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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156351
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ガス絶縁開閉装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/915 20060101AFI20241029BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01H33/915
H02B13/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070733
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野 俊平
(72)【発明者】
【氏名】向田 彰久
(72)【発明者】
【氏名】高尾 修平
(72)【発明者】
【氏名】今澤 優子
【テーマコード(参考)】
5G001
5G017
【Fターム(参考)】
5G001AA13
5G001BB03
5G001CC03
5G001DD03
5G001EE01
5G001FF01
5G001FF03
5G001GG14
5G017BB01
5G017DD01
(57)【要約】
【課題】環境負荷が低く、かつ、安定した電流遮断を可能とすることができるとともに、部品点数が少なく簡素な構造かつ信頼性の高いガス絶縁開閉装置を提供する。
【解決手段】GWP10以下の絶縁ガスが封入された密閉容器内に収容された開閉機構であって、円筒状の可動側電極、当該可動側電極に配設されたピストン、可動側電極及びピストンが摺動可能に構成されたシリンダ、を具備した可動電極と、可動側電極の外周部と接触する固定側通電電極、可動側電極に向けて突出するように設けられ可動側電極の内部に挿入可能とされた固定側電極、を具備した固定電極と、を有し、遮断動作時に、固定電極に設けられた通気孔から固定側電極の周囲を通り可動電極の内部を通って、可動側電極及びピストンと前記シリンダとの間に形成される減圧空間に流入する絶縁ガスの流れが形成されるよう構成された開閉機構を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球温暖化係数(GWP)10以下の絶縁ガスが封入された密閉容器内に収容された開閉機構であって、
円筒状の可動側電極、当該可動側電極に配設されたピストン、前記可動側電極及び前記ピストンが摺動可能に構成されたシリンダ、を具備した可動電極と、
前記可動側電極の外周部と接触する固定側通電電極、前記可動側電極に向けて突出するように設けられ前記可動側電極の内部に挿入可能とされた固定側電極、を具備した固定電極と、を有し、
遮断動作時に、前記固定電極に設けられた通気孔から前記固定側電極の周囲を通り前記可動電極の内部を通って、前記可動側電極及び前記ピストンと前記シリンダとの間に形成される減圧空間に流入する前記絶縁ガスの流れが形成されるよう構成された開閉機構を有する
ことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス絶縁開閉装置であって、
前記開閉機構は、前記遮断動作時に、
前記固定側電極と前記可動側電極とが接触した状態で、先ず前記固定側通電電極と前記可動側電極とが離間し、この後、前記固定側電極と前記可動側電極とが離間するよう構成されている
ことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス絶縁開閉装置であって、
前記可動側電極の底部に、前記絶縁ガスの流れをガイドするフローガイドを設けたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のガス絶縁開閉装置であって、
固定側通電電極の外側に位置するようにシールドが設けられ、当該シールドの先端部分に耐アーク性能を有する耐アーク材料からなる耐弧片を設けたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のガス絶縁開閉装置であって、
前記固定側通電電極の先端に、耐アーク性能を有する耐アーク材料からなる耐弧片を設けたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力系統の切替時に電流を遮断するために、遮断器や断路器、接地開閉器等からなるガス絶縁開閉装置が電力供給線に配置されている。
【0003】
停止中の送電線の両端2ヶ所をガス絶縁開閉装置の線路側接地開閉器を入りにすると閉ループができ、その閉ループに対して他相や他回線の電流による磁束が鎖交して電磁誘導電流が流れることが知られている。よって送配電系統に配置され回路の開閉を行う装置には、これらのような電流の遮断責務が求められる。
【0004】
これまで、従来のガス絶縁開閉装置には、絶縁媒体としてSFを使用してきたが、SFの地球温暖化係数(GWP)はCO比で25200倍と高く、2015年COP21パリ協定以降地球温暖化防止に向けての取り組みが国際的に加速しており、日本国内においても今後SFガスの使用に規制がかかることが予想される。
【0005】
現時点においても、例えば欧州の規制動向は、GWP値ごとに規制が分類され、最も厳しい規制内容ではGWPが10以下のガスを使用するよう求めている。この規制を満たす代替ガスとして自然由来ガスが考えられるが、従来のSFガスと比較し消弧能力が低く、電流遮断に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6048226号公報
【特許文献2】特許第5389279号公報
【特許文献3】特許第6837607号公報
【特許文献4】特許第5961564号公報
【特許文献5】特許第4852434号公報
【特許文献6】特開2020-161459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
まず、従来のガス絶縁開閉装置における遮断過程とその構造について図17~20を用いて説明する。なお、これらの図において、左側に示されているのが固定電極、右側に示されているのが可動電極である。
【0008】
遮断開始前の投入状態を示したものが図17となっており、固定側通電電極9と可動側電極3において通電している。なお、図17において、5はピストン、6はシリンダ、7は減圧空間(負圧発生部)、8はシールド、10は固定側導体、11は透孔、14は耐アーク材料(耐弧片)である。
【0009】
続いて図18が遮断過程前半、図19が遮断過程後半を示している。固定側通電電極9と可動側電極3が機械的に切り離されると電極間でアーク放電4が発生し、遮断過程が進んで極間距離が長くなるにつれアーク放電4も引き延ばされていく。この際、吸込み消弧方式により、可動側電極3の内側を通り減圧空間7へ向かうSFガスの流れが生じ、アーク放電4にSFガスが吹付けられアーク放電4を冷却することや、絶縁ガスに遮断性能の高いSFを用いているため、電極間で生じるアーク放電4を駆動装置により引き延ばすことで電流を遮断する、いわゆる自力消弧の効果と合わせ電流遮断が可能となる(図20)。
【0010】
しかしながら、SFガスに比べて遮断性能が1/100程度であるドライエアの場合、従来のガス絶縁開閉装置の構造では、吸込み消弧方式のアーク放電4を冷却する効果は期待出来るものの、自力消弧の効果が低く、アーク放電4を引き延ばすことで電流遮断することは困難である。
【0011】
上記課題に対し、関連する先行技術の概要を以下に述べる。
上述した従来の吸込み消弧方式は、遮断時に可動側電極の穴を介しシリンダに絶縁ガスを吸込み、投入時にシリンダ内の絶縁ガスをアークに対し吹き付けてしまうため、ガス流によりアークが拡散し位置制御できず、固定側シールドやコンタクトにダメージを与える恐れがある。このため、例えば、特許文献1に記載されているように、シリンダ内を2室に仕切るピストンとシリンダ間に開閉可能な連通孔を設け、開極時・閉極時ともに吸込み方式となるようにする構造が提案されている。
【0012】
この先行技術において、固定側電極の外部から絶縁ガスを可動側電極の内部に取り込む際、アークの位置が定まらず、固定側電極内のアークコンタクト以外の固定側シールドに転流してしまい、効率良くアークを冷却することが困難となる課題がある。自力消弧能力が高いSFガスであれば、この構造であっても十分な消弧能力を得られるが、自然由来ガスにおいてはアークが付く位置を制御し絶縁ガスでより冷却できるようなガスフローが形成される必要がある。さらに開極閉極共に絶縁ガスを吸込む機構を有しているため、構造が複雑で大きくなる課題がある。
【0013】
アーク位置の制御に関する先行技術として、例えば、特許文献2に記載された技術がある。この技術では、アーク発生部を囲うノズルに対しその内側と外側を連通する孔を設け、アーク熱によってノズル内側の圧力が上昇することで、ノズル内外に圧力差が生まれ、この圧力差によってアークをコントロールし、消弧部材に効率よくアークを作用・溶融させて消弧性ガスを発生させることで消弧能力の向上が可能となる。
【0014】
一方、上記の技術では、極間にノズルが存在する為、構造が複雑で開閉機構の全長が長くなる課題がある。
【0015】
自力消弧能力が低い点に対しその改善に関連する先行技術として、例えば、特許文献3に記載された技術がある。この技術では、固定側電極と可動側電極それぞれに永久磁石を埋込むことで、開閉時に磁界を作り、アークの挙動をコントロールすることで可動側電極の外側に設けられた通電用端子の損傷を抑制する。一方、永久磁石を埋め込む為、サイズが大きくなる課題や、さらにガス絶縁開閉装置の使用環境下で-20℃時に電流開閉をした際、永久磁石が減磁し、その後遮断性能を維持できなくなる課題がある。
【0016】
また、例えば特許文献4には、可動側電極と固定側電極の少なくとも一方の対向側先端から順にそれぞれ中空同軸円筒状の第一電極とスペーサと第二の電極とを設け、第一電極表面において簡易にアークが周回運動を起こすための磁場を発生させる構造とすることが記載されている。この構造は大電流が流れるループ電流開閉責務には向いているが、小電流で弱い磁界しか発生しない電磁誘導電流開閉責務では消弧能力が低く向いていないという課題がある。
【0017】
また、例えば特許文献5には、可動側電極と固定側電極の少なくとも一方をスパイラル構造にし、アークが付いてコイル状になったスパイラル構造の電極に電流が流れることで磁界を発生させ、絶縁ガスにアークが晒されることにより消弧する構造が記載されている。この構造では、電極面に微小なスリットを配置しなければならず、スリット間にアークが転流することを防ぐための絶縁構造が必要となり、また固定側と可動側に対向するアークコンタクト先端に当該スパイラル電極を配置するために、開極動作においてスパイラル電極が物理的に最後に解離するよう、アークコンタクトにバネを設けなければならない等、構造が複雑になるという課題がある。
【0018】
また、例えば特許文献6には、アークを磁気駆動させてコントロールし、固定側電極を覆うように配置されている絶縁カバーに接触するようにする構造が記載されている。この構造では、アークは高熱であるため絶縁カバーから消弧性ガスが発生し、このガスがアークを冷却することで消弧性能の向上が可能となる。一方、永久磁石による減磁の課題や絶縁カバーを内蔵することにより開閉機構の全長が長くなる課題がある。
【0019】
以上のように、従来構造や先行技術には、上記した課題があった。このため、アークに効率よく絶縁ガスが当たるようアーク位置を制御すること、またアークに吹き付けるガス流量を増大させアークを効率良く冷却させること等により、自然由来ガスを代替ガスとして使用し環境負荷が低くても安定した電流遮断を可能とし、また部品点数が少なく簡素な構造かつ信頼性の高いガス絶縁開閉装置の開発が望まれていた。
【0020】
本発明は、上記した従来の事情に対処してなされたものであり、環境負荷が低く、かつ、安定した電流遮断を可能とすることができるとともに、部品点数が少なく簡素な構造かつ信頼性の高いガス絶縁開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
実施形態のガス絶縁開閉装置は、地球温暖化係数(GWP)10以下の絶縁ガスが封入された密閉容器内に収容された開閉機構であって、円筒状の可動側電極、当該可動側電極に配設されたピストン、前記可動側電極及び前記ピストンが摺動可能に構成されたシリンダ、を具備した可動電極と、前記可動側電極の外周部と接触する固定側通電電極、前記可動側電極に向けて突出するように設けられ前記可動側電極の内部に挿入可能とされた固定側電極、を具備した固定電極と、を有し、遮断動作時に、前記固定電極に設けられた通気孔から前記固定側電極の周囲を通り前記可動電極の内部を通って、前記可動側電極及び前記ピストンと前記シリンダとの間に形成される減圧空間に流入する前記絶縁ガスの流れが形成されるよう構成された開閉機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、環境負荷が低く、かつ、安定した電流遮断を可能とすることができるとともに、部品点数が少なく簡素な構造かつ信頼性の高いガス絶縁開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係るガス絶縁開閉装置の投入状態の概略構成を示す図。
図2】第1実施形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断過程前半の概略構成を示す図。
図3】第1実施形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断過程後半の概略構成を示す図。
図4】第1実施形態に係るガス絶縁開閉装置の切状態の概略構成を示す図。
図5】第2実施形態に係るガス絶縁開閉装置の投入状態の概略構成を示す図。
図6】第2実施形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断過程前半の概略構成を示す図。
図7】第2実施形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断過程後半の概略構成を示す図。
図8】第2実施形態に係るガス絶縁開閉装置の切状態の概略構成を示す図。
図9】第3実施形態に係るガス絶縁開閉装置の投入状態の概略構成を示す図。
図10】第3実施形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断過程前半の概略構成を示す図。
図11】第3実施形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断過程後半の概略構成を示す図。
図12】第3実施形態に係るガス絶縁開閉装置の切状態の概略構成を示す図。
図13】第4実施形態に係るガス絶縁開閉装置の投入状態の概略構成を示す図。
図14】第4実施形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断過程前半の概略構成を示す図。
図15】第4実施形態に係るガス絶縁開閉装置の遮断過程後半の概略構成を示す図。
図16】第4実施形態に係るガス絶縁開閉装置の切状態の概略構成を示す図。
図17】従来の絶縁開閉装置の投入状態の概略構成を示す図。
図18】従来の絶縁開閉装置の遮断過程前半の概略構成を示す図。
図19】従来の絶縁開閉装置の遮断過程後半の概略構成を示す図。
図20】従来の絶縁開閉装置の切状態の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係るガス絶縁開閉装置について、図面を参照して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
まず、図1乃至4を参照して第1実施形態について説明する。なお、図1は投入状態、図2は遮断過程前半、図3は遮断過程後半、図4は切状態を示している。また、これらの図において、左側に示されているのが固定電極、右側に示されているのが可動電極である。
【0026】
本実施形態に係るガス絶縁開閉装置では、容器内には消弧性ガスとして、地球温暖化係数(GWP)10以下の絶縁ガス1(N、O、CO、He、Ar、Ne、Xe、Kr等やそれらを少なくとも一つ以上含む混合ガス、F及びK及びNを含む混合ガス)を封入した構成とする。なお、例えばF、K、Nなど、地球温暖化係数(GWP)10以下ではないガスを添加しても、絶縁ガス1全体として地球温暖化係数(GWP)10以下となれば良い。
【0027】
図1において、2は固定側電極、3は可動側電極であり、固定側電極2は、可動側電極3と対向するように配設されている。可動側電極3は、円筒状に構成されており、その後端側には、ピストン5が接続されている。このピストン5は、シリンダ6内を前後(図1の左右)に摺動可能とされている。また、ピストン5とシリンダ6との間には、減圧空間(負圧発生部)7が形成されており、円筒状の可動側電極3の側壁部には、複数の透孔11が形成され、これらの透孔11によって、可動側電極3の内部と減圧空間7とが連通されている。
【0028】
一方、固定側電極2は、丸棒状に構成されており、その先端側(図1において右側)を可動側電極3内に収納可能とされている。固定側電極2には、スリット状に切り込みが設けられており、その先端側が縮径する方向に変形可能とされている。固定側電極2及び可動側電極3の先端側には、夫々銅タングステン合金等の耐アーク性能を有する耐アーク材料14からなる耐弧片が設けられている。
【0029】
固定側電極2は、有底円筒状の固定側導体10の底部から突出するように配設されており、その開放端側には、シールド8が設けられ、シールド8の内側に位置するように、定通電電極9が配設されている。固定側通電電極9は、その内部に可動側電極3を挿入可能とされており、通電状態では固定側通電電極9の内側面と、可動側電極3の外側面とが接触するよう構成されている。また、固定側導体10の側壁部には、複数の通気孔12が配設されている。
【0030】
上記構成の本第1実施形態のガス絶縁開閉装置では、図1に示すように、通電状態では固定側通電電極9と可動側電極3は接触し、通電している。この通電状態から遮断状態への移行では、図2に示す遮断過程前半、図3に示す遮断過程後半、図4に示す切状態、に移行する。この遮断過程では、固定側電極2の先端部(耐アーク材料14の部分)と可動側電極3の先端側内周部(耐アーク材料14の部分)とが接触した状態で、固定側通電電極9と可動側電極3とが離間し、さらに可動側電極3が移動することにより、次に固定側電極2の先端部(耐アーク材料14の部分)と可動側電極3の先端側内周部(耐アーク材料14の部分)とが離間する。このため、固定側電極2(耐アーク材料14の部分)と可動側電極3(耐アーク材料14の部分)との間でアーク放電4が発生する。
【0031】
上記の通電状態から遮断状態への移行において、ピストン5が駆動され、ピストン5とシリンダ6から構成される減圧空間7内において負圧が発生する。また、上記したとおり、可動側電極3と固定側電極2が対向配置され、電流遮断状態では可動側電極3が移動することで、可動側電極3と固定側電極2の間にアーク放電4が発生する。この際、減圧空間7において発生した負圧によって絶縁ガス1を吸込み、固定側導体10の通気孔12から、アーク放電4の発生している部位を通り、可動側電極3の内部を通って、透孔11から減圧空間7へと流れる絶縁ガス1のガスフローが生じる。
【0032】
以上のように、本第1実施形態では、地球温暖化係数(GWP)10以下の絶縁ガス1の雰囲気中において固定側電極2と可動側電極3間の中心軸付近で発生したアーク4の転流タイミングを工夫してアーク4の位置を制御し、減圧空間7の負圧に起因する吸込みガスフローで効率良く絶縁ガス1をアーク4に当てることが可能となる。
【0033】
これによって、地球温暖化係数(GWP)10以下の絶縁ガス1の雰囲気下において、極間で発生するアーク4の位置を制御し、絶縁ガス1のガスフローを設けることで効率よくアーク4を冷却することができ、消弧能力の向上が可能となる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、図5乃至8を参照して第2実施形態について説明する。なお、図5は投入状態、図6は遮断過程前半、図7は遮断過程後半、図8は切状態を示している。また、図1乃至4に示した第1実施形態と対応する部分には、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0035】
第2実施形態では、図5乃至8に示すように、可動側電極3の底の部分に、絶縁ガス1のガスフローをガイドするためのフローガイド13を設けた構成となっている。このフローガイド13は、開極時のガスフローが、透孔11を介して減圧空間7に吸い込まれる際、可動側電極3の底においてガスフローが反射することを抑制し、減圧空間7の負圧上昇をなめらかにして、動作エンドまで安定した負圧を発生させるためのものである。
【0036】
本第2実施形態では、図5乃至8に示すように、フローガイド13は、断面形状が台形状で実際の3次元の形状が接頭円錐状とされている。しかし、フローガイド13の形状は、係る形状に限定されるものではなく、他の形状、例えば、断面形状が三角形状のもの、半円形状のもの等ガスフローを好適に制御できるものであれば、どのようなものでもよい。
【0037】
本第2実施形態によれば、負圧上昇が安定するため、絶縁ガス圧力変化が少なく、固定側導体10の外側から内側、固定側導体10の内側から可動側電極3、減圧空間7へのガスフローが円滑になり、アーク放電4に効率良く絶縁ガス1を当て、冷却、消弧能力の向上が可能となる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、図9乃至12を参照して第3実施形態について説明する。なお、図9は投入状態、図10は遮断過程前半、図11は遮断過程後半、図12は切状態を示している。また、図1乃至8に示した第1実施形態、第2実施形態と対応する部分には、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0039】
本第3実施形態では、シールド8のアーク放電4に近い先端部の一部に、銅タングステン合金等の耐アーク性能を有する耐アーク材料14からなる耐弧片が設けられている。本第3実施形態によれば、アーク放電4が固定側電極2と可動側電極3の間で発生した際、アーク熱に煽られてシールド8が溶損することを抑制することができる。
【0040】
上記のように、本第3実施形態では、シールド8が溶損することを最小限に抑え、シールド8が溶損し二次的なアーク発生源になることを防ぐことと、アーク放電4の位置を、固定側電極2と可動側電極3との間で制御することができる。
【0041】
(第4実施形態)
次に、図13乃至16を参照して第4実施形態について説明する。なお、図13は投入状態、図14は遮断過程前半、図15は遮断過程後半、図16は切状態を示している。また、図1乃至12に示した第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態と対応する部分には、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0042】
本第4実施形態では、固定側通電電極9のアーク放電4に近い先端部の一部に銅タングステン合金等の耐アーク性能を有する耐アーク材料14からなる耐弧片が設けられている。本第4実施形態によれば、アーク放電4が固定側電極2と可動側電極3の間で発生した際、アーク熱に煽られることによって固定側通電電極9が溶損することを抑制することができる。
【0043】
上記のように、本第4実施形態では、固定側通電電極9が溶損することを最小限に抑え、固定側通電電極9が溶損し二次的なアーク発生源になることを防ぐことと、アーク放電4の位置を、固定側電極2と可動側電極3との間で制御することができる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1……地球温暖化係数(GWP)10以下の絶縁ガス、2……固定側電極、3……可動側電極、4……アーク放電、5……ピストン、6……シリンダ、7……減圧空間(負圧発生部)、8……シールド、9……固定側通電電極、10……固定側導体、11……透孔、12……通気孔、13……フローガイド、14……耐アーク材料(耐弧片)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20