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  • 特開-モータ制御装置 図1
  • 特開-モータ制御装置 図2
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  • 特開-モータ制御装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156286
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20241029BHJP
【FI】
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070629
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祥太
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501JJ17
5H501LL07
5H501LL22
5H501LL35
5H501LL52
5H501LL53
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】モータ制御に関する問題解決に寄与する情報をより確実に提供できるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置1は、モータ3の回転指令を示す情報として機能する入力情報INに応じて、駆動電流ECを生成してモータ3へ出力するモータ制御部11と、少なくとも、当該情報と、回転角度センサ31から出力されたセンシング情報と、を含むデータをモータ制御に関するデータとして記録する記録部として機能する状態監視部13及び状態記録部15と、当該モータ制御に関するデータに基づいて、モータ制御部11及びモータ3のうち少なくとも一方に生じた異常を検知する異常検知部14と、を備え、当該記録部は、当該モータ制御に関するデータのうち、異常に関するデータを上書き禁止状態で記録する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転指令を示す情報の外部からの入力に応じて、前記モータを動作させる電流を生成して前記モータへ出力するモータ制御部と、
少なくとも、前記情報と、前記モータに設けられたセンサから出力されたセンシング情報と、を含むデータをモータ制御に関するデータとして記録する記録部と、
前記モータ制御に関するデータに基づいて、前記モータ制御部及び前記モータのうち少なくとも一方に生じた異常を検知する異常検知部と、を備え、
前記記録部は、前記モータ制御に関するデータのうち、前記異常に関するデータを上書き禁止状態で記録する、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記記録部は、前記モータ制御に関するデータのうち一部のデータの保存指令を示す外部からの入力に応じて、前記一部のデータを上書き禁止状態で記録する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記異常に関するデータは、外部の入力に応じて選択される、
請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記記録部の記録容量として扱える外部の記録装置を接続可能なインタフェースを備える、
請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの制御に並行してモータの制御情報を示すデータをサンプリングして記録し、モータの故障とみなされる異常が生じた場合に当該データを不揮発性メモリに書き込む構成として、過電流か、過熱か、どちらが先に異常になったかを示すデータを不揮発性メモリに記憶する構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-088187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モータ制御に関する異常は、過電流と過熱に限られるものでなく、特許文献1に記載の構成では、他の異常に関するデータを得られず、モータ制御に関する問題解決には不十分であった。従って、モータ制御に関する問題解決に寄与する情報をより確実に得られる仕組みが求められていた。
【0005】
本発明は、モータ制御に関する問題解決に寄与する情報をより確実に提供できるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明のモータ制御装置は、モータの回転指令を示す情報の外部からの入力に応じて、前記モータを動作させる電流を生成して前記モータへ出力するモータ制御部と、少なくとも、前記情報と、前記モータに設けられたセンサから出力されたセンシング情報と、を含むデータをモータ制御に関するデータとして記録する記録部と、前記モータ制御に関するデータに基づいて、前記モータ制御部及び前記モータのうち少なくとも一方に生じた異常を検知する異常検知部と、を備え、前記記録部は、前記モータ制御に関するデータのうち、前記異常に関するデータを上書き禁止状態で記録する。
【0007】
従って、異常に関するデータを事後確認可能な状態で保持できる。よって、異常に関するデータを事後分析することで、モータ制御にどのような問題が生じているのかを把握しやすくなる。すなわち、モータ制御に関する問題解決に寄与する情報をより確実に提供できる。
【0008】
本発明のモータ制御装置では、前記記録部は、前記モータ制御に関するデータのうち一部のデータの保存指令を示す外部からの入力に応じて、前記一部のデータを上書き禁止状態で記録する。
【0009】
従って、モータ制御に関するデータのうち所望の部分データを上書き禁止状態で記録できる。
【0010】
本発明のモータ制御装置では、前記異常に関するデータは、外部の入力に応じて選択される。
【0011】
従って、異常に関するデータとして扱われる情報を任意に選択できる。
【0012】
本発明のモータ制御装置では、前記記録部の記録容量として扱える外部の記録装置を接続可能なインタフェースを備える。
【0013】
従って、記録部の記録容量を任意に追加、拡張できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のモータ制御装置によれば、モータ制御に関する問題解決に寄与する情報をより確実に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態のモータ制御装置及びモータ制御装置に接続される構成を示すブロック図である。
図2図2は、状態記録部に記録されるデータに関する処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、電源電圧が下がる異常が生じた場合の電源電圧の推移と、当該異常が生じたことを示す電源低電圧アラーム信号の発生と、の関係の一例を示すタイムチャートである。
図4図4は、電源電圧が一定であるにもかかわらず電源低電圧アラーム信号が発生している例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0017】
図1は、実施形態のモータ制御装置1及びモータ制御装置1に接続される構成を示すブロック図である。モータ制御装置1は、モータ制御部11と、電流センサ12と、状態監視部13と、異常検知部14と、状態記録部15と、インバータ21と、主電源監視部22と、を備える。モータ制御装置1は、コントローラ2からの入力情報INに応じてモータ3の動作を制御するモータドライバとして機能する。実施形態のモータ3は、サーボ機構に設けられたサーボモータであるが、これに限られるものでない。モータ3として、少なくとも回転角度を示す情報を含むセンシング情報SOがフィードバックされるモータが想定される。
【0018】
モータ制御部11は、コントローラ2からの入力情報INに応じてインバータ21の動作を制御して、外部の主電源41を電源とした駆動電流ECをインバータ21に生成させることで、モータ3に対する駆動電流ECの供給を制御する回路である。入力情報INは、モータ3に対する回転指令として機能する情報を含む。より具体的には、当該回転指令は、モータ3が設けられたサーボ機構の動作における目標値(動作後の状態に対応する制御用の値)を示す情報を含む。モータ制御部11は、サーボ機構が当該目標値に対応した状態になるようにモータ3を動作させる駆動電流ECを出力する。
【0019】
なお、コントローラ2は、例えばモータ制御部11を介してモータ3を制御することを想定して設けられたPLC(Programmable Logic Controller)であるが、これに限られるものでなく、例えばPC(Personal Computer)やワークステーションのような他の形態による情報処理装置であってもよい。
【0020】
モータ3は、駆動電流ECの供給に応じて動作する。モータ3には、回転角度センサ31が設けられている。回転角度センサ31は、センシング情報SOをモータ制御部11へ出力する。センシング情報SOは、モータ3において回転駆動されるロータの回転角度を示す情報を含む。より具体的には、モータ3は、例えば回転角度を検知するセンサとして機能するエンコーダであるが、レゾルバをエンコーダのように使用する構成であってもよい。
【0021】
電流センサ12は、駆動電流ECを検知し、検知された駆動電流ECを示す情報をモータ制御部11へフィードバックするセンサである。状態監視部13は、モータ制御部11の動作状態を監視する回路である。具体的には、モータ制御部11は、モータ制御に関するデータを状態監視部13へ出力する。以下、単に「モータ制御に関するデータ」と記載した場合、モータ制御部11から状態監視部13へ出力される当該データをさす。モータ制御に関するデータは、例えば、コントローラ2から出力されてモータ制御部11へ入力された入力情報INと、当該入力情報INに対応して生成された駆動電流ECを示す情報と、当該駆動電流ECを電流センサ12が検知してフィードバックした情報と、当該駆動電流ECに応じて動作したモータ3の回転角度センサ31から出力されてモータ制御部11へ入力されたセンシング情報SOが示す情報と、を含む。これらの情報の時間的な前後関係は、例えばモータ制御部11からのこれらの情報の出力タイミングと、回路のクロック信号との関係によって特定されるが、モータ制御部11が予め時間的な前後関係を示す情報をさらに付加して状態監視部13へ出力するようにしてもよい。なお、モータ制御に関するデータは、入力情報INのようなコントローラ2とモータ制御部11との間の伝達経路を介してコントローラ2へ出力されてもよい。
【0022】
なお、モータ制御に関するデータは、さらなる情報を含んでいてもよい。当該さらなる情報の例として、モータ3の温度、駆動電流ECの電圧、モータ3のロータの回転速度、加速度及びトルク等が挙げられる。モータ3の温度及び駆動電流ECの電圧は、モータ制御部11によって決定される駆動電流ECの電流値や電流センサ12からフィードバックされる情報に基づいて算出できる。モータ3のロータの回転速度、加速度及びトルクは、回転角度センサ31から出力されるセンシング情報SOが示すモータの回転角の時系列変化に基づいて算出できる。当該さらなる情報の算出に係る演算処理は、モータ制御部11が行ってもよいし、状態監視部13が行ってもよい。
【0023】
異常検知部14は、モータ制御に関するデータにモータ制御部11及びモータ3の少なくとも一方の異常を示す情報が含まれていた場合、当該異常を検知する。例えば、モータ制御部11とモータ3の動作が正常である場合、コントローラ2から出力されてモータ制御部11へ入力された入力情報INと、当該入力情報INに対応して生成された駆動電流ECを示す情報と、当該駆動電流ECを電流センサ12が検知してフィードバックした情報と、当該駆動電流ECに応じて動作したモータ3の回転角度センサ31から出力されてモータ制御部11へ入力されたセンシング情報SOと、の間には整合性がある。係る整合性は、パターニングや演算等で特定可能である。一方、係る整合性が成立しない不整合が生じた場合、それはモータ制御部11及びモータ3の少なくとも一方に何らかの異常が生じたことを示す。異常検知部14は、係る技術的思想に基づいたモータ制御に関するデータの解析処理を行い、モータ制御に関するデータに異常がある場合に当該異常を検知する。なお、異常検知部14がモータ制御に関するデータを取得する方法は、状態監視部13からのパススルーであってもよいし、モータ制御部11から状態監視部13への出力と同様にモータ制御部11から直接的にモータ制御に関するデータが異常検知部14へ出力されてもよい。
【0024】
状態記録部15は、モータ制御に関するデータを記録する。状態記録部15は、例えばフラッシュメモリのような、書き換え可能な不揮発性メモリとして動作する回路を含むが、これに限られるものでなく、バックアップ電源を備えた揮発性メモリその他の記録装置によってもよい。状態記録部15に対するモータ制御に関するデータの出力は、例えば状態監視部13によって行われるが、異常が生じない限り、モータ制御部11からモータ制御に関するデータが状態記録部15に出力されて記録されるようにしてもよい。
【0025】
状態記録部15は、コントローラ2からアクセス可能に設けられる。図2では、コントローラ2から状態記録部15へのアクセス(入力)と、当該アクセスに応じた状態記録部15からコントローラ2へのデータの読み出し(出力)とが行われるデータの伝達経路を、入出力経路IOとして示している。
【0026】
なお、図1では、モータ制御部11、状態監視部13及び異常検知部14が個別に記載されているが、これらの一部又は全部は、パッケージングされた回路(例えば、SoC:System on a Chip)であってもよい。
【0027】
インバータ21は、主電源41からの電力供給に基づいて駆動電流ECを生成する電源回路である。主電源監視部22は、主電源41とインバータ21との間の配線における電力供給監視を行う。すなわち、主電源監視部22による監視によって、駆動電流ECに異常が生じた場合の原因が、主電源41の異常によるものか、インバータ21又はインバータ21の動作を制御するモータ制御部11によるものか、を区別できる。なお、モータ制御部11、状態監視部13、異常検知部14、状態記録部15等、モータ制御装置1が備える各種の回路は、主電源41とは別の制御電源42からの電力供給を受けて動作する。なお、状態監視部13、異常検知部14、状態記録部15を動作させるための電力は、制御電源42からに限られず、モータ制御装置1内の電池や“他の外部電源”からの供給によってもよい。
【0028】
次に、異常検知部14の動作に関する事項、特に、モータ制御に関するデータにモータ制御部11及びモータ3の少なくとも一方の異常を示す情報が含まれていた場合についてより詳細に説明する。以下、「異常の発生時」の記載は、当該場合をさす。
【0029】
異常の発生時、異常検知部14は、当該異常の発生及び当該異常のうち少なくとも一方を示す情報を状態監視部13へ出力する。状態監視部13は、モータ制御に関するデータのうち、当該異常が発生したと判定された情報を含む部分データを異常に関するデータとして状態記録部15へ上書き禁止状態で記録する。当該異常に関するデータは、異常と判定された瞬間のデータだけでなく、異常の発生前後の所定期間中のデータをさらに含むことが望ましい。当該所定期間は、任意であるが、異常に関するデータが膨大になりすぎない程度であることが望ましい。一例として、当該所定期間の一例として、異常が発生したと判断された瞬間のデータから前後して10秒程度の期間が挙げられるが、数秒から数時間程度の範囲内で変更可能であることが望ましい。
【0030】
また、異常に関するデータは、モータ制御に関するデータのうち当該所定期間に該当する全てのデータであってもよいし、モータ制御に関するデータのうち当該所定期間に該当し、かつ、異常に関する一部のデータであってもよい。どのデータが異常に関する一部のデータとみなされるかは、正常系から見た場合に異常(不整合)が生じたと判定されたデータそのものであってもよいし、過去の事例に鑑みて、当該異常が発生した場合に同時に記録しておくべきデータとして扱われるデータをさらに含んでいてもよい。
【0031】
どのデータに異常(不整合)が生じた場合に他のデータを併せて記録すべきかどうかの決定条件は、予め定められていてもよいし、当該異常が生じた場合にモータ制御装置1の動作が一時停止して、当該決定条件を適宜選択可能となるように設けられてもよい。当該決定条件が予め定められている場合、異常検知部14によって当該決定条件を示すデータが保持されているものとする。当該決定条件を適宜選択可能となるように設けられている場合、モータ制御部11からコントローラ2に対して当該異常が生じたことを示すデータが出力され、コントローラ2からの応答を待つ状態で待機する。コントローラ2を介してオペレータによって当該決定条件が定められた場合、定められた当該決定条件に応じたデータの上書き禁止状態での記録が行われる。
【0032】
なお、状態記録部15の記録容量は無限ではない。従って、モータ制御装置1の動作に伴い、モータ制御に関するデータのデータ量は、いつか状態記録部15の記録容量を上回る。実施形態では、状態記録部15に空き容量がない場合、既に状態記録部15に記録されているモータ制御に関するデータのうちより古いデータを、最新のモータ制御に関するデータで上書きする。ただし、異常に関するデータとして状態記録部15へ上書き禁止状態で記録されたデータについては、当該上書きの対象外である。
【0033】
モータ制御装置1は、状態記録部15の記録領域として扱うことが可能な記録領域を有する追加の記録装置を増設可能に設けられてもよい。その場合、状態監視部13等の回路からアクセス可能なデータバスと接続されたインタフェースがモータ制御装置1に設けられる。追加の記録装置は、当該インタフェースに接続される。
【0034】
図2は、状態記録部15に記録されるデータに関する処理の流れを示すフローチャートである。モータ制御装置1の電源がONされている場合(ステップS1;Yes)、モータ制御装置1及びモータ3の動作に応じて、モータ制御に関するデータの記録が逐次行われる(ステップS2)。
【0035】
異常検知部14は、異常が検知されたか判定する(ステップS3)。すなわち、異常検知部14は、モータ制御に関するデータにモータ制御部11及びモータ3の少なくとも一方の異常を示す情報が含まれているか判定する。異常が検知されない限り(ステップS3;No)、ステップS1の処理へ戻る。
【0036】
ステップS3の処理で、異常が検知されたと判定された場合(ステップS3;Yes)、異常検知部14は、当該異常の発生及び当該異常のうち少なくとも一方を示す情報を状態監視部13へ出力する。状態監視部13は、モータ制御に関するデータのうち、当該異常が発生したと判定された情報を含む部分データを異常に関するデータとして状態記録部15へ上書き禁止状態で記録する(ステップS4)。
【0037】
ステップS4の処理後、状態記録部15が上書き禁止データで満たされたかの判定が行われる(ステップS5)。ステップS5の判定主体は、例えば状態監視部13であるが、他の構成(例えば、状態記録部15に含まれる回路等)であってもよい。状態記録部15が上書き禁止データで満たされない限り(ステップS5;No)、ステップS1の処理へ戻る。状態記録部15が上書き禁止データで満たされたと判定された場合(ステップS5;Yes)及びステップS1の処理で電源OFFとされた場合(ステップS1;No)、処理は終了する。
【0038】
なお、状態記録部15へ上書き禁止状態で記録可能なデータは、異常に関するデータに限られない。例えば、コントローラ2からのデータ保存指令に応じて、当該データ保存指令で指定された期間に対応するデータ又は当該データ保存指令がモータ制御部11に入力されたタイミングに前後する所定期間に対応するデータがモータ制御に関するデータから抽出されて上書き禁止状態で記録されるようにしてもよい。この記録の動作主体は、例えばモータ制御部11であるが、モータ制御部11の制御下で状態監視部13又は異常検知部14が行ってもよい。
【0039】
以下、異常に関するデータに基づいた異常の特定について、図3及び図4を参照して説明する。なお、異常の特定に際しては、作業者が、コントローラ2又は状態記録部15に記録されたデータを読み出して出力可能な情報処理装置を用いてデータの内容を確認することで行われる。
【0040】
図3は、電源電圧が下がる異常が生じた場合の電源電圧の推移と、当該異常が生じたことを示す電源低電圧アラーム信号の発生と、の関係の一例を示すタイムチャートである。なお、電源電圧とは、主電源41からインバータに供給される電力の電圧をさす。状態監視部13は、主電源監視部22の出力に基づき、電源電圧を監視可能に設けられている。
【0041】
図3に示す例では、電源電圧がタイミングT0以降に下がり続け、タイミングT1にアラーム閾値以下になっている。電源低電圧アラーム信号は、電源電圧がアラーム閾値以下になった場合に生じる信号である。従って、図3に示すタイムチャートにおける電源低電圧アラーム信号の発生は、正常である。また、図3に示す例では、異常を生じているのは電源電圧の供給経路上の構成であるとタイムチャートのログデータから推定できる。具体的には、主電源41又は主電源監視部22が接続されている主電源41とインバータ21との接続経路に異常が生じているものと推定できる。
【0042】
図4は、電源電圧が一定であるにもかかわらず電源低電圧アラーム信号が発生している例を示すタイムチャートである。図4に示す例では、電源電圧が一定であるにもかかわらず、タイミングT2に電源低電圧アラーム信号が生じる異常が発生している。従って、図4に示す例では、異常を生じているのは電源低電圧アラーム信号を生じさせる構成であるとタイムチャートのログデータから推定できる。具体的には、電源低電圧アラーム信号を発生させる構成(例えば、異常検知部14)に異常が生じているものと推定できる。
【0043】
図3及び図4を参照して説明したように、異常が生じた場合に発生するアラーム信号のログだけでなく、当該アラーム信号が発生する原因となる事象のデータが、当該アラーム信号の発生前の時点から継続的に記録されていることで、異常の原因をより特定しやすくできる。このように、異常に関するデータを事後確認可能にすることで、モータ制御に関する問題解決に寄与する情報をより確実に提供できる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、モータ制御装置1は、モータ3の回転指令を示す情報の外部からの入力(入力情報IN)に応じて、モータ3を動作させる電流(駆動電流EC)を生成してモータ3へ出力するモータ制御部11と、少なくとも、当該情報と、モータ3に設けられたセンサ(例えば、回転角度センサ31)から出力されたセンシング情報と、を含むデータをモータ制御に関するデータとして記録する記録部(状態監視部13及び状態記録部15)と、当該モータ制御に関するデータに基づいて、モータ制御部11及びモータ3のうち少なくとも一方に生じた異常を検知する異常検知部14と、を備える。当該記録部は、当該モータ制御に関するデータのうち、異常に関するデータを上書き禁止状態で記録する。
【0045】
従って、異常に関するデータを事後確認可能な状態で保持できる。よって、異常に関するデータを事後分析することで、モータ制御にどのような問題が生じているのかを把握しやすくなる。すなわち、モータ制御に関する問題解決に寄与する情報をより確実に提供できる。
【0046】
また、記録部(状態監視部13及び状態記録部15)は、モータ制御に関するデータのうち一部のデータの保存指令を示す外部(例えば、コントローラ2)からの入力に応じて、一部のデータを上書き禁止状態で記録することで、モータ制御に関するデータのうち所望の部分データを上書き禁止状態で記録できる。
【0047】
また、モータ制御に関するデータのうち、異常に関するデータとして扱われる対象を、外部(例えば、コントローラ2)の入力に応じて選択可能にすることで、異常に関するデータとして扱われる情報を任意に選択できる。
【0048】
また、状態記録部15の記録容量として扱える外部の記録装置を接続可能なインタフェースを備えることで、状態記録部15の記録容量を任意に追加、拡張できる。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ制御装置
2 コントローラ
3 モータ
11 モータ制御部
12 電流センサ
13 状態監視部
14 異常検知部
15 状態記録部
31 回転角度センサ
図1
図2
図3
図4