(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156249
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】監視制御装置、ログデータ保存方法およびデータ保存プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/048 20060101AFI20241029BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G05B19/048
G05B23/02 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070553
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】太田 文香
【テーマコード(参考)】
3C223
5H220
【Fターム(参考)】
3C223AA06
3C223AA21
3C223BA03
3C223BB12
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF13
3C223GG01
3C223HH29
5H220AA01
5H220BB09
5H220CC03
5H220CX09
5H220HH01
5H220HH03
5H220JJ12
5H220JJ26
5H220KK06
5H220MM07
5H220MM08
(57)【要約】
【課題】記憶部を内蔵する記憶ユニットにデータを周期的に保存する際に、記憶ユニットの交換、故障または再起動が発生した場合でも保存対象のデータの欠落をなくすことができる監視制御装置を得ること。
【解決手段】監視制御装置20は、プロセッサを内蔵するCPUユニットと、データを記憶する記憶部を内蔵する複数のストレージユニットと、がシリアル通信用のケーブルを介して接続され、監視対象からログデータを取得して監視対象の監視を行う監視制御装置20であって、CPUユニットは、監視対象のログデータの保存先のストレージユニットと、保存先のストレージユニットが使用不可の状態の場合の切替先のストレージユニットと、を定めた設定情報に基づいて、ログデータをストレージユニットに保存する指示を周期的に送信する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを内蔵するCPUユニットと、データを記憶する記憶部を内蔵する複数のストレージユニットと、がシリアル通信用のケーブルを介して接続され、監視対象からログデータを取得して前記監視対象の監視を行う監視制御装置であって、
前記CPUユニットは、前記監視対象のログデータの保存先のストレージユニットと、前記保存先のストレージユニットが使用不可の状態の場合の切替先のストレージユニットと、を定めた設定情報に基づいて、前記ログデータを前記ストレージユニットに保存する指示を周期的に送信することを特徴とする監視制御装置。
【請求項2】
前記CPUユニットは、
前記ストレージユニットが使用可能な状態か否かを示す情報であるユニット状態と、保存対象のログデータと、を前記複数のストレージユニットのそれぞれに設定した保存先更新情報を記憶する保存先更新情報記憶部と、
前記ストレージユニットが前記保存先更新情報の前記ユニット状態と一致するかを確認する確認要求メッセージを前記保存先更新情報のすべての前記ストレージユニットに順に送信する処理を周期的に実行する第1シリアル通信部と、
を備え、
前記第1シリアル通信部は、前記保存先更新情報で前記保存対象が設定されている前記ストレージユニットには、前記保存対象の前記ログデータと前記ログデータの書き込み指示とを含む前記確認要求メッセージを送信することを特徴とする請求項1に記載の監視制御装置。
【請求項3】
前記CPUユニットは、前記確認要求メッセージの送信結果から前記ユニット状態に変化があったと判定した場合に、前記保存先更新情報を更新するユニット状態管理部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の監視制御装置。
【請求項4】
前記CPUユニットは、前記保存先のストレージユニットが使用不可の状態の場合の前記切替先のストレージユニットを定めた保存先切替情報を記憶する保存先切替情報記憶部をさらに備え、
前記ユニット状態管理部は、前記ログデータを含む前記確認要求メッセージに対する応答が返ってこない場合に、前記保存先更新情報において、前記応答が返ってこないストレージユニットに対応付けられた前記保存対象を前記切替先のストレージユニットに変更し、前記応答が返ってこないストレージユニットの前記ユニット状態を使用不可に変更し、
前記第1シリアル通信部は、前記応答が返ってこない前記確認要求メッセージに含まれる前記ログデータを、次の周期に生成される確認要求メッセージに含めて送信することを特徴とする請求項3に記載の監視制御装置。
【請求項5】
前記監視制御装置を構成したときに前記複数のストレージユニットのそれぞれに対応付けた前記ユニット状態と前記保存対象とを初期設定情報として含む保存先初期設定情報を記憶する保存先初期設定情報記憶部をさらに備え、
前記ユニット状態管理部は、前記ログデータを含まない前記確認要求メッセージに対する応答を受信した場合に、前記保存先初期設定情報および前記保存先切替情報を参照して、前記応答を返したストレージユニットに対応付けられる前記切替先のストレージユニットおよび前記応答を返したストレージユニットの前記保存先更新情報の内容を前記初期設定情報に戻すことを特徴とする請求項4に記載の監視制御装置。
【請求項6】
前記ストレージユニットは、
前記CPUユニットから前記確認要求メッセージを受信する第2シリアル通信部と、
データを記憶するデータ記憶部と、
前記確認要求メッセージに含まれる前記ログデータを前記データ記憶部に書き込むデータ管理部と、
前記CPUユニットの処理とは独立して、前記データ記憶部に記憶された前記ログデータを用いて決められた処理を行うデータ処理部と、
を有することを特徴とする請求項2から5のいずれか1つに記載の監視制御装置。
【請求項7】
CPUユニットと、データを記憶する複数のストレージユニットと、がシリアル通信用のケーブルを介して接続され、監視対象からログデータを取得して前記監視対象の監視を行う監視制御装置のログデータ保存方法であって、
前記CPUユニットが、前記監視対象のログデータの保存先のストレージユニットと、前記保存先のストレージユニットが使用不可の状態の場合の切替先のストレージユニットと、を定めた設定情報を記憶する設定情報記憶工程と、
前記CPUユニットが、前記設定情報に基づいて、前記ログデータを前記保存先のストレージユニットに保存する指示を周期的に送信する送信工程と、
を含むことを特徴とするログデータ保存方法。
【請求項8】
前記設定情報記憶工程では、前記CPUユニットが、前記ストレージユニットが使用可能な状態か否かを示す情報であるユニット状態と、保存対象のログデータと、を前記複数のストレージユニットのそれぞれに設定した保存先更新情報を記憶し、
前記送信工程では、前記CPUユニットが、前記ストレージユニットが前記保存先更新情報の前記ユニット状態と一致するかを確認する確認要求メッセージを前記保存先更新情報のすべての前記ストレージユニットに順に送信する処理を周期的に実行し、
前記送信工程では、前記保存先更新情報で前記保存対象が設定されている前記ストレージユニットには、前記保存対象の前記ログデータと前記ログデータの書き込み指示を含む前記確認要求メッセージを送信することを特徴とする請求項7に記載のログデータ保存方法。
【請求項9】
前記CPUユニットが、前記確認要求メッセージの送信結果から前記ユニット状態に変化があったと判定した場合に、前記保存先更新情報を更新するユニット状態管理工程をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のログデータ保存方法。
【請求項10】
前記CPUユニットが、前記保存先のストレージユニットが使用不可の状態の場合の前記切替先のストレージユニットを定めた保存先切替情報を記憶する保存先切替情報記憶工程をさらに含み、
前記ユニット状態管理工程では、前記CPUユニットが、前記ログデータを含む前記確認要求メッセージに対する応答が返ってこない場合に、前記保存先更新情報において、前記応答が返ってこないストレージユニットに対応付けられた前記保存対象を前記切替先のストレージユニットに変更し、前記応答が返ってこないストレージユニットの前記ユニット状態を使用不可に変更し、
前記送信工程では、前記CPUユニットは、前記応答が返ってこない前記確認要求メッセージに含まれる前記ログデータを、次の周期に生成される確認要求メッセージに含めて送信することを特徴とする請求項9に記載のログデータ保存方法。
【請求項11】
前記CPUユニットが、前記監視制御装置を構成したときに前記複数のストレージユニットのそれぞれに対応付けた前記ユニット状態と前記保存対象とを初期設定情報として含む保存先初期設定情報を記憶する保存先初期設定情報記憶工程をさらに含み、
前記ユニット状態管理工程では、前記CPUユニットが、前記ログデータを含まない前記確認要求メッセージに対する応答を受信した場合に、前記保存先初期設定情報および前記保存先切替情報を参照して、前記応答を返したストレージユニットに対応付けられる前記切替先のストレージユニットおよび前記応答を返したストレージユニットの前記保存先更新情報の内容を前記初期設定情報に戻すことを特徴とする請求項10に記載のログデータ保存方法。
【請求項12】
前記ストレージユニットが、前記CPUユニットから前記確認要求メッセージを受信する受信工程と、
前記ストレージユニットが、前記確認要求メッセージに含まれるログデータを前記ストレージユニットのデータ記憶部に記憶するデータ記憶工程と、
前記ストレージユニットが、前記CPUユニットの処理とは独立して、前記データ記憶部に記憶された前記ログデータを用いて決められた処理を行うデータ処理工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項8から11のいずれか1つに記載のログデータ保存方法。
【請求項13】
記憶部を内蔵する複数のストレージユニットとの間でシリアル通信用のケーブルを介して通信を行う通信回路と、監視対象からログデータを取得して前記監視対象の監視を行い、前記ログデータを前記ストレージユニットに書き込むプロセッサと、を備えるコンピュータに、
前記監視対象のログデータの保存先のストレージユニットと、前記保存先のストレージユニットが使用不可の状態の場合の切替先のストレージユニットと、を定めた設定情報を記憶する設定情報記憶ステップと、
前記設定情報に基づいて、前記ログデータを前記保存先のストレージユニットに保存する指示を周期的に送信する送信ステップと、
を実行させることを特徴とするデータ保存プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、施設の監視および制御を遠隔で行う広域監視制御システムを実現する監視制御装置、ログデータ保存方法およびデータ保存プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冗長構成を有する複数の制御部と、データを用いて処理を実行するとともに他のカードのデータをバックアップすることが可能な複数のカードと、がデータ伝送バスによって接続された処理システムで、制御部の切り替えが生じても、複数のカード間でのデータのバックアップが可能な処理システムが開示されている。具体的には、複数のカードのそれぞれの通信部は、バックアップを要求するカードの識別子と、バックアップ元のカードの識別子と、を記憶している。バックアップを要求するカードの識別子は、自身のカードの識別子である。バックアップデータの送信元のカードは、自身のカードの識別子と、バックアップ対象のデータと、を含むバックアップ要求メッセージをすべてのカードに対して一斉送信する。バックアップ要求メッセージを受信した他のカードは、バックアップ要求メッセージに含まれる送信元のカードの識別子、すなわちバックアップを要求するカードの識別子と、自身が保持するバックアップ元のカードの識別子と、が一致するかを判定する。一致する場合には、他のカードは、バックアップ要求メッセージに含まれるバックアップ対象のデータを自身のカードの定められた領域に保存する。一致しない場合には、他のカードは、バックアップ要求メッセージを破棄する。このような構成によって、処理システムの大規模化または複雑化によってバックアップ対象のデータの量が増大した場合でも、通常動作のための通信を圧迫することなくバックアップ処理を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術では、送信先のカードの故障によって、カードを交換した場合には、交換したカードにバックアップ元のカードの識別子を登録する処理が発生する。この処理のときに、定期的に行われるバックアップ動作のタイミングになった場合には、交換しているカードは、バックアップ対象のデータを保存することができない。また送信先のカードの再起動時にも同様にバックアップ対象のデータを保存することができない。つまり、上記従来の技術では、カードの交換時、故障時または再起動時にデータの欠落が発生してしまうという問題があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、記憶部を内蔵する記憶ユニットにデータを周期的に保存する際に、記憶ユニットの交換、故障または再起動が発生した場合でも保存対象のデータの欠落をなくすことができる監視制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る監視制御装置は、プロセッサを内蔵するCPUユニットと、データを記憶する記憶部を内蔵する複数のストレージユニットと、がシリアル通信用のケーブルを介して接続され、監視対象からログデータを取得して監視対象の監視を行う監視制御装置であって、CPUユニットは、監視対象のログデータの保存先のストレージユニットと、保存先のストレージユニットが使用不可の状態の場合の切替先のストレージユニットと、を定めた設定情報に基づいて、ログデータをストレージユニットに保存する指示を周期的に送信する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、記憶部を内蔵する記憶ユニットにデータを周期的に保存する際に、記憶ユニットの交換、故障または再起動が発生した場合でも保存対象のデータの欠落をなくすことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る監視制御装置を備える監視制御システムの構成の一例を模式的に示す図
【
図2】実施の形態1に係る監視制御装置の構成の一例を模式的に示す図
【
図3】実施の形態1に係る監視制御装置の構成の他の例を示す図
【
図4】実施の形態1に係る監視制御装置の構成の他の例を示す図
【
図5】実施の形態1に係る監視制御装置の機能構成の一例を模式的に示す図
【
図10】実施の形態1に係る監視制御装置の構成の他の例を示す図
【
図11】実施の形態1に係るログデータ保存方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図12】実施の形態1に係るログデータ保存方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図13】実施の形態1に係るログデータ保存方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図14】実施の形態2に係る監視制御装置の機能構成の一例を示すブロック図
【
図15】実施の形態2に係るログデータ保存方法の手順の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態に係る監視制御装置、ログデータ保存方法およびデータ保存プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る監視制御装置を備える監視制御システムの構成の一例を模式的に示す図である。監視制御システム1は、防災、施設の管理等のために監視対象に設けられた図示しないセンサから得られる監視データを用いて監視対象を監視するシステムである。監視制御システム1は、上位監視制御装置20Aと、下位監視制御装置20B,20Cと、監視制御端末50と、監視制御データサーバ60と、を備える。上位監視制御装置20Aおよび下位監視制御装置20B,20Cは、階層的に複数設けられる。
図1の場合には、階層が2つである場合が示されており、上位監視制御装置20Aおよび下位監視制御装置20B,20Cは、個々に区別されない場合には、監視制御装置20と称される。
【0011】
下位監視制御装置20B,20Cと、上位監視制御装置20Aと、はLAN(Local Area Network)回線であるネットワーク70Aを介して接続される。上位監視制御装置20Aと、監視制御端末50と、監視制御データサーバ60と、はLAN回線であるネットワーク70Bを介して接続される。ネットワーク70A,70Bの一例は、イーサネット(登録商標)などのIP(Internet Protocol)ネットワークである。
【0012】
下位監視制御装置20Bおよび下位監視制御装置20Cは、監視対象に設けられる図示しないセンサの内、地理的に近接した定められた範囲のセンサから監視データを取得する。下位監視制御装置20B,20Cは、取得した複数のセンサからの監視データを集約し、定められた加工処理を行って加工データとして上位監視制御装置20Aへと伝送する。センサは、設置位置における監視対象の状態を定められた収集周期で検知し、検知した結果である監視データを、下位監視制御装置20B,20Cに伝送する。センサは、下位監視制御装置20B,20Cと有線もしくは無線のネットワークまたは信号線を介して接続される。防災のために監視制御システム1が設けられる場合の監視対象の一例は、河川の流量、特定の空間の風速、排水ポンプ場またはダム水門における水位である。施設の管理のために監視制御システム1が設けられる場合の監視対象の一例は、トンネル、地下道等の設備、機場、無線中継局、ビル等の各種現場の電源設備である。センサは、これらの監視対象の1箇所に設けられるものではなく、監視対象の全体にわたって複数箇所に設けられる。このため、地理的に離れた複数の位置にセンサが設けられることもある。
【0013】
上位監視制御装置20Aは、監視対象の監視を行う装置である。上位監視制御装置20Aは、ネットワーク70Aを介して接続される複数の下位監視制御装置20B,20Cから加工データを取得する。上位監視制御装置20Aは、取得した複数の下位監視制御装置20B,20Cからの監視データを含む加工データを集約し、さらに上位の装置で取り扱われる形式に加工するとともに、上位の装置との間のネットワーク70Bの通信プロトコルに応じた通信形式のデータに加工した新たな加工データを、監視制御端末50および監視制御データサーバ60に送信する。一例では、上位監視制御装置20Aは、監視制御端末50に加工データを送信する場合には、監視制御端末50のユーザが認識可能な形式の情報に加工する。他の例では、上位監視制御装置20Aは、監視制御データサーバ60に情報を送信する場合には、監視制御データサーバ60で管理可能な形式の情報に加工する。
【0014】
なお、
図1では、監視制御装置20が2層で構成される場合を示したが、3層以上で構成されていてもよい。また、
図1では、下層に2つの下位監視制御装置20B,20Cが示されているが、3つ以上の監視制御装置20が存在していてもよい。さらに、上位監視制御装置20Aは、他の監視制御装置20との間で冗長構成を有していてもよい。
【0015】
監視制御端末50は、末端のセンサから取得した監視データをユーザが認識することができる形式で表示するコンピュータシステムである。また、監視制御端末50は、ユーザからの指示に従ってあるいは監視データに基づいた制御に従って、監視対象における末端のプロセス機器を操作する。末端のプロセス機器の一例は、監視対象がダム水門の場合には、水門を開くためのゲート、モータ等であり、監視対象が排水ポンプ場である場合には、ポンプ等である。
【0016】
監視制御データサーバ60は、上位監視制御装置20Aから取得した加工データを定められた形式で記憶するコンピュータシステムである。監視制御データサーバ60に記憶された加工データは、監視対象についてのシミュレーション、機械学習等に用いられる。
【0017】
監視制御装置20は、1つまたは複数の機能を実現する複数のハードウェアユニットを組み合わせ、複数のハードウェアユニットのそれぞれが相互に連携して動作することで実現される。
図2は、実施の形態1に係る監視制御装置の構成の一例を模式的に示す図である。監視制御装置20は、ベースユニット10と、上述のハードウェアユニットに相当する、電源カード11、CPU(Central Processing Unit)カード12、ハブカード13、通信制御カード14、IO(Input/Output)カード15およびストレージカード16と、を備える。なお、
図2に示される電源カード11、CPUカード12、ハブカード13、通信制御カード14およびIOカード15の数は例示であり、それぞれ任意の数とすることができる。また、ストレージカード16の数は、2以上である。
【0018】
ベースユニット10は、上記の各カードを支持し、固定する基台となる部材であり、スロットを有するシャーシである。スロットには、上記の各カードが装着される。ベースユニット10は、電源供給用の電力供給線、各種の信号線、シリアル通信用のケーブルを内蔵しており、各スロットの位置にコネクタが設けられている。一例では、スロット毎に、電源供給用のコネクタ、信号線用のコネクタおよびシリアル通信用のコネクタが配置されている。スロットに上記のカードが装着され、カードの各コネクタとベースユニット10の各コネクタとが電気的に接続されることで、電源の供給、信号の送受信、シリアル信号の送受信が可能となる。
【0019】
電源カード11は、監視制御装置20を構成する他のカード、すなわちCPUカード12、ハブカード13、通信制御カード14、IOカード15およびストレージカード16に電力供給線を介して電力を供給する。一例では、電源カード11は、直方体状の筐体に電源供給用の回路および配線を内蔵する。電源カード11は、電源ユニットとも称される。
【0020】
CPUカード12は、監視制御装置20全体の動作を制御する装置制御カードである。CPUカード12は、プロセッサを内蔵する。CPUカード12は、一例では直方体状の筐体にプロセッサを内蔵している。CPUカード12は、LANポート120を備える。LANポート120には、LANケーブルを介してハブカード13が接続される。また、CPUカード12は、監視制御装置20で行う監視に関するデータである監視データについて定められたデータ処理を行う機能を有する。定められたデータ処理は、上記したように、下位の装置からの監視データを集約し、加工処理を行って加工データとして上位の装置へと伝送する処理等である。このほかに、CPUカード12は、監視制御装置20を経由した監視データをストレージカード16にシリアル通信用のケーブルを介して保存する機能を有する。CPUカード12は、CPUユニットに対応する。
【0021】
ハブカード13は、監視制御装置20における内部ネットワークである第1内部ネットワーク81を構成し、複数のLANポート130を備える。ハブカード13が備える複数のLANポート130のそれぞれには、LANケーブルを介してCPUカード12または通信制御カード14が接続される。一例では、ハブカード13は、直方体状の筐体に、LANケーブルを内蔵し、筐体に複数のLANポート130を有する。ハブカード13は、ハブユニットとも称される。
【0022】
通信制御カード14は、監視制御装置20を外部ネットワークに接続するためのネットワークインタフェースとして機能する。通信制御カード14は、ハブカード13に接続するためのLANポート140Aと、外部ネットワークに接続するための外部インタフェース140Bと、を備える。外部インタフェース140Bは、外部ネットワークに有線接続する構成であってもよいし無線接続する構成であってもよい。また、外部ネットワークはデジタルネットワークでもよいしアナログネットワークでもよい。
図1に示す監視制御装置20の場合、複数の通信制御カード14の中の1つを使用して、ネットワーク70Aまたはネットワーク70Bに接続される。一例では、通信制御カード14は、直方体状の筐体に、通信制御用の回路を内蔵し、筐体にLANポート140Aおよび外部インタフェース140Bを有する。通信制御カード14は、通信制御ユニットとも称される。
【0023】
IOカード15は、機器を接続するための接続部150を有し、この接続部150に各種機器が直接接続される。一例では、IOカード15は、直方体状の筐体に、機器接続用の回路を内蔵し、筐体に接続部150を有する。IOカード15は、IOユニットとも称される。
【0024】
ストレージカード16は、データを記憶するデータ記憶カードである。ストレージカード16は、データを記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶部を内蔵する。ストレージカード16は、一例では直方体状の筐体に記憶部を内蔵している。実施の形態1では、ストレージカード16は、監視制御装置20で行う監視に関するデータである監視データ、すなわち監視制御装置20を経由した監視データをログデータとして記憶する。ストレージカード16は、ストレージユニットに対応する。
【0025】
CPUカード12および通信制御カード14は、ハブカード13に接続される。すなわち、CPUカード12および通信制御カード14は、第1内部ネットワーク81を介して通信可能である。また、CPUカード12および通信制御カード14は、監視制御装置20の内部でのシリアル通信をサポートする第2内部ネットワーク82を介した通信も可能である。CPUカード12、ハブカード13、通信制御カード14、IOカード15およびストレージカード16のシリアル通信用のケーブルが接続される位置には、図示しないがシリアルポートが設けられている。各カードのシリアルポートと、ベースユニット10の各カードに対応するスロットのシリアル通信用のコネクタと、の間が、シリアル通信用のケーブルで接続される。なお、第2内部ネットワーク82にはハブカード13、IOカード15およびストレージカード16も接続される。また、第1内部ネットワーク81および第2内部ネットワーク82がサポートする通信方式は図示したものに限定されない。CPUカード12と通信制御カード14とが2つの内部ネットワークを介して通信可能な構成を実現できるのであればどのような通信方式であってもよい。
【0026】
以上のような構成によって、監視制御装置20は、他の装置と通信回線によって接続され、監視対象からログデータを取得して監視対象の監視を行うことが可能となる。
【0027】
監視制御システム1では、各監視制御装置20の監視データは、監視制御端末50および監視制御データサーバ60に送信される。しかし、監視中にネットワーク70A,70Bの故障、ある監視制御装置20から監視制御端末50または監視制御データサーバ60までの間に設置される監視制御装置20の故障等によって、監視制御データサーバ60に保存される監視データに欠落が生じることがある。そこで、各監視制御装置20で監視データをログデータとしてバックアップしておくことで、故障等が改善した後に監視制御端末50および監視制御データサーバ60に欠落した監視データを送信することが可能となる。この結果、監視制御端末50および監視制御データサーバ60は、欠落のない監視データを用いた監視に関する処理を行うことができる。このような理由により、各監視制御装置20で、各監視制御装置20を経由するデータを保存することが望まれており、
図2に示されるように、各監視制御装置20は、ストレージカード16を備え、CPUカード12からの指示によって各監視制御装置20を経由するデータをストレージカード16に保存する。このとき、データは、シリアル通信用のケーブルを介して、CPUカード12からストレージカード16へと送信される。
【0028】
監視制御装置20の構成例について説明する。
図3は、実施の形態1に係る監視制御装置の構成の他の例を示す図である。
図3に示される監視制御装置20では、ベースユニット10に、電源カード11、CPUカード12、ハブカード13、2つの通信制御カード14、ストレージカード16a、IOカード15、ストレージカード16bおよびストレージカード16cが装着されている。つまり、
図3の例では、監視制御装置20は、3個のストレージカード16a,16b,16cを有する。監視制御装置20では、通信制御カード14よりも左側に位置するIOカード15およびストレージカード16a,16b,16cに対してアドレスが付与される。
【0029】
図3において、ストレージカード16cの記憶領域の先頭アドレスはRT1とされ、ストレージカード16bの記憶領域の先頭アドレスはRT2とされ、IOカード15に設けられるIOポートの先頭アドレスはRT3とされ、ストレージカード16aの記憶領域の先頭アドレスはRT4とされる。CPUカード12は、ストレージカード16c,16aには、ログデータAを保存し、ストレージカード16bには、ログデータBを保存する。つまり、CPUカード12は、アドレスRT1にはログデータAを保存し、アドレスRT2にはログデータBを保存し、アドレスRT4にはログデータAを保存するように設定がなされた設定情報を有している。なお、ログデータBは、ログデータAに比して、欠落が発生しても監視対象の監視に大きな影響を与えないデータであるとする。また、ログデータAは、ログデータBに比して監視対象の監視に重要なデータであり、データを二重化して保存している。つまり、ストレージカード16aは、ストレージカード16cに保存されるログデータAのバックアップの機能を有している。
【0030】
図4は、実施の形態1に係る監視制御装置の構成の他の例を示す図である。
図4に示される監視制御装置20は、ベースユニット10に、電源カード11、CPUカード12、ハブカード13、2つの通信制御カード14、ストレージカード16a、ストレージカード16b、ストレージカード16cおよびストレージカード16dが装着されている。つまり、
図4の例では、監視制御装置20は、4個のストレージカード16a,16b,16c,16dを有する。また、
図4において、ストレージカード16dの記憶領域の先頭アドレスはRT1とされ、ストレージカード16cの記憶領域の先頭アドレスはRT2とされ、ストレージカード16bの記憶領域の先頭アドレスはRT3とされ、ストレージカード16aの記憶領域の先頭アドレスはRT4とされる。
【0031】
図4の例では、監視制御装置20のCPUカード12は、保存対象である監視対象のログデータの保存先のストレージカード16c,16dと、保存先のストレージカード16c,16dが機能していない場合、すなわち使用不可の場合の切り替え先のストレージカード16a,16bと、を定めた情報に基づいて、保存対象のログデータを保存先のストレージカード16a-16dに保存する指示を送信する。
【0032】
一例では、CPUカード12は、アドレスRT1にはログデータAを保存し、アドレスRT2にはログデータBを保存し、アドレスRT3,RT4は予備とするように設定がなされた設定情報を有している。また、CPUカード12は、ストレージカード16cまたはストレージカード16dが交換、故障または再起動等で使用不可の状態である場合に、アドレスRT3のストレージカード16bに、アドレスRT1のストレージカード16dに保存するはずのログデータAを保存し、アドレスRT4のストレージカード16aに、アドレスRT2のストレージカード16cに保存するはずのログデータBを保存するように設定がなされた設定情報を有している。
【0033】
以上のように、CPUカード12は、ログデータをどのストレージカード16に保存するかを定めた設定情報を保持しており、この設定情報に基づいて、ストレージカード16へのログデータの保存を行う。
【0034】
次に、監視制御装置20におけるログデータの保存機能について説明する。
図5は、実施の形態1に係る監視制御装置の機能構成の一例を模式的に示す図である。なお、
図5では、ログデータの保存に関係するCPUカード12とストレージカード16c,16dのみ示している。以下では、CPUカード12の機能構成について説明した後に、ストレージカード16の機能構成について説明する。また、ストレージカード16a-16dは、個々に区別しない場合には、ストレージカード16と称される。
【0035】
CPUカード12は、保存対象のログデータの保存先のストレージカード16と、保存先のストレージカード16が使用不可の状態の場合の切替先のストレージユニットと、を定めた設定情報に基づいて、ログデータをストレージカード16に保存する指示を周期的に送信する。CPUカード12は、保存先初期設定情報記憶部121と、保存先更新情報記憶部122と、保存先切替情報記憶部123と、カード状態管理部124と、シリアル通信部125と、を有する。
【0036】
保存先初期設定情報記憶部121は、監視制御装置20を構成したときに複数のストレージカード16a-16dのそれぞれに対応付けたカード使用可能状態と保存対象とを初期設定情報として含む保存先初期設定情報を記憶する。保存先初期設定情報は、アドレスが付与されるカード単位で設定される。以下では、ユーザ、作業者等が監視制御装置20のカード構成を決定し、このカード構成においてログデータをどのストレージカード16に保存するかを示す保存先初期設定情報を作成して保存先初期設定情報記憶部121に記憶したときが、「初期」とされる。なお、保存先初期設定情報は、カード使用可能状態を含まなくてもよい。
【0037】
図6は、保存先初期設定情報の一例を示す図である。
図6は、
図3のカード構成を有する監視制御装置20の保存先初期設定情報の一例を示している。保存先初期設定情報は、アドレス、カード使用可能状態および保存対象の項目を有する。保存先初期設定情報中のアドレス、カード使用可能状態および保存対象の1つの組み合わせは、レコードと称される。この例では、1つのレコードは、カード単位で生成される。
【0038】
アドレスは、初期状態における監視制御装置20のカード構成において付された各カードの先頭アドレスである。アドレスが付される対象となるカードは、ストレージカード16およびIOカード15である。実施の形態1では、保存対象毎に保存先のストレージカード16を異なるようにするため、各カードの先頭アドレスを用いて、カードを識別している。
【0039】
カード使用可能状態は、アドレスで識別されるカードがストレージカード16として使用可能であるか否かを示す情報である。カード使用可能状態は、ユニット状態に対応する。ここでは、カード使用可能状態は、「可」または「不可」で表される。カード使用可能状態が「可」である場合には、CPUカード12がストレージカード16にアクセス可能であり、ログデータを保存可能な状態である。あるいは、カード使用可能状態が「可」である場合には、CPUカード12がストレージカード16を認識可能な状態、またはストレージカード16が機能している状態である。カード使用可能状態が「不可」である場合には、CPUカード12がストレージカード16にアクセス不可能であり、ログデータを保存できない状態である。あるいは、カード使用可能状態が「不可」である場合には、CPUカード12がストレージカード16を認識できない状態、またはストレージカード16が機能していない状態である。カード使用可能状態が「不可」である場合には、ストレージカード16が交換中である場合、故障中である場合、再起動中である場合、アドレスで識別されるカードがストレージカード16ではない場合等である。
【0040】
保存対象は、アドレスで識別されるカードがストレージカード16である場合に、ストレージカード16に保存するログデータの種類を示す情報である。保存対象は、複数のログデータの種類であってもよい。監視制御装置20がセンサに接続される下位監視制御装置20B,20Cである場合には、センサごとに保存対象が分類されるようにしてもよい。一例では、あるセンサから取得したデータをログデータAとし、別のセンサから取得したデータをログデータBとして、それぞれを異なるストレージカード16に保存することができる。また、受信したデータの送信元に応じて保存対象が分類されるようにしてもよい。一例では、下位の機器または下位の監視制御装置20から受信したデータをログデータAとし、上位の監視制御装置20から受信したデータをログデータBとして、それぞれを異なるストレージカード16に保存することができる。保存対象に内容が設定されていない場合には、アドレスで識別されるカードにはログデータが保存されないこと、予備のストレージカード16であることを示している。
【0041】
図3を参照しながら
図6の保存先初期設定情報について説明する。
図6の1番目のレコードは、アドレスがRT1であるカードは使用可能なストレージカード16cであり、このストレージカード16cにログデータAが保存されることを示している。
図6の2番目のレコードは、アドレスがRT2であるカードは使用可能なストレージカード16bであり、このストレージカード16bにログデータBが保存されることを示している。
図6の3番目のレコードは、アドレスがRT3であるカードはIOカード15であり、このIOカード15にはログデータが保存されないことを示している。IOカード15にはログデータを保存することができないので、CPUカード12から見た場合には、使用不可の状態のストレージカード16と同様の状態である。
図6の4番目のレコードは、アドレスがRT4であるカードは使用可能なストレージカード16aであり、このストレージカード16aにログデータAが保存されることを示している。つまり、アドレスRT4のストレージカード16aを、アドレスRT1に保存されるログデータAのバックアップ用として機能させることが設定されている。
【0042】
図7は、保存先初期設定情報の他の例を示す図である。
図7は、
図4のカード構成を有する監視制御装置20の保存先初期設定情報の一例を示している。
図7の1番目のレコードは、アドレスがRT1であるカードは使用可能なストレージカード16dであり、このストレージカード16dにログデータAが保存されることを示している。
図7の2番目のレコードは、アドレスがRT2であるカードは使用可能なストレージカード16cであり、このストレージカード16cにログデータBが保存されることを示している。
図7の3番目および4番目のレコードは、アドレスがRT3,RT4であるカードはそれぞれ使用可能なストレージカード16b,16aであり、これらのストレージカード16b,16aにはログデータが保存されないことを示している。つまり、
図7では、アドレスがRT3,RT4のストレージカード16b,16aは、予備のストレージカード16となる。
【0043】
図5に戻り、保存先更新情報記憶部122は、ストレージカード16が使用可能な状態か否かを示す情報であるカード使用可能状態と、保存対象のログデータと、を複数のストレージカード16のそれぞれに設定した保存先更新情報を記憶する。初期状態では、保存先更新情報は、保存先初期設定情報と同じであるが、監視制御装置20の動作が開始され、ストレージカード16が交換、故障、再起動等によって使用不可状態になると、カード状態管理部124によって保存先更新情報が更新される。保存先更新情報は、アドレスが付与されるカード単位で設定される。
【0044】
図8は、保存先更新情報の一例を示す図である。
図8に示されるように、保存先更新情報は、アドレス、カード使用可能状態および保存対象を項目として有する。これらの項目は、保存先初期設定情報の項目と同じであるので、説明を省略する。
【0045】
図5に戻り、保存先切替情報記憶部123は、保存先のストレージユニットが使用不可の状態の場合の切替先のストレージユニットを定めた保存先切替情報を記憶する。具体的には、保存先切替情報は、ストレージカード16が使用可の状態から使用不可の状態になった場合に、使用不可の状態のストレージカード16の保存対象のログデータの切替先のストレージカード16を示す情報である。つまり、保存先切替情報は、ストレージカード16が使用可の状態から使用不可の状態になった場合に、使用不可になったストレージカード16へ保存するはずのログデータの保存先のストレージカード16を定めた情報である。保存先切替情報は、アドレスが付与されるカード単位で設定される。
【0046】
図9は、保存先切替情報の一例を示す図である。
図9は、
図4のカード構成を有し、
図7の保存先初期設定情報を有する監視制御装置20の保存先切替情報の一例を示している。保存先切替情報は、初期設定アドレスと、切替先アドレスと、を対応付けた情報である。初期設定アドレスは、初期状態の監視制御装置20のストレージカード16に付された先頭アドレスである。切替先アドレスは、初期設定アドレスに対応するストレージカード16が使用不可の状態である場合に、初期設定アドレスに設定された保存対象のログデータを保存するストレージカード16のアドレスである。
【0047】
図9の例では、初期設定アドレスがRT1のストレージカード16dが使用不可の状態である場合には、ログデータAは切替先アドレスがRT3であるストレージカード16bに変更になることが示されている。同様に、初期設定アドレスがRT2のストレージカード16cが使用不可の状態である場合には、ログデータBは切替先アドレスがRT4であるストレージカード16aに変更になることが示されている。また、初期設定アドレスがRT3,RT4のストレージカード16b,16aは、予備であるので、切替先アドレスは設定されていない。
【0048】
図5に戻り、カード状態管理部124は、シリアル通信部125による各ストレージカード16との通信結果に応じて、つまり、各ストレージカード16との通信結果からストレージカード16に変化があったと判定した場合に、保存先初期設定情報または保存先切替情報を用いて保存先更新情報の内容を更新する。保存先更新情報のカード使用可能状態が「可」であるストレージカード16が交換、故障、再起動等によって使用不可の状態に変化した場合には、カード状態管理部124は、シリアル通信部125からストレージカード16が使用不可の状態に変化したことを示すカード状態変化通知を受ける。カード状態変化通知は、一例では、カード使用可能状態が変化したストレージカード16のアドレスと、変化の内容と、を含む。カード使用状態が変化したストレージカード16のアドレスは、変化対象アドレスとも称される。カード状態管理部124は、保存先切替情報から、カード状態変化通知に含まれる変化対象アドレスに対応付けられた切替先アドレスを取得する。カード状態管理部124は、保存先更新情報において、取得した切替先アドレスに対応付けられる保存対象を、変化対象アドレスに対応付けられる保存対象の内容で更新する。また、カード状態管理部124は、保存先更新情報において、変化対象アドレスのカード使用可能状態を「不可」とし、保存対象に入力されていた内容を削除する。
【0049】
この場合のカード状態管理部124の処理の一例を説明する。初期状態では、監視制御装置20は、
図4に示される構成を有し、保存先更新情報は、
図7に示される保存先初期設定情報と同じ内容であるものとする。すなわち、ログデータAは、アドレスがRT1のストレージカード16dに保存され、ログデータBは、アドレスがRT2のストレージカード16cに保存されている。
【0050】
図10は、実施の形態1に係る監視制御装置の構成の他の例を示す図である。
図4の状態で、何らかの原因によって、
図10に示されるように、ストレージカード16dが使用不可の状態になったものとする。このとき、カード状態管理部124は、シリアル通信部125からアドレスRT1のストレージカード16dが使用不可の状態になったことを示すカード状態変化通知を受ける。カード状態管理部124は、
図9の保存先切替情報を参照し、初期設定アドレスがRT1である場合の切替先アドレスとしてRT3を取得する。また、カード状態管理部124は、
図7の保存先更新情報において、カード状態変化通知に含まれるアドレスRT1の保存対象である「ログデータA」を、切替先アドレスがRT3の保存対象に設定し、アドレスRT1のカード使用可能状態を「不可」とし、保存対象を削除する。これによって、保存先更新情報は、
図8に示される内容に更新される。
【0051】
保存先更新情報のカード使用可能状態が「不可」であるストレージカード16が使用可能な状態に変化した場合には、カード状態管理部124は、シリアル通信部125からストレージカード16が使用可能な状態に変化したことを示すカード状態変化通知を受ける。この場合には、使用可の状態に変わったストレージカード16にログデータが保存されるように、使用可の状態に変わったストレージカード16については保存先初期設定情報の設定に戻す必要がある。カード状態管理部124は、保存先切替情報の変化対象アドレスに対応付けられた切替先アドレスを取得する。また、カード状態管理部124は、保存先初期設定情報から、取得した切替先アドレスと、カード状態変化通知に含まれる変化対象アドレスと、に対応付けられた初期設定を取得する。カード状態管理部124は、保存先更新情報において、切替先アドレスおよび変化対象アドレスに対応付けられた内容をそれぞれ初期設定の内容で更新する。また、カード状態管理部124は、保存先更新情報において、変化対象アドレスに対応付けられるカード使用可能状態を「可」とする。
【0052】
この場合のカード状態管理部124の処理の一例を説明する。
図10でアドレスRT1のストレージカード16dが使用不可の状態から、
図4に示されるように、使用可の状態に変わったものとする。
図10の状態における保存先更新情報は、
図8に示される内容を有する。カード状態管理部124は、シリアル通信部125からアドレスRT1のストレージカード16dが使用可の状態になったことを示すカード状態変化通知を受ける。カード状態管理部124は、
図9の保存先切替情報を参照し、初期設定アドレスがRT1である場合の切替先アドレスとしてRT3を取得する。また、カード状態管理部124は、
図7の保存先初期設定情報を参照し、カード状態変化通知に含まれる変化対象アドレスRT1および切替先アドレスRT3のそれぞれに対応付けられる保存対象の初期設定の内容である「ログデータA」および「-」を取得する。カード状態管理部124は、
図8の保存先更新情報において、アドレスRT1の保存対象を初期設定の「ログデータA」とし、アドレスRT3の保存対象を初期設定の「-」、すなわち、保存対象の内容を削除する。
【0053】
シリアル通信部125は、ポーリングによって保存先更新情報に登録されているすべてのカードに対して、ログデータの書き込みの指示またはカードの状態監視の指示を含む確認要求メッセージをシリアル通信用のケーブルを介して送信する処理を定められた時間間隔で、すなわち周期的に行う。つまり、シリアル通信部125は、ストレージカード16が保存先更新情報のカード使用可能状態と一致するかを確認する確認要求メッセージを保存先更新情報のすべてのストレージカード16に順に送信する処理を周期的に実行する。また、シリアル通信部125は、保存先更新情報で保存対象が設定されているストレージカード16には、保存対象のログデータとログデータの書き込み指示とを含む確認要求メッセージを送信する。シリアル通信部125は、第1シリアル通信部に対応する。
【0054】
以下に、シリアル通信部125で行うログデータ通信方式の詳細について説明する。シリアル通信部125は、定められた時間間隔であるログ書込周期でログデータ保存処理を実行する。ログ書込周期は、ストレージカード16の有無の変化をリアルタイムで把握できるような長さに設定されることが望ましく、一例では10msecである。ログ書込周期の間に、保存先更新情報に登録されているすべてのレコードのカードについて、ログデータの書き込みまたはカード状態の監視が行われる。
【0055】
シリアル通信部125は、保存先更新情報に登録されている各アドレスのカードについて、順にポーリングを行い、ログデータの書き込みまたはカード状態監視を行う。具体的には、シリアル通信部125は、保存先更新情報に登録されているカードのうち、カード使用可能状態が「可」のカードについては、保存対象に設定されているログデータと、ログデータの書き込み指示と、を含む確認要求メッセージを送信する。シリアル通信部125は、保存先更新情報に登録されているカードのうち、カード使用可能状態が「不可」のカードについては、ヘルスチェック等のカード状態監視の指示を含む確認要求メッセージを送信する。確認要求メッセージは、一例では、ハイレベルデータリンク制御手順(High-Level Data Link Control:HDLC)フレームが使用される。
【0056】
シリアル通信部125は、書き込み指示を含む確認要求メッセージを送信してから定められた時間内に、送信先のカードから確認要求メッセージに対する応答である確認応答メッセージを受信した場合には、対象となるカードについてのカードの有無についての変化がないと判定し、次のカードについて確認要求メッセージを送信する。確認応答メッセージには、ログデータの書き込みが完了したことを示す情報が含まれる。
【0057】
シリアル通信部125は、状態監視の指示を含む確認要求メッセージを送信してから定められた時間内に、送信先のカードから確認応答メッセージを受信しなかった場合には、対象となるカードについてのカードの有無についての変化がないと判定し、次のカードについて確認要求メッセージを送信する。故障、交換または再起動中のストレージカード16は、確認要求メッセージに対して応答することができないため、確認応答メッセージが返信されない場合には、故障、交換または再起動の状態が継続していると考えられる。
【0058】
シリアル通信部125は、書き込み指示を含む確認要求メッセージを送信してから定められた時間内に、送信先のカードから確認応答メッセージを受信しなかった場合には、対象となるカードは、使用不可の状態に変化したものと判定する。シリアル通信部125は、対象となるカードのカード使用可能状態が「不可」に変化したことを示すカード状態変化通知をカード状態管理部124に通知する。また、シリアル通信部125は、ストレージカード16に保存することができなかった確認要求メッセージに含まれる書き込み指示の対象となったログデータを一時的に保持し、次に行われるポーリング処理時に、切替先のストレージカード16への確認要求メッセージに含めて送信する。その後、シリアル通信部125は、次のカードについて確認要求メッセージを送信する。
【0059】
シリアル通信部125は、状態監視の指示を含む確認要求メッセージを送信してから定められた時間内に、送信先のストレージカード16から確認応答メッセージを受信した場合には、対象となるカードは、使用不可の状態から使用可の状態に変化したものと判定する。シリアル通信部125は、対象となるカードのカード使用可能状態が「可」に変化したことを示すカード状態変化通知をカード状態管理部124に通知する。その後、シリアル通信部125は、次のカードについて確認要求メッセージを送信する。確認応答メッセージは、一例ではストレージカード16についてのカード状態監視に対する結果が含まれる。
【0060】
次に、ストレージカード16の機能構成について説明する。ストレージカード16は、シリアル通信部161と、データ記憶部162と、データ管理部163と、を有する。
【0061】
シリアル通信部161は、CPUカード12との間でシリアル通信用のケーブルを介して通信を行う。具体的には、CPUカード12のシリアル通信部125から確認要求メッセージを受けると、確認要求メッセージに対する応答である確認応答メッセージをシリアル通信用のケーブルを介してCPUカード12に送信する。書き込み指示を含む確認要求メッセージを受信した場合には、シリアル通信部161は、確認要求メッセージに含まれるログデータをデータ管理部163に渡し、データ管理部163によるログデータのデータ記憶部162への保存処理が終了した後に、書き込みが完了したことを示す情報を含む確認応答メッセージを生成し、CPUカード12に送信する。状態監視の指示を含む確認要求メッセージを受信した場合には、シリアル通信部161は、状態監視の指示に従った処理を実行し、実行結果を含む確認応答メッセージを生成し、CPUカード12に送信する。シリアル通信部161は、第2シリアル通信部に対応する。
【0062】
データ記憶部162は、ログデータを含むデータを記憶する。上記したように、データ記憶部162は、HDDまたはSSD等の不揮発性記憶装置によって構成される。
【0063】
データ管理部163は、データ記憶部162に対するデータの書き込みまたは読み出しを行い、データ記憶部162におけるデータ管理を行う。ここでは、データ管理部163は、シリアル通信部161からログデータの書き込みの指示を受けると、シリアル通信部161から受け取ったログデータをデータ記憶部162に書き込む処理を行う。つまり、データ管理部163は、確認要求メッセージのログデータをデータ記憶部162に書き込む。なお、データ管理部163は、データ記憶部162にデータを書き込んだり、データ記憶部162からデータを読み出したりする処理を行うCPUを含むコントローラチップによって構成される。実施の形態1では、データ管理部163は、データ記憶部162に対するデータの書き込みまたは読み出しに関する処理、すなわちデータ記憶部162に記憶されるデータのデータ管理を行い、データ記憶部162に記憶されたデータを用いた演算処理を行う機能までは有していない。
【0064】
つぎに、このような構成の監視制御装置20におけるログデータ保存方法について説明する。
図11から
図13は、実施の形態1に係るログデータ保存方法の手順の一例を示すフローチャートである。なお、このログデータ保存方法は、
図11に示される処理が実施される前に、CPUカード12が、監視制御装置20を構成したときに複数のストレージカード16のそれぞれに対応付けたカード使用可能状態と保存対象とを初期設定情報として含む保存先初期設定情報を記憶する工程を含むものとする。
【0065】
まず、CPUカード12のシリアル通信部125は、ポーリングによるログデータの書き込みを実行する定められた時刻になったかを判定する(ステップS11)。定められた時刻は、初めてログデータ保存処理を行う場合には、任意の時刻とすることができる。また、2回目以降のログデータ保存処理を行う場合には、前回のポーリングによるログデータ保存処理の開始から定められた時間が経過した時刻である。定められた時刻になっていない場合(ステップS11でNoの場合)には、待ち状態となる。
【0066】
定められた時刻になった場合(ステップS11でYesの場合)には、シリアル通信部125は、保存先更新情報記憶部122に記憶されている保存先更新情報のすべてのアドレスとカード使用可能状態の組み合わせを取得する(ステップS12)。
【0067】
次いで、シリアル通信部125は、取得した組み合わせの中から1つの組み合わせを選択する(ステップS13)。シリアル通信部125は、選択した組み合わせのカード使用可能状態が「可」であるかを判定する(ステップS14)。カード使用可能状態が「可」である場合(ステップS14でYesの場合)には、シリアル通信部125は、保存先更新情報を参照して、選択した組み合わせのアドレスに対応付けられる保存対象のログデータを取得し(ステップS15)、選択した組み合わせのアドレスを宛先とする、ログデータおよびログデータの書き込み指示を含む確認要求メッセージを生成する(ステップS16)。なお、前回の処理時に、データ記憶部162に保存できなかった同じ保存対象のログデータが一時的に保存されている場合には、一時的に保存されているログデータも含む確認要求メッセージが生成される。また、定められた時間の間に保存対象のログデータの更新がない場合には、保存対象のログデータがない確認要求メッセージが生成される。
【0068】
その後、シリアル通信部125は、確認要求メッセージを送信してから定められた時間が経過したかを判定する(ステップS17)。定められた時間が経過していない場合(ステップS17でNoの場合)には、シリアル通信部125は、確認応答メッセージを受信したかを判定する(ステップS18)。確認応答メッセージを受信していない場合(ステップS18でNoの場合)には、ステップS17に処理が戻る。
【0069】
確認応答メッセージを受信した場合(ステップS18でYesの場合)には、確認要求メッセージの送信先のストレージカード16の状態は変化していないことになる。このため、ステップS13で選択した組み合わせのアドレスに対する処理は終了する。この後、シリアル通信部125は、ステップS13で取得したすべての組み合わせについて処理を行ったかを判定する(ステップS41)。すべての組み合わせについて処理を行っていない場合(ステップS41でNoの場合)には、ステップS12に処理が戻る。また、すべての組み合わせについて処理を行った場合(ステップS41でYesの場合)には、ステップS11に処理が戻る。
【0070】
ステップS17で定められた時間が経過した場合(ステップS17でYesの場合)、すなわち確認要求メッセージを送信したカードから確認応答メッセージを受信しなかった場合には、ストレージカード16が使用可の状態から使用不可の状態になった場合である。このような場合には、シリアル通信部125は、ステップS13で選択した組み合わせのアドレスのカードのカード使用可能状態が「不可」になったことを示すカード状態変化通知をカード状態管理部124に通知する(ステップS21)。カード状態変化通知は、対象となるストレージカード16のアドレスである変化対象アドレスと、カード使用可能状態と、を含む。また、シリアル通信部125は、ストレージカード16に保存できなかった保存対象のログデータを一時的に保存し、次の保存対象のログデータの書き込み指示を行う際の確認要求メッセージに含ませて送信する。
【0071】
カード状態管理部124は、カード状態変化通知を受けると、保存先更新情報を参照して、使用不可の状態になったストレージカード16に保存されていた保存対象のログデータが切替先アドレスのストレージカード16に保存されるように、保存先更新情報を更新する(ステップS22)。具体的には、カード状態管理部124は、保存先切替情報から、使用不可の状態になったストレージカード16のアドレスに対応付けられる切替先アドレスを取得する。また、カード状態管理部124は、使用不可の状態になったアドレスに対応付けられる保存対象のログデータが、切替先アドレスに保存されるように保存先更新情報を更新する。つまり、カード状態管理部124は、保存先更新情報において、取得した切替先アドレスの保存対象の内容を、使用不可の状態になったストレージカード16のアドレスに対応付けられていた保存対象の内容とし、使用不可の状態になったストレージカード16のアドレスに対応付けられていた保存対象の内容を削除するとともに、カード使用可能状態を「不可」とする。その後、処理がステップS41に移る。
【0072】
ステップS14で、カード使用状態が「可」でない場合(ステップS14でNoの場合)、すなわちカード使用状態が「不可」である場合には、シリアル通信部125は、選択した組み合わせのアドレスを宛先とする、カードの状態監視の指示を含む確認要求メッセージを生成する(ステップS31)。
【0073】
その後、シリアル通信部125は、確認要求メッセージを送信してから定められた時間が経過したかを判定する(ステップS32)。定められた時間が経過していない場合(ステップS32でNoの場合)には、シリアル通信部125は、確認応答メッセージを受信したかを判定する(ステップS33)。確認応答メッセージを受信していない場合(ステップS33でNoの場合)には、ステップS32に処理が戻る。
【0074】
確認応答メッセージを受信した場合(ステップS33でYesの場合)には、ストレージカード16が使用不可の状態から使用可の状態に切り替わった場合である。つまり、ストレージカード16がログデータの保存先として再び使用可能な状態になったことを意味する。このような場合には、シリアル通信部125は、ステップS13で選択した組み合わせのアドレスのカードのカード使用可能状態が「可」になったことを示すカード状態変化通知をカード状態管理部124に通知する(ステップS34)。
【0075】
カード状態管理部124は、カード状態変化通知を受けると、保存先更新情報および保存先初期設定情報を参照して、応答を返したストレージカード16に対応付けられる切替先のストレージカード16および応答を返したストレージカード16の保存先更新情報の内容を初期設定情報に戻す(ステップS35)。具体的には、カード状態管理部124は、保存先切替情報から、使用可の状態になったストレージカード16のアドレスに対応付けられる切替先アドレスを取得する。また、カード状態管理部124は、保存先初期設定情報から、切替先アドレスおよび使用可の状態になったストレージカード16のアドレスのそれぞれ初期設定情報を取得する。そして、カード状態管理部124は、保存先更新情報において、切替先アドレスおよび使用可の状態になったストレージカード16のアドレスのそれぞれの内容を初期設定情報で更新する。その後、処理がステップS41に移る。
【0076】
ステップS32で定められた時間が経過した場合(ステップS32でYesの場合)、すなわち確認要求メッセージを送信したカードから確認応答メッセージを受信しなかった場合には、確認要求メッセージの送信先のストレージカード16の状態は変化していないことになる。このため、ステップS13で選択した組み合わせのアドレスに対する処理は終了する。その後、処理がステップS41に移る。
【0077】
実施の形態1では、プロセッサを内蔵するCPUカード12と、データを記憶する記憶部を内蔵する複数のストレージカード16と、がシリアル通信用のケーブルを介して接続され、監視対象からログデータを取得して監視対象の監視を行う監視制御装置20で、CPUカード12は、監視対象のログデータの保存先のストレージカード16と、保存先のストレージカード16が機能していない場合の切替先のストレージカード16と、を定めた設定情報に基づいて、保存対象のログデータを保存先のストレージカード16に保存する指示を周期的に送信する。これによって、ストレージカード16が故障、交換、再起動中等である場合に、切替先のストレージカード16にログデータを保存することが可能となり、ログデータの欠落を抑制することができる。また、ストレージカード16が故障、交換、再起動等の使用不可の状態であっても、監視制御装置20および監視制御装置20を有する監視制御システム1を連続稼働することが可能となる。
【0078】
実施の形態2.
実施の形態1のストレージカード16は、データ記憶部162にデータを記憶したり、データ記憶部162からデータを読み出したりするためのデータ管理部163を備える。通常、データ管理部163は、データの書き込みまたは読み出し以外の処理の用途には使用されない。一方、上記したように、実施の形態1のストレージカード16には、保存対象として指定された監視データが欠落なく保存されている。このため、監視制御端末50または監視制御データサーバ60ではなく、ストレージカード16に記憶された局所的な監視データを用いて、演算等のデータ処理を行いたいという要望もある。そこで、実施の形態2では、保存された監視データを用いて定められた処理を行うことができる監視制御装置20について説明する。
【0079】
実施の形態2に係る監視制御装置20の物理的な構成は、
図4と同様である。ただし、ストレージカード16の機能が実施の形態1の場合とは異なる。
図14は、実施の形態2に係る監視制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。なお、
図5と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略し、
図5と異なる部分について説明する。
【0080】
実施の形態2に係る監視制御装置20では、ストレージカード16が、
図5の構成に加えて、データ処理部164をさらに備える。データ処理部164は、データ記憶部162に記憶されたデータを用いて、定められた処理を行う。データ管理部163は、データ記憶部162に記憶されるデータの管理を行うのに対して、データ処理部164は、データ記憶部162に記憶されたデータを用いて演算処理を行う。このため、ストレージカード16は、データ管理部163に対応するコントローラチップだけではなく、データ処理部164に対応する演算処理用のプロセッサを内蔵する。演算処理用のプロセッサの一例は、CPU,GPU(Graphics Processing Unit),FPGA(Field Programmable Gate Array),ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0081】
データ処理部164は、ストレージカード16に格納された演算処理の手順が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムを実行する。このとき、データ記憶部162に保存されたログデータが使用される。このような構成では、CPUカード12が、ストレージカード16に格納されたログデータを用いて演算処理を行う手順が記述されたプログラムを実行するものではないので、データ処理部164での処理は、CPUカード12の処理とは独立して行われることになる。つまり、ストレージカード16は、演算処理を行うデータ処理部164を有することで、監視制御装置20のCPUカード12にデータ処理の負荷をかけることなく、定められた処理を実行することが可能となる。また、データ記憶部162には、監視制御装置20を経由するログデータがすべて記憶されるため、分解能の高いデータ解析が可能となる。
【0082】
データ処理部164は、一例では、監視制御装置20を経由し、監視制御装置20に保存されるログデータを用いて、監視対象についてのデータ処理を行うことができる。一例では、監視制御端末50または監視制御データサーバ60で行っているデータ処理のうち、監視制御装置20が有するログデータを用いて行うものを、ストレージカード16のデータ処理部164で実行することができる。データ処理には、演算処理、シミュレーション処理のほかに、教師あり学習、強化学習、教師なし学習等の機械学習も含まれる。
【0083】
データ記憶部162に、ストレージカード16への書込み頻度、ストレージカード16におけるメモリエラーの発生頻度等を記録している場合には、データ処理部164は、これらのデータを用いて分析を行い、データ記憶部162、すなわちストレージカード16の寿命の時期を判断するメモリ寿命診断を行うことが可能となる。また、一例では、データ処理部164は、これらのデータを用いて教師なし学習等の機械学習を行い、メモリ寿命診断を行うことも可能である。ストレージカード16への書込み頻度、メモリエラーの発生頻度等は、データ管理部163がデータ記憶部162に書き込むようにしてもよい。
【0084】
図15は、実施の形態2に係るログデータ保存方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図15は、CPUカード12から確認要求メッセージを受信したストレージカード16でのログデータ保存方法を示している。まず、シリアル通信部161は、CPUカード12からログデータを含む確認要求メッセージを受信する(ステップS71)。次いで、データ管理部163は、確認要求メッセージに含まれるログデータをデータ記憶部162に記憶する(ステップS72)。その後、データ処理部164は、CPUカード12の処理とは独立して、データ記憶部162に記憶されたログデータを用いて決められた処理を行う(ステップS73)。以上で処理が終了する。
【0085】
実施の形態2では、ストレージカード16は、データ記憶部162に記憶されたログデータを用いて、定められた処理を行うデータ処理部164をさらに有する。ストレージカード16で行われる処理は、CPUカード12とは独立してデータ処理部164で実行されるため、監視制御装置20のCPUカード12での処理に影響を与えない。また、データ処理部164は、監視制御装置20を経由するログデータ、すなわち欠落のないログデータを用いて定められた処理を行うので、監視制御端末50および監視制御データサーバ60に比して、分解能の高いデータ解析を行うことが可能となる。
【0086】
各ストレージカード16に保存されるログデータである保存対象は予め定められており、さらに、データ処理部164をGPUまたはAI(Artificial Intelligence)機能を有するCPUを有する構成とすることによって、カード単位またはデータ単位で、AI機能を拡張することが可能となる。
【0087】
ここで、実施の形態1,2の監視制御装置20を構成するCPUカード12およびストレージカード16のハードウェア構成について説明する。CPUカード12およびストレージカード16は、専用の処理回路により実現される。
図16は、専用の処理回路の一例を示すブロック図である。
図16に示した専用の処理回路は、プロセッサ551、メモリ552および通信回路553を備える。
【0088】
演算装置であるプロセッサ551は、一例では、CPU,GPU,マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはDSP(Digital Signal Processor)等である。記憶部であるメモリ552は、一例では、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、およびEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク等が該当する。通信回路553は、通信を行うことが可能な送受信機である。なお、
図16は、一例であり、専用の処理回路の構成は
図16の例に限定されない。
【0089】
専用の処理回路がCPUカード12である場合には、CPUカード12は、CPUカード12が実行する処理が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムが実行されることによって実現される。具体的には、プログラムがメモリ552にインストールされる。そして、プログラムの実行時に、メモリ552から読み出されたプログラムがメモリ552の一次記憶領域に格納される。この状態で、プロセッサ551は、メモリ552に格納されたプログラムに従って、実施の形態1,2に係る監視制御装置20のCPUカード12としての処理を実行する。なお、上記プログラムは記録媒体により提供されてもよいし、通信回路553を経由して伝送媒体により提供されてもよい。
【0090】
図5に示した監視制御装置20のカード状態管理部124は、
図16に示したメモリ552に記憶されたプログラムがプロセッサ551によって実行されることにより実現される。また、カード状態管理部124の実現にはメモリ552も用いられる。
図5に示したシリアル通信部125は、
図16に示した通信回路553によって実現される。
図5に示した保存先初期設定情報記憶部121、保存先更新情報記憶部122および保存先切替情報記憶部123は、メモリ552によって実現される。
【0091】
専用の処理回路がストレージカード16である場合には、ストレージカード16は、ストレージカード16が実行する処理が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムが実行されることによって実現される。
【0092】
図5および
図14に示したデータ管理部163および
図14に示したデータ処理部164は、
図16に示したメモリ552に記憶されたプログラムがプロセッサ551によって実行されることにより実現される。また、データ管理部163およびデータ処理部164の実現にはメモリ552も用いられる。
図5および
図14に示したシリアル通信部161は、
図16に示した通信回路553によって実現される。
図5および
図14に示したデータ記憶部162は、メモリ552によって実現される。
【0093】
なお、実施の形態1,2のストレージカード16のデータ管理部163の機能を実現するプロセッサ551として、CPU、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、DSP等が用いられる。実施の形態2のデータ処理部164の機能を実現するプロセッサ551として、CPU,GPU,マイクロプロセッサ等が用いられる。また、データ記憶部162の機能を実現するメモリ552として、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM、磁気ディスク等が用いられる。
【0094】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 監視制御システム、10 ベースユニット、11 電源カード、12 CPUカード、13 ハブカード、14 通信制御カード、15 IOカード、16,16a,16b,16c,16d ストレージカード、20 監視制御装置、20A 上位監視制御装置、20B,20C 下位監視制御装置、50 監視制御端末、60 監視制御データサーバ、70A,70B ネットワーク、81 第1内部ネットワーク、82 第2内部ネットワーク、120,130,140A LANポート、121 保存先初期設定情報記憶部、122 保存先更新情報記憶部、123 保存先切替情報記憶部、124 カード状態管理部、125,161 シリアル通信部、140B 外部インタフェース、150 接続部、162 データ記憶部、163 データ管理部、164 データ処理部、551 プロセッサ、552 メモリ、553 通信回路。