、図1(C)は、図1(A)のa-a’間の水晶発振器10の断面図である。
【0011】
水晶発振器10は、水晶振動素子20と、半導体チップ30と、パッケージ40と、外部基板との接続に用いる接続端子50と、を備えている。
【0012】
水晶振動素子20は、平面視において長方形のATカットの水晶振動素子であり、表裏の面に励振用電極21a及び21bと、それぞれの励振用電極21a及び21bから水晶振動素子20の第一の短辺23に引出した、引出電極22a及び22bと、を備えている。励振用電極21a及び21bは、平面視において長方形であり、水晶振動素子20の第一の短辺23に対向する第二の短辺24の方向に偏心して備えられている。
励振用電極を水晶振動素子に対し所定条件で偏心させるという本発明の構成による効果を得るためには、励振用電極は水晶振動素子よりある程度小さい方が好ましく、特に、励振用電極の長辺寸法は水晶振動素子の長辺寸法よりある程度短い方が良い。一方、励振用電極の長辺寸法が短すぎると、水晶振動素子の実効抵抗が悪くなる等の他の特性劣化を招く。これらを考慮すると、励振用電極の長辺寸法は水晶振動素子の長辺寸法に対し、40~65%の範囲から選ばれる寸法とすることが好ましく、より好ましくは45~60%の範囲から選ばれる寸法とするのが良い。
図2を参照して、偏心量Lについて説明する。長方形状の水晶振動素子20の中心点をEとし、長方形状の励振用電極21の中心点をeとする。水晶振動素子20の中心点Eと、励振用電極21の中心点eとの距離を偏心量Lとする。第1の辺から水晶発振器の特性に支障が無い範囲で振動領域をなるべく離す方が良いことから、励振用電極21の、水晶振動素子20の第一の短辺23側の縁Xaと、第一の辺23との距離Xも重要である。これに限られないが、Xは水晶振動素子20の長辺寸法Vに対し30~50%であることが好ましい。励振用電極21が水晶振動素子20の中央に設けられる場合に比べ、本発明では偏心量Lだけ、励振用電極は水晶振動素子の第二の短辺24側にずらして設けてある。本発明の場合は、例えば水晶振動素子20の長辺寸法をVとしたときVの比率で示すことができる。
水晶振動素子の長辺寸法Vが、後述する具体的な水晶振動素子のように1.04mmの場合で、偏心量Lが0.104mmの場合であれば、水晶振動素子の長辺寸法Vに対し励振用電極は10%偏心していることになる。
【0013】
半導体チップ30は、平面視において矩形状であり、水晶振動素子20用の発振回路及び温度補償回路を備えている。温度補償回路は、水晶振動素子20の予め測定した温度特性を例えば極力平坦になるような補償データをメモリに格納している。水晶発振器10は、内部に例えば半導体チップ内に温度センサを備えており、水晶振動素子20の温度特性に対し、温度センサが検出した温度に応じて、上記した補償データを用いて温度補償した出力を出力する。予め設計事項として半導体チップ30に準備していた温度補償を行う。また、半導体チップ30は、パッケージ40に実装する面に球形状のバンプ31を備えている。
本実施例では、フリップチップボンディングによるパッケージ40との接合をした場合について説明しているが、ワイヤーボンディングによる接合でも良い。
【0014】
パッケージ40は、水晶振動素子20を実装した凹部形状の振動子室41と、半導体チップ30を実装した凹部形状の半導体室42を背中合わせに接合した、いわゆるH型構造をしている。具体的には、パッケージ40は、水晶振動素子20を実装している凹部形状の振動子室41を構成している枠状の第1層40aと、振動子室41及び半導体室42の共通の底面である第2層40bと、半導体チップ30を実装している凹部形状の半導体室42を構成している枠状の第3層40cと、の3層の積層構造となっている。このパッケージ40は、例えばセラミックパッケージで構成できる。
【0015】
従って、振動子室41は、第1層40aによって凹部を囲う壁を構成し、第2層40bによって振動子室底面41aを構成しており、振動子室底面41a上に、水晶振動素子20を接続するための接続パッド43を備えている。
半導体室42は、第3層40cによって凹部を囲う壁を構成し、第2層40bによって半導体室底面42aを構成しており、半導体室底面42a上に、半導体チップ30を実装するための実装パッド44を備えている。またパッケージ40は、第1層40a上にシールリング45を備えている。シールリング45は、蓋部材(図示せず)と接合するものである
【0016】
接続端子50は、パッケージ40の第3層40cの四隅に備えられている。接続端子50は、金属製であり、例えば金メッキが施されている。
3層であるパッケージ40の積層内には配線46が備えられており、接続端子50と実装パッド44を繋いでいる配線46a及び46b、実装パッド44と接続パッド43を繋いでいる配線46cがある。
【0017】
半導体チップ30は、バンプ31を介して実装パッド44に接続され、半導体室42に実装される。水晶振動素子20は、導電性接着剤25を介して、接続パッド43に接続され、振動子室41に実装される。この時、水晶振動素子20は、第一の短辺23を接続パッド43に接続する、いわゆる片持ち支持の状態で接続される。この後、振動子室41内を適度な真空又は不活性ガス雰囲気にした後に、シールリング45と蓋部材(図示せず)をシーム溶接で接合し、封止することで水晶発振器10が完成する。蓋部材は、平面視において長方形状であり、例えば金属製である。この完成した水晶発振器10は、接続端子50と外部基板を半田を介し接続することにより、他部品とともに外部機器内で使用される。
【0018】
外部機器内の他部品の中には、例えば、温度が4~6秒をかけて0.7~0.8℃上昇して105~115秒をかけて元の温度に戻るという、熱変動を起こすものがある。この時、この他部品の発熱は、下記のように水晶発振器10に伝わる。
まず、他部品で発熱が生じた後に、外部基板内の配線を介し水晶発振器10が実装されている箇所まで伝わる。その後、接続端子50に伝わり、その熱は配線46a及び46bを介し、半導体チップ30に伝わる。その後、半導体チップ30の水晶端子から46cを介し接続パッド43に伝わり、導電性接着剤25を介して水晶振動素子20まで伝わる。
【0019】
先に半導体チップ30が発熱に対し追従をし、その後に水晶振動素子20の追従が始まる。発熱が起こった際に、励振用電極21を偏心していない場合、水晶振動素子20の中心点Eと励振用電極21の中心点eが同じ位置に備えられているため、外部基板から接続端子50を経由して励振用電極21に熱が伝わる時間が短くなり、水晶振動素子20が敏感に反応してしまう。つまり、半導体チップ30と水晶振動素子20の熱追従が近いタイミングで始まるということである。
しかし、本発明では、励振用電極21は水晶振動素子の第二の短辺24側に偏心量Lで偏心しているため、励振用電極21を片持ち支持部から遠ざけることができ、接続端子50を経由して励振用電極21に伝わる外部の熱の影響を所定量減少させることができる。このように偏心した水晶振動素子構造にすることにより、所定温度に上昇した後に緩やかに元の温度に戻るような発熱原の熱が、励振用電極21に伝わる前に発熱源の温度変化が完了し、及び、振動領域への熱応力の影響が軽減できると考えられる。従って、水晶振動素子の温度特性起因で生じる周波数変化も小さくできるため温度補償の補償値も小さくできるので、総合的に温度補償の誤差を小さくできるから、周波数ドリフト特性を小さく抑えることができると考えられる。
【0020】
以下、本発明の理解を深めるために実験結果を説明する。水晶発振器10として温度補償型の水晶発振器を用いた実験をした。具体的には、励振用電極の偏心量Lを3水準に変えた3つの温度補償型の水晶発振器を作成した。なお、水晶発振器10は、外形長辺寸法、外形短辺寸法、厚みの順で1.6×1.2×0.55(単位:mm)のもので、この水晶発振器10に実装した水晶振動素子20は、周波数が32MHzで、長辺寸法×短辺寸法が1.04×0.67(単位:mm)のもので、この水晶振動素子に設けた励振用電極21は、長辺寸法×短辺寸法が0.57×0.54(単位:mmのものとした。なお、この実験で用いた水晶振動素子の長辺寸法に対する励振用電極の長辺寸法の比は、0.57/1.04=54.8%である。
図3に、励振用電極21の偏心量Lを変化させた3種類の水晶発振器の周波数ドリフト特性のグラフを示す。横軸に偏心量Lをとり、縦軸に周波数ドリフトをとって示してある。なお、各水準の試作品をそれぞれ3回周波数ドリフトの測定しているで、図3では、各水準各々9点ずつのデータを示してある。本発明に係る発明者は、所定温度に上昇した後に緩やかに元の温度に戻るような発熱が外部で発生した場合において、水晶発振器の周波数ドリフト特性が10ppb/10sec.未満になるような結果を目指して、偏心量Lを水晶振動素子の長辺寸法Vの比で言って4%、10%、16%にふった場合の評価を実施した。その結果、偏心量Lが16%以上であると、大幅な改善が見られ、9回の測定の77%が周波数ドリフト10ppb/10sec.を満たすことが分かった。偏心量Lを16%以上、例えば20%にすればさらに周波数ドリフト特性が改善することが予想されるが、今回の評価品に対し、周波数ドリフト特性以外の周波数許容偏差や温度特性等の諸特性も確認したところ、偏心量Lを大きくすると温度特性にディップが出てくる。そのため、偏心量Lは16%~18%程度が良いと考える。
【0021】
なお、上記説明では、水晶発振器10のサイズは、1.6×1.2×0.55(単位:mm)とし、水晶発振器10に実装する水晶振動素子20のサイズは、32MHzの1.04×0.67(単位:mm)、励振用電極21のサイズは、0.57×0.54(単位:mm)の例で説明したが、本発明はこの例に限られず、他のサイズの水晶発振器に対しても適用できると考えられる。また、少なくとも、上記例示した水晶発振器10、水晶振動素子20及び励振用電極21のサイズに対して±0.1mmの範囲であれば、本発明と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0022】
10:水晶発振器 20:水晶振動素子
21a、21b:励振用電極 22a、22b:引き出し電極
23:第一の短辺 24:第二の短辺
25:導電性接着剤 30:半導体チップ
31:バンプ 40:パッケージ
40a:第1の層 40b:第2の層
40c:第3の層 41:振動子室
41a:振動子室底面 42:半導体室
42a:半導体室底面 43:接続パッド
44:実装パッド 45:シールリング
46a、46b、46c:配線 50:接続端子
E:水晶振動素子の中心点 e:励振用電極の中心点
L:偏心量 Xa:励振用電極の第一の短辺側の縁
X:第一の短辺23側の縁Xaと第一の辺23との距離
V:水晶振動素子の長辺寸法
図1
図2
図3