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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156339
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及び接合システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070716
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】ヤマハロボティクスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 隼
(72)【発明者】
【氏名】菊地 広
(72)【発明者】
【氏名】戸張 優太
(57)【要約】
【課題】第1接合部材または第2接合部材の損傷を抑えつつ、第1接合部材及び第2接合部材の接合を的確に行うことができるプラズマ処理方法及び接合システムを提供する。
【解決手段】
真空雰囲気において第1プラズマ処理が行なわれた第1接合部材及び第2接合部材を準備し、第1プラズマ処理よりも真空度の低い雰囲気において第2プラズマ処理を第1接合部材または第2接合部材に行う工程と、第1接合部材と第2接合部材とを接合する工程とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気において第1プラズマ処理が行なわれた第1接合部材及び第2接合部材を準備し、前記第1プラズマ処理よりも真空度の低い雰囲気において第2プラズマ処理を前記第1接合部材または前記第2接合部材に行う工程と、
前記第1接合部材と前記第2接合部材とを接合する工程と
を含む、
プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記第2プラズマ処理は、大気圧雰囲気において行われるプラズマ処理である、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記第2プラズマ処理は、前記第1接合部材及び前記第2接合部材における互いの接合部における水に対する接触角を低減させる処理である、
請求項1または2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記第2プラズマ処理は、前記第1接合部材及び前記第2接合部材における互いの接合部の親水性の官能基の比率を高める処理である、
請求項3に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記第1接合部材及び前記第2接合部材における互いの接合部は、親水性の官能基を用いた親水化接合により直接接合される、
請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記親水化接合は、前記第1接合部材及び前記第2接合部材における互いの接合部に水を保持した状態で行われる、
請求項5に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記第1接合部材は、ウエハから切断されて個片化された半導体チップであり、
前記第2接合部材は、基板であり、
前記第1プラズマ処理は、前記ウエハに所定のパターンを形成する工程を含む半導体製造処理の前工程において行われ、
前記第2プラズマ処理は、前記半導体チップを基板に実装する工程を含む半導体製造処理の後工程において行われる、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
真空雰囲気において第1プラズマ処理が行われた第1接合部材及び第2接合部材を接合する接合システムであって、
前記第1接合部材または前記第2接合部材に前記第1プラズマ処理よりも真空度の低い雰囲気において第2プラズマ処理を行うプラズマ処理部と、
前記第1接合部材と前記第2接合部材とを接合ずる接合部とを備える、
接合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理方法及び接合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物に対して所定の機能を持たせるためにプラズマ処理を行うことが広く知られている。例えば、特許文献1に記載の方法においては、特定の大気圧プラズマで高分子フィルムと無機基板の積層体に対し、真空プラズマ処理、及び、大気圧プラズマ処理を含む群から選択される不活性化処理を行うことで、フィルムと基板との接着強度が高い良好接着部と低い易剥離部との遷移領域幅が小さい積層体を実現するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-149040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体製造処理の工程において、プラズマ処理の対象がプラズマ照射の影響を受けやすいもの、例えば、ウエハである場合には、プラズマ処理の態様によっては、ウエハが損傷する虞があった。
【0005】
なお、こうした課題は、プラズマ処理の対象がウエハ以外の場合にも概ね共通して生じるものであった。
【0006】
そこで、本開示は、プラズマ処理の対象の損傷を抑えつつ、プラズマ処理の目的を的確に果たすことができるプラズマ処理方法及び接合システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のプラズマ処理方法は、真空雰囲気において第1プラズマ処理が行なわれた第1接合部材及び第2接合部材を準備し、第1プラズマ処理よりも真空度の低い雰囲気において第2プラズマ処理を第1接合部材または第2接合部材に行う工程と、第1接合部材と第2接合部材とを接合する工程とを含む。
【0008】
第1プラズマ処理により第1接合部材または第2接合部材の表面が一旦改質されたとしても、時間の経過とともに表面の改質度合いが劣化していく。しかし、このように、第1接合部材または第2接合部材に対して第2プラズマ処理を行うことで、表面の改質度合いを復元することができる。このとき用いられる第2プラズマ処理は、第1プラズマ処理よりも真空度の低いプラズマ処理であるため、第1接合部材または第2接合部材に対する損傷を抑えながら、プラズマ処理の目的である部材の表面改質を果たすことができる。
【0009】
本開示のプラズマ処理方法において、第2プラズマ処理は、大気圧雰囲気において行われるプラズマ処理であってもよい。
【0010】
このように、第1接合部材または第2接合部材の表面の改質度合いの復元に際し、大気圧雰囲気において行われる第2プラズマ処理を用いることで、第1接合部材または第2接合部材がプラズマ処理により損傷することをより一層抑えることができる。
【0011】
本開示のプラズマ処理方法において、第2プラズマ処理は、第1接合部材及び第2接合部材における互いの接合部における水に対する接触角を低減させる処理であってもよい。
【0012】
このように、第1接合部材及び第2接合部材は、プラズマ処理により水に対する親和性が向上するため、直接接合の一種である親水化接合を的確に行うことができる。
【0013】
本開示のプラズマ処理方法において、第2プラズマ処理は、第1接合部材及び第2接合部材における互いの接合部の親水性の官能基の比率を高める処理であってもよい。
【0014】
このように、第1接合部材及び第2接合部材は、プラズマ処理により互いの接合部の親水性の官能基の比率が高められるため、水に対する親和性が向上し、直接接合の一種である親水化接合を的確に行うことができる。
【0015】
本開示のプラズマ処理方法において、第1接合部材及び第2接合部材における互いの接合部は、親水性の官能基を用いた親水化接合により直接接合されてもよい。
【0016】
このように、第1接合部材及び第2接合部材は、プラズマ処理により生成された比率が高められた親水性の官能基を用いて、直接接合の一種である親水化接合を行うことができる。
【0017】
本開示のプラズマ処理方法において、親水化接合は、第1接合部材及び第2接合部材における互いの接合部に水を保持した状態で行われてもよい。
【0018】
このように、第1接合部材及び第2接合部材における互いの接合部に水を保持した状態で直接接合の一種である親水化接合をより一層的確に行うことができる。
【0019】
本開示のプラズマ処理方法において、第1接合部材は、ウエハであり、第2接合部材は、基板であり、第1プラズマ処理は、ウエハに所定のパターンを形成する工程を含む半導体製造処理の前工程において行われ、第2プラズマ処理は、ウエハから切り出された半導体チップを基板に実装する工程を含む半導体製造処理の後工程において行われてもよい。
【0020】
このように、半導体製造処理の前工程において第1プラズマ処理が行なわれた後、半導体製造処理の前工程から後工程までの間に所定の時間が経過し、第1接合部材または第2接合部材の互いの接合部の表面の改質度合いが劣化したとしても、半導体製造処理の後工程において第2プラズマ処理が行なわれることで、第1接合部材または第2接合部材の表面の改質度合いを好適に復元することができる。
【0021】
本開示の接合システムは、真空雰囲気において第1プラズマ処理が行われた第1接合部材及び第2接合部材を接合する接合システムであって、第1接合部材または第2接合部材に第1プラズマ処理よりも真空度の低い雰囲気において第2プラズマ処理を行うプラズマ処理部と、第1接合部材と第2接合部材とを接合ずる接合部とを備える。
【0022】
第1プラズマ処理により第1接合部材または第2接合部材の表面が一旦改質されたとしても、時間の経過とともに表面の改質度合いが劣化していく。しかし、このように、第1接合部材または第2接合部材に対して第2プラズマ処理を行うことで、表面の改質度合いを復元することができる。このとき用いられる第2プラズマ処理は、第1プラズマ処理よりも真空度の低いプラズマ処理であるため、第1接合部材または第2接合部材に対する損傷を抑えながら、プラズマ処理の目的である部材の表面改質を果たすことができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示は、第1接合部材または第2接合部材の損傷を抑えつつ、第1接合部材及び第2接合部材の接合を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】真空プラズマ処理の概要の一例を説明するための図である。
図2】真空プラズマ処理の概要の一例を説明するための図である。
図3】大気圧プラズマ処理の概要の一例を説明するための図である。
図4】プラズマ処理方法の処理の概要の一例を説明するための図である。
図5】プラズマ処理方法の内容の一例を示すフローチャートである。
図6】接合処理の内容の一例を示すフローチャートである。
図7】プラズマ処理方法の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、プラズマ処理方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
概略、本発明のプラズマ処理方法は、半導体製造処理に適用されるものであり、前工程において真空雰囲気において第1プラズマ処理が行われた第1接合部材及び第2接合部材に対して、後工程において第1プラズマ処理よりも真空度の低い第2プラズマ処理を行うことを含むものである。ここで、前工程と後工程とは時間的に近接させて、例えば、連続して実施することも可能であるが、本実施形態では、前工程は別の環境において実施され、時間をおいて後工程が実施されるような場合を想定している。なお、本明細書では、前工程において処理された部材を後工程が実施可能なように適用、すなわち、搬入し、第2プラズマ処理の前に必要とされる処理を実施することを「準備」という。そのため、前工程を実施せずに、前工程を実施した結果物である部材を搬入し、第2プラズマ処理の前に必要とされる処理を実施するところから後工程を開始する態様も、本実施形態の対象である。
【0027】
次に図面を参照しながら、本実施形態のプラズマ処理方法を説明する。まず前工程として、ウエハに真空プラズマ処理を実施する。ウエハは、ダイシングの対象となる第1ウエハと、半導体チップが実装される第2ウエハとを含む。
【0028】
図1に示すように、真空プラズマ処理は、例えば、チャンバ内に設けられた対向電極10,11にウエハ13を配置することにより行われる。対向電極10,11には、RF電源12が接続されて対向電極10,11の間にプラズマを発生させる。ウエハ13は、一枚ずつプラズマ処理されてもよいし、複数枚同時にプラズマ処理されてもよい。また、図2に示すように、真空プラズマ処理は、対向電極10,11の各々にRF電源12A,12Bを接続し、対向電極10,11の各々に異なる電圧値や周波数の交流電力を印加して対向電極10,11の間にプラズマを照射してもよい。プラズマ処理されたウエハ13は、図示しないハンドによりチャンバから取り出されて、マガジン等により搬送される。
【0029】
ここで、真空プラズマ処理は、第1プラズマ処理の一例であり、真空雰囲気において行われるプラズマ処理である。真空プラズマ処理は、例えば、高速処理対応を目的として、電極間(プラズマ空間)に基板を直接投入してプラズマを照射するダイレクトプラズマの照射方式が適用されるものである。
【0030】
そして、前工程を経たウエハは、後工程で用いられる接合システムに搬入される。接合システムは、搬入されたウエハ(第1ウエハ)に対してダイシング処理を行うことで、半導体チップを作製し、作製された半導体チップ及びウエハ(第2ウエハ)の互いの接合部に対し、洗浄処理を実施する。その次に、洗浄処理が行なわれた半導体チップ及びウエハの互いの接合部に対し、大気圧プラズマ処理を行う。
【0031】
図3に示すように、大気圧プラズマ処理は、駆動ステージ20の上方に設けられたプラズマ照射部14により行われる。プラズマ照射部14は、一対の対向電極15,16により構成されており、駆動ステージ20に配置されたウエハ13に対して対向電極15,16の下部からプラズマを照射する。対向電極15には、RF電源17が接続されており、駆動ステージ20に配置されたウエハ13に対して連続的にプラズマ処理を実行可能に構成されている。
【0032】
ここで、大気圧プラズマ処理は、第2プラズマ処理の一例であり、真空プラズマ処理よりも真空度の低い大気圧雰囲気において行われるプラズマ処理である。大気圧プラズマ処理は、例えば、ウエハの損傷を抑えることを目的として、スリットからプラズマを噴き出して照射するリモートプラズマの照射方式が適用されるものである。なお、第2プラズマ処理は、大気圧雰囲気に限らず、例えば窒素等によりガス置換をした雰囲気、加圧雰囲気、第1プラズマ処理よりも真空度が低い低真空雰囲気で行われるプラズマ処理であってもよい。
【0033】
その後、大気圧プラズマ処理が行なわれたウエハに対し、表面親水化処理等を行った上で、半導体チップをウエハに実装した実装基板を作製する。第2プラズマ処理に相当する大気圧プラズマ処理を実施する前までの工程が本発明の「準備」に相当する。接合システムにおけるプラズマ処理方法の具体例については、図5及び図6を参照しながら後述する。なお、以下の説明においては、第2基板はウエハであるとして説明するが、第2基板はウエハに限らず、例えば、プリント基板等のウエハ以外の基板、すでに個片化された半導体チップが実装された基板等であってもよい。
【0034】
図4に示すように、接合システム100は、上記プラズマ処理を実施するための構成として、例えば、ダイシング装置110と、洗浄装置120と、プラズマ処理装置130と、表面親水化装置140とを備える。それぞれの装置は、同一の筐体に囲われて配置された構成、所謂ライン化されて搬送装置もしくは人手により各装置で処理済みの物が次工程に引き渡される構成であってもよい。また、これらの装置に限らず、他の処理工程の装置を含んでいてもよい。
【0035】
ダイシング装置110は、円盤状のウエハを格子状に切断し、ウエハに形成されたIC(集積回路)を1つの半導体チップとして切り離す装置である。
【0036】
洗浄装置120は、ダイシング装置110によりダイシングされた半導体チップに対し、スポンジ等を用いて擦り洗い処理、表面を撫で洗い処理を行うことで、ダイシング装置110において生じたウエハの切削屑、接着剤等の有機物などを洗浄する装置である。
【0037】
プラズマ処理装置130は、第2プラズマ処理を行う装置である。具体的には、プラズマ処理装置130は、洗浄装置120により洗浄された半導体チップ、及び、半導体チップが実装されるウエハの互いの接合部に対し、大気圧プラズマ処理を実施する。プラズマ処理装置130は、例えば、半導体製造処理の前工程において真空プラズマ処理により表面が改質された半導体チップ及びウエハの互いの接合部において、時間の経過とともに表層に形成された酸化膜等の被膜層を大気圧プラズマ処理により除去し、表面を改質する。この際、大気圧プラズマ処理は真空プラズマ処理に比べて、ウエハの接合部に対する損傷が低いので、プラズマ処理の対象に対する損傷を抑制しながら表面の改質が可能という利点を有する。
【0038】
表面親水化装置140は、プラズマ処理装置130により大気圧プラズマ処理が行われた半導体チップ及び基板の互いの接合部を親水化する。表面親水化装置140は、例えば、スピンチャックに保持された半導体チップまたは基板を回転させながら、半導体チップまたは基板に純水を供給し、半導体チップ及び基板の互いの接合部に純水を拡散させて親水化する。ここで「親水化」とは、半導体チップ及び基板の表面における親水性の官能基の比率を高めることで、半導体チップ及び基板の表面における水に対する接触角を低減させて水に対する親和性を高める処理である。親水化においては、半導体チップ及び基板の互いの接合部に形成された親水化の官能基に水を保持することで、親水性の官能基同士の距離が適正に維持され、親水化が円滑に行われる。
【0039】
(プラズマ処理方法の具体例)
次に、本実施形態のプラズマ処理方法の内容の一例について、図5及び図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0040】
図5に示すように、まず、半導体製造処理の前工程において真空プラズマ処理が行なわれたウエハを搬入する(ステップS100)。搬入されたウエハは、ダイシングの対象となる第1ウエハと、第1ウエハをダイシングすることによって作製された半導体チップが実装される第2ウエハとを含む。この搬入には、例えば、他の場所や装置でプラズマ処理されたウエハを保存し、接合システム100に搬入するために運搬することを含んでもよい。
【0041】
次に、先のステップS100において搬入されたウエハ(第1ウエハ)をダイシングして半導体チップを作製する(ステップS200)。具体的には、先のステップS100において準備された円盤状のウエハ(第1ウエハ)を格子状に切断し、ウエハに形成されたIC(集積回路)を1つの半導体チップとして切り離すことで、半導体チップを作製する。
【0042】
次に、先のステップS100において搬入されたウエハ(第2ウエハ)と、先のステップS200において作製された半導体チップとの接合処理を行う(ステップS300)。
【0043】
図6に接合処理の詳細な工程を示す。図6に示すように、接合処理において、まず、先のステップS300において作製された半導体チップを洗浄する(ステップS310)。具体的には、先のステップS300において作製された半導体チップにおける基板との接合部に対し、例えば、スポンジ等を用いて擦り洗い処理、撫で洗いを行うことで、ダイシングにおいて生じたウエハの切削屑、接着剤等の有機物などを洗浄する。
【0044】
次に、先のステップS310において洗浄された半導体チップに対して大気圧プラズマ処理を行うことで、半導体チップの表面を改質する(ステップS320)。具体的には、先のステップS310において洗浄された半導体チップにおける基板との接合部に対し、時間の経過とともに表層に形成された酸化膜等の被膜層を大気圧プラズマ処理により除去し、表面を改質する。
【0045】
次に、先のステップS320において表面が改質された半導体チップの表面の親水化を行う(ステップS330)。具体的には、先のステップS320において表面が改質された半導体チップをスピンチャックに保持した状態で回転させながら、半導体チップに純水を供給し、半導体チップにおける基板との接合部に純水を拡散させて親水化を行う。
【0046】
次に、先のステップS100において搬入された基板(第2ウエハ)を洗浄する(ステップS340)。具体的には、先のステップS100において準備された基板における半導体チップとの接合部に対し、例えば、スポンジ等を用いて擦り洗い、撫で洗い処理を行うことで、基板の表面を洗浄する。
【0047】
次に、先のステップS340において洗浄された基板に対して大気圧プラズマ処理を行うことで、基板の表面を改質する(ステップS350)。具体的には、先のステップS340において洗浄された基板における半導体チップとの接合部に対し、時間の経過とともに表層に形成された酸化膜等の被膜層を大気圧プラズマ処理により除去し、表面を改質する。
【0048】
次に、先のステップS350において表面が改質された基板の表面の親水化を行う(ステップS360)。具体的には、先のステップS350において表面が改質された基板をスピンチャックに保持した状態で回転させながら、基板に純水を供給し、基板における半導体チップとの接合部に純水を拡散させて親水化を行う。
【0049】
次に、先のステップS330において親水化された半導体チップの表面と、先のステップS360において親水化された基板の表面とを重ね合わせた状態で互いに押圧することで半導体チップと基板とを接合し(ステップS370)、図5に示すフローチャートを終了する。なお、上記プラズマ処理では、半導体チップと基板との双方に大気圧プラズマ処理を実施したが、半導体チップ及び基板のいずれか一方のみに大気圧プラズマ処理を実施してもよい。
【0050】
次に、本実施形態のプラズマ処理方法の作用について説明する。
【0051】
図7に示すように、本実施形態においては、水に対するウエハの接触角の初期値が比較的高い値となっている((1)に相当)。そして、半導体製造処理の前工程において、真空プラズマ処理をウエハに対して実行すると、水に対するウエハの接触角が大きく低減する((2)に相当)。また、真空プラズマ処理を実行した後、半導体製造処理の前工程から後工程に移行する過程を含め、一定の時間が経過すると、真空プラズマ処理により低減していた水に対するウエハの接触角が次第に増加する((3)に相当)。言い換えると、真空プラズマ処理の直後からウエハの親水性は徐々に失われていく。そこで、こうしたウエハに対して大気圧プラズマ処理を実行することで、水に対するウエハの接触角をリセットする((4)に相当)。大気圧プラズマ処理を実行することで、ウエハの損傷を抑制しながらウエハ表面の親水性を復活させることができるのである。
【0052】
すなわち、真空プラズマ処理によりウエハの表面が改質された後、時間の経過に伴ってウエハの表面に酸化膜等の被膜層が形成されることで、ウエハの表面の改質が劣化したとしても、こうしたウエハに対して大気圧プラズマ処理を実行することで、ウエハの表面に形成された被膜層を除去し、水に対するウエハの接触角をリセットする。この場合、大気圧プラズマ処理は、真空プラズマ処理と比較して、ウエハに与える損傷が小さいため、ウエハの損傷を抑えつつ、ウエハの接合処理を円滑に行うことができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
【0054】
上記実施形態においては、半導体チップと基板とが接合される場合を例に挙げて説明した。ただし、接合される対象の組み合わせは、半導体チップと基板とに限らず、接合が可能な組み合わせであればよい。また、半導体チップと基板との接合の態様は、両者が直接的に接合される直接接合に限らず、例えば、半導体チップと基板との間に樹脂等の接着材を介在させて間接的に接合される間接接合であってもよい。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を領域的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10,11…対向電極、12,12A,12B…RF電源、13…ウエハ、14…プラズマ照射部、15,16…対向電極、17…RF電源、20…駆動ステージ、100…接合システム、110…ダイシング装置、120…洗浄装置、130…プラズマ処理装置、140…表面親水化装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに対して前記ウエハの水に対する接触角を低減させる第1プラズマ処理工程と、
前記第1プラズマ処理工程により処理された前記ウエハを切断して個片化して第1接合部材を形成するダイシング工程と、
前記ダイシング工程により切断された前記ウエハに対して前記ウエハの水に対する接触角を低減させる第2プラズマ処理工程であって、前記第2プラズマ処理工程は前記第1プラズマ処理工程よりも真空度の低い雰囲気中で行われる、前記第2プラズマ処理工程と、
前記第2プラズマ処理工程が施された前記ウエハから得られた第1接合部材と、第2接合部材とを接合する工程と
を含む、
プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記第2プラズマ処理は、大気圧雰囲気において行われるプラズマ処理である、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記第2プラズマ処理は、前記第1接合部材及び前記第2接合部材における互いの接合部における水に対する接触角を低減させる処理である、
請求項1または2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記第1接合部材は、ウエハから切断されて個片化された半導体チップであり、
前記第2接合部材は、基板であり、
前記第1プラズマ処理は、前記ウエハに所定のパターンを形成する工程を含む半導体製造処理の前工程において行われ、
前記第2プラズマ処理は、前記半導体チップを基板に実装する工程を含む半導体製造処理の後工程において行われる、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
第1接合部材及び第2接合部材を接合する接合システムであって、
ウエハに対して前記ウエハの水に対する接触角を低減させる第1プラズマ処理を行う第1プラズマ処理部と、
前記第1プラズマ処理部によりプラズマ処理された前記ウエハを切断して個片化して第1接合部材を形成するダイシング処理部と、
前記ダイシング処理部により切断された前記ウエハに対して前記ウエハの水に対する接触角を低減させる第2プラズマ処理を行う第2プラズマ処理部であって、前記第2プラズマ処理は前記第1プラズマ処理よりも真空度の低い雰囲気中で行われる、第2プラズマ処理部と、
前記第2プラズマ処理部によりプラズマ処理が施された前記ウエハから得られた前記第1接合部材と、前記第2接合部材とを接合する接合部とを備える、
接合システム。