(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156334
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】復水器状態予測装置
(51)【国際特許分類】
F01D 21/00 20060101AFI20241029BHJP
F01K 9/00 20060101ALI20241029BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
F01D21/00 W
F01K9/00 Z
F01D25/00 V
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070708
(22)【出願日】2023-04-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「2020年度~2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/石炭火力の負荷変動対応技術開発/タービン発電設備次世代保守技術開発」」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 純夫
(72)【発明者】
【氏名】新屋 大悟
(72)【発明者】
【氏名】津田 将太
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 丈宏
(72)【発明者】
【氏名】岩田 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】根本 晃
(72)【発明者】
【氏名】吉村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】毛塚 孝明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 司
(72)【発明者】
【氏名】竹山 嘉一
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071BA22
3G071BA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】運転条件に基づく復水器の性能や管の減肉に関する状態予測情報を認識することができる復水器状態予測装置を提供する。
【解決手段】実施形態の復水器状態予測装置は、測定された測定情報または入力された入力情報に基づいて予測された復水器の性能を示す性能情報を表示部に表示させる画面表示情報300、および入力情報に基づいて予測された復水器の管の肉厚の残存割合を示す残肉情報を表示部に表示させる画面表示情報の少なくとも一方を生成する表示情報生成部を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定された測定情報または入力された入力情報に基づいて予測された復水器の性能を示す性能情報を表示部に表示させる第1の画面表示情報、および前記入力情報に基づいて予測された前記復水器の管の肉厚の残存割合を示す残肉情報を表示部に表示させる第2の画面表示情報の少なくとも一方を生成する表示情報生成部を備える復水器状態予測装置。
【請求項2】
前記性能情報は、前記復水器の清浄度、器内圧力および熱貫流率の寄与率の少なくとも1以上を含むことを特徴とする請求項1記載の復水器状態予測装置。
【請求項3】
前記第1の画面表示情報は、第1の計算条件に基づいて算出された前記性能情報を示す第1の算出データと、前記第1の計算条件とは異なる第2の計算条件に基づいて算出された前記性能情報を示す第2の算出データとを含むことを特徴とする請求項1記載の復水器状態予測装置。
【請求項4】
前記第2の画面表示情報は、前記入力情報に基づいて予測された前記残肉情報を示す第1の算出データと、前記入力情報とは異なる入力された情報に基づいて予測された前記残肉情報を示す第2の算出データとを含むことを特徴とする請求項1記載の復水器状態予測装置。
【請求項5】
前記第2の計算条件は、最新の計算条件からなり、前記第1の計算条件は、前記第2の計算条件に基づく算出結果よりも前に設定された計算条件からなることを特徴とする請求項3記載の復水器状態予測装置。
【請求項6】
前記復水器の管へ入水する冷却水の冷却水入口温度および前記復水器の管から排出される冷却水の冷却水出口温度、および前記復水器の積算運転時間の少なくとも一方を取得する計測データ取得部と、
前記冷却水入口温度および前記冷却水出口温度に基づく前記性能情報の算出、および前記復水器の積算運転時間に基づく前記残肉情報の算出の少なくとも一方を実行する演算部と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の復水器状態予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、復水器状態予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン設備に備えられる復水器として、表面復水器がある。この表面復水器は、冷却水を流す複数の管を備える。そして、タービンから排出された蒸気は、これらの管に接触することで冷却される。なお、以下、表面復水器を単に復水器と称する。
【0003】
復水器では、蒸気を冷却するために、大量の冷却水が使用される。そのため、冷却水として、一般的に海水、湖水、河川水などが使用される。その中でも海水は、多くの設備で利用されている。
【0004】
復水器の管の内面は、冷却水に含まれる物質によって腐食するとともに汚れる。管の内面の腐食によって、管の肉厚は減少(減肉)する。また、管の内面の汚れによって、熱貫流率が低下して、復水器の性能が低下する。管の肉厚の減少や復水器の性能の低下は、経年とともに進行する。
【0005】
従来、復水器の管の減肉の進行は、蒸気タービン設備の運転を停止して実施する定期検査において知ることができる。一方、定期検査によって復水器の管の減肉が限界値を超えることが判明した場合でも、一般に復水器の補修や部品の調達には時間がかかるため、蒸気タービン設備の運転を長期間停止しなければならない。また、復水器の管の交換に伴う性能の変化については、復水器を稼働させなければ把握できない。そのため、従来、復水器の性能や状態に及ぼす補修の影響を予測することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-135759号公報
【特許文献2】特開2004-145496号公報
【特許文献3】特開2019-79275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来において、復水器の減肉の進行は、運転停止を伴う検査でなければ知ることができない。また、検査の結果として復水器を補修した場合においても、性能や状態の変化を予測することは困難である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、運転条件に基づく復水器の性能や管の減肉などに関する状態予測情報を認識することができる復水器状態予測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の復水器状態予測装置は、測定された測定情報または入力された入力情報に基づいて予測された復水器の性能を示す性能情報を表示部に表示させる第1の画面表示情報、および入力情報に基づいて予測された復水器の管の肉厚の残存割合を示す残肉情報を表示部に表示させる第2の画面表示情報の少なくとも一方を生成する表示情報生成部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態の復水器状態予測装置を備えた蒸気タービン設備の構成を示す系統図である。
【
図2】実施の形態の復水器状態予測装置が対象とする復水器の構成を示す正面図である。
【
図3】実施の形態の復水器状態予測装置が対象とする復水器の構成を示す側面図である。
【
図4】実施の形態の復水器状態予測装置が対象とする復水器の構成を示す側面図である。
【
図5】実施の形態の復水器状態予測装置が対象とする復水器の管群の断面を示す模式図である。
【
図6】実施の形態の復水器状態予測装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態の復水器状態予測装置が生成する画面表示情報の例を示す図である。
【
図8】実施の形態の復水器状態予測装置が生成する画面表示情報の例を示す図である。
【
図9】実施の形態の復水器状態予測装置が生成する画面表示情報の他の例を示す図である。
【
図10】実施の形態の復水器状態予測装置が生成する画面表示情報の他の例を示す図である。
【
図11】実施の形態の復水器状態予測装置の演算部の動作を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態の復水器状態予測装置の演算部の動作を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態の復水器状態予測装置の全体動作を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態の復水器状態予測装置が入力を受けるための画面表示情報の例を示す図である。
【
図15】実施の形態の復水器状態予測装置が入力を受けるための画面表示情報の例を示す図である。
【
図16】実施の形態の復水器状態予測装置が入力を受けるための画面表示情報の例を示す図である。
【
図17】実施の形態の復水器状態予測装置が入力を受けるための画面表示情報の例を示す図である。
【
図18】実施の形態の復水器状態予測装置が入力を受けるための画面表示情報の例を示す図である。
【
図19】実施の形態の復水器状態予測装置の基本仕様データの例を示す図である。
【
図20】実施の形態の復水器状態予測装置が入力を受けるための画面表示情報の例を示す図である。
【
図21】実施の形態の復水器状態予測装置の点検履歴の例を示す図である。
【
図22】実施の形態の復水器状態予測装置が入力を受けるための画面表示情報の例を示す図である。
【
図23】実施の形態の復水器状態予測装置の算出結果の例を示す図である。
【
図24】実施の形態の復水器状態予測装置の算出結果の画面表示情報の例を示す図である。
【
図25】実施の形態の復水器状態予測装置のユーザの操作例を示すフローチャートである。
【
図26A】実施の形態の復水器状態予測装置が生成する残肉率を示す画面表示情報の例を示す図である。
【
図26B】実施の形態の復水器状態予測装置が生成する残肉率を示す画面表示情報の例を示す図である。
【
図26C】実施の形態の復水器状態予測装置が生成する熱貫流率の寄与率などを示す画面表示情報の例を示す図である。
【
図26D】実施の形態の復水器状態予測装置が生成する熱貫流率の寄与率などを示す画面表示情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、実施の形態の復水器状態予測装置18を備えた蒸気タービン設備1の構成を模式的に示す系統図である。
図1に示すように、蒸気タービン設備1は、ボイラ10と、高圧タービン11と、再熱器12と、中圧タービン13と、低圧タービン14と、発電機15と、復水器16と、給水ポンプ17と、復水器状態予測装置18とを備える。ここで、復水器状態予測装置18において、復水器16は、性能と冷却水の管の減肉などの状態予測対象となる設備である。
【0013】
ボイラ10は、給水を加熱して蒸気を発生させ、その蒸気を主蒸気管20に導出する。高圧タービン11は、主蒸気管20から導入された蒸気によって回動され、その蒸気を低温再熱管21に排出する。再熱器12は、低温再熱管21から導入された蒸気を再熱して、その蒸気を高温再熱管22に導出する。
【0014】
中圧タービン13は、高温再熱管22から導入された蒸気によって回動され、その蒸気をクロスオーバー管23に排出する。低圧タービン14は、クロスオーバー管23から導入された蒸気によって回動され、その蒸気を排気管24に排出する。発電機15は、高圧タービン11、中圧タービン13および低圧タービン14により駆動されることによって発電を行う。
【0015】
復水器16は、排気管24から導入された蒸気を凝縮させて復水とする。給水ポンプ17は、復水器16の復水を給水として給水管25を介してボイラ10に供給する。なお、復水器16は、表面復水器である。復水器16の構成の詳細につては、後述する。
【0016】
復水器状態予測装置18は、復水器の性能および減肉の程度などを状態評価する演算装置である。復水器状態予測装置18は、例えばコンピュータ装置などにより実現することができる。
【0017】
蒸気タービン設備1は、復水器状態予測装置18が復水器16の状態評価とその管の減肉を予測するため、さらに冷却水温度検知器30および冷却水温度検知器31を備えている。冷却水温度検知器30は、復水器16の管に導入される冷却水の温度(冷却水入口温度)T1を検知する温度センサである。冷却水温度検知器30は、各管に導入される冷却水の温度を検知可能な部位に備えられる。冷却水温度検知器30は、複数備えられてもよい。冷却水温度検知器30は、例えば、後述するように、導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBに備えられてもよい。また、冷却水温度検知器30は、例えば、後述する復水器16に備えられる、冷却水を流す複数の管のそれぞれに備えられてもよい。
【0018】
冷却水温度検知器31は、復水器16から排出される冷却水の温度(冷却水出口温度)T2を検知する温度センサである。冷却水温度検知器31は、復水器16に備えられる管から排出される冷却水の温度を検知可能な部位に備えられる。冷却水温度検知器31は、複数備えられてもよい。冷却水温度検知器31は、例えば、後述するように、排出ボックス16BoutAの排出口16WoutAおよび排出ボックス16BoutBの排出口16WoutBに備えられてもよい。また、冷却水温度検知器31は、例えば、復水器16に備えられる各管に備えられてもよい。
【0019】
冷却水温度検知器30は、検知した冷却水入口温度T1を示す検知信号を復水器状態予測装置18に出力する。また、冷却水温度検知器31は、検知した冷却水出口温度T2を示す検知信号を復水器状態予測装置18に出力する。冷却水温度検知器30および冷却水温度検知器31は、例えば熱電対などで構成される。冷却水入口温度T1および冷却水出口温度T2は、冷却水温度検知器30および冷却水温度検知器31により測定される測定情報である。
【0020】
また、蒸気タービン設備1は、復水器状態予測装置18が復水器16の状態評価の予測演算のため、復水器16の復水器圧力Pを検知する復水器圧力検知器32を備えている。復水器圧力検知器32は、検知した復水器圧力Pを示す検知信号を、復水器状態予測装置18に出力する。
【0021】
ここで、
図2は、実施の形態の復水器状態予測装置18によって性能および減肉が予測される復水器16の構成を示す正面図である。
図3および
図4は、実施の形態の復水器状態予測装置18によって性能および減肉が予測される復水器16の構成を示す側面図である。
図2ないし
図4に示すように、復水器16は、略直方体形状の筐体16cavを有する。
【0022】
図2ないし
図4に示すように、筐体16cavは、その一方の側面に、冷却水が導入される導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBを備える。導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBは、それぞれ冷却水を導入する導入口16WinAおよび導入口16WinBを有する。導入口16WinAおよび導入口16WinBは、筐体16cavの下方側から冷却水を受ける。また、筐体16cavは、その他方の側面に、各管16Pから排出された冷却水が流入する排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBを備える。排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBは、それぞれ冷却水を排出する排出口16WoutAおよび排出口16WoutBを有する。排出口16WoutAおよび排出口16WoutBは、排出管16Woutを介して、例えば、筐体16cavの正面方向または背面方向に冷却水を排出する。筐体16cavは、その内部で導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBと、排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBとの間に略水平に配設された複数の管16Pを有する。
【0023】
図3および
図4に示すように、筐体16cavは、その内部が正面側と背面側とに区分され、複数の管16Pがそれぞれの区画領域に正面側のグループ16PAと背面側のグループ16PBとにグループ化(管群化)されている。導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBは、それぞれグループ16PAおよびグループ16PBに対応する。すなわち、導入ボックス16BinAに導入された冷却水は、グループ16PAの管16Pに送られる。同様に、導入ボックス16BinBに導入された冷却水は、グループ16PBの管16Pに送られる。
【0024】
排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBは、それぞれグループ16PAおよびグループ16PBに対応する。すなわち、グループ16PAの管16Pを通った冷却水は、排出ボックス16BoutAを介して排出口16WoutAから排出される。同様に、グループ16PBの管16Pを通った冷却水は、排出ボックス16BoutBを介して排出口16WoutBから排出される。
【0025】
導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBには、冷却水温度検知器30が備えられ、導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBの内の冷却水入口温度T1が検知される。なお、冷却水温度検知器30は、導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBそれぞれに少なくとも一つ備えられる。また、複数の冷却水温度検知器30が、導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBに備えられてもよい。冷却水温度検知器30は、導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBに代えて、導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBそれぞれに冷却水を供給する配管に備えられてもよい。
【0026】
排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBには、冷却水温度検知器31が備えられ、排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBの内の冷却水出口温度T2が検知される。なお、冷却水温度検知器31は、排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBそれぞれに少なくとも一つ備えられる。また、複数の冷却水温度検知器31が、排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBに備えられてもよい。冷却水温度検知器31は、排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBに代えて、排出口16WoutAおよび排出口16WoutBに備えられてもよい。また、冷却水温度検知器31は、排出口16WoutAおよび排出口16WoutBに代えて、排出口16WoutAおよび排出口16WoutBそれぞれからの冷却水を排出する排出管16Woutに備えられてもよい。
【0027】
図5は、実施の形態の復水器状態予測装置18によって性能および減肉が予測される
図2ないし
図4に示す復水器16の管16Pの長手方向に垂直な断面を示す模式図である。
図5は、筐体16cav内部に分割されたグループ16PAおよび16PBのうち一方を示している。復水器16は、冷却水を並行的に通水する複数の管16Pを、例えば水平方向に並べた構成を有している。
図5に示すように、復水器16の複数の管16Pは、複数のブロック(管群)に分割配置され管理される。
図5に示す例では、
図5の上方の管群16A1および16A2、同下方の管群16A6および16A7、管群16A1および16A2の間に配置された管群16A3,16A4,16A5、管群16A6および16A7の間に配置された管群16A8、16A9、16A10が示されている。
【0028】
導入ボックス16BinAから導入された冷却水は、グループ16PAの管16P内を通って蒸気16Sを冷却し、排出ボックス16BoutAに排出される。導入ボックス16BinBから導入された冷却水は、グループ16PBの管16P内を通って蒸気16Sを冷却し、排出ボックス16BoutBに排出される。冷却水温度検知器30は、例えば、導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBに導入される冷却水の温度を冷却水入口温度T1として検知する。
【0029】
ここで、導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBに、それぞれ一つの冷却水温度検知器30が備えられている場合には、それぞれの冷却水温度検知器30が検知した温度の算術平均値を冷却水入口温度T1とする。また、複数の冷却水温度検知器30が導入ボックス16BinAおよび導入ボックス16BinBそれぞれに備えられている場合には、複数の冷却水温度検知器30が検知した温度の算術平均値を冷却水入口温度T1とする。
【0030】
冷却水温度検知器31は、管16Pから排出される冷却水の温度を冷却水出口温度T2として検知する。ここで、排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBに、それぞれ一つの冷却水温度検知器31が備えられている場合には、それぞれの冷却水温度検知器31が検知した温度の算術平均値を冷却水出口温度T2とする。また、複数の冷却水温度検知器31が排出ボックス16BoutAおよび排出ボックス16BoutBそれぞれに備えられている場合には、複数の冷却水温度検知器31が検知した温度の算術平均値を冷却水出口温度T2とする。
【0031】
冷却水温度検知器31が、排出口16WoutAおよび排出口16WoutBそれぞれに備えられている場合も同様である。冷却水温度検知器31が検知した排出口16WoutAでの冷却水の温度と排出口16WoutBでの冷却水の温度の算術平均値を冷却水出口温度T2とする。排出口16Woutおよび排出口16WoutBそれぞれに複数の冷却水温度検知器31が備えられている場合も同様であり、複数の冷却水温度検知器31それぞれが検知した温度の算術平均値を冷却水出口温度T2とする。
【0032】
筐体16cavは、その上面に蒸気タービン設備1の排気管24と接続される蒸気導入口16Sinを有し、その底面に蒸気16Sが凝縮した水を排水する排水口16Coutを有する。排気管24から導入された蒸気16Sは、複数の管16Pの表面と接触して冷却され、凝縮して水となって筐体16cavの底部に溜められる。筐体16cavの底部に溜まった水は、排水口16Coutから排出される。
【0033】
次に、復水器状態予測装置18について説明する。
【0034】
図6は、実施の形態の復水器状態予測装置18の機能構成を示すブロック図である。
図6に示すように、復水器状態予測装置18は、計測データ取得部41と、演算部42と、ユーザインタフェース43と、記憶部44とを備える。復水器状態予測装置18は、例えばコンピュータ装置などにより実現することができる。
【0035】
計測データ取得部41は、冷却水温度検知器30から出力された冷却水入口温度T1を示す検知信号と、冷却水温度検知器31から出力された冷却水出口温度T2を示す検知信号とを取得するインターフェースである。計測データ取得部41は、所定の時間間隔(例えば1時間間隔)でこれらの検知信号を取得する。計測データ取得部41は、取得した冷却水入口温度T1を示す検知信号と冷却水出口温度T2を示す検知信号をそれぞれ温度情報に変換し、記憶部44に出力する。また、計測データ取得部41は、蒸気タービン設備1の積算運転時間を取得し、記憶部44に出力する。
【0036】
演算部42は、復水器の性能評価と管の減肉を予測する演算ブロックである。演算部42は、記憶部44から所定のプログラムを内部の記憶領域(図示せず)に読み込み、実行することで所定の機能を実現する。演算部42は、仕様演算部400、熱貫流率演算部410、減肉率演算部420および表示情報生成部430を有する。
【0037】
仕様演算部400は、管の内径、伝熱面積、流速など復水器16の基礎データを算出する演算ブロックである。熱貫流率演算部410は、復水器16の熱貫流率、清浄度、および復水器内圧力などを算出する演算ブロックである。減肉率演算部420は、復水器16の管16Pの減肉率、および残肉率などを算出する演算ブロックである。仕様演算部400、熱貫流率演算部410および減肉率演算部420は、算出した結果を記憶部44の演算結果記憶部470に出力する。表示情報生成部430は、各種演算部による演算結果および後述するテンプレート記憶部480に記憶された表示テンプレートに基づいて、ユーザインタフェース43を通じてユーザに提供する画面表示情報を生成する演算ブロックである。また、表示情報生成部430は、画面表示情報をユーザインタフェース43や表示情報記憶部490に出力する。
【0038】
画面表示情報は、ユーザインタフェース43としての表示部が表示可能な形式であればどのような形式でもよい。画面表示情報としては、例えば予めテンプレートを準備することが容易なhtml形式などが例示される。
【0039】
図7は、実施の形態の復水器状態予測装置18の表示情報生成部430が生成する画面表示情報の一例を示す。
図7に示す例では、画面表示情報300は、復水器状態予測結果330、状態予測結果概要340、復水器の管群配置
図350を含んでいる。復水器状態予測結果330は、復水器16の性能を示す性能情報として、清浄度332a、復水器内圧力334a、熱貫流率の寄与率336aを含むグループA(第1の算出データ)と、清浄度332b、復水器内圧力334b、熱貫流率の寄与率336bを含むグループB(第2の算出データ)の二つのグループを含んでいる。グループAにおいて、清浄度332a、復水器内圧力334aおよび熱貫流率の寄与率336aは、初期値(設計値)のデータに基づく予測値を示し、グループBにおいて、清浄度332b、復水器内圧力334および熱貫流率の寄与率336bは、新たに入力または取得された情報に基づき算出した予測値を示している。なお、復水器16の性能情報は、熱貫流率を含んでもよい。
【0040】
清浄度332a,332b、および復水器内圧力334a,334bは、それぞれ例えば半円グラフ状に表示され、予測された数値も併せて表示されている。
図7に示す例では、清浄度332a,332bを示す数値は、100分率で表した値が表示されている。熱貫流率の寄与率336a,336bは、復水器16の管のグループ16PAまたはグループ16PB全体の熱貫流率の平均値に対する管群ごとの熱貫流率の平均値の割合(寄与率)が、例えば棒グラフにより示されている。すなわち、棒グラフは、グループ内の管群ごとの熱貫流率の平均値を復水器16の管全体の熱貫流率の平均値で除して、100分率で表した値を熱貫流率の寄与率として示している。
【0041】
図7に示す例では、熱貫流率の寄与率が100%を超える管群の棒グラフは、着色(図中斜線部)にて表されている。このように、
図7に示す画面表示情報300の例では、熱貫流率の寄与率は、管群単位で棒グラフ状に表され、基準としての100%を超える場合と越えない場合とで色分け表示がなされている。
【0042】
状態予測結果概要340は、予測値を算出した基礎となるデータおよび予測結果の数値を表示内容として含んでいる。
【0043】
管群配置
図350は、管群の配置を模式的に表している。管群配置
図350は、復水器の管群の配置を表している。管群配置
図350は、筐体16cav内部に分割されたグループ16PAおよびグループ16PBのいずれかを選択的に表示可能に構成される。
【0044】
ここで、
図8は、実施の形態の復水器状態予測装置18の表示情報生成部430が生成する画面表示情報の他の例を示す。
図8に示す画面表示情報301の管群配置
図351の例では、熱貫流率の寄与率が100%を超えている管群を着色(図中斜線部)して示している。この場合、例えば、第2の算出データに基づいて、熱貫流率の寄与率が100%を超えている管群が着色(図中斜線部)される。このように、管群配置
図351は、棒グラフ状の表示と同様に、基準としての100%を超える場合と越えない場合とで色分け表示をなしてもよい。また、管群配置
図350のように、単に、管群の配置を表すものとして機能させてもよい。
【0045】
図9は、実施の形態の復水器状態予測装置18の表示情報生成部430が生成する画面表示情報の他の例を示す。
図9に示す例は、画面表示情報302として、管の残肉率360を表すものである。残肉率は、グループ内の管群ごとの初期値(設計値)における管の肉厚に対するグループ内の管群ごとの残存する管の肉厚の割合である。換言すると、残肉率は、減肉率に基づいて求められる残存する肉厚を管の初期値における肉厚で除して100分率で示した値である。
【0046】
図9に示す例においても、画面表示情報302は、グループA(第1の算出データ)およびグループB(第2の算出データ)を含んでおり、グループAは初期値(設計値)のデータに基づく残肉率362aを示し、グループBは新たに入力または取得された情報に基づき算出した予測値としての残肉率362bを示している。
図9に示す画面表示情報302においても、復水器16の管16Pの管群単位で残肉率を表示可能とされている。また、
図9に示す画面表示情報302においても、予測値を算出した基礎となるデータや演算結果を示す状態予測結果概要340が表示内容として含まれている。さらに、復水器の管群配置
図350が含まれている。
【0047】
図9に示す残肉率362aおよび残肉率362bは、初期状態(設計値)における管16Pの肉厚に対する、算出した減肉率に基づく残肉率の管群ごとの平均値を100分率で棒グラフ上に表した残肉情報である。棒グラフ表示の頂点の上方および下方には、管群中の残肉率の最大値および最小値を示すプロットが表されている。
図9に示す例では、残肉率の最大値を示す丸印のプロットと、残肉率の最小値を示す菱形印のプロットが表されている。また、
図9に示す例では、管の交換や管の閉止栓操作を推奨する残肉率の閾値として、所定の値を示す閾値線Cが示されている。
【0048】
図9において、管群配置
図350は、管群の配置を模式的に表している。管群配置
図350は、復水器の管群の配置を表している。管群配置
図350は、筐体16cav内部に分割されたグループ16PAおよびグループ16PBのいずれかを選択的に表示可能に構成される。
【0049】
ここで、
図10は、実施の形態の復水器状態予測装置18の表示情報生成部430が生成する画面表示情報の他の例を示す。
図10に示す画面表示情報303の管群配置
図352の例では、算出した減肉率に基づく残肉率362bが閾値線Cを上回っている管群を着色(図中斜線部)して示している。この場合、例えば、第2の算出データに基づいて、残肉率が閾値線Cを上回っている管群が着色(図中斜線部)される。この場合、残肉率が閾値線Cを下回った管群を着色してもよいし、上回った場合と下回った場合とで異なる着色をしてもよい。このように、管群配置
図352は、基準を下回る場合と越える場合とで色分け表示をなしてもよい。
【0050】
図7-
図10に示すように、画面表示情報300、301、302、303は、さらに、熱貫流率表示ボタン310、残肉率表示ボタン312、演算開始ボタン314および点検履歴ボタン316を含んでいる。熱貫流率表示ボタン310は、熱貫流率の寄与率の算出結果を示す画面表示情報300を表示するボタンであり、残肉率表示ボタン312は、残肉率の算出結果を示す画面表示情報302を表示するボタンである。
【0051】
画面表示情報300における熱貫流率表示ボタン310は、ハイライト表示されている。残肉率表示ボタン312がマウスなどにより選択されると、表示情報生成部430は、表示対象としての画面表示情報を画面表示情報300から画面表示情報302に切り替える。同様に、画面表示情報302における残肉率表示ボタン312は、ハイライト表示されている。熱貫流率表示ボタン310がマウスなどにより選択されると、表示情報生成部430は、表示対象としての画面表示情報を画面表示情報302から画面表示情報300に切り替える。
【0052】
演算開始ボタン314は、演算開始を指示するボタンである。点検履歴ボタン316は、過去の点検履歴データを反映させるボタンである。演算開始ボタン314および点検履歴ボタン316も、後述するユーザインタフェース43としてのマウスにより選択可能とされている。
【0053】
ユーザインタフェース43は、各種情報をユーザ(管理者)に対して表示する表示部と、ユーザが各種情報を入力する入力装置とを備える。表示部は、例えば、ディスプレイ装置などで構成される。また、表示部は、表示用の画面の機能を備えるとともに、画面に直接入力可能な入力装置としての機能を備えるタッチパネルで構成されてもよい。入力装置は、例えば、キーボードやマウスなどが例示される。
【0054】
記憶部44は、計測データ取得部41が取得した温度情報や圧力情報、演算部42の演算に用いるデータや演算結果、ユーザインタフェース43を通じてユーザに提供する表示データ、表示データのテンプレートなどを記憶する記憶媒体である。記憶部44は、例えばハードディスクドライブや不揮発性メモリなどにより実現することができる。記憶部44は、例えば図示しないネットワークなどを介して復水器状態予測装置18と物理的に離隔して配置してもよい。記憶部44は、入力情報記憶部440、計測情報記憶部450、プログラム記憶部460、演算結果記憶部470、テンプレート記憶部480および表示情報記憶部490を有する。
【0055】
入力情報記憶部440は、ユーザインタフェース43を通じて入力された各種情報を記憶する記憶領域である。入力情報記憶部440を介して入力される情報としては、各種運転条件、各種設定条件、定期検査記録などが例示される。
【0056】
計測情報記憶部450は、計測データ取得部41が取得した各種情報を記憶する記憶領域である。プログラム記憶部460は、各種演算部の機能を実行するプログラムや数式情報などを記憶する記憶領域である。
【0057】
演算結果記憶部470は、各種演算部が演算した演算結果を記憶する記憶領域である。テンプレート記憶部480は、表示情報生成部430が表示情報を生成する際に用いる表示テンプレートを記憶する記憶領域である。表示テンプレートは、ユーザインタフェース43としてのディスプレイ装置(表示部)に表示する画面表示情報の構成を示す情報であり、例えばグラフ表示の位置や数値表示の位置などが予め設定されている。また、表示テンプレートは、ユーザにデータやパラメータの入力を促す画面表示情報の構成を示す情報を含んでもよい。表示情報記憶部490は、表示情報生成部430が生成した画面表示情報を記憶する記憶領域である。ユーザインタフェース43としての表示部は、表示情報生成部430が生成した画面表示情報を表示情報記憶部490から読み出して表示する。
【0058】
(演算部の演算動作)
次に、
図11を参照して、演算部42による清浄度、復水器内圧力、熱貫流率、熱貫流率の寄与率の予測値の演算動作を詳細に説明する。
図11は、実施の形態の復水器状態予測装置18の仕様演算部400および熱貫流率演算部410の演算動作を示すフローチャートである。
【0059】
ユーザインタフェース43は、演算に必要なパラメータの入力を受け付ける。入力されるパラメータとしては、例えば、復水器16の管16Pの寸法や材料、管16P一本毎の熱貫流率と解析結果の平均熱貫流率との差を補正する管補正係数CV、冷却水の供給を止めている管16Pの本数(閉止栓数)、HEI(Heat Exchange Institute)による管16Pの材料毎に定められた管材料補正係数FMなどが例示される。ユーザインタフェース43が受け付けるパラメータは、予め記憶部44の入力情報記憶部440に記憶させておいてもよい。
【0060】
計測データ取得部41は、冷却水入口温度T1、冷却水出口温度T2、復水器圧力P、冷却水量GW、その他復水器16や発電機15の運転データを測定情報として取得する。複数の冷却水温度検知器30および複数の冷却水温度検知器31を備える場合には、冷却水入口温度T1および冷却水出口温度T2として、複数の検知データを平均化した値が用いられる。併せて、仕様演算部400は、運転データのうち実出力データから以下の式により交換熱量Dutyを算出する。
【0061】
【0062】
計測データ取得部41が冷却水量GWを取得できない場合は、仕様演算部400が以下の式により冷却水量GWを算出してもよい。
【0063】
【数2】
ここでCpは冷却水の比熱(kJ/kgK)、γは冷却水の密度(kg/m
3)である。
【0064】
計測データ取得部41が冷却水出口温度T2を取得できない場合、仕様演算部400が以下の式により冷却水出口温度T2を算出してもよい。
【0065】
【数3】
なお、計測データ取得部41が取得する各種パラメータは、ユーザインタフェース43から入力されてもよい。
【0066】
ここでは、復水器16の管16Pが、2種類の管16P1および管16P2により構成される場合を例示する。仕様演算部400は、管16P1および管16P2それぞれの管本数N1,N2と内径di1,di2とに基づいて、管16P1の管内流速V1および管16P2の管内流速V2を、以下の式により算出する(ステップS210)。
【0067】
【0068】
【0069】
熱貫流率演算部410は、熱貫流率を算出する。プログラム記憶部460は、予めHEIにおける、冷却水の流速補正表、冷却水の入口温度補正表、および管16P1および管16P2それぞれの材料の補正係数を保持しておく。
【0070】
まず、熱貫流率演算部410は、管16P1および管16P2それぞれの内径di1,di2および管内流速V1,V2に基づいて、HEIによる冷却水の流速補正表から熱貫流率Up1,Up2を算出する。また、熱貫流率演算部410は、HEIによる入口温度補正表から冷却水温度補正係数FWを算出する。さらに、熱貫流率演算部410は、HEIによる管の材料の補正係数から管材料補正係数FMを算出する。
【0071】
次いで、熱貫流率演算部410は、算出した熱貫流率Up1,Up2、冷却水温度補正係数FW、および管材料補正係数FMを用いて、補正された熱貫流率U1,U2を以下の式により算出する。熱貫流率U1およびU2は、それぞれ管16P1および管16P2に対応する補正された熱貫流率である。
【0072】
【0073】
【0074】
熱貫流率演算部410は、熱貫流率U1,U2から基準となる熱貫流率Umを以下の式より算出する(ステップS220)。熱貫流率Umは、二種類の管16P1および管16P2を備える復水器16全体の理論上の基準となる熱貫流率である。
【0075】
【0076】
熱貫流率演算部410は、算出した熱貫流率Umおよび各管16Pごとの管補正係数CVに基づいて管16Pの一本毎の熱貫流率UAiを以下の式(9)よりそれぞれ算出する(ステップS230)。さらに、熱貫流率演算部410は、式(10)により、各管16P一本ごとの熱貫流率UAiを合計し、その合計した熱貫流率を管16Pの管本数を除して、管補正係数を加味した熱貫流率UAiの平均値を算出する(ステップS240)。
【0077】
【0078】
【数10】
熱貫流率演算部410は、熱貫流率の平均値U
Aiを用いて、閉止栓率による熱伝達係数を加味した理論上の基準熱貫流率U
Aを以下の式より算出する。
【0079】
【数11】
ここでf(X)は、流れ解析から求まる閉止栓率の補正係数である。閉止管本数N
Xの時、閉止栓率Xは以下の式により算出される。
【0080】
【0081】
ここで、例えば、
図5に示す管群16A1(管群配置
図350のブロックA1)の熱貫流率は、式(10)により、ブロックA1に含まれる管16Pそれぞれの熱貫流率U
Aiの和をその管本数で除すことで求められる。
図7に示す画面表示情報300に示す熱貫流率の寄与率は、復水器16全体の基準熱貫流率U
Aに対する管群(ブロック)ごとの熱貫流率の割合である。
【0082】
例えば、
図7に示す管群16A1(ブロックA1)の熱貫流率の寄与率は、上記したように式(10)により算出した管群16A1の熱貫流率を基準熱貫流率U
Aで除して100分率で表したものである。同様な方法で、各管群における熱貫流率の寄与率は、算出される。そして、
図7および
図8に示すように、各管群における熱貫流率の寄与率は、棒グラフ表示で示されている。なお、熱貫流率の寄与率は、熱貫流率演算部410により演算される。
【0083】
続いて、熱貫流率演算部410は、復水器16の交換熱量Duty、管16P全体の伝熱面積A、閉止栓率Xに基づき、実機の実測値に基づく熱貫流率Kを以下の式より算出する。
【0084】
【0085】
【数14】
ここでTSは、復水器圧力Pの飽和温度である。
【0086】
熱貫流率演算部410は、実機の実測値に基づく熱貫流率Kと、基準熱貫流率U
Aとに基づいて、清浄度φを以下の式より算出する。熱貫流率演算部410は、算出した清浄度φを演算結果記憶部470に出力する。なお、
図7および
図8に示すように、清浄度φは、復水器性能予測結果330には、例えば、100分率で表示されている。
【0087】
【0088】
次いで、熱貫流率演算部410は、復水器内圧力の予測値を算出する。熱貫流率演算部410は、ユーザインタフェース43が受け付けた新たなパラメータ(例えば閉止栓率をX’とする)に基づいて、式(9)-式(12)により理論上の基準熱貫流率UAXを算出する。さらに熱貫流率演算部410は、以下の式により基準熱貫流率UAXに清浄度φを乗じて熱貫流率の性能予測値UA’を算出する。
【0089】
【0090】
続いて、熱貫流率演算部410は、以下の式(17)、式(18)に示すように、熱貫流率の性能予測値UA’の関係式から対数平均温度差θm’を求める。そして、熱貫流率演算部410は、冷却水入口温度T1、冷却水出口温度T2および算出した対数平均温度差θm’に基づき、式(19)により復水器の飽和温度TS’を計算する(ステップS250)。
【0091】
そして、熱貫流率演算部410は、算出した飽和温度TS’を、プログラム記憶部460に予め記憶した蒸気表に適用し、復水器内圧力P’を算出する(ステップS260)。復水器内圧力P’は、予測された器内圧力となる。熱貫流率演算部410は、算出した器内圧力を演算結果記憶部470に出力する。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
次に、
図12を参照して、演算部42による減肉率の演算動作を詳細に説明する。
図12は、実施の形態の復水器状態予測装置18の減肉率演算部420の演算動作を示すフローチャートである。
【0096】
減肉率演算部420は、計測情報記憶部450から運転データを取得する(ステップS270)。
【0097】
減肉率演算部420は、取得した運転データから、プラント運転時間の積算値を算出する(ステップS280)。なお、減肉率演算部420は、ユーザインタフェース43を介して受け付けられた仮想の運転時間などを積算値として採用してもよい。
【0098】
減肉率演算部420は、プラント運転時間の積算値から以下の式により減肉率を算出する(ステップS290)。減肉率演算部420は、算出した減肉率データを演算結果記憶部470に出力する。減肉率は、渦流探査試験(ECT)の結果に基づいて統計学的に近似した値(時間に対する減肉率)として求められる。
【0099】
【0100】
【数21】
ここで、Tはプラント積算運転時間、yは予測減肉率、g(T)はプラント積算運転時間Tの関数である。プラント積算運転時間は、予めユーザインタフェース43を通じて記憶部44に記憶されてもよいし、予め計測データ取得部41を通じて記憶部44に出力されてもよい。
【0101】
減肉率演算部420は、画面表示情報302および画面表示情報303における残肉率360として、予測減肉率yに基づき復水器16の管16Pの肉厚の残肉率を算出する。残肉率は、管16Pの初期値(設計値)を基準として、プラント積算運転時間T経過時の管16Pの肉厚の残存割合を100分率で示すものである。残肉率は、管群ごとの平均値として表してもよい。減肉率演算部420は、算出された残肉率データを記憶部44の演算結果記憶部470に出力する。
【0102】
(復水器状態予測装置18の全体動作)
続いて、
図13を参照して、実施の形態の復水器状態予測装置18の動作を説明する。
図13は、実施の形態の復水器状態予測装置18の全体動作を示すフローチャートである。
【0103】
ユーザインタフェース43は、ユーザから復水器16の仕様データを受け付ける(ステップS110)。ユーザインタフェース43が受け付ける仕様データとしては、復水器の管における、寸法、材料、熱貫流率データおよび閉止栓数、HEIにおける管材料補正係数FMなどが例示される。仕様データは、予め入力情報記憶部440に記憶されていてもよい。ユーザインタフェース43は、受け付けた情報を入力情報記憶部440に出力する。
【0104】
次に、計測データ取得部41は、冷却水温度検知器30および冷却水温度検知器31が検知した冷却水入口温度T1および冷却水出口温度T2に係る温度情報、復水器圧力検知器32が検知した復水器圧力P、発電機15の実出力、復水器16に供給される冷却水量などを取得し、計測情報記憶部450に出力する。(ステップS120)。計測データ取得部41は、日常的にこれらの情報を計測情報記憶部450に記憶しておき、演算部42から読み出し可能としていてもよい。
【0105】
初期状態において、表示情報生成部430は、初期値や前回の演算値などを含む画面表示情報300または画面表示情報302を生成し、ユーザインタフェース43としてのディスプレイ装置などに表示させている。ユーザが、例えば画面表示情報300の演算開始ボタン314をユーザインタフェース43としてのマウスなどにより選択すると、表示情報生成部430は、演算のための計算条件の入力や選択を促す画面表示情報を生成してユーザに提示する。
【0106】
図14は、既存のヒートバランスHBの値に基づく計算条件の入力を促す画面表示情報304aを示している。
図14に示す例では、蒸気タービンの負荷を示す100%負荷、75%負荷、50%負荷、25%負荷の中からユーザがマウスなどにより選択することで計算条件の入力を可能とする。なお、蒸気タービンの負荷に基づいて、例えば、冷却水入口温度T1、冷却水出口温度T2、交換熱量、冷却水量などのヒートバランスHBデータが入力情報として予め設定され、入力情報記憶部440に記憶されている。
【0107】
図15は、過去の実機運転データに基づく計算条件の入力を促す画面表示情報304bを示している。
図15に示す例では、指定した日時(Date, Time)の運転パラメータを指定することができる。運転パラメータは、例えば冷却水入口温度T1、冷却水出口温度T2、交換熱量、冷却水量などが例示される。
【0108】
図16は、
図14に示すヒートバランスHBに基づく計算条件入力や
図15に示す過去の実機運転データに基づく計算条件入力におけるオプション条件の入力を促す画面表示情報305を示している。
図16に示す例では、ヒートバランスHBや過去の実機運転データにより入力されたデータの修正を行うことができる。
【0109】
図17は、ユーザにおいて計算条件を任意に設定する際の入力を促す画面表示情報304cを示している。
図17に示す例では、ユーザインタフェース43としてのキーボードなどにより直接計算条件を入力することができる。
【0110】
既存のヒートバランスHBの値に基づく計算条件の入力を促す画面表示情報304a、過去の実機運転データに基づく計算条件の入力を促す画面表示情報304b、ユーザにおいて計算条件を任意に設定する際の入力を促す画面表示情報304cは、それぞれヒートバランス入力ボタン320、過去データ入力ボタン322および任意設定ボタン324を含んでいる。ユーザは、ユーザインタフェース43を通じてこれらのうちいずれかのボタンを選択することにより、選択した画面表示情報を表示させ対応する入力や選択を行うことができる。
【0111】
図18は、計算条件が入力された後に復水器16の仕様変更の有無の入力を促す画面表示情報306aを示している。ユーザが仕様変更あり(Yes)を選択した場合、ユーザはユーザインタフェース43としてのUSBメモリなどの記憶媒体を介して復水器16の基本仕様データを入力することができる。
【0112】
図19は、復水器16の基本仕様データの一例である。
図19に示すように、基本仕様データ306bは、復水器16の管16Pを特定する情報(管群記号、管群番号、管群列番号、管群行番号)と、特定された管16Pに冷却水を止める閉止栓の有無、リチュービングにおける材料の種類などの情報を含んでいる。基本仕様データ306bは、例えばcsv形式のテキストデータとして作成し、ユーザインタフェース43を通じて入力させることができる。
【0113】
ユーザが、例えば画面表示情報302の点検履歴ボタン316をユーザインタフェース43としてのマウスなどにより選択すると、表示情報生成部430は、点検履歴の選択を促す画面表示情報を生成してユーザに提示する。
図20は、点検履歴の入力を促す画面表示情報308aの一例を示している。ユーザは、画面表示情報308aの表示に応じて、例えばcsv形式のテキストデータとして作成された点検履歴データを、ユーザインタフェース43を通じて入力することができる。
【0114】
図21は、点検履歴データの一例を示している。
図21に示すように、点検履歴データ308bは、復水器16の管16Pを特定する管群記号、管群番号、管群列番号、管群行番号と、ECTによる残肉率、閉止栓の状況、リキュービングの状況などを含んでいる。
【0115】
点検履歴データの入力に続いて、ユーザが画面表示情報302の演算開始ボタン314をユーザインタフェース43としてのマウスなどにより選択すると、表示情報生成部430は、演算のための計算条件の入力や選択を促す画面表示情報を生成してユーザに提示する。
【0116】
図22は、減肉を予測する時期、予測時期までのプラント稼働率、計算の初期値となる点検記録などの計算条件の入力を促す画面表示情報309の例を示している。ユーザは、画面表示情報309に応じて、ユーザインタフェース43としてのキーボードを通じてこれらの計算条件を入力することができる。
【0117】
図14ないし
図22に例示される画面表示情報に応じてユーザから計算条件が与えられると、演算部42の仕様演算部400、熱貫流率演算部410、および減肉率演算部420は、入力情報記憶部440および計測情報記憶部450から各種情報を取得し、前述した演算動作によって清浄度、復水器内圧力、熱貫流率、熱貫流率の寄与率、予測減肉率、残肉率などを算出する(ステップS130)。演算部42は、算出結果を記憶部44の演算結果記憶部470に出力する。
【0118】
図23は、減肉率演算部420が演算した予測減肉率を含む算出結果の一例である。
図23に示すように、予測減肉率のような算出結果370は、復水器16の管を特定する管群記号、管群番号、管群列番号、管群行番号と、閉止栓の状況、予測減肉率、減肉割合などを含むことができる。算出結果370は、演算結果記憶部470に記憶された残肉率を含んでもよい。このような算出結果370は、例えばcsv形式のテキストデータとして生成されてもよい。この場合、ユーザは、ユーザインタフェース43を通じて出力させることができる。
【0119】
次いで、表示情報生成部430は、演算結果記憶部470から算出結果である清浄度、復水器内圧力、熱貫流率の寄与率、残肉率などを読み出し、テンプレート記憶部480からユーザインタフェース43としてのディスプレイ装置に表示させる画面表示情報のテンプレートを読み出す(ステップS140)。表示情報生成部430は、画面表示情報のテンプレートに算出結果を適用して、例えば、画面表示情報300または画面表示情報302を生成する(ステップS150)。
【0120】
表示情報生成部430は、生成した画面表示情報300-画面表示情報303のいずれかをユーザインタフェース43としてのディスプレイ装置に送り、ユーザに対して出力する(ステップS160)。また、表示情報生成部430は、生成した画面表示情報300-画面表示情報303のいずれかを表示情報記憶部490に出力する。ユーザインタフェース43としての表示部は、生成された画面表示情報を表示情報記憶部490から読み出して表示する。
【0121】
ユーザは、画面表示情報300または画面表示情報302が表示されたユーザインタフェース43としてのディスプレイ装置を通じて、より詳細な算出結果を取得することができる。
図24は、例えば、ユーザが画面表示情報302における残肉率362bの管群A2の棒グラフをマウスなどにより選択した場合に、表示情報生成部430が生成する画面表示情報372の例を示している。この実施形態において、表示情報生成部430は、例えば画面表示情報302の減肉率に基づく残肉率を示す棒グラフを選択すると、対応する管群の残肉率の分布図を示す画面表示情報372を生成することができる。
図24に示すように、画面表示情報372は、基準を50%として、管群A2の各管の残肉率の分布図が含まれている。
【0122】
ユーザインタフェース43は、画面表示情報300-画面表示情報303のいずれかを出力した後、ユーザからの入力受付を待機している(ステップS170)。ユーザが演算開始ボタン314をマウスなどで選択することにより、新たな計算条件として情報やパラメータの入力を検知すると(ステップS170のYes)、ユーザインタフェース43は、入力情報記憶部440にその入力情報を出力する。また、ユーザインタフェース43から入力情報が出力されると、演算部42は、新しい計算条件に基づき演算処理を実行し、表示情報生成部430は、画面表示情報を更新する(ステップS130~ステップS160)。表示情報生成部430は、更新した画面表示情報を表示情報記憶部490に出力する。ユーザインタフェース43としての表示部は、表示情報記憶部490から更新した画面表示情報を読み出して表示する。
【0123】
更新された画面表示情報は、それまでグループBとして表示されていた清浄度332b、復水器内圧力334bおよび熱貫流率の寄与率336b、または残肉率362bの表示が、グループAの清浄度332a、復水器内圧力334aおよび熱貫流率の寄与率336a、または残肉率362aとして更新表示され、新たな計算条件により算出された算出結果はグループBの清浄度332b、復水器内圧力334bおよび熱貫流率の寄与率336b、または残肉率362bとして更新表示される。すなわち、グループAの表示には、新たな計算条件により更新された算出結果よりも前に設定された計算条件(第1の計算条件)による算出結果が含まれ、グループBの表示には、最新の計算条件(第2の計算条件)によりに更新された算出結果が含まれている。かかる画面表示情報による画面表示により、初期値あるいは先の算出結果と最新の算出結果との対比を視覚的に容易に行うことが可能となる。
【0124】
このように、実施形態の復水器状態予測装置18は、復水器16の清浄度、復水器内圧力、熱貫流率、熱貫流率の寄与率、予測減肉率および管の残肉率の予測値を算出して、算出結果を画面表示情報として出力することができる。これによって、ユーザは、定期検査を経ることなく、最新の記録を加味した現時点または将来における残肉状況について目視で把握することができる。
【0125】
また、実施形態の復水器状態予測装置18は、熱貫流率の寄与率や残肉率について基準点を超えるか否かについて視覚的に表示するので、ユーザは、任意の時期に閾値を超える管(管群)の数量を視覚的に容易に把握することが可能になる。これは、復水器16の補修は補修部品の準備を円滑に実現することができる。
【0126】
さらに、実施形態の復水器状態予測装置18は、任意の情報やパラメータを用いて熱貫流率の寄与率や残肉率について対比させつつ表示可能である。そのため、復水器状態予測装置18において情報やパラメータを変えて演算を繰り返すことで、ユーザは、復水器16の管を延命させるための運用パラメータを把握することも可能になる。
【0127】
ここで、
図25,
図26A~26Dを参照して、実施形態の復水器状態予測装置18全体の動作例を説明する。
図25は、実施形態の復水器状態予測装置18を用いたユーザによる性能予測の操作例を示すフローチャートである。
【0128】
ここでは、過去の点検データに基づく残肉率の結果を参照して、将来の特定の時点における残肉率を予測する操作を例に説明する。
【0129】
ユーザが、ユーザインタフェース43としての入力装置を通じて予測対象の実機を指定し、画面表示情報の残肉率表示ボタン312を選択すると、表示情報生成部430は、テンプレート記憶部480に記憶された表示テンプレートに基づいて、残肉率を含む画面表示情報を生成する(ステップS400)。
図26Aは、管の残肉率360を表す例の画面表示情報302aである。
【0130】
ユーザが、さらに
図20に示す画面表示情報308aに応じて
図21に示す点検履歴データ308bを入力すると、復水器状態予測装置18は、点検履歴データ308bに含まれる残肉率を記憶部44の入力情報記憶部440に取り込む。表示情報生成部430は、点検履歴データ308bに含まれる残肉率を残肉率362a,362bとして含む画面表示情報302aを生成する。
図26Aに示すように、この段階では、画面表示情報302aのグループAおよびBには、ともに点検履歴データ308bの残肉率を含む残肉情報を示す同じグラフが表されている。
【0131】
次に、ユーザは残肉率予測の期間を設定する(ステップS410)。ユーザが
図22の画面表示情報309に示す入力画面を通じてプラント運転積算時間(期間)の想定値を入力し、演算開始ボタン314を選択すると、減肉率演算部420は、減肉率を計算する(ステップS420)。表示情報生成部430は、減肉率演算部420が計算した減肉率に基づく残肉率を残肉率362bとして含む画面表示情報を生成する。
【0132】
図26Bは、ユーザが与えたプラント運転積算時間に基づいて計算された残肉率362bを含む画面表示情報302bを示している。画面表示情報302bは、点検履歴データ308bに基づく残肉率を含む残肉情報を残肉率362aとして含み、ユーザが与えた積算時間に基づく予測した減肉率に基づく残肉率を含む残肉情報を残肉率362bとして含んでいる。ユーザは、点検時の残肉率と予測された減肉率に基づく残肉率とが対比された画面表示情報302bを参照して、管の減肉の傾向を知ることができる。
【0133】
ユーザは、画面表示情報302bを参照して、予測時期を変更して様々な条件の減肉率を再計算することができる(ステップS430のYes)。ユーザが
図22の画面表示情報309に示す入力画面を通じて新たな想定値を入力し演算開始ボタン314を選択すると、減肉率演算部420は、新たな条件で減肉率を計算する(ステップS410~S420)。
【0134】
ユーザが、
図22の画面表示情報309に示す入力画面を通じて新たな積算時間の想定値を入力し、減肉率演算部420が新たな想定値の条件で減肉率に基づく残肉率を計算すると、表示情報生成部430は、前回の予測においてユーザが与えた積算時間に基づく減肉率に基づく残肉率を残肉率362aとし、今回の予測においてユーザが与えた積算時間に基づく減肉率に基づく残肉率を残肉率362bとして含む画面表示情報を生成する。これにより、ユーザは与えた積算時間に応じた残肉率の計算結果を対比して参照することができる。
【0135】
ユーザは、管の減肉率に基づく残肉率の計算結果を踏まえて、管の閉止計画を含む修繕計画を立案することができる(ステップS430のNo,ステップS440)。例えば、管の減肉の進み具合に応じた管の閉止の要否や、減肉の進んだ管のリチュービングの要否を検討し、その適用時期を含めた計画が例示される。
【0136】
続いて、初期状態として復水器16の設計値に基づいた清浄度、復水器内圧力および熱貫流率の寄与率の計算結果を参照して、立案した修繕計画を反映させた場合の清浄度、復水器内圧力および熱貫流率の寄与率を予測する操作の例を説明する。
【0137】
ユーザは、ステップS440にて立案した修繕計画に基づいて、復水器16の性能予測を計算することができる。ユーザがユーザインタフェース43としての入力装置を介して熱貫流率表示ボタン310を選択すると、表示情報生成部430は、テンプレート記憶部480に記憶された表示テンプレートに基づいて熱貫流率の寄与率などを含む性能情報を示す画面表示情報を生成する(ステップS450)。
図26Cは、設計時の条件に基づく復水器状態予測結果330を表す画面表示情報302cを示している。
【0138】
この段階では、画面表示情報302cは、初期状態として復水器16の設計値に基づく清浄度、復水器内圧力、熱貫流率の寄与率を清浄度332a,332b、復水器内圧力334a,334b、熱貫流率の寄与率336a,336bとして含んでいる。すなわち、グループAおよびBには同じグラフが表されている。
【0139】
次にユーザは、立案した閉止計画に基づく閉止栓数やリチュービングの有無などを含む復水器16の性能計算に必要なパラメータを入力する(ステップS460)。閉止栓数は、例えば
図19に示す復水器16の基本仕様データにおける「閉止栓施工」の項目をチェックする等により、ユーザインタフェース43としての入力装置に入力することができる。また、リチュービングの有無は、例えば
図19に示す復水器16の基本仕様データにおける「リチュービング」の項目をチェックする等により、ユーザインタフェース43としての入力装置に入力することができる。性能計算に必要な他のパラメータとしては、例えばヒートバランスHBや模擬データなどが例示される。
【0140】
ユーザがユーザインタフェース43としての入力装置を通じて演算開始ボタン314を選択すると、熱貫流率演算部410は、清浄度、復水器内圧力、熱貫流率、熱貫流率の寄与率を計算する(ステップS470)。表示情報生成部430は、熱貫流率演算部410が計算した清浄度、復水器内圧力、熱貫流率の寄与率を含む性能情報を示す画面表示情報を生成する。
【0141】
図26Dは、立案した閉止計画に基づく閉止栓数やリチュービングの有無を含むパラメータに基づいて計算された清浄度332b、復水器内圧力334b、熱貫流率の寄与率336bを含む画面表示情報302dを示している。画面表示情報302dは、初期値としての設計値に基づく清浄度、復水器内圧力、熱貫流率の寄与率を清浄度332a、復水器内圧力334a、熱貫流率の寄与率336aとして含み、立案した閉止計画に基づく閉止栓数やリチュービングの有無を含むパラメータに基づいて計算された清浄度、復水器内圧力、熱貫流率の寄与率を清浄度332b、復水器内圧力334b、熱貫流率の寄与率336bとして含んでいる。ユーザは、画面表示情報302dを参照して、設計時の復水器16の性能情報と設定したパラメータによる復水器16の性能情報とを対比してその変化を知ることができる。
【0142】
ユーザは、画面表示情報302dを参照して、パラメータを変更して様々な条件の清浄度、復水器内圧力、熱貫流率、熱貫流率の寄与率を再計算することができる(ステップS480のYes)。ユーザがユーザインタフェース43としての入力装置を通じて新たなパラメータを入力し演算開始ボタン314を選択すると、熱貫流率演算部410は、新たな条件で清浄度、復水器内圧力、熱貫流率、熱貫流率の寄与率を計算する(ステップS460~S470)。
【0143】
このように、ユーザは、将来の管の補修計画等に伴う清浄度や復水器内圧力、熱貫流率の寄与率の変化を視覚的に捉え、補修計画等が復水器の性能に与える影響を把握することが可能となる。
【0144】
以上説明した実施形態によれば、運転条件に基づく復水器の性能や管の減肉に関する状態予測情報を認識することができる復水器状態予測装置を提供することが可能となる。
【0145】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
1…蒸気タービン設備、10…ボイラ、11…高圧タービン、12…再熱器、13…中圧タービン、14…低圧タービン、15…発電機、16…復水器、16A1~16A10…管群、16BinA,16BinB…導入ボックス、16BoutA,16BoutB…排出ボックス、16WinA,16WinB…導入口、16WoutA,16WoutB…排出口、16Wout…排出管、16cav…筐体、16Cout…排水口、16PA,16PB…グループ、16S…蒸気、16Sin…蒸気導入口、17…給水ポンプ、18…復水器状態予測装置、20…主蒸気管、21…低温再熱管、22…高温再熱管、23…クロスオーバー管、24…排気管、25…給水管、30,31…冷却水温度検知器、32…復水器圧力検知器、41…計測データ取得部、42…演算部、43…ユーザインタフェース、44…記憶部、300~303,304a~304c,305,306a,308a,309…画面表示情報、306b…基本仕様データ、308b…点検履歴データ、310…熱貫流率表示ボタン、312…残肉率表示ボタン、314…演算開始ボタン、316…点検履歴ボタン、320…ヒートバランス入力ボタン、322…過去データ入力ボタン、324…任意設定ボタン、330…復水器状態予測結果、332a,332b…清浄度、334a,334b…復水器内圧力、336a,336b…熱貫流率の寄与率、340…状態予測結果概要、350~352…管群配置図、360,362a~362b…残肉率、370…算出結果、372…画面表示情報、400…仕様演算部、410…熱貫流率演算部、420…減肉率演算部、430…表示情報生成部、440…入力情報記憶部、450…計測情報記憶部、460…プログラム記憶部、470…演算結果記憶部、480…テンプレート記憶部、490…表示情報記憶部、A,B…グループ。