IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーチキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-消火栓装置 図1
  • 特開-消火栓装置 図2
  • 特開-消火栓装置 図3
  • 特開-消火栓装置 図4
  • 特開-消火栓装置 図5
  • 特開-消火栓装置 図6
  • 特開-消火栓装置 図7
  • 特開-消火栓装置 図8
  • 特開-消火栓装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156257
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20241029BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070568
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB01
2E189EB05
2E189EB09
(57)【要約】
【課題】監視員通路の路面上の所定高さに装置本体を設置するための架台が設置された空間を消火用ホースの収納空間に利用し、薄型化されても消火用ホースを折れ曲がることなく収納することを可能とする。
【解決手段】消火栓装置10は、消火用ホース62を除く所定の消火栓機器が設けられると共に、内部に位置する所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が設けられた第1筐体11aと、消火器19及び所定の電装機器が設けられると共に、消火器19を取出可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉16及び所定の電装機器が配置された電装扉18が設けられた第2筐体11bと、第1筐体11aと第2筐体11bを監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に消火用ホース62が底部に対して所定の角度で傾斜した状態で底部から上方に向けて積層させるように巻き回す傾斜重ね巻きに収納された第3筐体11cを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出した状態で当該トンネル壁面に近接又は当接して設置される消火栓装置であって、
消火用ホースを除く所定の機器が設けられた装置本体が前記監視員通路の路面上方の所定の高さに設置され、
前記装置本体と前記監視員通路の路面との間の空間に消火用ホースが収納場所の底部に対して所定の角度で傾斜した状態で前記収納場所の底部から上方に向けて積層させるように巻き回す傾斜重ね巻きに収納されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記装置本体として、
前記所定の機器として、前記消火用ホースを除く所定の消火栓機器が設けられると共に、前記所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が設けられた第1筐体と、
前記第1筐体と共に前記トンネル壁面に沿うように前記第1筐体の所定の側面に配置され、前記所定の機器として、少なくとも消火器及び所定の電装機器が設けられると共に、前記消火器を取出可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉及び前記所定の電装機器が配置された電装扉が設けられた第2筐体と、
を備え、
更に、前記装置本体と前記監視員通路の路面との間の空間に設置され、自身の上面側に前記第1筐体と前記第2筐体を設置することで前記第1筐体と前記第2筐体を前記監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に前記消火用ホースが前記傾斜重ね巻きに収納された第3筐体と、
を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記第3筐体内の底部には、前記第3筐体内の底部に対して所定の角度となる傾斜面を有する傾斜部材が配置され、
前記消火用ホースは、前記傾斜部材上に積層されることで前記傾斜重ね巻きに収納されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項4】
請求項3記載の消火栓装置において、
前記第3筐体内の底部に対して所定の角度となる方向における前記傾斜面の長さは、傾斜重ね巻きに収納される前記消火用ホースが折り曲がらない所定の湾曲許容直径以上の長さに設定されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項5】
請求項4記載の消火栓装置において、
前記第3筐体内の底部に対する前記傾斜面の所定の角度は、
前記第3筐体の奥行幅をL、前記消火用ホースの前記湾曲許容直径をDとした場合に、
θ=cos-1(L/D)
により求められる傾斜角度θ以上に設定されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項6】
請求項3記載の消火栓装置において、
前記第3筐体の内部には、前記傾斜面の上部を通る消火用ホースの位置を保持する所定数の支柱が起立されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項7】
請求項6記載の消火栓装置において、
前記第1筐体の下面及び前記第3筐体の上面の各々に、相互に対応したホース引出口が形成され、
前記起立された支柱の先端位置と前記第3筐体内部の上面との間に空き空間が形成され、
前記消火用ホースは、巻き終わりとなる一端側が前記空き空間、前記第3筐体の上面に形成された前記ホース引出口及び前記第1筐体の下面に形成された前記ホース引出口を経由して前記第1筐体の内部に引き込まれ前記第1筐体の内部に設けられた放水用ノズルに接続されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項8】
請求項3記載の消火栓装置において、
前記傾斜部材の前記傾斜面の上部及び下部に前記第3筐体内の底部に対して平行となる平面部が形成され、
前記消火用ホースは、前記上部及び下部の平面部上に載置され、前記傾斜重ね巻きで収納されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項9】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記第3筐体は、前記消火用ホースを内部に収納するための開口を有し、当該開口に開閉自在にホース収納扉が設けられたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項10】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記監視員通路の路面から前記第1筐体及び前記第2筐体の最上部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の上限高さ以下に位置し、
前記監視員通路の路面から前記第1筐体及び前記第2筐体の最下部までの高さは、前記法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さ以上に位置することを特徴とする消火栓装置。
【請求項11】
請求項2記載の消火栓装置において、
法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲に位置する前記第1筐体に設けられる前記所定の操作対象は、前記消火栓扉の開閉操作部、前記放水用ノズル、前記消火栓弁の開閉操作部、外部からホースが接続される給水栓及び消火ポンプ起動操作部を含み、
前記法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲に位置する前記第2筐体に設けられる前記所定の操作対象は、前記消火器扉の開閉操作部、前記消火器の操作部及び前記電装機器の操作部を含むことを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に露出して設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内には、トンネル非常用設備として消火栓装置が設置されている。例えば消火栓装置は、前傾式の消火栓扉(前傾扉)を備えた筐体内部の消火栓収納部に、先端に放水ノズルを装着した消火用ホースや消火栓弁を含むバルブ類等が収納され、また、消火器扉を備えた筐体内部の消火器収納部に、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的にトンネル長手方向、例えば50メートル間隔で、監視員通路が設けられたトンネル壁面を箱抜きして埋込み設置されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、シールド工法等により造られたトンネルにあっては、トンネル躯体の構造上、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置することがコストや労力の関係から困難であることから、消火栓装置を監視員通路に露出した状態で設置することが要求されている。
【0004】
このため、消火栓装置をトンネル壁面に箱抜きすることなく、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置する構造として、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置の装置本体を取付固定する壁掛け構造が提案されており、当該壁掛け構造の架台は、壁面に固定される主支持部と消火栓装置の装置本体の姿勢を保持する姿勢保持部材等から構成されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、壁掛け構造による消火栓装置の設置は、トンネル壁面への消火栓装置の取り付けに工数と時間が掛かる等の課題があることから、設置が容易である監視員通路の路面上に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置の装置本体を取付固定する、いわゆる据置き構造を採用することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-279294号公報
【特許文献2】特開2019-000196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、据置き型の消火栓装置にあっては、監視員通路の路面上の所定の高さに消火栓装置の装置本体を設置するための架台は一般的にアングル材を箱形に組み合わせた型枠構造である。その架台のアングル材を剥き出しにしておくことは従来の壁面埋込型と比べ見栄えに問題があり、型枠構造の周囲に板部材等によるカバーを配置して剥き出しとなったアングル材を隠すことも考えられるが、見栄えの悪さを解消するためだけに追加構造を設ける意義は薄い。
【0008】
また、架台の内部空間を監視員通路から立ち上げた給水配管を消火栓装置の装置本体に引き込むための配管スペースに利用しているが、それでも架台の内部空間の大部分は空き空間として残っており、架台が設置された空間に存在する空き空間が十分に活用されていない問題もある。
【0009】
そこで、架台が設置された空間に存在する空き空間を、従来の消火栓装置の装置本体の内部に設けていた消火用ホースを収納するホース収納部に利用することが考えられるが、消火栓装置を監視員通路に露出した状態で設置する場合には、避難通路として利用される監視員通路の通路幅の制限を低減するために、消火栓装置は可能な限り薄型化する必要があり、架台が設置された空間に存在する空き空間にホース収納部を設けることにしても、ホース収納部のホース収納構造に検討の余地が残る。
【0010】
また、消火栓装置は、一般的に50メートル間隔で設置されているため、隣に位置する消火栓装置との放水範囲の重複を可能とする少なくとも30mの消火用ホースを折れ曲がることなく巻き回して引出自在にホース収納部に収納しており、架台が設置された空間に存在する空き空間にホース収納部を設ける場合にも例外ではなく、前述した薄型化の架台を解決した上で少なくとも30mの消火用ホースを引出自在にホース収納部に収納する必要があり、この点からもホース収納構造をどのようにするかが課題となる。
【0011】
本発明は、監視員通路の路面上の所定高さに装置本体を設置するための架台が設置された空間を消火用ホースの収納空間に利用し、薄型化しても所定長の消火用ホースを折れ曲がることなく巻き回して引出自在に収納することを可能とする消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(消火栓装置)
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出した状態で当該トンネル壁面に近接又は当接して設置される消火栓装置であって、
消火用ホースを除く所定の機器が設けられた装置本体が監視員通路の路面上方の所定の高さに設置され、
装置本体と監視員通路の路面との間の空間に消火用ホースが収納場所の底部に対して所定の角度で傾斜した状態で収納場所の底部から上方に向けて積層させるように巻き回す傾斜重ね巻きに収納されたことを特徴とする。
【0013】
(消火栓装置の構造)
装置本体として、
所定の機器として、消火用ホースを除く所定の消火栓機器が設けられると共に、所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が設けられた第1筐体と、
第1筐体と共にトンネル壁面に沿うように第1筐体の所定の側面に配置され、所定の機器として、少なくとも消火器及び所定の電装機器が設けられると共に、消火器を取出可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉及び所定の電装機器が配置された電装扉が設けられた第2筐体と、
を備え、
更に、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に設置され、自身の上面側に第1筐体と第2筐体を設置することで第1筐体と第2筐体を監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に消火用ホースが傾斜重ね巻きに収納された第3筐体と、
を備える。
【0014】
(ホース傾斜収納構造)
第3筐体内の底部には、第3筐体内の底部に対して所定の角度となる傾斜面を有する傾斜部材が配置され、
消火用ホースは、傾斜部材上に積層されることで傾斜重ね巻きに収納される。
【0015】
(傾斜面の長さ)
第3筐体内の底部に対して所定の角度となる方向における傾斜面の長さは、傾斜重ね巻きに収納される消火用ホースが折り曲がらない所定の湾曲許容直径以上の長さに設定される。
【0016】
(傾斜面の傾斜角度)
第3筐体内の底部に対する傾斜面の所定の角度は、
第3筐体の奥行幅をL、消火用ホースの湾曲許容直径をDとした場合に、
θ=cos-1(L/D)
により求められる傾斜角度θ以上に設定される。
【0017】
(傾斜重ね巻き状態を保持する支柱)
第3筐体の内部には、傾斜面の上部を通る消火用ホースの位置を保持する所定数の支柱が起立される。
【0018】
(消火用ホースの引き出し構造)
第1筐体の下面及び第3筐体の上面の各々に、相互に対応したホース引出口が形成され、
起立された支柱の先端位置と第3筐体内部の上面との間に空き空間が形成され、
消火用ホースは、巻き終わりとなる一端側が空き空間、第3筐体の上面に形成されたホース引出口及び第1筐体の下面に形成されたホース引出口を経由して第1筐体の内部に引き込まれ第1筐体の内部に設けられた放水用ノズルに接続される。
【0019】
(傾斜板の構造)
傾斜部材の傾斜面の上部及び下部に第3筐体内の底部に対して平行となる平面部が形成され、
消火用ホースは、上部及び下部の平面部上に載置され、傾斜重ね巻きに収納される。
【0020】
(第3筐体のホース収納扉)
第3筐体は、消火用ホースを内部に収納するための開口を有し、当該開口に開閉自在にホース収納扉が設けられる。
【0021】
(適正操作範囲に対応した第1筐体及び第2筐体の設置高さ)
監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最上部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の上限高さ以下に位置し、
監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最下部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さ以上に位置する。
【0022】
(適正操作範囲に位置する操作対象)
法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲に位置する第1筐体に設けられる所定の操作対象は、消火栓扉の開閉操作部、放水用ノズル、消火栓弁の開閉操作部、外部からホースが接続される給水栓及び消火ポンプ起動操作部を含み、
法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲に位置する第2筐体に設けられる所定の操作対象は、消火器扉の開閉操作部、消火器の操作部及び電装機器の操作部を含む。
【発明の効果】
【0023】
(消火栓装置の効果)
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出した状態で当該トンネル壁面に近接又は当接して設置される消火栓装置であって、消火用ホースを除く所定の機器が設けられた装置本体が監視員通路の路面上方の所定の高さに設置され、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に消火用ホースが収納場所の底部に対して所定の角度で傾斜した状態で収納場所の底部から上方に向けて積層させるように巻き回す傾斜重ね巻きに収納されたため、装置本体と監視員通路の路面との間の空間を架台の設置空間として利用するだけでなく、消火用ホースの収納空間として有効活用することができ、更に装置本体側での消火用ホースの収納空間を不要として、装置本体及び消火栓装置全体としてのサイズを低減することが可能となる。また、消火用ホースが傾斜重ね巻きに収納されるため、消火栓装置を薄型化させることができ、消火栓装置を監視員通路上に露出して設置する場合であっても監視員通路の通路幅の制限を低減することができる。
【0024】
(消火栓装置の構造による効果)
また、装置本体として、所定の機器として、消火用ホースを除く所定の消火栓機器が設けられると共に、所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が設けられた第1筐体と、第1筐体と共にトンネル壁面に沿うように第1筐体の所定の側面に配置され、所定の機器として、少なくとも消火器及び所定の電装機器が設けられると共に、消火器を取出可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉及び所定の電装機器が配置された電装扉が設けられた第2筐体と、を備え、更に、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に設置され、自身の上面側に第1筐体と第2筐体を設置することで第1筐体と第2筐体を監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に消火用ホースが傾斜重ね巻きに収納された第3筐体と、を備えたため、第3筐体が第1筐体と第2筐体を監視員通路上の所定の高さに設置する架台としての機能と消火用ホースを収納するホース収納部としての機能を合わせ持ち、従来架台が設置される空間を消火用ホースの収納空間として有効活用することができ、装置本体の第1筐体側での消火用ホースの収納空間を不要として、装置本体及び消火栓装置全体としてのサイズを低減することが可能となる。
【0025】
(ホース傾斜収納構造の効果)
また、第3筐体内の底部には、第3筐体内の底部に対して所定の角度となる傾斜面を有する傾斜部材が配置され、消火用ホースは、傾斜部材上に積層されることで傾斜重ね巻きに収納されたため、消火用ホースを傾斜重ね巻きに収納することを簡単な構造で実現することを可能とする。
【0026】
(傾斜面の長さの効果)
また、第3筐体内の底部に対して所定の角度となる方向における傾斜面の長さは、傾斜重ね巻きに収納される消火用ホースが折り曲がらない所定の湾曲許容直径以上の長さに設定されたため、消火用ホースを傾斜重ね巻きに収納した場合に消火用ホースが折れ曲がることがなく、滑らかに屈曲して重ね巻きした状態に収納することを可能とする。
【0027】
(傾斜面の傾斜角度の効果)
また、第3筐体内の底部に対する傾斜面の所定の角度は、第3筐体の奥行幅をL、消火用ホースの湾曲許容直径をDとした場合に、θ=cos-1(L/D)により求められる傾斜角度θ以上に設定されたため、第3筐体内の底部に対する所定の角度が傾斜角度θ以上に設定された場合には、必然的に傾斜部材の傾斜面の長さは湾曲許容直径以上の長さを確保することが可能であり、消火栓装置の薄型化に伴い第3筐体の奥行幅が消火用ホースの湾曲許容直径未満であっても、消火用ホースが折れ曲がることがなく傾斜重ね巻きした状態に収納することを可能とする。
【0028】
(傾斜重ね巻き状態を保持する支柱の効果)
また、第3筐体の内部には、傾斜面の上部を通る消火用ホースの位置を保持する所定数の支柱が起立されたため、消火用ホースが傾斜重ね巻きに収納されたとしても、重ね巻きした状態が崩れることを防止可能とする。また、消火活動が終了した後の消火用ホースを巻き戻す作業の際に、傾斜面の上部側は支柱と筐体内部の内壁との間に消火用ホースを通すことで巻き戻すことを可能とし、消火用ホースを筐体内部に簡単且つ容易に傾斜重ね巻きで巻き戻すことを可能とする。
【0029】
(消火用ホースの引出構造の効果)
また、第1筐体の下面及び第3筐体の上面の各々に、相互に対応したホース引出口が形成され、起立された支柱の先端位置と第3筐体内部の上面との間に空き空間が形成され、消火用ホースは、巻き終わりとなる一端側が空き空間、第3筐体の上面に形成されたホース引出口及び第1筐体の下面に形成されたホース引出口を経由して第1筐体の内部に引き込まれ第1筐体の内部に設けられた放水用ノズルに接続されたため、消火用ホースが第3筐体の上方に位置する第1筐体側に引き出される際に支柱に制限されることがなく、簡単かつ容易に消火用ホースを引き出すことを可能とする。
【0030】
(傾斜板の構造の効果)
また、傾斜部材の傾斜面の上部及び下部に第3筐体内の底部に対して平行となる平面部が形成され、消火用ホースは、上部及び下部の平面部上に載置され、傾斜重ね巻きに収納されたため、傾斜重ね巻きに収納された消火用ホースが崩れることを低減させることを可能とする。
【0031】
また、傾斜面の下部に平面部が形成されていることで、筐体内部の内壁と傾斜部材の下部との間に形成される空間が大きく消火用ホースを引き出す際の摩擦抵抗を低減できることから、必要な消火用ホースの引出力を低減させることを可能とする。
【0032】
(第3筐体のホース収納扉の効果)
また、第3筐体は、消火用ホースを内部に収納するための開口を有し、当該開口に開閉自在にホース収納扉が設けられたため、消火活動を終了した後の第3筐体へ消火用ホースを巻き戻す作業を、ホース収納扉を開いて簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0033】
(適正操作範囲に位置する操作対象の効果)
また、監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最上部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の上限高さ以下に位置し、監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最下部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さ以上に位置するようにしたため、第1筐体及び第2筐体に設けられる所定の操作対象はどの位置に設けたとしても必ず適正操作範囲に位置し、消火栓装置の設計の自由度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】監視員通路の路面上に設置された消火栓装置を正面から示した説明図である。
図2】消火栓装置の筐体構造を組立分解状態で示した説明図である。
図3】消火栓装置を左側面から示した説明図である。
図4】第3筐体に消火用ホースを傾斜重ね巻きに収納する消火栓装置の内部構造を、第1筐体及び第3筐体の筐体前面を開放して正面から示した説明図である。
図5】消火栓装置の内部構造を右側面から見た断面3箇所で示した説明図である。
図6】傾斜板の他の実施形態を示した説明図である。
図7】消火栓装置を、消火栓扉を開いた状態で正面から示した説明図である。
図8】消火栓扉開閉機構を消火栓装置の右側面から見た断面で示した説明図である。
図9】消火栓装置を、消火栓扉を監視員通路の路面に対して概ね平行に保持した状態で開くと共に、ホース収納扉を開いた状態で正面から示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係る消火栓装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0036】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出して設置される消火栓装置に関するものである。
【0037】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、消火用ホース等の消火栓機器、赤色表示灯や発信機等の電装機器、端子箱及び消火器等が設けられたものであり、消火栓装置が設置された消火栓設備を含む概念である。
【0038】
また、実施形態の消火栓装置は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に、当該トンネル壁面に近接又は当接するように設置されたものであり、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置する「壁掛け構造」や「据置き構造」により設置された消火栓装置を含むものである。ここで、背景技術でも説明した通り、「壁掛け構造」とは、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置の装置本体を取付固定する等により消火栓装置をトンネル壁面に対して壁掛けするように設置可能とする構造であり、「据置き構造」とは監視員通路の路面上に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置の装置本体を取付固定する等により消火栓装置を監視員通路の路面上に設置可能とする構造である。
【0039】
また、「架台」とは、柱と梁などによって物を支える機能を有するものであり、支持台、土台、基台、台座、ベースなどの概念を含むものである。また、「トンネル壁面に近接又は当接させて設置」とは、トンネル壁面に近接して設置、一部をトンネル壁面に当接して設置、又は一部をトンネル壁面に固定して設置することを含むものである。
【0040】
実施形態の消火栓装置は、消火用ホースを除く所定の機器が設けられた装置本体が監視員通路の路面上方の所定の高さに設置され、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に消火用ホースが収納場所の底部に対して所定の角度で傾斜した状態で収納場所の底部から上方に向けて積層させるように巻き回す傾斜重ね巻きに収納されたことを基本構成とし、消火栓装置の装置本体と監視員通路の路面との間の空間を架台の設置空間として利用するだけでなく、消火用ホースの収納空間に有効活用したことを特徴とし、更に消火用ホースの収納状態として、収納場所の底部に対して所定の角度で傾斜した状態で収納場所の底部から上方に向けて積層させるように巻き回す「傾斜重ね巻き」であることを特徴とする。尚、「傾斜重ね巻き」と表現した場合には、収納場所の底部に対して所定の角度で傾斜した状態で収納場所の底部から上方に向けて積層させる重ね巻きのことを指す。
【0041】
そして、実施形態の消火栓装置は、装置本体として第1筐体と第2筐体とを備え、消火栓装置の装置本体と監視員通路の路面との間の空間に第3筐体を備える。
【0042】
第1筐体は、所定の機器として、消火用ホースを除く所定の消火栓機器が設けられると共に、所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が設けられる。ここで、「消火用ホースを除く所定の消火栓機器」とは、消火用ホースに接続された放水用ノズルや消火栓弁等のバルブ類やバルブ類の操作部等の消火用ホースを除いた消火栓に関する任意の機器を含むものである。
【0043】
第2筐体は、第1筐体と共にトンネル壁面に沿うように第1筐体の所定の側面に配置され、所定の機器として、少なくとも消火器及び所定の電装機器が設けられると共に、消火器を取出可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉及び所定の電装機器が配置された電装扉が設けられる。
【0044】
第3筐体は、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に設置され、自身の上面側に第1筐体と第2筐体を設置することで第1筐体と第2筐体を監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に消火用ホースが傾斜重ね巻きに収納される。つまり、第3筐体は、従来の消火栓装置の架台としての機能とホース収納部としての機能を合わせ持つことになり、消火栓機器が設けられる第1筐体にはホース収納部としての機能が不要となり、装置本体となる第1筐体及び第2筐体のサイズを低減させることができる。
【0045】
また、第3筐体は、第3筐体内の底部に第3筐体内の底部に対して所定の角度となる傾斜面を有する傾斜部材が配置され、消火用ホースを傾斜部材上に積層されることで傾斜重ね巻きに収納する「ホース傾斜収納構造」を有する。ここで、「傾斜部材」は、消火用ホースを傾斜重ね巻きに収納可能とするものであれば板状や直角三角柱等の任意の形状等で良く、また、傾斜面に加えて、例えば傾斜部材の傾斜面の上部及び下部に第3筐体内の底部に対して平行に形成された平面部を有するものやその他の部材と組み合わせて構成されたものであっても良い。尚、平面部が第3筐体内の底部に対して平行となるのは傾斜部材が第3筐体内の底部に配置された場合であり、「平行」とは、厳密に対象(平面部にあっては第3筐体内の底部)に対して平行であることを限定するものではなく、対象に対して略平行であるものを含むものであり、「垂直」の場合も同様となる。
【0046】
また、消火用ホースは、傾斜部材上に積層されることで傾斜重ね巻きに収納されるものであって、例えば傾斜面の上部及び下部に平面部を有する場合には、消火用ホースは上部及び下部の平面部上にも載置されるように、傾斜重ね巻きは必ずしも傾斜部材の傾斜面のみに載置されるものに限定されない。
【0047】
また、傾斜部材は、第3筐体内の底部に対して所定の角度となる方向における傾斜面の長さは、傾斜重ね巻きに収納される消火用ホースが折り曲がらない所定の湾曲許容直径以上の長さに設定される。尚、第3筐体内の底部に対して所定の角度となる方向の傾斜面の長さは、傾斜部材が第3筐体内の底部に配置された場合におけるものであり、後に示す実施形態では傾斜面を形成する2方向の辺の内の前後方向成分(奥行方向成分)と上下方向成分(高さ方向成分)を含む側の辺の長さを指している。
【0048】
また、傾斜面は、第3筐体内の底部に対する傾斜面の所定の角度が第3筐体の奥行幅をL、消火用ホースの湾曲許容直径をDとした場合に、
θ=cos-1(L/D)
により求められる傾斜角度θ以上に設定される。ここで、「奥行幅」とは、設置状態において道路側に面する筐体前面からトンネル壁面側に面する筐体後面までの幅のことであり、後に示す実施形態では前後方向の幅を指している。
【0049】
また、第3筐体の内部には、傾斜面の上部を通る消火用ホースの位置を保持する所定数の支柱が起立され、その起立している支柱の数は任意の数となる。
【0050】
第1筐体の下面及び第3筐体の上面の各々に、相互に対応したホース引出口が形成され、起立された支柱の先端位置と第3筐体内部の上面との間に空き空間が形成され、消火用ホースは、巻き終わりとなる一端側が空き空間、第3筐体の上面に形成されたホース引出口及び第1筐体の下面に形成されたホース引出口を経由して第1筐体の内部に引き込まれ第1筐体の内部に設けられた放水用ノズルに接続される。
【0051】
また、第3筐体は、消火用ホースを内部に収納するための開口を有し、当該開口に開閉自在にホース収納扉が設けられる。ここで、ホース収納扉が設けられる開口の大きさは任意であるが、必ずしも第3筐体の開口が設けられる面の大部分を占めている必要はなく、少なくとも上部半分程度を開口するサイズであれば十分である。
【0052】
また、監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最上部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の上限高さ以下に位置し、監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最下部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さ以上に位置する。本出願時における法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さは800mmであり、上限高さは1500mmであるため、第1筐体及び第2筐体は監視員通路の路面から高さ800mm~1500mmの適正操作範囲内に位置することになる。
【0053】
また、第1筐体に設けられる適正操作範囲内で配置される所定の操作対象として、消火栓扉の開閉操作部、放水用ノズル、消火栓弁の開閉操作部、外部からホースが接続される給水栓及び消火ポンプ起動操作部を含む。
【0054】
また、第2筐体に設けられる適正操作範囲内で配置される所定の操作対象として、消火器扉の開閉操作部、消火器の操作部及び電装機器の操作部を含む。
【0055】
尚、「設ける」、「配置」、「設置」、「収納」の用語は、それぞれの用語が表現として代替し得る他の用語を包括し得るものであり、その他にも「取付」、「取付固定」、「装着」等、用語の意味合いから代替し得る用語の意味合いを含み得る概念である。
【0056】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、消火栓装置が監視員通路の路面上に露出して配置される「据置き構造」とし、「装置本体としての第1筐体及び第2筐体、消火栓装置の架台及びホース収納部として機能する第3筐体を備えるもの」であり、第3筐体のホース収納構造が消火用ホースを傾斜重ね巻きで収納する「ホース傾斜収納構造」とし、「傾斜部材」が「傾斜板」の場合について説明する。
【0057】
[実施形態の具体的内容]
消火栓装置の実施形態について説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.消火栓装置の構造
b.消火栓装置の設置
c.消火栓装置の薄型化
d.消火栓装置の高さ低減
e.消火栓装置の内部構造
e1.第1筐体の内部構造
e2.第2筐体の内部構造
e3.第3筐体のホース収納構造
e4.傾斜板の他の実施形態
e5.消火栓扉の開閉機構
e6.操作対象の設置高さ
e7.消火用ホースの巻戻し作業
f.本発明の変形例
【0058】
[a.消火栓装置の構造]
まず、消火栓装置の構造について説明する。当該説明にあっては、監視員通路の路面上に設置された消火栓装置を正面(前面)から示した図1、及び図1の消火栓装置の筐体構造を組立分解状態で示した図2を参照する。
【0059】
ここで、図1及び図2の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、消火栓装置10の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は本発明の実施形態となる図3図9においても同様となる。
【0060】
図1に示すように、消火栓装置10は、監視員通路34の路面上に設置された架台32上に設置され、消火栓装置10の筐体は、図2に示すように、第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cに分割されている。
【0061】
ここで、第1筐体11aの内部は、消火用ホースを除く消火栓機器を収納するバルブ類収納部46となる。第2筐体11bの内部は、隔壁45により左右に仕切られており、右側が電装機器収納部45aとなり、左側が消火器収納部45bとなる。第3筐体11cの内部は、消火用ホースが収納されるホース収納部48となる。
【0062】
また、第1筐体11aの底面左側(下面左側)にはホース引出開口42aが形成され、第1筐体11aの下側に配置される第3筐体11cの上面にはホース引出開口42aに対応してホース引出開口42bが形成されている。
【0063】
また、第1筐体11aの底面右側には配管通し穴43aが形成され、第1筐体11aの下側に配置される第3筐体11cの上面と底面には配管通し穴43aに対応して配管通し穴43b,43cが形成されている。尚、第3筐体11cの配管通し穴43cに通す配管の接続作業を可能とするため、第3筐体11cの右側面に作業開口を形成して扉構造とするか、又は右側面を着脱自在な板部材で閉鎖した構造としている。
【0064】
また、第1筐体11aの左側面上側には通線開口44aが形成され、第1筐体11aの左側に配置される第2筐体11bの右側面上側には通線開口44aに対応して通線開口44bが形成されている。尚、第1筐体11aの右側面又は後面の所定の位置には通線開口44a及び通線開口44bに挿通されるケーブルを外部から引き込むための開口が必要になるが、その開口については図示を省略している。
【0065】
図1に示すように、第1筐体11aの前面には化粧枠12aが装着されている。化粧枠12aの扉開口の下側には、扉開閉ハンドル1410の操作でロックが解除された場合に、ヒンジ14aを軸として、監視員通路34の路面に対し垂直となる位置に垂直回り(下向き)に開く消火栓扉14が配置されている。
【0066】
化粧枠12aの扉開口の上側には、ヒンジ15aを軸として垂直回り(上向き)に開く保守扉15が配置されている。上向きに開いた保守扉15は、扉内側に配置されたステー(支持棒)により開放状態を保持可能としている。
【0067】
第1筐体11aの内部となるバルブ類収納部46には、後述するように、消火栓弁などを含むバルブ類、消火用ホースが接続された放水用ノズル、消火栓弁の開閉操作レバーを含む消火栓機器が収納されている。
【0068】
第2筐体11bの前面には化粧枠12bが装着されている。化粧枠12bの右側の扉開口にはヒンジ18aにより右向きに横開きする電装扉18が配置され、その左側にはヒンジ20aにより左向きに横開きして、内部の端子箱25a,25bへのアクセスを可能とする補助扉20が配置されている。
【0069】
実施形態にあっては、補助扉20が配置され、従来よりも電装機器収納部45aが拡大されたため、従来では消火器収納部の内部後面に配置されていた端子箱25a,25bを補助扉20の内部後面に配置することを可能としている。
【0070】
電装扉18には、電装機器として、例えば赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ28が配置され、扉内側には電話ジャック26が配置されている。赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から確認できるようになっている。また、発信機24は、例えば火災等の発生時に押されてスイッチがオンすると発信信号を送信し、これを受信した電気室等に設置された防災受信盤から火災警報が出力され、防災受信盤からの応答信号を受信した消火栓装置10は、赤色表示灯22を点滅させると共に、応答ランプ28を点灯させる。
【0071】
補助扉20に相対した第2筐体11b内の後面には、高圧用の端子箱25aと低圧用の端子箱25bが、例えば上下方向に並べて配置されている。高圧用の端子箱25aは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた強電用ケーブルと赤色表示灯22を接続する。低圧用の端子箱25bは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた弱電用ケーブルと発信機24、応答ランプ28及び電話ジャック26を接続する。
【0072】
また、第2筐体11bに装着された化粧枠12bの左側の扉開口には、扉開閉ハンドル1610の操作でロックが解除された場合に、ヒンジ16aにより左向きに横開きする消火器扉16が配置され、扉内部となる消火器収納部45bには、例えば2本の消火器19が収納されている。また、消火器扉16には覗き窓17が設けられ、外部から消火器の有無が確認可能となっている。
【0073】
第3筐体11cは、筐体内に消火用ホースを収納しており、また、左右方向で連結固定した第1筐体11aと第2筐体11bを、監視員通路34の路面上方の所定の高さにトンネル壁面に当接又は近接して取付固定する架台としての機能を果たしている。
【0074】
第3筐体11cの前面には、化粧枠12cが装着されている。化粧枠12cの扉開口には、扉開閉ハンドル3010の操作でロックが解除された場合に、ヒンジ30aを軸として、監視員通路34の路面に対し垂直となる位置に垂直回り(下向き)に開くホース収納扉30が配置されている。ホース収納扉30が配置される扉開口のサイズは任意であるが、消火栓装置10を使用した後に消火用ホースを第3筐体11c内部に巻き戻す作業を行うに十分なサイズであり、例えば扉開口の縦幅(上下方向の幅)は第3筐体11cの前面の縦幅の半分程度の縦幅とし、扉開口の横幅(左右方向の幅)は第3筐体11c内部に形成されたホース収納部の左右内側面に外部から手が届く程度の横幅とする。
【0075】
[b.消火栓装置の設置]
次に、監視員通路に対する消火栓装置の設置について説明する。当該説明にあっては、図1及び図2に加え、図1の消火栓装置を左側面から示した図3を参照する。
【0076】
図3に示すように、シールド工法により構築された円筒状(円形断面)のトンネル躯体の下部には、道路38がトンネル長手方向(左右方向)に構築され、道路38に沿ったトンネル壁面35の下側に、道路38に対し所定高さの監視員通路34が構築されている。監視員通路34の内部はダクトとなっており、内部には給水本管40やケーブルが敷設され、給水本管40から分岐した給水配管36が監視員通路34の路面上に取り出される。給水配管36には引込配管が接続され、引込配管は第3筐体11c内を上下方向に通り第3筐体11cの上側に位置する第1筐体11aの内部に引き込まれている。
【0077】
シールド工法によるトンネル壁面35は、消火栓装置10を設置するための箱抜きが困難であることから、監視員通路34の路面上にトンネル壁面35に近接させて架台32の上に第3筐体11cを設置し、連結された第1筐体11a及び第2筐体11bを第3筐体11c上に取付固定することで、第1筐体11aと第2筐体11bを監視員通路34の路面上の所定高さに設置している。また、第1筐体11aと第2筐体11bの上部は筐体支持部材41によりトンネル壁面35に固定され、前方へ倒れないようにしている。
【0078】
ここで、監視員通路34の路面から消火栓装置10に配置された発信機24や放水用ノズル等を含む全ての操作対象までの高さが、法的に定められた適正操作範囲に入るように、第3筐体11cの高さが設定される。監視員通路34の路面を道路利用者の立ち面とした場合には、公知のように、法的に定められた適正操作範囲は、路面からの下限高さH1が800mm、上限高さH2が1500mmであり、適正操作範囲の高さ幅Hwは700mmとなっている。
【0079】
本実施形態にあっては、第1筐体11a及び第2筐体11bに配置されている操作対象の全てが適正操作範囲内に入るように、監視員通路34の路面から第1筐体11aと第2筐体11bの底面までの高さ(=架台32の高さ+第3筐体11cの高さ)が設定されている。当該高さは、操作対象の全てが適正操作範囲内に入るのであれば任意であるが、例えば適正操作範囲の下限高さH1と同じ800mmとすることで、第1筐体11a及び第2筐体11bに配置されている操作対象の全てが、どの位置に配置されても下限高さ以上の位置に配置されるようにしている。
【0080】
[c.消火栓装置の薄型化]
次に、消火栓装置の薄型化について説明する。図3に示すように、監視員通路34の路面上に設置された消火栓装置10の、トンネル壁面35からの突出(出っ張り)による監視員通路34の通路幅の制約を低減するため、消火栓装置10を可能な限り薄型化している。
【0081】
消火栓装置10の薄型化は、消火栓装置10の内部に収納される機器に合わせて最適化されることとなる。実施形態にあっては、消火栓装置10の内部に収納される機器の中で前後方向のサイズが最大となるのは、第2筐体11bに収納される消火器であり、消火栓装置10の奥行幅(前後方向の厚さ)は消火器が収納できるサイズまで薄型化が可能であるから、消火栓装置10の奥行幅は第2筐体11bに収納される消火器の外径に対応した所定の奥行幅に設定される。
【0082】
消火栓装置10の第2筐体11bに収納される消火器は、例えば薬剤量6kgの20型消火器であり、20型消火器の外径は160~180mm程度であるから、収納された消火器が第2筐体11bの内壁に接触しないように隙間を確保すると、消火栓装置10の最小奥行幅は、例えば200mm~250mm程度の範囲内の、例えば250mmに設定され、第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cの奥行幅は全て250mmに設定されることになる。これに対して、トンネル躯体の壁面を箱抜きして埋込設置する従来の消火栓装置の奥行幅は300mm以上であることから、実施形態の消火栓装置10は奥行幅を従来の消火栓装置よりも低減しており、消火栓装置10を薄型化することができている。
【0083】
[d.消火栓装置の高さ低減]
次に、消火栓装置の高さ低減について説明する。図3に示すように、架台32と第3筐体11cにより筐体底面が監視員通路34の路面上の高さH1に設置される第1筐体11a及び第2筐体11bの高さ幅(縦幅)は、第1筐体11a及び第2筐体11bに収納される機器の中で高さが最大となる機器を収納可能とする必要最小限の高さ幅とする。実施形態にあっては、第1筐体11aに消火用ホースを収納する必要がないことから、高さが最大となる機器は前述した薄型化の場合と同様に第2筐体11bに収納される消火器であり、第2筐体11bの高さ幅(縦幅)は、消火器が収納できる最小高さ幅に設定される。
【0084】
前述した薄型化の場合と同様に、第2筐体11bに薬剤量6kgの20型消火器を収納する場合には、20型消火器の高さは600mm程度であるから、収納された消火器が第2筐体11bの内部上面に接触しないように隙間を確保すると、第2筐体11bの高さは、例えば700mmに設定され、第1筐体11a及び第2筐体11bの高さ幅は適正操作範囲の高さ幅Hw(=700mm)以下の高さに設定でき、監視員通路34の路面から第1筐体11aと第2筐体11bの上面までの高さを適正操作範囲の上限高さH2(=1500mm)以下にすることを可能とする。これにより、第1筐体11a及び第2筐体11bに配置されている操作対象の全てが、どの位置配置されても上限高さ以下の位置に配置されることになる。
【0085】
[e.消火栓装置の内部構造]
次に、消火栓装置の内部構造について説明する。当該説明にあっては、図1の消火栓装置の内部構造を、第1筐体及び第3筐体の前面を開放して正面(前面)から示した図4、及び消火栓装置の内部構造を右側面から見た断面3箇所で示した図5を参照する。尚、図5(A)は図4の切断線a-aの断面を示し、図5(B)は図4の切断線b-bの断面を示し、図5(C)は図4の切断線c-cの断面を示し、図4及び図5で収納されている消火用ホースのターン数は必ずしも明細書で記載されたターン数に一致したものではなく、あくまでも一例として示している。
【0086】
(e1.第1筐体の内部構造)
最初に、バルブ類収納部となる第1筐体11aの内部構造について説明する。第1筐体11aの内部のバルブ類収納部46は、消火栓機器を収納する従来の消火栓収納部から消火用ホースを収納するホース収納部としての機能を取り除いたものに相当する。
【0087】
図2に示した第1筐体11aの右側底面の配管通し穴43aから第3筐体11cを通して引き込まれた引込配管37が分岐配管52に接続され、分岐配管52の分岐側には給水栓50が接続されている。分岐配管52の主管側の配管54はコの字形状に配置され、配管54の途中には消火栓弁56及び自動調圧弁58が順次接続される。
【0088】
消火栓弁56には連動ボックス72が設けられ、第1筐体11a内部の前側に格子状に配置したフレーム64の右側に設けられた操作ボックス68との間でワイヤーが連結されており、操作ボックス68の消火栓弁開閉レバー70の開閉操作に伴う回転を、ワイヤーを介して連動ボックス72に伝達して消火栓弁56を開閉する、公知のワイヤーリンク機構が設けられている。
【0089】
自動調圧弁58は、消火用ホース62へ供給する消火用水の圧力を、所定圧力を保つように調整する。自動調圧弁58に続く配管54は、左側面付近で下方に屈曲され、左側底面付近に設けたホース継手60により第3筐体11cに収納された消火用ホース62に接続されている。ホース継手60の種類や構造は任意であるが、例えば公知の町野式継手を使用することで、配管54に消火用ホース62を着脱自在に接続している。
【0090】
第1筐体11a内部の前側に配置されたフレーム64にはホース取出口65が形成されており、第3筐体11cから図2に示したホース引出開口42a,42bを通して第1筐体11a内に引き出された消火用ホース62の先端には放水用ノズル66が装着され、ホース取出口65を通して消火用ホース62を引き出した状態で、放水用ノズル66はノズルホルダー67に着脱自在に保持されている。尚、図2に示したホース引出開口42a,42bの開口縁には、消火用ホース62の接触による摩耗や傷付きを防止するため、例えばパイプ状のフレーム部材を用いた枠取りが施されている。
【0091】
操作ボックス68の内部には、ポンプ起動連動スイッチ74が設けられている。ポンプ起動連動スイッチ74は、消火栓弁開閉レバー70が開位置に操作された場合にオンし、防災受信盤へポンプ起動信号を送信して消火ポンプ設備を起動させる。また、給水栓50の右側には、ポンプ起動スイッチ75が設けられている。ポンプ起動スイッチ75は、消防隊員が給水栓50にホースを連結して消火を行う際に、押込み操作でオンし、防災受信盤へポンプ起動信号を送信して消火ポンプ設備を起動させる。
【0092】
また、左右両側に位置する上下方向に起立されたフレーム64の略中央には、後述するホース巻戻し作業を行う際に消火栓扉14を監視員通路34の路面に対して概ね平行に開いた状態に保持するために消火栓扉14に設けられたステー112を係止するためのピン114が配置されている。
【0093】
(e2.第2筐体の内部構造)
続いて、第2筐体11bの内部構造について説明する。
【0094】
第2筐体11bの内部は、図2に示したように、隔壁45により電装機器収納部45aと消火器収納部45bに分けられている。前述したように、電装機器収納部45aの前面の扉開口に設けられた電装扉18には赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ28が配置され、電装扉18の裏面には電話ジャック26が配置され、補助扉20の内部となる筐体背面には図1に示したように端子箱25a,25bが配置される。また、消火器収納部45bには、2本の消火器19が収納されている。
【0095】
(e3.第3筐体のホース収納構造)
第3筐体のホース収納構造となるホース傾斜巻き構造について説明する。
【0096】
図4に示すように、第3筐体11cの右端部には、監視員通路34から立ち上げられた給水配管36を第1筐体11a側の分岐配管52に連結する引込配管37が配置されており、引込配管37の左側に仕切板77を配置することで、引込配管37の左側にホース収納部48を形成している。
【0097】
第3筐体11cのホース収納部48の底部には、図5(A)に示すように、前方に向けて斜め下向きにホース収納部48の底部に対して傾斜角度θとなるように傾斜板82が配置されている。傾斜板82は、傾斜面上に消火用ホース62を筐体の内壁に沿って巻き回して積層させることで、消火用ホース62を筐体内の底部に対して傾斜角θで斜めに重ね巻き(傾斜重ね巻き)するために配置されている。
【0098】
ここで、筐体内部で消火用ホース62を重ね巻きする場合には、消火用ホース62を折れ曲がらないように左右両側で湾曲させるために、左右両側の半円部分の直径で所定の湾曲許容直径D以上の湾曲径を確保しなければならない。しかし、第3筐体11cの奥行幅L(前後方向の幅)は消火器の収納を可能とする奥行幅までに薄型化されると250mm程度しかなく、湾曲許容直径Dは製造メーカにより異なるものの、概ね340mm程度は必要であり、消火用ホース62を筐体内の底部に対して平行に重ね巻き(平行重ね巻き)した場合には第3筐体11cの奥行幅Lが湾曲許容直径Dを下回るため、薄型化した消火栓装置において消火用ホース62を平行重ね巻きに収納することはできない。
【0099】
そこで、本実施形態にあっては、消火用ホース62の湾曲許容直径D以上の板幅(平行重ね巻きした場合の第3筐体11cの奥行幅に対応する方向の幅)を持つ傾斜板82をホース収納部48の底部に配置し、その傾斜板82の傾斜面上に消火用ホース62を筐体の内壁に沿うように重ね巻きすることで、従来の消火栓装置でも収納していた30mのホース長の消火用ホース62を収納可能としている。
【0100】
ここで、傾斜板82の板幅を湾曲許容直径Dとした場合の傾斜板82を設置する傾斜角度θ1は、
cosθ1=L/D
の関係式にあることから、
θ1=cos-1(L/D)
となり、湾曲許容直径D以上の板幅を確保することから傾斜角度θはθ1以上の角度に設定されることになる。
【0101】
例えば、消火用ホースの湾曲許容直径Dを340mm、第3筐体11cの奥行幅Lを250mmとすると、傾斜角度θ1は概ね43°となることから、傾斜板82の板幅を湾曲許容直径Dに対して余裕を持たせると、例えば傾斜角度θは概ね45°に設定される(傾斜角度θを45°とした場合の傾斜板82の板幅は350mm程度)。
【0102】
そして、傾斜板82の傾斜面上に傾斜重ね巻きされる消火用ホース62の1ターン当りの長さは、ホース収納部48の横幅(左右方向の幅)を、例えば2200mmとすると概ね4.8mとなり、30mのホース長の消火用ホース62の場合には6.3ターン程度の傾斜重ね巻きで収納することが可能となる。尚、ホース収納部48の横幅は、ホース収納部48に消火用ホース62が収納できるサイズを有するのであれば任意であり、例えば2000mmとするならば、傾斜重ね巻きされる消火用ホース62の1ターン当りの長さは概ね4.4mとなり、6.8ターン程度の傾斜重ね巻きで30mのホース長の消火用ホース62を収納可能とし、1800mmとするならば、傾斜重ね巻きされる消火用ホース62の1ターン当りの長さは概ね4.0mとなり、7.5ターン程度の傾斜重ね巻きで30mの消火用ホース62を収納可能とする。
【0103】
また、図4図5(A)、(B)に示すように、ホース収納部48には、傾斜板82の傾斜面上に傾斜重ね巻きされる消火用ホース62の奥行側(後側、傾斜面の上部側)を支える支柱84が傾斜板82を貫通して筐体内の底部から複数、例えばホース収納部48の左右両側及び中央の3箇所に起立している。支柱84は、重ね巻きされた消火用ホース62の奥行側が自重により傾斜板82の傾斜面に沿ってずれ落ちて崩れることを確実に防止して、消火用ホース62の傾斜重ね巻き状態を保持する。尚、支柱84の数、位置等は任意であり、ホース収納部48の左右両側2箇所に起立させてもよい。
【0104】
道路利用者が消火栓を使用するために、第1筐体11aに保持されている放水用ノズル66を取り出して消火用ホース62を引き出す際に、ホース収納部48に傾斜重ね巻きして収納された消火用ホース62は、起立した支柱84の先端とホース収納部48との間の空き空間を通って支柱84に制限されることなく上部に位置する第1筐体11a側に引き上げられた後にホース取出口65から外部へ引き出されることとなり、引き出される消火用ホース62に無理な曲げ部分や折れを発生させずに、消火用ホース62を軽い力で滑らかに引き出すことを可能とする。
【0105】
(e4.傾斜板の他の実施形態)
第3筐体のホース収納部に消火用ホースを傾斜重ね巻きするために配置される傾斜板の他の実施形態について説明する。当該説明にあっては、傾斜板の他の実施形態を示した図6を参照する。尚、図6(A)は傾斜板を取り出して示し、図6(B)は傾斜板の他の実施形態を配置した場合の図4の切断線b-bの断面に相当する第3筐体の断面を示す。
【0106】
図6(A)に示すように、本実施形態の傾斜板82は、傾斜面部85の上部及び下部の各々から傾斜面部85となす角が所定の傾斜角度θとなる下側平面部86と上側平面部88が形成されている。
【0107】
図6(B)に示すように、図6(A)の傾斜板82をホース収納部48の底部に配置した場合には、下側平面部86がホース収納部48の前面側の底部に位置し、上側平面部88がホース収納部48の奥行側に位置し、傾斜面部85がホース収納部48の底部に対して傾斜角θとなるように配置され、傾斜板82上に傾斜重ね巻きされる消火用ホース62は、ホース収納部48の底部に対して平行な面となる下側平面部86及び上側平面部88上に載置されて傾斜重ね巻きされることになる。
【0108】
ここで、傾斜面上に重ね巻きする図5の傾斜重ね巻きでは、傾斜板82の傾斜面と第3筐体11cの前側内壁で形成される空間に1ターン目の消火用ホース62が入り込むことで消火用ホース62が収納されるため、ホースを引き出す際の抵抗が大きくなるが、下側平面部86及び上側平面部88上に載置される図6の傾斜重ね巻きでは、下側平面部86が形成されたことで、傾斜板82の傾斜面と第3筐体11cの前側内壁で形成される空間が図5の傾斜重ね巻きよりも大きく、図5の傾斜重ね巻きよりもホースを引き出す際の抵抗を低減可能とする。
【0109】
また、下側平面部86及び上側平面部88上に載置されて傾斜重ね巻きされるため、傾斜面上に重ね巻きした場合よりも重ね巻きした消火用ホース62が崩れにくく、また、自重により発生する斜め下向きに掛かる力も低減され、ホースの引き出す際に必要な引出力を低減可能とする。
【0110】
また、支柱84の他の実施形態として、図6(B)に示すように、支柱84の先端に前面側に屈曲させた屈曲部8410を形成するようにしても良い。支柱84の先端に屈曲部8410が形成されていることで、消火用ホース62を巻き戻す最中の支柱84と第3筐体11cの後面との間に消火用ホース62を通す際に、支柱84と第3筐体11cの後面との間のスペースに屈曲部8410が消火用ホース62を案内するため、消火用ホース62の巻き戻し作業を容易とすることができる。
【0111】
(e5.消火栓扉の開閉機構)
続いて、消火栓扉の扉開閉機構について説明する。当該説明にあっては、図1の消火栓装置を、消火栓扉を開いた状態で正面(前面)から示した図7、及び消火栓扉の扉開閉機構を消火栓装置の右側面から見た断面で示した図8を参照する。尚、図8(A)は消火栓扉が閉鎖した状態(閉鎖位置)を示し、図8(B)は消火栓扉が180°開放した状態(開放位置)を示し、図8(C)はホース巻き戻し作業の際の消火栓扉を監視員通路の路面に対して概ね平行に保持した状態を示す。
【0112】
道路利用者が消火栓を使用して消火活動を行う際に、消火栓扉14の扉開閉ハンドル1410を操作してロックを解除すると、図7に示すように、消火栓扉14は下端のヒンジ14aを軸として下向きに開放され、第1筐体11a内に配置された放水用ノズル66、消火栓弁開閉レバー70、給水栓50及びポンプ起動スイッチ75が操作可能となる。また、消火栓扉14の裏面には、消火栓扉14を監視員通路34の路面に対して概ね平行に開いた状態に保持するためのステー112が、左右両側に位置する上下方向に起立されたフレーム64の略中央に配置されたピン114に対応して、図7のように開放された消火栓扉14の上端側を軸に回動自在に配置されている。
【0113】
図8(A)に示すように、消火栓扉14の扉開閉機構90は、軸となるヒンジ14aにより消火栓扉14を開閉自在に第1筐体11aの扉開口の下側に軸支しており、更に緩衝装置として機能するダンパー96を備えている。ダンパー96は、シリンダ側となる一端が固定側軸部98により筐体内のフレーム64等に固定され、ロッド側となる他端が軸部92により消火栓扉14の下端部内側に設けられたダンパー取付部94に軸支されている。また、ダンパー取付部94は、消火栓扉14を滑らかに180°回転させて開放させるために、消火栓扉14の閉鎖時に後側(筐体内部側)が前側よりも上方に位置するように所定の角度で傾けて設けられ、消火栓扉14の開放に際しダンパー96により下向きの力が働くようになっている。
【0114】
道路利用者が消火栓扉14を開放するために扉開閉ハンドル1410を手前に引いてロックを外すと、図8(B)に示すように、消火栓扉14は、ヒンジ14aを軸として下向きに180°回転して第3筐体11cの前面に相対する位置まで開き、監視員通路34の路面に対して垂直に位置する。尚、「垂直」とは、厳密に監視員通路の路面に対して垂直であることを限定するものではなく、監視員通路の路面に対して略垂直であるものを含む。
【0115】
また、消火栓を使用した後に復旧作業員が外部に引き出された消火用ホース62を水抜きして第3筐体11cのホース収納部48に消火用ホース62を巻き戻す場合には、図7(C)に示すように、消火栓扉14の裏面に配置されているステー112を第1筐体11a内のフレーム64に配置しているピン114に係止することで、消火栓扉14を監視員通路34の路面に対して概ね平行状態に開いた状態に維持することを可能としている。これにより、第1筐体11aの消火栓扉14の開放状態が、第3筐体11cのホース収納扉30の開放を妨げない。
【0116】
(e6.操作対象の設置高さ)
次に、操作対象の設置高さについて説明する。図3及び図7に示すように、消火栓装置10は、監視員通路の路面から消火栓装置10に配置された発信機や放水用ノズル等を含む全ての操作対象までの高さが下限高さH1の800mmから上限高さH2の1500mmの間の適正操作範囲Hwに位置するように設置される必要があり、実施形態では、前述したように、監視員通路34の路面から第1筐体11aと第2筐体11bの底面(筐体底面)までの高さは下限高さH1と同じ800mmとし、第1筐体11及び第2筐体11bの高さ幅(縦幅)は適正操作範囲の高さ幅Hwと同じ700mmとしている。
【0117】
第1筐体11aの操作対象としては、図1に示した消火栓扉14の扉開閉ハンドル1410及び図7に示した消火栓扉14の開放で外部に露出する放水用ノズル66、消火栓弁開閉レバー70、給水栓50(操作ハンドルとホース接続口)及びポンプ起動スイッチ75が該当する。
【0118】
また、第2筐体11bの操作対象としては、電装扉18の発信機24と電話ジャック26、消火器扉16の扉開閉ハンドル1610、及び消火器19の上部の操作部となるハンドルレバーが該当する。
【0119】
実施形態の消火栓装置10にあっては、前述した操作対象の全てが、下限高さH1と上限高さH2との間の適正操作範囲に含まれており、監視員通路34の路面に立った道路利用者、消防隊員及び復旧作業員にとって、操作対象の全てが操作し易い位置(高さ)となっている。
【0120】
(e7.消火用ホースの巻戻し作業)
次に、消火栓の使用後に行う消火用ホースの巻戻し作業について説明する。当該説明にあっては、図1の消火栓装置を、消火栓扉を監視員通路の路面に対して概ね平行に保持した状態で開くと共に、ホース収納扉を開いた状態で正面(前面)から示した図9を参照する。
【0121】
道路利用者が消火栓扉14を開放して放水用ノズル66を取り出し、消火用ホース62を引き出して消火活動を終了した後の復旧作業として、復旧作業員は使用した消火用ホース62を水抜きした後に第3筐体11cのホース収納部48に消火用ホース62を巻き戻す作業を行う。
【0122】
具体的には、まず、図8(C)に示したように、消火栓扉14をステー112により監視員通路14の路面に対して概ね平行に開いた状態で保持すると共に、図9に示すように、ホース収納扉30の操作ハンドル3010を操作してロックを解除し、ホース収納扉30を下向きに開いた状態とする。続いて、消火栓扉14により開放された扉開口から外部に引き出されている消火用ホース62の先端に装着された放水用ノズル66を取り外して水抜きを行い、ホース収納扉30により開放された扉開口30bから水抜きが終了した消火用ホース62にアクセスして、消火栓扉14により開放された扉開口から外部に引き出されている消火用ホース62を、第3筐体11c側に引き込みながらホース収納扉30の扉開口30bを介して第3筐体11cの外側へ全て引き出した状態とする。この状態とした後に、第3筐体11cの扉開口30bを介して第3筐体11cのホース収納部48に消火用ホース62を巻き戻す作業を行い、消火用ホース62の巻き戻す作業が終了したら、消火用ホース62の先端を第3筐体のホース引出開口42b及び第1筐体11aのホース引出開口42aに通して第1筐体11aの内部からホース取出口65から引き出し、消火用ホース62の先端に放水用ノズル66を装着してノズルホルダー66に放水用ノズル66を保持することで、復旧作業を終了する。
【0123】
消火用ホース62の巻き戻し作業にあっては、図5(A)、(B)に示すように、筐体内部の奥行側に起立された複数の支柱84と筐体の後面との間を通すように消火用ホース62が重ね巻きされるため、ホース収納部48の横幅(左右方向の幅)が長くとも、複数の支柱84により傾斜重ね巻きした状態が崩れることなく、傾斜板82上に消火用ホース62を簡単且つ容易に巻き戻すことを可能とする。尚、消火用ホース62の水抜きを行ってから、ホース収納扉30の扉開口30bを介して第3筐体11cの外側へ引き出しているが、ホース収納扉30の扉開口30bを介して第3筐体11cの外側へ消火用ホース62の先端を引き出した後に消火用ホース62の水抜きを行うようにしても良い。これにより、消火用ホース62を配管54よりも低い位置とすることができるので排水が容易かつ残水を少なくすることができる。
【0124】
[g.本発明の変形例]
本発明による消火栓装置の変形例について説明する。本発明の消火栓装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0125】
(ホース収納部)
上記の実施形態は、トンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路上に、トンネル壁面に近接又は当接して設置される薄型化された消火栓装置を例にとっているが、傾斜重ね巻きに消火用ホースを収納するホース収納部を備えた消火栓装置であれば適用することができ、消火栓装置の設置場所や設置形態は上記の実施形態に限らず任意である。
【0126】
(壁掛け構造により設置された消火栓装置)
上記の実施形態は、監視員通路の路面上の所定の高さに、左右方向で連結した第1筐体と第2筐体を、ホース収納部を備えた第3筐体により取付固定する据置き構造により設置された消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に左右方向で連結した第1筐体と第2筐体を取付固定する壁掛け構造により設置された消火栓装置についても、第1筐体と第2筐体と監視員通路の路面との間に、ホース収納部を備えた第3筐体を配置した構造としてもよい。この場合、第3筐体は、壁掛け構造としてもよいし、据置き構造としてもよく、また、第1筐体と第2筐体に対し第3筐体は連結配置してもよいし、分離配置してもよい。
【0127】
(消火栓装置の筐体)
上記の実施形態は、第2筐体に電装機器と消火器が設けられているが、これに限定されず、第2筐体を電装機器を収納する筐体と消火器を収納する筐体に分割してもよい。即ち、消火栓機器を収納する第1筐体、電装機器を収納する第2筐体、消火器を収納する第3筐体に分割し、左右方向で連結固定した第1乃至第3筐体を、ホース収納部を備えた第4筐体で監視員通路の路面上の所定高さに取付固定する据置き構造としてもよい。
【0128】
(ノズルホルダー)
上記の実施形態は、放水ノズルを着脱自在に保持するノズルホルダーは、第1筐体の前面側のフレームに配置されているが、これに限定されず、消火栓扉の裏面側に配置するようにしてもよい。
【0129】
(消火栓弁開閉操作部)
上記の実施形態は、消火栓弁開閉操作部を構成する消火栓弁開閉レバーを備えた操作ボックスは、第1筐体の前面側のフレームに配置されているが、これに限定されず、消火栓扉の裏面側に配置するようにしてもよい。
【0130】
(消火用ホースの巻き戻し)
上記の実施形態では、下端のヒンジ14aを軸に監視員通路34の路面に対して垂直回り(下向き)に開く消火栓扉14をホース巻き戻し作業の際にはステー112により監視員通路34の路面に対して概ね平行に開いた状態に保持し、消火栓扉14により妨げることなくホース収納扉30を開放可能としているが、消火栓扉14及びホース収納扉30の両方を開放する構造は、これに限定されず、消火栓扉14を上端のヒンジを軸に監視員通路34の路面に対して垂直回り(上向き)に開く消火栓扉14として、上向きに開く消火栓扉14を開放するために消火栓扉14の扉開閉ハンドル1410を操作してロックを解除した場合には、ガススプリング等により消火栓扉14を上向きに回動して開放させる構造とする。このため、消火用ホース62を巻き戻す作業を行う場合に、消火栓扉14をステー112等によりホース収納扉30の開放を妨げない所定の位置に保持させる必要がなくなる。
【0131】
また、消火栓扉14を上向きに開く扉とする以外にも、消火栓扉14に子扉を設ける構造としても良い。子扉は、第1筐体11a内部のホース取出口65の位置に対応させた上で、消火栓扉14の、例えば中央上側の位置に配置され、下端側を軸に監視員通路34の路面に対して垂直回り(下向き)に開く扉とし、子扉により開放される扉開口は消火栓扉14の上端側に開放された構造とする。このため、消火用ホース62を巻き戻す場合に、子扉を開放して子扉の扉開口から消火用ホース62を外部へ引き出した状態として消火栓扉14を閉じることができ、消火栓扉14をステー112等によりホース収納扉30の開放を妨げない所定の位置に保持させる必要がなく、子扉とホース収納扉30を開放した状態で消火用ホース62を巻き戻す作業を行うこととなる。
【0132】
また、消火用ホース62を巻き戻すための他の作業方法として、まず、第1筐体11aのホース継手60から消火用ホース62を取り外して、消火栓扉14により開放された扉開口から消火用ホース62を全て外部に引き出す。続いて、第3筐体11cのホース収納扉30を開放して、消火用ホース62の後端(ホース継手60に接続されていた端部)を扉開口30bから入れて、第3筐体のホース引出開口42b及び第1筐体11aのホース引出開口42aを通して第1筐体11aのホース継手60に接続し、この状態で同様に第3筐体11cの扉開口30bを介して消火用ホース62を巻き戻す作業を行うようにしてもよい。
【0133】
(第3筐体の内部空間)
上記の実施形態では、第3筐体の内部を、引込配管37を配置する空間とホース収納部48として利用しているが、第3筐体の内部を更に分割してその他の用途のために使用する空間を別途形成しても良く、例えば消火栓装置やトンネル内設備の管理に必要な備品の保管を可能とする備品保管部等を別途形成するようにしても良い。
【0134】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、さらに上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0135】
10:消火栓装置
11a:第1筐体
11b:第2筐体
11c:第3筐体
12a,12b,12c:化粧枠
14:消火栓扉
1410,1610,3010:扉開閉ハンドル
15:保守扉
16:消火器扉
17:覗き窓
18:電装扉
19:消火器
20:補助扉
22:赤色表示灯
24:発信機
26:電話ジャック
28:応答ランプ
30:ホース収納扉
32:架台
34:監視員通路
35:トンネル壁面
36:給水配管
37:引込み配管
38:道路
40:給水本管
42a,42b:ホース引出開口
43a,43b,43c:配管通し穴
44a,44b:通線開口
45:隔壁
45a:電装機器収納部
45b:消火器収納部
46:バルブ類収納部
48:ホース収納部
50:給水栓
52:分岐配管
54:配管
56:消火栓弁
58:自動調圧弁
60:ホース継手
62:消火用ホース
64:フレーム
65;ホース取出口
66:放水用ノズル
67:ノズルホルダー
68:操作ボックス
70:消火栓弁開閉レバー
72:連動ボックス
74:ポンプ起動連動スイッチ
75:ポンプ起動スイッチ
76:ホースフレーム
77:仕切板
82:傾斜板
84:支柱
85:傾斜面部
86:下側平面部
88:上側平面部
90:扉開閉機構
92:ダンパー取付部
94:軸部
96:ダンパー
98:固定側軸部
112:ステー
114:ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9