(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156255
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】二次電池を備えた電源装置および充電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20241029BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070566
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田中 智洋
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA02
5G503CA12
5G503CA14
5G503FA17
5G503GA12
5G503GA13
(57)【要約】
【課題】充電器と二次電池との間の双方向の突入電流を防止できる充電制御方法を提供する。
【解決手段】直流電源部と二次電池との間に直列に接続された第1及び第2のスイッチ素子を備え、第1及び第2のスイッチ素子はそれぞれMOSトランジスタにより構成され、寄生ダイオードが互いに逆向きとなるように接続されている電源装置における二次電池の充電制御方法において、第1のスイッチ素子をオンさせ第2のスイッチ素子をオフさせた状態で、定電圧制御によって直流電源部の出力電圧を二次電池の電圧を超えるまで上昇させる工程と、直流電源部の出力電圧を一定したまま定電流制御によって直流電源部の出力電流を第1目標電流値まで増加させる工程と、直流電源部の出力電流が安定した後、第2のスイッチ素子をオンさせ、第1目標電流値よりも高い第2目標電流値に変更し定電流制御によって直流電源部の出力電流を増加させる工程とを含むようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充電電圧を生成する直流電源部と該直流電源部によって充電される二次電池との間に直列に接続された第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子を備え、
前記第1および第2のスイッチ素子はそれぞれMOSトランジスタにより構成され、前記第1のスイッチ素子はその寄生ダイオードが前記二次電池から前記直流電源部へ向かって順方向となるように接続され、前記第2のスイッチ素子はその寄生ダイオードが前記直流電源部から前記二次電池へ向かって順方向となるように接続されている電源装置における二次電池の充電制御方法であって、
前記第1のスイッチ素子をオンさせ前記第2のスイッチ素子をオフさせた状態で、定電圧制御によって前記直流電源部の出力電圧を前記二次電池の電圧を超えるまで上昇させる第1工程と、
前記直流電源部の出力電圧を一定したまま定電流制御によって前記直流電源部の出力電流を第1の目標電流値まで増加させる第2工程と、
前記直流電源部の出力電流が安定した後、前記第2のスイッチ素子をオンさせ、前記第1の目標電流値よりも高い第2の目標電流値に変更し定電流制御によって前記直流電源部の出力電流を増加させる第3工程と、
を含んでいることを特徴とする二次電池の充電制御方法。
【請求項2】
二次電池の充電電圧を生成する直流電源部と該直流電源部によって充電される二次電池との間に直列に接続された第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子と、
前記第1および第2のスイッチ素子をそれぞれオン、オフ制御する信号を生成し出力する主制御回路と、を備え、
前記第1および第2のスイッチ素子はそれぞれMOSトランジスタにより構成され、前記第1のスイッチ素子はその寄生ダイオードが前記二次電池から前記直流電源部へ向かって順方向となるように接続され、前記第2のスイッチ素子はその寄生ダイオードが前記直流電源部から前記二次電池へ向かって順方向となるように接続されている電源装置であって、
前記直流電源部の出力電流の検出値に応じて前記直流電源部へ伝達する定電流制御のための信号を生成し出力する定電流制御回路と、
前記直流電源部の出力電圧の検出値に応じて前記直流電源部へ伝達する定電圧制御のための信号を生成し出力する定電圧制御回路と、を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
前記主制御回路は、
充電開始時に前記定電圧制御回路へ目標電圧値を出力し、前記第1のスイッチ素子をオン、前記第2のスイッチ素子をオフさせて、定電圧制御によって前記直流電源部の出力電圧を前記二次電池の電圧を超えるまで上昇させ、
前記直流電源部の出力電圧が前記二次電池の電圧を超えると、前記直流電源部の出力電圧を一定にしたまま定電流制御によって前記直流電源部の出力電流を第1の目標電流値まで増加させ、
前記直流電源部の出力電流が安定した後、前記第2のスイッチ素子をオンさせ、前記第1の目標電流値よりも高い第2の目標電流値に変更し定電流制御によって前記直流電源部の出力電流を増加させることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記定電流制御回路は、前記直流電源部の出力電流の検出値を増幅する第1差動増幅器と、前記第1差動増幅器の出力電圧と前記主制御回路より与えられる目標電流値に応じた電圧とを入力とする電圧入力-電流出力型の第2差動増幅器とを有し、
前記定電圧制御回路は、前記直流電源部の出力電圧の検出値と基準となる電圧との電位差を増幅する第3差動増幅器と、前記第3差動増幅器の出力電圧と前記主制御回路より与えられる目標電圧値に応じた電圧とを入力とする電圧入力-電流出力型の第4差動増幅器とを有することを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記定電流制御のための信号および前記定電圧制御のための信号を前記定電流制御回路と前記定電圧制御回路から前記直流電源部へ伝達する絶縁型信号伝達手段を備え、
前記絶縁型信号伝達手段の一次側素子とそれぞれ直列をなすように第1整流素子および第2整流素子がそれぞれ接続され、
前記第1整流素子のカソード端子に前記第2差動増幅器の出力端子が接続され、
前記第2整流素子のカソード端子に前記第4差動増幅器の出力端子が接続されていることを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記主制御回路より出力される前記第1および第2のスイッチ素子をオン、オフ制御するための信号に基づいて前記第1および第2のスイッチ素子のゲート電圧を生成するゲート駆動回路を備え、
前記第1および第2のスイッチ素子はNチャネル型MOSトランジスタであり、
前記ゲート駆動回路は、前記ゲート電圧を前記直流電源部の充電電圧よりも高い電圧に昇圧するチャージポンプ回路を有していることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を備えた電源装置さらには二次電池の充電機能を備えた電源装置および充電制御方法に関し、特に充電器と二次電池との間の双方向の突入電流を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を備えた電源装置には、二次電池を充電する機能を有するものがある。二次電池(以下、単に電池と記す)の充電は充電器を用いて行われるが、充電器を電池に接続する際に、電池の電圧と充電器の電圧に差異があると突入電流が流れる。突入電流の発生時には、瞬間的に大電流が流れるため充電器の制御では抑制することができない。
また、充電器と電池の接続時に電池電圧の方が高いと充電器へ向かって突入電流が流れて電池容量が減少する一方、接続時に充電器電圧の方が高いと電池へ向かって突入電流が流れて電池へ大きなストレスがかかり、電池寿命を短くするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、充電器への突入電流の防止策としてはダイオードを使用する方法が知られている。しかし、ダイオードを用いる方法は、電池から充電器への突入電流は防止できるが、充電器から電池への突入電流は防止できない。
また、突入電流対策としてダイオードを使用した場合、VF×電流の損失による発熱が発生するため、電流が大きくなると損失による発熱が大きくなり素子が破損するおそれがあるので、電池電流が大きな場合には適用が困難であるという課題がある。
【0005】
なお、本出願の発明に類似する構成の回路を有する発明として、特許文献1に記載されている発明がある。特許文献1には、バッテリーとバックアップ電源としての降圧装置(DCDCコンバータ)を備えた電源システムにおいて、電源ライン上に一対のスイッチMOSトランジスタと直列にそれぞれ接続されたダイオードを設けて、上記2つの電力供給源のうちより高電位である方からシステムECUへ選択的に電力を供給することが可能に構成した技術が開示されている。しかし、特許文献1には、充電器と二次電池との間の双方向の突入電流を防止する技術については開示されていない。
【0006】
また、特許文献1には、バッテリーを備えた電源システムにおいて、平滑コンデンサのプリチャージ実行時における突入電流を緩和するため、平滑コンデンサのプリチャージを行う際には、抵抗を有するコンタクタ(スイッチ)をオンさせるようにした技術が記載されている([0048])。しかし、抵抗を用いて突入電流を緩和する方法においても、電流が大きくなると損失による発熱が大きくなり素子が破損するおそれがあるので、電流が大きな場合には適用が困難である。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、充電器の出力電圧が高い場合も電池電圧が高い場合も、充電器と二次電池との間の双方向の突入電流を充電器側で防止することができる電源装置および充電制御方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電池電流が大きい場合にも損失による発熱を抑制することができる電源装置および充電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明は、
二次電池の充電電圧を生成する直流電源部と該直流電源部によって充電される二次電池との間に直列に接続された第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子を備え、
前記第1および第2のスイッチ素子はそれぞれMOSトランジスタにより構成され、前記第1のスイッチ素子はその寄生ダイオードが前記二次電池から前記直流電源部へ向かって順方向となるように接続され、前記第2のスイッチ素子はその寄生ダイオードが前記直流電源部から前記二次電池へ向かって順方向となるように接続されている電源装置における二次電池の充電制御方法において、
前記第1のスイッチ素子をオンさせ前記第2のスイッチ素子をオフさせた状態で、定電圧制御によって前記直流電源部の出力電圧を前記二次電池の電圧を超えるまで上昇させる第1工程と、
前記直流電源部の出力電圧を一定したまま定電流制御によって前記直流電源部の出力電流を第1の目標電流値まで増加させる第2工程と、
前記直流電源部の出力電流が安定した後、前記第2のスイッチ素子をオンさせ、前記第1の目標電流値よりも高い第2の目標電流値に変更し定電流制御によって前記直流電源部の出力電流を増加させる第3工程と、を含むようにしたものである。
【0009】
上記の方法によれば、第1工程では第1のスイッチ素子をオンさせ第2のスイッチ素子をオフさせた状態で、定電圧制御で充電器の出力電圧を二次電池の電圧を超えるまで上昇させるため、二次電池の電圧の方が充電器の電圧よりも高い間は第2のスイッチ素子の寄生ダイオードに電流が流れないので、二次電池から充電器へ向かう突入電流を防止することができる。
また、充電器の電圧の上昇により充電器の電圧の方が二次電池の電圧よりも高くなると、第2工程において定電流制御で電流を増加させるため、第2のスイッチ素子の寄生ダイオードを通して電流が流れることで、二次電池を充電することができるとともに充電器から二次電池へ向かう突入電流を防止することができる。しかも、その間は電流が小さいため、寄生ダイオードを通して電流が流れても発熱を抑えることができる。そして、その後、第3工程で電流を大きくするとともに第2のスイッチ素子をオン状態にすることで抵抗を下げるため、充電電流が大きくても発熱を抑えつつ二次電池を速やかに充電することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、充電器の出力電圧が高い場合も電池電圧が高い場合も、双方向の突入電流を充電器側で防止することができ、充電器と二次電池の接続時の突入電流による電池容量の減少を防止するとともに、二次電池へのストレスを減らすことができる。また、充電電流が大きくても損失による発熱を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る二次電池を備えた電源装置の一実施形態を示す回路構成図である。
【
図2】実施形態の電源装置を構成するスイッチ用のトランジスタのオン/オフ状態に対応した等価回路を示す回路図である。
【
図3】実施形態の電源装置におけるCC制御とCV制御の際の電圧および電流の変化の様子を示すグラフである。
【
図4】実施形態の電源装置を構成する定電流制御回路としてのCC制御用エラーアンプの具体的な回路例を示す回路図である。
【
図5】実施形態の電源装置を構成する定電圧制御回路としてのCV制御用エラーアンプの具体的な回路例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した二次電池の充電機能を備えた電源装置の一実施形態を示す。
この実施形態における電源装置は、直流電源としての充電器10とリチウムイオン電池のような二次電池20とを備え、充電器10は直流電源部11と、該直流電源部11と二次電池20との間に直列に接続されたスイッチ用のトランジスタQ1,Q2を備えている。トランジスタQ1,Q2には、特に限定されるものでないが、本実施形態においてはNチャネル形MOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が使用されている。
【0013】
ここで、 スイッチ用のトランジスタQ1は、ドレイン・ソース間の寄生ダイオード(ボディダイオード)Ds1が、充電器から二次電池に向かって順方向となるように接続がなされ、トランジスタQ2は、寄生ダイオードDs2が、充電器から二次電池に向かって逆方向となるように接続がなされている。直流電源部11は、DC-DCコンバータなどにより構成されるが、交流電圧が入力される場合にはDC-DCコンバータの前段に、入力された交流電圧を整流するブリッジ回路などがさらに設けられる。
【0014】
また、本実施形態の電源装置は、トランジスタQ1,Q2をオン、オフ制御する制御回路12と、制御回路12からの制御信号に基づいてQ1,Q2のゲート電圧を生成するゲート駆動回路13と、CC制御(定電流制御)用のエラーアンプ14およびCV制御(定電圧制御)用のエラーアンプ15を備えている。制御回路12は、例えばMCU(マイクロコントローラユニット)などにより構成される。なお、直流電源部11、トランジスタQ1,Q2、制御回路12、ゲート駆動回路13、CC制御(定電流制御)用のエラーアンプ14およびCV制御(定電圧制御)用のエラーアンプ15は、同一基板上に実装された充電器10として構成してもよい。
【0015】
ゲート駆動回路13は、トランジスタQ1,Q2のゲート端子に印加される電圧を充電器電圧Vcgよりも充分に高くするためのチャージポンプ回路を備えており、これによりQ1,Q2のオン抵抗を小さくことができる。トランジスタQ1またはQ2をオンさせる場合、制御回路12からゲート駆動回路13へオン、オフ制御ための信号としてパルス信号が供給され、パルス信号が繰り返し入力されることによって内部のチャージポンプが動作して、昇圧されたゲート電圧がそれぞれ生成され、Q1,Q2のゲート端子に印加される。
【0016】
また、CC制御用のエラーアンプ14には、充電動作中の電流を検出するために設けられた電流検出用の抵抗Rsにより電流-電圧変換された電圧と制御回路12からCC制御のための目標電流値(CC目標値)とが入力される。一方、CV制御用のエラーアンプ15には、直流電源部11から供給される充電器電圧Vcgを抵抗R1,R2で分圧した電圧と制御回路12からのCV制御のための目標電圧値(CV目標値)とが入力される。
なお、制御回路12には、エラーアンプ14から出力される充電電流の検出値とエラーアンプ15から出力される充電器電圧Vcgの検出値、二次電池20の電圧を抵抗R3,R4で分圧した電圧が入力され、制御回路12は、所定のシーケンスに従って、スイッチ用のトランジスタQ1,Q2をオン、オフ制御するための信号を生成し出力する。
【0017】
さらに、本実施形態の電源装置には、例えば5Vのような電源電圧端子VDCとエラーアンプ14および15の出力端子との間に、直流電源部11を構成する絶縁型のDC-DCコンバータの一次側に設けられているフォトトランジスタへエラーアンプ14または15により流されるフィードバック電流IFBに応じた光信号を出力する発光ダイオードPDが設けられている。ここで、上記一次側フォトトランジスタと上記発光ダイオードPDとは、絶縁型信号伝達手段としてのフォトカプラを構成している。
なお、フォトトランジスタの一次側電圧値に応じて絶縁型のDC-DCコンバータの一次側に設けられているスイッチ素子を駆動する制御信号が可変可能なように構成されており、これによりCC電圧制御またはCC電流制御が可能となる。
【0018】
また、発光ダイオードPDのカソード端子とエラーアンプ14および15の各出力端子との間には、逆流防止用のダイオードD1とD2がそれぞれ接続されており、エラーアンプ14および15はその出力端子から、それぞれの入力電圧と目標値との電位差に応じた電流を引き込むことで、発光ダイオードPDに、CC制御やCV制御のためのフィードバック電流IFBを流すように構成されている。ここで、エラーアンプ14によるCC制御とエラーアンプ15によるCV制御はOR(論理和)制御であり、出力電力を下げる方向の制御が優先して実行される。
【0019】
具体的には、例えば目標電圧を35V、目標電流を1Aに変更した場合には、CV制御は出力を下げる方向に、またCC制御は出力を上げる方向に制御しようとするが、この場合、CV制御が優先され、出力を下げるように動作する。また、目標電圧を20V、目標電流を12Aに変更した場合には、CV制御は出力を上げる方向に、CC制御は出力を下げる方向に制御しようとするが、この場合には、CC制御が優先され出力を下げるように動作する。このようなOR制御はダイオードD1,D2があることによって可能になる。
【0020】
同様にして、目標電圧を35V、目標電流を12Aに変更した場合には、CV制御は出力を下げる方向に制御し、CC制御も出力を下げる方向に制御しようとするが、この場合、CC制御とCV制御のうち出力を下げる制御幅が大きい方が優先され、出力を下げるように動作する。また、目標電圧を20Vに、目標電流を1Aに変更した場合、CV制御は出力を上げる方向に制御し、CC制御は出力も上げる方向に制御しようとするが、この場合、CC制御とCV制御のうち出力を上げる制御幅が小さい方が優先され、出力を上げるように動作することとなる。
【0021】
次に、本実施形態の電源装置における制御回路12による二次電池の充電制御の手順について、
図2の等価回路図および
図3のグラフを用いて説明する。
図3において、線Aは充電器の電圧の変化を、線Bは電流の変化を示す。
図1に示されている電源装置においては、直流電源部11と二次電池20との間に直列に接続されている2個のトランジスタQ1,Q2の寄生ダイオードDs1とDs2が互いに逆向きであるため、
図2(A)のように、Q1とQ2が共にオフ(非導通)の状態だといずれの方向にも方向に電流は流れない。一方、
図2(C)のように、Q1とQ2を同時にオンにすると、電圧が高い側から低い側へ突入電流が流れてしまう。
【0022】
そこで、トランジスタQ1とQ2のゲート電圧を制御して、先ず
図2(B)のように、Q1のみをオン(導通)にし、Q2はオフ(非導通)の状態になるように動作させる(ステップS1)。このとき、Q2は寄生ダイオードDs2のみが動作可能となる。なお、MOSトランジスタのチャンネルのオン抵抗は寄生ダイオードの順方向オン抵抗に比べて充分に小さいため、Q1のオンによって,Q1の寄生ダイオードDs1は見えなくなる。
【0023】
次に、
図3の期間T1に示すように、充電器10の出力電圧(充電器電圧)をCVCC制御で上昇させる(ステップ2)。すると、充電器電圧>(電池電圧VBAT+寄生ダイオードDs2の順方向電圧VF)になったタイミングt1で充電器10から二次電池20へ電流が流れ始める。なお、その際のCC制御の目標値は低い電流値に設定しておくことで、寄生ダイオードDs2すなわちトランジスタQ2の発熱を抑える。ここで、目標とする低電流値は、寄生ダイオードDs2における発熱を素子に悪影響を及ぼすことがないように抑えるため、例えば1Aのような値に設定すると良い。
また、CVCC制御においては、充電器10から二次電池20へ電流が流れ始めるタイミングt1までは、CV制御がCC制御に優先し、タイミングt1以降はCC制御が有効に機能して、
図3の期間T2に示すように、充電電流が目標の低電流値へ向かって上昇する。
【0024】
そこで、次に、CC制御による電流(低電流)が安定したタイミングt2を見計らって、
図2(C)のように、トランジスタQ2をオンにする(ステップS3)。これにより、Q2の寄生ダイオードDs2は見えなくなる。なお、CC制御の電流が安定するタイミングt2は、例えばタイマで決定するようにすることができる。電圧検出用の抵抗Rsの端子間電圧に基づいてCC制御の電流が安定したか判断するようにしても良い。
上記のようなタイミングt2でトランジスタQ2をオンにすると、充電器側の電圧と電池側の電圧はほぼ同電位のため、突入電流が流れないようにすることができる。
【0025】
また、タイミングt2でトランジスタQ2をオンにした後、速やかにCC制御の目標値を最終目標電流値に変更する(ステップS4)。すると、CC制御によって、
図3の期間T3に示すように、充電器10から二次電池20へ流れる電流が増加し、最終目標値に到達する。その後、充電器の電圧が緩やかに上昇しながら充電電流が流れて二次電池の充電完了となるまでこの状態を維持する。なお、直前までのCVCC制御における目標とする低電流値が1Aのような場合、Q2をオンにした後の目標電流値は、例えば10Aのような値に設定することが考えられる。
【0026】
上述したように、本実施形態の電源装置においては、制御回路12による上記のような制御により、二次電池20を充電器10に接続する際にはトランジスタQ1,Q2をオフにしておくことによって、二次電池20から充電器10への突入電流を防止して電池容量の減少を防止することができる。また、充電開始直後のCVCC制御によって、充電電圧および電流を徐々に増加させることで充電器10から二次電池20への突入電流を防止して二次電池へのストレスを減らすことができる。
【0027】
次に、上記CC制御用のエラーアンプ14とCV制御用のエラーアンプ15の具体的な回路例について、
図4および
図5を用いて説明する。
CC制御用のエラーアンプ14は、前記電流検出用抵抗Rs(
図1)の端子電圧Vs1,Vs2が入力されるオペアンプ(差動増幅器)AMP1と、該オペアンプAMP1の出力および制御回路12からのCC制御の目標電流値が入力されるオペアンプAMP2を備え、該オペアンプAMP2の出力端子が、前記ダイオードD1のカソード端子に接続されている。また、本実施形態の電源装置においては、CC制御の目標電流値が制御回路12からPWM(パルス幅変調)信号として与えられるため、目標電流値を指示するPWM信号に基づいてそのパルス幅に比例した電圧Vtg1を生成するためのRCフィルタ回路FLT1が設けられている。
なお、オペアンプAMP2は、フィードバック電流IFBを制御するため電圧入力-電流出力型のアンプである。具体的には、オペアンプAMP2の出力は、当該オペアンプAMP2の出力端子と反転入力端子との間に直列に接続された帰還容量Cf2および帰還抵抗Rf2を用いた位相補償によって電圧制御され、その結果フィードバック電流IFBが一定になるように制御する。
【0028】
また、オペアンプAMP1は、その出力端子と反転入力端子との間に帰還容量Cf1および帰還抵抗Rf1が並列に接続されており、入力電圧Vs1とVs2の電位差を差動増幅して電流検出用抵抗Rsに流れる充電電流に比例した電圧Vout1を出力する。一方、オペアンプAMP2は、その出力端子と反転入力端子との間に帰還容量Cf2および帰還抵抗Rf2が直列に接続されており、オペアンプAMP1の出力電圧Vout1とCC制御の目標電流値に相当する電圧Vtg1との電位差に比例した電流をダイオードD1より引き込むように動作する。
【0029】
これにより、CC制御用のエラーアンプ14は、制御回路12より目標電流値が入力されると、発光ダイオードPDに流れる電流IFBを制御して、充電器10により流される電流が目標値になるように制御する。従って、CC制御用のエラーアンプ14と発光ダイオードPDによって、充電器10の出力電流の検出値に応じて充電器へ伝達する定電流制御のための信号を生成し出力する定電流制御回路が構成される。なお、特に限定されるものでないが、オペアンプAMP1から出力される電流検出用抵抗Rsに流れる充電電流に比例した電圧Vout1は、制御回路12へも伝達される。
【0030】
CV制御用のエラーアンプ15は、
図5に示すように、前記分圧用抵抗R1,R2(
図1)により分圧された検出電圧Vcdと基準となる電圧Vrefとが入力されるオペアンプAMP3と、該オペアンプAMP3の出力および制御回路12からのCV制御の目標電圧値が入力される電圧入力-電流出力型のオペアンプAMP4を備え、該オペアンプAMP4の出力端子が、前記ダイオードD2のカソード端子に接続されている。また、本実施形態の電源装置においては、CV制御の目標電圧値が制御回路12からPWM(パルス幅変調)信号として与えられるため、目標電圧値を指示するPWM信号に基づいてそのパルス幅に比例した電圧Vtg2を生成するためのRCフィルタ回路FLT2が設けられている。
【0031】
また、オペアンプAMP3は、その出力端子と反転入力端子との間に帰還容量Cf3および帰還抵抗Rf3が並列に接続されており、検出電圧Vcdと基準となる電圧Vrefの電位差を差動増幅して充電器電圧Vcgに比例した電圧Vout3を出力する。一方、オペアンプAMP4は、その出力端子と反転入力端子との間に帰還容量Cf4および帰還抵抗Rf4が直列に接続されており、オペアンプAMP3の出力電圧Vout3とCV制御の目標電圧値に相当する電圧Vtg2との電位差に比例した電流をダイオードD2より引き込むように動作する。
【0032】
上記のような動作により、CV制御用のエラーアンプ15は、制御回路12よりCV制御の目標電圧値が入力されると、発光ダイオードPDに流れる電流IFBを制御して、充電器電圧Vcgを生成する図示しないDC-DCコンバータの出力電圧が目標値になるよう制御する。従って、CV制御用のエラーアンプ15と発光ダイオードPDによって、充電器10の出力電圧の検出値に応じて充電器へ伝達する定電圧制御のための信号を生成し出力する定電圧制御回路が構成される。
なお、特に限定されるものでないが、オペアンプAMP3から出力される充電器電圧Vcgに比例した電圧Vout3は制御回路12へも伝達される。
【0033】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では、スイッチ用のトランジスタQ1,Q2としてNチャネル型MOSトランジスタを使用しているが、Pチャネル型MOSトランジスタを使用しても良い。そして、Pチャネル型MOSトランジスタを使用した場合、ゲート電圧を充電器電圧よりも高くする必要がないので、ゲート駆動回路13はチャージポンプを備えなくても良い。また、スイッチ用のトランジスタQ1,Q2の配置は、
図1に示す順序に限定されず、Q1とQ2の配置を逆にしても良い。
また、CC制御用のエラーアンプ14とCV制御用のエラーアンプ15は、
図4および
図5に示すような構成を有する回路に限定されるものではなく、上記と同様に機能を有する回路であればどのような構成であっても良い。
【符号の説明】
【0034】
10…充電器、11…直流電源部、12…MCU(主制御回路)、13…ゲート駆動回路、14…CC制御用のエラーアンプ(定電流制御回路)、15…CV制御用のエラーアンプ(定電圧制御回路)、20…二次電池、Q1,Q2…スイッチ用トランジスタ(スイッチ素子)、Ds1,Ds2…寄生ダイオード