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特開2024-156327高分子材料の観察用検体の作製方法および高分子材料の観察方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156327
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】高分子材料の観察用検体の作製方法および高分子材料の観察方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20241029BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20241029BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20241029BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N1/28 F
G01N23/04 330
G01N1/28 G
H01J37/22 502H
H01J37/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070699
(22)【出願日】2023-04-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載日:令和5年1月16日、掲載場所:出版社ELSEVIERのウェブサイト https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0032386122010904?via%3Di hub>
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】鹿久保 隆志
(72)【発明者】
【氏名】清水 克典
(72)【発明者】
【氏名】陣内 浩司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智衆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 庸平
【テーマコード(参考)】
2G001
2G052
5C101
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA11
2G001CA03
2G001HA13
2G001LA05
2G001RA01
2G052AA18
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA15
2G052EC03
2G052GA34
5C101AA05
5C101FF01
5C101FF23
(57)【要約】
【課題】高分子材料の分子鎖や原子の状態を直接的に観察することができる高分子材料の観察用検体の作製方法および高分子材料の観察方法を提供する。
【解決手段】架橋密度を複数種類に異ならせて弱架橋状態にした高分子材料について、厚さを複数種類に異ならせてスライスした試料10Aを作製し、走査型透過電子顕微鏡2によって、所定の同一設定下で、それぞれの試料10Aの画像データD1を取得し、取得したそれぞれの画像データD1での高分子材料の分子鎖または原子の明確程度が許容範囲である試料10Aの架橋密度および厚さのそれぞれの範囲を、その高分子材料の架橋密度基準範囲、厚さ基準範囲として予め設定しておき、その高分子材料の観察用検体10を作製する際には、その高分子材料を架橋密度基準範囲の弱架橋状態にして、その弱架橋状態の高分子材料を厚さ基準範囲の厚さの1nm以上50nm以下の厚さにスライスする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の架橋状態の高分子材料を薄肉にスライスして走査型透過電子顕微鏡による観察用検体にする高分子材料の観察用検体の作製方法において、
架橋密度を複数種類に異ならせて弱架橋状態にした前記高分子材料について、厚さを複数種類に異ならせてスライスした試料を作製し、
前記走査型透過電子顕微鏡によって、所定の同一設定下で、それぞれの前記試料の画像データを取得し、取得したそれぞれの画像データでの前記高分子材料の分子鎖または原子の明確程度が許容範囲である前記試料の架橋密度および厚さのそれぞれの範囲を、その高分子材料の架橋密度基準範囲、厚さ基準範囲として予め設定しておき、
その高分子材料の観察用検体を作製する際には、その高分子材料を前記架橋密度基準範囲の弱架橋状態にして、その弱架橋状態の高分子材料を前記厚さ基準範囲の厚さにスライスする高分子材料の観察用検体の作製方法。
【請求項2】
前記厚さ基準範囲が1nm以上50nm以下である請求項1に記載の高分子材料の観察用検体の作製方法。
【請求項3】
前記架橋密度基準範囲が1.0×10-6mol/cm以上1.0×10-4mol/cm以下である請求項1または2に記載の高分子材料の観察用検体の作製方法。
【請求項4】
前記観察用検体を作製する際には、未架橋の前記高分子材料のポリマー100質量部に対して架橋剤を0.1質量部以上2質量部以下配合することにより、前記高分子材料を前記架橋密度範囲の弱架橋状態にする請求項3に記載の高分子材料の観察用検体の作製方法。
【請求項5】
所定の架橋状態の高分子材料を薄肉にスライスした観察用検体の画像データを、走査型透過電子顕微鏡を用いて取得する高分子材料の観察方法において、
前記高分子材料を、架橋密度が予め設定された架橋密度基準範囲の弱架橋状態にするとともに、1nm以上50nm以下の厚さにスライスして前記観察用検体として使用し、前記走査型透過電子顕微鏡を用いて取得した前記観察用検体の前記画像データでの前記高分子材料の分子鎖または原子の状態を観察する高分子材料の観察方法。
【請求項6】
前記走査型透過電子顕微鏡を用いて、前記観察用検体の暗視野像データおよび明視野像データのうちの少なくとも一方の像データを撮像して、撮像した前記像データを演算装置による像シミュレーションを用いてデータ処理することにより前記画像データとして生成する請求項5に記載の高分子材料の観察方法。
【請求項7】
前記画像データのコントラストに基づいて前記演算装置により前記観察用検体の厚さを算出するデータ処理を行う請求項6に記載の高分子材料の観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の観察用検体の作製方法および高分子材料の観察方法に関し、より詳しくは、高分子材料を構成する分子鎖や原子の状態を直接的に観察できる高分子材料の観察用検体の作製方法および高分子材料の観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫ゴムなどの架橋した高分子材料の物性は、その高分子材料を構成する分子鎖の状態(構造)などに影響を受けることが知られている。高分子材料の分子鎖や原子の状態を直接的に観察できれば、架橋状態の高分子材料の物性の把握や分析などに関して多大な発展が期待できる。
【0003】
従来、走査型透過電子顕微鏡を用いてゴム材料に含まれる充填剤の分散状態を観察する観察方法が種々提案されている(特許文献1、2参照)。提案されている観察方法では、厚さを200~1500nmとしたゴム材料の三次元構造をトモグラフィー法により再構築している。この観察方法で得られた三次元像では、多数のゴム成分(ポリマー)の分子鎖どうしや充填剤を構成する粒子どうしが凝集した高次凝集構造が確認できる。しかしながら、この観察方法はポリマーの分子鎖や原子の状態を直接的に観察するものではない。それ故、高分子材料の分子鎖や原子の状態を直接的に観察するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5767477号公報
【特許文献1】特開2013-44607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高分子材料の分子鎖や原子の状態を直接的に観察することができる高分子材料の観察用検体の作製方法および高分子材料の観察方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の高分子材料の観察用検体の作製方法は、所定の架橋状態の高分子材料を薄肉にスライスして走査型透過電子顕微鏡による観察用検体にする高分子材料の観察用検体の作製方法において、架橋密度を複数種類に異ならせて弱架橋状態にした前記高分子材料について、厚さを複数種類に異ならせてスライスした試料を作製し、前記走査型透過電子顕微鏡によって、所定の同一設定下で、それぞれの前記試料の画像データを取得し、取得したそれぞれの画像データでの前記高分子材料の分子鎖または原子の明確程度が許容範囲である前記試料の架橋密度および厚さのそれぞれの範囲を、その高分子材料の架橋密度基準範囲、厚さ基準範囲として予め設定しておき、その高分子材料の観察用検体を作製する際には、その高分子材料を前記架橋密度基準範囲の弱架橋状態にして、その弱架橋状態の高分子材料を前記厚さ基準範囲の厚さにスライスすることを特徴とする。
【0007】
上記の目的を達成する本発明の高分子材料の観察方法は、所定の架橋状態の高分子材料を薄肉にスライスした観察用検体の画像データを、走査型透過電子顕微鏡を用いて取得する高分子材料の観察方法において、前記高分子材料を、架橋密度が予め設定された架橋密度基準範囲の弱架橋状態にするとともに、1nm以上50nm以下の厚さにスライスして前記観察用検体として使用し、前記走査型透過電子顕微鏡を用いて取得した前記観察用検体の前記画像データでの前記高分子材料の分子鎖または原子の状態を観察することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子材料の観察用検体の作製方法によれば、その高分子材料の観察用検体を作製する際には、その高分子材料を予め設定された前記架橋密度基準範囲の弱架橋状態にして、その弱架橋状態の高分子材料を予め設定された前記厚さの基準範囲の厚さにスライスするので、走査型透過電子顕微鏡を用いて取得した前記観察用検体の前記画像データでは前記高分子材料の分子鎖または原子の状態が視認可能になる。その結果、この分子鎖または原子の状態を直接的に観察して把握するには有利になる。
【0009】
本発明の高分子材料の観察方法によれば、前記高分子材料を、架橋密度が予め設定された架橋密度基準範囲の弱架橋状態で、かつ、1nm以上50nm以下の超薄肉にスライスして前記観察用検体として使用する。そのため、走査型透過電子顕微鏡を用いて取得した前記観察用検体の前記画像データでは、前記高分子材料の分子鎖または原子の状態が視認可能になり、この分子鎖または原子の状態を直接的に観察して把握するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】観察システムを例示する説明図である。
図2】走査型透過電子顕微鏡を例示する説明図である。
図3】高分子材料の観察用検体の作製方法の実施形態の手順を例示するフロー図である。
図4】高分子材料の観察方法の実施形態の手順を例示するフロー図である。
図5】暗視野像データを例示する説明図である。
図6】暗視野像データを例示する説明図である。
図7】明視野像データを例示する説明図である。
図8】モデルデータを例示する説明図である。
図9】暗視野像データから生成された画像データを例示する説明図である。
図10】明視野像データから生成された画像データを例示する説明図である。
図11】暗視野像データから生成された画像データを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の高分子材料の観察用検体の作製方法および高分子材料の観察方法を、図に示す実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に例示する観察システム1は、ゴムやエラストマなどの高分子材料の観察方法の実施形態を実施するために使用される。この観察方法では、走査型透過電子顕微鏡2(以下、顕微鏡2という)により取得した画像データD1を用いて、高分子材料の観察用検体10(以下、検体10という)の分子鎖や原子を直接的に観察する。この観察方法には、高分子材料の観察用検体の作製方法の実施形態により作製された検体10を使用することができる。
【0013】
まず、観察システム1の詳細について説明する。
【0014】
観察システム1は、顕微鏡2および演算装置3を備えている。演算装置3は公知の種々のコンピュータを用いることができる。演算装置3は、中央演算処理部(CPU)、主記憶部(メモリ)、補助記憶部(例えば、HDD)、入力部(キーボード、マウス)、および、出力部(ディスプレイ)を有している。演算装置3の補助記憶部には、走査型透過電子顕微鏡2を用いて取得した画像データD1と像シミュレータ(画像データD1を生成する像シミュレーションを実行するプログラム)D2とが記憶される。
【0015】
図2に例示する顕微鏡2は、検体10に電子線を照射し、透過した電子線の強弱から検体10の内部の電子透過率の空間分布が観測可能な暗視野像(HAADF-STEM像、LAADF-STEM像)データD1a、明視野像(BF-STEM像)データD1bを取得する。演算装置3による像シミュレータD2の実行により顕微鏡2が取得した暗視野像データD1a、明視野像データD1bから画像データD1が生成されて、生成された画像データD1が演算装置3の補助記憶部に記憶される。
【0016】
顕微鏡2は、公知の種々の走査型透過電子顕微鏡を用いることができるが、球面収差補正装置6が組み込まれたものが好ましい。具体的に顕微鏡2は、電子銃4、コンデンサーレンズ5、球面収差補正装置(凹レンズ)6、対物レンズ(凸レンズ)7、および、検出器8(DF検出器8aおよびBF検出器8b)を有している。顕微鏡2が球面収差補正装置6を有することにより、分解能をより小さくでき、単原子レベルでの構造の特定や元素の識別の精度向上には有利になる。
【0017】
検出器8は、DF(暗視野)検出器8aとBF(明視野)検出器8bとで構成されていて、検出器8により暗視野像データD1aと明視野像データD1bとが取得される。検出器8は、DF検出器8aとBF検出器8bとのどちらか一方の検出器のみで構成されてもよい。DF検出器8aとBF検出器8bとの両方で検出器8が構成されることにより、暗視野像データD1aと明視野像データD1bとの両方のデータを同時に取得することが可能になる。
【0018】
DF検出器8aは上面視で円環形状であり、高角度に散乱された電子を検出する。DF検出器8aの取り込み角(検出可能な電子の散乱角)は、例えば、20mrad超200mrad以下である。DF検出器8aは、大小二つの円環形状の検出器で構成することもでき、この場合は大径の検出器が小径の検出器よりも上方に配置される。上方に配置された大径の検出器の取り込み角は例えば90mrad超200mrad以下、下方に配置された小径の検出器の取り込み角は例えば20mrad超90mrad以下である。
【0019】
BF検出器8bは上面視で円盤形状であり、検体10を透過した電子や小角度に散乱した電子を検出する。BF検出器8bの取り込み角は、例えば20mrad以下である。BF検出器8bは、上面視で円環形状の検出器と上面視で円盤形状の検出器との二つの検出器で構成することもでき、この場合は円環形状の検出器の取り込み角が例えば10mrad超20mrad以下、円盤形状の検出器の取り込み角が例えば10mrad以下である。
【0020】
次に、検体10の作製方法の詳細について説明する。
【0021】
図3は検体10の作製方法の手順の一例を示す。この作製方法では、高分子材料を予め設定した架橋密度基準範囲の弱架橋状態にして(S110)、その弱架橋状態の高分子材料を予め設定した厚さ基準範囲の厚さにスライスする(S120)。スライスされた超薄肉片が検体10になる。以下に、各ステップ(S110、S120)の内容を詳述する。
【0022】
ステップ(S110)では、予め設定した架橋密度基準範囲の弱架橋状態にした高分子材料を作製する。架橋密度基準範囲については後述する。そこで、高分子材料に必要な原材料を混合する混合工程およびその混合工程を経た未架橋の高分子材料を架橋する架橋工程を含む公知の工程を行って弱架橋状態の高分子材料を得る。
【0023】
検体10の原材料となるゴム成分(ポリマー)としては、架橋剤(加硫剤)により架橋可能なゴム成分であればよく、天然ゴム(NR)、あるいは、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)などの合成ゴムが例示される。架橋剤としては、ポリマーの分子鎖どうしを架橋可能であればよく、硫黄やパーオキサイドなどの有機過酸化物が例示される。検体10の原材料には、架橋剤以外の添加剤として、例えば、架橋促進剤(加硫促進剤)、充填剤(シリカやカーボンブラックなど)、老化防止剤、難燃剤、補強材、および、着色剤などが配合されていてもよい。
【0024】
弱架橋状態とは、通常仕様の高分子材料の架橋状態よりも架橋程度が弱い状態(低架橋密度状態)である。架橋程度は、例えば架橋密度の値に基づいて判断することができ、弱架橋状態では通常仕様の架橋状態に比して架橋密度の値が小さくなる。このステップ(S110)では、架橋密度が架橋密度基準範囲になるように原材料の配合量、混合工程や架橋工程の条件を適宜設定して弱架橋状態の高分子材料を作製すればよい。通常仕様の高分子材料を製造する場合と製造条件(混合工程および架橋工程の条件)を同じにして、通常仕様の場合に比して架橋剤の配合量を減らすことで簡便に弱架橋状態を実現することができる。弱架橋状態といえる架橋密度の範囲は、高分子材料の種類によって多少異なるが、例えば1.0×10-6mol/cm~1.0×10-4mol/cmを包含して、この範囲よりも若干広い範囲である。
【0025】
作製した高分子材料が予め設定した架橋密度基準範囲の弱架橋状態であるか否かを確認するには、作製したその高分子材料の架橋密度を測定し、その測定結果が架橋密度基準範囲を満足しているかを判定する。架橋密度の測定方法は、修正Flory-Rehenerを用いた平衡潤滑法やFloryの論理式を用いた膨潤圧縮法などの公知の測定方法を用いることができる。架橋密度を測定する際には、作製した高分子材料の複数の部位を採取して、それぞれの部位の架橋密度の代表値(平均値、中央値など)を架橋密度として用いる。それぞれの部位を採取する際には、後述する画像データD1を取得する場合よりも顕微鏡2の倍率を低倍率にすることで広域の範囲で代表的な架橋状態を呈している位置から採取するとよい。これにより、この高分子材料の中で明らかに異質な架橋状態の部位を排除する。
【0026】
次のステップ(S120)では、予め設定した架橋密度基準範囲の弱架橋状態の高分子材料を予め設定した厚さ基準範囲の厚さにスライスする。厚さ基準範囲については後述する。このスライスには、例えば公知のウルトラミクロトームを用いる。
【0027】
上述した架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲は、予め試験をすることで把握しておく。この試験は、高分子材料の種類毎に行うこともできるが、同種の高分子材料であれば代表的な1種類に対して行い、その試験結果を同類の高分子材料に適用すればよい。例えば、主ポリマー種が同じゴムや主ポリマー種が同じ樹脂では、その同種中の代表的な1種類に対してこの試験を行う。或いは、異なる複数種類の高分子材料について行った試験結果から、大多数の種類の高分子材料を網羅して適用できる架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲を設定してもよい。
【0028】
架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲を設定する試験では、試験対象となる高分子材料を、架橋密度を複数種類に異ならせた弱架橋状態にして作製し、その厚さを複数種類に異ならせてスライスして試料10Aを作製する。次いで、顕微鏡2によって、所定の同一設定下(加速電圧、倍率など)で、それぞれの試料10Aの画像データD1を取得する。次いで、取得したそれぞれの画像データD1での高分子材料の分子鎖または原子の明確程度が許容範囲である試料10Aの架橋密度および厚さのそれぞれの範囲を、架橋密度基準範囲、厚さ基準範囲として予め設定する。尚、この架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲を設定するための試験は、後述する図4に例示する観察方法の手順と同様の工程である。
【0029】
画像データD1での高分子材料の分子鎖または原子の明確程度とは、それらの状態の視認性に影響を及ぼす分子鎖または原子の明確さ度合い(観察に対する適正度合い)である。顕微鏡2によって取得した画像データD1(暗視野像データD1aや明視野像データD1bの像データ)には、高分子材料の分子鎖や原子がそれぞれを構成する原子の相違を示すコントラスト(明暗の差)で表される。
【0030】
画像データD1では、試料10Aの分子鎖の密集度が高いと分子鎖や原子によるコントラストがより不鮮明になり、分子鎖の密集度が低いとこのコントラストがより鮮明になる。そして、画像データD1では、試料10Aの厚さが大きいほど、分子鎖の密集度が高くなる。したがって、試料10Aの架橋密度が高いほど、そして、厚さが大きいほど、画像データD1での分子鎖や原子の明確程度は低くなるので観察には不適切になる。一方、試料10Aの架橋密度が低いほど、そして、厚さが小さいほど、画像データD1での分子鎖や原子の明確程度は高くなるので観察に適している。
【0031】
架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲は、前述した試験結果に基づいて適切に設定すればよく、画像データD1でのコントラストが不鮮明になるものが除外されるように設定する。したがって、この明確程度が許容範囲である場合は、高分子材料の分子鎖の密集度が適度に低く、画像データD1でのコントラストが鮮明になる。通常の架橋済みの高分子材料(通常仕様の架橋状態の高分子材料)から作製した試料10Aでは、強い架橋状態になっているので高分子材料の分子鎖の密集度が高く、画像データD1での観察には適していない。
【0032】
ただし、試料10Aの架橋密度が低すぎると(未架橋状態に近いと)、分子構造が弱いのでスライスした際に損傷し易く、これに伴い、観察に適した検体10を得ることができない。また、検体10が薄すぎても欠損が生じて観察に適した検体10を得ることができない。したがって、検体10が適度な弱架橋状態で、かつ、適度な厚さになるように、架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲を設定する。
【0033】
高分子材料の種類によって最適な架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲は多少異なるが、試験結果を考慮すると下記の範囲であれば、殆どの種類の高分子材料に対して有効であると考えられる。そこで、架橋密度基準範囲は、1.0×10-6mol/cm以上1.0×10-4mol/cm以下が好ましい。厚さ基準範囲は、1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上20nm以下がより好ましい。
【0034】
高分子材料の架橋密度は、混合工程や架橋工程(加硫工程)などの製造条件が影響するが、それらの製造条件を同一条件下とした場合、架橋剤の配合量による影響が大きい。そこで、架橋密度基準範囲の弱架橋状態の検体10を作製する際には、未架橋の高分子材料のポリマー100質量部に対して、架橋剤を0.1質量部以上2質量部以下、より好ましくは、0.2質量部以上1質量部以下配合して、混合工程、架橋工程を行うとよい。
【0035】
上述した架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲を設定する試験の結果では、試料10Aでの充填剤の配合量が増えると、画像データD1での高分子材料の分子鎖や原子によるコントラストが不鮮明になるという知見が得られた。充填剤を構成する原子は、ゴム成分や添加剤の中から充填剤を除いた残りの添加剤を構成する原子と比較してより重い。それ故、高分子材料での充填剤の配合量が増えると、その分子鎖や原子によるコントラストが充填剤の原子のコントラストに埋もれてしまう。そこで、検体10を作製する際には、未架橋の高分子材料のポリマー100質量部に対して、充填剤の配合量は20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。このように、充填剤の配合量を制限することで、画像データD1での高分子材料の分子鎖や原子によるコントラストが鮮明になり、観察に適した検体10を得るには有利になる。
【0036】
次に、高分子材料の観察方法について説明する。
【0037】
図4は観察方法の実施形態の手順の一例を示している。この観察方法では、上記した手順で作製された検体10を使用する。尚、検体10の厚さは殆どの種類の高分子材料に対して有効であると思われる1nm以上50nm以下にすればよい。即ち、この観察方法では、架橋密度が予め設定された架橋密度基準範囲の弱架橋状態の高分子材料を1nm以上50nm以下の厚さにスライスして検体10として使用する。
【0038】
この観察方法では、顕微鏡2を用いて検体10の画像データD1を取得する(S210、S220)。次いで、取得した画像データD1を用いて高分子材料の分子鎖と原子の状態を観察する(S230)。以下に、各ステップ(S210~S230)の内容について詳述するが、これらのステップは、検体10の架橋密度基準範囲および厚さ基準範囲を設定するための上述した試験と同様であり、基本的には顕微鏡2をこの試験の場合と同じ設定(加速電圧、倍率など)にしてそれぞれの検体10の画像データD1を取得する。
【0039】
ステップ(S210)では、検体10を顕微鏡2にセットして検体10の暗視野像データD1a、明視野像データD1bを顕微鏡2により取得する。顕微鏡2は、暗視野像データD1aと明視野像データD1bの両方の像データを取得してもよく、いずれか一方の像データを取得してもよい。顕微鏡2が、暗視野像データD1aと明視野像データD1bの両方の像を取得することにより、それぞれの像を比較することが可能になる。
【0040】
図5に例示する暗視野像データD1aは、HAADF-STEM像(高角散乱環状暗視野像)である。DF検出器8aの取り込み角は90mrad以上170mrad以下である。
【0041】
図6に例示する暗視野像データD1aは、LAADF-STEM像(低角散乱環状暗視野像)である。DF検出器8aの取り込み角は40mrad以上90mrad以下である。
【0042】
図7に例示する明視野像データD1bは、BF-STEM像である。BF検出器8bの取り込み角は23mrad以下である。
【0043】
それぞれの像データでは、コントラスト(明暗の差)が比較的大きく、点状の箇所が高分子材料の原子を表している。また、コントラストが比較的小さく、線状の箇所が高分子材料の分子鎖を示している。
【0044】
ステップ(S220)では、像シミュレータD2の実行により、演算装置3による像シミュレーションを用いて、取得した暗視野像データD1a、明視野像データD1bから画像データD1を生成するデータ処理が実行される。像シミュレータD2は、公知の種々の像シミュレーションを演算装置3に実行させるプログラムであり、画像データD1の生成に使用されている。像シミュレーションとしては、マルチスライス法、Bloch波法、Bethe法などの公知の種々の手法を用いたシミュレーションが例示される。生成された画像データD1は、像シミュレーションにより、暗視野像データD1a、明視野像データD1bでの高分子材料の分子鎖や原子が特定されていて、それぞれのコントラストが像データに比してより鮮明になっている。
【0045】
像シミュレーションの一例の手順を説明する。この像シミュレーションでは、まず、分子動力学シミュレーションを用いて検体10の凝集構造を示すモデルデータD3を生成する。次いで、生成したモデルデータD3での高分子材料の分子鎖や原子の分散状態とそれぞれの透過波や回析波の強度とを算出する。次いで、算出した分散状態および強度と画像データD1でのコントラストとを比較する。この比較により、暗視野像データD1a、明視野像データD1bでの高分子材料の分子鎖や原子を分散状態に基づいて特定し、特定した高分子材料の分子鎖や原子のコントラストを強度に基づいてシミュレーションした画像データD1を生成する。分子動力学シミュレーションには、入力パラメータとして、検体10の状態を示す種々のパラメータ、例えば、検体10の原材料(ゴム成分や添加剤)の配合量、製造条件(混合条件や架橋条件)、検体10の架橋密度や厚さなどが入力される。
【0046】
図8は、像シミュレーションに用いたモデルデータD3の一例の一部を拡大した拡大図を示す。この拡大図には、線状の高分子材料の分子鎖や点状の原子が存在している。このモデルデータD3は、検体10での高分子材料の分子鎖や原子の凝集構造を概ね示している。即ち、モデルデータD3が示す凝集構造は、実際の検体10での凝集構造と見做すことができる。顕微鏡2で取得した暗視野像データD1a、明視野像データD1bでの分子鎖や原子によるコントラストは、架橋材料の凝集構造における原子の数や原子番号に単純に依存しない場合がある。したがって、よりミクロなスケールでの観察には、像シミュレータD2を用いた像シミュレーションにより画像データD1を生成することが好ましい。
【0047】
図9は、暗視野像データD1aから生成された画像データD1の一例を示す。図9に例示する画像データD1では、高分子材料の分子鎖や原子が白色で表されていて、それらの高分子材料の分子鎖や原子(図9中のZnやS)のコントラストが暗視野像データD1aに比してより鮮明になっていることが分かる。
【0048】
図10は、明視野像データD1bから生成された画像データD1の一例を示す。図10に例示する画像データD1では、高分子材料の分子鎖や原子が黒色で表されていて、それらの高分子材料の分子鎖や原子(図10中のZnやS)のコントラストが明視野像データD1bに比してより鮮明になっていることが分かる。
【0049】
ステップ(S220)では、演算装置3により画像データD1でのコントラストに基づいて画像データD1での検体10の厚さを算出するデータ処理が実行する。この厚さを算出する手法としては、公知のスルーフォーカス法を用いることができる。上述した図9および図10では、画像データD1での検体10の厚さが、4nmである。
【0050】
ステップ(S230)では、画像データD1を用いて、画像データD1に存在する高分子材料の分子鎖や原子の状態を目視にて観察する。上述した図9図10に例示したとおり、画像データD1では、高分子材料の分子鎖や原子によるコントラストが鮮明なので、高分子材料の分子鎖や原子の状態を視認することが可能になる。
【0051】
図11は、暗視野像データD1bから生成された画像データD1の一例を示す。この図11に例示する画像データD1での検体10の厚さは1nmである。図11に例示する画像データD1は、上述した図9に例示した厚さが4nmの検体10の画像データD1に比して、高分子材料の分子鎖や原子によるコントラストがより鮮明になっている。このように、画像データD1の検体10の厚さが小さいほど、観察には適している。
【0052】
上述したように、検体10の作製方法の実施形態によれば、作製した検体10は架橋密度基準範囲の弱架橋状態、かつ、厚さ基準範囲の厚さなので顕微鏡2を用いて取得した画像データD1では高分子材料の分子鎖または原子の状態が視認可能になる。その結果、この分子鎖または原子の状態を画像データD1で直接的に観察して把握するには有利になる。
【0053】
そして、上述した観察方法の実施形態によれば、高分子材料を架橋密度が予め設定された架橋密度基準範囲である弱架橋状態で、かつ、1nm以上50nm以下の超薄肉にスライスして検体10として使用する。そのため、顕微鏡2を用いて取得した検体10の画像データD1では、高分子材料の分子鎖または原子の状態が視認可能になり、この分子鎖または原子の状態を直接的に観察して把握するには有利になる。
【0054】
従来の高分子材料の観察には、通常の加硫ゴム(架橋程度が強くて弱架橋状態ではない)を、例えば、100nm程度の厚さにスライスした薄肉片を検体として使用していた。強い架橋状態の検体では、分子鎖の密集度が高く、また、100nm程度の厚さでは、厚さ方向での分子鎖の重なり合う度合いが高い。したがって、従来の検体の画像データD1は、高分子材料の分子鎖や原子の状態を直接的に観察するには適していない。
【0055】
既述した実施形態では、硫黄加硫や無硫黄加硫(パーオキサイド加硫)などの架橋剤を用いた化学架橋した高分子材料の検体10を用いているが、検体10には、水素結合などの物理架橋した高分子材料(無水マレイン酸変性ポリプロピレンなど)も用いることができる。物理架橋した高分子材料では、アルキルアルコール類を適宜添加することによりポリマー間の水素結合作用を低下させてその架橋密度を予め設定された架橋密度基準範囲である弱架橋状態にする。物理架橋した高分子材料では、弱架橋状態で、かつ、厚さ基準範囲(1nm以上50nm以下)を満足する超薄肉の検体10であれば顕微鏡2により取得した画像データD1で高分子材料の分子鎖や原子の状態を視認することが可能になる。
【0056】
顕微鏡2は、検体10を撮影して暗視野像データD1a、明視野像データD1bとして二次元像データを取得可能であればよいが、それらの像データとして三次元像データを取得してもよい。
【0057】
像シミュレータD2が実行する像シミュレーションには、モデルデータD3の代わりにエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて得られた測定結果を用いることもできる。このように、像シミュレーションは特に限定されるものではない。
【0058】
本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例0059】
原材料(ポリマーと添加剤)の種類およびその配合量が異なる10種類の検体サンプル(比較例1、2、実施例1~8)を用いて、図1図2に例示する観察システムと同様のシステムを用いて、以下の手順によって高分子材料の分子鎖と原子の状態を観察し、その結果を下記の表1に示す。表1では、添加剤の配合量を、ポリマー100質量部に対する質量部として示している。
【0060】
【表1】
【0061】
作製したそれぞれの検体サンプルは、液体窒素を用いて低温冷却してガラス転移温度以下に固化してからウルトラミクロトームにより超薄肉片に作製した。走査型透過電子顕微鏡の設定を加速電圧200〔kV〕、倍率2000万倍とし、それぞれの検体サンプルの暗視野像データD1a、明視野像データD1bを撮影した。DF検出器の取り込み角は40mrad超90mrad以下とし、BF検出器の取り込み角は14mrad以下とした。
【0062】
次いで、演算装置により像シミュレーションを用いて画像データD1を生成した。像シミュレーションでは、分子動力学シミュレーションを用いて検体10の凝集構造を示すモデルデータD3を用いて、マルチスライス法などにより画像データD1をシミュレーションした。
【0063】
表1に示す架橋密度は、公知の平衡潤滑法を用いて測定した結果である。
【0064】
実施例1~実施例8のそれぞれの画像データD1では、高分子材料の分子鎖や原子の状態を視認することができた。未加硫ゴムである比較例1では、観察可能な検体サンプルを作製することができないため画像データを取得できなかった。比較例2では、取得した画像データで高分子材料の分子鎖や原子の状態を視認できなかった。
【0065】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明(1):所定の架橋状態の高分子材料を薄肉にスライスして走査型透過電子顕微鏡による観察用検体にする高分子材料の観察用検体の作製方法において、
架橋密度を複数種類に異ならせて弱架橋状態にした前記高分子材料について、厚さを複数種類に異ならせてスライスした試料を作製し、
前記走査型透過電子顕微鏡によって、所定の同一設定下で、それぞれの前記試料の画像データを取得し、取得したそれぞれの画像データでの前記高分子材料の分子鎖または原子の明確程度が許容範囲である前記試料の架橋密度および厚さのそれぞれの範囲を、その高分子材料の架橋密度基準範囲、厚さ基準範囲として予め設定しておき、
その高分子材料の観察用検体を作製する際には、その高分子材料を前記架橋密度基準範囲の弱架橋状態にして、その弱架橋状態の高分子材料を前記厚さ基準範囲の厚さにスライスする高分子材料の観察用検体の作製方法。
発明(2):前記厚さ基準範囲が1nm以上50nm以下である発明(1)に記載の高分子材料の観察用検体の作製方法。
発明(3):前記架橋密度基準範囲が1.0×10-6mol/cm以上1.0×10-4mol/cm以下である発明(1)または(2)に記載の高分子材料の観察用検体の作製方法。
発明(4):前記観察用検体を作製する際には、未架橋の前記高分子材料のポリマー100質量部に対して架橋剤を0.1質量部以上2質量部以下配合することにより、前記高分子材料を前記架橋密度範囲の弱架橋状態にする発明(1)~(3)のいずれか一つに記載の高分子材料の観察用検体の作製方法。
発明(5):所定の架橋状態の高分子材料を薄肉にスライスした観察用検体の画像データを、走査型透過電子顕微鏡を用いて取得する高分子材料の観察方法において、
前記高分子材料を、架橋密度が予め設定された架橋密度基準範囲の弱架橋状態にするとともに、1nm以上50nm以下の厚さにスライスして前記観察用検体として使用し、前記走査型透過電子顕微鏡を用いて取得した前記観察用検体の前記画像データでの前記高分子材料の分子鎖または原子の状態を観察する高分子材料の観察方法。
発明(6):前記走査型透過電子顕微鏡を用いて、前記観察用検体の暗視野像データおよび明視野像データのうちの少なくとも一方の像データを撮像して、撮像した前記像データを演算装置による像シミュレーションを用いてデータ処理することにより前記画像データとして生成する発明(5)に記載の高分子材料の観察方法。
発明(7):前記画像データのコントラストに基づいて前記演算装置により前記観察用検体の厚さを算出するデータ処理を行う発明(5)または(6)に記載の高分子材料の観察方法。
【符号の説明】
【0066】
1 観察システム
2 走査型透過電子顕微鏡
3 演算装置
10 観察用検体
10A 試料
D1a 暗視野像データ
D1b 明視野像データ
D1 画像データ
D2 像シミュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11