(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156244
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】路面投影装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/26 20060101AFI20241029BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B60Q1/26 Z
B60Q1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070543
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】劉 鵬
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA03
3K339AA04
3K339AA22
3K339AA43
3K339BA10
3K339BA21
3K339BA22
3K339DA01
3K339DA03
3K339DA06
3K339GB03
3K339GB08
3K339GB13
3K339GB16
3K339HA03
3K339JA02
3K339JA21
3K339LA27
3K339MA01
3K339MA03
3K339MC24
3K339MC26
(57)【要約】
【課題】 路面状況を考慮して情報の投影形態を変更することでより安全な運転支援を行う。
【解決手段】 路面に画像を投影する路面投影装置であって、画像を車両から所定距離内にある路面の投影面に投影する投影部17と、画像の投影を制御する投影制御部16と、を有する。投影制御部17は、投影面が平坦であるか否かにより画像を投影面に異なる態様(例えば、通常の視認性で投影を行う態様と、投影を停止するか又は視認性を低下させて投影を行う態様)で投影するように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に画像を投影する路面投影装置であって、
前記画像を車両から所定距離内にある前記路面の投影面に投影する投影部と、
前記画像の投影を制御する投影制御部と、を有し、
前記投影制御部は、
前記投影面が平坦であるか否かにより前記画像を前記投影面に異なる態様で投影するように制御することを特徴とする路面投影装置。
【請求項2】
前記投影制御部は、
前記投影面が平坦でない場合、前記投影面への前記画像の投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行うことを特徴とすると請求項1に記載の路面投影装置。
【請求項3】
前記投影制御部は、
前記車両への前記投影部の取付け位置から前記車両の接地平面までの垂直距離と前記画像の投影角度とによって決まる投影可能範囲のうち、投影される前記画像の縦方向又は横方向の幅が、前記投影部によって投影される投影光が前記路面に届くまでの距離を超え、その場所に前記投影面が無い場合に、前記画像の投影を停止する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の路面投影装置。
【請求項4】
前記投影面の勾配又は形状の変化を監視する路面監視部を有し、
前記投影制御部は、
前記投影面の勾配変化又は形状変化により、前記投影面が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に前記投影面が平坦でないと判定し、前記投影面への前記画像の投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行うことを特徴とすると請求項2に記載の路面投影装置。
【請求項5】
車両前方又は車両後方の投影面の勾配又は形状の変化を監視する路面監視部を有し、
前記投影制御部は、
前記投影面の勾配変化又は形状変化により前記投影面が下り坂又は下降段差になることを予測した場合に、前記投影面が前記下り坂又は下降段差になるより前に、前記投影面への前記画像の投影を停止するか又は前記視認性を低下させて投影する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の路面投影装置。
【請求項6】
前記投影制御部は、
前記投影面の勾配変化又は形状変化により前記投影面が下り坂又は下降段差になることを予測又は検出した場合に、前記投影面に投影される画像のうち、車両から離れた場所に投影される一部の画像の投影を停止するか又は前記視認性を低下させて投影する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の路面投影装置。
【請求項7】
前記投影部は、
車両の左側方に位置する前記路面の第1の投影面に前記画像を投影する第1の投影部と、前記車両の右側方に位置する前記路面の第2の投影面に前記画像を投影する第2の投影部と、を含み、
前記投影制御部は、
前記第1の投影面又は前記第2の投影面のいずれか一方が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に、(1)前記第1の投影面又は前記第2の投影面のうちの一方の投影面に対し前記画像の投影を停止させる場合、他方の投影面に対する前記画像の投影を継続するか、(2)前記一方の投影面に対し前記画像の投影を停止させる場合、前記他方の投影面に対し視認性を低下させて投影する制御を行うか、あるいは(3)前記一方の投影面に対し前記画像の視認性を低下させる場合、前記他方の投影面に対し投影する前記画像の視認性を低下させ、このとき前記他方の投影面に対する前記画像の視認性を前記一方の投影面に対する画像の視認性より高くして前記画像を投影する制御を行うか、のうちのいずれかを行うことを特徴する請求項4に記載の路面投影装置。
【請求項8】
前記投影部は、車両の前方に位置する前記路面の第3の投影面に前記画像を投影する第3の投影部と、前記車両の後方に位置する前記路面の第4の投影面に前記画像を投影する第4の投影部と、を含み、前記投影制御部は、前記第3の投影面又は前記第4の投影面のいずれか一方が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に、(1)前記一方の投影面に対し前記画像の投影を停止させる場合、他方の投影面に対する前記画像の投影を継続するか、(2)前記一方の投影面に対し前記画像の投影を停止させる場合、前記他方の投影面に対し視認性を低下させて投影する制御を行うか、あるいは(3)前記一方の投影面に対し前記画像の視認性を低下させる場合、前記他方の投影面に対し投影する前記画像の視認性を低下させ、このとき前記他方の投影面に対する前記画像の視認性を前記一方の投影面に対する画像の視認性より高くして前記画像を投影する制御を行うか、のうちのいずれかを行うことを特徴する請求項4に記載の路面投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両等の移動体に搭載される路面投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面に対して交通に必要な情報を投影して運転者に明確に伝達し、車線誘導等、シーンに応じた行動喚起が可能な路面投影装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、自車両の走行状態等、車両に関する情報に基づいて、その情報を路面上や壁面に投影して表示する映像投影装置が記載されている。また、特許文献2には、車両を自動で駐車スペースに駐車させる際に、車両から所定距離内の路面に対して走行軌跡を投影することにより、車両を見守る適切な場所を車両の所有者に提示する移動体用投影装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-167197号公報
【特許文献2】特開2020-083301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1,2に記載された技術によれば、路面に必要な情報を投影することで運転者あるいは歩行者に対してシーンに応じた行動喚起が可能となり、交通の円滑化や安全対策に役立つ。しかしながら、どのような路面状況下にあっても情報の投影が継続されるため投影面に下り坂や下降段差がある場合には視認性が低下する。
【0006】
したがって、下り坂や下降段差がある場所に歩行者が居る場合、運転者がそれを直視することにより発生する幻惑により危険が生じるといった安全運転面での課題があることを本発明者らは認識した。
【0007】
特許文献1,2には、この課題については何ら言及されておらず、その対策についての示唆もない。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、路面状況を考慮して情報の投影形態を変更することでより安全な運転支援を可能とする路面投影装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0011】
第1の態様において、路面に画像を投影する路面投影装置は、前記画像を車両から所定距離内にある前記路面の投影面に投影する投影部と、前記画像の投影を制御する投影制御部と、を有し、前記投影制御部は、前記投影面が平坦であるか否かにより前記画像を前記投影面に異なる態様で投影するように制御する。
【0012】
第1の態様では、投影制御部が、車両から所定距離内にある路面の投影面が平坦であるか否かにより画像を投影面に異なる態様で投影するように制御する。ここで、「所定距離内にある路面」とは、車両の左右に位置する路面であれば、例えば、車両の側面から3.0~3.5mの車線幅員の範囲にある車道の表面をいい、路面投影装置が有する投影部(例えば、プロジェクタ)の投影距離や解像度等の性能に依存してきまる。なお車両の前後に位置する路面も同様である。
【0013】
また、「投影面」とは、投影光をある方向からあてた場合の影が映し出された面をいう。例えば、画像(空間図形)を一つの集合と考えたとき,その1点をとりあげ、これを先方に置いた平面(路面)に見通せばその路面上にはこれに対応する点を印することができき、同様にして画像の各点を次々に投影していけば路面上には対応する画像(空間図形)が得られる。このような操作を投影といい、路面(平面)を投影面と呼ぶ。
【0014】
また、「平坦」とは、路面が平らなこと、言い換えれば画像が投影される平面である路面上の投影面に凹凸や高低差がないことをいい、ここでは、投影面に所定量(勾配閾値、段差閾値を超える)の勾配や段差がある場合に「平坦でない」とし、所定量の勾配や段差が無い場合に「平坦である」とする。
【0015】
また、「異なる態様で投影する」とは、投影面が平坦な場合と平坦でない場合とで異なる投影形態で投影することをいい、例えば、通常の視認性あるいは誘目性で画像を投影する投影形態と、画像の投影を停止するか又は通常の投影に比べ、視認性あるいは誘目性を低下させて投影する投影形態とがある。
【0016】
ここで、視認性とは、目で画像を見たときに認識し易いか否かの度合いを示し、瞬間的な判断で認識できるものに対し視認性が高いといい、また、反対に認識しづらいものに対して視認性が低いという。また、誘目性とは、周りを意識していない歩行者に注目させる、あるいは発見させ易くするといった、歩行者の注意をひきつける度合いを示し、例えば、赤やオレンジ、黄色等の暖色系などは誘目性が高く、逆に、青や緑、紫等の寒色系は誘目性が低いとされている。
【0017】
第1の態様によれば、投影制御部が、投影面が平坦であるか否かにより画像を投影面に異なる態様で投影するように制御することで、投影面となる路面の路面状況を考慮した情報(画像)の投影が可能となる。このことにより、路面に対して交通に必要な情報を投影して運転者あるいは歩行者に明確に伝達してシーンに応じた行動喚起が可能になる。特に、下り坂や下降段差になっている路面に歩行者がいる場合であっても運転者がそれを直視することによる運転上の危険を回避した路面投影装置を提供することができる。
【0018】
第1の態様に従属する第2の態様において、前記投影制御部は、前記投影面が平坦でない場合、前記画像の前記投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行う。
【0019】
第2の態様では、投影制御部が、投影面が平坦でない場合、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行う。視認性は、光源の投影面の単位面積あたりの明るさ[単位はルクス]であり、例えば、照度によってその高低を制御することができる。
【0020】
第2の態様によれば、投影面となる路面の路面状況を考慮した情報(画像)の投影が可能となり、投影面に歩行者がいて直視することによる運転上の危険が回避される他に、投影面が平坦でない場合、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影することにより、路面状況にかかわらず常に画像の投影を継続する場合に比べて省電力化がはかれる。
【0021】
第2の態様に従属する第3の態様において、前記投影制御部は、前記車両への前記投影部の取付け位置から前記車両の接地平面までの垂直距離と前記画像の投影角度とによって決まる投影可能範囲のうち、投影される前記画像の縦方向又は横方向の幅が前記投影部によって投影される投影光が前記路面に届くまでの距離を超え、その場所に前記投影面が無い場合に前記画像の投影を停止する制御を行う。
【0022】
ここで、「投影可能範囲」とは、投影部が路面に投影する光の最大到達範囲のことをいい、言い換えれば、路面に画像を投影する際の投影可能な最大画像サイズを示す。ここで、画像のサイズは、X軸に平行な軸に沿った幅、Y軸に平行な軸に沿った幅のうち、少なくとも一方を示し、投影制御部は、この投影可能範囲の少なくとも一部に生成された画像を投影するように投影部を制御している。
【0023】
第3の態様によれば、投影制御部は、投影される画像の縦方向又は横方向の幅が投影部によって投影される投影光が路面に届くまでの距離を超えた場合に、画像の投影を停止する。言い換えれば、投影可能範囲のうち、底辺の長さ(投影される画像の縦方向又は横方向の幅)が斜辺の長さ(投影光が路面に届くまでの距離)を超えた場所に投影面が無い場合に画像の投影を停止するように制御する。このことにより、視認性を低下させて投影するように制御する場合に比べて一層の省電力効果を実現することができる。
【0024】
第2の態様に従属する第4の態様において、前記投影面の勾配又は形状の変化を監視する路面監視部を有し、前記投影面の勾配変化又は形状変化により、前記投影面が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に前記投影面が平坦でないと判定し、前記投影面への前記画像の投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行う。
【0025】
ここで、「勾配」とは、路面の高さが連続的に変化する傾斜の程度をいい、「下り勾配」とは、視認性の低下に影響を与える勾配閾値以上の下りの道路勾配をいう。勾配閾値は、例えば、勾配率又は角度で表される。勾配閾値は、路面投影装置が有する投影部が有する投影距離や解像度等の性能に依存して決まる。
【0026】
また、「下降段差」とは、路面上の一の路面と次の路面とが所定の高さ以上の垂直面又は所定角度以上の斜面で繋がれている箇所をいい、周囲の高さに対して段差閾値以上の高低差を有する箇所をいう。例えば、距離画像センサ等により計測される路面の複数の計測点の高さの差分が段差閾値以上である場合に段差閾値以上の高低差が存在すると判定できる。
【0027】
第4の態様によれば、投影制御部は、投影面が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に平坦でないと判定して投影面への画像の投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行う。このため、投影面となる路面の路面状況を考慮した情報(画像)の投影が可能となり、下り勾配あるいは下降段差になっている路面に歩行者等が居ても、それを直視することにより発生する幻惑による運転上の危険を回避することができる。また、投影面が平坦でない場合、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影することにより、路面状況にかかわらず常に画像の投影を継続する場合に比較して省電力化がはかれる。
【0028】
第2の態様に従属する第5の態様において、車両前方又は車両後方の投影面の勾配又は形状の変化を監視する路面監視部を有し、前記投影制御部は、前記投影面の勾配変化又は形状変化により前記投影面が下り坂又は下降段差になることを予測した場合に、前記投影面が前記下り坂又は下降段差になるより前に、前記投影面への前記画像の投影を停止するか又は前記視認性を低下させて投影する制御を行う。
【0029】
ここで、投影制御部は、投影面が下り坂又は下降段差になることを予測するために、例えば、地図における車両前方の路面の勾配情報、カメラや距離画像センサ等によって検出される車両前方の路面形状情報等を用いることができる。例えば、地図を参照することにより、また、カメラや距離画像センサにより解析される測距データに基づき車両の進行方向に下り坂又は下降段差があることを予測でき、これを契機に画像の投影を停止、あるいは視認性を低下させる制御を行うことができる。
【0030】
第5の態様によれば、投影面が下り坂又は下降段差になることを予測した場合に、投影面が下り坂又は下降段差になるより前に、投影面への画像の投影を停止するか又は通常より視認性を低下させて投影する制御を行う。このため、路面が下り坂あるいは下降段差になっていてもその屈曲点を通る前に投影を停止又は投影する画像の視認性を低下させる制御を行うことで、下り坂あるいは下降段差を車両に対向して歩いている歩行者が、例えば照度の高い投影光を直接見てしまうことによる幻惑を防止することができる。なお、対向して進行してくる車両の乗員に対しても同様である。
【0031】
第2の態様に従属する第6の態様は、前記投影制御部は、前記投影面の勾配変化又は形状変化により前記投影面が下り坂又は下降段差になることを予測又は検出した場合に、前記投影面に投影される画像のうち、車両から離れた場所に投影される一部の画像の投影を停止するか又は前記視認性を低下させて投影する制御を行う。
【0032】
第6の態様によれば、投影制御部は、投影面が下り坂又は下降段差になることを予測又は検出した場合に、車両から離れた場所に投影される一部の画像の投影を停止するか又は視認性を低下させて投影を行う。このように、投影する画像の車両から離れた方の一部を投影停止又は視認性を低下させて制御することにより、後続するか対向する車両の乗員等の目に投影光が直接入ることによる幻惑の発生を防止しつつ、一部でも投影を継続できることから不完全ではあっても投影される画像を視認することができる。
【0033】
第4の態様から第6の態様に従属する第7の態様において、前記投影部は、車両の左側方に位置する前記路面の第1の投影面に前記画像を投影する第1の投影部と、前記車両の右側方に位置する前記路面の第2の投影面に前記画像を投影する第2の投影部と、を含み、前記投影制御部は、前記第1の投影面又は前記第2の投影面のいずれか一方が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に、(1)前記第1の投影面又は前記第2の投影面のうちの一方の投影面に対し前記画像の投影を停止させる場合、他方の投影面に対する前記画像の投影を継続するか、(2)前記一方の投影面に対し前記画像の投影を停止させる場合、前記他方の投影面に対し視認性を低下させて投影する制御を行うか、あるいは(3)前記一方の投影面に対し前記画像の視認性を低下させる場合、前記他方の投影面に対し投影する前記画像の視認性を低下させ、このとき前記他方の投影面に対する前記画像の視認性を前記一方の投影面に対する画像の視認性より高くして前記画像を投影する制御を行うか、のうちのいずれかの制御を行う。
【0034】
第7の態様によれば、投影制御部は、車両の右側方、左側方に投影部が搭載されている場合、車両の右側方又は左側方の路面状況に応じて、一方への投影を停止する場合であっても他方への投影を維持することができる。このため、下り坂や下降段差になっている路面に歩行者がいる場合であっても運転者がそれを直視することによる運転上の危険を回避しつつ、交通に必要な情報を投影して歩行者に明確に伝達してシーンに応じた行動喚起を可能にすることができる。
【0035】
第4の態様から第6の態様に従属する第8の態様において、前記投影部は、車両の前方に位置する前記路面の第3の投影面に前記画像を投影する第3の投影部と、前記車両の後方に位置する前記路面の第4の投影面に前記画像を投影する第4の投影部と、を含み、前記投影制御部は、前記第3の投影面又は前記第4の投影面のいずれか一方が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に、(1)前記一方の投影面に対し前記画像の投影を停止させる場合、他方の投影面に対する前記画像の投影を継続するか、(2)前記一方の投影面に対し前記画像の投影を停止させる場合、前記他方の投影面に対し視認性を低下させて投影する制御を行うか、あるいは(3)前記一方の投影面に対し前記画像の視認性を低下させる場合、前記他方の投影面に対し投影する前記画像の視認性を低下させ、このとき前記他方の投影面に対する前記画像の視認性を前記一方の投影面に対する画像の視認性より高くして前記画像を投影する制御を行うか、のうちのいずれかの制御を行う。
【0036】
第8の態様によれば、投影制御部は、車両の前方と後方に投影部が搭載されている場合、車両の前方又は後方の路面状況に応じて、一方への投影を停止する場合であっても他方への投影を維持することができる。このため、後続するか対向する車両の乗員又は歩行者等が投影光を直視することによる幻惑を回避しつつ、交通に必要な情報を投影して車両の乗員又は歩行者に明確に伝達することによりシーンに応じた行動喚起が可能になる。
【0037】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る路面投影装置を用いた路面投影システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る路面投影装置の基本動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、車両の左右にそれぞれの投影部を有する場合の本発明の実施の形態に係る路面投影装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る路面投影装置の動作を説明するために引用した図であり、
図4(a)は、車両の左側方と右側方(左右)に画像を投影する形態の一例を示し、
図4(b)はその画像の投影パターンの一例を示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る路面投影装置の動作を説明するために引用した図であり、
図5(a)は、車両の左側方と右側方に投影部を有する場合で、一方の側方に下り勾配又は下降段差がある場合の投影形態を正面図で示し、
図5(b)はその場合の投影光が路面に届く範囲を示し、
図5(c)は、一方の側方に下り勾配又は下降段差がある場合の投影形態を上面図で示した図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る路面投影装置の動作を説明するために引用した図であり、
図6(a)は、車両の前方に投影部を有する場合で、平坦な路面での投影形態の一例を、
図6(b)は、車両の前方に投影部を有する場合で、下り勾配での路面投影形態の一例を、
図6(c)は、車両の前方と後方に投影部を有する場合で、一方が平坦な路面で他方に下り勾配がある場合の投影形態の一例を示す。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る路面投影装置の動作を説明するために引用した図であり、投影可能範囲をグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態(以下、本実施形態という)によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0040】
(実施形態の構成)
図1を参照する。
図1は、本実施形態に係る路面投影装置を用いた路面投影システム10の構成を示すブロック図である。
【0041】
図1に示すように、路面投影システム10は、車両制御部15と、投影制御部16と、投影部17と、により構成される。
【0042】
車両制御部15は、車両の各部に搭載されたセンサ(後述する挙動センサ14等)からの信号を基に情報を分析し、主に、車両の発進、停止、旋回等の動作におけるエンジンからのトルク調整(駆動系)、ブレーキの作動(制動系)、ステアリング操作(操舵系)を制御する。
【0043】
車両制御部15は、主制御部150と、路面監視部151と、を含む。
【0044】
主制御部150は、例えば、制御用通信バス20(CAN:Control Area Network)を介して接続される、地
図11(地図情報が格納されたデータベース)、カメラ12、距離画像センサ13、挙動センサ14等から情報を取得して上記した駆動系、制動系、操舵系の車両の制御を司る他に、投影制御部16との間で通信も行う。
【0045】
路面監視部151は、車両から所定距離内にある路面の勾配又は形状の変化を監視する。ここで、「車両から所定距離内にある路面」とは、例えば、3.0~3.5mの車線幅員の範囲にある車道の表面をいい、路面投影装置が有する投影部(プロジェクタ)の投影距離や解像度等の性能によって決定することができる。また、「投影面」とは、投影光をある方向からあてたときの影が映し出される路面である。
【0046】
また、「勾配」とは、路面の高さが連続的に変化する傾斜の程度をいい、「下り勾配」とは、視認性に悪い影響を与える勾配閾値以上の下りの道路勾配をいう。勾配閾値は、例えば、勾配率又は角度で表される。勾配閾値も、プロジェクタである投影部17が有する投影距離や解像度等の性能に依存して決まる。
【0047】
また、「下降段差」とは、路面上の一の路面と次の路面とが所定の高さ以上の垂直面又は所定角度以上の斜面で繋がれている箇所をいい、周囲の高さに対して段差閾値以上の高低差を有する箇所をいう。例えば、距離画像センサ13により計測される路面の複数の計測点の高さの差分が段差閾値以上である場合に段差閾値以上の高低差が存在すると判定できる。
【0048】
投影面となる路面の勾配又は形状の変化は、例えば、距離画像センサ13によって取得される距離画像から路面監視部151により検出することができる。ここで、距離画像とは、路面までの距離によって構成される画像であり、距離画像センサ13は、例えば、赤外線を用いて路面までの距離を非接触で測定する。具体的には、内蔵する赤外線LED(Light Emitting Diode)の光を路面に照射し、反射して帰ってくるまでの時間を測定して距離を求めるものであり、具体的には、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波、超音波、ステレオカメラ等が使用される。
【0049】
路面監視部151は、例えば、入力された距離画像を対応する3次元データ群に変換し3次元データ群から3点以上の3次元データをサンプリングし、3次元データによって決まる1つの平面を示す平面パラメータを複数算出し、これを3次元データの信頼度に応じた重みで投票空間に重み付け投票し、この投票結果に基づいて平面(平坦)を検出する画像処理を行う。さらに2個のカメラ12を用いることで上述した画像処理によって平面検出を用いた路面認識が可能となり、下り勾配や下降段差の検出が可能である(特開2003-271975号公報、特開2007-124866号公報参照)。
【0050】
路面監視部151によって監視される、車両から所定距離内にある路面の勾配又は形状の変化は路面情報として、主制御部150を介し、制御用通信バス20経由で投影制御部16へ転送される。
【0051】
投影制御部16は、投影面が平坦であるか否かにより画像を投影面に異なる態様で投影するように制御する。例えば、投影面が平坦でない場合、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性あるいは誘目性を低下させて投影する制御を行なう。
【0052】
ここで、「平坦」とは、路面が平らなこと、言い換えれば画像が投影される平面である路面上の投影面に凹凸や高低差がないことをいい、ここでは、投影面に勾配や段差が所定量ある場合に平坦でないとし、所定量の勾配や段差がない場合に平坦であるとする。また、「異なる態様で投影する」とは、投影面が平坦な場合と平坦でない場合とで異なる投影形態で投影することをいい、例えば、通常の視認性あるいは誘目性で画像を投影する投影形態と、画像の投影を停止するか又は通常の投影に比べ、視認性あるいは誘目性を低下させて投影する投影形態がある。
【0053】
なお、視認性とは、目で画像を見たときに認識し易いか否かの度合いを示し、瞬間的な判断で認識できるものに対し視認性が高いといい、また、反対に認識しづらいものに対して視認性が低いという。また、誘目性とは、周りを意識していない歩行者に注目させる、あるいは発見させ易くするといった、歩行者の注意をひきつける度合いを示し、例えば、赤やオレンジ、黄色等の暖色系などは誘目性が高く、逆に、青や緑、紫等の寒色系は誘目性が低いとされている。例えば、交通標識等で危険なことを表すのに赤や黄色が使用されているのは、意識しなくても色が注意をひきつけてくれるからである。
【0054】
このため、投影制御部16は、主制御部160と、画像生成部161と、画像認識部162とを含む。
【0055】
主制御部160は、車両制御部15から転送される路面監視部151によって監視された投影面の路面情報に基づき、投影面が平坦でないと判定された場合(例えば、投影面が下り勾配か下降段差になっている場合)、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性等を低下させて投影する制御を行なう。
【0056】
このため、画像生成部161は、投影可能範囲の一部に画像が投影されるように、例えば、後述する
図4(b)に示す画像(投影画像4)を生成可能に構成されている。ここで、投影可能範囲とは、投影部17が路面に投影する投影光の最大到達範囲のことをいい、言い換えれば、路面に画像を投影する際の投影可能な最大画像サイズを示す。ここで、画像サイズは、X軸に平行な軸に沿った幅、Y軸に平行な軸に沿った幅のうち、少なくとも一方を示し、投影制御部16は、この投影可能範囲の少なくとも一部に生成された画像(投影画像4)を投影するように投影部17を制御している。
【0057】
図4(b)に一例を示す画像(投影画像4)は、自車両が方向転換することを不図示のナビゲーション装置や方向指示器等からの情報に基づき検出し、それに応じて車両の外にいる歩行者に対して自車両が方向転換することを報知して行動喚起を促すものである。
【0058】
なお、路面に投影される画像の他の例として、例えば、中国特許CN111237719の
図8に示されているように、キーレスエントリーにより、キーを所持するユーザの接近を検出して乗車口とユーザ間の路面上にカーペット画像を表示してもよい。ここで、カーペット画像は、ユーザとの距離に応じて伸び縮みする。
【0059】
また、投影制御部16は、車両への投影部17の取付け位置から車両の接地平面までの垂直距離と画像の投影角度とによって決まる投影可能範囲のうち、投影される画像の縦方向又は横方向の幅が、投影部17によって投影される投影光が路面に届くまでの距離を超え、その場所に投影面が無い場合に、画像の投影を停止する制御を行なってもよい。
【0060】
このとき、投影制御部16は、画像認識部162が、カメラ12あるいは距離画像センサ13によって検出される距離画像に基づき、投影面に投影された画像を認識することによって投影されている画像の縦方向又は横方向の幅、及び投影部17によって投影される投影光が路面に届く距離を認識する。そして、主制御部160が、画像認識部162によって認識される投影される画像の縦方向又は横方向の幅が、投影光が路面まで届く距離を超え、その場所に投影面が無い場合に、画像の投影を停止するように制御する。詳細は後述する。
【0061】
また、投影制御部16は、投影面の勾配変化又は形状変化により、投影面が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に投影面が平坦でないと判定し、投影面への画像の投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行なう。また、投影制御部16は、投影面の勾配変化又は形状変化により投影面が下り坂又は下降段差になることを予測した場合に、投影面が前記下り坂又は下降段差になるより前に、投影面への画像の投影を停止するか又は視認性を低下させて投影する制御を行なってもよい。
【0062】
ここで、投影制御部16は、投影面が下り坂又は下降段差になることを予測するために、地
図11における車両の進行方向にある路面の勾配情報、カメラ12や距離画像センサ13等によって検出される車両の進行方向の路面形状情報等を用いることができる。例えば、地
図11と不図示のGPS(Global Positioning System)による測位情報を参照することにより、また、カメラ12や距離画像センサ13により解析されるデータに基づき車両の進行方向に下り坂又は下降段差があることを予測でき、これを契機に画像の投影を停止あるいは視認性を低下させる制御を行うことができる。
【0063】
さらに、投影制御部16は、投影面の勾配変化又は形状変化により投影面が下り坂又は下降段差になることを予測又は検出した場合に、投影面に投影される画像のうち、車両から離れた場所に投影される一部の画像の投影を停止するか又は視認性を低下させて投影する制御を行なってもよい。
【0064】
投影部17は、投影制御部16の制御のもとで、画像生成部161により生成される画像を路面の投影面に投影するプロジェクタであり、光源部171と、光変調部172と、投影光学系173とを含む。
【0065】
投影部17は、車両から所定距離内にある路面に画像を投影できる位置に取り付けられる。例えば、車両のルーフの四隅に取り付けることで車両の前後左右に所望の画像を投影することができる。この場合、4個の投影部17(F,R,Le,Ri)がそれぞれ対応する位置に取り付けられる。また、ルーフに限らず、車体の四隅、あるいは車体の底面に取り付けてもよい。また、前方バンパーの中央と、後方バンパーの中央に取り付けることにより車両の前後に所望の画像を投影出来、また、ドアミラーやドア近傍に取り付けることで車両の左側方あるいは右側方、あるいはその両方に所望の画像を投影できる。
【0066】
光源部171は、水銀ランプのような光源ランプ、又はLEDのような固体光源を備えている。光源部171は、少なくとも赤色光、緑色光及び青色光を含む光を出射可能に構成されており、白色光を発する光源ランプ、各種の色の光を発する複数のLEDを含んでいてもよい。光源部171から出射された光は、光変調部172に入射される。
【0067】
なお、光源部171は、投影光の明るさを段階的に調整できる調光機能を有するものとし、明るさは投影制御部16によって制御されるものとする。
【0068】
光変調部172は、例えば、液晶パネルと、液晶パネルを駆動する駆動回路からなり、画素毎に配列されたマイクロミラーを含むデジタルミラーデバイス(DMD)であってもよい。このような光変調部172は、画像情報に基づき投影する画像を形成することができる。
【0069】
投影光学系173は、光変調部172により形成された投影画像を投影面に拡大して投影する投影レンズを含む。投影光学系173は、バレルと、バレル内に収納されたレンズ群と、を備えている。光変調部172によって形成された投影画像は、投影光学系173を通って路面の投影面に投影される。
【0070】
(実施形態の動作)
図2を参照する。
図2は、本実施形態に係る路面投影装置の基本動作を示すフローチャートである。以下、
図4~
図7を参照しながら、
図2に示す本実施形態に係る路面投影装置の基本動作について説明する。
【0071】
図4~
図7は、本実施形態に係る路面投影装置の動作を説明するために引用した図であり、
図4(a)は、車両の左側方と右側方(左右)に画像を投影する形態の一例を、
図4(b)は、その画像の投影パターン(投影画像4)の一例を示す。
【0072】
また、
図5(a)は、車両の左側方と右側方(左右)に投影部を有する場合で、一方の側方に下り勾配(下り坂)又は下降段差がある場合の投影形態を正面図で示し、
図5(b)はその場合の投影光が路面に届く範囲を記号で示し、
図5(c)は、一方の側方に下り勾配又は下降段差がある場合の投影形態を上面図で示した図である。
【0073】
また、
図6(a)は、車両の前方に投影部を有する場合で、平坦な路面での投影形態の一例を、
図6(b)は、下り勾配での路面投影形態の一例を、
図6(c)は、車両の前方と後方に投影部を有する場合で、一方が平坦な路面で他方に所定量の下り勾配がある場合の投影形態の一例を示す。
【0074】
また、
図7は、投影部17が路面に投影する光の最大到達範囲である投影可能範囲をグラフで示した図である。
【0075】
図2のフローチャートにおいて、本実施形態に係る路面投影装置は、まず、投影制御部16(主制御部160)が、車両制御部15の路面監視部151から、主制御部150、制御用通信バス20を介して投影面の路面情報を取得する(ステップS101)。ここで、投影面とは、例えば、
図4(a)に示すように、車両1の側方から所定距離範囲内(例えば、1車線幅)にある路面2のこと(投影面3)をいい、また、路面情報とは、路面監視部151から出力される投影面3の勾配又は形状の変化を示す情報である。
【0076】
続いて、投影制御部16の主制御部160は、路面監視部151から出力される投影面3の路面情報に基づき投影面3が平坦であるか否かを判定する(ステップS102)。ここて、平坦であると判定された場合(ステップS102“YES”)、主制御部160は、画像生成部161で生成された、例えば、
図4(b)に一例を示す画像を投影部17に出力し、生成された画像を投影面3となる路面2にデフォルトで設定された通常の照度で投影するように制御する(ステップS103)。
【0077】
投影部17では、光源部171から出射された投影光が光変調部172に入射されると、光変調部172が、投影制御部16の画像生成部161で生成され出力される画像に基づき投影する投影画像4を形成する。そして、投影光学系173が、光変調部172により形成された投影画像4を投影面3に拡大して投影する。
【0078】
一方、投影制御部16の主制御部160は、投影面3が平坦ではなく(ステップS102“NO”)、投影面3の勾配変化又は形状変化により、投影面3が勾配閾値を超える下り勾配(下り坂)、又は段差閾値を超える下降段差になることが予測又は検出された場合(ステップS104“YES”)、それが車両側方で予測又は検出されたものであるか否かを判定する(ステップS105)。
【0079】
ここで、例えば、
図5(a)(b)(c)に示すように、投影面3となる一方の路面(ここでは車両1の正面に向かって左側方2aあるいは2bの破線で示す三角形の領域)で勾配閾値を超える下り勾配(下り坂)、又は段差閾値を超える下降段差が予測又は検出されると(ステップS105“YES”)、主制御部160は、画像生成部161で生成された画像の投影を停止するか、通常よりも照度を下げて(視認性を低下させて)投影するように投影部17を制御する(ステップS106)。
【0080】
ここで、勾配閾値を超える下り坂又は下降段差の予測又は検出は、地
図11における車両前方の路面の勾配情報、カメラ12や距離画像センサ13等によって検出される路面形状の変化を用いることができる。例えば、地
図11を参照することにより、また、カメラ12や距離画像センサ13により解析されるデータに基づき下り坂又は下降段差があることを予測又は検出が可能である。投影制御部16は、路面の勾配又は形状に急激な変化(勾配閾値、段差閾値を超える)があることを予測あるいは検出したことを契機に画像の投影を停止し、あるいは照度により視認性を低下させる制御を行うことができる。
【0081】
投影制御部16が視認性を低下させる制御を行う場合、投影部17では、投影制御部16による制御の下で光源部171を制御して投影光の明るさを調整し(照度を下げる)、光源部171から出射された光を光変調部134に入射する。このことにより、光変調部172が、投影制御部16の画像生成部161で生成され出力される画像に基づき投影する投影画像4を形成する。そして、投影光学系173が、光変調部172により形成された投影画像4を投影面3に拡大して投影する。
【0082】
このように、投影制御部16が、投影面が平坦であるか否かにより画像を投影面に異なる態様で投影するように制御することで、投影面となる路面の路面状況を考慮した情報(画像)の投影が可能となる。このため、路面2に対して交通に必要な情報を投影して運転者あるいは歩行者に明確に伝達してシーンに応じた行動喚起が可能になる。特に、下り坂や下降段差になっている路面に歩行者がいる場合であっても運転者がそれを直視することによる危険性を回避した路面投影装置を提供することができる。
【0083】
また、投影面が平坦でない場合、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影することにより、路面状況にかかわらず常に画像の投影を継続する場合に比べて省電力化がはかれる。
【0084】
また、投影制御部16は、投影面の勾配又は形状の変化を監視する路面監視部151から取得される投影面の路面情報に基づき、投影面が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合に平坦でないと判定して投影面への画像の投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行う。このため、投影面となる路面の路面状況を考慮した情報(画像)の投影が可能となり、下り勾配あるいは下降段差になっている路面に歩行者がいても直視することによる危険性が回避される。また、投影面が平坦でない場合、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影することにより、路面状況にかかわらず常に画像の投影を継続する場合に比較して省電力化がはかれる。
【0085】
なお、本実施形態では、投影面が平坦か否かは、車両制御部15の路面監視部151から取得される路面情報に基づき判定するものとした。このように、車両が走行制御のために使用する車両制御部15(路面監視部151)から路面情報を取得するため、路面監視部151を独立して備える必要がなく、資源の有効活用が図れることから、路面投影装置を低いコストで実現できる。
【0086】
路面監視部151を投影制御部16内に独立して設けることも考えられるが、この場合、制御用通信バス20を使用することが不要となり、このため、投影制御部16のみで閉じた制御が可能となり、投影制御を高速化することができる。
【0087】
ところで、投影制御部16は、投影可能範囲の概念を使用することにより画像の投影を停止することができる。投影可能範囲とは、投影部17が路面2に投影する投影光の最大到達範囲のことをいい、言い換えれば、路面2に画像4を投影する際の投影可能な最大画像サイズを示す。ここで、画像のサイズは、X軸に平行な軸に沿った幅、Y軸に平行な軸に沿った幅のうち、少なくとも一方を示し、投影制御部16は、この投影可能範囲の少なくとも一部に生成された画像(投影画像4)を投影するように投影部17を制御する。
【0088】
投影制御部16(主制御部160)は、画像認識部162が、カメラ12あるいは距離画像センサ13によって計測される距離画像に基づき、投影面3に投影された画像を認識することにより画像が投影されている画像の縦方向又は横方向の幅、及び投影部17から投影される投影光が路面に届くまでの距離を認識することができる。
【0089】
例えば、
図5(b)に示すように、投影可能範囲は、車両1への投影部17の取付け位置(ここでは車両1の底面とする)から車両1の接地平面までの垂直距離(設置高さh)と画像の投影角度aとによって決まる。投影制御部16は、投影画像4の縦方向又は横方向の幅が投影部17によって投影される投影光が路面2に届くまでの距離を超え、そこに投影面が無い場合に画像の投影を停止する制御を行う。言い換えれば、投影制御部16は、投影光が届く範囲にあって、底辺の長さbo(投影される画像の横方向の幅boであって、ここでは「投影絵幅」という)が斜辺の長さhy(投影部17から投影される投影光が路面2に届くまでの距離であって、ここでは「検知距離」という)を超え、そこに投影面が無い場合に画像の投影を停止するように制御する。
【0090】
図7は投影可能範囲を示すグラフであり、縦軸に投影絵幅(
図6(b)の底辺の長さbo)を、横軸に検知距離(
図6(b)の斜辺の長さhy)を目盛り、撮影可能範囲を決める両者の関係を示している。また、撮影可能範囲をグラフで表現するにあたり、投影部17の車両1への設置高さが30[cm]の場合に計測された検知距離(斜辺hy)と、投影絵幅(底辺bo)と、投影角度aとの関係が以下の表1に示されている。
【0091】
【0092】
表1によれば、例えば、投影角度が41°の場合、検知距離(斜線hy)が40[cm]、投影絵幅(底辺bo)が26[cm]であり、投影角度が60°の場合、検知距離(斜線hy)が60[cm]、投影絵幅(底辺bo)が52[cm]であり、・・・投影角度が77°の場合、検知距離(斜線hy)が140[cm]、投影絵幅(底辺bo)が130[cm]、である。いずれも、投影絵幅(底辺の長さbo)が検知距離(斜辺の長さhy)より小さいため投影可能範囲にあるといえる。
【0093】
投影制御部16は、投影絵幅(底辺の長さbo)が検知距離(斜辺の長さhy)を超え、そこに投影面3が無い場合、言い換えれば投影可能範囲に無い場合に投影を停止する制御を行なうことができる。
【0094】
このように、投影制御部16は、投影される画像(投影画像4)の縦方向又は横方向の幅(投影絵幅)が投影部17によって投影される投影光が路面に届くまでの距離(検知距離)を超えた場合に、画像の投影を停止する。言い換えれば、投影制御部16は、底辺の長さbo(投影される画像の縦方向又は横方向の幅)が斜辺の長さhy(投影部から発せられる投影光が路面に届くまでの距離)を超え、そこにと会う意面が無い場合(投影可能範囲に無い場合)に画像の投影を停止するように制御することで、視認性を低下させて投影するように制御する場合に比べて一層の省電力効果を実現することができる。
【0095】
説明を
図2のフローチャートに戻す、ステップS105において、勾配閾値を超える下り勾配(下り坂)、又は段差閾値を超える下降段差が車両側方で予測又は検出されたものでなく(ステップS105“NO”)、車両前方であって、かつそれが予測されたものであると判定されると(ステップS107“YES”)、投影制御部16(主制御部160)は、下り勾配(下り坂)が勾配閾値を超える前に、又は下降段差が段差閾値を超える前に(言い換えれば、車両1がその屈曲点を通る前に)、画像生成部161で生成された画像の投影を停止するか、デフォルトで設定された通常の照度よりも下げた照度(視認性を低下させる)で投影するように制御する(ステップS108)。
【0096】
このように、投影制御部16は、投影面の勾配又は形状の変化を監視する路面監視部151から取得される投影面の路面情報に基づき、投影面3が下り坂又は下降段差になることを予測した場合に、投影面3が下り坂又は下降段差になるより前に、投影面への画像の投影を停止するか又は通常より視認性を低下させて投影する制御を行う。このため、路面が下り坂あるいは下降段差になっていてもその屈曲点を通る前に投影を停止又は投影する画像の視認性を低下させる制御を行うことで、下り坂あるいは下降段差を車両に対向して歩いている歩行者が、例えば照度の高い投影光を直接見てしまうことによる幻惑を防止することができる。なお、対向して進行してくる車両の乗員の場合も同様である。
【0097】
なお、このとき、投影制御部16は、投影面3に投影される投影画像4のうち、車両1から離れた場所に投影される一部の画像の投影を停止するか又は視認性を低下させて投影する制御を行なってもよい。ことにより、対向する車両の運転者等の目に投影光が直接入ることによる幻惑を防止しつつ、一部でも投影を継続できることから不完全ではあっても投影される画像を視認することができる。
【0098】
図6(a)(b)(c)に、車両1の前後方向における投影形態の一例が示されている。歩行者は、投影された画像を視認することでシーンに応じた行動喚起が可能となる。
【0099】
図6(a)は、車両1の前方に投影部17を搭載した場合の平坦な路面2での投影形態であり、車両1の進行方向に歩行者が居るが、歩行者に投影光5が直接目に入ることはない。これに対し、
図6(b)は、車両1が急な斜面(勾配閾値を超える斜面)に差し掛かった場合の投影形態の一例を示す。この場合、投影光をそのまま投影すると、投影光6が歩行者の目に直接入ってしまうため、投影を停止するか視認性を低下させることで(照度を下げた投影光6)、照度が高いままの投影光を直接見てしまうこことにより発生する幻惑を防止することができる。
【0100】
なお、
図6(b)は、車両1の前方に向けて画像を投影している場合を例示しているが、後方に向けて投影している場合で、後続する側から歩行者や車両が来ている場合も同様である。
図6(c)については後述する。
【0101】
次に、
図3に示すフローチャートを参照し、車両の左側方と右側方(左右)にそれぞれの投影部17(
図1のLe,Ri)が搭載されていた場合に、一方を投影停止又は視認性を低下させて投影させた場合でも、他方への投影を継続する場合の本実施形態に係る路面投影装置の動作を説明する。
【0102】
図3において、投影制御部16(主制御部160)は、車両制御部15(路面監視部151)から、主制御部150、制御用通信バス20を介して投影面3の路面情報を逐次取得する(ステップS201)。続いて、主制御部160は、路面監視部151から取得された投影面3の路面情報に基づいて投影面3が平坦であるか否かを判定する(ステップS202)。
【0103】
ここで、平坦であると判定された場合(ステップS202“YES”)、主制御部160は、画像生成部161で生成された、例えば、
図5(b)にその一例を示す画像を投影部17に出力し、その画像を、車両の左右(左側方と右側方)に、デフォルトで設定された通常の照度で投影するように制御する(ステップS203)。
【0104】
投影部17では、光源部171から投影された投影光が光変調部172に入射されると、光変調部172が、投影制御部16の画像生成部161で生成された画像に基づき投影する投影画像4を形成する。そして、投影光学系173が、光変調部172により形成された投影画像4を投影面3に拡大して投影する。
【0105】
なお、ステップS202で実行される「路面が平坦であるか否か」の判定は、例えば、距離画像センサ13から取得される距離画像から車両制御部15の路面監視部151によって検出される路面情報に基づき、あるいは、地
図11又はカメラによって撮像される画像等から路面監視部151で予測される路面情報に基づき、投影制御部(主制御部160)で実行される。
【0106】
一方、投影面3が平坦ではなく(ステップS202“NO”)、例えば、左側方の投影面3が勾配閾値を超える下り勾配(下り坂)又は段差閾値を超える下降段差になることが予測されるか又は検出された場合であって(ステップS204“YES”)、左側方への投影を停止させる制御を行う場合(ステップS205“YES”)、投影制御部16(主制御部160)は、(1)右側方への投影を継続するか、(2)右側方へ照度を下げて投影するための制御(視認性を低下させる)を行う(ステップS206)。
【0107】
また、左側方への投影を停止させることなく(ステップS205“NO”)、左側方へ照度を下げて投影(視認性を低下)させる場合(ステップS207“YES”)、投影制御部16(主制御部160)は、右側方へ左側方より照度を高くして投影する制御を行う(ステップS208)。なお、投影部17は、光源部171が調光機能を有していることから、段階的に明るさ制御を行うことで右側方と左側方の照度の違いを制御することが可能である。
【0108】
一方、右側方の投影面が閾値を超える下り勾配又は段差閾値になることが予測されるか又は検出された場合であって(ステップS209“YES”)、右側方への投影を停止する制御を行う場合(ステップS210“YES”)、投影制御部16(主制御部160)は、左側方への投影を継続するか、左側方の照度を下げて投影する制御を行う(ステップS211)。
【0109】
また、右側方への投影を停止させることなく(ステップS210“NO”)、右側方へ照度を下げて投影する場合(ステップS212)、投影制御部16(主制御部160)は、左側方へ右側方より照度を高くして投影する制御を行う(ステップS213)。投影部17は、光源部171が調光機能を有していることから、段階的に明るさ制御を行うことで右側方と左側方の照度の違いを制御することが可能である。
【0110】
なお、ステップS201~S213において、左側方と右側方(左右)が入れ替わっても投影制御部16(主制御部160)は同様の動作を行うことができる。
【0111】
このように、投影制御部16(主制御部160)は、第1の投影面又は第2の投影面(車両の左側方と右側方に位置する路面)のうちの一方の投影面に対し画像の投影を停止させる制御を行う場合、他方の投影面に対する画像の投影を継続するか、(2)一方の投影面に対し画像の投影を停止させる場合に、他方の投影面に対し視認性を低下させて投影する制御を行う。あるいは、(3)一方の投影面に対し画像の視認性を低下させる場合、他方の投影面に対し投影する画像の視認性を低下させ、このとき他方の投影面に対する画像の視認性を一方の投影面に対する画像の視認性より高くして画像を投影する制御を行う。
【0112】
このため、車両の左右(右側方と左側方)に投影部17(Le,Ri)が搭載されている場合、車両の右側方又は左側方の路面状況に応じて、一方への投影を停止する場合であっても他方への投影を継続することができる。したがって、下り坂や下降段差になっている路面に歩行者がいる場合であっても運転者がそれを直視することによる危険性を回避しつつ、交通に必要な情報を投影して運転者あるいは歩行者に明確に伝達してシーンに応じた行動喚起が可能になる。
【0113】
なお、
図3のフローチャートは、車両の左側方と右側方(左右)にそれぞれの投影部17(Le,Ri)を有する場合を例示して説明したが、車両の前方と後方(前後)に投影部17(F,R)が搭載されている場合も同様の制御が可能である。
【0114】
この場合、投影制御部16(主制御部160)は、第3の投影面又は第4の投影面(車両の前方と後方に位置する路面)のうちの一方の投影面に対し画像の投影を停止させる制御を行う場合、他方の投影面に対する画像の投影を継続するか、(2)一方の投影面に対し画像の投影を停止させる場合に、他方の投影面に対し視認性を低下させて投影する制御を行う。あるいは、(3)一方の投影面に対し画像の視認性を低下させる場合、他方の投影面に対し投影する画像の視認性を低下させ、このとき他方の投影面に対する画像の視認性を一方の投影面に対する画像の視認性より高くして画像を投影する制御を行う。
【0115】
図6(c)に、投影部17(F,R)を車両の前後に搭載した場合の投影形態を示す。上述したように、一方を投影停止、あるいは照度を下げて画像の視認性を低下させて投影した場合であっても他方への投影を継続することができる。したがって、対向する側から歩行者が来ている状態で坂道に差し掛かったため、一方(ここでは前方)の投影だけを投影停止あるは照度を下げて画像の視認性を低下させて投影(投影光7)しているのに対し、他方(後方)への投影(投影光8)は継続していることを示している。なお、前方と後方の関係が入れ替わっても同様である。
【0116】
このように、車両の前方又は後方の路面状況に応じて、一方への投影を停止する場合であっても他方への投影を維持することができる。したがって、前又は後方に居る歩行者、あるいは対向するか後続する車両の乗員等が、投影光を直視することにより発生する幻惑を回避しつつ、交通に必要な情報を投影して歩行者あるいは乗員に明確に伝達することによりシーンに応じた行動喚起が可能になる。
【0117】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る路面投影装置によれば、投影制御部16が、投影面が平坦であるか否か(例えば、
図2のステップS102)により画像を投影面に異なる態様で投影するように制御する(S103,S106,S108)ことで、投影面となる路面の路面状況を考慮した情報(画像)の投影が可能となる。このことにより、路面に対して交通に必要な情報を投影して運転者あるいは歩行者に明確に伝達してシーンに応じた行動喚起が可能になる。特に、下り坂や下降段差になっている路面に歩行者がいる場合であっても運転者がそれを直視することによる危険性を回避した路面投影装置を提供することができる。
【0118】
また、投影面が平坦でない場合(例えば、
図2のステップS102“NO”)、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する(ステップS106)ことにより、路面状況にかかわらず常に画像の投影を継続する場合に比べて省電力化がはかれる。
【0119】
また、投影制御部16は、投影される画像の縦方向又は横方向の幅(投影絵幅)が投影部17によって投影される投影光が路面に届くまでの距離を超えた場合に、画像の投影を停止する。言い換えれば、投影可能範囲のうち、底辺の長さ(投影される画像の縦方向又は横方向の幅)が斜辺の長さ(投影部から発せられる投影光が路面に届くまでの距離)を超えた場合に画像の投影を停止するように制御することで、視認性を低下させて投影するように制御する場合に比べて一層の省電力効果を実現することができる。
【0120】
また、本実施形態に係る路面投影装置によれば、投影制御部16は、投影面が下り勾配又は下降段差になることを予測し又は検出した場合(例えば、
図2のステップS104“YES”)に平坦でないと判定して投影面への画像の投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影する制御を行う(ステップS106)。このため、投影面となる路面の路面状況を考慮した情報(画像)の投影が可能となり、下り勾配あるいは下降段差になっている路面に歩行者がいても直視することによる危険性が回避される。また、投影面が平坦でない場合、画像の投影面への投影を停止するか、又は平坦である場合よりも視認性を低下させて投影することにより、路面状況にかかわらず常に画像の投影を継続する場合に比較して省電力化がはかれる。
【0121】
また、投影制御部16は、投影面が下り坂又は下降段差になることを予測した場合に、投影面が下り坂又は下降段差になるより前に、投影面への画像の投影を停止するか又は通常より視認性を低下させて投影する制御を行う(例えば、
図2のステップS108)。このため、路面が下り坂あるいは下降段差になっていてもその屈曲点を通る前に投影を停止又は投影する画像の視認性を低下させる制御を行うことで、下り坂あるいは下降段差を車両に対向する歩行者が、例えば照度の高い投影光を直接見てしまうことによる幻惑を防止することができる。なお、対向して進行してくる車両の乗員に対する場合も同様である。
【0122】
また、投影制御部16は、投影面が下り坂又は下降段差になることを予測又は検出した場合に、車両から離れた場所に投影される一部の画像の投影を停止するか又は視認性を低下させて投影を行う。このように、投影する画像の車両から離れた方の一部を投影停止又は視認性を低下させて制御することにより、後続するか対向する車両の運転者等の目に投影光が直接入ることによる幻惑を防止しつつ、一部でも投影を継続できることから不完全ではあっても投影される画像を視認することができる。
【0123】
なお、本実施形態では、投影制御部16は、投影面が下り坂又は下降段差になることを予測又は検出した場合に照度を制御することにより視認性を低下させる制御を行うこととしたが、他に色を用いて誘目性を低下させる制御を行ってもよい。
【0124】
さらに、本実施形態に係る路面投影装置によれば、投影制御部16は、車両1の右側方と左側方に投影部17(Le,Ri)が搭載されている場合、車両の右側方又は左側方の路面状況に応じて、一方への投影を停止する場合であっても他方への投影を維持することができる。このため、下り坂や下降段差になっている路面に歩行者がいる場合であっても運転者がそれを直視することによる危険性を回避しつつ、交通に必要な情報を投影して運転者あるいは歩行者に明確に伝達してシーンに応じた行動喚起が可能になる。
【0125】
また、投影制御部16は、車両1の前方と後方に投影部17(F,R)が搭載されている場合、車両の前方又は後方の路面状況に応じて、一方への投影を停止する場合であっても他方への投影を維持することができる。このため、後続する、あるいは対向する車両の運転手又は歩行者等が投影光を直視することによる幻惑を回避しつつ、交通に必要な情報を投影して車両の乗員あるいは歩行者に明確に伝達することによりシーンに応じた行動喚起が可能になる。
【0126】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0127】
1・・・車両、2・・・路面(2a・・・下り勾配、2b・・・下降段差)、3・・・投影面、4・・・投影画像、5,6、7,8・・・投影光、10・・・路面投影システム、11・・・地図、12・・・カメラ、13・・・距離画像センサ、14・・・挙動センサ、15・・・車両制御部、16・・・投影制御部、17・・・投影部、20・・・制御用通信バス、150・・・主制御部、151・・・路面監視部、160・・・主制御部、161・・・画像生成部、162・・・画像認識部、171・・・光源部、172・・・光変調部、173・・・投影光学系。