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特開2024-156250ウエブのダンサ装置及びそれを用いた巻き出し装置
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  • 特開-ウエブのダンサ装置及びそれを用いた巻き出し装置 図1
  • 特開-ウエブのダンサ装置及びそれを用いた巻き出し装置 図2
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  • 特開-ウエブのダンサ装置及びそれを用いた巻き出し装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156250
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ウエブのダンサ装置及びそれを用いた巻き出し装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/24 20060101AFI20241029BHJP
   B65H 23/18 20060101ALI20241029BHJP
   B65H 20/34 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B65H23/24
B65H23/18
B65H20/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070554
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】390002015
【氏名又は名称】ヒラノ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 孝史
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦士
【テーマコード(参考)】
3F103
3F104
3F105
【Fターム(参考)】
3F103AA01
3F103AA03
3F103AA07
3F103CA12
3F103CA13
3F103CA16
3F103EA04
3F104AA01
3F104AA03
3F104AA07
3F104EA03
3F104EA07
3F104EA16
3F104FA12
3F105AA01
3F105AA04
3F105AA11
3F105BA02
3F105CA15
3F105CB05
3F105DA04
(57)【要約】
【課題】ガイドロールを外部に設けることなく実現できるダンサ装置及びそれを用いた巻き出し装置を提供する。
【解決手段】前後方向に走行するウエブWのダンサ装置10において、ダンサ装置10のフレーム12と、フレーム12に回転自在で、かつ、左右方向に水平に支持されたセンタシャフト26と、センタシャフト26の外周に、同軸で回転自在に設けられたセンタロール30と、センタロール30の左右両側にあるセンタシャフト26から前方に突出した左右一対のロール腕部32,34と、ロール腕部32,34の先端に回転自在で、かつ、センタロール30と平行に支持されたダンサロール40と、センタシャフト26から後方に突出した重り腕部48と、重り腕部48の先端に設けられた重り50と、センタシャフト26から径外方向に突出したクランク部52と、クランク部52の先端を押圧して、センタシャフト26を回転させるために、フレーム12に設けられたエアシリンダ54とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に走行するウエブのダンサ装置において、
前記ダンサ装置のフレームと、
前記フレームに回転自在で、かつ、左右方向に水平に支持されたセンタシャフトと、
前記センタシャフトの外周に、同軸で回転自在に設けられたセンタロールと、
前記センタロールの左右両側にある前記センタシャフトから前方に突出した左右一対のロール腕部と、
前記ロール腕部の先端に回転自在で、かつ、前記センタロールと平行に支持されたダンサロールと、
前記センタシャフトから後方に突出した重り腕部と、
前記重り腕部の先端に設けられた重りと、
前記センタシャフトから径外方向に突出したクランク部と、
前記クランク部の先端を押圧して、前記センタシャフトを回転させるために、前記フレームに設けられたシリンダと、
を有し、
走行する前記ウエブが前記センタロールと前記ダンサロールに掛け渡され、
前記重りの重さと前記シリンダの押圧力によって、左右一対の前記ロール腕部が水平に維持されている、
ことを特徴とするウエブのダンサ装置。
【請求項2】
前記シリンダのシリンダ本体が上下方向、又は前後方向に前記フレームに設けられ、
前記シリンダ本体から突出したピストンロッドが、連結部材を介して前記クランク部に連結されている、
請求項1に記載のウエブのダンサ装置。
【請求項3】
ウエブを巻回した巻芯と、
前記巻芯の前方に設けられた請求項1に記載の第1のダンサ装置と、
前記巻芯の後方に設けられた請求項1に記載の第2のダンサ装置と、
を有することを特徴とするウエブの巻き出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブのダンサ装置及びウエブの巻き出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダンサ装置の役割は、ダンサ装置のパスラインの前後にある巻き出し装置やプレス装置などにおいて外乱によりウエブWの走行が乱れ、ウエブが弛んだり、逆に張ったりしたときに、その弛んだり張ったりした分を吸収して、ウエブの通常の走行状態を保持するものである。例えば、走行するウエブが弛む場合には、ダンサロールが下がってその弛み分を吸収し、逆にウエブが張る場合にはダンサロールが上がって、その張られた分を吸収して、ウエブの走行状態を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-48388号公報
【特許文献2】特開2011-105450号公報
【特許文献3】特開2017-61361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなダンサ装置においては、他の装置からウエブをダンサロールに案内するガイドロールを、ダンサ装置の外部に設ける必要があるため、ダンサ装置の大きさが大きくなるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、ガイドロールを外部に設けることなく実現できるウエブのダンサ装置及びそれを用いた巻き出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前後方向に走行するウエブのダンサ装置において、前記ダンサ装置のフレームと、前記フレームに回転自在で、かつ、左右方向に水平に支持されたセンタシャフトと、前記センタシャフトの外周に、同軸で回転自在に設けられたセンタロールと、前記センタロールの左右両側にある前記センタシャフトから前方に突出した左右一対のロール腕部と、前記ロール腕部の先端に回転自在で、かつ、前記センタロールと平行に支持されたダンサロールと、前記センタシャフトから後方に突出した重り腕部と、前記重り腕部の先端に設けられた重りと、前記センタシャフトから径外方向に突出したクランク部と、前記クランク部の先端を押圧して、前記センタシャフトを回転させるために、前記フレームに設けられたシリンダと、を有し、走行する前記ウエブが前記センタロールと前記ダンサロールに掛け渡され、前記重りの重さと前記シリンダの押圧力によって、左右一対の前記ロール腕部が水平に維持されている、ことを特徴とするウエブのダンサ装置である。
【0007】
また、本発明は、ウエブを巻回した巻芯と、前記巻芯の前方に設けられた上記発明に記載の第1のダンサ装置と、前記巻芯の後方に設けられた上記発明に記載の第2のダンサ装置と、を有することを特徴とするウエブの巻き出し装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センタロールがダンサロールへのガイドロールの役割を果たしているので、ガイドロールが外部に不要である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1のダンサ装置の斜視図である。
図2】ダンサ装置の左側面図である。
図3】ダンサ装置を上方から見た横縦断面図である。
図4】ダンサ装置の動作状態を説明した図である。
図5】実施形態2の巻き出し装置の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態では、ウエブWのダンサ装置及びウエブWの巻き出し装置について説明する。
【実施形態1】
【0011】
本発明の実施形態1のダンサ装置10について図1図4を参照して説明する。
【0012】
(1)ダンサ装置10の構造
ダンサ装置10の全体の構造について図1図3を参照して説明する。ダンサ装置10は、後から前に前後方向に走行するウエブWの弛みや張りを調整するものである。長尺状のウエブWとしては、フィルム、紙、布地などである。なお、本明細書において左右方向とは後から前を見た場合において、左右が決定される。
【0013】
ダンサ装置10のフレーム12は、水平な床に載置された基台14と、この基台14から前後方向に沿って立設された壁16とを有する。
【0014】
壁16には、円形の取り付け孔18が開口し、この取り付け孔18に筒状の取り付け部材20が取り付けられている。筒状の取り付け部材20の外周部にはフランジ部22が突出し、このフランジ部22と取り付け孔18の縁部にある壁16とが不図示のボルトによって固定されている。これにより、筒状の取り付け部材20は、左右方向で、かつ、水平に壁16に固定される。
【0015】
筒状の取り付け部材20の内周側にはベアリング24,24を介して、センタシャフト26が水平で、かつ左右方向に回転自在に取り付けられている。
【0016】
壁16よりも左側のセンタシャフト26の外周には、ベアリング28,28を介してセンタロール30が、センタシャフト26と同軸で、かつ回転自在に取り付けられている。すなわち、センタロール30の内部をセンタシャフト26が同軸に貫通している。
【0017】
壁16よりも左側において、センタロール30の左右両側に位置するセンタシャフト26から左右一対の左ロール腕部32と右ロール腕部34が前方に突出している。左右一対の左ロール腕部32の前端部と右ロール腕部34の前端部の間には、ダンサシャフト36が、水平で、かつ左右方向に固定されている。ダンサシャフト36の外周には、ベアリング38,38を介してダンサロール40が回転自在に取り付けられている。すなわち、ダンサロール40の内部をダンサシャフト36が貫通している。左右一対の左ロール腕部32と右ロール腕部34は、センタシャフト26が回転すると同じように回転する。
【0018】
壁16より右側のセンタシャフト26において、リング状のリング部材46が固定され、このリング部材46から棒状の重り腕部48が後方に突出している。この重り腕部48の後端部には円柱状の重り50が取り付けられている。左右一対の左ロール腕部32と右ロール腕部34と重り腕部48とは左側面から見てほぼ水平で、かつセンタシャフト26を中心に一直線に並んでいる。なお、リング部材46はセンタシャフト26に固定されており、センタシャフト26が回転すると重り50も回転する。
【0019】
壁16とリング部材46との間には、板状のクランク部52が前方に突出している。このクランク部52も、センタシャフト26に固定され、クランク部52が回転するとセンタシャフト26も回転する。
【0020】
センタシャフト26の前方に位置する壁16の右面にはシリンダ支持部56が設けられ、このシリンダ支持部56にはエアシリンダ54が上下方向に取り付けられている。詳しくは、エアシリンダ54の筒状のシリンダ本体58の上端部がシリンダ軸部60を介してシリンダ支持部56に回転自在に固定されている。シリンダ本体58の下端部からはピストンロッド62が伸縮自在に突出し、ピストンロッド62の下端部には直方体の連結部材64が設けられている。この直方体の連結部材64の下端部には溝66が設けられ、この溝66の内部に板状のクランク部52が嵌まり、連結軸68を介して回転自在に連結されている。
【0021】
センタシャフト26を中心に重り腕部48が上下方向に振れた場合に、上への回転を阻止する棒状の上阻止部70と下への回転を阻止する棒状の下阻止部72が壁16の右面から突出している。これにより、重り50は、水平位置から上阻止部70までの25°上方に回転でき、水平位置から下阻止部72までの25°下方に回転することができ、そして、この角度だけ左右一対の左ロール腕部32と右ロール腕部34も回転する。
【0022】
(2)ダンサ装置10の動作状態
次に、ダンサ装置10の動作状態について説明する。
【0023】
まず、エアシリンダ54でクランク部52を全く押圧せず、かつ、センタロール30とダンサロール40にウエブWを掛け渡さない状態で、左右一対の左ロール腕部32と右ロール腕部34が、基準位置(例えば、水平)になるように、重り50の重さと重り腕部48の長さを調整する。ここで「てこの原理」で説明すると、センタシャフト26が支点であり、重り腕部48の後端部が力点であり、左右一対の左ロール腕部32と右ロール腕部34の前端部が作用点になるので、作用点における重さ(ダンサロール40の重さ)と、支点から作用点までの距離(左ロール腕部32、又は右ロール腕部34の長さ)と、力点における重さ(重り50の重さ)と、支点から力点までの距離(重り腕部48の長さ)とがバランスするように、重り50の重さと重り腕部48の長さを定める。
【0024】
次に、ウエブWを、センタロール30の上周面に掛け渡し、次にダンサロール40の下周面に順番に掛け渡す。
【0025】
次に、ウエブWを掛け渡した状態で、エアシリンダ54がクランク部52を下方に押圧し、左右一対の左ロール腕部32と右ロール腕部34が基準位置になるようにする。このエアシリンダ54の押圧は、ダンサ装置10が作動中は常に同じ強さで押圧する。
【0026】
次に、ウエブWを前後方向に走行させ、ダンサ装置10よりも前にある巻き取り装置や後方にあるプレスロール装置の外乱によってウエブWが弛んだ場合には、それに併せてダンサロール40がセンタシャフト26を中心に下方向に回転し、余ったウエブWを吸収する。また、ウエブWが張った場合には、それに併せてダンサロール40がセンタシャフト26を中心に上方向に回転し、張ったウエブWを弛める。
【0027】
(3)効果
以上により本実施形態のダンサ装置10であると、従来は別途設けていたガイドロールを、センタシャフト26にセンタロール30として一体に設けることにより、別途ガイドロールが不要でありダンサ装置10の全体の大きさを小さくすることができる。
【0028】
また、センタロール30を中心に前方にダンサロール40を設け、後方に重り50を設け、ダンサロール40と並んでエアシリンダ54を設けることができるため、ダンサ装置10の全体の大きさを小さくすることができる。
ウエブWの張力に併せてダンサロール40が上下動し、その張力を調整することができる。
【0029】
また、ウエブWに弛みや張りもなく張力が一定で走行されている場合には、センタロール30に対しダンサロール40も水平な位置である基準位置にあり、ウエブWが弛むとダンサロール40は、センタロール30より下方に回転してその弛みを吸収し、ウエブWが張る場合には、ダンサロール40はセンタロール30よりも上方に回転してその張りを吸収できる。
【実施形態2】
【0030】
次に、上記実施形態1で説明したダンサ装置10を2台用いたウエブWの巻き出し装置100について図5を参照して説明する。
【0031】
巻き出し装置100のフレーム102は水平な床に載置された基台104と、基台104から前後方向に突出した壁106とを有する。壁106の前後方向の中央部にはウエブWを満巻に巻回した巻芯108が水平で、かつ左右方向に回転自在に壁106に取り付けられている。
【0032】
巻芯108の前方には上記実施形態1で説明した第1のダンサ装置10が壁106に設けられている。また、巻芯108の後方には、上記実施形態1で説明したダンサ装置10であって、前後方向の位置が逆転した第2のダンサ装置110が壁106に設けられている。すなわち、この第2のダンサ装置110は、前方にセンタロール30があり、後方にダンサロール40がある。
【0033】
巻き出し装置100は、巻芯108の前方と後方のどちらからでもウエブWを巻き出すことができる装置であり、前方にウエブWを巻き出す場合には第1のダンサ装置10を用い、後方に巻き出す場合は第2のダンサ装置110を用いる。
【0034】
さらに、巻芯108に上巻きにウエブWが巻かれている場合には、上方向からセンタロール30の上周面にウエブWを掛け渡し、また、巻芯108にウエブWが下巻きで巻かれている場合には下方向からセンタロール30の上周面にウエブWを掛け渡すものである。
【0035】
本実施形態の巻き出し装置であると、巻芯108からウエブWを巻き出す場合に前方と後方のどちらでも巻き出すことができる。
【0036】
また、巻芯108の前後に第1のダンサ装置10と第2のダンサ装置110が設けられているが、巻芯108との間に従来のようなガイドロールを設ける必要がなく、スペースが小さくできる。
【変更例】
【0037】
上記実施形態1では、エアシリンダ54をダンサロール40よりも上方に配置し、ダンサロール40の下周面にウエブWを掛け渡したが、これに代えてエアシリンダ54をダンサロール40の下方に配置し、ウエブWをダンサロール40の上周面に掛け渡し、センタロール30の下周面にウエブWを掛け渡してもよい。
【0038】
また、上記実施形態1では、エアシリンダ54を用いたが、油圧シリンダでもよい。
【0039】
また、上記実施形態1では、クランク部52を前後方向に配置したが、これに代えてセンタシャフト26から上下方向に配置し、エアシリンダ54を前後方向、かつ水平に配置してもよい。
【0040】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10・・・ダンサ装置、12・・・フレーム、16・・・壁、26・・・センタシャフト、30・・・センタロール、32・・・ロール腕部、34・・・ロール腕部、40・・・ダンサロール、48・・・重り腕部、50・・・重り、52・・・クランク部、54・・・エアシリンダ、58・・・シリンダ本体、62・・・ピストンロッド、64・・・連結部材、100・・・巻き出し装置
図1
図2
図3
図4
図5