(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156290
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】発泡洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/94 20060101AFI20241029BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20241029BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20241029BHJP
C11D 1/22 20060101ALI20241029BHJP
C11D 1/29 20060101ALI20241029BHJP
C11D 1/12 20060101ALI20241029BHJP
C11D 1/06 20060101ALI20241029BHJP
C11D 1/92 20060101ALI20241029BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C11D1/94
C11D1/04
C11D17/04
C11D1/22
C11D1/29
C11D1/12
C11D1/06
C11D1/92
C11D1/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070633
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝典
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB19
4H003AB21
4H003AB27
4H003AB31
4H003AC05
4H003AC15
4H003AD04
4H003AE05
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA14
4H003EA16
4H003EA21
4H003EB14
4H003FA20
4H003FA23
(57)【要約】
【課題】泡のすすぎ性に優れる発泡洗浄剤組成物、及びこれを用いた硬質表面の洗浄方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分を0.001質量%以上5質量%以下、下記(b)成分を1質量%以上30質量%以下含有する発泡洗浄剤組成物。
(a)成分:総炭素数11以上23以下の鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩であり、前記鎖式分岐炭化水素基の主鎖の炭素数が7以上21以下であり、すべての側鎖の分岐位置が主鎖の3位以上である、カルボン酸及び/又はその塩
(b)成分:界面活性剤(但し、(a)成分を除く)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分を0.001質量%以上5質量%以下、下記(b)成分を1質量%以上30質量%以下含有する発泡洗浄剤組成物。
(a)成分:総炭素数11以上23以下の鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩であり、前記鎖式分岐炭化水素基の主鎖の炭素数が7以上21以下であり、すべての側鎖の分岐位置が主鎖の3位以上である、カルボン酸及び/又はその塩
(b)成分:界面活性剤(但し、(a)成分を除く)
【請求項2】
(a)成分の前記鎖式分岐炭化水素基において、側鎖の炭素数が1以上10以下である、請求項1に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分における前記鎖式分岐炭化水素基の総炭素数が15以上21以下である、請求項1又は2に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項4】
(a)成分の前記鎖式分岐炭化水素基において、側鎖の数が1以上3以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項5】
(b)成分が、前記発泡洗浄剤組成物を水で10倍希釈した混合液5gをポンプフォーマーで気泡させたときに50mL以上起泡させるものである、請求項1~4の何れか1項に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項6】
(b)成分が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上である、請求項1~5の何れか1項に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項7】
(b)成分が、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルカンスルホン酸又はその塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、オキシアルキレン基を有する脂肪酸又はその塩、第4級アンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、スルホベタイン、及びカルボベタインから選ばれる1種以上である、請求項1~6の何れか1項に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項8】
更に、(c)アルカリ剤を含有する、請求項1~7の何れか1項に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項9】
更に、(d)炭素数5以上10以下の脂肪酸及び/又はその塩を0.001質量%以上30質量%以下含有する、請求項1~8の何れか1項に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項10】
アミンオキサイドの含有量が1質量%未満である、請求項1~9の何れか1項に記載の発泡洗浄剤組成物。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の発泡洗浄剤組成物と、水とを混合して得られる希釈溶液を、起泡させて硬質表面に接触させる、硬質表面の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡洗浄剤組成物及び硬質表面の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工工場では、生産スケジュールの中断時に、定期的に、食品の加工及び/又は調理に用いる機器及び設備を洗浄し、衛生状態を確保している。洗浄対象となる機器としては、例えば、ネットコンベアやフリーザー、スライサー、精米機などが挙げられ、設備としては、例えば、床、壁、作業台などが挙げられる。これらの洗浄対象は規模が大きかったり、パーツが入り組み複雑化したりしているため、これらを効率的に洗浄する方法として、通常、洗浄剤を発泡させ泡状にして洗浄対象に適用する発泡洗浄が採用される。
このような発泡洗浄剤は、食中毒やその他の病原菌への対策として高い洗浄効果が求められ、このため無機アルカリ剤や次亜塩素酸などの水溶性無機塩を高濃度に含有することが一般的である。
また、発泡洗浄剤はすすぎ水を大量に使用するため環境配慮への観点からも泡消え性が良くすすぎ水を削減できる技術が求められる。
【0003】
特許文献1には、(A)所定のアルキル及び/又はアルケニルジメチルアミンオキシド、(B)アルカリ剤、(C)所定の分岐脂肪酸及び/又はその塩、(D)水を含み、(A)/(C)の質量比が所定の値である発泡洗浄剤組成物を用いた被洗浄物の洗浄方法が開示されている。
特許文献2には、(A)アルカリ剤、(B)アニオン界面活性剤、(C)所定のアルキルジメチルアミンオキサイド、(D)芳香族スルホン酸塩、(E)水溶性カルシウム化合物、(F)金属イオン封鎖剤及び水を所定割合で含有する、飲食料品製造設備用発泡洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献3には、(A)アルカリ剤、(B)アニオン界面活性剤、(C)所定のアルキルジメチルアミンオキサイド、(D)所定の脂肪酸又はその塩を、所定割合で含有する発泡洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献4には、ラウリン酸又はオレイン酸、アルキルジメチルアミンオキシド及びアニオン界面活性剤を含有する起泡性、貯蔵安定性、希釈液安定性に優れ、アルミニウム材質に対して腐食を抑制するすすぎの泡切れ性に優れる発泡洗浄剤組成物が記載されている。
特許文献5には、ジメチルアミンオキシド、アルカリ剤、分岐脂肪酸及び水を含有する発泡性、泡保持性及び泡切れ性が良好で、飲食・食品製造工場や厨房に用いられる発泡洗浄剤組成物が記載されている。
特許文献6には、アミンオキサイドと炭素数11以上12以下の鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸又はその塩を含有する泡安定性に優れ、すすぎ性に優れた硬質表面用洗浄剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-199619号公報
【特許文献2】特開2010-150307号公報
【特許文献3】特開2013-249383号公報
【特許文献4】特開2021-181553号公報
【特許文献5】特開2018-168328号公報
【特許文献6】特開2019-73732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、泡のすすぎ性に優れる発泡洗浄剤組成物、及びこれを用いた硬質表面の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分を0.001質量%以上5質量%以下、下記(b)成分を1質量%以上30質量%以下含有する発泡洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:総炭素数11以上23以下の鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩であり、前記鎖式分岐炭化水素基の主鎖の炭素数が7以上21以下であり、すべての側鎖の分岐位置が主鎖の3位以上である、カルボン酸及び/又はその塩
(b)成分:界面活性剤(但し、(a)成分を除く)
【0007】
また本発明は、本発明の発泡洗浄剤組成物と、水とを混合して得られる希釈溶液を、起泡させて硬質表面に接触させる、硬質表面の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、泡のすすぎ性に優れる発泡洗浄剤組成物、及びこれを用いた硬質表面の洗浄方法を提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発泡洗浄剤組成物及びそれを用いた硬質表面の洗浄方法が、泡のすすぎ性に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
発泡洗浄剤組成物を用いて起泡させたものを硬質表面に接触させて洗浄し、泡をすすぐ場合、従来は、発泡洗浄剤組成物に消泡剤として一般に用いられている脂肪酸を配合することで泡のすすぎ性を改良している。前記脂肪酸を用いる場合、水に含まれるカルシウムイオンと脂肪酸が会合することでスカムを形成することにより硬質表面上の泡膜を破壊し、消泡している。しかしながら、スカムを形成し、消泡するには大量の脂肪酸が必要であり、少量の脂肪酸で消泡することは困難である。
一方、本発明の発泡洗浄剤組成物は、(a)成分として、特定の鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩を含有しており、(a)成分は、本発明の発泡洗浄剤組成物を用いて起泡させたものを硬質表面に接触させた場合に、硬質表面上に液体凝縮膜、すなわち油状ドメインを形成することができ、これにより、硬質表面上の泡膜を不均一化し、消泡することができる。そのため、本発明の発泡洗浄剤組成物は、少量の(a)成分でも、泡のすすぎ性に優れる結果がもたらされたものと考えられる。なお、本発明は、この作用機構に制限されるものではない。
【0010】
[発泡洗浄剤組成物]
<(a)成分>
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(a)成分として、総炭素数11以上23以下の鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩であり、前記鎖式分岐炭化水素基の主鎖の炭素数が7以上21以下であり、すべての側鎖の分岐位置が主鎖の3位以上である、カルボン酸及び/又はその塩を含有する。なお(a)成分の鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩は、1つの鎖式分岐炭化水素基と1つのカルボン酸基からなる分岐脂肪酸及び/又はその塩のことであり、分岐脂肪族カルボン酸及び/又はその塩という場合もある。本発明の発泡洗浄剤組成物中の(a)成分は、構造が同一ものであってもよく、分岐位置が異なる鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩の混合物であってもよい。本発明では分岐位置が異なる鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩の2種以上の混合物が好ましい。
【0011】
(a)成分のカルボン酸は、すすぎ性の観点から、モノカルボン酸が好ましい。(a)成分の塩としては、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。
【0012】
本発明において、鎖式分岐炭化水素基とは、主鎖と側鎖を有する炭化水素基であり、後述する分岐炭素原子を1以上有するものをいう。
鎖式分岐炭化水素基のうち、カルボン酸に結合している炭素原子から数えて炭素数が最も大きい炭化水素鎖を主鎖とし、主鎖から分岐して結合している炭化水素鎖を側鎖とする。
【0013】
主鎖が2つ以上考えられる場合、即ち炭素数が最も大きい炭化水素鎖(以下、最長炭化水素鎖ともいう)が2つ以上ある場合、下記の順序で主鎖を決める。
1.最長炭化水素鎖から分岐する側鎖の炭素原子数が大きい方を主鎖とする。
2.次に、最長炭化水素鎖から分岐する側鎖の炭素原子数が同じである場合は、最長炭化水素鎖から分岐する側鎖の数が多い方を主鎖とする。
3.次に、最長炭化水素鎖から分岐する側鎖の数が同じである場合は、カルボン酸の酸素原子に結合している炭素原子から数えて、カルボン酸の酸素原子により近い炭素原子に側鎖を有する方を主鎖とする。
4.次に、カルボン酸の酸素原子に最も近い、側鎖を有する炭素原子の位置が同じ場合は、カルボン酸の酸素原子に最も近い側鎖の炭素原子数が多い方を主鎖とする。
なお、2つ以上の最長炭化水素鎖が、同一の対称構造を有する場合は、どちらを主鎖としてもよい。
【0014】
鎖式分岐炭化水素基の総炭素数は、すすぎ性の観点から、11以上、好ましくは15以上、より好ましくは16以上、そして、23以下、好ましくは22以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは19以下、より更に好ましくは18以下である。
【0015】
鎖式分岐炭化水素基において、主鎖の炭素数は、すすぎ性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは15以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは19以下、より更に好ましくは18以下、より更に好ましくは17以下である。なお、主鎖の炭素数に、側鎖の炭素数は含まれない。また鎖式分岐炭化水素基の最長主鎖の炭素数は、メチル基分岐が1つある場合が最も多く、メチル基である炭素数1を引いた数である。例えば鎖式分岐炭化水素基の総炭素数が23の場合、最大主鎖の炭素数は22になる。
【0016】
鎖式分岐炭化水素基において、すべての側鎖の分岐位置は、すすぎ性の観点から、主鎖の3位以上である。なお、カルボン酸に結合している主鎖の炭素原子を1位として、主鎖の炭素原子の位置を数えるものとする。
前記鎖式分岐炭化水素基において、側鎖の炭素数は、すすぎ性の観点から、好ましくは1以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1である。なお、側鎖の炭素数は、主鎖に結合している側鎖1個の炭素数をいう。側鎖1個の炭素数1はメチル基が好ましい。
鎖式分岐炭化水素基において、側鎖の数は、すすぎ性の観点から、好ましくは1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1である。なお、側鎖の数とは、主鎖から分岐する側鎖の数であり、側鎖が、更に当該側鎖から分岐する側鎖を有していても側鎖の数としては変わらない。
【0017】
(a)成分は、前記したように分岐位置の異なる鎖式分岐炭化水素基を有するカルボン酸及び/又はその塩の混合物が好ましい。その好ましい要件として、(a)成分は、鎖式分岐炭化水素基において、好ましくは炭素数が1以上3以下の側鎖を1つ以上3つ以下、より好ましくは炭素数1の側鎖を1つ有し、側鎖の分岐位置が主鎖の3位以上に分布している、分岐位置の異なる鎖式炭化水素基を有するカルボン酸(以下、分岐脂肪酸という場合もある)及び/又はその塩の混合物が好ましい。
具体的には、(a)成分は、脂肪族1級モノカルボン酸の主鎖の3位以上に、メチル基が1つ以上3つ以下、好ましくは1つ分岐している分岐脂肪族1級カルボン酸であって、分岐位置が異なる分岐脂肪族1級カルボン酸(以下、メチル分岐脂肪酸という場合もある)及び/又はその塩の混合物である。また前記混合物は好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、そして、好ましくは12種以下、より好ましくは11種以下の混合物である。
(a)成分は市販しているものを用いることができ、構造の異なる分岐脂肪酸を混合して使用してもよく、製造する場合、製造方法は特に問わないが、分岐位置が異なるメチル分岐の鎖式分岐炭化水素を有する脂肪酸混合物は、例えば1つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸を酸触媒にて重合する過程の副生成物として調製することができる。例えば、特許3303947号公報記載の製造方法を用いることができ、分岐位置のことなる飽和のメチル分岐脂肪酸の混合物を得ることができる。得られた分岐脂肪酸が、分岐位置が異なるものの混合物であることはGC-MSで分離することで確認することができる。
(a)成分は、側鎖の分岐位置が同じ単一成分よりも側鎖の分岐位置が主鎖の3位以上に分布している混合物の方が、本発明の特徴である油状ドメインを形成しやすいことから、発泡洗浄剤組成物の泡のすすぎ性により優れており、また製造コストの観点からも、側鎖の分岐位置が同じ単一成分を得るよりも好ましい。
また(a)成分の鎖式炭化水素基は飽和の炭化水素基が好ましいが、製造原料として不飽和脂肪酸を用いる場合は、未反応の不飽和脂肪酸、飽和直鎖脂肪酸、ダイマー酸等が混入してくることがあるが、精製することで副生成物を低減させるなどして、影響がない程度で混入してもよい。また炭素数の異なる脂肪族カルボン酸が混入してもよい。
(a)成分は、発泡洗浄剤組成物中ではpHによってカルボン酸として存在するか、カルボン酸陰イオンとして存在している。本発明の発泡洗浄剤組成物を調製する際に、カルボン酸として配合してアルカリ金属水酸化物で中和してもよく、カルボン酸塩として配合してもよい。
【0018】
<(b)成分>
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(b)成分として、界面活性剤を含有する。但し、(b)成分からは、(a)成分及び後述する(d)成分に該当するものは除かれる。
(b)成分は、発泡性の観点から、本発明の発泡洗浄剤組成物を水で10倍希釈した混合液5gをポンプフォーマー(例えばビオレポンプフォーマー、花王(株)製)を用いて気泡させたときに50mL以上起泡させるものであることが好ましい。
【0019】
(b)成分は、(b1)アニオン界面活性剤(但し、(a)成分を除く、以下、(b1)成分という)、(b2)カチオン界面活性剤(以下、(b2)成分という)、(b3)ノニオン界面活性剤(以下、(b3)成分という)、及び(b4)両性界面活性剤(以下、(b4)成分という)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0020】
(b1)成分のアニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルカンスルホン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、オレフィンスルホン酸又はその塩、オキシアルキレン基を有する脂肪酸又はその塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸又はその塩、α-スルホ脂肪酸又はその塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル又はその塩、並びに(a)成分及び(d)成分以外の脂肪酸又はその塩(例えば、炭素数12以上18以下の直鎖脂肪酸又はその塩)から選ばれる1種以上が挙げられる。
アニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、例えば、炭素数8以上22以下であり、好ましくは炭素数10以上16以下であり、より好ましくは炭素数12以上14以下である。アニオン界面活性剤のポリオキシアルキレン基において、オキシアルキレン基は、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる1種以上の基が好ましく、オキシエチレン基が好ましい。ポリオキシアルキレン基において、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、例えば、0以上10以下であり、好ましくは1以上3以下である。
これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
【0021】
(b1)成分は、起泡性及び洗浄性の観点から、炭素数11以上24以下の炭化水素基を有するアルカンスルホン酸又はその塩、及び炭素数11以上24以下の炭化水素基を有するアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩から選ばれる1種以上(以下、(b11)成分という)が好ましい。
(b11)成分の炭化水素基は、一部又は全部が炭素数11以上24以下のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数11以上24以下のアルキル基が好ましい。
更に、該アルキル基はスルホン酸基に繋がる第2級炭素原子を1つ含むことがより好ましい。但し、(b11)成分の炭化水素基がアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩のアルキルベンゼンの場合、アルキル基の炭素数は11以上18以下が好ましい。
(b11)成分の炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
(b11)成分は、2級アルカンスルホン酸又はその塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩から選択される1種以上が挙げられる。
従って(b11)成分は、第2級アルキル基を含むことが好ましく、アルキル基の第2級炭素原子にスルホン酸基が結合した2級アルカンスルホン酸又はその塩、直鎖アルキル基の第2級炭素原子がベンゼン環に結合し、ベンゼン環に結合する直鎖アルキル基に対してスルホン酸基がパラ位に結合した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩(以下、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はそのという)から選択される1種以上が挙げられる。
【0022】
(b2)成分のカチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩が挙げられ、より具体的には、(b21)下記一般式(b21)で表される化合物(以下、(b21)成分という)、及び(b22)下記一般式(b22)で表される化合物(以下、(b22)成分という)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0023】
【0024】
〔式中、R21bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R22bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R23b及びR24bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X-は陰イオンである。〕
【0025】
【0026】
〔式中、R25bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R26b及びR27bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X-は陰イオンである。〕
【0027】
一般式(b21)において、R21bの炭素数は、起泡性及び洗浄性の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。R61bは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
一般式(b21)において、R22bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。
R22bが、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基である場合、R22bは、起泡性及び洗浄性の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
【0028】
一般式(b21)において、R23b及びR24bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R23b及びR24bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0029】
一般式(b21)において、X-は陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えばクロルイオン、ブロモイオン及びヨウ素イオンが挙げられる。また、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0030】
一般式(b21)の化合物の好ましい化合物としては、アルキル基の炭素数が12以上18以下であるN-アルキル-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上16以下であるN,N-ジアルキル-N,N-ジメチル-アンモニウム塩、及びアルキル基の炭素数が12以上16以下であるN-アルキル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0031】
一般式(b22)において、R25bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基である。R25bの炭素数は、起泡性及び洗浄性の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。R25bは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
【0032】
一般式(b22)において、R26b及びR27bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R26b及びR27bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0033】
一般式(b22)において、X-は陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えばクロルイオン、ブロモイオン及びヨウ素イオンが挙げられる。また炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0034】
一般式(b22)の化合物の具体例としては、N-オクチル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-デシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、及びN-ヘキサデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0035】
(b3)成分のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン、及びポリオキシアルキレンフェニルエーテルから選ばれる1種以上が挙げられる。これらのノニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、起泡性及び洗浄性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分の炭素数は、起泡性及び洗浄性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルのオキシアルキレン基は、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基が好ましく、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、溶解性の観点から、好ましくは2以上、そして、好ましくは25以下である。
【0036】
アルキル(ポリ)グリコシドとしては、下記一般式(b3)の化合物が好ましい。
R31b-(OR32b)pGq (b3)
〔式中、R31bは炭素数8以上16以下のアルキル基、R32bは炭素数2以上4以下のアルキレン基、Gは還元糖に由来する残基、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す0以上6以下の数であり、p個のR32bは同一でも異なっていても良い。qはGの平均縮合度を示し、1以上10以下の数である。〕
【0037】
一般式(b3)において、R31bは、起泡性及び洗浄性の観点から、炭素数8以上、好ましくは9以上、そして、16以下、好ましくは14以下のアルキル基である。
R32bは炭素数2以上4以下のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、より好ましくはエチレン基である。
pは、起泡性及び洗浄性の観点から、0以上、そして、6以下、好ましくは3以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0である。
qはGの平均縮合度を示し、起泡性の観点から、1以上10以下、好ましくは5以下、より好ましくは2以下の数である。
Gとしては、単糖類ではグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、フルクトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられ、2糖類以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メンジトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられる。これらのうち好ましい原料は、入手容易性の観点から、単糖類ではグルコース及びフルクトースであり、2糖類以上ではマルトース及びスクロースである。
【0038】
(b4)成分の両性界面活性剤としては、炭素数7以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を1つ以上、好ましくは1つ有するベタイン型界面活性剤、好ましくはスルホベタイン及びカルボベタインから選ばれる1種以上が挙げられる。
ベタイン型界面活性剤としては、下記一般式(b4)の化合物が好適である。
【0039】
【0040】
〔式中、R41bは炭素数7以上18以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R42bは炭素数1以上6以下のアルキレン基である。Aは-COO-、-CONH-、-OCO-、-NHCO-、-O-から選ばれる基であり、rは0又は1の数である。R43b、R44bは、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R45bはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1以上5以下のアルキレン基である。Bは、-SO3
-、-OSO3
-、-COO-である。〕
【0041】
一般式(b4)において、R41bは、起泡性及び洗浄性の観点から、炭素数7以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基である。
Aは、好ましくは-COO-又は-CONH-であり、より好ましくは-CONH-である。
R42bの炭素数は好ましくは2又は3である。
rは、好ましくは1である。
R43b、R44bは好ましくはメチル基である。
R45bの炭素数は、好ましくは1である。
Bは、好ましくは-COO-である。
【0042】
ベタイン型界面活性剤としては、具体的には、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、及びアルキルアミノ脂肪酸塩から選ばれる1種以上が挙げられ、入手容易性の観点から、好ましくはアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルカルボキシベタイン、及びアルキル-N,N-ジメチル酢酸ベタインから選ばれる1種以上である。これらのアルキル基は炭素数7以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
【0043】
(b)成分は、起泡性及び洗浄性の観点から、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルカンスルホン酸又はその塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、オキシアルキレン基を有する脂肪酸又はその塩、第4級アンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、スルホベタイン、及びカルボベタインから選ばれる1種以上であり、より好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルカンスルホン酸又はその塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、及びオキシアルキレン基を有する脂肪酸又はその塩から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルカンスルホン酸又はその塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩及びポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、及びアルカンスルホン酸又はその塩から選ばれる1種以上である。
【0044】
<組成等>
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(a)成分を、すすぎ性の観点から、発泡洗浄剤組成物中、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下含有する。発泡洗浄剤組成物の安定性の観点から(a)成分の含有量は上限値以下が好ましい。
本発明において、(a)成分の質量は、カリウム塩に換算した値を用いるものとする。
【0045】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(b)成分を、すすぎ性、起泡性及び洗浄性の観点から、発泡洗浄剤組成物中、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、そして、30質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下含有する。
本発明において、(b)成分として(b1)成分を含む場合、(b)成分の質量はナトリウム塩に換算した値を用いるものとする。また(b)成分として(b2)成分を含む場合、(b2)成分の質量はクロル塩に換算した値を用いるものとする。
【0046】
本発明の発泡洗浄剤組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)は、起泡性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは4以上、そして、すすぎ性の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
また本発明の発泡洗浄剤組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)は、すすぎ水量を削減する観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは4以上、より更に好ましくは8以上、より更に好ましくは12以上、より更に好ましくは16以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは23以下である。
【0047】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(b)成分として、アミンオキサイドを含有してもよいが、すすぎ性、及び腐食抑制の観点から、その含有量は制限される。本発明の発泡洗浄剤組成物において、(b)成分として、アミンオキサイドと他の界面活性剤と併用する場合は、全界面活性剤中((b)成分中)のアミンオキドの含有量は、すすぎ性、及び腐食抑制の観点から、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下である。
更には本発明の発泡洗浄剤組成物中、アミンオキサイドの含有量は、すすぎ性、及び腐食抑制の観点から、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、より更に好ましくは0.001質量%以下である。
本発明の発泡洗浄剤組成物は、アミンオキサイドを含有しなくてもよい。
【0048】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、更に(c)成分として、アルカリ剤を含有することが好ましい。
【0049】
(c)成分のアルカリ剤としては、アルカリ金属水酸化物、弱酸とアルカリ金属との塩(例えば、アルカリ金属炭酸塩など)、アルカリ金属珪酸塩、及びアミン化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムが挙げられる。
アルカリ金属珪酸塩としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムが挙げられる。珪酸ナトリウムは、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム5水塩、メタ珪酸ナトリウム9水塩等が挙げられる。また、珪酸カリウムには、オルソ珪酸カリウム、メタ珪酸カリウム、A珪酸カリウム、B珪酸カリウム、C珪酸カリウム等が挙げられる。
アミン化合物としては、アルカノールアミンを挙げることができる。
【0050】
(c)成分は、洗浄性及びすすぎ性の観点から、好ましくはアルカリ金属水酸化物、及び弱酸とアルカリ金属との塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムから選ばれる1種以上であり、より好ましくは炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる1種以上である。
【0051】
本発明では(c)成分として、アルカリ金属珪酸塩〔以下(c-1)成分という〕を用いることも可能であるが、洗浄後に白化する現象が起こるため好ましくない。したがって、(c)成分中の(c-1)成分の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下であり、本発明の発泡洗浄剤組成物は、(c-1)成分を含有しないことが好ましい。
【0052】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、洗浄性の観点から、発泡洗浄剤組成物中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは質量1%以上、更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有する。
(c)成分のアルカリ金属水酸化物は、発泡洗浄剤組成物中に存在するアルカリ金属イオンとヒドロキシイオンとの組合せ、すなわち遊離アルカリを示し、他の対イオンとの組合せの場合はカウントされない。例えば別途有機酸を配合する場合は、アルカリ金属水酸化物として配合したとしても、有機酸の対イオンとなるため、アルカリ金属水酸化物としてカウントしない。また後述する(e)成分の次亜塩素酸塩を含有する場合は、3%過酸化水素水の水溶液を徐々に加え、酸素ガスの発生が無くなるまで次亜塩素酸塩を還元した後、滴定で全水酸化アルカリ金属濃度を測定し、そこから他の成分の対イオンとして考えられる濃度を差し引いた数値の遊離アルカリをアルカリ金属水酸化物濃度とする。他のアルカリ剤の濃度は公知の方法を用いることで測定する。
【0053】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、溶液安定性及び起泡性の観点から、更に(d)成分として、炭素数5以上10以下の脂肪酸及び/又はその塩を含有することが好ましい。
(d)成分の脂肪酸の炭素数は、溶液安定性及び起泡性の観点から、好ましくは6以上、そして、好ましくは8以下である。
(d)成分の塩としては、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。
【0054】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(d)成分を含有する場合、(d)成分を、溶液安定性及び起泡性の観点から、発泡洗浄剤組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下含有する。
本発明において、(d)成分の質量は、カリウム塩に換算した値を用いるものとする。
【0055】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、洗浄性及び除菌性の観点から、(e)成分として、酸化性ハロゲン酸及び/又はその塩を含有することが好ましい。
(e)成分の酸化性ハロゲン酸としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸が挙げられ、殺菌効果の観点から、次亜塩素酸が好ましい。また、(e)成分の酸化性ハロゲン酸の塩としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸のアルカリ金属塩が挙げられ、泡安定性の観点から、次亜塩素酸のアルカリ金属塩が好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。
【0056】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(e)成分を含有する場合、(e)成分を、洗浄性及び除菌性の観点から、発泡洗浄剤組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有する。
本発明において、(e)成分の質量は、ナトリウム塩として換算した値を用いるものとする。
【0057】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、(a)成分~(e)成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、任意に、溶剤、ハイドロトロープ剤、分散剤、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、漂白剤、漂白活性化剤などの他の成分〔但し、(a)成分~(e)成分に相当するものを除く〕を含有することができる。
【0058】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、液体であることが好ましく、水を含有することができる。すなわち、本発明の発泡洗浄剤組成物は、前記(a)~(b)成分及び任意成分以外の残部が水であることが好ましい。本発明の発泡洗浄剤組成物は、水を、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは94質量%未満、より好ましくは93質量%以下含有することができる。水は、イオン交換水、滅菌イオン交換水等を使用することが好ましい。
【0059】
本発明の発泡洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、洗浄性の観点から、好ましくは12.5以上、より好ましくは12.8以上、更に好ましくは13.0以上、より更に好ましくは13.2以上、そして、14以下である。25℃におけるpHは、ガラス電極法により測定できる。本発明の発泡洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、具体的には、下記pHの測定方法で測定される。
【0060】
<pHの測定法>
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーターF-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH6.86標準液(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)、pH12.0標準液(飽和水酸化カルシウム標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH12.0の順に校正操作を行う。測定対象となるサンプル(本発明の発泡洗浄剤組成物)を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
なお、本発明の発泡洗浄剤組成物を水で希釈した希釈溶液の25℃におけるpHも同様の方法で測定することができる。その場合、上記記載において、本発明の発泡洗浄剤組成物を、本発明の発泡洗浄剤組成物を水で希釈した希釈溶液と読み替えるものとする。
【0061】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、水で希釈して用いてもよい。例えば、本発明の発泡洗浄剤組成物は、使用時に、硬度が、好ましくは0.1°DH以上、より好ましくは0.2°DH以上、更に好ましくは0.3°DH以上、より更に好ましくは0.5°DH以上、より更に好ましくは1°DH以上、より更に好ましくは2°DH以上であり、そして、好ましくは20°DH以下、より好ましくは10°DH以下、更に好ましくは8°DH以下、より更に好ましくは6°DH以下の水で希釈して用いられる発泡洗浄剤組成物であってよい。この水は、カルシウムイオンを含む水が好ましい。
【0062】
本明細書における水の硬度(°DH)とは、ドイツ硬度のことであり、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO3換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°DH(1°DH=17.8ppm)で表したものを指す。洗浄に使用される水のドイツ硬度の調整は、例えば、硬度成分の種類や添加量から計算される値に基づいて行うことができる。また、洗浄に使用される水として、水道水等の硬度が不明の水を用いる場合には、水のドイツ硬度は、下記に記載のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
【0063】
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/L EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/L水溶液(滴定用溶液、0.01M EDTA-2Na、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mLに溶解し、イオン交換水で全量を1000mLとした溶液)
〔ドイツ硬度の測定〕
(1)試料となる水20mLをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2mL添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5mL添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/L EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°DH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/L EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/L EDTA・2Na溶液のファクター
【0064】
本発明の発泡洗浄剤組成物は、硬質物品の硬質表面用、更に食品加工設備及び/又は調理設備用であることが好ましい。すなわち、本発明は、食品加工設備及び/又は調理設備用発泡洗浄剤組成物であることが好適である。本発明の発泡洗浄剤組成物は、アルミニウムを含む硬質表面、例えば、アルミニウムを含む合金やアルミニウム金属などの硬質表面の洗浄に好適である。
本発明において、用語「食品加工設備及び/又は調理設備」とは、食品加工工場において食品を加工する際及び/又は調理する際に用いられる機器及び設備を意味する。かかる機器としては、例えば、ネットコンベアやフリーザー、スライサー、精米機などが挙げられる。また、かかる設備としては、例えば、床、壁、作業台などが挙げられる。
【0065】
[硬質表面の洗浄方法]
本発明は、本発明の発泡洗浄剤組成物と、水とを混合して得られる希釈溶液を、起泡させて硬質表面に接触させる、硬質表面の洗浄方法を提供する。
本発明の硬質表面の洗浄方法は、本発明の発泡洗浄剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
【0066】
また、本発明の硬質表面の洗浄方法は、本発明の発泡洗浄剤組成物と、硬度が、好ましくは0.1°DH以上、より好ましくは0.2°DH以上、更に好ましくは0.3°DH以上、より更に好ましくは0.5°DH以上、より更に好ましくは1°DH以上、より更に好ましくは2°DHであり、そして、好ましくは20°DH以下、より好ましくは10°DH以下、更に好ましくは8°DH以下、より更に好ましくは6°DH以下の水を、混合した希釈溶液を、起泡させて硬質表面に接触させる、硬質表面の洗浄方法であってよい。
【0067】
具体的に説明すると、本発明の発泡洗浄剤組成物は、下記工程1~3を含む食品加工設備及び/又は調理設備の洗浄方法に好適に用いることができる。なお、本発明の硬質表面の洗浄方法は、この具体例に限定されるものではない。
【0068】
工程1:前記本発明の発泡洗浄剤組成物を水により2~200倍(好ましくは5~200倍)の希釈倍率で、予め希釈し、及び/ 又は、希釈しながら、泡状に噴射し、食品加工設備及び/又は調理設備に付着させる工程
工程2:泡を一定の時間保持する工程
工程3:食品加工設備及び/又は調理設備を水ですすぐ工程
【0069】
工程1では、本発明の発泡洗浄剤組成物を、水により2~200倍(好ましくは5~200倍)の希釈倍率で予め希釈した後、泡状に噴射する。あるいは、発泡洗浄剤組成物を専用容器に入れ、ホース等により水道と直結するなどして、希釈しながら混合して泡状に噴射する。上記の事前希釈と同時希釈とを組み合わせて、発泡洗浄剤組成物の希釈溶液を泡状に噴射することもできる。工程1における希釈倍率は2~200倍であり、好ましくは5~200倍であり、より好ましくは20~100倍である。
【0070】
工程1で、硬質表面に泡状に噴射される発泡洗浄剤組成物の希釈溶液は、(a)成分を、すすぎ性の観点から、該希釈溶液中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以下含有する。
【0071】
また、硬質表面に泡状に噴射される発泡洗浄剤組成物の希釈溶液は、(b)成分を、すすぎ性、起泡性及び洗浄性の観点から、該希釈溶液中、好ましくは0.008質量%以上、より好ましくは0.016質量%以上、更に好ましくは0.032質量%以上、より更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.20質量%以上、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは0.60質量%以下、より更に好ましくは0.30質量%以下含有する。
また硬質表面に泡状に噴射される発泡洗浄剤組成物の希釈溶液中、(b)成分としてアミンオキサイドを含む場合、アミンオキサイドの含有量は、すすぎ性、及び腐食抑制の観点から、好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.005質量%以下、更に好ましくは0.0005質量%以下、より更に好ましくは0.00005質量%以下である。
【0072】
また、硬質表面に泡状に噴射される発泡洗浄剤組成物の希釈溶液は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、洗浄性の観点から、該希釈溶液中、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.04質量%以上、更に好ましくは質量0.1%以上、そして、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0073】
また、硬質表面に泡状に噴射される発泡洗浄剤組成物の希釈溶液は、(d)成分を含有する場合、(d)成分を、溶液安定性及び起泡性の観点から、該希釈溶液中、好ましくは0.015質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.06質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下含有する。
【0074】
また、硬質表面に泡状に噴射される発泡洗浄剤組成物の希釈溶液は、(e)成分を含有する場合、(e)成分を、除菌性の観点から、該希釈溶液中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは6質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0075】
なお、前記の希釈溶液における、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比である(b)/(a)、及び全界面活性剤中((b)成分中)のアミンオキドの含有量は前記した発泡洗浄剤組成物と同じ範囲である。
【0076】
ここで、発泡洗浄剤組成物の希釈に使用される水としては、一般に、水道水のような、硬度成分を含有する水であることが想定される。発泡洗浄剤組成物の希釈に使用される水の硬度は、良好な泡を継続して噴射する観点及びアルミニウム防食性の観点から、好ましくは0.1°DH以上、より好ましくは0.2°DH以上、更に好ましくは0.3°DH以上、より更に好ましくは0.5°DH以上、より更に好ましくは1°DH以上、より更に好ましくは2°DH以上、そして、好ましくは20°DH以下、より好ましくは10°DH以下、更に好ましくは8°DH以下、より更に好ましくは6°DH以下である。
また、発泡洗浄剤組成物の希釈溶液の25℃におけるpHは、洗浄性の観点から、好ましくは12.0以上、より好ましくは12.2以上、更に好ましくは12.4以上、そして、好ましくは13.5以下、より好ましくは13.0以下、更に好ましくは12.8以下である。
【0077】
本発明の発泡洗浄剤組成物の希釈溶液を泡状に噴射させる態様としては、本発明の発泡洗浄剤組成物を水で所定の倍率に希釈した希釈溶液を、専用の泡洗浄機に適量充填して、外部からの空気/圧縮空気を混合して泡状に噴射する態様が好適に挙げられる。本発明の発泡洗浄剤組成物を希釈した希釈溶液(洗浄液)中の該組成物の含有量は、好ましくは0.02質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上8質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以上6質量%以下である。食品加工工場内の製造ライン等、処理面積が大きい場合は、泡洗浄機(例えば、「SCU-HF」スプレーイング社製、「KF-100」、「KF-200」花王(株)製、「フォームiT」シーバイエス(株)製)が好適に用いられる。また、まな板等の調理器具等、処理面積が小さい場合は、トリガースプレーヤーやフォーマースプレーヤー等の間欠的に泡を発生させることのできるハンドスプレーヤーが好適に用いられる。
【0078】
工程1では間欠することなく泡状に噴射することが好ましい。ここで、「間欠することなく」噴射するとは、例えば、泡洗浄機を用いて、レバーやスイッチ等により開栓している間は連続的に(例えば、5秒以上)洗浄剤が泡状に噴射し続けることを表し、これは、「間欠する」噴射、例えば、トリガースプレーヤーやフォーマースプレーヤー等のハンドスプレーヤーを用いて、レバーを引いた時に噴射され、瞬時に噴射が停止するような噴射の態様と区別される。
【0079】
泡洗浄機を用いて間欠することなく泡状に噴射する態様は、洗浄対象である食品加工設備及び/又は調理設備の面積や規模が大きい場合により有効である。
【0080】
泡洗浄機を用いる場合、発泡倍率(泡の体積(mL)/泡の質量(g)の比)が好ましくは3~50倍、より好ましくは5~40倍、更に好ましくは10~40倍であることが好適である。また、噴射時の圧力(ゲージ圧)は、好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは0.2~0.8MPa、更に好ましくは0.2~0.5MPaである。トリガースプレーヤーやフォーマースプレーヤー等のハンドスプレーヤーを用いる場合、発泡倍率は好ましくは2~30倍、より好ましくは2~20倍、更に好ましくは3~10倍である。
【0081】
工程2は、工程1において本発明の発泡洗浄剤組成物の希釈溶液を泡状に噴射し、食品加工設備及び/又は調理設備に付着させてから一定時間泡を保持する工程である。
工程2において泡を保持する時間は、各装置の機構及び作業性の観点から、好ましくは1分以上、そして、同様の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは45分以下、更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは15分以下、より更に好ましくは10分以下、より更に好ましくは5分以下である。
また、工程2において泡を保持する時間は、洗浄性の観点から、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、更に好ましくは20分以上、そして、同様の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは45分以下、更に好ましくは30分以下である。
【0082】
工程2において泡を保持する時間は、発泡洗浄剤組成物を希釈した希釈溶液における発泡洗浄剤組成物の希釈倍率や使用場面によって異なり、特に制限されるものではないが、例えば2~50倍(好ましくは5~50倍)の希釈倍率では、泡を保持する時間は1~60分、また、50~200倍の希釈倍率においては、1~10分の間泡を安定に保持することが好ましい。
【0083】
工程2において泡を保持している間は放置しておくことが好ましいが、僅かの水等を加えるようなことも可能である。
【0084】
泡を一定時間保持した後、工程3において、食品加工設備及び/又は調理設備を水ですすぐ。すすぎ水の温度は、好ましくは10~70℃、より好ましくは20~70℃であることが好適である。すすぎ水としては、水道水を用いることができ、上記の好ましい水温に調整すべく加熱して用いてもよい。一般的には、ホース等で人の手によるすすぎ作業が行われる。本発明の発泡洗浄剤組成物は、かかるすすぎ時の泡切れ性に優れ、従来の洗浄剤組成物に比し、必要となるすすぎ水が少量でよく、経済的に有利であり、また作業負荷(作業時間や作業人員数)や環境負荷の軽減にも著しく寄与するものである。
【実施例0085】
下記(a)成分又は(a’)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及びイオン交換水を表1、2の割合で含む発泡洗浄剤組成物を調製し、以下のすすぎ性の評価を行った。
【0086】
<(a)成分>
・Me-ISA-K:下記方法により合成したイソステアリン酸の水酸化カリウム中和物
・i-C17-K:15-メチルヘキサデカン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)の水酸化カリウム中和物
・i-C18-K:16-メチルヘプタデカン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)の水酸化カリウム中和物
【0087】
・Me-ISA-Kの合成方法
400gの脂肪酸混合物(ルナックSO-90L、花王(株)製,組成:パルミチン酸1%、リノール酸3%、オクタデセン酸(オレイン酸)89%、ヘキサデセン酸2%、ステアリン酸1%)と32gのH-モルデナイト型ゼオライト(東ソー(株)製HSZ-620HOA:SiO2/Al2O3〔モル比〕=15,平均細孔径6.7~7Å)と8gの水をオートクレーブに入れ、容器内を窒素で置換した後攪拌した。このオートクレーブ内を280℃まで加熱し、18kgf/cm2の蒸気下に6時間保った。この反応混合物を冷却し、取り出した後、ゼオライトを濾別した。これを減圧下で蒸留することにより、モノマー酸(分岐不飽和脂肪酸)を347.6g得た。
このモノマー酸と3.5gの5%Pd/Cをオートクレーブに入れ、20kgf/cm2の水素雰囲気下、150℃に加熱し、3時間反応させた。反応終了後、冷却し触媒を濾別した。こうして得られた粗分岐脂肪酸を常法に従って溶媒分別法、すなわち粗分岐脂肪酸の約2倍重量のヘキサンを加え、-15℃に冷却し、結晶を濾別後、母液からヘキサンを留去して精製し、直鎖1級のヘプタデカン酸にメチル基が分岐したメチルヘプタデカン酸(以下、メチルヘプタデカン酸という場合がある。)276.7gを得た。得られたメチルヘプタデカン酸は、鎖式分岐炭化水素基において、主鎖が16であり、炭素数1の側鎖を1つ有するモノカルボン酸であり、側鎖の分岐位置が主鎖の3位~15位に分布するものの混合物である。JIS K3331に基づく酸価(AV)、ケン化価(SV)、ヨウ素価(IV)は次の如きであった。
AV=162.7、SV=177.7、IV=9.1
【0088】
<(a’)成分((a)成分の比較成分)>
・イソアラキン酸EC-K:イソアラキン酸EC(日産化学(株)製)、下記一般式(a’1)で表される脂肪酸の水酸化カリウム中和物
・イソステアリン酸-K:イソステアリン酸(日産化学(株)製)、下記一般式(a’2)で表される脂肪酸の水酸化カリウム中和物
・イソステアリン酸T-K:イソステアリン酸T(日産化学(株)製)、下記一般式(a’3-1)、及び(a’3-2)で表される脂肪酸の混合物の水酸化カリウム中和物
・n-C18-K:直鎖ステアリン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)の水酸化カリウム中和物
【0089】
【0090】
<(b)成分>
・LAS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオペレックスG-25、花王(株)製)
・SAS:炭素数14以上17以下の2級アルカンスルホン酸ナトリウム(ラテムルPS、花王(株)製)
・AG-124:ラウリルグルコシド(AG-124、花王(株)製)
・BAC:ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(サニゾールB-50、花王(株)製)
・A20AB:ラウリン酸アミドプロピルベタイン(アンヒトール20AB、花王(株)製)
・AO:ラウリルジメチルアミンオキサイド(アンヒトール20N、花王(株)製)
【0091】
<(c)成分>
・KOH:水酸化カリウム(東亜合成(株)製)
・Na2CO3:炭酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)
・MEA:モノエタノールアミン(三井化学(株)製)
<(d)成分>
・C8FA-K:カプリル酸(ルナック8-98(E)、花王(株)製)の水酸化カリウム中和物
【0092】
(1)発泡洗浄剤組成物の製造方法
ビーカーに、スターラーピース及び精製水を入れ、この精製水を撹拌しながら、表1、2に記載の配合量となるように、(a)成分又は(a’)成分、(b)成分、及び必要に応じて(d)成分を入れた。次に、この混合物に必要に応じて(c)成分を入れ、室温になるまで撹拌を行い、発泡洗浄剤組成物を製造した。各実施例、比較例の発泡洗浄剤組成物の25℃のpHは、表1、2に記載の通りであった。
【0093】
(2)すすぎ性の評価方法
表1、2の発泡洗浄剤組成物をイオン交換水で希釈し、発泡洗浄剤組成物の5質量%水溶液を調製した。
500mLのメスシリンダー(比較例7,8では1000mLメスシリンダー)に前記発泡洗浄剤組成物の5質量%水溶液の泡5gをポンプフォーマー(ビオレポンプフォーマー、花王(株)製)を用いて入れた。前記発泡洗浄剤組成物の5質量%水溶液5gの泡は初期の泡体積はいずれも50-80mLであった。
その後、泡を入れたメスシリンダーにシャワー状に4°dH硬水を25mL/30secで落下させることで消泡した。泡体積が0mLになるときの水添加量をすすぎ水量(mL)とした。結果を表1、2に示す。
すすぎ水量削減率は、表1、2の(a)成分又は(a’)成分を含む発泡洗浄剤組成物について、(a)成分又は(a’)成分を含まないが、(b)~(d)成分の組成が同じ発泡洗浄剤組成物(下記式(1)では、(a)成分又は(a’)成分を含まない発泡洗浄剤組成物とする)を基準に下記式(1)に記載に従い算出した。結果を表1、2に示す。なお各実施例、比較例ごとに、基準とした比較例の番号を表1、2に示す。基準とした比較例を基として、すすぎ水量の削減率が大きい程効果が高いといえる。
すすぎ水量削減率(%)={(a)成分又は(a’)成分を含まない発泡洗浄剤組成物のすすぎ水量-(a)成分又は(a’)成分を含む発泡洗浄剤組成物のすすぎ水量}÷(a)成分又は(a’)成分を含まない発泡洗浄剤組成物のすすぎ水量×100 (1)
【0094】
【0095】