(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156349
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】乳入り飲料
(51)【国際特許分類】
A23C 9/152 20060101AFI20241029BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241029BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20241029BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241029BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20241029BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20241029BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241029BHJP
【FI】
A23C9/152
A23L2/38 P
A23L2/00 A
A23L2/52
A23F3/16
A23L29/00
A23L5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070731
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】杉野 良介
(72)【発明者】
【氏名】石井 友喜
【テーマコード(参考)】
4B001
4B027
4B035
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC03
4B001BC08
4B001BC99
4B001EC01
4B001EC99
4B027FB13
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4B027FC10
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4B035LC02
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4B035LG04
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4B117LC02
4B117LC15
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK06
4B117LK15
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】劣化臭が低減された加熱殺菌済みの乳入り飲料を提供する。
【解決手段】加熱殺菌済みの乳入り飲料において、エピガロカテキン、及びマグネシウム塩を含む無機塩を配合し、飲料中のエピガロカテキン含有量を0.1~20.0mg/100ml、飲料中のマグネシウム含有量を0.1~20.0mg/100mlとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳成分とエピガロカテキンとを含有する、加熱殺菌済みの乳入り飲料であって、以下(i)及び(ii)を満たす飲料:
(i)エピガロカテキンの含有量が0.1~20.0mg/100mlである、
(ii)さらにマグネシウム塩を含む無機塩を含有し、飲料中のマグネシウム含有量が0.5~8.0mg/100mlである。
【請求項2】
飲料中のマグネシウム含有量に対するカリウム含有量の割合[カリウム含有量/マグネシウム含有量]が1.0~30.0である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
無機塩がさらにカリウム塩を含む、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
飲料中のたんぱく質含有量が0.1~2.0g/100mlである、請求項1又は2に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱や光に伴う劣化臭が低減された乳入り飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳成分を配合した乳入り飲料は、一年を通して飲用される嗜好性の高い飲料であり、常温で長期保存可能な容器詰め乳入り飲料が多数流通されている。しかし、乳成分は、熱や光による酸化に敏感であり、製造時や保存時における熱や光に反応して、劣化臭(加熱臭や酸化臭、オフフレーバーともいう)を生成し、品質低下を招くことがある。そこで、種々の成分を用いて乳飲料の劣化臭を低減する方法が提案されている。例えば、抗酸化成分であるカテキンや緑茶抽出物を含有させることで光酸化等に伴うオフフレーバーを低減した乳飲料(特許文献1、2)、α-グリコシルトレハロースを含有させることで加熱臭の生成を抑制した乳又は乳製品の製造方法(特許文献3)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011-512798号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第2005832号明細書
【特許文献3】特開2006-94856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、容器詰め飲料の容器として、透明容器、特にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)が多用されており、内容液の乳入り飲料が、より一層、光や酸素に曝露し得る。そのため、従来の劣化臭低減方法では必ずしも十分な劣化臭抑制効果が得られるとはいえない。
【0005】
本発明の目的は、劣化臭が低減された乳入り飲料(特に、透明容器詰めの乳入り飲料)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エピガロカテキンとマグネシウム塩とを含有させることで、乳入り飲料の劣化臭を相乗的に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]乳成分とエピガロカテキンとを含有する、加熱殺菌済みの乳入り飲料であって、以下(i)及び(ii)を満たす飲料:
(i)エピガロカテキンの含有量が0.1~20.0mg/100mlである、
(ii)さらにマグネシウム塩を含む無機塩を含有し、飲料中のマグネシウム含有量が0.5~8.0mg/100mlである。
[2]飲料中のマグネシウム含有量に対するカリウム含有量の割合[カリウム含有量/マグネシウム含有量]が1.0~30.0である、[1]に記載の飲料。
[3]無機塩がさらにカリウム塩を含む、[1]又は[2]に記載の飲料。
[4]飲料中のたんぱく質含有量が0.1~2.0g/100mlである、[1]又は[2]に記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、劣化臭が効果的に低減され、乳の自然な味わいや香りを有する、長期保存可能な乳入り飲料の提供が可能となる。特に、光(日光や紫外線)に曝されやすい透明容器詰めでありながら、良好な乳風味を有する乳入り飲料の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(乳成分)
本発明の飲料は、乳成分を含有する乳入り飲料である(以下、「本発明の飲料」とも表記する)。乳成分とは、飲料に乳風味や乳感を付与するために添加される成分を指す。本発明で用いられる乳成分は、特に制限無く通常の乳類を使用することができる。例えば牛乳、羊乳、及び山羊乳等の獣乳、大豆乳、アーモンドミルク等の植物乳が挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのうち、獣乳は、例えば「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日)」によれば、加工方法に応じて生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、生水牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、及び加工乳に分類されるが、その別を問わず、いずれも使用することができる。また、獣乳、植物乳のいずれにおいてもその形態は特に問わず、全乳、発酵乳、ホエイ、クリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、大豆粉末等種々のものが利用でき、また、粉乳、濃縮乳から還元したものも利用できる。
【0010】
本発明の乳入り飲料は乳成分由来のたんぱく質を含有するが、効果を顕著に享受できるという観点から、本発明の飲料中のたんぱく質含有量は、0.1g/100ml以上であることが好ましく、0.2g/100ml以上であることがより好ましく、0.3g/100ml以上であることがより好ましく、0.4g/100ml以上であることがさらに好ましい。たんぱく質含有量の上限は、2.0g/100ml以下であることが好ましく、1.8g/100ml以下であることがより好ましく、1.6g/100ml以下であることがさらに好ましい。飲料中のたんぱく質の含有量は、後述する実施例に記載の分析方法で測定することができる。
【0011】
(エピガロカテキン)
本発明の飲料は、抗酸化成分であるエピガロカテキンを含む。本発明では、エピガロカテキンだけでは頭打ちとなる乳入り飲料の劣化臭低減効果が、後述するように、特定の無機塩を配合することにより、相乗的に高まるものである。本発明の飲料におけるエピガロカテキンの含有量は、0.1~20.0mg/100ml、好ましくは0.5~10.0mg/ml、より好ましくは1.0~8.0mg/mlである。
【0012】
エピガロカテキンは、緑茶抽出物から精製されたものを飲料に添加することにより飲料中に含有させてもよいし、緑茶抽出物を飲料に添加することにより飲料中に含有させてもよい。また、抹茶等のエピガロカテキンを溶出し得る素材を飲料に添加することにより、飲料中にエピガロカテキンを含有させてもよい。
【0013】
(無機塩)
本発明は、乳入り飲料で顕著に知覚される劣化臭を、エピガロカテキンを用いて低減し、さらに特定の無機塩を用いることで相乗的に劣化臭を低減し得るものである。ここで、本明細書でいう劣化臭の低減とは、劣化臭の発生が抑制されることと、発生した劣化臭がマスキングされていることのいずれか一方または両方を含む。劣化臭が低減された乳入り飲料とは、エピガロカテキンと無機塩のいずれも配合していない乳入り飲料と比較して劣化臭が低減されていることを意味する。
【0014】
本発明で使用する「無機塩」とは、無機酸と無機塩基からなる塩をいう。本発明では、無機塩として、少なくとも1種類のマグネシウム塩を含有し、好ましくは更に少なくとも1種類のカリウム塩を含有する。本発明者らは、カルシウム塩には本発明の効果はなく、飲料中のカルシウム含有量が高まると保存中に沈殿や凝集を起こしやすいことを確認している。したがって、前記マグネシウム塩やカリウム塩は、様々な金属元素の塩を含む各種無機塩の混合物の形態、例えば、精製されていない天然由来の各種塩を含む各種ミネラル素(例えば、ミネラル(Mg)含有酵母、アクアミネラル、乳清ミネラル等)として添加するのではなく、以下に例示するような食品添加物としてのマグネシウム塩やカリウム塩の形態で添加することが重要である。
【0015】
本発明におけるマグネシウム塩の好ましい具体例としては、例えば、食品添加物として使用され得る塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、L-グルタミン酸マグネシウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、少なくとも1種類のマグネシウム塩が、塩化マグネシウムを含むことは好ましい。
【0016】
上記マグネシウム塩は、本発明の飲料中のマグネシウム含有量が0.5mg/100ml以上となるように添加する。マグネシウム塩の含有量に応じて本発明の劣化臭低減効果が発現することから、マグネシウム塩は好ましくは飲料中のマグネシウム含有量が0.6mg/100ml以上となるような量で添加し、より好ましくは0.7mg/100ml以上、さらに好ましくは0.8mg/100ml以上、特に好ましくは0.9mg/100ml以上、ことさらに好ましくは1.0mg/100ml以上となるように添加する。飲料中のマグネシウムの含有量が8.0mg/100mlを超えると、本発明の劣化臭低減効果が頭打ちとなり、コストが上昇するため好ましくない。また、過剰なマグネシウム塩の添加は、飲料の香味に影響を及ぼすことがある。マグネシウム特有のえぐ味は、特定量のカリウムがあると著しく低減し、飲料への影響を最小化することができる。マグネシウム塩は、飲料中のカリウム含有量とマグネシウム含有量の比([カリウム含有量/マグネシウム含有量])が1.0~30.0となるように添加することが好ましい。より好ましくは2.0~25.0、さらに好ましくは3.0~20.0の範囲である。飲料中のマグネシウム含有量の上限は、上記の通り、8.0mg/100ml以下であり、好ましくは6.0mg/100ml以下、より好ましくは5.0mg/100ml以下、さらに好ましくは4.0mg/100ml以下、特に好ましくは3.0mg/100ml以下である。飲料中のマグネシウムの含有量は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP発光分析法)により測定することができる。
【0017】
飲料中には、通常、上記無機塩として添加したもの以外にも、乳成分等の原料由来のミネラル分が存在する。本発明では、最終的に得られる飲料中のマグネシウムの含有量(原料由来のマグネシウムと、マグネシウム塩として添加したマグネシウムの両方を含む)が上記範囲となるようにマグネシウム塩を含む無機塩を添加すればよい。通常、添加されるマグネシウム塩の量は、飲料全体に対して0.0005~0.1質量%、好ましくは0.0008~0.08質量%、より好ましくは0.001~0.05質量%、又は0.001~0.01質量%である。
【0018】
本発明の乳入り飲料は、上記マグネシウム塩に加えて、無機塩であるカリウム塩を含有することが好ましい。カリウム塩を併用すると、マグネシウム塩と相乗的に作用して、マグネシウム塩単独の場合よりも劣化臭をより低減することができる。本発明におけるカリウム塩の好ましい具体例としては、例えば、塩化カリウム、リン酸カリウム、グルコン酸カリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、塩化カリウムを含むことは好ましい。
【0019】
飲料中には、通常、上記無機塩のカリウム塩として添加されるもの以外にも、乳成分等の原料由来のカリウムが存在する。本発明においてカリウム塩を添加する場合には、最終的に得られる飲料中のカリウム含有量(原料由来のカリウムと、カリウム塩として添加したカリウムの両方を含む)が、上述の通り、マグネシウム含有量に対して1.0~30.0(すなわち、[カリウム含有量/マグネシウム含有量]が1.0~30.0)となるように添加することが好ましい。なお、飲料中のカリウムの含有量は、原子吸光光度法により測定することができる。カリウム塩を飲料に添加する場合、添加されるカリウム塩の量は、通常、飲料全体に対して0.0005~0.1質量%、好ましくは0.0008~0.08質量%、より好ましくは0.001~0.05質量%、さらに好ましくは0.002~0.03質量%である。
【0020】
好適なマグネシウム塩やカリウム塩の一例として、塩化マグネシウム、塩化カリウムを例示できる。乳入り飲料は、加熱殺菌後に特有のぬめりや切れ味の悪い香味が発現しやすいが、塩化物塩を飲料に添加すると、飲料の後味のキレがよくなり、ぬめりや切れ味の悪い香味が低減され、本発明の効果がより一層知覚できる。
【0021】
本発明では、上述の通り、マグネシウム塩を含む無機塩(好ましくはさらにカリウム塩含む無機塩である)と、エピガロカテキンとを飲料に添加することで、乳成分を含有しながらも劣化臭が低減された飲料を得ることができる。上述の通り、マグネシウムやカリウムは、無機塩以外の原料(例えば乳成分など)からも飲料中に持ち込まれ得るが、本発明では、飲料に、「無機塩」(食品添加物として使用され得るマグネシウム塩等)を添加することが重要である。
【0022】
本発明は、別の観点から言えば、飲料にマグネシウム塩を含む無機塩(好ましくはさらにカリウム塩含む無機塩である)を添加することを含む、劣化臭が低減された乳入り飲料の製造方法であるとも言える。無機塩は、飲料の加熱殺菌を行う前であればいずれの段階で添加してもよい。飲料に無機塩を添加する際には、飲料中のマグネシウム含有量(好ましくはさらにカリウム含有量)が上述した範囲内となるように添加する。これにより、無機塩が添加されていない場合に比べて、劣化臭が低減された、乳入り飲料を提供することができる。
【0023】
(その他成分)
その他、本発明の飲料には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、上記成分に加え、飲料に一般的に配合される成分、例えば、甘味成分、酸化防止剤、香料、ビタミン、乳化剤、増粘安定剤等を適宜添加することができる。
【0024】
(加熱殺菌)
本発明の乳入り飲料は、長期保存のための加熱殺菌が行われる加熱殺菌済み飲料である。ここで、本明細書における加熱殺菌とは、乳成分とエピガロカテキンと無機塩とを含有する調合液を高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法とをいう。加熱殺菌の条件は、乳入り飲料の調合液の特性や使用する保存容器に応じて適宜選択すればよいが、UHT殺菌法の場合、通常120~150℃で1~120秒間程度、好ましくは130~145℃で30~120秒間程度の条件であり、レトルト殺菌法の場合、通常110~130℃で10~30分程度、好ましくは120~125℃で10~20分間程度の条件である。
【0025】
本発明の加熱殺菌済み飲料は、長期保存可能な密封された容器詰めの飲料である。当該容器は、一般の容器詰め飲料と同様に、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の形態で提供することができる。本発明の飲料は、所定量のマグネシウム材料を含有させることにより、光劣化耐性を有する。したがって、本発明の効果を顕著に享受できることから、透明容器、特に、PETボトル容器は好適な態様である。ここで、透明容器とは、実質的に内容物を外側から目視することができる遮光されていない容器をいい、着色されている容器も透明容器に含まれるものとする。
【実施例0026】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0027】
<成分分析>
(1)マグネシウム含有量
「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等」に記載されているマグネシウムの分析方法に従い、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP発光分析法)を用いて測定した。
【0028】
(2)カリウム含有量
「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等」に記載されているカリウムの分析方法に従い、前処理方法として塩酸抽出法を、測定方法として原子吸光光度法を用いて測定した。
(3)たんぱく質含有量
「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等」に記載されているケルダール法にて分析し、下記式により求めた:
たんぱく質含有量(g/100g)=(V-B)×F×0.0014×K×100÷S
V:本試験滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:0.05mol/L硫酸標準溶液のファクター
K:窒素・たんぱく質換算係数
S:試料のサンプリング量(g)
0.0014:0.05mol/L硫酸標準溶液1mlに対する窒素量(g)。
【0029】
飲料の比重を測定し、100gあたりのたんぱく質含有量を100mlあたりに換算した。
【0030】
(4)エピガロカテキン含有量
試料となる緑茶飲料をフィルター(孔径0.45μm)でろ過し、HPLC分析に供した。HPLCの分析条件は以下のとおり。
・HPLC装置:TOSOH HPLCシステム LC8020 model II
・カラム:TSKgel ODS80T sQA(4.6mm×150mm)
・カラム温度:40℃
・移動相A:水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸(90:10:0.05)
・移動相B:水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸(20:80:0.05)
・検出:UV275nm
・注入量:20μL
・流速:1ml/min.
・グラジエントプログラム:
時間(分) %A %B
0 100 0
5 92 8
11 90 10
21 90 10
22 0 100
29 0 100
30 100 0
・標準物質:エピガロカテキン(クリタ高純度試薬)
実験例1 エピガロカテキンによる劣化臭低減作用
表1に示す量の牛乳と乳化剤と重曹を混合した。これにエピガロカテキン(EGC)を種々の濃度で添加して全量が1000gとなるように加水して均質化処理し、調合液を得た。これを190g缶に充填した後、125℃、20分間の加熱殺菌を行って、加熱殺菌済みの乳入り飲料(pH6.7)を製造して20℃に冷却した。なお、実験例1ではいずれの飲料にも「マグネシウム塩を含む無機塩」は配合されていない。
【0031】
得られた加熱殺菌済みの乳入り飲料について、各種成分分析を行うとともに、専門パネル10名で加熱劣化臭の強さを官能評価した。各パネルが、対照(No.1-1)と比較して加熱劣化臭が低減されているか否かを評価し、評価した人数によって以下5段階の評価とした。表1に結果を示す。EGCを配合することで、加熱劣化臭が低減した。
【0032】
・5点:パネル全員(10名)が対照と比較して加熱劣化臭が弱いと感じる
・4点:パネルの過半数(7~9名)が対照と比較して加熱劣化臭が弱いと感じる
・3点:パネルのおよそ半数(5~6名)が対照と比較して加熱劣化臭が弱いと感じる
・2点:パネルの半数未満(2~4名)が対照と比較して加熱劣化臭が弱いと感じる
・1点:パネルの0~1名のみが対照と比較して加熱劣化臭が弱いと感じる
【0033】
【0034】
実験例2 EGCとマグネシウム塩による劣化臭低減作用(1)
表2に示す量のマグネシウム塩を配合すること以外は、実験例1と同様にして加熱殺菌済みの乳入り飲料(pH6.7)を製造した。EGCは配合されているがマグネシウム塩が配合されていないもの(No.2-2)や、マグネシウム塩は配合されているがEGCは配合されていないもの(No.2-3、2-4)では劣化臭低減効果は十分ではなかったが、EGCとマグネシウム塩とを併用したもの(No.2-5~2-8)は、パネルの過半数または全員が知覚できるほど、劣化臭を低減することができたことから、EGCとマグネシウム塩は相乗作用があることが判明した。劣化臭は低減されたが、サンプルNo.2-7、2-8では、マグネシウム由来のえぐ味を感じるパネルが存在したことから、飲料中のマグネシウム含有量は8.0mg/100mlを超えない方が好ましいことが示唆された。
【0035】
【0036】
実験例3 EGCとマグネシウム塩による劣化臭低減作用(2)
乳成分の量を変える以外は、実験例2と同様にして加熱殺菌済みの乳入り飲料(pH6.7)を製造し、No.3-1を対照に用いて評価を行った。表3に結果を示す。乳成分が少ない場合にもEGCとマグネシウム塩の併用による相乗的な劣化臭低減作用が確認できた。
【0037】
【0038】
実験例4 EGCとマグネシウム塩による劣化臭低減作用(3)
マグネシウム塩の種類を変える以外は、実験例2と同様にして加熱殺菌済みの乳入り飲料(pH6.7)を製造し、No.4-1を対照に用いて評価を行った。表4に結果を示す。マグネシウム塩の種類を変更した場合にもEGCとマグネシウム塩の併用による相乗的な劣化臭低減作用が確認できた。
【0039】
【0040】
実験例5 カリウム塩の影響
表5に示す処方で塩化カリウムを配合して、実験例2と同様にして加熱殺菌済みの乳入り飲料(pH6.7)を製造した。得られた飲料について、No.5-1とNo.5-2~5-6のそれぞれとをペアにして5名のパネルに提示し、どちらが劣化臭を強く感じるかを二点識別法にて評価した。結果を表6に示す。カリウム塩を配合することにより、より一層、劣化臭が低減できた。
【0041】
【0042】
【0043】
実験例6 透明容器詰め飲料の製造
緑茶葉又は焙じ茶葉を用いて茶抽出液を調製した。茶葉100gを3000mlの熱湯(90℃、8分)の条件で撹拌抽出した後、遠心分離機で固液分離して抽出液を得た。この抽出液又は抹茶粉末を用いて、表7に示す処方で乳入り茶飲料を製造した。得られた乳入り茶飲料を加熱殺菌し、500mlずつを透明PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル容器に充填して加熱殺菌済みの容器詰め飲料とした。これら乳入り茶飲料について、無機塩無添加の対照と比較してどちらの乳入り茶飲料が劣化臭を強く感じるかについて二点識別法にて専門パネル10名で評価した。結果を表8に示す。マグネシウムを含む無機塩を添加することで、劣化臭が低減された。
【0044】
【0045】
【0046】
さらに、当該容器に充填した乳入り茶飲料を、10000ルクスの可視光照射下で、15℃で60日間保存した後、上記と同様にして官能評価を行った。結果を表9に示す。対照飲料は大きく風味が変化していたの対し、マグネシウムを含む無機塩を添加した飲料は、劣化臭が少なく、パネル全員が対照と比べて劣化臭が弱く好ましい乳入り飲料の風味であると評価した。
【0047】