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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156303
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】車両の車外エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20241029BHJP
【FI】
B60R21/36 310
B60R21/36 352
B60R21/36 320
B60R21/36 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070659
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】相内 勇人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友香
(72)【発明者】
【氏名】音辻 大翼
(57)【要約】
【課題】車両に設けられる車外エアバッグ装置を改善する。
【解決手段】車両の車外エアバッグ装置は、車外エアバッグを、インフレータの高圧ガスの供給により展開する。前記車外エアバッグは、中央袋体、右袋体、左袋体を有する。インフレータが車外エアバッグへ供給する高圧ガスは、少なくとも展開開始時点において、右袋体および左袋体より、中央袋体に対して優先的に供給される。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室を有する車両において、前記車両についての前記車室の前側のノーズ部と前記車室の前面ガラスとの間から、前記車両の後方へ向けて展開して前記前面ガラスの上に展開可能な車外エアバッグを、インフレータの高圧ガスの供給により展開する、車両の車外エアバッグ装置であって、
前記車外エアバッグは、
前記車両の車幅方向の中央において展開する中央袋体と、
前記中央袋体についての、前記車両の車幅方向の右側部分と接合されて、前記中央袋体より前記車両の後方へ延在するように展開して前記前面ガラスについての車幅方向の右側のフロントピラーの上に重なるように展開可能な右袋体と、
前記中央袋体についての、前記車両の車幅方向の左側部分と接合されて、前記中央袋体より前記車両の後方へ延在するように展開して前記前面ガラスについての車幅方向の左側のフロントピラーの上に重なるように展開可能な左袋体と、
を有し、
前記インフレータが前記車外エアバッグへ供給する高圧ガスは、少なくとも展開開始時点において、前記右袋体および前記左袋体より、前記中央袋体に対して優先的に供給される、
車両の車外エアバッグ装置。
【請求項2】
前記中央袋体は、
前記インフレータが接続され、前記インフレータの高圧ガスの供給により前記車両の車幅方向へ広がるように展開する中央展開部と、
前記中央展開部についての、前記車両の車幅方向の右側に設けられ、前記中央展開部より前記車両の後方へ、前記右袋体より短い長さで展開する右展開部と、
前記中央展開部についての、前記車両の車幅方向の左側に設けられ、前記中央展開部より前記車両の後方へ、前記左袋体より短い長さで展開する左展開部と、による一つの気室の袋体であり、
前記右袋体は、前記中央袋体の前記右展開部と、前記車両の前後方向において長さを有する右接合部により接合され、
前記左袋体は、前記中央袋体の前記左展開部と、前記車両の前後方向において長さを有する左接合部により接合される、
請求項1記載の、車両の車外エアバッグ装置。
【請求項3】
前記中央袋体と前記右袋体とを連通する第一右連通孔と、前記中央袋体と前記袋体とを連通する第一左連通孔と、を有し、
前記第一右連通孔は、前記中央袋体の前記右接合部についての、前記中央展開部の後縁より後側となる後側部分において、前記中央袋体を前記右袋体と連通し、
前記第一左連通孔は、前記中央袋体の前記左接合部についての、前記中央展開部の後縁より後側となる後側部分において、前記中央袋体を前記左袋体と連通する、
請求項2記載の、車両の車外エアバッグ装置。
【請求項4】
前記右袋体は、展開した状態において、前記中央袋体の前記右展開部の右側において、前記右袋体の前側部分の一部が前記中央袋体の前記右展開部についての前記車両の上下方向での下側に重なり、該重なり部分に前記右接合部が設けられ、
前記左袋体は、展開した状態において、前記中央袋体の前記左展開部の左側において、前記左袋体の前側部分の一部が前記中央袋体の前記左展開部についての前記車両の上下方向での下側に重なり、該重なり部分に前記左接合部が設けられる、
請求項2または3記載の、車両の車外エアバッグ装置。
【請求項5】
前記インフレータは、前記中央袋体についての、展開状態での前側部分に対して、前記車両の車幅方向に沿う向きで高圧ガスを噴出して供給し、
前記中央袋体と前記右袋体とを連通する第二右連通孔と、前記中央袋体と前記袋体とを連通する第二左連通孔とが、前記中央袋体についての、展開状態での前側部分において、前記インフレータから前記中央袋体への高圧ガスの噴出方向に設けられる、
請求項4記載の、車両の車外エアバッグ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車外エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両は、歩行者やサイクリストなどが通行する道路を走行する。
この場合、車両は、歩行者やサイクリストなどと当たる可能性がある。
特許文献1から特許文献3は、車両の車両において車室の前側のノーズ部の後端部分から車室の前面ガラスにかけて延在するように展開する車外エアバッグを開示する。
車外エアバッグを展開することにより、車両の上へ倒れ込んだ歩行者やサイクリストの頭部は、直接的には展開した車外エアバッグに当たり、車両の車両に対して直接的に当たり難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-299516号公報
【特許文献2】特開2006-069349号公報
【特許文献3】特開2016-506894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1から特許文献3の車外エアバッグは、車両のノーズ部と前面ガラスとの間から袋体を展開し、その袋体の車両の車幅方向の左右両端部分を、車両の後方へ向けて屈曲させるように展開する。この場合、車外エアバッグの左右において車両の後方へ屈曲されている左右の屈曲部は、車外エアバッグの中央部と一つの気室となっている。このため、左右の屈曲部は、車外エアバッグの中央部とともに一体的に展開する。また、車外エアバッグの左右の屈曲部は、展開中に、車外エアバッグの中央部から注入される高圧ガスにより、左右方向へ揺動し易くなる。その結果、左右の屈曲部は、車両のフロントピラーに沿って展開するのではなく、フロントピラーの外側へ脱落するように展開し易くなる。
また、車外エアバッグの中央部は、車両のノーズ部の上に倒れ込む歩行者の頭部を保護するため、大容量で厚みを持って展開することが望まれる。これに対し、左右の屈曲部は、基本的に車両のフロントピラーに被ればよく、その目的のためには中央部より小さい容量となる細身に形成することが許容され得る。しかしながら、このように左右の屈曲部を、大容量の中央部より細くして低容量とした場合、左右の屈曲部は、中央部において左右方向へ広がる高圧ガスにより、フロントピラーの外側へ脱落し易くなる。
そして、このような左右の屈曲部についての、フロントピラーの外側への脱落を抑制するためには、左右の屈曲部についても、中央部と同等の容量となるように太くして、中央部から左右方向へ広がる高圧ガスにより外へ開き難くなるようにすることが考えられる。この場合、車外エアバッグは、その中央部だけでなく、左右の屈曲部についても大容量になる。車外エアバッグを展開するために必要される高圧ガスの量や、車外エアバッグの展開開始から展開完了までの時間は、増加する。しかも、左右の屈曲部を大容量したとしても、左右の屈曲部は、中央部から左右方向へ広がる高圧ガスにより展開することには変わりがない。その結果、左右の屈曲部を大容量したとしても、左右の屈曲部は、必ずしも、フロントピラーの外側へ脱落しなくなると言い切れない。
【0005】
このように車両に設けられる車外エアバッグ装置は、改善することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の一形態に係る車両の車外エアバッグ装置は、車室を有する車両において、前記車両についての前記車室の前側のノーズ部と前記車室の前面ガラスとの間から、前記車両の後方へ向けて展開して前記前面ガラスの上に展開可能な車外エアバッグを、インフレータの高圧ガスの供給により展開する、車両の車外エアバッグ装置であって、前記車外エアバッグは、前記車両の車幅方向の中央において展開する中央袋体と、前記中央袋体についての、前記車両の車幅方向の右側部分と接合されて、前記中央袋体より前記車両の後方へ延在するように展開して前記前面ガラスについての車幅方向の右側のフロントピラーの上に重なるように展開可能な右袋体と、前記中央袋体についての、前記車両の車幅方向の左側部分と接合されて、前記中央袋体より前記車両の後方へ延在するように展開して前記前面ガラスについての車幅方向の左側のフロントピラーの上に重なるように展開可能な左袋体と、を有し、前記インフレータが前記車外エアバッグへ供給する高圧ガスは、少なくとも展開開始時点において、前記右袋体および前記左袋体より、前記中央袋体に対して優先的に供給される、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、車外エアバッグは、車両の車幅方向の中央において(大容量で厚みをもって)展開する中央袋体と、中央袋体についての、車両の車幅方向の左右両側に設けられ、車両の左右のフロントピラーに沿って、中央袋体より車両の後方へ延在するように展開する右袋体および左袋体と、で構成される。そして、インフレータが車外エアバッグへ供給する高圧ガスは、少なくとも展開開始時点において、右袋体および左袋体より、中央袋体に対して優先的に供給される。
これにより、中央袋体が既に前面ガラスの上への展開を始めている状態で、右袋体および左袋体の展開を開始することが可能になる。優先的に展開される中央袋体は、右袋体および左袋体の展開が完了する前に、高圧ガスの圧力により所望の形状で面ガラスの上に展開し得る。したがって、中央袋体についての、車両の車幅方向の右側部分と接合される右袋体は、前面ガラスの上で所望の形状に展開している中央袋体より支えられながら、中央袋体より車両の後方へ展開し、前面ガラスについての車幅方向の右側のフロントピラーの上に所望の状態で重なるように展開することが可能になる。また、中央袋体についての、車両の車幅方向の左側部分と接合される左袋体は、所望の形状に展開している中央袋体より支えられながら、中央袋体より車両の後方へ展開し、前面ガラスについての車幅方向の左側のフロントピラーの上に所望の状態で重なるように展開することが可能になる。
その結果、中央袋体、右袋体および左袋体の3つの袋体を有する車外エアバッグは、右袋体と左袋体とが左右のフロントピラーの上に所望の状態で重なるように、展開することができる。右袋体および左袋体は、優先的に展開する中央袋体により支えられて安定性のある状態で、展開する中央袋体についての車両の車幅方向の左右両側において、中央袋体より車両の後方へ安定的に展開することが可能になる。本発明において、車外エアバッグの右袋体および左袋体は、左右のフロントピラーの上に所望の状態で重なるように、展開し易くなる。本発明では、車両と衝突した歩行者などが、車両の左右のフロントピラーに対して直接的に当たることが起き難くなるように、車両に設けられる車外エアバッグ装置を改善することが可能になる。
このように本発明では、車両に設けられる車外エアバッグ装置を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態が適用可能な自動車が、歩行者と衝突する場合の一例の説明図である。
図2図2は、図1の自動車の上に歩行者が倒れ込んでいる状態の説明図である。
図3図3は、中央部とその車幅方向の左右両側の屈曲部とが一気室とされている、従来の車外エアバッグの他の展開状態の一例の説明図である。
図4図4は、前面ガラスを覆う大型の袋体による車外エアバッグの展開状態の一例の説明図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る車外エアバッグ装置を含む、自動車の制御系の説明図である。
図6図6は、図5の制御部により実行される、歩行者などを保護するための車外保護制御のフローチャートの一例である。
図7図7は、本発明の第一実施形態での車外エアバッグの構造および自動車での配置を、車外エアバッグが展開している状態で模式的に示す説明図である。
図8図8は、図7の車外エアバッグの詳しい構造の模式的な説明図である。
図9図9は、図7の車外エアバッグの格納状態を模式的に示す説明図である。
図10図10は、図9のように格納されていた車外エアバッグが展開を開始した直後の状態を模式的に示す説明図である。
図11図11は、図10の後での、車外エアバッグの展開状態を模式的に示す説明図である。
図12図12は、図11の後での、車外エアバッグの展開状態を模式的に示す説明図である。
図13図13は、図12の後での、車外エアバッグの展開状態を模式的に示す説明図である。
図14図14は、図13のA-A端面を、模式的に示す説明図である。
図15図15は、図13の後での、車外エアバッグが最大に展開している状態を模式的に示す説明図である。
図16図16は、図15のB-B端面を、模式的に示す説明図である。
図17図17は、本発明の第二実施形態での車外エアバッグの詳しい構造の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る車外エアバッグ装置が適用可能な自動車1が、歩行者と衝突する場合の一例の説明図である。
図1には、自動車1としての自動車1と、歩行者と、が描画されている。そして、図1において時間は上から下へ流れる。
【0011】
時刻t1において、自動車1は、前へ向けて走行する。歩行者は、自動車1の進路にいる。
自動車1は、走行を続けると、その後の時刻t2において、歩行者と当たる。
時刻t3では、歩行者が、自動車1の上に倒れ込んでいる。
なお、本実施形態では、上下左右前後を、図1に示す対応関係で使用する。自動車1の車幅方向は、左右方向と一致する。
【0012】
図2は、図1の自動車1の上に歩行者が倒れ込んでいる状態の説明図である。図2は、図1の時刻t3の状態に対応する。図2は、歩行者が自動車1に倒れ込んでいる自動車1の上から見た図である。
そして、自動車1は、たとえば図1の時刻t1での歩行者との衝突予測や、図1の時刻t2での歩行者との衝突検出に基づいて、車外エアバッグ13を展開する。
【0013】
車外エアバッグ13は、自動車1の車室3の前側のノーズ部4の後端部分から車室3の前面ガラス5にかけて延在するように展開する。
図2の車外エアバッグ13は、ノーズ部4と前面ガラス5との間において自動車1の車幅方向に延在する中央部81と、中央部81についての、車幅方向の左右両端から自動車1の後方へ向けて突出するように設けられる左右一対の屈曲部82と、を有する。中央部81と左右一対の屈曲部82とは、内部が連通して、一つの気室となっている。また、左右一対の屈曲部82は、前面ガラス5についての、車幅方向の左右両側に設けられるフロントピラー6の上に重なっている。左右のフロントピラー6は、左右一対の屈曲部82により全体的に覆われている。
このように、自動車1は、車外エアバッグ13を、たとえば図1の時刻t2のタイミングで展開する。これにより、その後の時刻t3において歩行者が自動車1に倒れ込んだとしても、歩行者は、展開した車外エアバッグ13に当たり、自動車1のフロントピラー6などの車体2に対して直接的に当たり難くなる。自動車1に倒れ込んだ歩行者は、展開した車外エアバッグ13により保護され得る。
このような自動車1への倒れ込みは、歩行者以外でも、たとえば自転車に乗るサイクリスト、などについても生じる可能性がある。特に、サイクリストは、衝突の際の腰の高さが歩行者のものより高くなっていることがあり、このような場合には、サイクリストは、自動車1のフロントピラー6に当たるように、自動車1の上に倒れ込み易い。また、歩行者やサイクリストについての、自動車1の上への倒れ込み状態は、自動車1の速度などによっても変化する。
【0014】
図3は、中央部81とその車幅方向の左右両側の屈曲部82とが一気室とされている、従来の車外エアバッグ13の他の展開状態の一例の説明図である。
【0015】
従来の車外エアバッグ13は、図2のような良好な展開するとは限らない。
たとえば、インフレータ12が、車外エアバッグ13の中央部81へ高圧ガスを供給する場合、中央部81へ供給された高圧ガスは、中央部81を車幅方向に広げるように中央部81において車幅方向に沿って流れる。
また、車外エアバッグ13の中央部81は、自動車1のノーズ部4の上に倒れ込む歩行者の頭部を保護するため、大容量で厚みを持って展開することが望まれる。これに対し、左右一対の屈曲部82は、基本的に自動車1のフロントピラー6に被ればよく、その目的のためには中央部81より小さい容量となる細身に形成することが許容され得る。
その結果、中央部81と一体の気室となるように、中央部81の車幅方向の左右両端に設けられる左右一対の屈曲部82は、自動車1の前後方向に展開するように中央部81と連結されているとしても、自動車1の車幅方向に広がるように展開し易い。左右一対の屈曲部82は、図3に示すように、自動車1の車幅方向に広がるように展開して、左右のフロントピラー6の上ではなく、左右のフロントピラー6の外側へ脱落するように展開してしまう可能性がある。
この場合、自動車1に倒れ込んだ歩行者は、展開した車外エアバッグ13により保護されることなく、自動車1のフロントピラー6などの車体2に対して直接的に当たってしまう。
【0016】
図4は、前面ガラス5を覆う大型の袋体84による車外エアバッグの展開状態の一例の説明図である。
【0017】
図4において、車外エアバッグ13は、図3のものとは異なり、前面ガラス5を全体的に覆う大型のサイズの略四角形の外形に展開する。
このように車外エアバッグ13が、前面ガラス5を全体的に覆う大型のサイズである場合、左右のフロントピラー6の上に重なり易くなる。
しかしながら、車外エアバッグ13が、前面ガラス5を全体的に覆う大型のサイズである場合、車外エアバッグ13を展開するための高圧ガスの量が増える。また、車外エアバッグ13は、その展開を開始してから完了するまでの時間がかかる。車外エアバッグ13は、図1の時刻t1よりも早い段階で、展開を開始する必要が生じ得る。歩行者などとの衝突を判断するタイミングを早めると、過不足のない確からしい判断は、それだけ難しくなる。
上述する図3の車外エアバッグ13でも、たとえば左右一対の屈曲部82を中央部81と同等の容量となるように太くして、中央部81から左右方向へ広がる高圧ガスにより左右一対の屈曲部82が外へ開き難くなるようにすることが考えられる。この場合、車外エアバッグ13は、その中央部81だけでなく、左右一対の屈曲部82についても大きな容量となる。車外エアバッグ13を展開するための高圧ガスの量や、車外エアバッグ13の展開時間は、増加する。しかも、左右一対の屈曲部82を大きな容量としたとしても、左右一対の屈曲部82は、中央部81から左右方向へ広がる高圧ガスにより展開されることには変わりがない。大容量化した左右一対の屈曲部82は、フロントピラー6の外側へ絶対的に脱落し難くなるとは言い難い。
【0018】
このように自動車1に設けられる車外エアバッグ装置は、改善することが望まれる。
次に、本発明の第一実施形態に係る車外エアバッグ装置について説明する。
【0019】
図5は、本発明の第一実施形態に係る車外エアバッグ装置10を含む、自動車1の制御系20の説明図である。
図5の自動車1の制御系20は、車外エアバッグ装置10と、これに接続されるステレオカメラ21、赤外線カメラ22、Lidar23、加速度センサ24、通信装置25、およびGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機26、を有する。
【0020】
ステレオカメラ21は、たとえば車室3の前部において前向きに配置される。ステレオカメラ21は、車幅方向に並ぶ複数の撮像デバイスを有する。ステレオカメラ21は、複数の撮像デバイスにより、自動車1の進行方向である前側を撮像する複数の画像による視差画像を撮像してよい。
図1のように、自動車1の前側に歩行者がいる場合、ステレオカメラ21は、その歩行者の像を含む車外の画像を撮像する。ステレオカメラ21は、画像解析により撮像画像に含まれる歩行者またはサイクリストを抽出してよい。ステレオカメラ21は、抽出した歩行者またはサイクリストの像についての撮像画像での位置や範囲に基づいて、自車から歩行者またはサイクリストまでの相対的な方向および距離を演算してよい。なお、複数の撮像画像で構成される視差画像の場合、複数の撮像画像での撮像位置の相違に基づいて、相対的な方向および距離を高い精度で演算することが可能である。
また、ステレオカメラ21は、時間をずらして撮像される歩行者またはサイクリストの像の位置変化に基づいて、歩行者またはサイクリストの移動の有無、移動方向、移動速度などを演算してよい。
【0021】
赤外線カメラ22は、たとえば自動車1のノーズ部4の前端において、前向きに配置されてよい。この場合、赤外線カメラ22は、自動車1の前にいる歩行者またはサイクリストを撮像した車外の赤外線画像を撮像できる。
【0022】
Lidar23は、たとえば自動車1のノーズ部4の前端において、前向きに配置されてよい。この場合、Lidar23は、自動車1の前にいる歩行者またはサイクリストを含む車外の空間情報を生成できる。Lidar23は、自動車1の周囲をレーザで走査し、反射されたレーザのTOF(Time Of Flight)などに基づいて、自動車1の周囲の空間についての空間情報を生成してよい。
【0023】
加速度センサ24は、自動車1の車体2に作用する加速度を検出する。加速度センサ24は、自動車1の前後方向、左右方向、および上下方向の3軸方向の加速度を検出可能な3軸のものでよい。自動車1に対して歩行者またはサイクリストが当たると、加速度センサ24は、通常の走行中にはない大きな加速度を検出し得る。これにより、加速度センサ24は、自動車1の衝突を検出できる。
【0024】
通信装置25は、自動車1が走行する道路沿いに立設される不図示の基地局などと、無線通信により通信する。通信装置25は、他の移動体、たとえば他の自動車1の通信装置25、歩行者が携帯する端末、などと通信してもよい。通信装置25は、他の移動体についての、現在位置、移動方向、移動速度などの情報を受信してよい。
【0025】
GNSS受信機26は、GNSS衛星から電波を受信する。GNSS受信機26は、複数のGNSS衛星から受信する電波に含まれる各衛星の位置および時刻に基づいて、自動車1の現在位置、現在時刻、速度、などを生成してよい。
【0026】
車外エアバッグ装置10は、制御部11、インフレータ12、車外エアバッグ13、を有する。
【0027】
インフレータ12は、制御部11の点火信号により点火され、高圧ガスを発生する。
【0028】
車外エアバッグ13には、たとえばナイロンその他の樹脂繊維により滑らかな表面に形成された袋体を用いてよい。車外エアバッグ13は、後述する図9に示すように小さく折り畳まれて、自動車1に格納配置される。車外エアバッグ13は、インフレータ12に接続される。車外エアバッグ13は、インフレータ12が発生した高圧ガスが供給されると、膨らんで展開する。車外エアバッグ13は、所望の形状に展開することが可能である。
【0029】
制御部11は、たとえばCPU(Central Processing Unit)、メモリ、タイマ、などで構成されてよい。タイマは、時間、時刻を計測する。CPUは、メモリに記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、自動車1の制御系20には、制御部11が実現される。
制御部11は、ステレオカメラ21、赤外線カメラ22、Lidar23、加速度センサ24、通信装置25から情報を取得し、自動車1の衝突を予測し、自動車1の衝突を検出し、車外エアバッグ13などの各種の保護装置の動作を制御してよい。
【0030】
図6は、図5の制御部11により実行される、歩行者などを保護するための車外保護制御のフローチャートの一例である。
制御部11は、たとえば自動車1が走行している場合、図6の車外保護制御を繰り返しに実行する。制御部11は、たとえば新たな情報を取得する度に、図6の車外保護制御を実行してよい。
【0031】
ステップST1において、制御部11は、新たに取得した歩行者などの情報に基づいて、自車の進路に歩行者などがいるか否かを判断する。制御部11は、たとえば、検出されている歩行者などの位置が進路上であるか否か、検出されている歩行者などの移動方向が進路と交差するか否か、などに基づいて、自車の進路に歩行者などがいるか否かを判断してよい。自車の進路に歩行者などがいない場合、制御部11は、図6の制御を終了する。自車の進路に歩行者などがいる場合、制御部11は、処理をステップST2へ進める。
【0032】
ステップST2において、制御部11は、自車の進路にいる歩行者などとの衝突を予測する。制御部11は、たとえば、歩行者の位置または交差位置へ自車が到達するタイミングと、歩行者が交差位置に到達するタイミングとの時間差が所定値以下であるか否かに基づいて、自車の進路にいる歩行者などとの衝突を予測してよい。自車の進路にいる歩行者などとの衝突が予測されない場合、制御部11は、図6の制御を終了する。自車の進路にいる歩行者などとの衝突が予測される場合、制御部11は、処理をステップST3へ進める。
【0033】
ステップST3において、制御部11は、歩行者などとの衝突に対する準備を開始する。制御部11は、たとえば、車外エアバッグ装置10を起動可能な状態にする。制御部11は、車外エアバッグ装置10を、点火信号がインフレータ12へ入力されることにより高圧ガスを車外エアバッグ13へ供給可能な状態にする。
【0034】
ステップST4において、制御部11は、歩行者などとの衝突を検出する。制御部11は、加速度センサ24か検出する加速度の値が、衝突の際の閾値以上となることにより、歩行者などとの衝突を検出してよい。衝突が検出されない場合、制御部11は、処理をステップST6へ進める。衝突が検出されると、制御部11は、処理をステップST5へ進める。
【0035】
ステップST5において、制御部11は、車外エアバッグ13を展開する。制御部11は、車外エアバッグ装置10のインフレータ12へ点火信号を出力する。車外エアバッグ装置10において、インフレータ12は、高圧ガスを車外エアバッグ13へ供給する。車外エアバッグ13は、自動車1のノーズ部4と前面ガラス5との間から展開する。その後、制御部11は、本制御を終了する。
【0036】
ステップST6において、制御部11は、衝突が回避されたか否かを判断する。制御部11は、たとえば、衝突を予測した歩行者などの位置が進路から外れている場合、歩行者の予測進路が自車と交差しなくなっている場合、衝突が回避されたと判断してよい。この場合、制御部11は、本制御を終了する。衝突が回避されたと判断しない場合、制御部11は、処理をステップST4へ戻す。これにより、制御部11は、ステップST4において衝突を検出するか、ステップST6において衝突が回避されていると判断するまで、ステップST4およびステップST6の処理を繰り返す、ことができる。
【0037】
次に、本発明の第一実施形態での車外エアバッグ13について、詳しく説明する。
【0038】
図7は、本発明の第一実施形態での車外エアバッグ13の構造および自動車1での配置を、車外エアバッグ13が展開している状態で模式的に示す説明図である。
図7には、自動車1の構造として、自動車1の車室3についての前面ガラス5、前面ガラス5の左右両側において上下方向に沿って延在する左右のフロントピラー6、前面ガラス5とノーズ部4との間において車幅方向に延在するバルク構造部材7、が破線により示されている。
そして、車外エアバッグ13は、インフレータ12とともに、バルク構造部材7についての、車幅方向の中央部81に、取り付けられる。車外エアバッグ13は、インフレータ12の上に折り畳んで格納される。
【0039】
車外エアバッグ13は、図7の展開状態に示すように、自動車1の車幅方向の中央において展開する中央袋体31と、中央袋体31の右側で展開する右袋体32と、中央袋体31の左側で展開する左袋体33、とによる3つの袋体を有する。
【0040】
中央袋体31は、中央展開部34、右展開部35、左展開部36、を有する。中央展開部34と、右展開部35と、左展開部36とは、1つの気室を構成する。
【0041】
中央展開部34は、インフレータ12が直接に接続される。中央展開部34は、インフレータ12の高圧ガスが供給されることにより、車幅方向の中央部81において、車幅方向に長い大容量の略楕円体形状に展開する。車幅方向に長い略楕円体形状に展開する中央展開部34は、前面ガラス5の下部と重なるように展開する。このように中央展開部34が、前面ガラス5の上で車幅方向に広がるように大容量で展開することにより、自動車1のノーズ部4の上に倒れ込む歩行者などの頭部は、中央展開部34により保護され得る。
【0042】
右展開部35は、中央展開部34についての、自動車1の車幅方向の右側に設けられる。右展開部35は、中央展開部34の右側で展開する。右展開部35は、中央展開部34と比べて前後方向で長く、中央展開部34より自動車1の後方へ向けて展開する。
【0043】
左展開部36は、中央展開部34についての、自動車1の車幅方向の左側に設けられる。左展開部36は、中央展開部34の左側で展開する。左展開部36は、中央展開部34と比べて前後方向で長く、中央展開部34より自動車1の後方へ向けて展開する。
これにより、中央袋体31は、その車幅方向の左右両側の部分が、中央部分よりも後方へ延びるように、左右両側の部分において耳が立つような外形に展開できる。中央袋体31は、前面ガラス5の下中央部分を略覆うように、展開する。
【0044】
右袋体32は、中央袋体31の右側において、前後方向に長い略円柱形状に展開する。右袋体32は、中央袋体31の右展開部35の右側において、中央袋体31の右側から後方にかけて展開する。右袋体32は、右側のフロントピラー6の略全体の上に重なるように展開する。
ここで、中央袋体31の右側において後方へ展開する右展開部35は、右袋体32より短い。後述する図8に示すように、右展開部35の前後方向の長さL2は、右展開部35の前後方向の長さL1の半分から2/3程度とされている。右展開部35をこのような長さに抑えることにより、中央袋体31の展開中において、中央展開部34に対して、右展開部35についての後側へ突出する部分が、揺動することが起き難くなる。右展開部35は、その後側へ突出する部分を含めて揺動することなく、中央展開部34とともに図7の状態に展開し易くなる。
【0045】
左袋体33は、中央袋体31の左側において、前後方向に長い略円柱形状に展開する。左袋体33は、中央袋体31の左展開部36の左側において、中央袋体31の左側から後方にかけて展開する。左袋体33は、左側のフロントピラー6の略全体の上に重なるように展開する。
ここで、中央袋体31の左側において後方へ展開する左展開部36は、左袋体33より短い。後述する図8に示すように、左展開部36の前後方向の長さL2は、左展開部36の前後方向の長さL1の半分から2/3程度とされている。左展開部36をこのような長さとすることにより、中央袋体31の展開中において、中央展開部34に対して左展開部36が揺動することが起き難くなる。左展開部36をこのような長さに抑えることにより、中央袋体31の展開中において、中央展開部34に対して、左展開部36についての後側へ突出する部分が、揺動することが起き難くなる。左展開部36は、その後側へ突出する部分を含めて揺動することなく、中央展開部34とともに図7の状態に展開し易くなる。
【0046】
そして、図7のように、車外エアバッグ13が展開することにより、自動車1に倒れ込んだ歩行者などは、左右のフロントピラー6や前面ガラス5に対して直接的に当たり難くなる。自動車1に倒れ込んだ歩行者などは、良好に保護され得る。
【0047】
図8は、図7の車外エアバッグ13の詳しい構造の模式的な説明図である。図8において、車外エアバッグ13は、展開しておらず、その全体が薄い布袋状になっているものとする。
【0048】
右袋体32は、中央袋体31の右展開部35と接合される。図8において右袋体32と中央袋体31の右展開部35とを接合する右接合部41は、自動車1の前後方向に長い略四角形の面状とされている。ここで、右袋体32は、その前側部分の一部が中央袋体31の右展開部35についての自動車1の上下方向での下側に重ねられる。中央袋体31の右展開部35の下側の面と、右袋体32の上側の面とが、右接合部41により接合される。右接合部41は、一般的なエアバッグの基布に使用される接着剤や圧着などの手段を用いて、実現されてよい。
このよう中央袋体31の右展開部35の下側に右袋体32が重ねられることにより、展開した中央袋体31の右展開部35は、右袋体32を、前面ガラス5との間に上から抑え込む機能を発揮することができる。右袋体32は、その展開中において、右接合部41の設けられる部分が、中央袋体31の右展開部35により上から抑え込まれ得る。右袋体32は、展開して強度を発揮し始めている右展開部35との間で、前後方向に長い接合部が設けられているため、前後方向に延在する姿勢で安定して展開することが可能になる。
【0049】
そして、自動車1の前後方向に長い略四角形の右接合部41には、中央袋体31と右袋体32とを連通する第一右連通孔43が設けられる。
第一右連通孔43は、右袋体32と中央袋体31とが接合される右接合部41において、中央袋体31と右袋体32とを連通する。第一右連通孔43は、右接合部41についての、図中に破線で示す位置より後方の部分において、中央袋体31と右袋体32とを連通する。特に、本実施形態では、第一右連通孔43は、右接合部41についての後端部分において、中央袋体31と右袋体32とを連通する。図中の破線は、中央袋体31の中央展開部34についての後縁を車幅方向へ延長したものである。このような位置に開設される第一右連通孔43は、中央袋体31の展開がある程度進んで右展開部35の後端部分が展開し始めた後に、図中の矢印破線に示すように、中央袋体31の高圧ガスを右袋体32へ供給し始めるようになる。特に、中央袋体31が、図中の破線の部分などで折り畳まれている場合、中央袋体31はその前側部分から順番に後側へ向かって開くように展開するため、中央袋体31から右袋体32への高圧ガスの供給開始は、遅れる。インフレータ12の高圧ガスは、右袋体32より、中央袋体31に優先して供給され得る。
また、このような第一右連通孔43は、右袋体32についての後側部分に設けられることになる。したがって、右袋体32は、その後側部分から順番に、後ろから前へ向かって展開することになる。
なお、第一右連通孔43は、単なる貫通孔であってもよいが、不図示の第一右減圧弁が設けられてもよい。第一右減圧弁が、中央袋体31より右袋体32の圧力上昇を抑えるように機能することにより、インフレータ12の高圧ガスは、右袋体32より、中央袋体31に優先して供給され得る。
【0050】
左袋体33は、中央袋体31の左展開部36と接合される。図8において左袋体33と中央袋体31の左展開部36とを接合する左接合部42は、自動車1の前後方向に長い略四角形の面状とされている。ここで、左袋体33は、その前側部分の一部が中央袋体31の左展開部36についての自動車1の上下方向での下側に重ねられる。中央袋体31の左展開部36の下側の面と、左袋体33の上側の面とが、左接合部42により接合される。左接合部42は、一般的なエアバッグの基布に使用される接着剤や圧着などの手段を用いて、実現されてよい。
このよう中央袋体31の左展開部36の下側に左袋体33が重ねられることにより、展開した中央袋体31の左展開部36は、左袋体33を、前面ガラス5との間に上から抑え込む機能を発揮することができる。左袋体33は、その展開中において、左接合部42の設けられる部分が、中央袋体31の左展開部36により上から抑え込まれ得る。左袋体33は、展開して強度を発揮し始めている左展開部36との間で、前後方向に長い接合部が設けられているため、前後方向に延在する姿勢で安定して展開することが可能になる。
【0051】
そして、自動車1の前後方向に長い略四角形の左接合部42には、中央袋体31と左袋体33とを連通する第一左連通孔44が設けられる。
第一左連通孔44は、左袋体33と中央袋体31とが接合される左接合部42において、中央袋体31と左袋体33とを連通する。第一左連通孔44は、左接合部42についての、図中に破線で示す位置より後方の部分において、中央袋体31と左袋体33とを連通する。特に、本実施形態では、第一左連通孔44は、左接合部42についての後端部分において、中央袋体31と左袋体33とを連通する。このような位置に開設される第一左連通孔44は、中央袋体31の展開がある程度進んで左展開部36の後端部分が展開し始めた後に、図中の矢印破線に示すように、中央袋体31の高圧ガスを左袋体33へ供給し始めるようになる。特に、中央袋体31が、図中の破線の部分などで折り畳まれている場合、中央袋体31はその前側部分から順番に後側へ向かって開くように展開するため、中央袋体31から左袋体33への高圧ガスの供給開始は、遅れる。インフレータ12の高圧ガスは、左袋体33より、中央袋体31に優先して供給され得る。
また、このような第一左連通孔44は、左袋体33についての後側部分に設けられることになる。したがって、左袋体33は、その後側部分から順番に、後ろから前へ向かって展開することになる。
なお、第一左連通孔44は、単なる貫通孔であってもよいが、不図示の第一左減圧弁が設けられてもよい。第一左減圧弁が、中央袋体31より左袋体33の圧力上昇を抑えるように機能することにより、インフレータ12の高圧ガスは、左袋体33より、中央袋体31に優先して供給され得る。
【0052】
次に、図7および図8に示す車外エアバッグ13の展開の仕方について、図9から図16の模式図を参照して説明する。
なお、以下の説明は、車外エアバッグ13についての良好な展開の仕方の一例を説明するものである。車外エアバッグ13は、以下の説明のとおりに厳密に展開する必要はない。
【0053】
図9は、図7の車外エアバッグ13の格納状態を模式的に示す説明図である。
図9において、車外エアバッグ13は、バルク構造部材7の中央部分に格納されている。バルク構造部材7の中央部分には、車外エアバッグ13との間に、インフレータ12が設けられる。格納状態において、中央袋体31は折り畳まれている。折り畳まれた中央袋体31の右側には、右袋体32が折り畳まれている。中央袋体31の左側には、左袋体33が折り畳まれている。車外エアバッグ13は、バルク構造部材7の中央部分において、コンパクトに格納されている。
【0054】
図10は、図9のように格納されていた車外エアバッグ13が展開を開始した直後の状態を模式的に示す説明図である。
自動車1が歩行者などに当たると、インフレータ12は、高圧ガスを発生して、車外エアバッグ13へ供給する。インフレータ12は、車外エアバッグ13の中央袋体31の中央展開部34に接続されている。インフレータ12は、図に太矢線で示すように、中央袋体31に対して、車幅方向に沿って、高圧ガスを供給してよい。インフレータ12は、中央袋体31についての、展開状態での前側部分に対して、自動車1の車幅方向に沿う向きで、自動車1の車幅方向の左右へ向けて高圧ガスを噴出して供給してよい。
これにより、車外エアバッグ13は、まず、中央袋体31の中央展開部34が展開し始める。中央袋体31の中央展開部34は、自動車1の車幅方向に向かって左右へ延びるように展開し始める。また、中央袋体31の右展開部35および左展開部36も、自動車1の車幅方向に向かって左右へ延びるように展開し始める。中央袋体31は、図7および図8に示す幅で展開するようになる。
【0055】
図11は、図10の後での、車外エアバッグ13の展開状態を模式的に示す説明図である。
図10の状態よりも展開が進むと、中央袋体31が車幅方向へ展開している車外エアバッグ13は、後方向へ向かって展開し始める。高圧ガスは、図中に太矢線で示すように、中央袋体31の左右の側面に沿って、前から後ろへ向かって流れる。中央袋体31の中央展開部34が膨らむことにより、中央展開部34の後縁より後側に設けられている第一右連通孔43および第一左連通孔44が、露出し始める。高圧ガスについての、中央袋体31から右袋体32および左袋体33への供給は開始可能になる。
【0056】
図12は、図11の後での、車外エアバッグ13の展開状態を模式的に示す説明図である。
図12において、中央袋体31は、その右展開部35および左展開部36を含めて、全体的にほぼ展開し終えた状態にある。展開し終えた状態にある中央袋体31は、高圧ガスの圧力により、一定の剛性を発揮し得る。
【0057】
そして、右袋体32へは、第一右連通孔43を通じて、展開している中央袋体31から供給される。第一右連通孔43が、右展開部35についての後側部分に設けられているため、また、右袋体32についての後側部分に設けられているため、右袋体32は、その後側部分から展開を開始する。この際、高圧ガスの流入により、展開開始直後の右袋体32の後側部分は、図中に破線矢印で示すように、上下左右へ揺動し易い。ただし、前後方向に長さを有する右接合部41により、既に展開している状態にある右展開部35と接合されているため、展開開始直後の右袋体32は、右側のフロントピラー6の上から外へ脱落するように、全体的に大きく揺動してしまうことはない。展開開始直後の右袋体32は、右側のフロントピラー6の上側の位置をキープしながら、右展開部35より後側の短い部分が、小さく揺動するだけである。
【0058】
また、左袋体33へは、第一左連通孔44を通じて、展開している中央袋体31から供給される。第一左連通孔44が、左展開部36についての後側部分に設けられているため、また、左袋体33についての後側部分に設けられているため、左袋体33は、その後側部分から展開を開始する。この際、高圧ガスの流入により、展開開始直後の左袋体33の後側部分は、図中に破線矢印で示すように、上下左右へ揺動し易い。ただし、前後方向に長さを有する左接合部42により、既に展開している状態にある左展開部36と接合されているため、展開開始直後の左袋体33は、左側のフロントピラー6の上から外へ脱落するように、全体的に大きく揺動してしまうことはない。展開開始直後の左袋体33は、左側のフロントピラー6の上側の位置をキープしながら、左展開部36より後側の短い部分が小さく揺動するだけである。
【0059】
図13は、図12の後での、車外エアバッグ13の展開状態を模式的に示す説明図である。
図14は、図13のA-A端面を、模式的に示す説明図である。
図13図14において、中央袋体31は、その右展開部35および左展開部36を含めて、全体的にほぼ展開し終えた状態にある。ほぼ展開し終えた状態にある中央袋体31は、自動車1の車幅方向の中央において、高圧ガスの圧力により、一定の剛性を発揮し得る。
【0060】
そして、後側部分から展開を開始する右袋体32は、展開が進むと、前へ向かって展開し始める。右袋体32は、右接合部41の右側部分に高圧ガスが流入し、右接合部41の右側の前側部分においても展開を開始する。
この際、右袋体32は、既に展開している状態にある右展開部35と、前後方向に長い右接合部41により接合されているため、右展開部35の右側において安定した姿勢で、展開する。特に、図14に示すように、右袋体32の上には、中央袋体31の右展開部35が重なる。既に展開している状態にある中央袋体31の右展開部35は、展開中の右袋体32を、上から前面ガラス5および右のフロントピラー6に押し付ける。これにより、図中に破線で示すように、中央袋体31の右展開部35を部分的に押し窪めながら展開する右袋体32は、さらに、右展開部35の右側において安定した姿勢で展開する。
しかも、右袋体32についての前側部分が安定して展開することにより、それと一体的な右袋体32についての後側部分も、安定する。図12において右袋体32についての、右展開部35より後側の部分が揺動し始めていたとしても、その揺動は、右袋体32の前側部分が展開し始めることにより抑え込まれ得る。右袋体32は、その展開の途中において、全体的に、揺動がない安定した状態で、右のフロントピラー6の上側で展開し始めるようになる。
優先的に展開する中央袋体31は、右袋体32の展開を安定化させる。
【0061】
また、後側部分から展開を開始する左袋体33は、展開が進むと、前へ向かって展開し始める。左袋体33は、左接合部42の左側部分に高圧ガスが流入し、左接合部42の左側の前側部分においても展開を開始する。
この際、左袋体33は、既に展開している状態にある左展開部36と、前後方向に長い左接合部42により接合されているため、左展開部36の左側において安定した姿勢で、展開する。特に、図14に示すように、左袋体33の上には、中央袋体31の左展開部36が重なる。既に展開している状態にある中央袋体31の左展開部36は、展開中の左袋体33を、上から前面ガラス5および左のフロントピラー6に押し付ける。これにより、図中に破線で示すように、中央袋体31の左展開部36を押し窪めながら展開する左袋体33は、さらに、左展開部36の左側において安定した姿勢で展開する。
しかも、左袋体33についての前側部分が安定して展開することにより、それと一体的な左袋体33についての後側部分も、安定する。図12において左袋体33についての、左展開部36より後側の部分が揺動し始めていたとしても、その揺動は、左袋体33の前側部分が展開し始めることにより抑え込まれ得る。左袋体33は、その展開の途中において、全体的に、揺動がない安定した状態で、左のフロントピラー6の上側で展開し始めるようになる。
優先的に展開する中央袋体31は、左袋体33の展開を安定化させる。
【0062】
なお、仮にたとえば右袋体32および左袋体33がそれらの前側部分から後側部分へ向けて展開する場合、それらの展開後期において、後端部分が振動する可能性が高まる。本実施形態では、後側部分から前側部分へ向けて展開させているため、このような展開後期において、右袋体32および左袋体33の後端部分が振動してしまうことは起き難い。
また、本実施形態において、右袋体32および左袋体33は、展開開始直後から自動車1のフロントピラー6に沿う状態に安定し、その安定した状態の下で中央袋体31より自動車1の後方へ展開する。右袋体32および左袋体33は、それらに対して高圧ガスが注入される影響や、中央袋体31についての車幅方向の左右に中央袋体31とは別体の袋体として展開する影響などを受けることなく、安定した状態に速やかに展開することができる。
また、本実施形態において、右展開部35についての自動車1の前後方向の長さは、右袋体32についての自動車1の前後方向の長さの半分程度または三分の二程度に形成されて、右袋体32より短い。また、左展開部36についての自動車1の前後方向の長さは、左袋体33についての自動車1の前後方向の長さの半分程度または三分の二程度に形成されて、左袋体33より短い。これにより、中央袋体31を展開する際に、中央袋体31の右展開部35および左展開部36は、中央袋体31の中央展開部34に対して安定した状態で、中央袋体31より後方へ展開することができる。右展開部35および左展開部36が安定して展開することにより、右袋体32および左袋体33は、自動車1のフロントピラー6に沿う状態で、安定して展開することができる。
しかも、本実施形態では、右袋体32および左袋体33を、中央袋体31とは別体とし、車外エアバッグ13として3つの袋体を用いる。これにより、本実施形態では、たとえば図3のようにこれらと同様の範囲に展開する1つの袋体を用いる場合と比べて、自動車1のフロントピラー6に沿って展開する部分が揺動し難くなる。しかも、図3のように1つの袋体として場合には、その屈曲部82が、高圧ガスの流入により、フロントピラー6の外側へ脱落する可能性がある。本実施形態では、右袋体32および左袋体33についての、このようなフロントピラー6の外側への脱落を生じ難い。
また、本実施形態では、右袋体32および左袋体33を、中央袋体31とは別体としている。したかって、本実施形態では、たとえば図4のように右袋体32と左袋体33との間を含めて展開するような大きな略四角形に展開する大型の袋体84と比べて、総容量を削減することができる。本実施形態では、車外エアバッグ13の総容量を削減して、車外エアバッグ13の展開を、短時間で終わらせることができる。また、インフレータ12も小型化できる。
【0063】
図15は、図13の後での、車外エアバッグ13が最大に展開している状態を模式的に示す説明図である。
図16は、図15のB-B端面を、模式的に示す説明図である。
図15図16において、中央袋体31は、その右展開部35および左展開部36を含めて、全体的にほぼ展開し終えた状態にある。ほぼ展開し終えた状態にある中央袋体31は、自動車1の車幅方向の中央において、高圧ガスの圧力により、一定の剛性を発揮し得る。
【0064】
そして、後側部分から前へ展開している右袋体32は、その展開が進むと、既に展開している状態にある右展開部35の右側において、所望の形状に展開する。
また、後側部分から前へ展開している左袋体33は、その展開が進むと、既に展開している状態にある左展開部36の右側において、所望の形状に展開する。
これにより、車外エアバッグ13の中央袋体31、右袋体32、および、左袋体33は、各々の所望の形状に展開できる。右袋体32は、右のフロントピラー6から右外側へ脱落することなく、右のフロントピラー6の上に重なるように展開できる。左袋体33は、左のフロントピラー6から左外側へ脱落することなく、左のフロントピラー6の上に重なるように展開できる。中央袋体31は、前面ガラス5の前側部分の上に、大きな略楕円形状に展開できる。このような展開状態の車外エアバッグ13は、図2に示すように、自動車1に倒れ込む歩行者などが、前面ガラス5や左右のフロントピラー6に当たることがないように、保護することができる。本実施形態の車外エアバッグ13は、図3のように、右袋体32が右のフロントピラー6から右外側へ脱落したり、左袋体33が左のフロントピラー6から左外側へ脱落したり、することは起き難い。
【0065】
以上のように、本実施形態の車外エアバッグ13は、自動車1の車幅方向の中央部81において大容量で厚みをもって展開する中央袋体31と、中央袋体31についての、自動車1の車幅方向の左右両側に設けられ、自動車1の左右のフロントピラー6に沿って、中央袋体31より自動車1の後方へ展開する右袋体32および左袋体33と、で構成される。そして、インフレータ12が車外エアバッグ13へ供給する高圧ガスは、少なくとも展開開始時点において、右袋体32および左袋体33より、中央袋体31に対して優先的に供給される。
これにより、中央袋体31が既に前面ガラス5の上への展開を始めている状態で、右袋体32および左袋体33の展開を開始することが可能になる。優先的に展開される中央袋体31は、右袋体32および左袋体33の展開が完了する前に、高圧ガスの圧力により所望の形状で前面ガラス5の上に展開し得る。したがって、中央袋体31についての、自動車1の車幅方向の右側部分と接合される右袋体32は、前面ガラス5の上で所望の形状に展開している中央袋体31より支えられながら、中央袋体31より自動車1の後方へ展開し、前面ガラス5についての車幅方向の右側のフロントピラー6の上に所望の状態で重なるように展開することが可能になる。また、中央袋体31についての、自動車1の車幅方向の左側部分と接合される左袋体33は、所望の形状に展開している中央袋体31より支えられながら、中央袋体31より自動車1の後方へ展開し、前面ガラス5についての車幅方向の左側のフロントピラー6の上に所望の状態で重なるように展開することが可能になる。
その結果、中央袋体31、右袋体32および左袋体33の3つの袋体を有する車外エアバッグ13は、右袋体32と左袋体33とが左右のフロントピラー6の上に所望の状態で重なるように、展開することができる。右袋体32および左袋体33は、優先的に展開する中央袋体31により支えられて安定性のある状態で、展開する中央袋体31についての自動車1の車幅方向の左右両側において、中央袋体31より自動車1の後方へ安定的に展開することが可能になる。本実施形態において、車外エアバッグ13の右袋体32および左袋体33は、左右のフロントピラー6の上に所望の状態で重なるように、展開し易くなる。本実施形態では、自動車1と衝突した歩行者などが、自動車1の左右のフロントピラー6に対して直接的に当たることが起き難くなるように、自動車1に設けられる車外エアバッグ装置10を改善することが可能になる。
ここで、右袋体32は、自動車1の右側のフロントピラー6の上に全体的に重なる長さを有する。また、左袋体33は、自動車1の左側のフロントピラー6の上に全体的に重なる長さを有する。これにより、右袋体32および左袋体33は、自動車1の左右のフロントピラー6の上に全体的に重なることができ、左右のフロントピラー6の全体を覆うことが可能である。
【0066】
本実施形態において、中央袋体31は、さらに、自動車1の車幅方向へ広がるように展開する中央展開部34と、中央展開部34についての、自動車1の車幅方向の右側に設けられ、中央展開部34より自動車1の後方へ延在するように展開する右展開部35と、中央展開部34についての、自動車1の車幅方向の左側に設けられ、中央展開部34より自動車1の後方へ延在するように展開する左展開部36と、を有する。ここで、中央展開部34、右展開部35、および、左展開部36は、中央袋体31として一つの気室を構成する。そして、インフレータ12は、車外エアバッグ13を構成する中央袋体31、右袋体32および左袋体33の中の、中央袋体31において、中央展開部34に接続される。
この場合、インフレータ12から中央展開部34へ供給される高圧ガスは、中央展開部34から右展開部35および左展開部36へ広がる。その結果、中央袋体31は、その展開形状に展開できる。そして、右袋体32は、展開する中央袋体31についての、右展開部35と接合される。該接合のための右接合部41は、自動車1の前後方向において長さを有する。したがって、展開による剛性を発揮している中央袋体31に対して、自動車1の前後方向において長さを有する右展開部35により接合される右袋体32は、展開する際の姿勢が安定化し得る。また、左袋体33は、展開する中央袋体31についての、左展開部36と接合される。該接合のための左接合部42は、自動車1の前後方向において長さを有する。したがって、展開による剛性を発揮している中央袋体31に対して、自動車1の前後方向において長さを有する左展開部36により接合される左袋体33は、展開する際の姿勢が安定化し得る。
また、本実施形態において、右展開部35は、展開する中央袋体31において、中央展開部34より自動車1の後方へ展開するものの、右袋体32より短い長さで展開する。したがって、中央袋体31の展開中において、右展開部35の後側部分が、展開中の右袋体32のように揺動し難い。また、左展開部36は、展開する中央袋体31において、中央展開部34より自動車1の後方へ展開するものの、左袋体33より短い長さで展開する。したがって、中央袋体31の展開中において、左展開部36の後側部分が、展開中の左袋体33のように揺動し難い。中央袋体31は、中央展開部34より自動車1の後方へ展開する右展開部35および左展開部36を含めて、その全体が揺動しないように安定して展開することが可能である。
しかも、本実施形態では、右展開部35が中央展開部34より自動車1の後方へ展開するだけでなく、右袋体32は、自動車1の前後方向において長さを有する右接合部41により、中央袋体31の右展開部35と接合される。このように自動車1の前後方向に長さを有する右接合部41により中央袋体31の右展開部35と接合される右袋体32は、優先して展開している中央袋体31の右展開部35より、前後方向の姿勢が安定するように支えられて、さらに展開中に揺動し難くなる。また、左展開部36が中央展開部34より自動車1の後方へ展開するだけでなく、左袋体33は、自動車1の前後方向において長さを有する左接合部42により、中央袋体31の左展開部36と接合される。このように自動車1の前後方向に長さを有する左接合部42により中央袋体31の左展開部36と接合される左袋体33は、優先して展開している中央袋体31の左展開部36より、前後方向の姿勢が安定するように支えられて、さらに展開中に揺動し難くなる。
このように本実施形態では、右袋体32および左袋体33は、その展開中に揺動し難くなる。特に、右袋体32または左袋体33は、その展開中に後端部分が揺動することがあったとしても、長い右展開部35との長い右接合部41または長い左展開部36との長い左接合部42により、その揺動を速やかに抑制することができる。
【0067】
本実施形態において、車外エアバッグ13は、中央袋体31と右袋体32とを連通する第一右連通孔43と、中央袋体31と袋体とを連通する第一左連通孔44と、を有する。これにより、右袋体32および左袋体33には、高圧ガスが、中央袋体31を通じて供給される。
しかも、第一右連通孔43は、中央袋体31の右接合部41についての、中央展開部34の後縁より後側となる後側部分において、中央袋体31を右袋体32と連通する。また、第一左連通孔44は、中央袋体31の左接合部42についての、中央展開部34の後縁より後側となる後側部分において、中央袋体31を左袋体33と連通する。
さらに、第一右連通孔43には、中央袋体31より右袋体32の圧力上昇を抑える第一右減圧弁が設けられる。また、第一左連通孔44には、中央袋体31より左袋体33の圧力上昇を抑える第一左減圧弁が設けられる。
これらの特徴により、本実施形態では、インフレータ12が車外エアバッグ13へ供給する高圧ガスは、少なくとも展開開始時点においては、右袋体32および左袋体33より、中央袋体31に対して優先的に供給され得る。
しかも、本実施形態では、右袋体32および左袋体33は、後側部分から、高圧ガスが供給される。右袋体32および左袋体33は、後側部分から展開を開始し、後側部分から前側部分へ向けて展開することができる。
【0068】
本実施形態において、右袋体32は、展開した状態において、中央袋体31の右展開部35の右側において、右袋体32の前側部分の一部が中央袋体31の右展開部35についての自動車1の上下方向での下側に重なる。また、右接合部41は、該重なり部分に設けられる。これにより、右袋体32は、少なくとも展開中において、優先して展開している中央袋体31の右展開部35により、上側から抑え込まれ得る。しかも、右袋体32は、該重なり部分において、中央袋体31の右展開部35と、自動車1の前後方向において長さもって接合される。これにより、右袋体32は、その後端部分が展開中に揺動することがあるとしても、優先して展開している中央袋体31の右展開部35により右袋体32の前側部分を抑え込むことにより、その揺動を速やかに抑え込むことができる。
また、左袋体33は、展開した状態において、中央袋体31の左展開部36の左側において、左袋体33の前側部分の一部が中央袋体31の左展開部36についての自動車1の上下方向での下側に重なる。また、左接合部42は、該重なり部分に設けられる。これにより、左袋体33は、少なくとも展開中において、優先して展開している中央袋体31の左展開部36により、上側から抑え込まれ得る。しかも、左袋体33は、該重なり部分において、中央袋体31の左展開部36と、自動車1の前後方向において長さをもって接合される。これにより、左袋体33は、その後端部分が展開中に揺動することがあるとしても、その揺動を、優先して展開している中央袋体31の左展開部36により左袋体33の前側部分を抑え込むことにより、その揺動を速やかに抑え込むことができる。
これに対し、仮にたとえば右袋体32および左袋体33がそれらの前側部分から後側部分へ向けて展開する場合、展開中に後端部分が揺動してしまうと、それを中央袋体31により抑えることはできない。揺動は、自然に収まる必要がある。
【0069】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の車外エアバッグ装置10について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略する。以下の説明では、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0070】
図17は、本発明の第二実施形態での車外エアバッグ13の詳しい構造の模式的な説明図である。
図17の車外エアバッグ13は、中央袋体31と右袋体32とを連通する第二右連通孔45と、中央袋体31と袋体とを連通する第二左連通孔46と、を有する。
【0071】
第二右連通孔45は、右袋体32と中央袋体31とが接合される右接合部41において、中央袋体31と右袋体32とを連通する。第二右連通孔45は、右接合部41についての、図中に破線で示す位置より前方となる、中央袋体31の展開状態での前側部分において、中央袋体31と右袋体32とを連通する。図中の破線は、中央袋体31の中央展開部34についての後縁を車幅方向へ延長したものである。このような位置に開設される第二右連通孔45は、中央袋体31が図2のように展開した状態で、図中の矢印破線に示すように、中央袋体31の高圧ガスを右袋体32へ供給し始める。
また、第二右連通孔45は、基本的に、第一右連通孔43より小径とされる。また、第二右連通孔45には、第一右連通孔43に設けられる第一右減圧弁よりも高圧ガスを通しにくい不図示の第二右減圧弁が設けられてもよい。
このような第二右連通孔45を設けることにより、中央袋体31から右袋体32への高圧ガスの供給開始は、上述した実施形態と比べて早くなる。その分、右袋体32は、早くに展開することができる。ただし、この場合でも、インフレータ12の高圧ガスは、右袋体32より、中央袋体31に優先して供給されていることには変わりがない。
また、車外エアバッグ13の展開後期において、展開し始めた右袋体32へは、ほぼ展開している中央袋体31から、第二右連通孔45を通じて、インフレータ12の高圧ガスが噴出されるままの勢いで、向きを変えることなく直接的に供給され易くなる。したがって、右袋体32は、中央袋体31と同様の高い内圧に展開し易くなる。
【0072】
第二左連通孔46は、左袋体33と中央袋体31とが接合される左接合部42において、中央袋体31と左袋体33とを連通する。第二左連通孔46は、左接合部42についての、図中に破線で示す位置より前方となる、中央袋体31の展開状態での前側部分において、中央袋体31と左袋体33とを連通する。このような位置に開設される第二左連通孔46は、中央袋体31が図2のように展開した状態で、図中の矢印破線に示すように、中央袋体31の高圧ガスを左袋体33へ供給し始める。
また、第二左連通孔46は、基本的に、第一左連通孔44より小径とされる。また、第二左連通孔46には、第一左連通孔44に設けられる第一左減圧弁よりも高圧ガスを通しにくい不図示の第二左減圧弁が設けられてもよい。
このような第二左連通孔46を設けることにより、中央袋体31から右袋体32への高圧ガスの供給開始は、上述した実施形態と比べて早くなる。その分、左袋体33は、早くに展開することができる。ただし、この場合でも、インフレータ12の高圧ガスは、右袋体32より、中央袋体31に優先して供給されていることには変わりがない。
また、車外エアバッグ13の展開後期において、展開し始めた左袋体33へは、ほぼ展開している中央袋体31から、第二左連通孔46を通じて、インフレータ12の高圧ガスが噴出されるままの勢いで、向きを変えることなく直接的に供給され得る。したがって、左袋体33は、中央袋体31と同様の高い内圧に展開し易くなる。
【0073】
以上のように、本実施形態では、インフレータ12は、中央袋体31についての、展開状態での前側部分に対して、自動車1の車幅方向に沿う向きで、自動車1の車幅方向の左右へ向けて高圧ガスを噴出して供給する。また、本実施形態では、中央袋体31と右袋体32とを連通する右連通孔として、上述した実施形態の第一右連通孔43に加えて、第二右連通孔45を有する。また、本実施形態では、中央袋体31と左袋体33とを連通する左連通孔として、上述した実施形態の第一左連通孔44に加えて、第二左連通孔46を有する。そして、第二右連通孔45と第二左連通孔46とは、中央袋体31についての、展開状態での前側部分において、インフレータ12から中央袋体31への高圧ガスの噴出方向に設けられる。
しかも、本実施形態では、第二右連通孔45は、第一右連通孔43より流量を抑える小さい穴径とされ、第二右連通孔45には、第一右減圧弁と比べて、中央袋体31より右袋体32の圧力上昇を抑える第二右減圧弁が設けられてよい。また、第二左連通孔46は、第一左連通孔44より流量を抑える小さい穴径とされ、第二左連通孔46には、第一左減圧弁と比べて、中央袋体31より左袋体33の圧力上昇を抑える第二左減圧弁が設けられてよい。
これにより、右袋体32と左袋体33には、第二右連通孔45または第二左連通孔46を通じてインフレータ12からの高圧ガスが直接的に流入することができる。右袋体32と左袋体33とは、中央袋体31より遅れて展開を開始するものの、第二右連通孔45または第二左連通孔46を通じてインフレータ12からの高圧ガスが直接的に流入できることにより、最終的な展開状態では、中央袋体31と同等の圧力に展開し易くなる。右袋体32と左袋体33とは、中央袋体31と同じ気室とされているかのように、中央袋体31と一体的に展開し得る。
【0074】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0075】
上述した実施形態では、車外エアバッグ13は、中央袋体31とともに、左右一対の右袋体32および左袋体33を有する。
この他にもたとえば、車外エアバッグ13は、中央袋体31の左右各々に、複数の袋体を有してもよい。右袋体32または左袋体33は、前後方向または車幅方向において複数に分割されてもよい。この場合でも、中央袋体31に対して優先的に高圧ガスを提供することにより、中央袋体31の左右の袋体は、左右のフロントピラー6の上から外側へ脱落しないように展開し易くなり、車外エアバッグ13はその所望の状態に展開し易くなる。
【符号の説明】
【0076】
1…自動車(車両)、2…車体、3…車室、4…ノーズ部、5…前面ガラス、6…フロントピラー、7…バルク構造部材、10…車外エアバッグ装置、11…制御部、12…インフレータ、13…車外エアバッグ、20…制御系、21…ステレオカメラ、22…赤外線カメラ、23…Lidar、24…加速度センサ、25…通信装置、26…GNSS受信機、31…中央袋体、32…右袋体、33…左袋体、34…中央展開部、35…右展開部、36…左展開部、41…右接合部、42…左接合部、43…第一右連通孔、44…第一左連通孔、45…第二右連通孔、46…第二左連通孔

図1
図2
図3
図4
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図10
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図17