(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156285
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/40 20200101AFI20241029BHJP
D06F 33/44 20200101ALI20241029BHJP
【FI】
D06F33/40
D06F33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070621
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 裕智
(72)【発明者】
【氏名】野上 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】皆本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】辻 康典
(72)【発明者】
【氏名】大黒 祐揮
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 尚希
(72)【発明者】
【氏名】砂田 大樹
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA15
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE06
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3B167JC22
3B167KA63
3B167KA84
3B167LB12
3B167LC01
3B167LC08
3B167LC09
3B167LE02
3B167LF06
3B167LG05
(57)【要約】
【課題】本開示は、洗濯兼脱水槽の回転の減速後に、安全に停止後動作に移行できる洗濯機を提供する。
【解決手段】本開示における洗濯機は、貯水可能に設けられた外槽と、前記外槽内に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽の回転の駆動源となる電動機と、前記電動機の回転を制御し、第1工程を含む運転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1工程中の前記洗濯兼脱水槽の減速時において、前記電動機の相電流の大きさまたは前記洗濯兼脱水槽の推定回転数が所定値以下になってから、前記洗濯物の布量に応じて決定される第1時間経過すると、停止後動作を実行可能とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に貯水可能に設けられた外槽と、
前記外槽内に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽と、
前記洗濯兼脱水槽の回転の駆動源となる電動機と、
前記電動機の回転を制御し、第1工程を含む運転を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1工程中の前記洗濯兼脱水槽の減速時において、前記電動機の相電流の大きさまたは前記洗濯兼脱水槽の推定回転数が所定値以下になってから、前記洗濯物の布量に応じて決定される第1時間が経過すると、停止後動作を実行可能とする、
洗濯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記布量が大きいほど、前記第1時間を長く設定する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1工程が前記外槽内に水が入った状態で実行される工程である場合の前記第1時間を、前記第1工程が前記外槽内の水が排水された状態で実行される工程である場合の前記第1時間よりも長く設定する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記筐体に形成される投入口を開閉自在に覆う蓋体と、
前記蓋体を閉状態にロックする蓋ロック手段と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記運転の一時停止の指示を受け付けた場合、前記相電流の大きさまたは前記推定回転数が所定値以下になってから前記第1時間経過すると、前記停止後動作として前記蓋ロック手段による前記蓋体のロックの解除を実行する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記制御部は、前記運転の一時停止の指示を受け付けた場合の前記第1時間を、前記運転の一時停止の指示を受け付けていない場合の前記第1時間よりも短く設定可能とする、
請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記制御部は、前記運転の一時停止の指示を受け付けていない場合、前記相電流の大きさまたは前記推定回転数が所定値以下になってから前記第1時間経過すると、前記停止後動作として、前記電動機を再起動させて前記洗濯兼脱水槽の回転を実行可能とする、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記洗濯兼脱水槽の内方に回転可能に設けられた撹拌翼と、
前記電動機の出力を前記撹拌翼、あるいは前記撹拌翼および前記洗濯兼脱水槽の回転に切り換えるクラッチと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記運転の一時停止の指示を受け付けていない場合、前記相電流の大きさまたは前記推定回転数が所定値以下になってから前記第1時間経過すると、前記停止後動作として、前記クラッチの切替えを実行可能とする、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記制御部は、前記洗濯兼脱水槽の一定回転中における前記電動機のトルク電流の大きさに応じて、前記第1時間を調整する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記制御部は、前記洗濯兼脱水槽の加速中における前記電動機のトルク電流の大きさに応じて、前記第1時間を調整する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項10】
前記制御部は、前記洗濯兼脱水槽の減速中における減速時間の長さに応じて、前記第1時間を調整する、
請求項1に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、所定の周期毎に単パルス電圧または電流を、インバータ回路を介して供給し、モータの応答電流を測定することで、回転子の磁極位置を推定するセンサレス位置推定方式を用いてモータのモータ回転数を推定する洗濯機を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、洗濯兼脱水槽の回転の減速後に、安全に停止後動作に移行できる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における洗濯機は、貯水可能に設けられた外槽と、前記外槽内に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽の回転の駆動源となる電動機と、前記電動機の回転を制御し、第1工程を含む運転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1工程中の前記洗濯兼脱水槽の減速時において、前記電動機の相電流の大きさまたは前記洗濯兼脱水槽の推定回転数が所定値以下になってから、前記洗濯物の布量に応じて決定される第1時間経過すると、停止後動作を実行可能とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示における洗濯機は、洗濯兼脱水槽の回転の減速後に、安全に停止後動作に移行できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施の形態1における洗濯機の制御ブロック回路図
【
図3】実施の形態1における洗濯機の電源回路の詳細回路図
【
図4】実施の形態1における洗濯機のモータ制御部およびモータのブロック図
【
図5】実施の形態1における洗濯機の電流ベクトル設定器の内部構成を詳細に記載したブロック図
【
図6】実施の形態1における洗濯機の槽回転動作起動から停止までのフローチャート
【
図7】実施の形態1における洗濯機の時間とブレーキ中の相電流および回転数との関係を示すグラフ
【
図8】実施の形態1における洗濯機の布量判定値と停止完了までの待ち時間との関係を示すグラフ
【
図9】実施の形態2における洗濯機の槽回転動作起動から停止までのフローチャート
【
図10】実施の形態3における洗濯機の時間と加速から定速回転に移行する時の目標回転数、推定回転数及びトルク電流との関係を示すグラフ
【
図11】実施の形態3における洗濯機の一定回転中の平均トルク電流と停止完了までの待ち時間との関係を示すグラフ
【
図12】実施の形態4における洗濯機の時間と加速中の目標回転数、推定回転数及びトルク電流との関係を示すグラフ
【
図13】実施の形態4における洗濯機の加速中の平均トルク電流と停止完了までの待ち時間との関係を示すグラフ
【
図14】実施の形態5における洗濯機の時間とブレーキ中の推定回転数との関係を示すグラフ
【
図15】実施の形態5における洗濯機のブレーキ中の減速時間と停止完了までの待ち時間との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、洗濯機に、洗濯兼脱水槽の回転速度を検知する位置検知センサを備えないセンサレス方式にて洗濯兼脱水槽の回転を制御する技術があった。
【0009】
センサレス方式においては、洗濯兼脱水槽が低速回転している時は、洗濯兼脱水槽および電動機の回転速度や位相を推定することが困難である。洗濯兼脱水槽の回転を停止させる場合、低速回転領域で洗濯槽件脱水槽および電動機の回転速度や位相が推定困難なことから、どの方向に電流を制御することで逆トルクブレーキとして作用するか把握できず、ブレーキ制御することおよび停止直前の回転速度および停止を正しく推定することが困難である。
【0010】
ドラム式洗濯機のように、洗濯兼脱水槽の中心軸が略水平に延在して設けられている洗濯機では、洗濯兼脱水槽の回転が低速である場合、洗濯物が洗濯兼脱水槽内の下部に集まるので、洗濯兼脱水槽の回転を停止させやすい。
【0011】
一方で、縦型洗濯機のように、洗濯兼脱水槽の中心軸が上下方向に延在して設けられている洗濯機では、洗濯物が洗濯兼脱水槽内のパルセータ上に載った状態であるので、パルセータの回転は停止させやすいが、洗濯兼脱水槽の回転は、イナーシャ(慣性モーメント)の影響により停止させにくい。特に、洗濯物の量が多い場合や洗濯兼脱水槽内に水が入っている場合などにおける洗濯兼脱水槽の回転動作では、イナーシャが大きいため、洗濯兼脱水槽の回転が停止しにくいため、洗濯兼脱水槽の回転が停止するまでの停止時間が長くなり、洗濯兼脱水槽の回転の停止を推定することが困難であった。
【0012】
そうした状況下において、発明者らは、洗濯兼脱水槽が停止していない状態にも関わらず、洗濯兼脱水槽が停止したと推定されることによる不安全や機器の故障を防止する必要があるという課題があることを発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0013】
そこで、本開示は、布量に応じて精度よく洗濯兼脱水槽の回転の停止を推定でき、安全に停止後動作に移行できる洗濯機を提供する。
【0014】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0016】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図8を用いて、実施の形態1を説明する。
【0017】
[1-1.構成]
[1-1-1.洗濯機の構成]
図1は、洗濯機の断面図を示し、
図2は、洗濯機の制御ブロック回路図を示す。
【0018】
図1に示すように、洗濯機1は、洗濯機外枠2と、洗濯機外枠2の内部に設けられた水受け槽3と、水受け槽3の内部において回転可能に設けられた洗濯兼脱水槽4と、を備える。水受け槽3は、貯水可能に設けられており、洗濯機外枠2に対してサスペンション3aを介して防振支持されている。洗濯兼脱水槽4は、洗濯物を収容可能に設けられている。洗濯兼脱水槽4の壁面には水受け槽3との間で通水可能とする通水孔4aが設けられている。洗濯兼脱水槽4の内底部には、洗濯物を撹拌するためのパルセータ5が左右回転自在に設けられている。洗濯機1は、水受け槽3および洗濯兼脱水槽4の中心軸が上下方向に延伸して設けられた、いわゆる縦型洗濯機である。
【0019】
洗濯機外枠2の内方には、モータ6と、ベルト7と、伝達手段8と、制御装置9と、が設けられている。伝達手段8は、モータ6からの動力を、洗濯兼脱水槽4およびパルセータ5の一体回転と、パルセータ5のみの回転と、のいずれかに切り替えて伝えるクラッチと、洗濯兼脱水槽4の回転を抑えるブレーキと、を含む。モータ6の回転は、ベルト7および伝達手段8を介して洗濯兼脱水槽4およびパルセータ5を回転駆動させたり、ブレーキさせたりする。制御装置9は、洗濯機1の運転全般を制御する。
【0020】
洗濯機外枠2の上面には操作表示部10が設けられている。操作表示部10は、使用者が所望の洗濯コース設定や運転開始、一時停止などを操作する入力設定手段10aと、LEDやLCD等による発行素子で、運転の進捗や各種情報の表示を行う表示手段10bと、を含む。
【0021】
洗濯機外枠2の上面には、洗濯兼脱水槽4内に洗濯物を出し入れ可能とする投入口2aが形成されており、投入口2aを開閉可能に覆う蓋体11が設けられている。蓋体11の前端部には磁石14が設けられており、洗濯機外枠2の上面に設けられた感磁素子15に相対するように配置されている。感磁素子15は、ホールICなどで構成され、蓋体11に設けられた磁石14の磁力線により蓋体11の開閉を検知している。磁石14と感磁素子15とで、蓋開閉検知手段16として機能している。
【0022】
蓋体11は、前端部にリング形状をしたロック部17を有しており、蓋体11が閉じた状態でリング形状のロック部17にロックピン18をはめ込むことで、蓋体11を閉じた状態にロックすることができる。ロック部17とロックピン18とで蓋ロック手段19を構成する。蓋ロック手段19はソレノイドとハートカムなどで構成されており、通電する毎に、蓋ロック状態とロック解除状態を切り替えることができ、通電を切ってもその時点の状態を維持することができる。
【0023】
洗濯機1の上部には、給水弁20が設けられている。給水弁20は、水受け槽3への給水を制御する。
【0024】
洗濯機1の下部には、排水弁21およびギヤードモータ21aが設けられている。ギヤードモータ21aは、排水弁21の開閉を制御する。排水弁21が開状態となっていると、水受け槽3内の水が排水経路を通じて洗濯機1の外部に排出される。
【0025】
[1-1-2.制御装置およびモータの構成]
図2に示すように、制御装置9は、モータ6、排水弁21(ギヤードモータ21a)、
給水弁20などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水などの一連の行程を逐次制御するマイクロコンピュータからなる制御部22等で構成されている。制御部22は、入力設定手段10aにて使用者から入力された情報を基に、入力設定手段10aにて運転開始が設定されると、水位検知手段、蓋開閉検知手段16等からのデータを入力して、スイッチング制御手段23aおよびスイッチング手段23を介して、ギヤードモータ21a、蓋ロック手段19、給水弁20などの動作を制御して、運転を実行する。なお、運転とは、洗い行程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥行程、槽洗浄行程の一部または全部を含んでもよい。それぞれの工程において、制御部22は、モータ6を駆動させて、洗濯兼脱水槽4およびパルセータ5を回転させる。
【0026】
制御部22は、電源回路24を介してモータ6に電流を供給する。モータ6は直流ブラシレスモータで、図示しないが、3相巻線を有するステータと、リング上に2極の永久磁石を配設しているロータとで構成し、ステータは3相巻線を構成する第1の巻線6a(U相)、第2の巻線6b(V相)、第3の巻線6c(W相)のスロットを設けた鉄心に巻き付けて構成している。
【0027】
次に、
図3に本実施の形態1における電源回路24の詳細回路図を示す。
【0028】
スイッチング素子55、56、57、58、59、60は、それぞれIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insuated Gate Bipolar Transistor))と、そのコレクタ・エミッタ端子間に逆並列に接続したダイオードによって構成される。そして、駆動回路61が、各スイッチング素子のゲート端子に接続されそのオンオフ制御する。
【0029】
直流電源63は、交流の商用電源を全波整流あるいは倍電圧整流する。低電位側のスイッチング素子58、59、60には、直流電源63のマイナス端子との間に、50ミリオーム程度のシャント抵抗66、67、68を接続する。増幅回路70は、シャント抵抗66、67、68に流れる電流に比例して発生する電圧を増幅する。マイクロコンピュータ(図示しない)のAD端子の範囲内に入るよう、零電流がほぼ2.5Vとなるようにレベルシフトを行い、電流検知回路71の出力として制御部22へ伝達する。
【0030】
なお、本実施の形態1において、電流検知回路71は、シャント抵抗66、67、68を有しているが、別の構成でも構わない。例えば、1本のシャント抵抗を用いて、3相UVWの各線電流をPWM(パルス幅変調(Pulse Width Modulation))のキャリア周期内の複数のタイミングで出力させ、加減演算によって3相に分離する構成でも良い。DCCT(DC Current Transformer)と呼ばれる様な、ホール素子などの磁気的な結合を介して、直流から高周波までの周波数の電流を電圧に変換する部品を、電動機の入力となる3本の線UVWのそれぞれに挿入する構成でも良い。
【0031】
次に、
図4に洗濯機1の制御装置9およびモータ6のブロック図を示す。
【0032】
制御装置9は、洗濯兼脱水槽4の回転速度をセンサレスと呼ばれる速度計算で得る。以下、センサレスおよびベクトル制御について説明する。電流制御部105は、以下のように、電源回路24、第一の座標変換器100、誤差減算器102および103、電流誤差増幅器101、第二の座標変換器104を含む。電源回路24の電流検知回路71は、モータ6の各相の巻線97、98、99に電流を供給する。
【0033】
第一の座標変換器100は、電源回路24の出力電流であるIu、Iv、Iwをθ値とともに回転座標γδ成分(推定dおよび推定qの成分)であるIγ、Iδに分解する。誤
差減算器102は、γδ座標での電流指令値IγrとIγとの誤差を求める。また、誤差減算器103は、γδ座標での電流指令値IδrとIδとの誤差を求める。電流誤差増幅器101は、これらの誤差をPI(比例+積分)の要素を作用させることによって電圧指令Vγ、Vδを出力する。第二の座標変換器104は、θを用いて、静止座標となるUVWの各相の電圧値に逆変換する。以上のように、電流制御部105はγδ電流の制御を行う。ここで、第一の座標変換器100および第二の座標変換器104は、それぞれ以下の(数式1)、(数式2)を用いた計算を行う。なお、これは一例であり、三角関数を使用した各種の数式が使用可能で、静止座標と回転座標との変換、逆変換が使用できる。
【0034】
【0035】
【0036】
また、位相誤差検知器107には、位相θを計算に関して、Vγ、Iγ、Iδを入力して、(数式3)のように計算する。ここで、Raは巻線97、98、99の抵抗値、Lqはモータ6のq軸インダクタンスである。
【0037】
【0038】
上記から、速度計算器108は、(数式4)、(数式5)のように、角速度の計算値ω、ω1を出力する。
【0039】
【0040】
【0041】
ω1は、積分器110によって、(数式6)のように、時間積分θとして第一の座標変換器100および第二の座標変換器104に出力され、θが推定位相となる。
【0042】
【0043】
一方、ωは、速度指令手段111の出力値であるωrとともに、減算器112に入力される。そして、指令速度に対する速度誤差として、速度誤差増幅器113によってPI(比例+積分)の誤差増幅がなされる。その結果、Iγra、Iδraが出力される。力行時において、電流ベクトル設定器115は、Iγra、IδraをそれぞれIγr、Iδrとして、電流制御部105に入力する。その結果、ベクトル制御と速度制御が成立し、モータ6の駆動が行われる。
【0044】
次に、
図5に本実施の形態1における電流ベクトル設定器115の内部構成を中心に詳細に記載したブロック図を示す。
【0045】
電流ベクトル設定器115は、切替器118および切替器119を含む。切替器118および切替器119では、a側(速度制御)、b側(トルク電流一定制御)が切替え可能になっている。つまり、目標と現在回転数の偏差に応じたトルクを用いた速度制御を行う場合はa側に接続し、一定トルクで制御するトルク電流一定制御を行う場合はb側に接続される。
【0046】
[1-2.動作]
以上のように構成された洗濯機1について、以下、その動作および作用を説明する。
【0047】
【0048】
制御部22が入力設定手段10aから運転開始の指示を受け付けると、制御部22は、洗濯機1の運転を開始する(ステップS10)。なお、運転を開始するとは、洗濯コースの運転を開始すること、および、一時停止されていた運転を再開することを含む。
【0049】
ステップS10で運転が開始されると、制御部22は、布量判定を実行する(ステップS100)。ステップS100の布量判定において、制御部22は、洗濯兼脱水槽4を回転させて、モータ6に流れる電流より、洗濯兼脱水槽4内に収容された洗濯物の布量として布量判定値Mを取得する。制御部22は、布量判定値Mを、入力設定手段10aを介して使用者によって直接入力されることにより取得してもよいし、布量を検知する布量検知部が設けられ、布量検知部により検知された布量から取得してもよい。
【0050】
続いて、蓋開閉検知手段16によって蓋体11の開閉が検知される(ステップS101)。蓋開閉検知手段16が、蓋体11が閉じられていることを検知した場合(ステップS101でYESの場合)、制御部22は、蓋ロック手段19を駆動して、蓋体11が開かないように閉状態にロックし、槽回転動作を開始する(ステップS103)。槽回転動作とは、制御部22がモータ6を駆動させて、洗濯兼脱水槽4を回転させる動作のことを示す。
【0051】
洗濯兼脱水槽4の回転が開始された後、制御部22は、槽回転停止指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS104)。制御部22が槽回転停止指示を受け付けた場合(ステップS104でYESの場合)、制御部22は、洗濯兼脱水槽4の回転を減速させるブレーキ制御を開始する(ステップS105)。なお、ステップS104における槽回転停止指示を受け付けているとは、使用者から入力設定手段10aまたは洗濯機1と通信可能に設けられた端末を介して運転の一時停止または運転終了の指示を受け付けていること
、運転終了時または運転の一連の工程において、次の動作を実行するために制御部22が洗濯兼脱水槽4の回転を停止させること、および、停電などにより異常を検知することなどを含む。
【0052】
ステップS105のブレーキ制御において、制御部22は、モータ6に対して逆トルクをかけることで、洗濯兼脱水槽4の回転を減速させる。モータ6に対して逆トルクをかける方法は、モータ6の低電位側のスイッチング素子58、59、60により、3相巻線(U相、V相、W相)と直流電源63のマイナス端子を短絡させるいわゆる短絡ブレーキであっても方法であってもよいし、モータ6に逆トルク電流をかけることで制御するものであってもよい。
【0053】
制御部22は、ブレーキ制御中において、モータ6における全ての相(U相、V相、W相)の相電流(Iu,Iv,Iw)の大きさが所定電流値I0以下(例えば、0.4A以下)であるか否かを判定する(ステップS106)。モータ6における全相の相電流の大きさが所定電流値I0以下となった場合(ステップS106でYESの場合)、制御部22は、モータ6における全相の相電流の大きさが所定電流値I0以下となってから、待ち時間Twが経過したかを判定する(ステップS107)。待ち時間Twについては、後に詳述するが、モータ6における全相の相電流の大きさが所定電流値I0以下となってから、洗濯兼脱水槽4の回転が停止したと推定されるまでの時間である。モータ6における全相の相電流の大きさが所定電流値I0以下となってから、待ち時間Twが経過した場合(ステップS107でYESの場合)、洗濯兼脱水槽4の回転が停止したと推定し(ステップS108)、制御部22は、停止後動作を実行する(ステップS109)。
【0054】
ステップS109における停止後動作として、ステップS104における槽回転停止指示にて、使用者から運転の一時停止または運転終了の指示を受け付けている場合および一連の運転が終了する場合には、制御部22は、蓋ロック手段19による蓋体11のロックを解除する。また、ステップS109以降も運転が継続する場合には、制御部22は、クラッチを切り替えてパルセータ5を回転可能としてもよいし、モータ6を再度起動させて洗濯兼脱水槽4を回転させる槽回転動作を実行してもよい。また、制御部22は、給水弁20を開いて給水してもよいし、ギヤードモータ21aを制御して排水弁21を開いてもよい。また、ステップS104にて停電などの異常を検知した場合には、制御部22は、モータ6を再度起動させて洗濯兼脱水槽4を回転させる槽回転動作を実行してもよいし、表示手段10bおよびブザー等の報知手段を介して異常報知を実行してもよい。
【0055】
図7を用いて、ブレーキ制御中におけるモータ6の相電流と洗濯兼脱水槽4の回転数との関係を説明する。
【0056】
洗濯兼脱水槽4の回転が減速され、洗濯兼脱水槽4の回転数が小さくなると、モータ6を流れる相電流(Iu,Iv,Iw)の大きさが小さくなる。センサレス制御においては、洗濯兼脱水槽4が低回転数で回転している場合の、洗濯兼脱水槽4の実際の回転数を検知することができない。そこで、本実施の形態の洗濯機1では、モータ6における全ての相(U相、V相、W相)の相電流(Iu,Iv,Iw)の大きさが所定電流値I0以下となった場合に、洗濯兼脱水槽4の回転数が低下していると推定し、そこから待ち時間Twが経過した場合に、洗濯兼脱水槽4が停止したと推定する。これにより、センサレス制御において、洗濯兼脱水槽4の回転が停止したことを検知できないものの、相電流の大きさと待ち時間Twとにより、制御部22は、洗濯兼脱水槽4が停止したと推定し、安全に停止後動作(
図6のステップS108)に移行させることができる。なお、本実施の形態において、制御部22は、モータ6における全ての相(U相、V相、W相)の相電流(Iu,Iv,Iw)の大きさと所定電流値I0以下との関係を比較しているが、いずれか1つまたは2つの相電流の大きさより判定してもよい。
【0057】
続いて、表1および
図8を用いて、布量判定値Mと待ち時間Twとの関係を説明する。
【0058】
【0059】
布量判定値Mには、洗濯兼脱水槽4のイナーシャと正の相関があるため、布量判定値Mが大きいと洗濯兼脱水槽4の回転が停止しにくく、洗濯兼脱水槽4の回転の停止までに要する時間が長い。一方で、布量判定値Mが小さいと洗濯兼脱水槽4の回転が停止しやすく、洗濯兼脱水槽4の回転の停止までに要する時間が短い。そのため、表1に示すように、布量判定値Mに応じて待ち時間Twを設定しており、布量判定値Mが大きい場合には、待ち時間Twを長く、布量判定値Mが小さい場合には、待ち時間Twを短く設定している。これにより、相電流(Iu,Iv,Iw)の大きさが所定電流値I0以下となってから待ち時間Tw経過し、洗濯兼脱水槽4の回転が停止したと推定する推定停止時間と、洗濯兼脱水槽4の回転が実際に停止する停止時間との差異を小さくすることができる。なお、
図8に示すように、布量判定値MをX1とし、待ち時間TwをY1とすると、Y1=A1×X1^2+B1×X1+C1(パラメータA1、B1,C1)の関数を設定することで、X1(布量判定値M)とY1(待ち時間Tw)との関係を設定できる。これにより、パラメータA1、B1、C1を適切に設定することで、待ち時間Twに関して布量判定値Mの微小な違いに応じた設定が可能となり、洗濯兼脱水槽4の推定停止時間と停止時間との差異を小さくすることができる。
【0060】
続いて、表2を用いて、より詳細な条件を含めた布量判定値Mと待ち時間Twとの関係を説明する。
【0061】
【0062】
上述のとおり、布量判定値Mには、洗濯兼脱水槽4のイナーシャと正の相関があるため、布量判定値Mが大きいと洗濯兼脱水槽4の回転が停止しにくく、洗濯兼脱水槽4の回転の停止までに要する時間が長い。一方で、布量判定値Mが小さいと洗濯兼脱水槽4の回転が停止しやすく、洗濯兼脱水槽4の回転の停止までに要する時間が短い。そのため、表2においても、布量判定値Mに応じて待ち時間Twを設定しており、布量判定値Mが大きい場合には、待ち時間Twを長く、布量判定値Mが小さい場合には、待ち時間Twを短く設定している。これにより、相電流(Iu,Iv,Iw)の大きさが所定電流値I0以下となってから待ち時間Tw経過し、洗濯兼脱水槽4の回転が停止したと推定する推定停止時間と、洗濯兼脱水槽4の回転が実際に停止する停止時間との差異を小さくすることができる。
【0063】
なお、第1のコースは、2.5kg未満の洗濯物を投入可能なコースであり、第2のコースは、5kg未満の洗濯物を投入可能なコースである。第1のコース、第2のコースのように、投入可能な洗濯物の量が限定されている特定のコースにおいては、布量判定値Mでなく、コースに事前に設定されている布量から待ち時間Twが設定されてもよい。
【0064】
制御部22は、脱水工程および槽回転工程において、洗濯兼脱水槽4を回転させる槽回転動作を実行する。脱水工程は、排水弁21を開いた状態で、水受け槽3および洗濯兼脱水槽4内に水が貯まっていない状態もしくは水が少ない状態で槽回転動作が実行される工程である。一方で、槽回転工程は、排水弁21が閉じた状態で、水受け槽3および洗濯兼脱水槽4内に水が貯められた状態もしくは給水弁20が開かれて給水されている状態で槽回転動作が実行される工程である。槽回転工程の例として、洗い行程における洗い動作、すすぎ行程におけるすすぎ動作などが含まれる。
【0065】
脱水工程においては、洗濯兼脱水槽4内の水が排水された状態で槽回転動作が実行されるされる。一方で、槽回転工程においては、洗濯兼脱水槽4内に水が入っている状態、つまり、洗濯物が水を多く含んだ状態にて槽回転動作が実行される。そのため、槽回転工程では、脱水工程よりも洗濯兼脱水槽4のイナーシャが大きくなるので、洗濯兼脱水槽4の回転が停止しにくく、洗濯兼脱水槽4の回転の停止までに要する時間が長い。そこで、槽回転工程においては、待ち時間Twを長く、脱水工程においては、待ち時間Twを短く設定している。これにより、相電流(Iu,Iv,Iw)の大きさが所定電流値I0以下となってから待ち時間Tw経過し、洗濯兼脱水槽4の回転が停止したと推定する推定停止時間と、洗濯兼脱水槽4の回転が実際に停止する停止時間との差異を小さくすることができる。
【0066】
また、槽回転停止指示(
図6のステップS104)として、使用者から運転の一時停止の指示を受け付けた場合と、それ以外の場合とで、待ち時間Twを異ならせてもよい。
【0067】
槽回転停止指示として使用者から運転の一時停止を受け付けた場合、使用者が運転を一時停止させたいと考えていることから、待ち時間Twを短く設定している。これにより、使用者が洗濯物の追加投入などをするために蓋体11を開きたい場合に、使用者が運転の一時停止の指示をしてから蓋ロック手段19による蓋体11のロックを解除し、蓋体11を開放可能となるまでの時間を短くすることができる。なお、使用者から運転の一時停止の指示を受け付けた場合においても、布量判定値または運転中のコースに応じて待ち時間Twを決定してもよい。
【0068】
一方で、槽回転停止指示として使用者から運転の一時停止を受け付けた場合以外では、待ち時間Twを長く設定している。これにより、実際には洗濯兼脱水槽4の回転が停止していないにも関わらず、洗濯兼脱水槽4が停止したと推定され、停止後動作(
図6のステップS109)が実行されてしまうことによる機器の不具合および故障を抑制できる。例えば、停止後動作としてモータ6を再起動させて洗濯兼脱水槽4を再度回転させる場合には、モータ6の再起動時に、モータ6が停止していないことによる起動不良を抑制できる。また、停止後動作としてクラッチを切り替える場合には、洗濯兼脱水槽4の回転が停止していない状態でクラッチの切り替えを実行することによるクラッチの摩耗や破損を抑制することができる。
【0069】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、洗濯機1は、洗濯機外枠2(筐体)と、洗濯機外枠2内に貯水可能に設けられた水受け槽3(外槽)と、水受け槽3内に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽4と、洗濯兼脱水槽4の回転の駆動源となるモータ6(電動機)と、モータ6の回転を制御し、第1工程を含む運転を制御する制御部22と、を備える。制御部22は、第1工程中の洗濯兼脱水槽4の減速時において、モータ6の相電流の大きさが所定電流値I0(所定値)以下になってから、洗濯物の布量に応じて決定される待ち時間Tw(第1時間)経過すると、停止後動作を実行可能とする。
【0070】
これにより、モータ6の相電流の大きさが所定値以下になってから停止後動作を実行可能とするまでの待ち時間Twを布量に応じて決定できる。そのため、布量に応じて精度よく洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定でき、安全に停止後動作に移行できる。
【0071】
本実施の形態のように、制御部22は、布量が大きいほど、待ち時間Twを長く設定してもよい。
【0072】
これにより、布量が大きいほど、洗濯兼脱水槽4の回転の停止までにかかる時間が長くなる可能性があるので、停止後動作を実行可能とするまでの待ち時間Twを長く設定でき
る。そのため、布量に応じて精度よく洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定でき、安全に停止後動作に移行できる。
【0073】
本実施の形態のように、制御部22は、第1工程が水受け槽3内に水が入った状態で実行される工程である場合の待ち時間Twを、第1工程が水受け槽3内の水が排水された状態で実行される工程である場合の待ち時間Twよりも長く設定してもよい。
【0074】
これにより、水受け槽3内に水が入った状態で実行される工程においては、洗濯兼脱水槽4のイナーシャが大きく、洗濯兼脱水槽4の回転の停止までにかかる時間が長くなる可能性があるので、停止後動作を実行可能とするまでの待ち時間Twを長く設定できる。そのため、布量および水受け槽3内の水の有無に応じて精度よく洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定でき、安全に停止後動作に移行できる。
【0075】
本実施の形態のように、洗濯機1は、洗濯機外枠2に形成される投入口2aを開閉自在に覆う蓋体11と、蓋体11を閉状態にロックする蓋ロック手段19と、をさらに備え、制御部22は、運転の一時停止の指示を受け付けた場合、相電流の大きさが所定電流値I0以下になってから待ち時間Tw経過すると、停止後動作として蓋ロック手段19による蓋体11のロックの解除を実行してもよい。
【0076】
これにより、洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定した後に蓋ロック手段19による蓋体11のロックを解除できる。そのため、使用者が安全に蓋体11を開き、洗濯兼脱水槽4内の洗濯物を取り出すことができる。
【0077】
本実施の形態のように、制御部22は、運転の一時停止の指示を受け付けた場合の待ち時間Twを、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合の待ち時間Twよりも短く設定可能としてもよい。
【0078】
これにより、運転の一時停止の指示を受け付けた場合においては、使用者が蓋体11を開けるために、蓋ロック手段19による蓋体11のロックを解除するまでの待ち時間Twを短く設定し、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合は、安全に停止後動作に移行させるために、停止後動作を実行可能とするまでの待ち時間Twを長く設定できる。
【0079】
本実施の形態のように、制御部22は、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合、相電流の大きさが所定電流値I0以下になってから待ち時間Tw経過すると、停止後動作として、モータ6を再起動させて洗濯兼脱水槽4の回転を実行可能としてもよい。
【0080】
これにより、洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定した後にモータ6を再起動させて洗濯兼脱水槽4を回転させることができる。そのため、モータ6の再起動時に、モータ6が停止していないことによる起動不良が発生することを抑制できる。
【0081】
本実施の形態のように、洗濯機1は、洗濯兼脱水槽4の内方に回転可能に設けられたパルセータ5(撹拌翼)と、モータ6の出力をパルセータ5、あるいはパルセータ5および洗濯兼脱水槽4の回転に切り換えるクラッチをさらに備え、制御部22は、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合、相電流の大きさが所定電流値I0以下になってから待ち時間Tw経過すると、停止後動作として、クラッチの切替えを実行可能としてもよい。
【0082】
これにより、洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定した後にクラッチの切り替えを実行できる。そのため、洗濯兼脱水槽4の回転が停止していない状態でクラッチの切り替えを実行することによるクラッチの摩耗や破損を抑制することができる。
【0083】
(実施の形態2)
以下、
図9を用いて実施の形態2を説明する。実施の形態2では、ステップS106(
図6)がステップ116に置き換えられている点で実施の形態1と異なる。
【0084】
[2-1.動作]
ステップS105までは実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
制御部22は、ブレーキ制御中(ステップS105)において、洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0(例えば、35r/min)以下であるか否かを判定する。洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0以下となった場合(ステップS116でYESの場合)、制御部22は、洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0以下となってから、待ち時間Twが経過したかを判定する(ステップS107)。本実施の形態において、待ち時間Twは、洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0以下となってから、洗濯兼脱水槽4の回転が停止したと推定されるまでの時間である。洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0以下となってから、待ち時間Twが経過した場合(ステップS107でYESの場合)、洗濯兼脱水槽4の回転が停止したと推定し(ステップS108)、制御部22は、停止後動作を実行する(ステップS109)。
【0086】
制御部22は、センサレス制御において、洗濯兼脱水槽4の回転数が大きい場合は、モータ6における相電流の大きさから、洗濯兼脱水槽4の回転数を推定可能である一方で、洗濯兼脱水槽4の回転数が小さい場合には洗濯兼脱水槽4の回転数を推定できない。制御部22が推定可能な洗濯兼脱水槽4の回転数を推定下限回転数(例えば、30r/min)とする場合、所定回転数N0は、推定下限回転数よりもやや高い回転数に設定されることが望ましい。
【0087】
[2-2.効果]
以上のように、本実施の形態において、洗濯機1は、洗濯機外枠2(筐体)と、洗濯機外枠2内に貯水可能に設けられた水受け槽3(外槽)と、水受け槽3内に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽4と、洗濯兼脱水槽4の回転の駆動源となるモータ6(電動機)と、モータ6の回転を制御し、第1工程を含む運転を制御する制御部22と、を備える。制御部22は、第1工程中の洗濯兼脱水槽4の減速時において、洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0(所定値)以下になってから、洗濯物の布量に応じて決定される待ち時間Tw(第1時間)経過すると、停止後動作を実行可能とする。
【0088】
これにより、洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定値以下になってから停止後動作を実行可能とするまでの待ち時間Twを布量に応じて決定できる。そのため、布量に応じて精度よく洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定でき、安全に停止後動作に移行できる。
【0089】
本実施の形態のように、洗濯機1は、洗濯機外枠2に形成される投入口2aを開閉自在に覆う蓋体11と、蓋体11を閉状態にロックする蓋ロック手段19と、をさらに備え、制御部22は、運転の一時停止の指示を受け付けた場合、洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0以下になってから待ち時間Tw経過すると、停止後動作として蓋ロック手段19による蓋体11のロックの解除を実行してもよい。
【0090】
これにより、洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定した後に蓋ロック手段19による蓋体11のロックを解除できる。そのため、使用者が安全に蓋体11を開き、洗濯兼脱水槽4内の洗濯物を取り出すことができる。
【0091】
本実施の形態のように、制御部22は、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合、洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0以下になってから待ち時間Tw経過する
と、停止後動作として、モータ6を再起動させて洗濯兼脱水槽4の回転を実行可能としてもよい。
【0092】
これにより、洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定した後にモータ6を再起動させて洗濯兼脱水槽4を回転させることができる。そのため、モータ6の再起動時に、モータ6が停止していないことによる起動不良が発生することを抑制できる。
【0093】
本実施の形態のように、洗濯機1は、洗濯兼脱水槽4の内方に回転可能に設けられたパルセータ5(撹拌翼)と、モータ6の出力をパルセータ5、あるいはパルセータ5および洗濯兼脱水槽4の回転に切り換えるクラッチをさらに備え、制御部22は、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合、洗濯兼脱水槽4の推定回転数が所定回転数N0以下になってから待ち時間Tw経過すると、停止後動作として、クラッチの切替えを実行可能としてもよい。
【0094】
これにより、洗濯兼脱水槽4の回転の停止を推定した後にクラッチの切り替えを実行できる。そのため、洗濯兼脱水槽4の回転が停止していない状態でクラッチの切り替えを実行することによるクラッチの摩耗や破損を抑制することができる。
【0095】
(実施の形態3)
以下、
図10および
図11を用いて実施の形態3を説明する。
【0096】
[3-1.動作]
洗濯兼脱水槽4の回転数が安定している定常回転中においてモータ6を流れるトルク電流は、洗濯兼脱水槽4のイナーシャと正の相関がある。定常回転中のトルク電流が大きいと、洗濯兼脱水槽4のイナーシャが大きいので、ブレーキ制御時に洗濯兼脱水槽4の回転が停止しにくく、ブレーキ制御時における待ち時間Twが長くなる。一方で、定常回転中のトルク電流が小さいと、洗濯兼脱水槽4のイナーシャが小さいので、ブレーキ制御時に洗濯兼脱水槽4の回転が停止しやすく、ブレーキ制御時における待ち時間Twが短くなる。
【0097】
図10に示すように、洗濯兼脱水槽4の加速中および定常回転に移行直後(例えば、3秒~10秒)においては、トルク電流の大きさが安定しない。そこで、制御部22は、定常回転に移行した後、トルク電流が安定している期間(例えば、定常回転移行から10秒以上経過後)において、所定時間(例えば、1秒)におけるトルク電流の電流値を平均演算する。これにより、定常回転時におけるより正確なトルク電流の電流値を取得できる。
【0098】
図11に示すように、上述で取得した平均トルク電流をX2、待ち時間TwをY2とすると、Y2を、Y2=A2×X2^2+B2×X2+C2(A2、B2,C2はパラメータ)としてX2の関数で設定することができる。これにより、パラメータA2、B2、C2を適切に設定することで、待ち時間Twに関して、布量判定を行わなかった場合あるいは正しい布量判定値を取得できなかった場合においても、制御部22が、既定の待ち時間Twに対して、定常回転中の平均トルク電流から待ち時間Twを調整することで、洗濯兼脱水槽4の推定停止時間と停止時間との差異を小さくすることができる。
【0099】
[3-2.効果]
以上のように、本実施の形態において、制御部22は、洗濯兼脱水槽4の定速回転中におけるモータ6のトルク電流の大きさに応じて、待ち時間Twを調整してもよい。
【0100】
これにより、布量を取得できていない場合にも、定常回転中のトルク電流から待ち時間Twを設定することで、洗濯兼脱水槽4が停止したと推定する時間と、実際に洗濯兼脱水
槽4が停止する時間との差異を小さくできる。
【0101】
(実施の形態4)
以下、
図12および
図13を用いて実施の形態4を説明する。
【0102】
[4-1.動作]
洗濯兼脱水槽4の回転の加速中においてモータ6を流れるトルク電流は、洗濯兼脱水槽4のイナーシャと正の相関がある。加速中のトルク電流が大きいと、洗濯兼脱水槽4のイナーシャが大きいので、ブレーキ制御時に洗濯兼脱水槽4の回転が停止しにくく、ブレーキ制御時における待ち時間Twが長くなる。一方で、加速中のトルク電流が小さいと、洗濯兼脱水槽4のイナーシャが小さいので、ブレーキ制御時に洗濯兼脱水槽4の回転が停止しやすく、ブレーキ制御時における待ち時間Twが短くなる。
【0103】
図12に示すように、洗濯兼脱水槽4の加速中においては、洗濯機1が振動しやすい洗濯兼脱水槽4の回転数(例えば、50~150r/min、200~300r/min、450~550r/min)が存在する。この回転数領域においては、洗濯兼脱水槽4の実回転数およびモータ6を流れるトルク電流が変動しやすくなる。そこで、制御部22は、トルク電流が比較的安定する、振動しやすい回転数領域以外の回転数領域における所定時間(例えば、0.5秒)において、トルク電流の電流値を平均演算する。
【0104】
図13に示すように、上述で取得した平均トルク電流をX3、待ち時間TwをY3とすると、Y3を、Y3=A3×X3^2+B3×X3+C3(A3、B3、C3はパラメータ)としてX3の関数で設定することができる。これにより、パラメータA3、B3、C3を適切に設定することで、待ち時間Twに関して、布量判定を行わなかった場合あるいは正しい布量判定値を取得できなかった場合においても、制御部22が、既定の待ち時間Twに対して、加速中の平均トルク電流から待ち時間Twを調整することで、洗濯兼脱水槽4の推定停止時間と停止時間との差異を小さくすることができる。
【0105】
[4-2.効果]
以上のように、本実施の形態において、制御部22は、洗濯兼脱水槽4の加速中におけるモータ6のトルク電流の大きさに応じて、待ち時間Twを調整してもよい。
【0106】
これにより、布量を取得できていない場合にも、加速中のトルク電流から待ち時間Twを設定することで、洗濯兼脱水槽4が停止したと推定する時間と、実際に洗濯兼脱水槽4が停止する時間との差異を小さくできる。
【0107】
(実施の形態5)
以下、
図14および
図15を用いて実施の形態4を説明する。
【0108】
[5-1.動作]
洗濯兼脱水槽4の回転数が推定可能な回転数範囲において、ブレーキ制御時における、洗濯兼脱水槽4の回転数がある回転数からある回転数まで減速する際に要する時間である減速時間は、洗濯兼脱水槽4のイナーシャと正の相関がある。減速時間が長いと、洗濯兼脱水槽4のイナーシャが大きいので、ブレーキ制御時に洗濯兼脱水槽4の回転が停止しにくく、ブレーキ制御時における待ち時間Twが長くなる。一方で、減速時間が短いと、洗濯兼脱水槽4のイナーシャが小さいので、ブレーキ制御時に洗濯兼脱水槽4の回転が停止しやすく、ブレーキ制御時における待ち時間Twが短くなる。
【0109】
図14に示すように、洗濯兼脱水槽4の減速中においては、洗濯機1が振動しやすい洗濯兼脱水槽4の回転数(例えば、50~150r/min)が存在する。この回転数領域
においては、洗濯兼脱水槽4の実回転数およびモータ6を流れるトルク電流が変動しやすくなる。さらに、制御部22は、センサレス制御において、洗濯兼脱水槽4の回転数が大きい場合は、モータ6における相電流の大きさから、洗濯兼脱水槽4の回転数を推定可能である一方で、洗濯兼脱水槽4の回転数が小さい場合には、洗濯兼脱水槽4の回転数を推定できない。制御部22が推定可能な洗濯兼脱水槽4の回転数を推定下限回転数(例えば、30r/min)とする場合、制御部22は、振動しやすい回転数(例えば、50~150r/min)および推定下限回転数(例えば、30r/min)より低い回転数を避けて、振動や推定回転数精度悪化などの外乱による推定速度の変動が小さい回転数(例えば、35~45r/min)から減速時間を測定する。これにより、より正確な減速時間を取得することができる。
【0110】
図15に示すように、上述で取得した減速時間をX4、待ち時間TwをY4とすると、Y4を、Y4=A4×X4^2+B4×X4+C4(A4、B4、C4はパラメータ)としてX4の関数で設定することができる。これにより、パラメータA4、B4、C4を適切に設定することで、待ち時間Twに関して、布量判定を行わなかった場合あるいは正しい布量判定値を取得できなかった場合においても、制御部22が、既定の待ち時間Twに対して、減速時間から待ち時間Twを調整することで、洗濯兼脱水槽4の推定停止時間と停止時間との差異を小さくすることができる。
【0111】
[5-2.効果]
以上のように、本実施の形態において、制御部22は、洗濯兼脱水槽4の減速中における減速時間の長さに応じて、待ち時間Twを調整してもよい。
【0112】
これにより、布量を取得できていない場合にも、減速中の減速時間から待ち時間Twを設定することで、洗濯兼脱水槽4が停止したと推定する時間と、実際に洗濯兼脱水槽4が停止する時間との差異を小さくできる。
【0113】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1~5を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1~5で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0114】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0115】
実施の形態では、洗濯機の一例として、洗濯兼脱水槽の回転速度を検知する位置検知センサを備えないセンサレス方式による制御を行う洗濯機1を説明した。洗濯機は、洗濯兼脱水槽の回転を制御できるものであればよいので、センサレス方式による制御を行う洗濯機1に限定されない。洗濯機は、回転センサ付きのモータを用いて電流ベクトルを制御するベクトル制御によって制御されてもよいし、電圧や変調度を調整して速度を制御する電圧制御によって制御されてもよい。なお、この場合、実施の形態における推定回転数は回転センサで検知した回転数、推定下限回転数は検知下限回転数と置き換える。
【0116】
実施の形態では、槽回転工程の一例として、洗濯兼脱水槽に水が入った状態で槽回転動作を行う槽回転工程を説明した。槽回転工程は、給水しながら槽回転動作を行ってもよいし、排水しながら槽回転動作を実行してもよい。
【0117】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0118】
第1の態様における洗濯機は、筐体と、筐体内に貯水可能に設けられた外槽と、外槽内に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽と、洗濯兼脱水槽の回転の駆動源となる電動機と、電動機の回転を制御し、第1工程を含む運転を制御する制御部と、を備え、制御部は、第1工程中の洗濯兼脱水槽の減速時において、電動機の相電流の大きさまたは洗濯兼脱水槽の推定回転数が所定値以下になってから、洗濯物の布量に応じて決定される第1時間が経過すると、停止後動作を実行可能とする。
【0119】
第2の態様における洗濯機として、第1の態様における洗濯機において、制御部は、布量が大きいほど、第1時間を長く設定する。
【0120】
第3の態様における洗濯機として、第1または第2の態様における洗濯機において、制御部は、第1工程が外槽内に水が入った状態で実行される工程である場合の第1時間を、第1工程が外槽内の水が排水された状態で実行される工程である場合の第1時間よりも長く設定する。
【0121】
第4の態様における洗濯機は、第1から第3の態様のいずれか1つにおける洗濯機において、筐体に形成される投入口を開閉自在に覆う蓋体と、蓋体を閉状態にロックする蓋ロック手段と、をさらに備え、制御部は、運転の一時停止の指示を受け付けた場合、相電流の大きさまたは推定回転数が所定値以下になってから第1時間経過すると、停止後動作として蓋ロック手段による蓋体のロックの解除を実行する。
【0122】
第5の態様における洗濯機として、第1から第4の態様のいずれか1つにおける洗濯機において、制御部は、運転の一時停止の指示を受け付けた場合の第1時間を、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合の第1時間よりも短く設定可能とする。
【0123】
第6の態様における洗濯機として、第1から第5の態様のいずれか1つにおける洗濯機において、制御部は、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合、相電流の大きさまたは推定回転数が所定値以下になってから第1時間経過すると、停止後動作として、電動機を再起動させて洗濯兼脱水槽の回転を実行可能とする。
【0124】
第7の態様における洗濯機は、第1から第6の態様のいずれか1つにおける洗濯機において、洗濯兼脱水槽の内方に回転可能に設けられた撹拌翼と、電動機の出力を攪拌翼あるいは洗濯兼脱水槽の回転に切り換えるクラッチと、をさらに備え、制御部は、運転の一時停止の指示を受け付けていない場合、相電流の大きさまたは推定回転数が所定値以下になってから第1時間経過すると、停止後動作として、クラッチの切替えを実行可能とする。
【0125】
第8の態様における洗濯機として、第1から第7の態様のいずれか1つにおける洗濯機において、制御部は、洗濯兼脱水槽の一定回転中における電動機のトルク電流の大きさに応じて、第1時間を調整する。
【0126】
第9の態様における洗濯機として、第1から第8の態様のいずれか1つにおける洗濯機において、制御部は、洗濯兼脱水槽の加速中における電動機のトルク電流の大きさに応じて、第1時間を調整する。
【0127】
第10の態様における洗濯機として、第1から第9の態様のいずれか1つにおける洗濯機において、制御部は、洗濯兼脱水槽の減速中における減速時間の長さに応じて、第1時間を調整する。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本開示は、洗濯機に適用可能である。
【符号の説明】
【0129】
1 洗濯機
2 洗濯機外枠(筐体)
2a 投入口
3 水受け槽(外槽)
4 洗濯兼脱水槽
4a 通水孔
5 パルセータ(撹拌翼)
6 モータ(電動機)
7 ベルト
8 伝達手段
9 制御装置
10 操作表示部
10a 入力設定手段
10b 表示手段
11 蓋体
14 磁石
15 感磁素子
16 蓋開閉検知手段
17 ロック部
18 ロックピン
19 蓋ロック手段
20 給水弁
21 排水弁
21a ギヤードモータ
22 制御部
23 スイッチング手段
23a スイッチング制御手段
24 電源回路
55、56、57,58,59,60 スイッチング素子
61 駆動回路
66,67,68 シャント抵抗
70 増幅回路
71 電流検知回路
100 第一の座標変換器
101 電流誤差増幅器
102 誤差減算器
103 誤差減算器
104 座標変換器
105 電流制御部
107 位相誤差検知器
108 速度計算器
110 積分器
111 速度指令手段
112 減算器
113 速度誤差増幅器
115 電流ベクトル設定器
118 切替器
119 切替器