(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156305
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241029BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070661
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】502265688
【氏名又は名称】株式会社JMDC
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浜田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】原 一史
(72)【発明者】
【氏名】北野 道春
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】検診勧奨対象者に対する最適な受診勧奨手段を特定するプログラム、情報処理装置、方法及びシステムを提供する。
【解決手段】端末装置と、サーバとが、ネットワークを介して相互に通信可能な受診勧奨手段検討システムにおいて、サーバを動作させるプログラムは、サーバに、検診勧奨履歴データを取得するS900と、検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成するS903と、介入パターンを入力に、検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、介入パターン毎に検診勧奨履歴データから生成するS904と、教師データを用いて、介入パターン毎の機械学習モデルを生成するS905と、機械学習モデルに介入パターンを入力することで、機械学習モデルの推論結果である出力を対象者毎に取得するS906と、出力に基づいて対象者毎の最良の介入パターンを求めるS908と、を実行させる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えるコンピュータを動作させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、前記対象者の過去の検診結果、及び前記対象者に対する前記検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップと、
前記検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する第2ステップと、
前記第2ステップで生成した前記介入パターンを入力に、前記検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、前記介入パターン毎に前記検診勧奨履歴データから生成する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップと、
前記第4ステップで生成した前記機械学習モデルに前記介入パターンを入力することで、前記機械学習モデルの推論結果である前記出力を前記対象者毎に取得する第5ステップと、
前記第5ステップで取得した前記出力に基づいて、前記対象者毎の最良の前記介入パターンを求める第6ステップと
を実行させる、プログラム。
【請求項2】
前記介入パターンには、前記介入策を含まないものも含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記対象者毎の最良の前記介入パターンとは、前記介入パターンによる前記検診の受診の予約が最大である前記介入パターンを含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記プログラムは、前記プロセッサに、前記第1ステップ及び前記第3ステップを所定のタイミングで実行させることで、前記第3ステップで生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の前記機械学習モデルの再学習を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第3ステップにおいて、前記対象者が加入している健康保険団体及び前記対象者の居住地の少なくとも一方毎についても前記教師データを生成し、
前記第4ステップにおいて、前記対象者が加入している前記健康保険団体及び前記対象者の前記居住地の少なくとも一方毎についても前記機械学習モデルを生成する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記第3ステップにおいて、前記検診勧奨履歴データに含まれる前記対象者の特性に基づいて前記対象者を複数のグループに分類し、このグループ毎についても前記教師データを生成し、
前記第4ステップにおいて、前記グループ毎についても前記機械学習モデルを生成する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記第6ステップにおいて求めた最良の前記介入パターンに基づいて、前記対象者に前記検診の受診勧奨を実施する第7ステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
前記第7ステップにおいて、前記受診勧奨を、前記対象者毎の識別情報を含むリンクが含まれたバーコードが表示された郵便物を前記対象者へ郵送すること、または、前記識別情報を含むリンクが含まれたメッセージを前記対象者が所有する携帯端末に送信することにより実施する
請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記識別情報を用いて前記リンクに基づく前記対象者のアクセスの有無を取得する第8ステップを実行し、
前記第1ステップにおいて、前記検診勧奨履歴データとして前記対象者の前記アクセスの有無を含める
請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
プロセッサを備えた情報処理装置であって、
前記プロセッサは、
検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、前記対象者の過去の検診結果、及び前記対象者に対する前記検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップと、
前記検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する第2ステップと、
前記第2ステップで生成した前記介入パターンを入力に、前記検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、前記介入パターン毎に前記検診勧奨履歴データから生成する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップと、
前記第4ステップで生成した前記機械学習モデルに前記介入パターンを入力することで、前記機械学習モデルの推論結果である前記出力を前記対象者毎に取得する第5ステップと、
前記第5ステップで取得した前記出力に基づいて、前記対象者毎の最良の前記介入パターンを求める第6ステップと
を実行する、情報処理装置。
【請求項11】
プロセッサを備えたコンピュータにより実行される方法であって、
前記プロセッサは、
検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、前記対象者の過去の検診結果、及び前記対象者に対する前記検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップと、
前記検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する第2ステップと、
前記第2ステップで生成した前記介入パターンを入力に、前記検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、前記介入パターン毎に前記検診勧奨履歴データから生成する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップと、
前記第4ステップで生成した前記機械学習モデルに前記介入パターンを入力することで、前記機械学習モデルの推論結果である前記出力を前記対象者毎に取得する第5ステップと、
前記第5ステップで取得した前記出力に基づいて、前記対象者毎の最良の前記介入パターンを求める第6ステップと
を実行する、方法。
【請求項12】
検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、前記対象者の過去の検診結果、及び前記対象者に対する前記検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する手段と、
前記検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する手段と、
前記介入パターンを生成する前記手段が生成した前記介入パターンを入力に、前記検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、前記介入パターン毎に前記検診勧奨履歴データから生成する手段と、
前記教師データを生成する手段が生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の機械学習モデルを生成する手段と、
前記機械学習モデルを生成する手段が生成した前記機械学習モデルに前記介入パターンを入力することで、前記機械学習モデルの推論結果である前記出力を前記対象者毎に取得する手段と、
前記出力を取得する手段が取得した前記出力に基づいて、前記対象者毎の最良の前記介入パターンを求める手段と
を具備する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、情報処理装置、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特定健診等の対象者に勧奨通知を送る技術として、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1に開示された技術は、医療保険機関が実施する各種の医療行為や健康診断の受診を促す被保険者への勧奨通知タイミングの最適化方法に関するものであって、被保険者に係る複数の特徴量から抽出された説明変数と、前記説明変数に基づく回帰分析又は機械学習によって、個々の被保険者に対する前記勧奨通知の最適時期を目的変数として算出するか又は時期毎の勧奨効果の大きさを示すスコアを目的変数として算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、被保険者に対する勧奨通知タイミングの最適化を機械学習モデルにより求めるものであり、複数の検診勧奨手段について比較し、最適な検診勧奨手段を特定することはできない。
【0005】
そこで、本開示は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、検診勧奨対象者に対する最適な受診勧奨手段を特定することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
プロセッサを備えるコンピュータを動作させるためのプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、対象者の過去の検診結果、及び対象者に対する検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップと、検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する第2ステップと、第2ステップで生成した介入パターンを入力に、検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、介入パターン毎に検診勧奨履歴データから生成する第3ステップと、第3ステップにおいて生成した教師データを用いて、介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップと、第4ステップで生成した機械学習モデルに介入パターンを入力することで、機械学習モデルの推論結果である出力を対象者毎に取得する第5ステップと、第5ステップで取得した出力に基づいて、対象者毎の最良の介入パターンを求める第6ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、検診勧奨対象者に対する最適な受診勧奨手段を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るシステムの全体の構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る端末装置の機能的な構成を示す図である。
【
図3】一実施形態に係るサーバの機能的な構成を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る検診勧奨履歴データベースのデータ構造を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る介入策データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る介入パターンデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る個別向上率データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る確定介入パターンデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【
図9】一実施形態に係るシステムにおける処理流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】一実施形態に係るシステムにおける介入策の一例を示す図である。
【
図11】一実施形態に係るシステムにおける健康診断の受診勧奨手法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。なお、以下の実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0010】
また、以下の説明において、「プロセッサ」は、1以上のプロセッサである。少なくとも1つのプロセッサは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。
【0011】
また、少なくとも1つのプロセッサは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサでもよい。
【0012】
また、以下の説明において、「xxxテーブル」といった表現により、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、この情報は、どのような構造のデータでもよいし、入力に対する出力を発生するニューラルネットワークのような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。
【0013】
また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、1つのテーブルは、2以上のテーブルに分割されてもよいし、2以上のテーブルの全部又は一部が1つのテーブルであってもよい。
【0014】
また、以下の説明において、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサによって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶部及び/又はインタフェース部などを用いながら行うため、処理の主語が、プロセッサ(或いは、そのプロセッサを有するコントローラのようなデバイス)とされてもよい。
【0015】
プログラムは、計算機のような装置にインストールされてもよいし、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な(例えば非一時的な)記録媒体にあってもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0016】
また、以下の説明において、種々の対象の識別情報として、識別番号が使用されるが、識別番号以外の種類の識別情報(例えば、英字や符号を含んだ識別子)が採用されてもよい。
【0017】
また、以下の説明において、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号(又は、参照符号のうちの共通符号)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、要素の識別番号(又は参照符号)を使用することがある。
【0018】
また、以下の説明において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
【0019】
<0 システムの概要>
本開示に係るシステムは、例えば健康保険組合の被保険者、被扶養者である健康診断の受診対象者(以下、単に「対象者」と称することがある)に対して、健康診断の受診を勧奨する通知を健康保険組合、地方自治体等が行うにあたって、勧奨通知の効果を最大にするための受診勧奨手段を求めるものである。
【0020】
健康診断の受診勧奨を行う主体(以下、「健康保険団体」と称する)としては健康保険組合、地方自治体が挙げられるが、本開示に係るシステムにおいて、主体をこれら健康保険組合等に限定する意図はない。また、健康診断の受診勧奨がされる対象者についても、主に健康保険組合の被保険者、被扶養者、または地方自治体に住所または居所を有する住民が挙げられるが、本開示に係るシステムにおいて、対象者をこれら組合員等に限定する意図もない。また、健康保険組合が対象とする健康保険には、いわゆる国民健康保険、船員保険、共済組合等、本開示に係るシステムが対象とする国家において実施されている医療保険制度に含まれる健康保険が全て含まれうる。
【0021】
対象者が受診勧奨される健康診断は、健康保険団体が実施(他団体に実施を委託する場合を含む)するものである。一般的に、このような健康診断は年度単位で繰り返し実施される。対象者は、該当年度内において健康診断の受診が勧奨される。対象者に対して受診勧奨がされる健康診断には、一般健診と呼ばれる健康診断、特定健診と呼ばれる健康診断、女性を対象とする婦人科関係の健康診断等が含まれる。これら健康診断の対象者にはその対象者の年齢に関する条件が付されることが多いが、本開示に係るシステムにおいて、対象者の年齢に関する条件は必須ではない。同様に、本開示に係るシステムにおいて、健康診断の種類を限定する意図はない。
【0022】
健康診断を実施する(所管する)健康保険団体において、対象者が健康診断を受診して自身の健康状態を適切に把握し、好ましくは適切な医療処置を受けることは、対象者が適切な医療費を支払う(結果的に健康保険団体が支出する費用の適正化につながる)という観点からも重要である。かかる観点から、健康保険団体は対象者に対して健康診断の受診勧奨を行っている。従って、健康診断の受診率向上を図るインセンティブが健康保険団体にある。少なくとも、健康保険団体にとって、自身が行った健康診断の受診勧奨に対して対象者が反応を行った率(これには、対象者が受診勧奨通知を読んだこと、受診勧奨通知に基づいて健康診断の実施機関を探したこと、さらには、当該機関に対して健康診断の受診を予約したことについての割合を含む)を適切に把握し、率向上を図る施策を採りたいインセンティブがある。
【0023】
そこで、本開示に係るシステムでは、対象者に対する過去の受診勧奨の結果を含む検診勧奨履歴データを取得し、また、対象者に対する健康診断の受診勧奨の手段の組み合わせを設定し、これらの関係を機械学習モデルを用いて推論し、いくつかの受診勧奨の手段の組み合わせのうち、最良の受診勧奨の手段の組み合わせを求めている。
【0024】
「最良の受診勧奨の手段の組み合わせ」を選択するにあたって、最良であると判断するためのパラメータが必要となる。短絡的には、受診勧奨の手段の組み合わせを採用することにより対象者の健診受診の向上率が最大となる受診勧奨の手段の組み合わせが最良であると考えることができる。しかし、健康診断の受診予約率を最大化できれば受診勧奨として効果的であると考えることもできるし、対象者の受診勧奨に対する反応率(受診勧奨メッセージを見る、など)を最大化できれば受診勧奨として効果的であると考えることもできる。パラメータをどのようなものに設定するかは、本開示に係るシステムの運用者が決定すればよいが、以下の説明では、健康診断の受診予約率が最大となる受診勧奨の手段の組み合わせを、「最良の受診勧奨の手段の組み合わせ」であるとする。
【0025】
また、本開示に係るシステムでは、「最良の受診勧奨の手段の組み合わせ」は対象者毎に判断している。従って、健康診断の受診予約率が最大となる受診勧奨の手段の組み合わせとは、個々の対象者レベルでは、当該対象者が健康診断の受診予約をしたことが、「最良の受診勧奨の手段の組み合わせ」に該当する。また、対象者が有する特性(例えば健康保険団体、居住地など)に基づいて対象者をグルーピングし、このグループにおいて「最良の受診勧奨の手段の組み合わせ」を求めてもよい。この場合、健康診断の受診予約率が最大となる受診勧奨の手段の組み合わせが「最良の受診勧奨の手段の組み合わせ」になる。
【0026】
本明細書では、対象者に対する健康診断の受診勧奨の手段を「介入策」、少なくとも一つの介入策を含む介入策の組み合わせを「介入パターン」と称する。介入策の一例を
図10に示す。
図10に示す例では、介入策は幾つのカテゴリー(例えばメッセージ内容、アプローチ手段など)に分類されている。介入パターンは、個々のカテゴリーに分類される介入策のいずれか一つを選択することで生成される。あるカテゴリーに分類される介入策を複数選択して介入パターンを生成することは考えなくてよい。例えば、アプローチ手段に分類される介入策について、ダイレクトメールと電話とを選択して介入パターンを生成することは考えない。また、1つのカテゴリーに分類される介入策を一つ選択すれば介入パターンを生成することができ、複数のカテゴリーに分類される介入策を個々に選択して介入パターンを生成する必要はない。さらに言えば、介入策を一つも含まない介入パターンも、本開示に係るシステムでは介入パターンとして生成してもよい。これは、最良の介入パターンを選択する上で、対象者に対して受診勧奨を行わない場合との比較を行うことが好ましいからである。
【0027】
なお、本開示に係るシステムは、健康診断に対する受診勧奨のみならず、例えばがん検診のような特定の疾病の有無を診断するものについても当然に適用可能である。本明細書では、健康診断と検診とを含む概念として「検診」という用語を使用する。但し、健康診断とがん検診等の検診とで特段の処理を区別する必要がある時以外は、理解の容易のために「健康診断」「健診」という用語を使用することがある。この場合であっても、本開示に係るシステムが「健康診断」「健診」にのみ適用されると解釈すべきでない。
【0028】
<一実施形態>
<1 システム全体の構成図>
図1は、本実施形態の受診勧奨手段検討システム1(以下、単にシステム1と称する)の全体の構成を示す図である。
図1に示すように、システム1は、複数の端末装置(
図1では、端末装置10a及び端末装置10bを示している。以下、総称して「端末装置10」ということもある)と、サーバ20と、外部データサーバ30とを含む。端末装置10とサーバ20とは、ネットワーク80を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク80は、有線または無線ネットワークにより構成される。本実施形態では、サーバ20はWebサーバ(クラウドサーバを含む)としての機能を有するサーバであり、端末装置10との間でWebページにより情報のやり取りを行う。また、端末装置10にはWebページを閲覧するためのWebページブラウザがインストールされているが、サーバ20のサービスを提供するための専用アプリケーションがインストールされ、専用アプリケーションにより閲覧可能に構成してもよい。
【0029】
端末装置10aのハードウェア構成と端末装置10bのハードウェア構成とは共通するので、端末装置10aのハードウェア構成について説明することで、端末装置10のハードウェア構成の説明を省略する。
【0030】
端末装置10は、健康診断の受診勧奨を検討するユーザが操作する装置である。端末装置10は、据え置き型のPC(Personal Computer)、ラップトップPC等により実現される。この他、端末装置10は、例えば移動体通信システムに対応したタブレットや、スマートフォン等の携帯端末であるとしてもよい。
【0031】
端末装置10は、ネットワーク80を介してサーバ20と通信可能に接続される。端末装置10は、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格に対応した無線基地局81、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11等の無線LAN(Local Area Network)規格に対応した無線LANルータ82等の通信機器と通信することにより、ネットワーク80に接続される。
図1に示すように、端末装置10は、通信IF(Interface)12と、入力装置13と、出力装置14と、メモリ15と、記憶部16と、プロセッサ19とを備える。
【0032】
通信IF12は、端末装置10が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。入力装置13は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置(例えば、キーボードや、タッチパネル、タッチパッド、マウス等のポインティングデバイス等)である。出力装置14は、ユーザに対し情報を提示するための出力装置(ディスプレイ、スピーカ等)である。メモリ15は、プログラム、及び、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。記憶部16は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。プロセッサ19は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路等により構成される。
【0033】
サーバ20は、本実施形態のシステム1の管理者により管理され、端末装置10のユーザにより適宜格納内容が修正/追加/削除がされる。
【0034】
サーバ20は、ネットワーク80に接続されたコンピュータである。サーバ20は、通信IF22と、入出力IF23と、メモリ25と、ストレージ26と、プロセッサ29とを備える。
【0035】
通信IF22は、サーバ20が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。入出力IF23は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置、及び、ユーザに対し情報を提示するための出力装置とのインタフェースとして機能する。メモリ25は、プログラム、及び、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。ストレージ26は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。プロセッサ29は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路等により構成される。
【0036】
外部データサーバ30は、検診(含む健康診断)の受診を勧奨される対象者の個人情報、対象者の過去の検診結果(含む健康診断結果)、及び対象者に対する検診(含む健康診断)の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データが格納されたサーバである。このようなサーバとして、健康保険団体が有する、いわゆるレセプトに関するデータが格納されたサーバと、過去の受診勧奨の結果が格納されたサーバとの組み合わせが考えられる。通常、これらサーバは別体として構成されることが多いと考えられる。従って、
図1に示す外部データサーバ30は複数のサーバにより構成されてもよい。加えて、個人情報についても、過去の検診結果を格納したサーバ、検診の受診勧奨の結果を格納したサーバと別体に構成してもよい。また、外部データサーバ30は、本実施形態に係るシステム1に対してレセプトに関するデータ及び過去の受診勧奨の結果に関するデータの全てを提供する必要はなく、これらデータの中から、本実施形態に係るシステム1からの要請に基づいて、必要範囲のデータを提供し、あるいは、必要範囲のデータのみを格納したサーバを用意してこのサーバへのアクセスを本実施形態に係るシステム1に許可してもよい。
【0037】
<1.1 端末装置10の機能的な構成>
図2は、
図1に示す端末装置10の機能的な構成の例を表すブロック図である。
図2に示す端末装置10は、例えば、PC、携帯端末、またはウェアラブル端末により実現される。
図2に示すように、端末装置10は、通信部120と、入力装置13と、出力装置14と、音声処理部17と、マイク171と、スピーカー172と、記憶部180と、制御部190とを備える。端末装置10に含まれる各ブロックは、例えば、バス等により電気的に接続される。
【0038】
通信部120は、端末装置10が他の装置と通信するための変復調処理等の処理を行う。通信部120は、制御部190で生成された信号に送信処理を施し、外部(例えば、サーバ20)へ送信する。通信部120は、外部から受信した信号に受信処理を施し、制御部190へ出力する。
【0039】
入力装置13は、端末装置10を操作するユーザが指示、または情報を入力するための装置である。入力装置13は、例えば、キーボード、マウス、リーダー等により実現されてもよい。端末装置10が携帯端末等である場合には、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチ・センシティブ・デバイス131等により実現される。入力装置13は、ユーザから入力される指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御部190へ出力する。なお、入力装置13には、例えば、外部の入力機器から入力される電気信号を受け付ける受信ポートが含まれてもよい。
【0040】
出力装置14は、端末装置10を操作するユーザへ情報を提示するための装置である。出力装置14は、例えば、ディスプレイ141等により実現される。ディスプレイ141は、制御部190の制御に応じたデータを表示する。ディスプレイ141は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等によって実現される。
【0041】
音声処理部17は、例えば、音声信号のデジタル-アナログ変換処理を行う。音声処理部17は、マイク171から与えられる信号をデジタル信号に変換して、変換後の信号を制御部190へ与える。また、音声処理部17は、音声信号をスピーカー172へ与える。音声処理部17は、例えば音声処理用のプロセッサによって実現される。マイク171は、音声入力を受け付けて、当該音声入力に対応する音声信号を音声処理部17へ与える。スピーカー172は、音声処理部17から与えられる音声信号を音声に変換して当該音声を端末装置10の外部へ出力する。
【0042】
記憶部180は、例えば、メモリ15、および記憶部16等により実現され、端末装置10が使用するデータ、およびプログラムを記憶する。
【0043】
制御部190は、プロセッサ19が記憶部180に記憶されるアプリケーションプログラム181を読み込み、アプリケーションプログラム181に含まれる命令を実行することにより実現される。制御部190は、端末装置10の動作を制御する。制御部190は、記憶部180に格納されたアプリケーションプログラム181に従って動作することにより、操作受付部191と、送受信部192と、データ処理部193と、提示制御部194としての機能を発揮する。
【0044】
操作受付部191は、入力装置13から入力される指示、または情報を受け付けるための処理を行う。具体的には、例えば、操作受付部191は、キーボード、マウス等から入力される指示に基づく情報を受け付ける。
【0045】
また、操作受付部191は、マイク171から入力される音声指示を受け付ける。具体的には、例えば、操作受付部191は、マイク171から入力され、音声処理部17でデジタル信号に変換された音声信号を受信する。操作受付部191は、例えば、受信した音声信号を分析して所定の名詞を抽出することで、ユーザからの指示を取得する。
【0046】
送受信部192は、端末装置10が、サーバ20等の外部の装置と、通信プロトコルに従ってデータを送受信するための処理を行う。具体的には、例えば、送受信部192は、ユーザから入力された業務内容をサーバ20へ送信する。また、送受信部192は、ユーザに関する情報を、サーバ20から受信する。
【0047】
データ処理部193は、端末装置10が入力を受け付けたデータに対し、アプリケーションプログラム181に従って演算を行い、演算結果をメモリ15等に出力する処理を行う。
【0048】
提示制御部194は、サーバ20から提供された情報をユーザに対して提示するため、出力装置14を制御する。具体的には、例えば、提示制御部194は、サーバ20から送信される情報をディスプレイ141に表示させる。また、提示制御部194は、サーバ20から送信される情報をスピーカー172から出力させる。
【0049】
<1.2 サーバ20の機能的な構成>
図3は、サーバ20の機能的な構成の例を示す図である。
図3に示すように、サーバ20は、通信部201と、記憶部202と、制御部203としての機能を発揮する。
【0050】
通信部201は、サーバ20が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0051】
記憶部202は、例えば、検診勧奨履歴DB(DataBase)2022と、介入策DB2023と、介入パターンDB2024と、個別向上率DB2025と、確定介入パターンDB2026と、教師データ2027と、学習モデル2028等とを有する。
【0052】
検診勧奨履歴DB2022は、外部データサーバ30から取得した検診勧奨履歴データが格納されたデータベースである。検診勧奨履歴データには、既に説明したように、検診(含む健康診断)の受診を勧奨される対象者の個人情報、対象者の過去の検診(含む健康診断)結果、及び対象者に対する検診(含む健康診断)の受診勧奨の結果を少なくとも含むが、これ以外のデータを含んでいてもよい。例えば、外部データサーバ30がレセプトに関するデータを格納したサーバを含む場合、レセプトデータを構成するデータが検診勧奨履歴データとして検診勧奨履歴DB2022に格納されていてもよい。検診勧奨履歴DB2022に格納される検診勧奨履歴データは、後述する検診勧奨履歴取得モジュール2033により格納され、適宜追記、削除、更新される。詳細は後述する。
【0053】
介入策DB2023は、本実施形態に係るシステム1において対象者に対して行うことが可能な介入策が格納されたデータベースである。介入策DB2023に格納されたデータは、本実施形態に係るシステム1の運用者等が事前に格納し、また、適宜追記、削除、更新することが好ましい。詳細は後述する。
【0054】
介入策DB2023にどのような介入策を格納するかは、後述する介入パターンが効果的な受診勧奨をもたらすかどうかにも関わってくる。一手法として、
図10に示すカテゴリーを介入策としてまず設定し、その後、効果的な受診勧奨をもたらすカテゴリーについて詳細な介入策を設定するといった手法も考えられる。
【0055】
介入パターンDB2024は、本実施形態に係るシステム1において対象者に対して実施を検討する介入パターンが格納されたデータベースである。介入パターンDB2024に格納されたデータは、後述する介入パターン生成モジュール2035により生成されて格納され、適宜追記、削除、更新される。詳細は後述する。
【0056】
個別向上率DB2025は、介入パターン毎に、この介入パターンを採用したことにより推測される(学習モデル2028により推論される)検診受診に関するパラメータの向上率が格納されたデータベースである。ここに、検診受診に関するパラメータは、本実施形態に係るシステム1の運用者が適宜決定してよいが、本実施形態に係るシステム1では、主に、上述したように、検診(含む健康診断)の受診予約率をここにいう検診受診に関するパラメータとする。個別向上率DB2025に格納されたデータは、後述する個別向上率算出モジュール2037により算出されて格納され、適宜追記、削除、更新される。ここで、個別向上率算出モジュール2037は、対象者毎に個別向上率を算出している。詳細は後述する。
【0057】
確定介入パターンDB2026は、算出された個別向上率に基づいて、対象者毎に実施することが確定した介入パターンを示す情報が格納されたデータベースである。確定介入パターンDB2026は、後述する介入パターン確定モジュール2038により決定(確定)されて格納され、適宜追記、削除、更新される。
【0058】
教師データ2027は、介入パターンDB2024に格納された介入パターンを入力に、検診(含む健康診断)の受診勧奨の結果を出力にした教師データである。教師データ2027は、後述する学習モデル生成モジュール2036により対象者毎に生成され、適宜追記、削除、更新される。
【0059】
学習モデル2028は、上述した教師データ2027に基づき、図略のモデル学習プログラムに従って機械学習を行わせることにより得られる。この学習モデル2028に対して特定の介入パターンを入力すると、推論結果として検診(含む健康診断)の受診勧奨の結果が得られる。学習モデル2028は、後述する学習モデル生成モジュール2036により対象者毎に生成され、適宜追記、削除、更新される。従って、学習モデル2028の出力も対象者毎の出力となる。
【0060】
本実施形態に係る学習モデル2028は、例えば、複数の関数が合成されたパラメータ付き合成関数である。パラメータ付き合成関数は、複数の調整可能な関数、及びパラメータの組合せにより定義される。本実施形態に係る予測モデルは、上記の要請を満たす如何なるパラメータ付き合成関数であってもよいが、多層のネットワークモデル(以下、多層化ネットワークと呼ぶ)であるとする。多層化ネットワークを用いる予測モデルは、入力層と、出力層と、入力層と出力層との間に設けられる少なくとも1層の中間層あるいは隠れ層とを有する。予測モデルは、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての使用が想定される。
【0061】
本実施形態に係る多層化ネットワークとしては、例えば、深層学習(Deep Learning)の対象となる多層ニューラルネットワークである深層ニューラルネットワーク(Deep Neural Network:DNN)が用いられ得る。DNNとしては、例えば、画像を対象とする畳み込みニューラルネットワーク(Convolution Neural Network:CNN)を用いてもよい。
【0062】
また、上記はあくまで予測モデルの例示であり、予測モデルとしては、他の構成を備えてもよい。例えば、予測モデルは、介入パターンおよび健康診断の受診勧奨の結果を変数とし、各変数に過去の実績から導出された係数が付された関数により記述されるルールベースのモデルであってもよい。
【0063】
制御部203は、プロセッサ29が記憶部202に記憶されるアプリケーションプログラム2021を読み込み、アプリケーションプログラム2021に含まれる命令を実行することにより実現される。制御部203は、アプリケーションプログラム2021に従って動作することにより、受信制御モジュール2031、送信制御モジュール2032、検診勧奨履歴取得モジュール2033、介入策選定モジュール2034、介入パターン生成モジュール2035、学習モデル生成モジュール2036、個別向上率算出モジュール2037、介入パターン確定モジュール2038、及び検診勧奨実施モジュール2039として示す機能を発揮する。
【0064】
受信制御モジュール2031は、サーバ20が外部の装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。
【0065】
送信制御モジュール2032は、サーバ20が外部の装置に対し通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。
【0066】
検診勧奨履歴取得モジュール2033は、例えば外部データサーバ30から検診勧奨履歴データを取得する。検診勧奨履歴データは、健康診断の受診を勧奨される対象者の個人情報、対象者の過去の健康診断結果、及び対象者に対する前記健康診断の受診勧奨の結果を少なくとも含む。検診勧奨履歴取得モジュール2033は、外部データサーバ30に格納されている全てのデータを取得する必要はなく、後述する対象者毎の最良の介入パターンを求めるために必要なデータのみを取得すればよい。加えて、外部データサーバ30に格納されているデータには個人情報(例えば氏名、住所)に該当するデータも含まれうるので、検診勧奨履歴取得モジュール2033は、こういった個人情報については識別情報に置き換えて検診勧奨履歴DB2022に格納することが好ましい。
【0067】
外部データサーバ30に格納されているデータは適宜更新されることが考えられるので、検診勧奨履歴取得モジュール2033は、定期的に外部データサーバ30にアクセスし、検診勧奨履歴データを取得することが好ましい。検診勧奨履歴取得モジュール2033は、取得した検診勧奨履歴データを検診勧奨履歴DB2022に格納し、また、検診勧奨履歴DB2022の記録内容を適宜追記、削除、更新する。
【0068】
介入策選定モジュール2034は、後述する介入パターン生成モジュール2035が生成する介入パターンの元となる介入策を介入策DB2023から抽出し、抽出した介入策を介入パターン生成モジュール2035に提供する。介入策選定モジュール2034が選定する介入策は単一であってもよいし、複数であってもよい。
【0069】
介入策選定モジュール2034が、介入策DB2023から介入策を選定する手法については特段の制限はない。介入パターン生成モジュール2035に介入策を提供するに当たって、当初は単一の介入策を提供し、その後、効果的な受診勧奨をもたらす介入策を含めた複数の介入策を介入パターン生成モジュール2035に提供する、などの手法が考えられる。あるいは、複数の介入策を組み合わせることで、介入パターンに一定の意味を持たせるような介入パターンを介入パターン生成モジュール2035に生成させることも可能である。
【0070】
介入パターン生成モジュール2035は、介入策選定モジュール2034から提供された介入策に基づいて、少なくとも一つの介入策を含む介入パターンを生成する。好ましくは、介入パターン生成モジュール2035は、介入策を含まない、つまり、受診勧奨を全く行わない介入パターンも生成する。介入パターン生成モジュール2035は、生成した介入パターンを介入パターンDB2024に格納する。
【0071】
介入策選定モジュール2034が選定する介入策と同様に、介入パターン生成モジュール2035がどのような介入パターンを生成するかは、効果的な受診勧奨をもたらすためには重要である。介入パターン生成モジュール2035による介入パターン生成手法に特段の限定はないが、一例として、当初は単一の介入策を有する介入パターンを生成し、その後、検診勧奨履歴データを更新した際に、個別向上率算出モジュール2037が算出した検診受診に関するパラメータの向上率が大きい(つまり受診勧奨の効果が高い)介入パターンに対して介入策を適宜追加するといった、トライアンドエラーにより介入パターンを生成する手法が一例として挙げられる。
【0072】
トライアンドエラーを行うという観点も含めて、介入策選定モジュール2034及び介入パターン生成モジュール2035は、定期的に介入策選定及び介入パターン生成を行うことが好ましい。特に、検診勧奨履歴取得モジュール2033が定期的に検診勧奨履歴データを取得、更新しているので、検診勧奨履歴データの更新タイミングに応じて介入策選定及び介入パターン生成を行うことが好ましい。
【0073】
学習モデル生成モジュール2036は、介入パターン生成モジュール2035が生成した介入パターンを入力に、検診勧奨履歴データに含まれる健康診断の受診勧奨の結果を出力とした教師データを対象者毎に生成し、記憶部202に教師データ2027として格納する。次いで、学習モデル生成モジュール2036は、生成した教師データ2027を用いて、機械学習を行うことにより、学習モデルを対象者毎に生成し、記憶部202に学習モデル2028として格納する。好ましくは、学習モデル生成モジュール2036は、検診勧奨履歴データの更新タイミングに合わせて教師データ2027を再作成し、学習モデル2028の再学習を行う。
【0074】
個別向上率算出モジュール2037は、学習モデル生成モジュール2036が生成した学習モデル2028に介入パターンを入力することで、この学習モデル2028の推論結果である検診(含む健康診断)の受診勧奨の結果を対象者毎に取得する。そして、個別向上率算出モジュール2037は、学習モデル2028からの出力である検診(含む健康診断)の受診勧奨の結果に基づいて、検診受診に関するパラメータの向上率を算出し、算出した結果を個別向上率DB2025に格納する。個別向上率算出モジュール2037も、学習モデル生成モジュール2036による学習モデル2028の再学習のタイミングに合わせて向上率の算出作業を行い、個別向上率DB2025の更新を行うことが好ましい。
【0075】
介入パターン確定モジュール2038は、個別向上率算出モジュール2037が算出した向上率に基づいて、対象者毎の最良の介入パターンを求める。ここにいう「最良の介入パターン」とは、一例として、介入パターンを実施したことにより、検診(含む健康診断)の受診勧奨の結果である検診(含む健康診断)の受診の予約が最大であることをいう。
【0076】
検診勧奨実施モジュール2039は、介入パターン確定モジュール2038が求めた対象者毎の最良の介入パターンに基づいて、対象者に対して検診(含む健康診断)の受診勧奨を行う。
【0077】
検診勧奨実施モジュール2039が行う健康診断の受診勧奨の一例について、
図11を参照して説明する。
【0078】
検診勧奨実施モジュール2039は、検診勧奨履歴データに含まれる対象者の個人情報を参照し、必要に応じて対象者の詳細な個人情報を外部データサーバ30から取得し、対象者の住所に葉書1101を送付するか、あるいは、対象者の携帯端末に対してSMS(ショートメッセージ)1102を送信する。葉書1101には、対象者を識別可能な識別情報(ID)を含む、本実施形態に係るシステム1へアクセスするためのリンク情報が記載された2次元バーコード1103が表示されている。また、SMS1102には、同様に、対象者を識別可能な識別情報(ID)を含む、本実施形態に係るシステム1へアクセスするためのリンク情報1104が含まれている。葉書1101、SMS1102も、上述した介入策、介入パターンの一例である。
葉書1101を受け取った、あるいはSMS1102を受診した対象者は、2次元バーコード1103を用いてアクセスするか、あるいは、リンク情報1104に基づいてアクセスするかの手法を用いて、本実施形態に係るシステム1にアクセスする。アクセスを受けた検診勧奨実施モジュール2039は、アンケートページに遷移するための画面1105を、対象者が所持する携帯端末等に表示させる。この画面1105に記載された内容も、上述した介入策、介入パターンの一例である。
次いで、対象者は、画面1105の下部に表示されているボタン1106をタッチ等することで操作入力を行う。ボタン1106の操作入力も、検診勧奨履歴データの一部として取り込み、最良の介入パターンを求めるためのデータとして用いることができる。
【0079】
<2 データ構造>
図4~
図8は、サーバ20が記憶するデータベースのデータ構造を示す図である。なお、
図4~
図8は一例であり、記載されていないデータを除外するものではない。
【0080】
図4~
図8に示すデータベースは、リレーショナルデータベースを指し、行と列によって構造的に規定された表形式のテーブルと呼ばれるデータ集合を、互いに関連づけて管理するためのものである。データベースでは、表をテーブル、表の列をカラム、表の行をレコードと呼ぶ。リレーショナルデータベースでは、テーブル同士の関係を設定し、関連づけることができる。
【0081】
通常、各テーブルにはレコードを一意に特定するための主キーとなるカラムが設定されるが、カラムへの主キーの設定は必須ではない。サーバ20の制御部203は、各種プログラムに従ってプロセッサ29に、記憶部202に記憶された特定のテーブルにレコードを追加、削除、更新を実行させることができる。
【0082】
図4は、検診勧奨履歴DB2022のデータ構造を示す図である。
図4に示すように、検診勧奨履歴DB2022のレコードの各々は、例えば、項目「対象者ID」と、項目「保険団体ID」と、項目「市区町村ID」と、項目「年齢」と、項目「性別」と、項目「検診勧奨種類」と、項目「過去の健診結果」と、項目「健診勧奨メッセージID」と、項目「アプローチ手段」と、項目「アプローチ日時」と、項目「報奨」と、項目「健診勧奨入力」と、項目「健診受診の有無」とを含む。検診勧奨履歴DB2022の各項目は、検診勧奨履歴取得モジュール2033が外部データサーバ30から検診勧奨履歴データを取得した際に、この検診勧奨履歴取得モジュール2033により入力される。検診勧奨履歴DB2022が記憶する情報は、適宜変更・更新することが可能である。
【0083】
項目「対象者ID」は、本実施形態に係るシステム1(特にサーバ20)による健康診断の受診対象の対象である健診対象者を特定するためのIDである。項目「保険団体ID」は、本実施形態に係るシステム1により特定される対象者毎の最良の介入パターンを利用する主体である、健康診断の運営主体たる健康保険団体(保険団体)を特定するためのIDである。項目「市区町村ID」は、対象者IDにより特定される対象者の住所または居所が属する市区町村であり、保険代理店により特定される健康保険団体が管掌する地域である市区町村を特定するためのIDである。項目「年齢」は、対象者IDにより特定される対象者の年齢を示す情報である。項目「性別」は、対象者IDにより特定される対象者の性別を示す情報である。項目「健診勧奨種類」は、対象者IDにより特定される対象者に対して受診勧奨された健康診断の種類を示す情報である。項目「過去の健診結果」は、対象者IDにより特定される対象者に対して受診勧奨された健康診断の結果を示す情報である。項目「検診勧奨メッセージID」は、対象者IDにより特定される対象者に対して受診勧奨した際に、この受診勧奨に含まれていたメッセージを特定するためのIDである。項目「アプローチ手段」は、対象者IDにより特定される対象者に対して受診勧奨した際の受診勧奨手段を示す情報である。項目「アプローチ日時」は、対象者IDにより特定される対象者に対して受診勧奨した日時を示す情報である。項目「報奨」は、対象者IDにより特定される対象者に対して受診勧奨した際に、対象者に報奨を付与したか否かを示す情報である。項目「健診受診の有無」は、対象者IDにより特定される対象者に対して受診勧奨した結果、対象者が健康診断を受診したか否かを示す情報である。
【0084】
図5は、介入策DB2023のデータ構造を示す図である。
図5に示すように、介入策DB2023のレコードの各々は、例えば、項目「介入策ID」と、項目「介入策」と、項目「介入策内容ID」と、項目「介入策」とを含む。介入策DB2023の各項目は、本実施形態に係るシステム1の運用者が事前に適宜入力する。介入策DB2023が記憶する情報は、適宜変更・更新することが可能である。
【0085】
項目「介入策ID」は、本実施形態に係るシステム1において実施されうる介入策のカテゴリー(
図10参照)を特定するためのIDである。項目「介入策」は、介入策IDにより特定される介入策のカテゴリーの名称を示す情報である。項目「介入策内容ID」は、介入策IDにより特定される介入策のカテゴリーに属する具体的な介入策を特定するためのIDである。項目「介入策内容」は、介入策内容IDにより特定される具体的な介入策の名称を示す情報である。
【0086】
なお、
図5において「-」は情報がないことを示している。
図5に示すように、介入策DB2023には、介入策ID「I0004」に示すように、介入策がない、すなわち、検診勧奨を行わないものも含まれている。
【0087】
図6は、介入パターンDB2024のデータ構造を示す図である。
図6に示すように、介入パターンDB2024のレコードの各々は、例えば、項目「介入パターンID」と、項目「介入策ID」と、項目「介入策内容ID」とを含む。介入パターンDB2024の各項目は、介入パターン生成モジュール2035が介入パターンを生成したときに、この介入パターン生成モジュール2035により入力される。介入パターンDB2024が記憶する情報は、適宜変更・更新することが可能である。
【0088】
項目「介入パターンID」は、本実施形態に係るシステム1において対象者に行われる受診勧奨の手段の組み合わせである介入パターンを特定するためのIDである。項目「介入策ID」は、本実施形態に係るシステム1において実施されうる介入策のカテゴリーを特定するためのIDであり、
図5に示す介入策DB2023の項目「介入策ID」と共通である。項目「介入策内容ID」は、介入策IDにより特定される介入策のカテゴリーに属する具体的な介入策を特定するためのIDであり、
図5に示す介入策DB2023の項目「介入策内容ID」と共通である。
【0089】
図7は、個別向上率DB2025のデータ構造を示す図である。
図7に示すように、個別向上率DB2025のレコードの各々は、例えば、項目「対象者ID」と、項目「介入パターンID」と、項目「向上率」とを含む。個別向上率DB2025の各項目は、個別向上率算出モジュール2037が対象者毎に介入パターンに対する検診受診に関するパラメータの向上率を算出した際に、この個別向上率算出モジュール2037により入力される。個別向上率DB2025が記憶する情報は、適宜変更・更新することが可能である。
【0090】
項目「対象者ID」は、本実施形態に係るシステム1による健康診断の受診対象の対象である健診対象者を特定するためのIDであり、
図4に示す検診勧奨履歴DB2022の項目「対象者ID」と共通である。項目「介入パターンID」は、本実施形態に係るシステム1において対象者に行われる受診勧奨の手段の組み合わせである介入パターンを特定するためのIDであり、
図7に示す確定介入パターンDB2026の項目「介入パターンID」と共通である。項目「向上率」は、個別向上率算出モジュール2037が算出した検診受診に関するパラメータの向上率に関する情報である。
【0091】
図8は、確定介入パターンDB2026のデータ構造を示す図である。
図8に示すように、確定介入パターンDB2026のレコードの各々は、例えば、項目「対象者ID」と、項目「介入パターンID」と、項目「確定年月日」とを含む。確定介入パターンDB2026の各項目は、介入パターン確定モジュール2038が対象者毎に行うべき介入パターン、言い換えれば、対象者毎の最良の介入パターンを求めた際に、この個別向上率算出モジュール2037により入力される。確定介入パターンDB2026が記憶する情報は、適宜変更・更新することが可能である。
【0092】
項目「対象者ID」は、本実施形態に係るシステム1による健康診断の受診対象の対象である健診対象者を特定するためのIDであり、
図4に示す検診勧奨履歴DB2022の項目「対象者ID」と共通である。項目「介入パターンID」は、本実施形態に係るシステム1において対象者に行われる受診勧奨の手段の組み合わせである介入パターンを特定するためのIDであり、
図7に示す確定介入パターンDB2026の項目「介入パターンID」と共通である。項目「確定年月日」は、項目「対象者ID」により特定される対象者に対して、項目「介入パターンID」により特定される介入パターンが最良であると介入パターン確定モジュール2038が決定した(確定した)年月日を示す情報である。
【0093】
<3 動作例>
以下、サーバ20の動作の一例について説明する。
【0094】
図9は、サーバ20のメイン動作の一例を表すフローチャートである。
【0095】
ステップS900において、制御部203は、外部データサーバ30から検診勧奨履歴データを取得する。具体的には、例えば、制御部203は、受信制御モジュール2031及び検診勧奨履歴取得モジュール2033により、外部データサーバ30から、本実施形態に係るシステム1の動作に必要となる検診勧奨履歴データを取得する。
【0096】
次いで、ステップS901において、制御部203は、介入パターン生成のための介入策を介入策DB2023から選定する。具体的には、例えば、制御部203は、介入策選定モジュール2034により、介入パターン生成のための介入策を介入策DB2023から選定する。
【0097】
ステップS902において、制御部203は、ステップS901において選定した介入策を用いて介入パターンを生成する。具体的には、例えば、制御部203は、介入パターン生成モジュール2035により、ステップS901において選定した介入策を用いて介入パターンを生成する。生成された介入パターンは介入パターンDB2024に格納される。
【0098】
ステップS903において、制御部203は、ステップS904以降において生成する教師データ2027及び学習モデル2028における出力となる、健康診断の受診勧奨の結果を決定する。具体的には、例えば、制御部203は、学習モデル生成モジュール2036により、ステップS904以降において生成する教師データ2027及び学習モデル2028における出力となる、健康診断の受診勧奨の結果を決定する。
【0099】
ステップS904において、制御部203は、ステップS903において決定した健康診断の受診勧奨の結果を出力とし、ステップS902で生成した介入パターンを入力とする教師データ2027を生成する。具体的には、例えば、制御部203は、学習モデル生成モジュール2036により、ステップS903において決定した健康診断の受診勧奨の結果を出力とし、ステップS902で生成した介入パターンを入力とする教師データ2027を生成する。生成された教師データ2027はサーバ20の記憶部202に格納される。
【0100】
ステップS905において、制御部203は、ステップS904で生成した教師データ2027を用いて機械学習を行い、学習モデル2028を生成する。具体的には、例えば、制御部203は、学習モデル生成モジュール2036により、ステップS904で生成した教師データ2027を用いて機械学習を行い、学習モデル2028を生成する。生成された学習モデル2028はサーバ20の記憶部202に格納される。
【0101】
ステップS906において、制御部203は、介入パターンDB2024から介入パターンを選定するとともに、記憶部202に格納された学習モデル2028を選定して、この介入パターンを選定した学習モデル2028に入力することで、この学習モデル2028の推論結果としての出力である健康診断の受診勧奨の結果を取得する。具体的には、例えば、制御部203は、個別向上率算出モジュール2037により、介入パターンDB2024から介入パターンを選定するとともに、記憶部202に格納された学習モデル2028を選定して、この介入パターンを選定した学習モデル2028に入力することで、この学習モデル2028の推論結果としての出力である健康診断の受診勧奨の結果を取得する。取得した出力は一時的に記憶部202に格納される。ステップS906における出力取得動作は、介入パターン及び学習モデル2028を種々変更して対象者毎に繰り返し実行される。
【0102】
ステップS907において、制御部203は、ステップS906において取得した推論結果である出力に基づいて、検診受診に関するパラメータの向上率を算出する。具体的には、例えば、制御部203は、個別向上率算出モジュール2037により、ステップS906において取得した推論結果である出力に基づいて、検診受診に関するパラメータの向上率を算出する。算出された向上率は、個別向上率DB2025に格納される。ステップS907における向上率算出動作は、対象者毎に実行される。
【0103】
ステップS908において、制御部203は、ステップS907において算出した向上率に基づいて、対象者毎に実施すべき最良の介入パターンを求める。具体的には、例えば、制御部203は、介入パターン確定モジュール2038により、ステップS907において算出した向上率に基づいて、対象者毎に実施すべき最良の介入パターンを求める。求められた対象者毎の最良の介入パターンは確定介入パターンDB2026に格納される。
【0104】
この後、図示は省略するが、制御部203は、例えば検診勧奨実施モジュール2039により、ステップS908において求められた最良の介入パターンに基づいて、対象者に対して健康診断の受診勧奨を行う。
【0105】
<5 一実施形態の効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るシステム1によれば、検診勧奨対象者に対する最適な受診勧奨手段を特定することができる。
【0106】
上述した特許文献1に開示された技術では、検診勧奨後の受診確率を予測している。そして、この技術では、健診勧奨の効果を予測しているわけではない。
【0107】
一方、本実施形態に係るシステム1では、検診勧奨による受診確率の上昇幅を予測している。さらに、本実施形態に係るシステム1では、対象者毎に健診勧奨のパターン(介入パターン)毎の受診勧奨の上昇幅(向上率)を予測し、最も上昇幅の大きいパターンを特定し、この介入パターンを、対象者毎の最良の介入パターンとして求めている。
【0108】
従って、本実施形態に係るシステム1によれば、対象者毎に複数の介入パターンによる向上率を比較し、比較した結果、対象者毎の最良の介入パターンを求めているので、検診勧奨対象者に対する最適な受診勧奨手段を特定することができる。
【0109】
<6 付記>
なお、上記した実施形態は本開示を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0110】
一例として、上述した一実施形態に係るシステム1では、システム1が取得した検診勧奨履歴データについて一律に教師データ2027、学習モデル2028を生成していたが、これら教師データ2027及び学習モデル2028を健康保険団体毎、対象者の居住地域毎に生成し、対象者が加入している健康保険団体、対象者が居住する地域に応じて教師データ2027、学習モデル2028を選択してもよい。
【0111】
また、上述した一実施形態に係るシステム1では、対象者毎に最良の介入パターンを求めていたが、対象者をその対象者が有する特性(例えば対象者の居住地域)に基づいてグルーピングし、このグループ単位で教師データ2027、学習モデル2028を生成し、グループ単位で最良の介入パターンを求めてもよい。あるいは、対象者をグルーピングした上で、共通の教師データ2027、学習モデル2028を用いてグループ単位で最良の介入パターンを求めてもよい。
【0112】
さらに、上述した一実施形態に係るシステム1における学習モデル2028の出力には、健診勧奨の結果として種々のパラメータが選定可能である。一例としては健診受診の予約の有無であるが、それ以外にも、受診勧奨メッセージの既読/未読、受診予約ページへの遷移、健診受診率などのパラメータが選定可能である。
【0113】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0114】
また、本実施例に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0115】
さらに、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0116】
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0117】
(付記1)
プロセッサ(29)を備えるコンピュータ(20)を動作させるためのプログラム(2021)であって、プログラム(2021)は、プロセッサ(29)に、検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、対象者の過去の検診結果、及び対象者に対する検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップ(S900)と、検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する第2ステップ(S902)と、第2ステップ(S902)で生成した介入パターンを入力に、検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、介入パターン毎に検診勧奨履歴データから生成する第3ステップ(S904)と、第3ステップ(S904)において生成した教師データを用いて、介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップ(S905)と、第4ステップ(S905)で生成した機械学習モデルに介入パターンを入力することで、機械学習モデルの推論結果である出力を対象者毎に取得する第5ステップ(S906)と、第5ステップ(S906)で取得した出力に基づいて、対象者毎の最良の介入パターンを求める第6ステップ(S908)とを実行させる、プログラム(2021)。
(付記2)
介入パターンには、介入策を含まないものも含む、付記1に記載のプログラム(2021)。
(付記3)
対象者毎の最良の介入パターンとは、介入パターンによる検診の受診の予約が最大である介入パターンを含む、付記1または2に記載のプログラム(2021)。
(付記4)
プログラム(2021)は、プロセッサ(29)に、第1ステップ(S900)及び第3ステップ(S904)を所定のタイミングで実行させることで、第3ステップ(S904)で生成した教師データを用いて、介入パターン毎の機械学習モデルの再学習を実行させる、付記1~3のいずれかに記載のプログラム(2021)。
(付記5)
第3ステップ(S904)において、対象者が加入している健康保険団体及び対象者の居住地の少なくとも一方毎についても教師データを生成し、第4ステップ(S905)において、対象者が加入している健康保険団体及び対象者の居住地の少なくとも一方毎についても機械学習モデルを生成する付記1~4のいずれかに記載のプログラム(2021)。
(付記6)
第3ステップ(S904)において、検診勧奨履歴データに含まれる対象者の特性に基づいて対象者を複数のグループに分類し、このグループ毎についても教師データを生成し、第4ステップ(S905)において、グループ毎についても機械学習モデルを生成する付記1~5のいずれかに記載のプログラム(2021)。
(付記7)
プログラム(2021)は、プロセッサ(29)に、さらに、第6ステップ(S908)において求めた最良の介入パターンに基づいて、対象者に検診の受診勧奨を実施する第7ステップを実行させる、付記1~6のいずれかに記載のプログラム(2021)。
(付記8)
第7ステップにおいて、受診勧奨を、対象者毎の識別情報を含むリンクが含まれたバーコードが表示された郵便物を対象者へ郵送すること、または、識別情報を含むリンクが含まれたメッセージを対象者が所有する携帯端末に送信することにより実施する付記7に記載のプログラム(2021)。
(付記9)
プログラム(2021)は、プロセッサ(29)に、さらに、識別情報を用いてリンクに基づく対象者のアクセスの有無を取得する第8ステップを実行し、第1ステップ(S900)において、検診勧奨履歴データとして対象者のアクセスの有無を含める付記8に記載のプログラム(2021)。
(付記10)
プロセッサ(29)を備えた情報処理装置であって、プロセッサ(29)は、検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、対象者の過去の検診結果、及び対象者に対する検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップ(S900)と、検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する第2ステップ(S902)と、第2ステップ(S902)で生成した介入パターンを入力に、検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、介入パターン毎に検診勧奨履歴データから生成する第3ステップ(S904)と、第3ステップ(S904)において生成した教師データを用いて、介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップ(S905)と、第4ステップ(S905)で生成した機械学習モデルに介入パターンを入力することで、機械学習モデルの推論結果である出力を対象者毎に取得する第5ステップ(S906)と、第5ステップ(S906)で取得した出力に基づいて、対象者毎の最良の介入パターンを求める第6ステップ(S908)とを実行する、情報処理装置。
(付記11)
プロセッサ(29)を備えたコンピュータ(20)により実行される方法であって、プロセッサ(29)は、検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、対象者の過去の検診結果、及び対象者に対する検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップ(S900)と、検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する第2ステップ(S902)と、第2ステップ(S902)で生成した介入パターンを入力に、検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、介入パターン毎に検診勧奨履歴データから生成する第3ステップ(S904)と、第3ステップ(S904)において生成した教師データを用いて、介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップ(S905)と、第4ステップ(S905)で生成した機械学習モデルに介入パターンを入力することで、機械学習モデルの推論結果である出力を対象者毎に取得する第5ステップ(S906)と、第5ステップ(S906)で取得した出力に基づいて、対象者毎の最良の介入パターンを求める第6ステップ(S908)とを実行する、方法。
(付記12)
検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、対象者の過去の検診結果、及び対象者に対する検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する手段(2033)と、検診の受診勧奨を行う手段である介入策を少なくとも一つ含む介入パターンを少なくとも一つ生成する手段(2035)と、介入パターンを生成する手段(2035)が生成した介入パターンを入力に、検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、介入パターン毎に検診勧奨履歴データから生成する手段(2036)と、教師データを生成する手段(2036)が生成した教師データを用いて、介入パターン毎の機械学習モデルを生成する手段(2036)と、機械学習モデルを生成する手段(2036)が生成した機械学習モデルに介入パターンを入力することで、機械学習モデルの推論結果である出力を対象者毎に取得する手段(2037)と、出力を取得する手段(2037)が取得した出力に基づいて、対象者毎の最良の介入パターンを求める手段(2038)とを具備する、システム。
【符号の説明】
【0118】
1…受診勧奨手段検討システム 10…端末装置 20…サーバ 25…メモリ 26…ストレージ 29…プロセッサ 30…外部データサーバ 202…記憶部 203…制御部 2021…アプリケーションプログラム 2022…検診勧奨履歴DB 2023…介入策DB 2024…介入パターンDB 2025…個別向上率DB 2026…確定介入パターンDB 2027…教師データ 2028…学習モデル 2031…受信制御モジュール 2032…送信制御モジュール 2033…検診勧奨履歴取得モジュール 2034…介入策選定モジュール 2035…介入パターン生成モジュール 2036…学習モデル生成モジュール 2037…個別向上率算出モジュール 2038…介入パターン確定モジュール 2039…検診勧奨実施モジュール
【手続補正書】
【提出日】2024-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータを動作させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
検診を行う団体に属する対象者から、年度を含む所定の条件により選定された、検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、前記対象者の過去の検診結果、及び前記対象者に対する過去の前記検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップと、
前記検診の受診勧奨を行う手段である複数の介入策から少なくとも一つの前記介入策を選択することで前記選択した前記介入策を含む前記介入策の組み合わせである介入パターンを少なくとも一つ生成して前記メモリに格納する第2ステップと、
前記メモリに格納した前記介入パターンを入力に、前記過去の検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、前記介入パターン毎に前記検診勧奨履歴データから生成する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップと、
前記第4ステップで生成した前記機械学習モデルに前記介入パターンを入力することで、前記機械学習モデルの推論結果である前記受診勧奨の結果を前記対象者毎に取得する第5ステップと、
前記第5ステップで取得した前記受診勧奨の結果に基づいて、前記検診の受診予約率または前記受診勧奨の上昇幅が最大となる前記対象者毎の最良の前記介入パターンを求める第6ステップとを実行させる、プログラム。
【請求項2】
前記介入パターンには、前記介入策を含まないものも含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記対象者毎の最良の前記介入パターンとは、前記介入パターンによる前記検診の受診の予約が最大である前記介入パターンを含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記プログラムは、前記プロセッサに、前記第1ステップ及び前記第3ステップを所定のタイミングで実行させることで、前記第3ステップで生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の前記機械学習モデルの再学習を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第3ステップにおいて、前記対象者が加入している健康保険団体及び前記対象者の居住地の少なくとも一方毎についても前記教師データを生成し、
前記第4ステップにおいて、前記対象者が加入している前記健康保険団体及び前記対象者の前記居住地の少なくとも一方毎についても前記機械学習モデルを生成する請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記第3ステップにおいて、前記検診勧奨履歴データに含まれる前記対象者の特性に基づいて前記対象者を複数のグループに分類し、このグループ毎についても前記教師データを生成し、
前記第4ステップにおいて、前記グループ毎についても前記機械学習モデルを生成する請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記第6ステップにおいて求めた最良の前記介入パターンに基づいて、前記対象者に前記検診の受診勧奨を実施する第7ステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
前記第7ステップにおいて、前記受診勧奨を、前記対象者毎の識別情報を含むリンクが含まれたバーコードが表示された郵便物を前記対象者へ郵送すること、または、前記識別情報を含むリンクが含まれたメッセージを前記対象者が所有する携帯端末に送信することにより実施する請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記識別情報を用いて前記リンクに基づく前記対象者のアクセスの有無を取得する第8ステップを実行し、
前記第1ステップにおいて、前記検診勧奨履歴データとして前記対象者の前記アクセスの有無を含める請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
プロセッサ及びメモリを備えた情報処理装置であって、
前記プロセッサは、
検診を行う団体に属する対象者から、年度を含む所定の条件により選定された、検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、前記対象者の過去の検診結果、及び前記対象者に対する過去の前記検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップと、
前記検診の受診勧奨を行う手段である複数の介入策から少なくとも一つの前記介入策を選択することで前記選択した前記介入策を含む前記介入策の組み合わせである介入パターンを少なくとも一つ生成して前記メモリに格納する第2ステップと、
前記メモリに格納した前記介入パターンを入力に、前記過去の検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、前記介入パターン毎に前記検診勧奨履歴データから生成する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップと、
前記第4ステップで生成した前記機械学習モデルに前記介入パターンを入力することで、前記機械学習モデルの推論結果である前記受診勧奨の結果を前記対象者毎に取得する第5ステップと、
前記第5ステップで取得した前記受診勧奨の結果に基づいて、前記検診の受診予約率または前記受診勧奨の上昇幅が最大となる前記対象者毎の最良の前記介入パターンを求める第6ステップとをる、情報処理装置。
【請求項11】
プロセッサ及びメモリを備えたコンピュータにより実行される方法であって、
前記プロセッサは、
検診を行う団体に属する対象者から、年度を含む所定の条件により選定された、検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、前記対象者の過去の検診結果、及び前記対象者に対する過去の前記検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する第1ステップと、
前記検診の受診勧奨を行う手段である複数の介入策から少なくとも一つの前記介入策を選択することで前記選択した前記介入策を含む前記介入策の組み合わせである介入パターンを少なくとも一つ生成して前記メモリに格納する第2ステップと、
前記メモリに格納した前記介入パターンを入力に、前記過去の検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、前記介入パターン毎に前記検診勧奨履歴データから生成する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップと、
前記第4ステップで生成した前記機械学習モデルに前記介入パターンを入力することで、前記機械学習モデルの推論結果である前記受診勧奨の結果を前記対象者毎に取得する第5ステップと、
前記第5ステップで取得した前記受診勧奨の結果に基づいて、前記検診の受診予約率または前記受診勧奨の上昇幅が最大となる前記対象者毎の最良の前記介入パターンを求める第6ステップとを実行する、方法。
【請求項12】
検診を行う団体に属する対象者から、年度を含む所定の条件により選定された、検診の受診を勧奨される対象者の個人情報、前記対象者の過去の検診結果、及び前記対象者に対する過去の前記検診の受診勧奨の結果を少なくとも含む検診勧奨履歴データを取得する手段と、
前記検診の受診勧奨を行う手段である複数の介入策から少なくとも一つの前記介入策を選択することで前記選択した前記介入策を含む前記介入策の組み合わせである介入パターンを少なくとも一つ生成してメモリに格納する手段と、
前記メモリに格納した前記介入パターンを入力に、前記過去の検診の受診勧奨の結果を出力にした教師データを、前記介入パターン毎に前記検診勧奨履歴データから生成する手段と、
前記教師データを生成する手段が生成した前記教師データを用いて、前記介入パターン毎の機械学習モデルを生成する第4ステップと、
前記機械学習モデルを生成する手段が生成した前記機械学習モデルに前記介入パターンを入力することで、前記機械学習モデルの推論結果である前記受診勧奨の結果を前記対象者毎に取得する手段と、
前記受診勧奨の結果を取得する手段が取得した前記出力に基づいて、前記検診の受診予約率または前記受診勧奨の上昇幅が最大となる前記対象者毎の最良の前記介入パターンを求める手段とを具備する、システム。