(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156289
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20241029BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20241029BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
E02F9/24 H
E02F9/26 B
E02F3/43 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070632
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 将
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭二
(72)【発明者】
【氏名】平手 奨二
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA07
2D003BB11
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB02
2D015GB04
2D015GB07
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】上部旋回体を法面に正対させる際のアタッチメントと法面との接触の有無を事前に把握できるショベルを提供すること。
【解決手段】ショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるアタッチメントATと、アタッチメントATの姿勢を検出する姿勢検出装置と、法面の位置情報とアタッチメントATの姿勢とに基づき、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触するか否かを判定するコントローラ30と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントの姿勢を検出する姿勢検出装置と、
法面の位置情報と前記アタッチメントの姿勢とに基づき、前記上部旋回体の旋回中に前記アタッチメントと前記法面とが接触するか否かを判定する制御装置と、を有する、
ショベル。
【請求項2】
前記制御装置は、前記上部旋回体の旋回中に前記アタッチメントと前記法面とが接触すると判定した場合、前記上部旋回体の旋回中に前記アタッチメントと前記法面とが接触しないように、前記上部旋回体を旋回させる旋回アクチュエータを制御する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制御装置は、所定の操作具が操作されている間、前記上部旋回体の旋回中に前記アタッチメントと前記法面とが接触するか否かを判定する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置は、前記上部旋回体の旋回中に、前記アタッチメントを操作する操作装置に対する操作者の操作に応じ、バケットの所定部位を前記法面に沿って移動させる、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御装置は、前記上部旋回体が前記法面に正対したときに、前記上部旋回体を旋回させる旋回アクチュエータを停止させる、
請求項4に記載のショベル。
【請求項6】
前記制御装置は、前記上部旋回体が前記法面に正対したときに、前記アタッチメントを動作させるアタッチメントアクチュエータを停止させる、
請求項5に記載のショベル。
【請求項7】
前記制御装置は、前記上部旋回体の旋回中に前記アタッチメントと前記法面とが接触しないように前記旋回アクチュエータを制御したことを操作者に知らせる、
請求項2に記載のショベル。
【請求項8】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントの姿勢を検出する姿勢検出装置と、
前記上部旋回体を旋回させたときに前記アタッチメントの所定部位が描く軌道又はその近似直線を算出する制御装置と、を有する、
ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上部旋回体を法面に正対させることができるショベルが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のショベルは、上部旋回体が法面に正対する前に、アタッチメントを法面に接触させてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、上部旋回体を法面に正対させる際のアタッチメントと法面との接触の有無を事前に把握できるショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記アタッチメントの姿勢を検出する姿勢検出装置と、法面の位置情報と前記アタッチメントの姿勢とに基づき、前記上部旋回体の旋回中に前記アタッチメントと前記法面とが接触するか否かを判定する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
上述のショベルは、上部旋回体を法面に正対させる際のアタッチメントと法面との接触の有無を事前に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係るショベルの側面図である。
【
図3】
図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
【
図4A】アームシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4B】ブームシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4C】バケットシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4D】旋回油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4E】左走行油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4F】右走行油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図6】接触判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】法面整形作業を行うショベルの上面図である。
【
図8】法面整形作業を行うショベルの斜視図である。
【
図9】法面整形作業を行うショベルの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。
図1はショベル100の側面図であり、
図2はショベル100の上面図である。
【0010】
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1はクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行アクチュエータとしての走行油圧モータ2Mによって駆動される。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行油圧モータ2MRによって駆動される。
【0011】
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回アクチュエータとしての旋回油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回アクチュエータは、電動アクチュエータとしての旋回電動発電機であってもよい。
【0012】
上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントATの一例である掘削アタッチメントを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、アタッチメントアクチュエータを構成している。バケット6は、例えば、法面バケットであってもよい。また、バケット6は、バケットチルト機構を備えていてもよい。
【0013】
ブーム4は、上部旋回体3に対して上下に回動可能に支持されている。そして、ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられている。ブーム角度センサS1は、ブーム4の回動角度であるブーム角度θ1を検出できる。ブーム角度θ1は、例えば、ブーム4を最も下降させた状態からの上昇角度である。そのため、ブーム角度θ1は、ブーム4を最も上昇させたときに最大となる。
【0014】
アーム5は、ブーム4に対して回動可能に支持されている。そして、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられている。アーム角度センサS2は、アーム5の回動角度であるアーム角度θ2を検出できる。アーム角度θ2は、例えば、アーム5を最も閉じた状態からの開き角度である。そのため、アーム角度θ2は、アーム5を最も開いたときに最大となる。
【0015】
バケット6は、アーム5に対して回動可能に支持されている。そして、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。バケット角度センサS3は、バケット6の回動角度であるバケット角度θ3を検出できる。バケット角度θ3は、バケット6を最も閉じた状態からの開き角度である。そのため、バケット角度θ3は、バケット6を最も開いたときに最大となる。
【0016】
図1の実施形態では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3のそれぞれは、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されている。但し、加速度センサのみで構成されていてもよい。また、ブーム角度センサS1は、ブームシリンダ7に取り付けられたストロークセンサであってもよく、ロータリエンコーダ、ポテンショメータ又は慣性計測装置等であってもよい。アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3についても同様である。
【0017】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、空間認識装置70、向き検出装置71、測位装置73、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5等が取り付けられている。キャビン10の内部には、操作装置26、コントローラ30、情報入力装置72、表示装置D1、及び音出力装置D2等が設けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、アタッチメントATが取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
【0018】
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識するように構成されている。また、空間認識装置70は、空間認識装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、撮像装置、LIDAR、距離画像センサ、赤外線センサ等、又はそれらの任意の組み合わせを含む。撮像装置は、例えば、単眼カメラ又はステレオカメラ等である。本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方センサ70Rを含む。上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を認識する上方センサがショベル100に取り付けられていてもよい。
【0019】
向き検出装置71は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報を検出するように構成されている。向き検出装置71は、例えば、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサの組み合わせで構成されていてもよい。或いは、向き検出装置71は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機の組み合わせで構成されていてもよい。向き検出装置71は、ロータリエンコーダ、ロータリポジションセンサ等、又は、それらの任意の組み合わせであってもよい。旋回電動発電機で上部旋回体3が旋回駆動される構成では、向き検出装置71は、レゾルバで構成されていてもよい。向き検出装置71は、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに取り付けられていてもよい。
【0020】
向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられたカメラで構成されていてもよい。この場合、向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられているカメラが撮像した画像(入力画像)に既知の画像処理を施して入力画像に含まれる下部走行体1の画像を検出する。そして、向き検出装置71は、既知の画像認識技術を用いて下部走行体1の画像を検出することで、下部走行体1の長手方向を特定する。そして、上部旋回体3の前後軸の方向と下部走行体1の長手方向との間に形成される角度を導き出す。上部旋回体3の前後軸の方向は、カメラの取り付け位置から導き出される。特に、クローラ1Cは上部旋回体3から突出しているため、向き検出装置71は、クローラ1Cの画像を検出することで下部走行体1の長手方向を特定できる。この場合、向き検出装置71は、コントローラ30に統合されていてもよい。また、カメラは、空間認識装置70であってもよい。
【0021】
情報入力装置72は、ショベルの操作者がコントローラ30に対して情報を入力できるように構成されている。本実施形態では、情報入力装置72は、表示装置D1の表示部に近接して設置されるスイッチパネルである。但し、情報入力装置72は、表示装置D1の表示部の上に配置されるタッチパネルであってもよく、キャビン10内に配置されているマイクロフォン等の音入力装置であってもよい。また、情報入力装置72は、外部からの情報を取得する通信装置であってもよい。
【0022】
測位装置73は、上部旋回体3の位置を測定するように構成されている。本実施形態では、測位装置73は、GNSS受信機であり、上部旋回体3の位置を検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。測位装置73は、GNSSコンパスであってもよい。この場合、測位装置73は、上部旋回体3の位置及び向きを検出できるため、向き検出装置71としても機能する。
【0023】
機体傾斜センサS4は、所定の平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に関する上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角及び左右軸回りの傾斜角を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
【0024】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
【0025】
以下では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5の少なくとも1つは、姿勢検出装置とも称される。アタッチメントATの姿勢は、例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3のそれぞれの出力に基づいて検出される。
【0026】
表示装置D1は、情報を表示する装置である。本実施形態では、表示装置D1は、キャビン10内に設置された液晶ディスプレイである。但し、表示装置D1は、スマートフォン等の携帯端末のディスプレイであってもよい。
【0027】
音出力装置D2は、音を出力する装置である。音出力装置D2は、キャビン10内の操作者に向けて音を出力する装置、及び、キャビン10外の作業者に向けて音を出力する装置の少なくとも1つを含む。携帯端末のスピーカであってもよい。
【0028】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、例えば、操作レバー及び操作ペダルを含む。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも1つを含む。
【0029】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、対応する処理をCPUに実行させる。各機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を支援したり或いはショベル100を自動的或いは自律的に動作させたりするマシンコントロール機能を含む。コントローラ30は、ショベル100の周囲の監視範囲内に存在する物体とショベル100との接触を回避するためにショベル100を自動的或いは自律的に動作させたり或いは停止させたりする接触回避機能を含んでいてもよい。ショベル100の周囲の物体の監視は、監視範囲内だけでなく監視範囲外に対しても実行される。
【0030】
次に、
図3を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。
図3は、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図3は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン、電気制御系を、それぞれ、二重線、実線、破線、点線で示している。
【0031】
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作センサ29、及びコントローラ30等を含む。
【0032】
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させることができるように構成されている。
【0033】
エンジン11は、ショベル100の動力源の一例である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0034】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0035】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0036】
パイロットポンプ15は、制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートに作用する制御圧であるパイロット圧を生成するパイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
【0037】
コントロールバルブユニット17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁176Rを含む。コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171~176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行油圧モータ2ML、右走行油圧モータ2MR及び旋回油圧モータ2Aを含む。
【0038】
操作装置26は、操作者がアクチュエータを操作できるように構成されている。本実施形態では、操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータを操作できるように構成された油圧アクチュエータ操作装置を含む。具体的には、油圧アクチュエータ操作装置は、電磁弁を用いて、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できるように構成されている。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0039】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出できるように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0040】
操作センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出できるように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。図示例では、操作センサ29は、操作レバーの操作角度を検出する操作角度センサである。
【0041】
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0042】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0043】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0044】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0045】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0046】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0047】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0048】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0049】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0050】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、及び175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、及び175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0051】
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(吸収馬力)がエンジン11の出力パワー(出力馬力)を超えないようにするためである。
【0052】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0053】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0054】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0055】
図3に示す例では、左操作レバー26Lは、前後方向に操作されたときにアーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときに旋回操作レバーとして機能する。
【0056】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0057】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0058】
図3に示す例では、右操作レバー26Rは、前後方向に操作されたときにブーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときにバケット操作レバーとして機能する。
【0059】
走行レバー26Dは、クローラ1Cの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0060】
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0061】
操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0062】
同様に、操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0063】
コントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
【0064】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0065】
具体的には、
図3で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
【0066】
上述のような構成により、
図3の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、
図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
【0067】
また、ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。また、旋回油圧モータ2Aには左旋回圧センサS10L及び右旋回圧センサS10Rが取り付けられている。
【0068】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。左旋回圧センサS10Lは、旋回油圧モータ2Aの左側ポートにおける作動油の圧力を検出する。右旋回圧センサS10Rは、旋回油圧モータ2Aの右側ポートにおける作動油の圧力を検出する。各センサで検出された値は、コントローラ30に送信される。
【0069】
次に、
図4A~
図4Fを参照し、コントローラ30がアクチュエータを動作させるための構成について説明する。
図4A~
図4Fは、油圧システムの一部を抜き出した図である。具体的には、
図4Aは、アームシリンダ8の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、
図4Bは、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図4Cは、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、
図4Dは、旋回油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図4Eは、左走行油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、
図4Fは、右走行油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0070】
図4A~
図4Fに示すように、油圧システムは、電磁弁31を含む。電磁弁31は、電磁弁31AL~電磁弁31FL及び電磁弁31AR~電磁弁31FRを含む。
【0071】
電磁弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、開口面積を変更することにより、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、電磁弁31は、電磁比例弁であり、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作に応じ、又は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31を介し、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。そして、コントローラ30は、電磁弁31が生成するパイロット圧を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0072】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合に加え、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
【0073】
例えば、
図4Aに示すように、左操作レバー26Lは、アーム5を操作するために用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0074】
左操作レバー26LにはスイッチNSが設けられている。本実施形態では、スイッチNSは、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。操作者は、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
【0075】
操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0076】
電磁弁31ALは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31ARは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31ALは、制御弁176L及び制御弁176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。同様に、電磁弁31ARは、制御弁176L及び制御弁176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0077】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作に応じ、或いは、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、アーム5を閉じることができる。このように、電磁弁31ALは、「アーム用電磁弁」又は「アーム閉じ用電磁弁」として機能する。
【0078】
また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作に応じ、或いは、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、アーム5を開くことができる。このように、電磁弁31ARは、「アーム用電磁弁」又は「アーム開き用電磁弁」として機能する。
【0079】
また、この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁176の閉じ側のパイロットポート(制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポート)に作用するパイロット圧を減圧し、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させることができる。操作者によるアーム開き操作が行われているときにアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0080】
或いは、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、電磁弁31ARを制御し、制御弁176の閉じ側のパイロットポートの反対側にある、制御弁176の開き側のパイロットポート(制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポート)に作用するパイロット圧を増大させ、制御弁176を強制的に中立位置に戻すことで、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させてもよい。操作者によるアーム開き操作が行われている場合にアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0081】
また、以下の
図4B~
図4Fを参照しながらの説明を省略するが、操作者によるブーム上げ操作又はブーム下げ操作が行われている場合にブーム4の動作を強制的に停止させる場合、操作者によるバケット閉じ操作又はバケット開き操作が行われている場合にバケット6の動作を強制的に停止させる場合、及び、操作者による旋回操作が行われている場合に上部旋回体3の旋回動作を強制的に停止させる場合、についても同様である。また、操作者による走行操作が行われている場合に下部走行体1の走行動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0082】
また、コントローラ30は、アーム操作(アーム閉じ操作及びアーム開き操作)の応答性を良くするため、アーム操作が行われる前から微小なパイロット圧を制御弁176の両側のパイロットポートに作用させるように構成されていてもよい。ブーム操作(ブーム上げ操作及びブーム下げ操作)等の他の操作についても同様である。すなわち、コントローラ30は、より多くのパイロット油を使用することにより、油圧アクチュエータの応答性を高めることができる。
【0083】
また、
図4Bに示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0084】
操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0085】
電磁弁31BLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31BLを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31BRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31BRを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31BLは、制御弁175L及び制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。また、電磁弁31BRは、制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0086】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、ブーム4を上げることができる。このように、電磁弁31BLは、「ブーム用電磁弁」又は「ブーム上げ用電磁弁」として機能する。
【0087】
また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、ブーム4を下げることができる。このように、電磁弁31BRは、「ブーム用電磁弁」又は「ブーム下げ用電磁弁」として機能する。
【0088】
また、
図4Cに示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。
【0089】
操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。なお、コントローラ30は、バケット角度センサが省略されている場合、操作センサ29RBの出力に基づいてバケット角度を推定してもよい。
【0090】
電磁弁31CLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31CLを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31CRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31CRを介して制御弁174の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31CLは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。同様に、電磁弁31CRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0091】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作に応じ、或いは、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、バケット6を閉じることができる。このように、電磁弁31CLは、「バケット用電磁弁」又は「バケット閉じ用電磁弁」として機能する。
【0092】
また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作に応じ、或いは、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、バケット6を開くことができる。このように、電磁弁31CRは、「バケット用電磁弁」又は「バケット開き用電磁弁」として機能する。
【0093】
また、
図4Dに示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。
【0094】
操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0095】
電磁弁31DLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31DLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31DRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31DRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31DLは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。同様に、電磁弁31DRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0096】
この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者による左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者による左旋回操作に応じ、或いは、操作者による左旋回操作とは無関係に、旋回機構2を左旋回させることができる。このように、電磁弁31DLは、「旋回用電磁弁」又は「左旋回用電磁弁」として機能する。
【0097】
また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者による右旋回操作に応じ、或いは、操作者による右旋回操作とは無関係に、旋回機構2を右旋回させることができる。このように、電磁弁31DRは、「旋回用電磁弁」又は「右旋回用電磁弁」として機能する。
【0098】
また、
図4Eに示すように、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLを操作するために用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁171のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左走行レバー26DLは、前進方向(前方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171の左側パイロットポートに作用させる。また、左走行レバー26DLは、後進方向(後方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171の右側パイロットポートに作用させる。
【0099】
操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を電気的に検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0100】
電磁弁31ELは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、電磁弁31ELは、パイロットポンプ15から電磁弁31ELを介して制御弁171の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31ERは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、電磁弁31ERは、パイロットポンプ15から電磁弁31ERを介して制御弁171の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31EL、31ERは、制御弁171を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0101】
この構成により、コントローラ30は、操作者による左前進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ELを介し、制御弁171の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、左クローラ1CLを前進させることができる。また、コントローラ30は、操作者による左後進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ERを介し、制御弁171の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、左クローラ1CLを後進させることができる。このように、電磁弁31ELは、「左走行用電磁弁」又は「左前進用電磁弁」として機能し、電磁弁31ERは、「左走行用電磁弁」又は「左後進用電磁弁」として機能する。
【0102】
また、
図4Fに示すように、右走行レバー26DRは、右クローラ1CRを操作するために用いられる。具体的には、右走行レバー26DRは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁172のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右走行レバー26DRは、前進方向(前方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁172の右側パイロットポートに作用させる。また、右走行レバー26DRは、後進方向(後方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁172の左側パイロットポートに作用させる。
【0103】
操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を電気的に検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0104】
電磁弁31FLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、電磁弁31FLは、パイロットポンプ15から電磁弁31FLを介して制御弁172の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31FRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、電磁弁31FRは、パイロットポンプ15から電磁弁31FRを介して制御弁172の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31FL、31FRは、制御弁172を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0105】
この構成により、コントローラ30は、操作者による右前進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31FLを介し、制御弁172の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、右クローラ1CRを前進させることができる。また、コントローラ30は、操作者による右後進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31FRを介し、制御弁172の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、右クローラ1CRを後進させることができる。このように、電磁弁31FLは、「右走行用電磁弁」又は「右前進用電磁弁」として機能し、電磁弁31FRは、「右走行用電磁弁」又は「右後進用電磁弁」として機能する。
【0106】
また、ショベル100は、バケットチルト機構を自動的に動作させる構成を備えていてもよい。この場合、バケットチルト機構を構成するバケットチルトシリンダに関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
【0107】
また、操作装置26の形態として電気式操作レバーに関する説明を記載したが、電気式操作レバーではなく油圧式操作レバーが採用されてもよい。この場合、油圧式操作レバーの操作量は、圧力センサによって圧力の形で検出されてコントローラ30へ入力されてもよい。また、油圧式操作レバーとしての操作装置26と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置されてもよい。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、油圧式操作レバーとしての操作装置26を用いた手動操作が行われると、操作装置26は、操作量に応じてパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。また、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーの操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0108】
次に、
図5を参照し、コントローラ30の構成例について説明する。
図5は、コントローラ30の構成例を示す図である。
図5では、コントローラ30は、姿勢検出装置、操作装置26、空間認識装置70、向き検出装置71、情報入力装置72、測位装置73及びスイッチNS等の少なくとも1つが出力する信号を受け、様々な演算を実行し、電磁弁31、表示装置D1、及び音出力装置D2等の少なくとも1つに制御指令を出力できるように構成されている。姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5を含む。コントローラ30は、位置算出部30A、軌道生成部30B、自動制御部30C、及び判定部30Dを機能要素として有する。各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで構成されていてもよい。位置算出部30A、軌道生成部30B、自動制御部30C、及び判定部30Dは、説明の便宜のために区別されて示されているが、物理的に区別されている必要はなく、全体的に又は部分的に共通のソフトウェアコンポーネント、ハードウェアコンポーネント、若しくはそれらの組み合わせで構成されていてもよい。
【0109】
位置算出部30Aは、測位対象の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、位置算出部30Aは、アタッチメントATにおける一つ又は複数の所定部位の基準座標系における座標点を算出する。図示例では、所定部位は、上部旋回体3を旋回させたときに法面と接触し得る部位であり、例えば、バケット6の爪先である。具体的には、バケット6の爪先は、バケット6の先端に取り付けられた複数の爪のうちの中央、左端、又は右端にある爪の先端である。或いは、所定部位は、バケット6の背面6Bと側面6Sとの間の稜線(交線)上の一点又は複数点であってもよい。すなわち、バケット6の背面6Bと左側面6SL及び右側面6SRのそれぞれとの間の稜線上の一点又は複数点であってもよい。基準座標系の原点は、例えば、旋回軸とショベル100の接地面との交点である。ショベル100の接地面は、例えば、下部走行体1が接触する地面に相当する仮想的な平面である。基準座標系は、例えば、XYZ直交座標系であり、下部走行体1の前後軸に平行なX軸と、下部走行体1の左右軸に平行なY軸と、ショベル100の旋回軸に平行なZ軸とを有する。位置算出部30Aは、例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれの回動角度からバケット6の爪先等の所定部位の座標点を算出する。この場合、位置算出部30Aは、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5の少なくとも一方の出力を利用してもよい。
【0110】
軌道生成部30Bは、ショベル100を自動的に動作させるときにアタッチメントATの所定部位が辿る軌道である目標軌道を生成するように構成されている。本実施形態では、軌道生成部30Bは、自動制御部30Cがショベル100を自動的に動作させるときに利用する目標軌道を生成する。具体的には、軌道生成部30Bは、例えば、不揮発性記憶装置等の記憶装置に記憶されている設計面に関するデータに基づいて目標軌道を生成する。軌道生成部30Bは、空間認識装置70が認識したショベル100の周囲の地形に関する情報に基づいて目標軌道を生成してもよい。或いは、軌道生成部30Bは、記憶装置に記憶されている姿勢検出装置の過去の出力から所定部位の過去の軌跡に関する情報を導き出し、その情報に基づいて目標軌道を生成してもよい。或いは、軌道生成部30Bは、アタッチメントATの所定部位の現在位置と設計面に関するデータとに基づいて目標軌道を生成してもよい。
【0111】
自動制御部30Cは、ショベル100を自動的に動作させることができるように構成されている。本実施形態では、自動制御部30Cは、所定の開始条件が満たされた場合に、ショベル100を自動的に動作させることができるように構成されている。具体的には、自動制御部30Cは、アクチュエータを自動的に動作させることで操作者によるショベルの手動操作を支援するように構成されている。
【0112】
図示例では、自動制御部30Cは、スイッチNSが押されているときに、上部旋回体3を自動的に旋回させてショベル100を法面に正対させる。なお、「ショベル100を法面に正対させる」は、例えば、バケット6の背面6Bと法面(設計面)とを平行にできるように上部旋回体3を旋回軸2X回りに旋回させることを意味する。但し、ショベル100を法面に正対させたときにバケット6の背面6Bと法面(設計面)とが平行になっている必要はなく、ショベル100を法面に正対させたときにアタッチメントを動作させればバケット6の背面6Bと法面(設計面)とを平行にできるようになっていればよい。
【0113】
「法面」は、掘削又は盛土等によって形成される人工的な斜面であり、施工完了前の斜面(設計面とは異なる表面形状(凹凸)を有する斜面)であってもよく、施工完了後の斜面(設計面と同じ表面形状(凹凸)を有する斜面)であってもよい。また、施工完了後の斜面は、現時点では未だ実現されていない仮想的な斜面(以下、「仮想斜面」とする。)であってもよい。
【0114】
また、図示例では、自動制御部30Cは、スイッチNSが押されている状態でアーム操作レバーが操作されたときに、設計面に沿ってアタッチメントATの所定部位が移動するように、ショベル100を自動的に動作させる。
【0115】
具体的には、自動制御部30Cは、操作者がスイッチNSを押しながら手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、軌道生成部30Bが生成した目標軌道とバケット6の背面6B上の所定点の位置とが一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自動的に伸縮させてもよい。この場合、目標軌道は、法面(設計面)に沿うように生成される。そして、操作者は、例えば、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に操作するだけで、バケット6の背面6Bを設計面に一致させながら、アーム5を閉じることができる。
【0116】
より具体的には、自動制御部30Cは、電磁弁31に制御指令(電流指令)を与えて各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に調整することで各アクチュエータを自動的に動作させることができる。例えば、自動制御部30Cは、右操作レバー26Rが傾倒されたか否かにかかわらず、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを動作させることができる。
【0117】
判定部30Dは、様々な判定を実行できるように構成されている。本実施形態では、判定部30Dは、ショベル100を法面に正対させるためにアタッチメントATの現在の姿勢を維持したまま上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと法面とが接触するか否かを判定するように構成されている。
【0118】
図示例では、判定部30Dは、法面の位置情報とアタッチメントATの姿勢とに基づき、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触するか否かを判定するように構成されている。法面の位置情報は、例えば、空間認識装置70の出力、又は、記憶装置に記憶されている若しくは通信装置を通じて受信される設計データ等に基づいて取得される。例えば、実在の斜面(施工完了前の斜面、及び、施工完了後の斜面)の位置情報は、空間認識装置70の出力に基づいて取得され、施工完了後の斜面(実在の斜面及び仮想斜面)の位置情報は、記憶装置に記憶されている若しくは通信装置を通じて受信される設計データに基づいて取得される。
【0119】
また、判定部30Dは、アタッチメントATの現在の姿勢を維持したまま上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと実在の斜面(施工完了前の斜面)とが接触するか否か、及び、アタッチメントATの現在の姿勢を維持したまま上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと施工完了後の仮想斜面とが接触するか否かを別々に判定してもよい。
【0120】
この場合、コントローラ30は、アタッチメントATの現在の姿勢を維持したまま上部旋回体3を旋回させたとしてもアタッチメントATと施工完了後の仮想斜面とが接触しないと判定部30Dが判定している場合には、アタッチメントATと施工完了前の斜面とが接触すると判定部30Dが判定した場合であっても、旋回アクチュエータの動きを制限しないように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ30は、上部旋回体3を仮想斜面に正対させるまでは、自動制御部30Cによる旋回動作の制限を実行することなく、旋回動作を継続させてもよい。この場合、コントローラ30は、アタッチメントATの一部(バケット6)を施工完了前の斜面に接触させながら旋回動作を継続させる。このケースは、典型的には、仮想斜面(設計面)が施工完了前の斜面の中に埋まっていて露出していない場合に生じる。
【0121】
また、コントローラ30は、アタッチメントATの現在の姿勢を維持したまま上部旋回体3を旋回させるとアタッチメントATと施工完了後の仮想斜面とが接触すると判定部30Dが判定している場合であっても、アタッチメントATと施工完了前の斜面とが接触しないと判定部30Dが判定した場合には、自動制御部30Cによって旋回アクチュエータの動きを制限しないように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ30は、上部旋回体3を施工完了前の斜面に正対させるまでは、自動制御部30Cによる旋回動作の制限を実行することなく、旋回動作を継続させてもよい。このケースは、典型的には、仮想斜面(設計面)が施工完了前の斜面の外側に形成される予定である場合、すなわち、施工完了前の斜面の上に土砂が盛られる予定である場合に生じる。
【0122】
また、判定部30Dは、旋回方向が左旋回方向であるか右旋回方向であるかを特定した上で、アタッチメントATの現在の姿勢を維持したまま上部旋回体3をその特定の旋回方向に旋回させたときにアタッチメントATと法面とが接触するか否かを判定してもよい。例えば、アタッチメントATと施工完了前の斜面とが接触するか否かを判定する場合、旋回方向によって判定結果が異なる場合もあるためである。
【0123】
この場合、判定部30Dは、旋回操作レバーが操作されている場合には、旋回操作レバーの操作方向に基づいて旋回方向を特定する。旋回操作レバーが操作されていない場合には、判定部30Dは、操作装置26の操作履歴、測位装置73の出力(施工対象の法面の位置に対するショベル100の現在位置)、又は、空間認識装置70の出力等に基づいて旋回方向を特定してもよい。例えば、判定部30Dは、操作装置26の操作履歴に基づき、現在のショベル100の状態が、法面掘削動作(荒掘削動作)、右旋回動作、及び排土動作が行われた後の状態であると判定できた場合、その後に、左旋回動作が行われる蓋然性が高いと判定できる。この場合、判定部30Dは、アタッチメントATの現在の姿勢を維持したまま上部旋回体3を左旋回方向に旋回させたときにアタッチメントATと法面とが接触するか否かを判定すればよい。
【0124】
次に、
図6及び
図7を参照し、コントローラ30がアタッチメントATの現在の姿勢を維持したまま上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと法面SFとが接触するか否かを判定する処理(以下、「接触判定処理」とする。)の一例について説明する。
図6は、接触判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。図示例では、コントローラ30は、ショベル100の稼動中、所定の制御周期で繰り返しこの接触判定処理を実行する。
図7は、法面整形作業(法面仕上げ作業)を行うショベル100の上面図である。具体的には、
図7は、法面整形動作(法面仕上げ動作)及び右旋回動作に続く排土動作が行われた後のショベル100の状態を示す。
図7に示す法面SFは、設計面DSとは異なる表面形状(凹凸)を有する施工完了前の斜面であり、現時点では、設計面DSは法面SFの中に埋まっていて露出していない。
【0125】
最初に、コントローラ30の判定部30Dは、所定の判定開始条件が満たされたか否かを判定する(ステップST1)。所定の判定開始条件は、例えば、「スイッチNSが押されていること」、「左操作レバー26Lが操作されていること」、又は、「スイッチNSが押された状態で左操作レバー26Lが操作されていること」等である。図示例では、「スイッチNSが押されていること」である。
【0126】
所定の判定開始条件が満たされていないと判定した場合(ステップST1のNO)、判定部30Dは、今回の接触判定処理を終了させる。一方で、所定の判定開始条件が満たされたと判定した場合(ステップST1のYES)、判定部30Dは、アタッチメントATと法面SFとが接触するか否かを判定する(ステップST2)。
【0127】
図示例では、判定部30Dは、スイッチNSが押されている場合、所定の判定開始条件が満たされたと判定し、現在のアタッチメントATの姿勢のままで旋回動作が行われたときにアタッチメントATと法面SFとが接触するか否かを判定する。
【0128】
具体的には、判定部30Dは、姿勢検出装置の出力に基づいてアタッチメントATの姿勢を特定し、アタッチメントATにおける複数の所定点の座標を取得する。
図7に示す点GPは、複数の所定点のうちの一つ(バケット6の背面6Bと左側面6SLとの間の稜線上の一点)である。そして、判定部30Dは、現在のアタッチメントATの姿勢のままで旋回動作が行われたときに点GPが辿る軌道TRを算出する。軌道TRは、旋回軸2Xを中心とし、点GPを通る円の円周CFの一部(円弧)に相当する。
【0129】
図示例では、判定部30Dは、現在のアタッチメントATの姿勢のままで左旋回動作が行われたときに点GPが辿る軌道TRを算出し、現在のアタッチメントATの姿勢のままで右旋回動作が行われたときに点GPが辿る軌道を算出しない。そのため、軌道TRは、現在の点GPの座標GP0を始点とし、円周CFに沿って左旋回方向に延び、上部旋回体3を法面SFに正対させたときの点GPの座標GP2を終点とする円弧である。判定部30Dは、ショベル100と法面SFとの間の相対的な位置関係等から右旋回動作ではなく左旋回動作が行われる蓋然性が高いと判定できるためである。但し、軌道TRは、現在のアタッチメントATの姿勢のままで右旋回動作が行われたときに点GPが辿る軌道を含んでいてもよい。
【0130】
その後、判定部30Dは、法面SFと軌道TRとが交差するか否かを判定する。法面SFは、仮想平面としての設計面DSの表面の三次元モデルであってもよく、空間認識装置70の出力に基づいて生成される実際の法面SFの表面の三次元モデルであってもよい。図示例では、法面SFは、設計面DSの表面の三次元モデルである。
【0131】
そして、判定部30Dは、法面SFと軌道TRとが交差すると判定した場合、アタッチメントATと法面SFとが接触すると判定し、法面SFと軌道TRとが交差しないと判定した場合、アタッチメントATと法面SFとが接触しないと判定する。
【0132】
図示例では、判定部30Dは、法面SFと軌道TRとが交差すると判定した場合、アタッチメントATと法面SFとが接触すると判定している。具体的には、判定部30Dは、上部旋回体3を角度β1だけ旋回軸2X回りに左旋回させたときに、そのときの点GPの座標GP1が設計面DS上に位置すると判定する。なお、角度β1は、旋回角度βの値であり、旋回軸2Xに沿って見た上面視における、現在の上部旋回体3の前後軸CXの位置を示す破線CX0と、左旋回させたときの上部旋回体3の前後軸CXの位置を示す破線CX1との間の角度である。
【0133】
このように、図示例では、判定部30Dは、終点(座標GP2)まで延びる軌道TRと設計面DSの表面の三次元モデルとが交差するか否かを判定することによって、アタッチメントATと法面SFとが接触するか否かを判定する。なお、座標GP2は、上部旋回体3を法面SFに正対させたとき、すなわち、旋回角度βが角度βtとなるときの点GPの座標である。なお、角度βtは、旋回角度βの値であり、旋回軸2Xに沿って見た上面視における、現在の上部旋回体3の前後軸CXの位置を示す破線CX0と、上部旋回体3を法面SFに正対させたときの上部旋回体3の前後軸CXの位置を示す破線CX2との間の角度である。
【0134】
但し、判定部30Dは、より短い軌道TRを用いてアタッチメントATと法面SFとが接触するか否かの判定を行うように構成されていてもよい。すなわち、軌道TRの終点は、角度βtよりも小さい角度だけ上部旋回体3を旋回させたときの点GPの座標であってもよい。例えば、軌道TRの終点が、角度β1よりも小さい角度だけ旋回させたときの点GPの座標であれば、判定部30Dは、法面SFと軌道TRとが交差しないと判定した上で、アタッチメントATと法面SFとが接触しないと判定することができる。この場合、判定部30Dは、上部旋回体3の左旋回が開始された後、点GPと法面SFとの間の距離がより小さくなった時点、すなわち、より遅いタイミングで、アタッチメントATと法面SFとが接触すると判定できる。
【0135】
また、図示例では、判定部30Dは、円周CFに沿って延びる軌道TRを用いてアタッチメントATと法面SFとが接触するか否かを判定している。しかしながら、判定部30Dは、上面視において上部旋回体3の前後軸CXに垂直に延びるとともに点GPを通るガイド線GLを用いてアタッチメントATと法面SFとが接触するか否かを判定するように構成されていてもよい。具体的には、判定部30Dは、上部旋回体3の左右軸に平行に点GPから所定距離だけ延びるガイド線GLと法面SF(例えば設計面DSの表面の三次元モデル)とが交差するか否かに基づき、アタッチメントATと法面SFとが接触するか否かを判定するように構成されていてもよい。ガイド線GLを用いる場合、典型的には、判定部30Dは、軌道TRを用いる場合に比べ、アタッチメントATと法面SFとが接触すると判定するタイミングを遅らせることができる。なお、
図7では、一点鎖線で表されるガイド線GLは、点GPから左方に所定距離だけ延びるように生成されているが、右方にも延びるように生成されてもよい。
【0136】
また、
図7は、説明を分かりやすくするため、複数の所定点のうちの一つである点GPに関して軌道TRが生成される例を示しているが、実際には、軌道TRは、複数の所定点のそれぞれに関して生成され、判定部30Dは、法面SFと複数の軌道TRのそれぞれとが交差するか否かに基づき、アタッチメントATと法面SFとが接触するか否かを判定する。ガイド線GLについても同様である。
【0137】
そして、アタッチメントATと法面SFとが接触しないと判定した場合(ステップST2のNO)、判定部30Dは、今回の接触判定処理を終了させる。この場合、コントローラ30の自動制御部30Cは、スイッチNSが押されているため、旋回操作レバーが操作されているか否かにかかわらず、ショベル100を法面SFに正対させるよう、上部旋回体3を自動的に旋回させてもよい。
【0138】
一方で、アタッチメントATと法面SFとが接触すると判定した場合(ステップST2のNO)、コントローラ30は、所定の機能を実行する(ステップST3)。
【0139】
所定の機能は、例えば、旋回アクチュエータを自動制御する機能、及び、現在の状況を操作者に知らせる機能等の少なくとも一つを含む。
【0140】
旋回アクチュエータを自動制御する機能は、例えば、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面SFとが接触しないように、上部旋回体3を旋回させる旋回アクチュエータを自動制御する機能である。
【0141】
具体的には、コントローラ30は、
図7に示す例において、旋回操作レバーが左旋回方向に操作されたときであっても、上部旋回体3を左旋回方向に旋回させないよう、制御弁173の左側パイロットポートに作用するパイロット圧を増大させないようにする。
【0142】
或いは、コントローラ30は、
図7に示す例において、旋回操作レバーが既に左旋回方向に操作されて上部旋回体3が既に左旋回しているときには、上部旋回体3の左旋回を減速させ或いは停止させるよう、制御弁173の左側パイロットポートに作用するパイロット圧を低減させるようにする。
【0143】
また、コントローラ30は、旋回アクチュエータを自動制御する機能を実行した場合、その旨を操作者に知らせるよう、表示装置D1及び音出力装置D2の少なくとも一方を動作させてもよい。例えば、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回を禁止した場合、「バケットが法面に当たるおそれがあるため旋回動作を禁止しました」といったテキストメッセージを表示装置D1に表示させてもよい。この場合、操作者は、旋回操作レバーを操作しても左旋回動作を実行できない理由を知ることができ、旋回操作レバーを操作しても左旋回動作を実行できない状況に慌てることはない。同様に、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回を停止させる場合、「バケットが法面に当たるおそれがあるため旋回を停止させます」といった音声メッセージを音出力装置D2から出力させてもよい。
【0144】
また、現在の状況を操作者に知らせる機能は、例えば、現在のアタッチメントATの姿勢のままで上部旋回体3を旋回させるとアタッチメントATと法面SFとが接触してしまうことを操作者に知らせる機能である。
【0145】
具体的には、コントローラ30は、
図7に示す例では、「左旋回動作を行うとバケットと法面とが接触するおそれがあります」といったメッセージを表示装置D1及び音出力装置D2の少なくとも一方から出力させてもよい。
【0146】
次に、
図8及び
図9を参照し、コントローラ30が自動制御により旋回動作を停止させる処理について説明する。
図8は、自動制御によって旋回動作が停止させられたときのショベル100の斜視図であり、
図9は、自動制御によって旋回動作が停止させられるショベル100の上面図である。
【0147】
なお、
図8及び
図9では、範囲NRは、法面(上り法面)が完成していない範囲、すなわち、地表面が設計面と一致していない範囲を表し、範囲CSは、法面(上り法面)が完成した範囲、すなわち、地表面が設計面と一致している範囲を表している。
【0148】
図8及び
図9は、法面整形作業を実行するショベル100を示している。法面整形作業は、バケット6で斜面にある土砂を削り取る掘削作業、及び、その掘削作業の際にバケット6内に取り込まれた土砂を別の場所に排土する排土作業を含む。具体的には、
図9は、排土作業が完了したときのショベル100の状態を、破線で描かれたショベル100Aで表している。また、
図9は、次の掘削作業を実行するためにショベル100を斜面(法面)に正対させたときのショベル100の状態を、一点鎖線で描かれたショベル100Cで表している。
【0149】
なお、ショベル100は、
図9に示す例では、実線で描かれたショベル100Bで表される状態で旋回動作が停止させられるので、実際にはショベル100Cで表される状態には至らない。
【0150】
また、
図9は、ショベル100Aで表される排土作業が完了したときのショベル100の状態から、ショベル100Cで表される斜面(法面)に正対させられたショベル100の状態に至るまでの上部旋回体3の旋回動作を矢印ARで表している。この旋回動作は、操作者がスイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを左旋回方向(左方向)に倒すことによって実現される。そして、このときの旋回半径は、作業半径R1に相当する。
【0151】
また、
図9は、自動制御により旋回動作が停止させられたときのショベル100の状態を、実線で描かれたショベル100Bで表している。
図8に示すショベル100は、このショベル100Bに相当する。
【0152】
また、
図9は、排土作業が完了したときのショベル100(ショベル100A)の上部旋回体3の前後軸を破線L0で表し、自動制御により旋回動作が停止させられたときのショベル100(ショベル100B)の上部旋回体3の前後軸を破線L2で表し、設計面としての斜面(法面)に正対させられるときのショベル100(ショベル100C)の上部旋回体3の前後軸を破線L4で表している。また、
図9は、自動制御により旋回動作の減速が開始されたときの上部旋回体3の前後軸を破線L1で表し、仮に自動制御を適用せず、旋回動作を停止させることなくその旋回動作を継続させたときにアタッチメントATの所定部位が斜面と接触するときの上部旋回体3の前後軸を破線L3で表している。なお、矢印ARは、終端に近い部分を点線で表すことにより、旋回動作が減速させられることを表している。破線L3(アタッチメントATの所定部位と斜面とが接触するときの上部旋回体3の前後軸)は、例えば、破線L1で表される位置に上部旋回体3の前後軸があるときのバケット6における所定部位の座標に基づいて算出される。このため、破線L1で表される位置に上部旋回体3の前後軸が達した後の旋回中にバケット6の高さ(若しくは、アタッチメントATの姿勢)、及び、旋回半径が変化すると、バケット6と設計面とが接触する位置(点P3の位置)、及び、破線L3と基準線との間の角度は変化する。なお、基準線は、例えば、旋回軸2Xに沿って見た上面視における、下部走行体1の前後軸に対応する線である。
【0153】
例えば、コントローラ30は、スイッチNSが押された状態で左操作レバー26L(旋回操作レバー)が操作されたときに、アタッチメントATの所定部位(この例ではバケット6における所定点)が辿る軌道TRを算出する。この軌道TRは、例えば、測位装置73が出力する上部旋回体3の位置に関する情報、及び、姿勢検出装置が出力するアタッチメントATの姿勢に関する情報等に基づいて算出される。
【0154】
そして、コントローラ30は、この旋回動作が開始されたとき或いは継続されているときに、ショベル100が斜面(法面)に正対する前に、バケット6が設計面と接触するか否か、すなわち、バケット6が設計面を超えて斜面に入り込んでしまうか否かを判定する。具体的には、コントローラ30は、バケット6における所定点が辿る軌道TRと設計面とが交差するか否かを判定する。
【0155】
この判定は、例えば、記憶装置に記憶されている設計面に関するデータと、測位装置73が出力する上部旋回体3の位置に関する情報と、姿勢検出装置が出力するアタッチメントATの姿勢に関する情報とに基づく。なお、コントローラ30は、空間認識装置70が出力する情報に基づいてバケット6が設計面と接触するか否かを判定してもよい。
【0156】
バケット6が設計面と接触すると判定した場合、コントローラ30は、所定条件が満たされたときに、その旋回動作を停止させる。所定条件は、例えば、バケット6における所定点の現在位置と接触点(点P3参照。)との間の距離(以下、「現在距離」とする。)が所定距離を下回ったか否かである。なお、接触点は、旋回動作が継続されたときに、ショベル100が斜面(法面)に正対する前に、バケット6が設計面と接触するときのバケット6における所定点の推定位置に相当する。また、現在距離は、
図9に示す例では、軌道TRに沿った距離である。但し、現在距離は、バケット6における所定点の現在位置と接触点との間の直線距離等であってもよい。
【0157】
また、コントローラ30は、旋回動作を減速させ或いは停止させた場合であっても、所定条件が成立する前の旋回方向とは逆の旋回方向への旋回操作がその後に行われた場合には、その旋回操作に応じた旋回動作を許容してもよい。例えば、コントローラ30は、所定条件が満たされたと判定して電磁弁31DL(
図4D参照)に対して制御指令(電流指令)を出力して左旋回動作を減速させ或いは停止させた場合であっても、その後に右旋回操作が行われた場合には、その右旋回操作に応じて電磁弁31DR(
図4D参照)に対して制御指令(電流指令)を出力して上部旋回体3を右旋回させてもよい。すなわち、コントローラ30は、バケット6を斜面(法面)から遠ざけるための旋回動作を制限或いは禁止しないように構成されていてもよい。具体的には、コントローラ30は、例えば、左旋回動作を減速させ或いは停止させる際には、旋回操作レバーの左旋回方向への操作量にかかわらず、電磁弁31DLに対して制御指令(電流指令)を出力し、制御弁173の左側パイロットポートに作用するパイロット圧を低減させる。また、コントローラ30は、例えば、右旋回動作を許容する際には、旋回操作レバーの右旋回方向への操作量に応じ、電磁弁31DRに対して制御指令(電流指令)を出力し、制御弁173の右側パイロットポートに作用するパイロット圧を増減させる。反対に、コントローラ30は、右旋回動作を禁止する際には、旋回操作レバーの右旋回方向への操作量にかかわらず、電磁弁31DRに対して制御指令(電流指令)を出力せず、制御弁173の右側パイロットポートに作用するパイロット圧を消失させる。すなわち、コントローラ30は、制御弁173の右側パイロットポートに作用するパイロット圧を、制御弁173の左側パイロットポートに作用するパイロット圧と同じにし、制御弁173を中立位置に戻すようにする。また、コントローラ30は、ブーム上げ操作等の旋回操作以外の他の操作を制限或いは禁止しないように構成されていてもよい。具体的には、コントローラ30は、例えば、ブーム上げ動作を許容する際には、ブーム操作レバーのブーム上げ方向への操作量に応じ、電磁弁31BLに対して制御指令(電流指令)を出力し、制御弁175Lの右側パイロットポートに作用するパイロット圧、及び、制御弁175Rの左側パイロットポートに作用するパイロット圧を増減させる。反対に、コントローラ30は、例えば、ブーム上げ動作を禁止する際には、ブーム操作レバーのブーム上げ方向への操作量にかかわらず、電磁弁31BLに対して制御指令(電流指令)を出力せず、制御弁175Lの右側パイロットポートに作用するパイロット圧、及び、制御弁175Rの左側パイロットポートに作用するパイロット圧を何れも消失させる。すなわち、コントローラ30は、制御弁175Lの右側パイロットポートに作用するパイロット圧を、制御弁175Lの左側パイロットポートに作用するパイロット圧と同じにし、制御弁175Lを中立位置に戻すようにする。また、コントローラ30は、制御弁175Rの左側パイロットポートに作用するパイロット圧を、制御弁175Rの右側パイロットポートに作用するパイロット圧と同じにし、制御弁175Rを中立位置に戻すようにする。
【0158】
また、コントローラ30は、所定条件が満たされる場合であっても、スイッチNSが押されていない場合には、自動制御による旋回動作の停止を実行しないように構成されていてもよい。操作者がバケット6を意図的に斜面(法面)に接触させる場合も起こり得るためである。すなわち、操作者は、スイッチNSを押さずに旋回操作を実行することで、バケット6を斜面(法面)に接触させることができる。
【0159】
また、コントローラ30は、旋回動作を減速させ或いは停止させた場合であっても、旋回操作レバーが中立位置に戻された後で同じ旋回操作が再開された場合には、その旋回操作に応じた旋回動作を許容してもよい。例えば、コントローラ30は、所定条件が満たされたと判定して左旋回動作を減速させ或いは停止させた場合であっても、その後に旋回操作レバーが中立位置に戻された後で再び左旋回操作が行われた場合には、その左旋回操作に応じて上部旋回体3を左旋回させてもよい。この場合、操作者は、スイッチNSを押しながら旋回操作を実行する場合であっても、バケット6を斜面(法面)に接触させることができる。
【0160】
図9に示す例では、コントローラ30は、旋回中に所定の制御周期でバケット6における所定部位の座標を算出している。コントローラ30は、旋回中に算出されたバケット6における所定部位の座標に基づき、所定の制御周期でバケット6の所定部位から設計面までの距離(直線距離ではなく軌道TRに沿った距離)を算出する。コントローラ30は、所定の制御周期で算出されるバケット6の所定部位から設計面までの距離と予め設定された距離X1及び距離X2のそれぞれとを比較する。そして、コントローラ30は、現在距離が距離X1を下回ったときに、上部旋回体3の旋回動作の減速を開始させる。具体的には、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回動作を所定の減速度で減速させる。所定の減速度は、不変であってもよく、可変であってもよい。そして、コントローラ30は、現在距離が距離X2(<距離X1)となるところで、上部旋回体3の旋回動作を停止させる。なお、
図9の点P1は、旋回動作の減速を開始させたときの所定部位の位置を表している。また、
図8及び
図9のそれぞれにおける点P2は、旋回動作を停止させたときの所定部位の位置を表している。また、
図8及び
図9のそれぞれにおける点P3は、仮に自動制御による旋回動作の停止が行われずに旋回動作が継続された場合にバケット6と設計面とが接触するときの所定部位の推定位置、すなわち、接触点の推定位置を表している。具体的には、接触点の推定位置は、旋回動作が継続された場合にバケット6における所定点が辿る軌道TRと設計面との間の交点の位置に相当する。
【0161】
なお、
図9に示す例では、コントローラ30は、閾値としての距離X1が作業半径R1の変化に応じて変化するように構成されている。具体的には、距離X1は、作業半径R1が大きいほど大きくなるように設定される。作業半径R1が大きいほどアタッチメントATの慣性モーメントが大きくなり、旋回動作を停止させ難くなるためである。同じ理由により、コントローラ30は、閾値としての距離X2が作業半径R1の変化に応じて変化するように構成されていてもよい。但し、コントローラ30は、作業半径R1とは無関係に距離X1が一定となるように構成されていてもよい。
【0162】
或いは、コントローラ30は、閾値としての距離X1がアタッチメントATの姿勢の変化に応じて変化するように構成されていてもよい。例えば、距離X1は、ブーム角度θ1が大きいほど小さくなるように設定されてもよく、アーム角度θ2が小さいほど小さくなるように設定されてもよい。
【0163】
或いは、コントローラ30は、閾値としての距離X1が旋回速度の変化に応じて変化するように構成されていてもよい。例えば、距離X1は、旋回速度が大きいほど大きくなるように設定されてもよい。
【0164】
また、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回速度が所定速度以下であれば、上部旋回体3の旋回動作を減速させた上で停止させるのではなく、上部旋回体3を減速させることなく停止させてもよい。
【0165】
また、所定条件は、例えば、アタッチメントATの所定部位と斜面とが接触するときの上部旋回体3の前後軸(破線L3)と現在の上部旋回体3の前後軸との間に形成される角度が所定角度を下回ったか否かであってもよい。
【0166】
また、コントローラ30は、バケット6が設計面と接触しないと判定した場合には、上部旋回体3が斜面(法面)に正対したときに上部旋回体3の旋回動作が停止するように自動制御によって旋回動作を停止させるように構成されていてもよい。これにより、バケット6が設計面と接触しないとコントローラ30が判定した場合には、ショベル100の操作者は、バケット6と設計面との接触を気にすることなく、左操作レバー26Lを所望の操作量で左旋回方向に倒し続けるだけで、ショベル100を斜面(法面)に正対させることができる。バケット6が設計面と接触するか否かの判定結果にかかわらず、上部旋回体3の旋回動作は適切に停止されるためである。
【0167】
上述の構成により、コントローラ30は、所定条件が満たされた場合に旋回動作を急停止させるのではなく、旋回動作を徐々に停止させるようにするため、ショベル100の操作者に違和感を与えてしまうのを抑制できる。
【0168】
また、コントローラ30は、バケット6と設計面との接触を回避するために、左操作レバー26Lの操作量とは無関係に旋回動作を自動的に停止させるように構成されている。そのため、コントローラ30は、ショベル100の操作者によって左操作レバー26Lが左旋回方向に倒されている場合であっても、左旋回動作を自動的に停止させることができる。
【0169】
また、
図9に示す例では、コントローラ30は、バケット6と設計面との接触を回避するために旋回動作を自動的に停止させるが、他の動作を自動的に停止させることはない。例えば、ショベル100の操作者が左旋回操作とアーム開き操作又はアーム閉じ操作とを含む複合操作を行っているときに所定条件が満たされた場合、コントローラ30は、左旋回動作を自動的に停止させるが、左旋回動作以外の動作を自動的に停止させることはない。なお、図示例では、左旋回動作以外の動作は、バケット6の背面を設計面に沿って移動させるための動作(アタッチメント動作)であり、ブーム上げ動作、ブーム下げ動作、アーム閉じ動作、アーム開き動作、バケット閉じ動作、及びバケット開き動作の少なくとも一つを含む。
【0170】
上述のように、本開示の実施形態に係るショベル100は、
図1に示すように、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるアタッチメントATと、アタッチメントATの姿勢を検出する姿勢検出装置と、法面の位置情報とアタッチメントATの姿勢とに基づき、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面SF(
図7参照)とが接触するか否かを判定する制御装置としてのコントローラ30と、を有するように構成されている。
【0171】
この構成により、ショベル100の操作者は、上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと法面SFとが接触してしまうおそれがあることを事前に知ることができる。そのため、操作者は、例えば、上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと法面SFとが接触してしまうのを防止できる。したがって、この構成は、例えば、法面整形動作、右旋回動作、排土動作、及び左旋回動作が順番に繰り返し実行される法面整形作業の際の操作者の負担を軽減させることができ、ひいては、作業効率を向上させることができるという効果をもたらす。或いは、操作者は、上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと法面SFとが接触する蓋然性が高いことを事前に知った上で、上部旋回体3を旋回させることができ、必要に応じてアタッチメントATを法面SFに接触させることができる。
【0172】
また、ショベル100において、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触すると判定した場合、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触しないように、上部旋回体3を旋回させる旋回アクチュエータを制御するように構成されていてもよい。なお、旋回アクチュエータは、例えば、旋回油圧モータ2A又は旋回電動発電機等である。
【0173】
この構成では、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触しないように、操作者によって旋回操作レバーが操作されたとしても旋回動作を開始させないように旋回アクチュエータを制御できる。或いは、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触しないように、旋回動作を停止させるように旋回アクチュエータを制御できる。この構成により、ショベル100は、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触してしまうのをより確実に抑制できる。
【0174】
また、ショベル100において、コントローラ30は、スイッチNS等の所定の操作具が操作されている間、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触するか否かを繰り返し判定するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ30は、旋回操作レバーが操作されていない場合であっても、スイッチNSが押されている場合には、現在のアタッチメントATの姿勢のままで上部旋回体3の旋回動作が行われたときにアタッチメントATと法面とが接触するか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0175】
この構成により、ショベル100の操作者は、操作具を操作するだけで、上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと法面SF(
図7参照)とが接触してしまうおそれがあることを事前に知ることができる。そのため、操作者は、例えば、上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATと法面SF(
図7参照)とが接触してしまうのをより確実に防止できる。
【0176】
また、ショベル100において、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回中に、アタッチメントATを操作する操作装置26に対する操作者の操作に応じ、バケット6の所定部位を法面に沿って移動させるように構成されていてもよい。例えば、コントローラ30は、バケット6の背面6Bを法面に接触させながら、バケット6を設計面に沿って移動させるように構成されていてもよい。なお、コントローラ30は、バケット6の背面6Bを法面に接触させずに、所定の間隔を空けた状態で、バケット6を設計面に沿って移動させるように構成されていてもよい。
【0177】
この構成では、ショベル100の操作者は、例えば、旋回操作レバー及びアーム操作レバーとして機能する左操作レバー26Lを操作するだけで、上部旋回体3を旋回させながら、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも一つを伸縮させることができる。そのため、操作者は、例えば、バケット6の背面と設計面DSとを一致させた状態で、設計面DSに沿ってバケット6を前後方向(法面の法肩と法尻とを結ぶ線分に沿った方向)ばかりでなく左右方向又は斜め方向に移動させることができる。
【0178】
また、ショベル100において、コントローラ30は、設計面DSに沿ってバケット6を移動させた後、上部旋回体3が法面に正対したときに、上部旋回体3を旋回させる旋回アクチュエータを停止させるように構成されていてもよい。
【0179】
この構成では、ショベル100の操作者は、例えば、旋回操作レバー及びアーム操作レバーとして機能する左操作レバー26Lを操作するだけで、バケット6の背面と設計面DSとを一致させた状態で設計面DSに沿ってバケット6を移動させ、上部旋回体3が法面に正対した後は、旋回動作を停止させ、設計面DSに沿ったバケット6の前後方向(法面の法肩と法尻とを結ぶ線分に沿った方向)における移動を継続させることができる。
【0180】
また、ショベル100において、コントローラ30は、設計面DSに沿ってバケット6を移動させた後、上部旋回体3が法面に正対したときに、上部旋回体3を旋回させる旋回アクチュエータを停止させ、且つ、アタッチメントATを動作させるアタッチメントアクチュエータを停止させてもよい。具体的には、コントローラ30は、旋回アクチュエータ及びアタッチメントアクチュエータを停止させてもよく、全てのアクチュエータを停止させてもよい。
【0181】
この構成では、ショベル100の操作者は、例えば、旋回操作レバー及びアーム操作レバーとして機能する左操作レバー26Lを操作するだけで、バケット6の背面と設計面DSとを一致させた状態で設計面DSに沿ってバケット6を移動させ、その後に上部旋回体3が法面に正対したときに旋回動作とアタッチメント動作とを停止させることができる。
【0182】
また、ショベル100において、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回中にアタッチメントATと法面とが接触しないように旋回アクチュエータを制御したことを操作者に知らせるように構成されていてもよい。この場合、コントローラ30は、表示装置D1に対して制御指令を出力してテキストメッセージを表示させるように構成されていてもよく、音出力装置D2に対して制御指令を出力して音声メッセージを出力させるように構成されていてもよい。
【0183】
この構成により、ショベル100は、例えば、旋回操作レバーの操作通りに旋回動作が行われない理由を操作者に伝えることができるため、旋回操作レバーの操作通りに旋回動作が行われない事態に直面した操作者が違和感を抱いてしまうのを抑制できる。
【0184】
また、本開示の実施形態に係るショベルは、
図1に示すように、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるアタッチメントATと、アタッチメントATの姿勢を検出する姿勢検出装置と、上部旋回体3を旋回させたときにアタッチメントATの所定部位が描く軌道TR又はその近似直線を算出する制御装置としてのコントローラ30と、を有していてもよい。近似直線は、例えば、
図7に示すガイド線GLである。
【0185】
この構成により、ショベル100は、例えば、旋回操作が実際に行われる前に、アタッチメントATの所定部位が描く軌道TR上に物体が存在するか否かを判定することができる。物体は、例えば、人、盛土、法面、又は作業機械等である。そのため、ショベル100は、旋回操作が実際に行われる前に、アタッチメントATの所定部位と物体とが接触するおそれの有無を操作者に知らせることができる。
【0186】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、後述する実施形態に制限されることもない。上述した或いは後述する実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0187】
例えば、ショベル100は、遠隔操作式のショベルであってもよい。この場合、電気式操作レバーは、ショベル100の外部にある遠隔操作室に設置され、コントローラ30は、遠隔操作室に設置される制御装置であってもよい。
【符号の説明】
【0188】
1・・・下部走行体 1C・・・クローラ 1CL・・・左クローラ 1CR・・・右クローラ 2・・・旋回機構 2A・・・旋回油圧モータ 2M・・・走行油圧モータ 2ML・・・左走行油圧モータ 2MR・・・右走行油圧モータ 2X・・・旋回軸 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 6B・・・背面 6S・・・側面 6SL・・・左側面 6SR・・・右側面 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 13・・・レギュレータ 14・・・メインポンプ 15・・・パイロットポンプ 17・・・コントロールバルブユニット 18・・・絞り 19・・・制御圧センサ 26・・・操作装置 26D・・・走行レバー 26DL・・・左走行レバー 26DR・・・右走行レバー 26L・・・左操作レバー 26R・・・右操作レバー 28・・・吐出圧センサ 29、29DL、29DR、29LA、29LB、29RA、29RB・・・操作センサ 29A・・・操作センサ 30・・・コントローラ 30A・・・位置算出部 30B・・・軌道生成部 30C・・・自動制御部 30D・・・判定部 31、31AL~31DL、31AR~31DR・・・電磁弁 40・・・センターバイパス管路 42・・・パラレル管路 70・・・空間認識装置 70F・・・前方センサ 70B・・・後方センサ 70L・・・左方センサ 70R・・・右方センサ 71・・・向き検出装置 72・・・情報入力装置 73・・・測位装置 75・・・ダイヤル 100・・・ショベル 171~176・・・制御弁 AT・・・アタッチメント CF・・・円周 CS・・・範囲 CX・・・前後軸 CX0~CX2・・・破線 D1・・・表示装置 D2・・・音出力装置 DS・・・設計面 EL・・・仮想線 GL・・・ガイド線 GP・・・点 GP0~GP2・・・座標 NR・・・範囲 NS・・・スイッチ P1~P3・・・点 S1・・・ブーム角度センサ S2・・・アーム角度センサ S3・・・バケット角度センサ S4・・・機体傾斜センサ S5・・・旋回角速度センサ SF・・・法面 TR・・・軌道