(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156265
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】走行規制装置
(51)【国際特許分類】
B61K 7/18 20060101AFI20241029BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B61K7/18
B65G1/04 537Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070587
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】川島 智彦
(72)【発明者】
【氏名】島津 正樹
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022JJ07
3F022JJ11
3F022LL12
3F022MM61
3F022NN02
(57)【要約】
【課題】搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても迅速に搬送車を緊急停止させることが可能な走行規制装置が望まれる。
【解決手段】走行レール20と、走行レールの走行面21上を転動する車輪11、車輪11の駆動装置、及び、駆動装置を緊急停止させるバンパー14を備えて、走行レール20に沿って走行する搬送車と、を備えた搬送設備において、搬送車の走行を規制するための走行規制装置1であって、走行面21に載置される載置部4と、走行面21よりも上側に立設された立設部3と、を備え、立設部3は、載置部4が走行面21に載置された状態でバンパー14に対して走行方向離間側X2から対向する位置に配置される対向部5を備え、載置部4は、対向部5にバンパー14が当接した状態で車輪11の下敷きになるような対向部5との位置関係である下敷き部41を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールと、前記走行レールの走行面上を転動する車輪、前記車輪の駆動装置、及び、障害物との衝突により前記駆動装置を緊急停止させるバンパーを備えて、前記走行レールに沿って走行する搬送車と、を備えた搬送設備において、前記搬送車の走行を規制するための走行規制装置であって、
前記走行面に載置される載置部と、前記載置部に固定され、前記走行面よりも上側に立設された立設部と、を備え、
前記走行レールに沿う方向を走行方向とし、前記走行方向における前記車輪から離れる側を走行方向離間側とし、前記走行方向における前記車輪に近づく側を走行方向接近側として、
前記立設部は、前記載置部が前記走行面に載置された状態で前記バンパーに対して前記走行方向離間側から対向する位置に配置される対向部を備え、
前記載置部は、前記対向部に前記バンパーが当接した状態で前記車輪の下敷きになるような前記対向部との位置関係である下敷き部を備えている、走行規制装置。
【請求項2】
前記下敷き部が前記車輪の下敷きになっておらず、且つ、前記下敷き部における前記走行方向接近側の先端部が前記車輪の外周面に接している状態で、前記対向部における前記バンパーに対向する対向面と前記バンパーとが接触し、又は、前記対向面と前記バンパーとが隙間を有して対向するように、前記対向面と前記下敷き部における前記走行方向接近側の前記先端部との前記走行方向の距離が設定されている、請求項1に記載の走行規制装置。
【請求項3】
前記対向部における前記バンパーに対向する対向面と前記下敷き部における前記走行方向接近側の先端部との前記走行方向の距離が、前記バンパーにおける前記走行方向離間側の端部と前記車輪の軸心との距離以下である、請求項1に記載の走行規制装置。
【請求項4】
前記対向部は、前記載置部に固定された固定対向部材と、前記固定対向部材よりも前記走行方向接近側に配置されていると共に、前記載置部に対して着脱自在となるように取り付けられた着脱対向部材と、を備え、
前記着脱対向部材は、前記バンパーに対して前記走行方向離間側から対向する対向面を備え、
前記固定対向部材は、前記着脱対向部材が取り外された状態で前記バンパーに対して前記走行方向離間側から対向する補助対向面を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の走行規制装置。
【請求項5】
上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、
前記着脱対向部材の前記幅方向の寸法は、前記走行レールの前記幅方向の寸法よりも大きい、請求項4に記載の走行規制装置。
【請求項6】
上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、
前記載置部は、前記走行レールに対して前記幅方向の両外側に配置される一対のガイド部を備え、
一対の前記ガイド部のそれぞれは、前記走行レールの側面に対向するガイド面を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の走行規制装置。
【請求項7】
前記下敷き部は、前記走行面に沿う板状に形成された板状部と、前記板状部に対して前記走行方向接近側に配置され、前記走行方向接近側に向かうに従って下側へ向かう上面を有するテーパ状部と、を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の走行規制装置。
【請求項8】
前記対向部は、前記走行方向離間側に向かうに従って上側へ向かうように傾斜した上面である傾斜上面を備え、
前記傾斜上面における前記走行方向接近側の端部は、前記搬送車における前記車輪を支持する車輪支持部材の前記走行方向離間側の下端部よりも下側に配置され、
前記傾斜上面における前記走行方向離間側の端部は、前記車輪支持部材の前記下端部よりも上側に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の走行規制装置。
【請求項9】
前記搬送車の走行を許容する上限の距離を許容走行距離として、
前記載置部の上面に、前記バンパーに対する前記載置部の設置位置の基準を示す基準マークが設けられ、
前記基準マークは、前記対向部における前記バンパーに対向する対向面から前記許容走行距離だけ離れた位置に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の走行規制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行規制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、国際公開2014/129066号(特許文献1)には、自動倉庫に関する技術が開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1の自動倉庫では、物品を搬送する搬送装置として、搬送車(スタッカークレーン2)が用いられている。この搬送車は、下部レール(12)を走行する下部台車(4)と、上部レール(14)を走行する上部台車(6)と、下部台車(4)に固定されて、下部台車(4)と上部台車(6)とを接続するマスト(8)と、マスト(8)に設けられた移載装置(10)とを備えている。下部台車(4)は、車輪(駆動輪22)と、車輪から離れた位置にある支持部(28)とを備えている。また、下部台車(4)には変位機構が設けられている。変位機構は、支持部(28)を、下部レール(12)に支持される接地位置と、下部レール(12)から上方へ浮いた退避位置との間で昇降させる。そして、搬送車を運用する場合には、支持部(28)を退避位置へ上昇させる。また、搬送車を下部レール(12)及び上部レール(14)に据え付ける場合や、搬送車を停止させてメンテナンスを行う場合には、支持部(28)を接地位置に下降させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動倉庫では、支持部(28)を接地位置に下降させることで、下部台車(4)及びマスト(8)の姿勢を安定させることができる。従って、搬送車をレールに据え付ける作業や、搬送車に対するメンテナンス作業が行い易くなる。一方、作業者がこのような作業中に、搬送車を移動させなければならない場合もあるが、搬送車の移動中に、当該搬送車が意図せずに走行を開始してしまう事態が発生し得る。そのような場合には、作業者の安全を確保する観点や設備の破損等を回避する観点から、搬送車を直ちに停止させる必要があるが、特許文献1にはこの点について言及されていない。
【0006】
そこで、搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても迅速に搬送車を緊急停止させることが可能な走行規制装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る走行規制装置は、走行レールと、前記走行レールの走行面上を転動する車輪、前記車輪の駆動装置、及び、障害物との衝突により前記駆動装置を緊急停止させるバンパーを備えて、前記走行レールに沿って走行する搬送車と、を備えた搬送設備において、前記搬送車の走行を規制するための走行規制装置であって、
前記走行面に載置される載置部と、前記載置部に固定され、前記走行面よりも上側に立設された立設部と、を備え、
前記走行レールに沿う方向を走行方向とし、前記走行方向における前記車輪から離れる側を走行方向離間側とし、前記走行方向における前記車輪に近づく側を走行方向接近側として、
前記立設部は、前記載置部が前記走行面に載置された状態で前記バンパーに対して前記走行方向離間側から対向する位置に配置される対向部を備え、
前記載置部は、前記対向部に前記バンパーが当接した状態で前記車輪の下敷きになるような前記対向部との位置関係である下敷き部を備えている。
【0008】
本構成によれば、搬送車を停止させた状態で、例えば搬送車の周辺において作業者等による作業を行う場合に、載置部を走行面に載置するように走行規制装置を設置することで、搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても直ぐに搬送車を停止させることができる。すなわち、搬送車が走行してバンパーが対向部に当接した状態では、載置部の下敷き部が車輪の下敷きになっている。そして、対向部は載置部に固定されているため、対向部が搬送車に押されて移動することがなく、対向部によりバンパーを押さえることができる。従って、搬送車の駆動装置を確実に緊急停止させることができる。
このように、本構成によれば、搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても迅速に搬送車を緊急停止させることができる。
【0009】
走行規制装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】走行規制装置、車輪、バンパー、及び車輪支持部材の配置を模式的に示す側面図
【
図6】走行規制装置、車輪、バンパー、及び車輪支持部材の配置を模式的に示す側面図
【
図7】走行規制装置、車輪、バンパー、及び車輪支持部材の配置を模式的に示す側面図
【
図8】走行規制装置、車輪、バンパー、及び車輪支持部材の配置を模式的に示す側面図
【
図9】別実施形態における立設部を模式的に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、走行規制装置の実施形態について、搬送装置に用いた例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1から
図4に示すように、搬送設備9は、走行レール20と、走行レール20に沿って走行する搬送車10と、を備えている。本実施形態では、搬送設備9は、物品を搬送するように構成されている。具体的には、搬送車10は、物品を搬送する物品搬送車とされており、走行レール20に沿って走行することで、所定の搬送先に物品を搬送する。搬送設備9は、例えば、複数の物品を収容する収容棚を備えた自動倉庫の内部に設けられて、収容棚の内部と外部との間で物品の出し入れを行うことが挙げられる。
【0013】
図3及び
図4に示すように、搬送車10は、走行レール20の走行面21上を転動する車輪11、車輪11の駆動装置12、及び、障害物との衝突により駆動装置12を緊急停止させる第1バンパー14を備えている。本実施形態では、搬送車10は、複数の車輪11と、複数の車輪11のそれぞれに対応するように、複数の第1バンパー14を備えている。
図3の例では、車輪11の数と第1バンパー14の数とは、同数とされている。なお、第1バンパー14が「バンパー」に相当する。
【0014】
以下では、
図1及び
図5から
図8に示すように、走行レール20に沿う方向を走行方向Xとし、走行方向Xにおける車輪11から離れる側を走行方向離間側X2とし、走行方向Xにおける車輪11に近づく側を走行方向接近側X1として説明する。また、
図1から
図3に示すように、上下方向視で走行方向Xに直交する方向を幅方向Yとして説明する。
【0015】
本例では、
図3に示すように、1対の走行レール20が幅方向Yに分かれて設けられている。そして、搬送車10は、1対の走行レール20に案内されて走行方向Xに走行するように構成されている。本例では、搬送車10は、1対の走行レール20に案内されて移動する走行台車部17と、移載装置28(
図4)と、昇降部27(
図4)と、第2バンパー18と、制御部H(
図4)とを更に備えている。走行台車部17には、複数の車輪11が取り付けられていると共に、これらの車輪11を駆動する駆動装置12や制御部H(
図4)が設けられている。また、走行台車部17には、第2バンパー18が設けられている。
図3の例では、2対の車輪11が、走行方向Xに分かれて配置されている。そして、2対の車輪11のそれぞれは、1対の走行レール20に対応するように、幅方向Yに分かれて配置されている。要するに、1つの走行レール20の走行面21を、走行方向Xに分かれて配置された2つの車輪11が転動するように構成されている。ここでは、複数の車輪11のそれぞれは、車輪支持部材71を介して走行台車部17に取り付けられている。また、
図3の例では、1対の走行レール20のそれぞれに対応した複数の案内輪24が走行台車部17に設けられている。複数の案内輪24は、走行レール20を幅方向Yに挟むように1組ずつ配置されている。
【0016】
駆動装置12は、走行用モータM(電動モータ)と、走行用モータMの駆動力を車輪11に伝達する伝達機構19とを備えている。
図3の例では、走行用モータM及び伝達機構19は、走行方向Xに離間する2対の車輪11のそれぞれに対応するように配置されている。そして、駆動装置12の駆動により、複数の車輪11が走行レール20の走行面21を転動すると共に、複数の案内輪24が上下方向に沿う軸心周りに回転することで、走行台車部17は、走行方向Xに沿って移動する。
【0017】
移載装置28は、搬送中の物品を保持すると共に、移載対象箇所との間で物品の移載動作を行うように構成されている。移載装置28は、物品を載置して保持すると共に、物品を幅方向Yに出し入れすることで移載対象箇所に対して物品を移載する。本例では、移載装置28は、コンベヤ式とされているが、スライドフォーク式等であってもよい。ここでは、移載装置28は、昇降部27に設けられている。本例では、搬送車10はスタッカークレーンとされている。そのため、走行台車部17には、不図示のマストが上下方向に沿って設けられている。昇降部27は、マストに沿って昇降可能に構成されている。
【0018】
なお、搬送車10は、スタッカークレーンに限られず、物品を載置して搬送する搬送台車(いわゆるシャトル台車)とされていてもよい。その場合には、移載装置28は、走行台車部17に設けることもできる。また、搬送車10は、幅方向Yに走行して物品を搬送する子台車を載置可能な親台車とされていてもよいし、天井から吊り下げ支持されたレールに案内されて走行する天井搬送車とされていてもよい。
【0019】
車輪支持部材71は、
図3に示すように、走行台車部17に設けられていると共に、車輪11を幅方向Yに沿う軸心P周りに回転可能に支持している。ここでは、車輪支持部材71は、車輪11の走行方向Xの両外側及び幅方向Yの外側(走行台車部17が配置されていない側)を覆うように形成されている。本例では、車輪支持部材71の下端部74は、車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72とされている。当然ながら、車輪支持部材71の下端部74は、車輪11の下端よりも上側になるように設定されている。なお、
図5から
図8の例では、車輪支持部材71は、円形状に形成されているが、これには限定されない。
【0020】
図3に示すように、第1バンパー14は、複数の車輪11のそれぞれに対応して複数配置されている。また、第1バンパー14は、車輪11及び車輪支持部材71に対して走行方向離間側X2に配置されている。本例では、第1バンパー14は、バンパー支持部材76を介して車輪支持部材71に固定されている。
図3の例では、2対の車輪11に対応して、全部で4つの第1バンパー14が配置されている。第1バンパー14は、上下方向視で、搬送車10を構成する要素のうち、少なくとも走行台車部17、車輪11、車輪支持部材71に対して、走行方向Xに突出するように配置されている。そして、搬送車10の走行方向前方の走行レール20上に障害物等の物体が置かれている場合には、原則的には、第1バンパー14が当該物体と接触するように構成されている。
【0021】
本実施形態では、搬送車10は、スイッチ部7を更に備えている。スイッチ部7は、例えば、搬送車10の走行方向前方の走行レール20上にある障害物等が第1バンパー14に当たった場合にオンされるように構成されている。スイッチ部7がオフ状態からオン状態に切り換わることで、駆動装置12に対する電力供給が遮断され、搬送車10は停止する。本例では、第1バンパー14はスイッチ機能を有している。すなわち、第1バンパー14自体が、スイッチ部7とされている。具体的には、搬送車10の走行中に、第1バンパー14の先端が他の物体に接触して内側(走行方向接近側X1)に押し込まれると、搬送車10は停止する。このように、第1バンパー14がスイッチ機能を有するため、搬送車10が走行レール20上の物体と衝突してしまった場合に、その衝撃から車輪11、車輪支持部材71、及び走行台車部17等を保護する本来の機能に加えて、搬送車10を緊急停止させる機能を果たす。なお、スイッチ部7を、第1バンパー14とは別に設けることもできる。例えば、スイッチ部7を、走行台車部17や車輪支持部材71等に設けるようにしてもよい。
【0022】
第2バンパー18は、
図3に示すように、走行台車部17の走行方向Xの両外側にそれぞれ配置されている。また、第2バンパー18は、1対の走行レール20に挟まれるように配置されている。
図3の例では、2つの第2バンパー18のそれぞれは、幅方向Yに分かれて配置された1対の第1バンパー14の間に配置されている。また、第2バンパー18は、1対の第1バンパー14と、走行方向Xの位置が同じとされているが、走行方向Xに互いにずれた位置に配置されていてもよい。本例では、第2バンパー18は、搬送車10の走行方向前方の障害物等と衝突してしまった場合に、その衝撃から走行台車部17等を保護する機能を有しているが、第1バンパー14のように搬送車10を緊急停止させる機能を備えていない。しかし、第2バンパー18にも、搬送車10を緊急停止させる機能を備えてもよい。例えば、第2バンパー18にスイッチ機能を設けたり、走行方向前方の物体を検出するセンサー等を設けたりすることで、搬送車10を緊急停止させてもよい。
【0023】
制御部Hは、例えば、自動倉庫(不図示)の全体を制御する上位コントローラから指令情報を受信すると、当該指令情報に基づいて、昇降部27、移載装置28及び駆動装置12を制御する。また、制御部Hは、第1バンパー14がオフ状態からオン状態に切り換わると、駆動装置12への電力供給を遮断して、搬送車10を停止させる。制御部Hは、マイクロコンピュータ等のプロセッサを備えると共に、メモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、プロセッサ等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、上記のような機能が実現される。
【0024】
図1及び
図5から
図8に示すように、走行規制装置1は、搬送車10の走行を規制する。走行規制装置1は、走行レール20の走行面21に載置されることで、搬送車10が、走行規制装置1を越えて走行しないように構成されている。具体的には、走行規制装置1は、搬送車10の車輪11と向かい合うように、車輪11に対して走行方向離間側X2に配置される。例えば、作業者が、搬送車10(ここでは、スタッカークレーン)に対してメンテナンス作業を行う場合に、停止状態の搬送車10の車輪11に対応するように走行規制装置1を走行面21に載置することが挙げられる。本例では、搬送車10は、複数(ここでは、4つ)の車輪11を備えている。作業者は、複数の車輪11の全てに対応するように、複数の走行規制装置1を用いてもよく、複数の車輪11の一部に対応するように、1つ又は複数の走行規制装置1を用いてもよい。例えば、一対の走行レール20のうちの一方の走行レール20に配置される車輪11のみに対応するように、1つ又は複数の走行規制装置1を用いてもよい。ここで、走行規制装置1は、走行面21に載置される載置部4と、載置部4に固定され、走行面21よりも上側に立設された立設部3と、を備えている。本実施形態では、立設部3は、搬送車10が走行規制装置1に向けて走行した場合に、上述の第1バンパー14と当接するように構成されている。また、載置部4は、板状の部材とされており、搬送車10が走行規制装置1に向けて走行した場合に、車輪11が走行レール20から載置部4に乗り上げるように構成されている。以下では、走行規制装置1の具体的な構成について説明する。
【0025】
図1、
図2及び
図5に示すように、立設部3は、載置部4が走行面21に載置された状態で第1バンパー14に対して走行方向離間側X2から対向する位置に配置される対向部5を備えている。対向部5は、搬送車10が走行規制装置1に向けて走行した場合に、第1バンパー14と当接する。本実施形態では、対向部5の上下方向の寸法は、第1バンパー14の上下方向の位置に対応するように設定されている。本実施形態では、
図1、
図2、及び
図5に示すように、対向部5は、載置部4に固定された固定対向部材53と、固定対向部材53よりも走行方向接近側X1に配置されていると共に、載置部4に対して着脱自在となるように取り付けられた着脱対向部材55と、を備えている。本例では、固定対向部材53と着脱対向部材55との双方が、多角柱の部材とされている。そして、着脱対向部材55の走行方向離間側X2を向く面と固定対向部材53の走行方向接近側X1を向く面(後述の補助対向面52)とが当接した状態で、着脱対向部材55は固定対向部材53に対して取り付けられている。ここでは、着脱対向部材55は、締結部材62により固定対向部材53に固定されている。より詳細には、
図2に示すように、固定対向部材53の背面(ここでは、走行方向離間側X2を向く面)に挿入孔64が形成されている。そして、挿入孔64に締結部材62を挿入して緊締することで、着脱対向部材55が固定対向部材53に固定される。また、その逆の手順を行うことで、着脱対向部材55を固定対向部材53から取り外すことができる。このように着脱対向部材55は、載置部4に固定されず、固定対向部材53のみに固定される。なお、着脱対向部材55は、締結部材62以外の手段で固定対向部材53に取り付けられていてもよい。また、着脱対向部材55は、走行規制装置1における固定対向部材53以外の部分(例えば、載置部4)に固定されてもよい。
【0026】
図1及び
図5から
図8に示すように、着脱対向部材55は、第1バンパー14に対して走行方向離間側X2から対向する対向面51を備えている。対向面51は、着脱対向部材55における走行方向接近側X1を向く面とされている。
図5の例では、対向面51は、着脱対向部材55の最も走行方向接近側X1に形成された面であり、上下方向及び幅方向Yに沿うように形成されている。本実施形態では、対向面51は、第1バンパー14の上下方向の位置に対応するように配置されている。ここでは、対向面51は、搬送車10が走行規制装置1に向けて走行した場合に、第1バンパー14の走行方向離間側X2の端部16が、対向面51の上下方向の中央部分に当接するように配置されている。
【0027】
図1及び
図5から
図8に示すように、対向部5は、走行方向離間側X2に向かうに従って上側へ向かうように傾斜した上面である傾斜上面57を備えている。本例では、傾斜上面57は、着脱対向部材55に形成されている。また、傾斜上面57は、対向面51の上端から連続するように形成されている。ここでは、傾斜上面57は、対向面51の上端から走行方向離間側X2に向かうに従って上側へ向うように傾斜した面とされている。
図5の例では、傾斜上面57の上端(走行方向離間側X2の端部59)からは、着脱対向部材55の水平面に沿う上面が連続して形成されている。本実施形態では、
図5に示すように、傾斜上面57における走行方向接近側X1の端部58は、搬送車10における車輪11を支持する車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72よりも下側に配置されている。また、傾斜上面57における走行方向離間側X2の端部59は、車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72よりも上側に配置される。すなわち、車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72の上下方向の位置が、傾斜上面57の上下方向の範囲内に含まれるように、傾斜上面57の上下方向の位置が設定されている。更に、本実施形態では、車輪11が走行面21から載置部4の上面43に乗り上げた状態で、車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72の上下方向の位置が、傾斜上面57の上下方向の範囲内に含まれるように、傾斜上面57の上下方向の位置が設定されている。このように、傾斜上面57における走行方向接近側X1の端部58は、車輪11が走行面21上に配置されている状態と載置部4の上面43上に配置されている状態との双方において、車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72よりも下側に配置されており、傾斜上面57における走行方向離間側X2の端部59は、車輪11が走行面21上に配置されている状態と載置部4の上面43上に配置されている状態との双方において、車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72よりも上側に配置されている。
【0028】
また、
図5の例では、対向面51の下端から走行方向離間側X2に向かうに従って下側へ向うように傾斜した傾斜面が形成されている。この傾斜面の下端からは、着脱対向部材55の底面が連続して形成されている。図示の例では、着脱対向部材55は、多角柱(具体的には6角柱)の部材とされているが、これには限定されない。着脱対向部材55は、板状部材であってもよいし、丸みを帯びた部材であってもよい。また、対向面51は、上下方向及び幅方向Yに沿う面に限定されず、第1バンパー14の形状に沿うように、例えば、丸みを帯びた面として形成されていてもよい。
【0029】
図2に示すように、本実施形態では、着脱対向部材55の幅方向Yの寸法84は、走行レール20の幅方向Yの寸法85よりも大きい。また、本例では、着脱対向部材55の幅方向Yの寸法84は、固定対向部材53の幅方向Yの寸法87よりも大きい。これにより、着脱対向部材55は、走行方向X視で、走行レール20及び固定対向部材53に対して幅方向Yの両側に突出するように配置される。なお、図示の例では、固定対向部材53の幅方向Yの寸法87は、走行レール20の幅方向Yの寸法85よりも小さいが、これには限定されない。
【0030】
図5から
図8に示すように、固定対向部材53は、着脱対向部材55が取り外された状態で第1バンパー14に対して走行方向離間側X2から対向する補助対向面52を備える。本例では、補助対向面52は、固定対向部材53の走行方向接近側X1を向く面とされており、上下方向及び幅方向Yに沿うように形成されている。
図7に示すように、着脱対向部材55が無い状態では、搬送車10が走行規制装置1に向けて走行した場合に、補助対向面52は、第1バンパー14に当接する。本実施形態では、補助対向面52は、第1バンパー14の上下方向の位置に対応するように配置されている。補助対向面52は、搬送車10が走行規制装置1に向けて走行した場合に、第1バンパー14の走行方向離間側X2の端部16が、補助対向面52の上下方向の中央部分に当接するように配置されている。図示の例では、固定対向部材53は多角柱の部材とされている。より詳細には、固定対向部材53は四角柱の部材とされている。なお、固定対向部材53は、板状部材であってもよいし、丸みを帯びた部材であってもよい。また、補助対向面52は、上下方向及び幅方向Yに沿う面に限定されず、第1バンパー14の形状に沿うように、例えば、丸みを帯びた面として形成されていてもよい。なお、固定対向部材53は、載置部4に対して、連結部材(不図示)を介して固定される。例えば、立設部3は、連結部材としてL字金具を備えており、L字金具及び締結部材等を介して、固定対向部材53が載置部4に固定される。また、固定対向部材53が、締結部材等で載置部4に直接固定されていてもよく、他の手段で固定されていてもよい。また、固定対向部材53と載置部4とが一体的に形成されていてもよい。以下では、載置部4の構成について具体的に説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態では、載置部4は、平板状の部材で形成されている。また、載置部4の幅方向Yの寸法は、走行レール20の走行面21及び車輪11の幅方向Yの寸法に応じて設定されている。
図1の例では、載置部4は、上下方向視で走行方向Xに長い矩形状に形成されている。また、載置部4の幅方向Yの寸法は、走行面21の幅方向Yの寸法と同じとされている。
図3の例では、車輪11の幅方向Yの寸法は、走行面21の幅方向Yの寸法と同じとされている。そのため、載置部4の幅方向Yの寸法は、車輪11の幅方向Yの寸法とも同じとされている。なお、載置部4は、くさび状等の他の形状とされていてもよい。また、本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、載置部4は、走行レール20に対して幅方向Yの両外側に配置される一対のガイド部44を備えている(CL6)。また、一対のガイド部44のそれぞれは、走行レール20の側面23に対向するガイド面45を備える。一対のガイド部44は、幅方向Yに分かれて載置部4に設けられている。本例では、一対のガイド部44のそれぞれは、ガイド支持部44aとブロック部44bとを備えている。走行規制装置1を走行レール20の走行面21に載置した状態では、一対のガイド支持部44aは、載置部4及び走行面21に対して幅方向Yの両外側に突出するように配置される。図示の例では、一対のガイド支持部44aは、載置部4と一体的に形成されている。また、ガイド支持部44aは、載置部4の幅方向Yの端部の一部の領域から幅方向Yの外側に延出している。ここで、ガイド支持部44aは、上方からブロック部44bを支持している。ブロック部44bは、載置部4よりも下側に配置されると共に、走行レール20の側面23に沿うように設けられている。そして、ガイド面45は、ブロック部44bの幅方向Yの内側(走行レール20を向く側)を向く面とされている。走行規制装置1が走行レール20の走行面21に載置された状態では、一対のガイド部44のそれぞれのガイド面45は、走行レール20の側面23に当接する。これにより、走行規制装置1が幅方向Yに移動することが規制される。従って、走行規制装置1を安定的に走行レール20に取り付けることができる。
【0032】
図1及び
図5から
図8に示すように、載置部4は、対向部5に第1バンパー14が当接した状態で車輪11の下敷きになるような対向部5との位置関係である下敷き部41を備えている。下敷き部41は、載置部4における、立設部3に対して走行方向接近側X1の領域とされている。本実施形態では、下敷き部41は、走行面21に沿う板状に形成された板状部46と、板状部46に対して走行方向接近側X1に配置され、走行方向接近側X1に向かうに従って下側へ向かう上面47aを有するテーパ状部47と、を備えている。本例では、板状部46及びテーパ状部47は、載置部4のその他の部分と一体的に形成されている。搬送車10が走行規制装置1に向けて走行すると、車輪11は、先ず、走行面21からテーパ状部47の上面47aに乗り移る。その後、車輪11は、テーパ状部47の上面47aから、板状部46の上面46aに乗り移る。なお、本例では、
図1及び
図5~
図8に示すように、下敷き部41は、載置部4における、立設部3に対して走行方向接近側X1の領域の全域とされているが、載置部4における、走行方向接近側X1の端部領域のみとされていてもよい。
【0033】
本実施形態では、下敷き部41が車輪11の下敷きになっておらず、且つ、下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42が車輪11の外周面15に接している状態で、対向部5における第1バンパー14に対向する対向面51と第1バンパー14とが接触し、又は、対向面51と第1バンパー14とが隙間81を有して対向するように、対向面51と下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42との走行方向Xの距離82が設定されている。
【0034】
図5に示すように、本例では、下敷き部41が車輪11の下敷きになっておらず、且つ、下敷き部41における走行方向接近側X1の先端部42が車輪11の外周面15に接している状態で、対向面51と第1バンパー14とが隙間81を有して対向するように、対向面51と下敷き部41における走行方向接近側X1の先端部42との走行方向Xの距離82が設定されている。ここでは、下敷き部41における走行方向接近側X1の先端部42は、テーパ状部47とされている。このように、車輪11が下敷き部41のテーパ状部47と接触しつつ、下敷き部41が車輪11の下敷きになっていない状態(車輪11の軸心Pの真下である、車輪11の下端が走行面21に直接支持されている状態)では、第1バンパー14は、着脱対向部材55の対向面51から隙間81を開けた位置に配置されている。従って、本例では、車輪11が隙間81分の距離を対向面51に向けて移動し(
図5の破線矢印)、下敷き部41に乗り上げて下敷き部41が車輪11の下敷きになった状態(
図5の2点鎖線)で、第1バンパー14と対向面51とが当接する。更に、車輪11が、第1バンパー14のスイッチがオフ状態からオン状態に切り換わるまでの規定の押し込み量分を移動することで、車輪11を駆動する駆動装置12に対する電力供給が遮断される。
【0035】
本例では、搬送車10の走行を許容する上限の距離を許容走行距離86として、上記の隙間81は、許容走行距離86以下に設定されている。ここでは、許容走行距離86は、対向面51と第1バンパー14との衝突により、走行規制装置1や搬送車10が破損しない距離を考慮して設定されている。つまり、搬送車10が停止状態から走行を開始して、許容走行距離86を超えて走行し、対向面51と第1バンパー14とが衝突すると、走行規制装置1や搬送車10が破損する虞がある。従って、そのような事態を回避するために、許容走行距離86が予め設定されている。作業者は、搬送車10のメンテナンスに際し、車輪11の外周面15をテーパ状部47の上面47aに接触させるように走行規制装置1を配置させることで、もしも搬送車10が意図しない走行を開始しても、搬送車10の走行を最小限に抑えつつ緊急停止させることができる。ここでは、車輪11が、許容走行距離86以下である隙間81分の距離と、第1バンパー14の規定の押し込み領分とを移動することで、走行規制装置1や搬送車10を破損することなく、最小限の移動量で、搬送車10を緊急停止させることができる。なお、
図5の例では、隙間81は、許容走行距離86よりも小さく設定されている。
【0036】
本実施形態では、
図1及び
図5から
図8に示すように、載置部4の上面43に、第1バンパー14に対する載置部4の設置位置の基準を示す基準マーク6が設けられている。そして、基準マーク6は、対向部5における第1バンパー14に対向する対向面51から許容走行距離86だけ離れた位置に配置されている。図示の例では、対向面51に対して走行方向接近側X1に、基準マーク6として、罫書き線が設けられている。具体的には、下敷き部41の板状部46の上面46aに、幅方向Yに沿う溝が形成されており、当該溝が、基準マーク6としての罫書き線とされている。
図6に示すように、作業者は、基準マーク6を第1バンパー14の走行方向離間側X2の端部に合わせるように、走行規制装置1を走行面21に載置することで、搬送車10を許容走行距離86の範囲内で移動させながらメンテナンス作業を行うことができる。すなわち、本例では、許容走行距離86は、メンテナンス作業の際に、作業者が搬送車10を移動させる距離も考慮して設定されている。
図6の例では、対向面51から許容走行距離86だけ離れた位置(基準マーク6の位置)を、第1バンパー14の走行方向離間側X2の端部に合わせるように、走行規制装置1を走行面21に配置した状態では、車輪11は下敷き部41に接触せずに、走行面21に直接支持されている。
【0037】
また、本実施形態では、対向部5における第1バンパー14に対向する対向面51と下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42との走行方向Xの距離82が、第1バンパー14における走行方向離間側X2の端部16と車輪11の軸心Pとの距離83以下である。本例では、
図5に示すように、対向面51と先端部42(ここでは、テーパ状部47)との走行方向Xの距離82は、第1バンパー14における走行方向離間側X2の端部16と車輪11の軸心Pとの距離83よりも小さく設定されている。
【0038】
図7の例では、メンテナンス等の作業中に、停止状態であった搬送車10が意図せず走行し、第1バンパー14と対向面51とが当接した状態と、着脱対向部材55を固定対向部材53から取り外す過程とを示している。
図7では、搬送車10は、第1バンパー14がオフ状態からオン状態に切り換わったことにより停止している。また、下敷き部41(ここでは、テーパ状部47)は、車輪11の下敷きになっている。そのため、走行規制装置1は、走行レール20に固定された状態になっている。また、着脱対向部材55には、第1バンパー14による走行方向Xの荷重が作用した状態になっている。このような場合には、締結部材62を取り外した後に、着脱対向部材55を下方から持ち上げるようにすることで、着脱対向部材55を固定対向部材53から取り外すことができる。
図1及び
図2に示すように、着脱対向部材55の両端部は、走行レール20の幅方向Yの両外側に配置されているため、例えば、工具等で着脱対向部材55の両端部を下方から押し上げることで、比較的容易に着脱対向部材55を固定対向部材53から取り外すことができる。特に、
図7において、搬送車10が故障等により作動しない場合に、有用である。また、
図7の例では、着脱対向部材55が固定対向部材53から取り外された後に、搬送車10が更に意図しない走行を開始した場合には、固定対向部材53の補助対向面52が、第1バンパー14に当接するように構成されている。これにより、もしも着脱対向部材55が外れた状態で搬送車10が意図しない走行を再開しても、第1バンパー14が補助対向面52に当接することで再度オン状態となり、搬送車10を停止させることができる。
【0039】
図8の例では、搬送車10が対向面51に向けて走行を開始し、第1バンパー14が対向部5(着脱対向部材55、固定対向部材53)を乗り越えた状態を示している。上記したとおり、車輪11が走行面21から載置部4の上面43に乗り上げた状態で、車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72の上下方向の位置が、傾斜上面57の上下方向の範囲内に含まれるように、傾斜上面57の上下方向の位置が設定されている。従って、第1バンパー14が対向部5を乗り越えるように搬送車10が走行した場合には、車輪支持部材71の走行方向離間側X2の下端部72が、傾斜上面57に当接すると共に、傾斜上面57に案内されて、対向部5の上面に乗り上げた状態になる。これにより、車輪支持部材71に支持されている車輪11も上昇し、車輪11の下端が、走行面21や載置部4の上面43に対して浮いた状態になる。従って、搬送車10が更に対向部5に対して走行方向離間側X2に走行することを阻止することができる。
【0040】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、走行台車部17は、1対の走行レール20に案内されて走行する構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、走行台車部17は、単一の走行レール20に案内されて走行してもよい。
【0041】
(2)上記の実施形態では、下敷き部41が車輪11の下敷きになっておらず、且つ、下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42が車輪11の外周面15に接している状態で、対向面51と第1バンパー14とが隙間81を有して対向するように、対向面51と下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42との走行方向Xの距離が設定されている構成を例として説明したが、これには限定されない。下敷き部41が車輪11の下敷きになっておらず、且つ、下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42が車輪11の外周面15に接している状態で、対向部5における第1バンパー14に対向する対向面51と第1バンパー14とが接触するように、対向面51と下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42との走行方向Xの距離が設定されていてもよい。すなわち、
図5において、隙間81が形成されずに、対向面51と第1バンパー14とが接触するように、対向面51と先端部42(ここでは、テーパ状部47)との走行方向Xの距離を設定することもできる。メンテナンス作業等において、特に搬送車10を移動させない場合には、このように設定された走行規制装置1を用いると好適である。
【0042】
(3)上記の実施形態では、対向部5における第1バンパー14に対向する対向面51と下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42との走行方向Xの距離82が、第1バンパー14における走行方向離間側X2の端部16と車輪11の軸心Pとの距離83以下である構成を例として説明したが、これには限定されない。対向面51と先端部42との走行方向Xの距離82が、第1バンパー14における走行方向離間側X2の端部16と車輪11の軸心Pとの距離83よりも大きくなるように設定することもできる。このように設定することで、例えば、下敷き部41が車輪11の下敷きになっている状態から、車輪11が対向面51に向けて走行し、第1バンパー14と対向面51とが当接する構成とすることができる。
【0043】
(4)上記の実施形態では、対向部5は、載置部4に固定された固定対向部材53と、固定対向部材53よりも走行方向接近側X1に配置されていると共に、載置部4に対して着脱自在となるように取り付けられた着脱対向部材55と、を備えている構成を例として説明したが、これには限定されない。対向部5は、着脱対向部材55を備えていない構成とされていてもよい。例えば、対向部5は、固定対向部材53を備え、固定対向部材53の走行方向接近側X1を向く面を対向面51とすることもできる。
【0044】
(5)上記の実施形態では、着脱対向部材55の幅方向Yの寸法84は、走行レール20の幅方向Yの寸法85よりも大きい構成を例として説明したが、これには限定されない。着脱対向部材55の幅方向Yの寸法84は、走行レール20の幅方向Yの寸法85以下とされていてもよい。
【0045】
(6)上記の実施形態では、載置部4は、走行レール20に対して幅方向Yの両外側に配置される一対のガイド部44を備えている構成を例として説明したが、これには限定されない。載置部4は、走行レール20に対して幅方向Yの一方側にのみガイド部44を備えていてもよい。また、載置部4は、一対のガイド部44を備えていなくてもよい。
【0046】
(7)上記の実施形態では、下敷き部41は、走行面21に沿う板状に形成された板状部46と、板状部46に対して走行方向接近側X1に配置され、走行方向接近側X1に向かうに従って下側へ向かう上面47aを有するテーパ状部47と、を備えている構成を例として説明したが、これには限定されない。下敷き部41は、テーパ状部47を備えていなくてもよい。
【0047】
(8)上記の実施形態では、対向部5は、走行方向離間側X2に向かうに従って上側へ向かうように傾斜した上面である傾斜上面57を備えている構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、対向部5は、傾斜上面57を備えていなくてもよい。また、上記の実施形態では、傾斜上面57は、着脱対向部材55の対向面51の上端から連続するように形成されると共に、傾斜上面57の上端からは、着脱対向部材55の水平面に沿う上面が連続して形成されている構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、
図9に示すように、着脱対向部材55の上側を向く面全体が、傾斜上面57とされていてもよい。なお、
図9に示す例では、上記の実施形態とは異なり、着脱対向部材55の下側を向く面の全体が、水平面に沿うように形成されている。また、傾斜上面57は、固定対向部材53及び着脱対向部材55の双方に亘って形成されていてもよい。
【0048】
(9)上記の実施形態では、載置部4の上面43に、第1バンパー14に対する載置部4の設置位置の基準を示す基準マーク6が設けられている構成を例として説明したが、これには限定されない。載置部4の上面43に、基準マーク6が設けられていなくてもよい。また、上記の実施形態では、基準マーク6として、載置部4の上面43に、幅方向Yに沿う溝形状の罫書き線が形成されている構成を例として説明したが、基準マーク6を罫書き線が記入されたシールとし、当該シールを載置部4の上面43に貼り付けることで、車輪11のサイズに合わせて基準マーク6の位置を変更できるようにしてもよい。
【0049】
〔上記実施形態のまとめ〕
以下、上記において説明した走行規制装置に係る実施形態のまとめを以下に記載する。
【0050】
本開示に係る走行規制装置は、走行レールと、前記走行レールの走行面上を転動する車輪、前記車輪の駆動装置、及び、障害物との衝突により前記駆動装置を緊急停止させるバンパーを備えて、前記走行レールに沿って走行する搬送車と、を備えた搬送設備において、前記搬送車の走行を規制するための走行規制装置であって、
前記走行面に載置される載置部と、前記載置部に固定され、前記走行面よりも上側に立設された立設部と、を備え、
前記走行レールに沿う方向を走行方向とし、前記走行方向における前記車輪から離れる側を走行方向離間側とし、前記走行方向における前記車輪に近づく側を走行方向接近側として、
前記立設部は、前記載置部が前記走行面に載置された状態で前記バンパーに対して前記走行方向離間側から対向する位置に配置される対向部を備え、
前記載置部は、前記対向部に前記バンパーが当接した状態で前記車輪の下敷きになるような前記対向部との位置関係である下敷き部を備えている。
【0051】
本構成によれば、搬送車を停止させた状態で、例えば搬送車の周辺において作業者等による作業を行う場合に、載置部を走行面に載置するように走行規制装置を設置することで、搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても直ぐに搬送車を停止させることができる。すなわち、搬送車が走行してバンパーが対向部に当接した状態では、載置部の下敷き部が車輪の下敷きになっている。そして、対向部は載置部に固定されているため、対向部が搬送車に押されて移動することがなく、対向部によりバンパーを押さえることができる。従って、搬送車の駆動装置を確実に緊急停止させることができる。
このように、本構成によれば、搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても迅速に搬送車を緊急停止させることができる。
【0052】
ここで、前記下敷き部が前記車輪の下敷きになっておらず、且つ、前記下敷き部における前記走行方向接近側の先端部が前記車輪の外周面に接している状態で、前記対向部における前記バンパーに対向する対向面と前記バンパーとが接触し、又は、前記対向面と前記バンパーとが隙間を有して対向するように、前記対向面と前記下敷き部における前記走行方向接近側の前記先端部との前記走行方向の距離が設定されていると好適である。
【0053】
本構成によれば、下敷き部における走行方向接近側の先端部が車輪の外周面に接触する位置に走行規制装置を設置することで、対向部がバンパーに接触又は隙間を有して対向するように配置される。従って、搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても、当該搬送車の走行距離を最小限に抑えて、搬送車を停止させることができる。
【0054】
また、前記対向部における前記バンパーに対向する対向面と前記下敷き部における前記走行方向接近側の先端部との前記走行方向の距離が、前記バンパーにおける前記走行方向離間側の端部と前記車輪の軸心との距離以下であると好適である。
【0055】
本構成によれば、例えば、下敷き部における走行方向接近側の先端部が車輪の外周面に接触する位置に走行規制装置を設置すれば、対向部がバンパーに対してわずかな隙間を有して対向するように配置される。従って、搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても、当該搬送車の走行距離を最小限に抑えて、搬送車を停止させることができる。
【0056】
また、前記対向部は、前記載置部に固定された固定対向部材と、前記固定対向部材よりも前記走行方向接近側に配置されていると共に、前記載置部に対して着脱自在となるように取り付けられた着脱対向部材と、を備え、
前記着脱対向部材は、前記バンパーに対して前記走行方向離間側から対向する対向面を備え、
前記固定対向部材は、前記着脱対向部材が取り外された状態で前記バンパーに対して前記走行方向離間側から対向する補助対向面を備えると好適である。
【0057】
本構成によれば、搬送車が意図せず走行を開始した後、着脱対向部材の対向面によりバンパーが押された状態で搬送車が停止した場合であっても、着脱対向部材を取り外すことにより、バンパーと対向部の固定対向部材との間に隙間を設けることができる。従って、駆動装置の緊急停止を解除して搬送車を復旧させる作業を容易に行うことが可能となる。
また本構成によれば、着脱対向部材が取り外された状態でも、固定対向部材がバンパーに対向する補助対向面を備えるため、搬送車の復旧作業中に、万が一搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても、補助対向面によりバンパーを押さえて、搬送車の駆動装置を緊急停止させることができる。
【0058】
また、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、
前記着脱対向部材の前記幅方向の寸法は、前記走行レールの前記幅方向の寸法よりも大きいと好適である。
【0059】
本構成によれば、着脱対向部材の対向面によりバンパーが押された状態で搬送車が停止した場合に、着脱対向部材の取り外し作業を容易に行うことができる。例えば、着脱対向部材におけるレールから幅方向にはみ出した部分を下側から押すことにより、着脱対向部材の取り外しを容易に行うことができる。
【0060】
また、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、
前記載置部は、前記走行レールに対して前記幅方向の両外側に配置される一対のガイド部を備え、
一対の前記ガイド部のそれぞれは、前記走行レールの側面に対向するガイド面を備えると好適である。
【0061】
本構成によれば、走行規制装置を、走行レールに対して幅方向の適正な位置に容易に配置することができると共に、配置後の走行規制装置が幅方向にずれることを規制することができる。
【0062】
また、前記下敷き部は、前記走行面に沿う板状に形成された板状部と、前記板状部に対して前記走行方向接近側に配置され、前記走行方向接近側に向かうに従って下側へ向かう上面を有するテーパ状部と、を備えると好適である。
【0063】
本構成によれば、搬送車が意図せず走行を開始した場合であっても、車輪が下敷き部の上に乗り上げる際の振動を少なく抑え易い。従って、当該乗り上げ時の振動によって搬送車の挙動が不安定になる可能性を低減することができる。
【0064】
また、前記対向部は、前記走行方向離間側に向かうに従って上側へ向かうように傾斜した上面である傾斜上面を備え、
前記傾斜上面における前記走行方向接近側の端部は、前記搬送車における前記車輪を支持する車輪支持部材の前記走行方向離間側の下端部よりも下側に配置され、
前記傾斜上面における前記走行方向離間側の端部は、前記車輪支持部材の前記下端部よりも上側に配置されると好適である。
【0065】
本構成によれば、搬送車が意図せず走行を開始し、且つ、バンパーが対向部に当接しても搬送車が停止しなかった場合であっても、テーパ状の上面に車輪支持部材が乗り上げるようにできるため、車輪を持ち上げて搬送車の走行を停止させることができる。
【0066】
また、前記搬送車の走行を許容する上限の距離を許容走行距離として、
前記載置部の上面に、前記バンパーに対する前記載置部の設置位置の基準を示す基準マークが設けられ、
前記基準マークは、前記対向部における前記バンパーに対向する対向面から前記許容走行距離だけ離れた位置に配置されていると好適である。
【0067】
本構成によれば、バンパーの先端の位置が対向部と基準マークとの間に入るように走行規制装置を設置することで、意図せず搬送車が走行を開始した場合であっても、搬送車の走行距離を最小限に抑えつつ、搬送車を適切に停止させることができるような位置に走行規制装置を容易に設置できる。
【0068】
本開示に係る走行規制装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 :走行規制装置
3 :立設部
4 :載置部
5 :対向部
6 :基準マーク
9 :搬送設備
10 :搬送車
11 :車輪
12 :駆動装置
14 :第1バンパー(バンパー)
15 :外周面
16 :第1バンパーにおける走行方向離間側の端部
20 :走行レール
21 :走行面
23 :側面
42 :先端部
43 :載置部の上面
44 :ガイド部
45 :ガイド面
46 :板状部
47 :テーパ状部
47a :テーパー状部の上面
51 :対向面
52 :補助対向面
53 :固定対向部材
55 :着脱対向部材
57 :傾斜上面
58 :傾斜上面57における走行方向接近側X1の端部
59 :傾斜上面57における走行方向離間側X2の端部
71 :車輪支持部材
72 :車輪支持部材の走行方向離間側X2の下端部
81 :隙間
82 :対向面51と下敷き部における走行方向接近側X1の先端部42との走行方向Xの距離
83 :第1バンパー14における走行方向離間側X2の端部16と車輪11の軸心Pとの距離
84 :着脱対向部材55の幅方向Yの寸法
85 :走行レール20の幅方向Yの寸法
86 :許容走行距離
P :軸心
X :走行方向
X1 :走行方向接近側
X2 :走行方向離間側
Y :幅方向