(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156275
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】天井材及び天井材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20241029BHJP
B32B 13/12 20060101ALI20241029BHJP
E04C 2/04 20060101ALI20241029BHJP
E04B 1/94 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
E04B9/00 T
B32B13/12
E04C2/04 C
E04B1/94 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070604
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】出店 純香
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA14
2E001GA12
2E001HA03
2E001HA21
2E001HA32
2E001HD11
2E162CA16
2E162CA21
2E162CA35
2E162CC06
2E162CD04
4F100AA03A
4F100AA08B
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4F100JL10B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】 天井の意匠性を簡便に向上させることを可能とする天井材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 天井材は、基材層と、該基材層上に設けられた下地塗装層と、該下地塗装層上に設けられた絵柄層と、を備え、前記基材層が、石膏、けい酸カルシウム及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1種の無機材料を含んでなり、前記下地塗装層が、バインダー樹脂及び白色顔料を含有し、前記絵柄層がインクジェット印刷層である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層上に設けられた下地塗装層と、該下地塗装層上に設けられた絵柄層と、を備え、
前記基材層が、石膏、けい酸カルシウム及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1種の無機材料を含んでなり、
前記下地塗装層が、バインダー樹脂及び白色顔料を含有し、
前記絵柄層がインクジェット印刷層である、天井材。
【請求項2】
ISO 5660のコーンカロリーメーター法に準拠した発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が、8MJ/m2以下である、請求項1に記載の天井材。
【請求項3】
前記バインダー樹脂が、酸変性オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂及び酢酸ビニル系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含み、
前記白色顔料が、炭酸カルシウム及び酸化チタンのうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の天井材。
【請求項4】
前記下地塗装層における前記バインダー樹脂の含有量が、前記バインダー樹脂及び前記白色顔料の含有量の合計100質量部に対して、5~50質量部である、請求項1に記載の天井材。
【請求項5】
前記絵柄層上に保護層がさらに設けられている、請求項1に記載の天井材。
【請求項6】
前記保護層が、紫外線吸収剤及び光安定剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項5に記載の天井材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の天井材を製造する方法であって、
石膏、けい酸カルシウム及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1種の無機材料を含んでなる基材層と、該基材層上に設けられた、バインダー樹脂及び白色顔料を含有する下地塗装層と、を有する積層体を用意し、該積層体の前記下地塗装層上に、インクジェット印刷法により絵柄層を形成する印刷工程、を備える、天井材の製造方法。
【請求項8】
前記印刷工程において、インクジェット印刷用インキとして無溶剤の紫外線硬化型インキを用いる、請求項7に記載の天井材の製造方法。
【請求項9】
前記印刷工程において、4パス以上のマルチパス印刷で前記絵柄層を形成する、請求項8に記載の天井材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天井材及び天井材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建築物の天井材としては、従来、石膏ボード、けい酸カルシウム板、ロックウールボード、ガラスウールボードなどが使用されていた。これらの天井材によって構成される天井は意匠性が乏しく、虫喰い状の凹陥模様が施されている程度のものが主流であった(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井に意匠性を付与する場合、市販のタックシートや表層装飾用の化粧紙又は壁紙を天井材に貼り合わせる方法も従来からある。しかし、そのような方法は、天井面に対する施工の難易度が高いことから熟練作業者の確保や施工の効率化が難しく、広く普及するものではないため、施工にかかる費用も高くなっていた。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、天井の意匠性を簡便に向上させることを可能とする天井材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の天井材及び天井材の製造方法に関する。
【0007】
[1] 基材層と、該基材層上に設けられた下地塗装層と、該下地塗装層上に設けられた絵柄層と、を備え、前記基材層が、石膏、けい酸カルシウム及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1種の無機材料を含んでなり、前記下地塗装層が、バインダー樹脂及び白色顔料を含有し、前記絵柄層がインクジェット印刷層である、天井材。
[2] ISO 5660のコーンカロリーメーター法に準拠した発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が、8MJ/m2以下である、上記[1]に記載の天井材。
[3] 前記バインダー樹脂が、酸変性オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂及び酢酸ビニル系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含み、前記白色顔料が、炭酸カルシウム及び酸化チタンのうちの少なくとも一方を含む、上記[1]又は[2]に記載の天井材。
[4] 前記下地塗装層における前記バインダー樹脂の含有量が、前記バインダー樹脂及び前記白色顔料の含有量の合計100質量部に対して、5~50質量部である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の天井材。
[5] 前記絵柄層上に保護層がさらに設けられている、上記[1]~[4]のいずれかに記載の天井材。
[6] 前記保護層が、紫外線吸収剤及び光安定剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含む、上記[5]に記載の天井材。
[7] 上記[1]~[6]のいずれかに記載の天井材を製造する方法であって、石膏、けい酸カルシウム及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1種の無機材料を含んでなる基材層と、該基材層上に設けられた、バインダー樹脂及び白色顔料を含有する下地塗装層と、を有する積層体を用意し、該積層体の前記下地塗装層上に、インクジェット印刷法により絵柄層を形成する印刷工程、を備える、天井材の製造方法。
[8] 前記印刷工程において、インクジェット印刷用インキとして無溶剤の紫外線硬化型インキを用いる、上記[7]に記載の天井材の製造方法。
[9] 前記印刷工程において、4パス以上のマルチパス印刷で前記絵柄層を形成する、上記[8]に記載の天井材の製造方法。
【0008】
上記[1]に係る天井材によれば、予め設けられた絵柄層を有していることから、天井材の施工と同時に天井に意匠性を付与することができる。また、上記[1]に係る天井材は、基材層が汎用の材料を含むものでありながらも、絵柄層が上記の下地塗装層を介して設けられるインクジェット印刷層であることにより、基材層表面の凹凸形状に左右されることなく高品質の絵柄を形成することができる。したがって、上記[1]に係る天井材によれば、天井の意匠性を簡便に向上させることができる。
【0009】
上記[2]に係る天井材によれば、天井に不燃性能を付与することができる。上記[3]に係る天井材によれば、インキの密着性が高く且つインキの滲みが抑制されたインクジェット印刷層を有することができ、天井に高い意匠性を長期間付与し続けることができる。上記[4]に係る天井材は、下地塗装層が密着性、白色隠蔽性及び不燃性能をバランスよく併せ持つことができる。上記[5]及び[6]に係る天井材は、絵柄層の耐久性をより向上させることができる。保護層が設けられていることにより、例えば、施工現場での取り扱い時において、衝撃などによる絵柄落ちなどを低減させることができ、意匠性の向上のみならず、補修にかかる作業の手間を減らすこともできる。
【0010】
上記[7]に係る天井材の製造方法によれば、上記[1]~[6]のいずれかに記載の天井材を効率よく製造することができる。上記[8]に係る天井材の製造方法によれば、印刷時にインキを硬化させることができ、これにより印刷後のインキの浸み込みや滲みを高度に抑制して、より高品質の絵柄層を有する天井材を得ることができる。上記[9]に係る天井材の製造方法によれば、紫外線硬化型インキを十分硬化させながら絵柄層におけるインキ量を増加させることが容易となり、高濃度印刷による絵柄の品質向上が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、天井の意匠性を簡便に向上させることを可能とする天井材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の天井材の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<天井材>
本実施形態の天井材は、基材層と、該基材層上に設けられた下地塗装層と、該下地塗装層上に設けられた絵柄層と、を備える。
【0015】
図1は、本開示の天井材の一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示す天井材1は、基材層10と、基材層10の表面に設けられた下地塗装層20と、下地塗装層20上に設けられた絵柄層30と、絵柄層30上に設けられた保護層40とを備える。絵柄層30はインクジェット印刷層である。保護層40は、設けられていなくてもよく、2層以上の積層構造を有していてもよい。
【0016】
(基材層)
基材層としては、石膏、けい酸カルシウム及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1種の無機材料を含んでなるものを用いることができる。基材層は、石膏ボード、けい酸カルシウム板、ロックウールボードであってもよい。これらは原料から作製したものであってもよく、市販品であってもよい。
【0017】
石膏ボードは、例えば、硫酸カルシウム、でんぷん、及び各種添加剤を含んでいてもよい。このような石膏ボードは、上記の成分を混合した後、固化成形することにより得ることができる。添加剤としては、分散剤、発泡剤、撥水剤、鉱物系骨材などが挙げられる。
【0018】
石膏ボードにおける硫酸カルシウムの含有量は、難燃性及び強度の観点から、石膏ボードの総質量100質量部に対して、90~98質量部であってもよい。
【0019】
でんぷんの含有量は、難燃性及び結着性の観点から、硫酸カルシウムの総質量100質量部に対して、0.1~2.0質量部であってもよい。
【0020】
石膏ボードは、JIS A 6901に規定される普通石膏ボード(GB-R)、JIS A 6911に規定される化粧石膏ボード(GB-D)、JIS A 6912に規定される防水石膏ボード(GB-S)、JIS A 6913に規定される強化石膏ボード(GB-F)、JIS A 6301に規定される吸音石膏ボード(GB-P)等であってもよい。
【0021】
けい酸カルシウム板は、JIS A 5430に規定された繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板であってもよい。
【0022】
ロックウールボードは、JIS A 9521に規定された建築用断熱材であってもよい。
【0023】
基材層の層厚は、発熱性試験における形状保持及び発熱量抑制の観点から、4~10mmであってもよく、4~8mmであってもよい。基材層の標準質量は、発熱性試験における形状保持及び発熱量抑制の観点から、4~6kg/m2であってもよく、4.5~5.5kg/m2であってもよい。
【0024】
(下地塗装層)
下地塗装層は、バインダー樹脂及び白色顔料を含有することができる。
【0025】
バインダー樹脂としては、酸変性オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂及び酢酸ビニル系樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
酸変性オレフィン系樹脂としては、「ケミパール」及び「ユニストール」(以上、三井化学株式会社製、商品名)などの市販品を用いることができる。
【0027】
アクリル系樹脂としては、アクリルモノマーを一種又は二種以上重合させたもの、又はアクリルモノマーを一種又は二種以上と他のコモノマーを一種又は二種以上とを共重合させたものが挙げられる。
【0028】
アクリルモノマーとしては、例えば、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等のアルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のグリコールモノ(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、p-カルボキシベンジルアクリレート、エチレンオキサイド変性(付加モル数:2~18)フタル酸アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピルアクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸β-カルボキシエチル、アクリル酸2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチル等のカルボキシル基含有アクリルモノマー;
N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアミド結合基含有アクリルモノマー;
(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等のアミノ基含有アクリルモノマー;並びに、
アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジルアクリレート、α-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0029】
酢酸ビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。インクジェット印刷層における柄の滲みの抑制とインキ密着性の向上の観点から、下地塗装層は、バインダー樹脂として酢酸ビニル系樹脂を含んでいてもよい。
【0030】
白色顔料としては、炭酸カルシウム及び酸化チタンが挙げられる。白色顔料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
下地塗装層におけるバインダー樹脂及び白色顔料の合計の含有量は、下地塗装層の総質量を基準として、97質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
【0032】
下地塗装層におけるバインダー樹脂の含有量は、密着性、白色隠蔽性及び不燃性能の観点から、バインダー樹脂及び白色顔料の含有量の合計100質量部に対して、5~50質量部であってもよく、10~40質量部であってもよく、20~30質量部であってもよい。また、下地塗装層におけるバインダー樹脂の含有量は、耐候性、白色隠蔽性及び不燃性能の観点から、バインダー樹脂及び白色顔料の含有量の合計100質量部に対して、30~55質量部であってもよく、45~55質量部であってもよい。
【0033】
下地塗装層は、分散剤(界面活性剤)、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、湿潤材、蛍光造白剤、増粘剤、減粘剤、加水分解抑制剤、熱安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
下地塗装層の層厚は、意匠性(隠蔽性)の観点から、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、防火認定の不燃を取得しやすくする観点から、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。
【0035】
(絵柄層)
絵柄層は、インクジェット印刷によって形成されるインクジェット印刷層であり、インクジェット印刷用インキ又はその硬化物を含む。
【0036】
インクジェット印刷用インキとしては、紫外線硬化型インキ、電子線硬化型インキ、1液硬化型インキ等を用いることができる。また、インクジェット印刷用インキは、水系、溶剤系、又は無溶剤系であってもよい。なお、無溶剤とは、顔料等を分散する溶媒として溶剤(有機溶剤、水など)を使用していないことを意味する。さらに、インクジェット印刷用インキは、アクリル系であってもよく、エステル系であってもよい。インキの浸み込みや滲みを抑制して、より高品質の絵柄層を形成する観点から、紫外線硬化型インキを用いてもよく、無溶剤の紫外線硬化型インキを用いてもよい。
【0037】
インクジェット印刷は後述する印刷条件で実施することができる。
【0038】
(保護層)
保護層を構成する主成分としては、アクリル系、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などの樹脂材料が挙げられる。保護層における樹脂材料の含有量は、保護層の総質量を基準として、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
【0039】
表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いてもよい。そのような樹脂としては、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂が挙げられる。
【0040】
保護層は、紫外線吸収剤及び光安定剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含むことができる。この場合、天井材の耐候性を向上させることができ、インクジェット印刷層のインキ密着性をより長期にわたって維持することが容易となる。紫外線吸収剤が配合された保護層は、紫外線(例えば、壁面や床面からの反射光)による耐性が高まり、絵柄層の耐久性を向上させることができる。光安定剤が配合された保護層は、耐久性(特には耐候性)に優れたものになり得る。これらの観点から、保護層は、紫外線吸収剤及び光安定剤を含んでいてもよい。上記以外の添加剤としては、艶消し剤、酸化防止剤、蛍光造白剤、スリップ剤などを用いてもよい。
【0041】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系の化合物が挙げられる。コストと性能とのバランスの観点から、紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系の化合物を配合してもよい。このような化合物として、Benzenepropanoic acid, 3-(2H-benzotriazol-2-yl)-5-(1,1-dimethylethyl)-4-hydroxy-,C7-9-branched and linear alkyl esters等が挙げられる。
【0042】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系、フェノール系の化合物が挙げられる。効果持続性の観点から、光安定剤として、ヒンダードアミン系の化合物を配合してもよい。ヒンダードアミン系の化合物は、ラジカルを捕捉することができることから、保護層の耐久性(特には耐候性)を向上させることが容易となる。
【0043】
保護層における添加剤の含有量は、樹脂材料100質量部に対して、0.1~10質量部であってもよく、0.5~7質量部であってもよい。
【0044】
保護層の層厚は、耐候性付与の観点から、3μm以上であってもよく、6μm以上であってもよく、燃焼発熱量を抑制して防火認定を得られやすくする観点から、20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。
【0045】
本実施形態の天井材は、ISO 5660のコーンカロリーメーター法に準拠した発熱性試験において、下記の条件1を満たすものであってもよく、下記の条件1及び条件2を満たすものであってもよく、下記の条件1~条件3を全て満たすものであってもよい。
条件1:加熱開始後20分間の総発熱量が、8MJ/m2以下である。
条件2:加熱開始後20分間、裏面まで貫通する最大径が0.5mmを超える亀裂及び穴が見られない。
条件3:加熱開始後20分間、発熱速度が、10秒以上継続して200kW/m2を超えない。
【0046】
本実施形態の天井材は、上記条件1を満たすように、基材層、下地塗装層、絵柄層、及び必要に応じて保護層の構成を調整してもよい。例えば、基材層及び下地塗装層に含まれる有機材料の含有割合を小さくする、絵柄層及び保護層の厚みを小さくする、ことによって、総発熱量を小さくする方向に調整することができる。
【0047】
<天井材の製造方法>
本実施形態の天井材の製造方法は、上述した本実施形態の天井材を製造する方法であって、石膏、けい酸カルシウム及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1種の無機材料を含んでなる基材層と、該基材層上に設けられた、バインダー樹脂及び白色顔料を含有する下地塗装層と、を有する積層体を用意し、該積層体の前記下地塗装層上に、インクジェット印刷法により絵柄層を形成する印刷工程、を備える。本実施形態の天井材が保護層を備える場合は、印刷工程の後に、絵柄層上に保護層を形成する保護層形成工程をさらに設けることができる。
【0048】
(積層体の用意)
積層体は、上述したバインダー樹脂及び白色顔料と、必要に応じて添加剤とを含む塗工液を調製し、この塗工液をロールコーター、フローコーター又はダイコーター等の手段を用いて基材層上に塗布し、乾燥して下地塗装層を形成することにより得ることができる。塗工液には、溶剤を含有させてもよい。この場合、溶剤としては、水等を用いることができる。
【0049】
乾燥条件としては、40~100℃、0.5~2分間が挙げられる。
【0050】
(印刷工程)
上述したインクジェット印刷用インキを用いてインクジェット印刷を行うことができる。インクジェット印刷は、例えば、紫外線照射装置などを備える、スキャン型若しくはエリア型の印刷機を用いて、マルチパス印刷で行ってもよい。なお、マルチパス印刷とは、所定の印刷面に対して印刷データを複数個に分割し、複数回に分けて印刷することを意味する。マルチパス印刷のパス数は、2以上、3以上、又は4以上であってもよい。
【0051】
紫外線照射装置は、インクジェットヘッドが並ぶキャリッジの側面に取り付けられていてもよい。この場合、吐出したインキの被着体への着弾とほぼ同時に紫外線照射を行うことができる。
【0052】
本実施形態においては、紫外線照射装置を備えるインクジェット印刷機、紫外線硬化型インキ、及びマルチパス印刷を組み合わせることにより、高濃度印刷による絵柄の品質向上が可能となる。シングルパス印刷の場合、インキ吐出量が増えすぎると1回の紫外線照射量ではインキを十分に硬化させることができないため、インキ量を多く必要とする濃度の高い柄の印刷が難しくなる。これに対し、マルチパス印刷にすることで、インキを十分硬化させながらインキ量の上限を大きくすることができる。その結果として、高濃度印刷による絵柄の品質向上(例えば、意匠表現の幅の拡張)が可能となる。
【0053】
(保護層形成工程)
保護層は、上述した保護層を構成する成分を含む塗工液を調製し、この塗工液をフローコーター、ロールコーター又はダイコーター等の手段を用いて絵柄層上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗工液には、上述した溶剤を含有させてもよい。
【0054】
乾燥条件としては、40~100℃、0.5~2分間が挙げられる。紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を配合する場合、活性エネルギー線の照射を行ってもよい。
【実施例0055】
以下、実施例を挙げて本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
<天井材の作製>
(実施例1)
厚さ9.5mmのロックウールボードの表面に、バインダー樹脂として「ユニストールR-303Xe」(三井化学株式会社製、製品名、酸変性オレフィン系樹脂)を8質量部と、白色顔料として「ソフトン400」(備北粉化工業製、製品名、炭酸カルシウム、平均粒子径13μm)を92質量部と、キシレンを2000質量部とからなる塗工液を、ロールコーターを用いて塗工し、自然乾燥により、厚さ50μmの下地塗装層を形成した。
【0057】
次いで、形成した下地塗装層上に、インクジェットプリンター PerformanceJet PJ-2508UF(武藤工業社製、製品名)を用いるインクジェット印刷法により、インキとして「LIOJET」(東洋インキ株式会社製、製品名、水系)を用いて4パスのマルチパス印刷を行い、自然乾燥することにより絵柄層を形成した。なお、絵柄は、隠蔽性を評価するための無色透明部分と、柄の滲み及び濃度を評価するための絵柄の部分と、インキ密着性を評価するためのベタ印刷の部分とを有するものとした。こうして、基材層上に下地塗装層及び絵柄層がこの順に積層された天井材を作製した。
【0058】
(実施例2)
下地塗装層を形成するために、バインダー樹脂として「7820」(ジャパンコーティングレジン社製、製品名、アクリル系樹脂)を8質量部と、白色顔料として「ソフトン400」(備北粉化工業製、製品名、炭酸カルシウム、平均粒子径13μm)を92質量部と、希釈水を400質量部とからなる塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、天井材を作製した。
【0059】
(実施例3)
下地塗装層を形成するために、バインダー樹脂として「ビニブラン1157」(日信化学工業社製、製品名、ポリ酢酸ビニル)を8質量部と、白色顔料として「ソフトン400」(備北粉化工業製、製品名、炭酸カルシウム、平均粒子径13μm)を92質量部と、希釈水を400質量部とからなる塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、天井材を作製した。
【0060】
(実施例4~6)
バインダー樹脂及び白色顔料の含有割合をそれぞれ、20質量部及び80質量部、40質量部及び60質量部、又は、50質量部及び50質量部に変更したこと以外は実施例3と同様にして、天井材をそれぞれ作製した。
【0061】
(実施例7)
絵柄層の形成において、インキとして「PJUV110(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト)」(武藤工業株式会社製、製品名、無溶剤の紫外線硬化型インキ)を用いて1パスの印刷を行ったこと以外は実施例4と同様にして、天井材を作製した。なお、インキは、インクジェットプリンターの標準条件での紫外線照射によって印刷直後に硬化される。
【0062】
(実施例8~9)
絵柄層の形成において、2パス又は4パスのマルチパス印刷を行ったこと以外は実施例7と同様にして、天井材をそれぞれ作製した。なお、インキは、インクジェットプリンターの標準条件での紫外線照射によって1パス毎に硬化される。
【0063】
(実施例10)
実施例9と同様にして絵柄層まで形成し、絵柄層上に、「ビュートップシリコンクリヤー」(菊水化学工業社製、製品名)を、フローコーターを用いて塗工し、60℃の熱風乾燥により、厚さ10μmの保護層をさらに形成することにより、天井材を作製した。
【0064】
(実施例11)
実施例9と同様にして絵柄層まで形成し、絵柄層上に、「ビュートップシリコンクリヤー」(菊水化学工業社製、製品名)100質量部と、紫外線吸収剤として「Tinuvin 9945-DW(N)」(BASFジャパン株式会社製、製品名、ベンゾトリアゾール系)を5質量部とからなる塗工液を、フローコーターを用いて塗工し、60℃の熱風乾燥により、厚さ10μmの保護層をさらに形成することにより、天井材を作製した。
【0065】
(実施例12)
実施例9と同様にして絵柄層まで形成し、絵柄層上に、「ビュートップシリコンクリヤー」(菊水化学工業社製、製品名)100質量部と、紫外線吸収剤として「Tinuvin 9945-DW(N)」(BASFジャパン株式会社製、製品名、ベンゾトリアゾール系)を5質量部と、光安定剤として「Tinuvin 123-DW(N)」(BASFジャパン株式会社製、製品名、ヒンダードアミン系)を3質量部とからなる塗工液を、フローコーターを用いて塗工し、60℃の熱風乾燥により、厚さ10μmの保護層をさらに形成することにより、天井材を作製した。
【0066】
<天井材の評価>
実施例及び比較例で作製した天井材について、下記の評価を実施した。
【0067】
[発熱性試験]
ISO 5660-1:2002のコーンカロリーメーター法に準拠して発熱性試験を行った。発熱性試験では、東洋精機製作所社製のコーンカロリーメーター試験機を用いて、寸法99mm×99mm×9.5mmの試験体(3個)に、輻射電気ヒーターで50kW/m2の輻射熱を20分間照射し、加熱開始後20分間の総発熱量の測定、並びに、下記の判定基準で形状安定性及び発熱速度の評価を行った。
(形状安定性:判定基準)
A:加熱開始後20分間、裏面まで貫通する最大径が0.5mmを超える亀裂及び穴がない。
B:加熱開始後20分間、裏面まで貫通する最大径が0.5mmを超える亀裂又は穴が見られる。
(発熱速度:判定基準)
A:加熱開始後20分間、発熱速度が、10秒以上継続して200kW/m2を超えない。
B:加熱開始後20分間、発熱速度が、10秒以上継続して200kW/m2を超える。
【0068】
[絵柄層の評価]
テストチャートが印刷された絵柄層を目視により観察し、以下の判定基準にしたがって、柄の滲み及び濃度を評価した。なお、テストチャートは、画像電子学会カラーファクシミリテストチャートのNo.11を用いた。
柄の滲み)
(柄の滲み:判定基準)
A:滲みがみられない。
B:わずかな滲みがみられる。
C:少しの滲みがみられる。
D:かなりの滲みがみられる。
(柄の濃度:判定基準)
最も濃度が高かった実施例9を5、最も濃度が低かった実施例1を1とする5段階の相対評価。
【0069】
[下地塗装層の評価]
絵柄層の無色透明部分を目視により観察し、以下の判定基準にしたがって、下地塗装層の隠蔽性を評価した。
(隠蔽性:判定基準)
A:基材層が透けて見えない。
B:基材層がわずかに透けて見える。
C:基材層が少し透けて見える。
【0070】
[耐候試験後のインキ密着性]
天井材をサンシャインウェザー耐候試験機(ブラックパネル63℃、120分中18分の水噴霧)に投入し、所定の時間経過(200時間、500時間、1000時間)後に取り出した。試験前の天井材及び試験後の天井材について、下記の碁盤目試験法にしたがってインキの密着性を評価した。
(碁盤目試験法)
1.天井材の絵柄層が設けられている面にカッターナイフおよびカッターガイドを用いて、基材層に達する6本の切り傷(間隔2mm)をつけ25個の碁盤目を作成する。
2.碁盤目部分にセロテープ(登録商標)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がす。
3.絵柄層が剥がれた格子の数をカウントする。
【0071】
【0072】