(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156241
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】筐体及び楽器
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070540
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神出 英
(72)【発明者】
【氏名】池田 帆那
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478JJ03
5D478LL00
(57)【要約】
【課題】コンパクトに収納・保管することができ、内容物を使用する際には書類立てとして利用することができる。
【解決手段】筐体1が、収容部本体2(本体)と、この収容部本体2(本体)に対して着脱可能な蓋4と、を備えている。収容部本体2(本体)は、一端側に、左右方向に延在する溝3を有している。蓋4は、使用状態において収容部本体2から取り外された分離状態となり、取り外された蓋4の一端が溝3に嵌め込まれるようになっている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に、左右方向に延在する溝を有する本体と、
前記本体に着脱可能な蓋と、
を備え、
使用状態において、取り外された前記蓋の一端が前記溝に嵌め込まれる、
ことを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記使用状態において、前記溝の下側の端面に、前記蓋の一端側に設けられている垂下部の外側面が当接する、
ことを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記本体における前記溝の下側の端面は、前記溝の上側の端面よりも、前記蓋の挿入方向の反対方向側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項4】
前記蓋の一端に設けられている垂下部の内側面は、断面形状が所定のRを有する弧状に設けられ、
前記本体の前記溝の内部に設けられる内壁であって、前記垂下部の内側面の一部が当接する内壁は、前記所定のRに対応するR形状を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項5】
前記蓋の一端に、凸部を有し、
前記凸部は、前記蓋の被覆状態において前記本体の後端側に係止され、前記使用状態において前記溝の奥側の内壁に当接する、
ことを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項6】
前記本体の下側面には、脚部が突出して設けられており、前記蓋の上面には、前記脚部に対応する位置に、前記脚部の形状に合致する凹部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項7】
前記脚部は、滑り止め部材を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載の筐体。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の筐体と、
前記筐体内に配置された楽器本体と、
を含む、
ことを特徴とする楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体及び楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
楽器等を収容する筐体はばらばらに置くと、倉庫や棚等に収納・保管する際や搬送時等に場所を取ってしまい、限られたスペースに入りきらなくなるおそれがある。
この点例えば特許文献1には、スーツケースや楽器等の収納・搬送用ケース等の可搬型の筐体(特許文献1において「可搬式収納ケース」)に、凸面状のスタッキング(stacking)用凸所とこのスタッキング用凸所と嵌合形態をなす凹面状のスタッキング用凹所を同一の配置で設けることが記載されている。
【0003】
これにより、収納時等には複数の筐体(可搬式収納ケース)を複数積み重ねてコンパクトな平積み状態とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の筐体(可搬式収納ケース)は、ヒンジ接合部を有し、底面板と蓋面板は常に固定されている。しかしながら、例えば、楽器筐体の場合、ヒンジ接合部を設けずに、底面板と蓋面板が分離できることが望ましい場合もあり得る。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コンパクトに収納・保管することができ、内容物を使用する際には書類立て等として利用することのできる筐体及び楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る筐体は、
一端側に、左右方向に延在する溝を有する本体と、
前記本体に着脱可能な蓋と、
を備え、
使用状態において、取り外された前記蓋の一端が前記溝に嵌め込まれる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンパクトに収納・保管することができ、内容物を使用する際には書類立て等として利用することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態における筐体を備える楽器を上面側から見た外観構成を示した斜視図である。
【
図2】本実施形態における筐体を備える楽器を下面側から見た外観構成を示した斜視図である。
【
図3】収容部本体から蓋を取り外して筐体を分離状態とした筐体を備える楽器の斜視図である。
【
図4】本実施形態の楽器の筐体を分離状態として収容部本体に蓋部を所定の角度になるように取り付けた状態を示す楽器の正面図である。
【
図5】楽器を
図4における矢視V方向から見た側面図である。
【
図6】
図5に示す楽器の
図4におけるVI-VI線に沿う側断面図である。
【
図7】
図6において一点鎖線で囲んだVII部分の拡大断面図である。
【
図8】蓋を被覆状態とした場合における
図7に示す部分の拡大断面図である。
【
図9】
図4に示す状態の筐体の蓋に譜面を立て掛けた状態を示す楽器の要部斜視図である。
【
図10】本実施形態の筐体を備える楽器を
図1におけるX-X線に沿って断面にして高さ方向に2つ積み重ねた状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図10を参照しつつ、本発明に係る筐体(ケース)及び楽器の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
[筐体及び楽器の構成]
本実施形態の楽器100は、筐体1と、筐体1における収容部本体2(「本体」ともいう。後述)内に配置された楽器本体7(
図3等参照)と、を含んでいる。
図1は、本実施形態に係る筐体を備える楽器を上面側から見た斜視図であり、
図2は、
図1に示す楽器を下面側から見た斜視図である。
図1及び
図2では、筐体1の収容部本体2(筐体1における本体)に蓋4が被覆状態で取り付けられている状態を示している。また
図3は、筐体の収容部本体から蓋を取り外して分離状態となった筐体を備える楽器を示した斜視図である。
なお、以下の実施形態において、x方向、y方向、z方向は、
図1から
図3に示した方向をいうものとする。本実施形態において、x方向は筐体1を含む楽器100の長手方向(幅方向)であり、y方向は筐体1を含む楽器100の前後方向(奥行き方向)である。またz方向は筐体1を含む楽器100の厚み方向(高さ方向)である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、本実施形態において筐体1は、楽器100の外観をなしており、手で持ったときに馴染みがよく引っ掛かりの少ない形状となっている。具体的には筐体1は、収容部本体2と蓋4とを備えており、特に
図1及び
図2に示すように蓋4が収容部本体2の上側を覆うように配置された被覆状態において、収容部本体2と蓋4とが合わさる部分に段差等がほとんどなく、全体に丸みを帯びて角のない形状に形成されている。
筐体1は、例えばPS(ポリスチレン)やHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)等の樹脂材料で形成されている。なお、筐体1を形成する材料はここに示したものに限定されない。収容部本体2と蓋4とは同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料により形成されていてもよい。
【0013】
収容部本体2の内部には、楽器本体7が一体的に設けられている。
本実施形態において収容部本体2内に配置される楽器本体7は、例えば
図3に示すように、複数の鍵(白鍵及び黒鍵)711を備えて構成される鍵盤71を有する鍵盤楽器である。
楽器本体7は、鍵盤71の他、各種操作ボタン721や表示部722等を備える操作部72を有している。なお表示部722は、各種の表示器(インジケータ、ランプ、液晶パネル等)を広く含んでよい。
また楽器本体7において鍵盤71及び操作部72を挟んで左右両側には、音声を出力(放音)する音声出力部(スピーカ)73が設けられている。筐体1(本実施形態において、収容部本体2)の上面側であって音声出力部(スピーカ)73に対応する部分は、複数の放音孔等が形成された放音部21となっている。
【0014】
収容部本体2は、少なくとも上部に開口部22を有している(
図3及び
図4参照)。本実施形態では、左右の放音部21を除く部分における上部と後端側及び前端側の一部が開口部22となっている。開口部22は被覆状態において蓋4に覆われるようになっており、蓋4が取り外された状態では、
図3に示すように楽器本体7の鍵盤71及び操作部72が開口部22から露出する。
また収容部本体2の後端側には、収容部本体2の長手方向(x方向)に沿って溝3が形成されている。本実施形態において溝3は、開口部22が設けられている部分の長手方向(x方向)の全体に亘って設けられている。溝3は、分離状態となった蓋4の垂下部42(本実施形態では、第2の垂下部42b)を嵌め込むことが可能となっている。なお、溝3の詳細については後述する。
【0015】
図2に示すように、収容部本体2の下側面には、複数の脚部24が突出して設けられている。本実施形態では、断面がほぼ円形状の脚部24が左右それぞれ2箇所ずつ配置されている。脚部24の形状や配置、設ける数等は図示例に限定されない。例えば筐体1の前後方向(y方向)に長い左右一対の脚部等が設けられていてもよい。
【0016】
脚部24における設置面(すなわち、机や床の上等に楽器100を置く場合に設置される面に接する面)には滑り止め部材25が設けられている。
本実施形態では滑り止め部材25は、中央部に孔を有するドーナツ状に形成されている。
滑り止め部材25は、例えばゴムや各種樹脂等により形成されている。なお滑り止め部材25の形状は図示例に限定されない。
【0017】
また
図2に示すように、収容部本体2の下側面であって、左右方向(長手方向、x方向)及び前後方向(y方向)のほぼ中央部には、周囲よりも一段低くなった凹部26が形成されている。凹部26内には楽器100を片手で支える際等に持ち手となるハンドストラップ27が設けられている。ハンドストラップ27は使用しないときには凹部26内に収まった状態となる。これにより、筐体1(楽器100)が机の上等に設置された際に、ハンドストラップ27が邪魔にならず、脚部24が机の面等から浮き上がらない。このため筐体1(楽器100)を安定して設置することができる。
【0018】
また、収容部本体2の前端側であって、左右方向(x方向)のほぼ中央部には、後述する蓋4の前側爪部45を係止させる爪留め凹部28が形成されている。爪留め凹部28は前側爪部45に対応するものであればよく、形状等は特に限定されない。
【0019】
蓋4は、収容部本体2の開口部22を覆う上面部41と、この上面部41における収容部本体2の長手方向に沿う辺から連接され収容部本体2の厚み方向(z方向)に垂れ下がる垂下部42とを有している。垂下部42は、収容部本体2の前側に垂れ下がる第1の垂下部42aと、収容部本体2の後側に垂れ下がる第2の垂下部42bとを含んでいる。
蓋4は、収容部本体2の開口部22を覆う被覆状態と収容部本体2から取り外された分離状態とを取り得るように構成されている。被覆状態において、上面部41が収容部本体2の上部を覆い、第1の垂下部42aが収容部本体2の前側の少なくとも一部を覆い、第2の垂下部42bが収容部本体2の後側の少なくとも一部を覆った状態となる。
【0020】
蓋4の上面部41には、収容部本体2の下側面の脚部24に対応する位置に、脚部24の形状に合致する形状の凹部43が形成されている。本実施形態の脚部24には、前述のように設置面にドーナツ状の滑り止め部材25が設けられており、凹部43は、この滑り止め部材25の形状に合わせて、中央部分がわずかに凸状となっている。このように蓋4の上面部41に収容部本体2の下側面の脚部24に対応する形状の凹部43を設けることにより、筐体1を含む楽器100を複数積み重ねた場合に、凹部43に脚部24が嵌り合い、安定して崩れにくくなる(
図10参照)。また隙間なく積み重ねることができるため、収納・保管のためのスペースも最小限とすることができる。
【0021】
第1の垂下部42aにおける左右方向(x方向)のほぼ中央部には、蓋4を開け閉めする際に指をかける部分である摘み部44と、収容部本体2の爪留め凹部28に係止される前側爪部45が設けられている。前側爪部45は例えば全体が多少バネ性を有し、外側に押し広げることによって爪留め凹部28に対する係止状態を解除できるようになっている。
なお、前側爪部45を設ける位置や設ける数、形状等は、爪留め凹部28に対応するものであればよく、図示例に限定されない。例えば爪留め凹部28が左右方向(x方向)の2箇所に設けられている場合には、前側爪部45もこれに対応する2箇所に設けられる。
【0022】
また、本実施形態では、収容部本体2から取り外して分離状態となった蓋4の垂下部42(本実施形態では、第2の垂下部42b)を収容部本体2の溝3に嵌め込むことで、上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態となるように構成されている。上面部41が起立した状態では、蓋4に譜面S(
図9参照)や各種テキスト等の書類を立て掛けることができる状態となる。
ここで「所定の角度」は、鍵盤を弾くユーザが蓋4に立て掛けられた譜面S等を見やすいような角度であり、直角よりも少し後ろ側に傾いた状態である。
【0023】
ここで、溝3と溝3に挿入される垂下部42(本実施形態では、第2の垂下部42b)について詳説する。
図4は、第2の垂下部が溝に挿入された状態の筐体を備える楽器の正面図であり、
図5は、
図4における矢視V方向から見た筐体を備える楽器の側面図であり、
図6は、
図5に示す状態の筐体を備える楽器の、
図4に示すVI-VI線に沿う側断面図である。
図3及び
図6に示すように、溝3は収容部本体2の厚み方向(z方向)の中央部か、それよりも少し上に設けられている。
【0024】
図7は、
図6において一点鎖線で囲んだVII部分の拡大断面図であり、
図8は、蓋を被覆状態とした場合における
図7に示す部分の拡大断面図である。
図7及び
図8に示すように、蓋4の垂下部42(本実施形態では、第2の垂下部42b)が溝3に挿入されたときには、第2の垂下部42bが挿入される溝挿入口31の上側の端面32に第2の垂下部42bの内側面が当接し、溝挿入口31の下側の端面33に第2の垂下部42bの外側面が当接する。
【0025】
なお、溝挿入口31の厚み方向(z方向)の幅、すなわち、溝挿入口31の上側の端面32と溝挿入口31の下側の端面33との間の隙間は、第2の垂下部42bの厚みよりも多少広い程度であることが好ましい。溝挿入口31の厚み方向(z方向)の幅があまり広いと、挿入された第2の垂下部42bが抜けやすく、不安定となる。また上側の端面32と下側の端面33との間から内部が視認されると外観的にも好ましくない。
【0026】
また、本実施形態において溝挿入口31の少なくとも上側の端面32は、R形状となっている。溝挿入口31から第2の垂下部42bが挿入される際、及び引き抜かれる際に、上側の端面32は第2の垂下部42bの内側面に接触するが、R形状を有することで第2の垂下部42bが接触しても傷つきにくく、引っ掛かりなく溝挿入口31を通過することができる。
さらに本実施形態では、溝挿入口31の下側の端面33も多少R形状となっており、蓋4の第2の垂下部42bが接触しても傷つきにくく、スムーズに溝挿入口31を通過することができる。
【0027】
また第2の垂下部42bにおける挿入端側の少なくとも一部は、溝3の奥側の内壁35に当接する。
本実施形態の垂下部42(第2の垂下部42b)における挿入端側には、複数個所(例えば左右2箇所)に凸部421が形成されており、分離状態の垂下部42(第2の垂下部42b)が溝3に挿入されたときには、この凸部421の先端が溝3の奥側の内壁35に当接する。なお
図6から
図8では、凸部421が設けられている位置(
図4に示す位置)で断面を取っている。なお、凸部421が設けられる長手方向(x方向)の位置は一例であり図示例に限定されない。また凸部421の大きさや設けられる範囲、数等も適宜設定される。
【0028】
このように本実施形態では、第2の垂下部42bが溝挿入口31の上側の端面32、下側の端面33、奥側の内壁35に当接することで、3点で支えられ、上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で安定して起立した状態となる。
そして起立状態の蓋4に譜面S等が立て掛けられた際には、蓋4全体に後ろ側に押す力が加わることとなるが、その際、下側の端面33が支点となり、奥側の内壁35の凸部421が突き当たる部分が作用点となって、凸部421が上方向に奥側の内壁35を押すことでバランスを取り、上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態を維持するようになっている。
【0029】
なお、凸部421は、蓋4が被覆状態となったときには収容部本体2の後端側に係止される。例えば
図7及び
図8に示すように、収容部本体2の後端側であって、凸部421が設けられている部分に対応する位置には、凸部421を受け入れる凹部29が形成されており、蓋4が被覆状態となったときには凸部421がこの凹部29内に受け入れられる。なお、収容部本体2には凸部421を受け入れることのできる部分があればよく、凹部ではなく溝等であってもよい。
【0030】
また、溝挿入口31の下側の端面33は、
図7等に示すように、溝挿入口31の上側の端面32よりも、垂下部42(本実施形態では、第2の垂下部42b)の挿入方向の後ろ側に配置されていることが好ましい。これにより、第2の垂下部42bが溝3内に挿入された際に、下側の端面33が第2の垂下部42bの外側面を後方から支える形となり、上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態を安定させる。
【0031】
さらに、本実施形態の垂下部42(第2の垂下部42b)は、断面形状が所定のRを有する弧状に形成されている。
前述のように本実施形態の筐体1は、収容部本体2と蓋4とが合わさった被覆状態において、全体に丸みを帯びた形状となり、第1の垂下部42a及び第2の垂下部42bは、その断面形状が収容部本体2の下半分の丸みを帯びた形状に対応するRを有する形状となっている。
第2の垂下部42bが挿入される溝3の内部であって、第2の垂下部42b(第2の垂下部42bの内側面)が当接する上部内壁34は、第2の垂下部42bの断面形状である「所定のR」を有する弧状に対応するR形状を有していることが好ましい。これにより、第2の垂下部42bが溝3内に挿入された際、第2の垂下部42bの内側面が溝3の上部内壁34と面で接触する。このため、蓋4がより安定して姿勢を維持できるようになっている。
【0032】
[作用]
次に、本実施形態に係る筐体1及び筐体1を含む楽器100の作用について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
筐体1を被覆状態とするときには、まずユーザは蓋4を、垂下部42のうち第2の垂下部42bの凸部421が、対応する凹部29内に配置されるように第2の垂下部42bと収容部本体2の後端部との位置を合わせる。凸部421が対応する凹部29内に配置されたら、上面部41が収容部本体2の上面の開口部22を覆うように、蓋4全体を前側に倒していく。このとき蓋4に対して後ろ側に押し付ける力が働く場合でも、凸部421が凹部29に係止されていることで、蓋4が収容部本体2から外れたり、後ろ側にずれることが防止される。
【0034】
さらにユーザが、蓋4の上面部41が収容部本体2の上面の開口部22を覆い、第1の垂下部42aが収容部本体2の前面上側に被せられるところまで蓋4を倒すと、蓋4を上から軽く押さえることで、バネ性を有する第1の垂下部42aの前側爪部45が収容部本体2の前面側に設けられた爪留め凹部28に係止される。
これによって、収容部本体2の開口部22が蓋4によって覆われた被覆状態(
図1参照)となる。
【0035】
筐体1の収容部本体2内部に収容された楽器本体7を演奏等で使用する場合には、例えばユーザが摘み部44を持ちながら前側爪部45を爪留め凹部28から外し、蓋4を後ろ側に回動させながら持ち上げることで、収容部本体2の後側の凹部29に嵌め込まれていた凸部421を取り外す。これにより、収容部本体2から蓋4が取り外された分離状態(
図3参照)となる。
【0036】
このような分離状態において、ユーザが収容部本体2の下面に設けられたハンドストラップ27に片手を引っ掛けることで、楽器100の楽器本体7が、片手で抱えて演奏できる状態となる。例えば楽器100を片手で抱えた状態で立って演奏を行う立奏の場合には、このような分離状態となった収容部本体2(及び収容部本体2内の楽器本体7)のみを持って演奏を行うことができる。
前述のように本実施形態の筐体1は、収容部本体2を含む全体が丸みを帯びて角のない形状となっているため、手で抱えるときも安全かつ楽に手で支えることができる。
【0037】
また、譜面S等を参照しながら演奏を行いたい場合には、ユーザは、蓋4の第2の垂下部42bを収容部本体2の後ろ側の溝挿入口31から溝3に挿入する。
本実施形態では、溝挿入口31の上側の端面32及び下側の端面33が丸みを帯びたR形状となっている。このため、第2の垂下部42bは溝挿入口31に引っ掛かることなくスムーズに溝3内に挿入される。そしてユーザが、第2の垂下部42bを挿入側端部(具体的には挿入側端部に設けられている凸部421)が溝3の奥側の内壁35に突き当るところまで挿入して、手を離すと、上面部41及び第1の垂下部42aの重さで、蓋4全体が後ろ側に倒れる方向に回動する。これにより、蓋4の上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態(
図4から
図6参照)となる。
【0038】
蓋4の上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態では、第2の垂下部42bが溝挿入口31の上側の端面32、下側の端面33、奥側の内壁35の3点で溝3の内部に当接し、蓋4が支持される。
また本実施形態では、溝3内の上部内壁34が第2の垂下部42bの断面形状である「所定のR」を有する弧状に対応するR形状を有している。このため、蓋4全体が後ろ側に倒れて第2の垂下部42bの内側面が上部内壁34に当接すると、第2の垂下部42bが上部内壁34と面同士で接触する。これにより第2の垂下部42bが溝3内でガタつかずに安定する。
【0039】
起立状態となった蓋4に例えば譜面Sや各種テキスト等の書類が立て掛けられた際には、蓋4全体に後ろ側に押す力が加わることとなるが、その際、下側の端面33が支点となり、奥側の内壁35に凸部421が突き当たる部分が作用点となって、凸部421が上方向に奥側の内壁35を押すことでバランスを取り、上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態を維持しようとする。さらに第2の垂下部42bが上部内壁34と面同士で接触していることにより、蓋4が譜面Sや各種テキスト等で押されることによる力が蓋4全体に分散し、蓋4がこれを支えることができる。
また蓋4の上面部41が「所定の角度」となることで蓋4に立て掛けられた譜面S等を見やすい状態で保持することができる(
図9参照)。このため別途譜面台等を用意しなくても、すぐに演奏等を行うことができる。
【0040】
一方、例えば溝3に挿入されている第2の垂下部42bの上面部41との連接部分等に集中して無理な力が加わったような場合には、第2の垂下部42bの内側面が上部内壁34のカーブに沿って滑り、丸みを帯びたR形状となっている溝挿入口31の上側の端面32及び下側の端面33の間を抜けて、第2の垂下部42bがスムーズに溝3から外れるようになっている。
これにより、無理な力がかかった際には、蓋4が割れたり破損するのを避けることができる。
【0041】
第2の垂下部42bが溝3に挿入されている状態にある蓋4を収容部本体2から取り外す場合には、上面部41が「所定の角度」となっている蓋4全体を、上面部41と収容部本体2とがほぼ直角となる程度まで前方に倒していく。これにより、面同士で接していた第2の垂下部42bが上部内壁34から離れ、抵抗の少ない状態で第2の垂下部42bが溝挿入口31の上側の端面32及び下側の端面33の間を抜け、第2の垂下部42bを溝3からとり外すことができる。これにより、
図3に示す分離状態とすることができる。
【0042】
また本実施形態の筐体1を有する楽器100を収納・保管する際には、例えば
図10に示すように、筐体(楽器100)を高さ方向(z方向)に複数台積み重ねておくことができる。
図10では筐体(楽器100)を2台積み重ねた状態を図示しているが、積み重ねることのできる数は特に限定されない。
具体的には、筐体1の蓋4を被覆状態とし、蓋4が上面側となるように筐体1(筐体1を備える楽器)を配置して、筐体1の上に他の筐体1を載置する。
このとき下に配置されている筐体1の蓋4の上面部41に形成された凹部43内に、上に配置された筐体1の脚部24が嵌るようにする。これにより、2つの筐体1(筐体1を備える楽器)がほぼ隙間の無い状態で積み重ねられる。また本実施形態では、凹部43が、ドーナツ状の滑り止め部材25に対応した形状となっている。このため、筐体1を積み重ねた際により一層位置ずれしにくく、複数台を安定して重ねることができる。
【0043】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、筐体1が、一端側に、左右方向に延在する溝3を有する収容部本体2(本体)と、収容部本体2に着脱可能な蓋4と、を備え、使用状態において、取り外された蓋4の一端が収容部本体2の溝3に嵌め込まれるようになっている。
より具体的には、筐体1は、少なくとも上部に開口部22を有する収容部本体2と、収容部本体2の開口部22を覆う上面部41及び上面部41における収容部本体2の長手方向に沿う辺から連接され収容部本体2の厚み方向に垂れ下がる垂下部42、を有する蓋4と、を備えている。そして蓋4は、開口部22を覆う被覆状態と収容部本体2から取り外された分離状態とを取り得るように構成され、収容部本体2の後端側には、分離状態となった蓋4の垂下部42(本実施形態では第2の垂下部42b)を嵌め込むことが可能な溝3が、収容部本体2の長手方向に沿って形成されており、垂下部42(第2の垂下部42b)が溝3に嵌め込まれることで、上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態となる。
このように、収容部本体2と蓋4とが別体として構成されていることで、蓋4を収容部本体2から取り外した分離状態で収容部本体2やその内部に収容された各種機器等のみを使用することもでき、蓋4を溝3に嵌め込むことで、蓋4を、譜面S等を配置する書類立て(譜面立て)として活用することもできる。
このため、別途譜面立て等を用意しなくても筐体1のみで手軽に演奏等の作業を行うことができる。
また、蓋4を収容部本体2から完全に分離することができるように構成したことで、蓋4を収容部本体2にヒンジ等で結合した場合と異なり、簡易な構成とすることができる。また、蓋4が割れたり破損した場合には蓋4のみを交換することも可能である。
【0044】
また、本実施形態では、使用状態において、溝3の下側の端面33に、蓋4の一端側に設けられている垂下部の外側面が当接する。
具体的には、垂下部42(第2の垂下部42b)が溝3に挿入されたときには、第2の垂下部42bが挿入される溝挿入口31の上側の端面32に第2の垂下部42bの内側面が当接し、溝挿入口31の下側の端面33に第2の垂下部42bの外側面が当接して、第2の垂下部42bにおける挿入端側の少なくとも一部である凸部421が溝3の奥側の内壁35に当接することにより、上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態となる。
これにより、溝3に挿入された第2の垂下部42bが溝挿入口31の上側の端面32、下側の端面33及び奥側の内壁35によって支持され、起立した蓋4が譜面立てとして利用される際に、姿勢を安定させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、収容部本体2(本体)における溝3の下側の端面33は、溝3の上側の端面32よりも、蓋4の挿入方向の反対方向側に配置されている。
すなわち、垂下部42(第2の垂下部42b)が挿入される溝挿入口31の下側の端面33は、溝挿入口31の上側の端面32よりも、第2の垂下部42bの挿入方向の後ろ側に配置されている。
これにより、溝3内に挿入された第2の垂下部42bが、後方から支えられた状態となり、起立した状態の蓋4が安定する。
【0046】
また、本実施形態では、蓋4の一端に設けられている垂下部の内側面は、断面形状が所定のRを有する弧状に設けられ、収容部本体2(本体)の溝3の内部に設けられる内壁であって、垂下部の内側面の一部が当接する内壁は、所定のRに対応するR形状を有している。
すなわち、垂下部42(第2の垂下部42b)は、断面形状が所定のRを有する弧状に形成され、溝3の内部であって、第2の垂下部42bが当接する上部内壁34は、第2の垂下部42bの所定のRに対応するR形状を有している。
これにより、第2の垂下部42bが上部内壁34に当接すると第2の垂下部42bの内側面と上部内壁34とが面で接触し、第2の垂下部42bが溝3に挿入され上面部41が収容部本体2に対して「所定の角度」で起立した状態が安定して維持される。
【0047】
また、本実施形態では、垂下部42(第2の垂下部42b)が溝3に挿入される溝挿入口31の少なくとも上側の端面32は、R形状となっている。
これにより、第2の垂下部42bを溝3に挿入する際、引き抜く際に引っ掛からず円滑に蓋4を収容部本体2に取り付けることができる。また、上側の端面32がR形状となっていることで、蓋4に無理な力が加わった際には第2の垂下部42bが溝3からスムーズに抜けやすく、蓋4が割れたり破損するのを防止することができる。
【0048】
また、本実施形態では、蓋4の一端に、凸部を有し、凸部は、蓋4の被覆状態において収容部本体2(本体)の後端側に係止され、使用状態において溝3の奥側の内壁に当接する。
すなわち、溝3に挿入される垂下部42(第2の垂下部42b)における挿入端側には、複数個所に凸部421が形成されており、凸部421は、蓋4が被覆状態となったときに収容部本体2の後端側に係止され、分離状態の第2の垂下部42bが溝3に挿入されたときには、溝3の奥側の内壁35に当接する。
このように奥側の内壁35に当接する部分を複数個所とすることで、第2の垂下部42bが溝3に挿入された際にかかる力を分散させることができ、蓋4の破損を防ぐことができる。
【0049】
また、本実施形態において、収容部本体2(本体)の下側面には、脚部24が突出して設けられており、蓋4の上面には、脚部24に対応する位置に、脚部24の形状に合致する凹部43を有する。
すなわち、収容部本体2の下側面には、複数の脚部24が突出して設けられており、蓋4の上面部41には、脚部24に対応する位置に、脚部24の形状に合致する凹部43が形成されている。
これにより、筐体1を複数台積み重ねた場合に位置ずれせず、崩れにくい。このため安定して複数台をスタッキングすることができる。
また、突出している脚部24を凹部43内に収容することができるため、厚み方向に無駄な隙間ができず、狭い場所でも効率よく積み重ねて収納・保管することができる。
【0050】
また、本実施形態では、脚部24は、滑り止め部材25を有する。すなわち、脚部24における設置面には滑り止め部材25が設けられている。
これにより、筐体1を机の上等に設置したときに滑りにくく、安定させることができる。また、筐体1を複数台積み重ねた場合にも位置ずれをより生じにくくすることができ、積み重ね状態が安定する。
【0051】
また、本実施形態の楽器100は、上記のような筐体1と、筐体1(筐体1の収容部本体2)内に配置された楽器本体7と、を含んでいる。
これにより、例えば蓋4を外した状態で、楽器本体7が収容された収容部本体2のみを持って手軽に演奏することができる。また、分離状態となっている蓋4(蓋4の第2の垂下部42b)を収容部本体2の溝3に嵌め込めば、蓋4を、譜面S等を配置する譜面立て(書類立て)として用いることができる。このため、別途譜面立て等を用意しなくても手軽に演奏等を行うことができる。
また、筐体1は、収容部本体2の下側面に設けられた脚部24と蓋4の上面部41に形成された凹部43とが嵌り合うようになっている。このため、例えば室内の棚等の限られたスペースに複数台の楽器100を効率よく積み重ねてコンパクトに収納・保管しておくことができる。
【0052】
[変形例]
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0053】
例えば、本実施形態では、垂下部42(第2の垂下部42b)が溝3に挿入されたときに、第2の垂下部42bが挿入される溝挿入口31の上側の端面32に第2の垂下部42bの内側面が当接し、下側の端面33に第2の垂下部42bの外側面が当接し、溝3の奥側の内壁35に凸部421が当接する場合を例示したが、上側の端面32、下側の端面33、内壁35の全てに第2の垂下部42bがそれぞれ当接することは必須ではない。
例えば第2の垂下部42bを挿入するときには下側の端面33に接しなくてもよい。また蓋4全体が後方側に倒れて「所定の角度」となった状態では下側の端面33、内壁35のみに当接し、上側の端面32には当接しないとしてもよい。
【0054】
また本実施形態では、溝挿入口31の上側の端面32及び下側の端面33がR形状を有している場合を例示したが、上側の端面32及び下側の端面33の形状はこれに限定されない。
例えば上側の端面32のみがR形状を有していてもよいし、下側の端面33のみがR形状を有していてもよい。
【0055】
また収容部本体2の溝3内の断面形状は
図6から
図8に示す形状に限定されない。
例えば本実施形態では、溝3の内部であって、第2の垂下部42bが当接する上部内壁34が、垂下部42(第2の垂下部42b)の断面形状に沿うR形状を有している場合を例示したが、溝3内に第2の垂下部42bの断面形状に沿うR形状を有している部分があることは必須ではない。
溝3は、第2の垂下部42bを挿入した後、多少内部で第2の垂下部42bが上下に動くことのできる空間があればよく、断面形状がほぼ矩形状であってもよい。
【0056】
また本実施形態では、
図10に示すように、筐体1(筐体1を備える楽器100)を蓋4が上側になる向きで筐体1の高さ方向(z方向)に積み重ねる場合を例示したが、筐体1(筐体1を備える楽器100)を積み重ねる方向はこれに限定されない。
例えば、脚部24と凹部43とを嵌め合わせた状態の複数の筐体1(筐体1を備える楽器100)を立てた状態で並べて収納・保管してもよい。
また筐体1の用途、収容部本体2内に収容されているものによっては、蓋4をしたにして積み重ねることができてもよい。
【0057】
また本実施形態では、筐体1が、収容部本体2の内部に一体的に楽器本体7が配置された楽器100の筐体である場合を例示したが、筐体1は収容部本体2と蓋4とを有するものであればよく、楽器100の筐体に限定されない。
例えば、筐体1は各種道具を収容する道具箱等であってもよい。例えばクレヨンや絵筆、絵の具等がセットになったお絵描きセットや、図工セット、裁縫セット等を収容部本体2内に収容するものでもよい。この場合も、収容部本体2の後部等に蓋4を取り付けることで、蓋4をテキストや画集、型紙等の各種書類を立て掛ける書類立てとして利用することができる。使用中のクレヨンや絵筆、絵の具等の道具を蓋4に立て掛けても良い。
そしてこの場合にも、収容部本体2の下面に設けた脚部と蓋4の上面部41に設けた凹部43とが嵌り合う形状とすれば、複数の筐体1を安定して積み重ね、限られたスペース内に効率よく収納・保管しておくことができる。
また、本実施形態では楽器本体7が操作部72や音声出力部(スピーカ)73等を備える電子楽器である場合を例示したが、楽器本体7はこれに限定されない。楽器本体7は、例えば鍵盤ハーモニカを含む楽器であってもよい。
また、筐体1が楽器100の筐体である場合にも、本実施形態に示した例のように収容部本体2の内部に一体的に楽器本体が配置されている場合に限定されない。例えば筐体内に収容される楽器本体は鍵盤楽器でなくてもよく、管楽器や弦楽器等を収納・保管するための筐体であってもよい。
【0058】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0059】
1 筐体
2 収容部本体(本体)
22 開口部
24 脚部
25 滑り止め部材
29 凹部
3 溝
31 溝挿入口
32 上側の端面
33 下側の端面
34 上部内壁
35 奥側の内壁
4 蓋
41 上面部
42 垂下部
42a 第1の垂下部
42b 第2の垂下部
421 凸部
43 凹部
7 楽器本体
100 楽器