(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156362
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電力変換装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H02M7/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070762
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】畠中 健太
(72)【発明者】
【氏名】越智 健次
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔大
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA07
5H006CA02
5H006CB08
5H006CC02
5H006CC08
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】構成部品を有効利用できる電力変換装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、第1~第3上,下アームスイッチS1H~S3Lと、高電位側経路30Hと、低電位側経路30Lと、第1~第3経路41~43と、第1~第3インダクタ31~33と、第1直流側コンデンサ34Aと、第2直流側コンデンサ34Bと、切替スイッチ52とを備えている。切替スイッチ52は、高電位側経路30Hと低電位側経路30Lとを接続する平滑コンデンサが、各コンデンサ34A,34Bの直列接続体、又は第1直流側コンデンサ34Aとなるように切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相の交流端子(Tac1~Tac4)と、
高電位側直流端子(TdcH)及び低電位側直流端子(TdcL)と、
を備え、
複数相の交流電流を流す複数相交流部(200)又は単相交流電流を流す単相交流部(210)が前記交流端子に電気的に接続可能に構成された電力変換装置(10)において、
各相に対応して設けられた上,下アームスイッチ(S1H~S3L)と、
各相の前記上アームスイッチの高電位側端子及び前記高電位側直流端子を接続する高電位側経路(30H)と、
各相の前記下アームスイッチの低電位側端子及び前記低電位側直流端子を接続する低電位側経路(30L)と、
各相に対応して設けられ、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチの接続点と前記交流端子とを接続する電気経路(41~43)と、
各相の前記電気経路に設けられたインダクタ(31~33)と、
第1コンデンサ(34A,34C)と、
第2コンデンサ(34B,34D)と、
前記高電位側経路と前記低電位側経路とを接続するコンデンサが、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの直列接続体、又は前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサのいずれかとなるように切り替える切替スイッチ(52,53,62)と、
を備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記交流端子として、第1交流端子(Tac1)、第2交流端子(Tac2)、第3交流端子(Tac3)及び第4交流端子(Tac4)を備え、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に、前記複数相交流部としての3相交流部が電気的に接続可能であり、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流部が電気的に接続可能なように前記電力変換装置が構成されており、
前記上,下アームスイッチとして、
第1上アームスイッチ(S1H)及び第1下アームスイッチ(S1L)と、
第2上アームスイッチ(S2H)及び第2下アームスイッチ(S2L)と、
第3上アームスイッチ(S3H)及び第3下アームスイッチ(S3L)と、
を備え、
前記電気経路として、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを接続する第1経路(41)と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを接続する第2経路(42)と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを接続する第3経路(43)と、
を備え、
前記インダクタとして、
前記第1経路に設けられた第1インダクタ(31)と、
前記第2経路に設けられた第2インダクタ(32)と、
前記第3経路に設けられた第3インダクタ(33)と、
を備え、
上アーム整流部(S4H,D4H)及び下アーム整流部(S4L,D4L)と、
接続経路(44)と、
切替経路(50)と、
前記切替経路に設けられた開閉スイッチ(51)と、
を備え、
前記上アーム整流部の高電位側端子は、前記高電位側経路に接続されており、
前記下アーム整流部の低電位側端子は、前記低電位側経路に接続されており、
前記第1コンデンサ(34A)の第1端は、前記高電位側経路に接続されており、
前記上アーム整流部及び前記下アーム整流部の接続点と、前記第4交流端子とは、前記接続経路によって接続されており、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側の部分又は前記第3交流端子と、前記第2コンデンサ(34B)の第1端とは、前記切替経路によって接続されており、
前記第2コンデンサの第2端は、前記低電位側経路に接続されており、
前記切替スイッチ(52)は、前記第1コンデンサの第2端の接続先を、前記第2コンデンサの第1端又は前記低電位側経路のいずれかに切り替える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
制御装置(100)を備え、
前記制御装置は、前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に前記3相交流部が電気的に接続されていると判定した場合、前記開閉スイッチをオフするとともに、前記第1コンデンサの第2端の接続先を前記第2コンデンサの第1端とするように前記切替スイッチを制御する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
制御装置(100)を備え、
前記制御装置は、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流部が電気的に接続されていると判定した場合、前記開閉スイッチをオンするとともに、前記第1コンデンサの第2端の接続先を前記低電位側経路とするように前記切替スイッチを制御する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流部が電気的に接続されているとともに、前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチのスイッチング制御により前記高電位側直流端子及び前記低電位側直流端子と前記第1交流端子及び前記第4交流端子との間で電力が伝達されると判定した場合、前記第1コンデンサの端子電圧の脈動を低減すべく、前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチのスイッチング制御を行う、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記交流端子として、第1交流端子(Tac1)、第2交流端子(Tac2)、第3交流端子(Tac3)及び第4交流端子(Tac4)を備え、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に、前記複数相交流部としての3相交流部が電気的に接続可能であり、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流部が電気的に接続可能なように前記電力変換装置が構成されており、
前記上,下アームスイッチとして、
第1上アームスイッチ(S1H)及び第1下アームスイッチ(S1L)と、
第2上アームスイッチ(S2H)及び第2下アームスイッチ(S2L)と、
第3上アームスイッチ(S3H)及び第3下アームスイッチ(S3L)と、
を備え、
前記電気経路として、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを接続する第1経路(41)と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを接続する第2経路(42)と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを接続する第3経路(43)と、
を備え、
前記インダクタとして、
前記第1経路に設けられた第1インダクタ(31)と、
前記第2経路に設けられた第2インダクタ(32)と、
前記第3経路に設けられた第3インダクタ(33)と、
を備え、
上アーム整流部(S4H,D4H)及び下アーム整流部(S4L,D4L)と、
接続経路(44)と、
切替経路(50)と、
前記切替経路に設けられた開閉スイッチ(51)と、
を備え、
前記上アーム整流部の高電位側端子は、前記高電位側経路に接続されており、
前記下アーム整流部の低電位側端子は、前記低電位側経路に接続されており、
前記第1コンデンサ(34A)の第1端は、前記高電位側経路に接続されており、
前記上アーム整流部及び前記下アーム整流部の接続点と、前記第4交流端子とは、前記接続経路によって接続されており、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側の部分又は前記第3交流端子と、前記第1コンデンサの第2端とは、前記切替経路によって接続されており、
前記第2コンデンサの第2端(34B)は、前記低電位側経路に接続されており、
前記切替スイッチ(53)は、前記第2コンデンサの第1端の接続先を、前記第1コンデンサの第2端又は前記高電位側経路のいずれかに切り替える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
制御装置(100)を備え、
前記制御装置は、前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に前記3相交流部が電気的に接続されていると判定した場合、前記開閉スイッチをオフするとともに、前記第2コンデンサの第1端の接続先を前記第1コンデンサの第2端とするように前記切替スイッチを制御する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
制御装置(100)を備え、
前記制御装置は、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流部が電気的に接続されていると判定した場合、前記開閉スイッチをオンするとともに、前記第2コンデンサの第1端の接続先を前記高電位側経路とするように前記切替スイッチを制御する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流部が電気的に接続されているとともに、前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチのスイッチング制御により前記高電位側直流端子及び前記低電位側直流端子と前記第1交流端子及び前記第4交流端子との間で電力が伝達されると判定した場合、前記第2コンデンサの端子電圧の脈動を低減すべく、前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチのスイッチング制御を行う、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
電力変換装置(10)に適用されるコンピュータ(100a)により実行されるプログラムにおいて、
前記電力変換装置は、
第1交流端子(Tac1)、第2交流端子(Tac2)、第3交流端子(Tac3)及び第4交流端子(Tac4)と、
高電位側直流端子(TdcH)及び低電位側直流端子(TdcL)と、
を備え、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に3相交流部が電気的に接続可能であり、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に単相交流部が電気的に接続可能なように前記電力変換装置が構成されており、
前記電力変換装置は、
第1上アームスイッチ(S1H)及び第1下アームスイッチ(S1L)と、
第2上アームスイッチ(S2H)及び第2下アームスイッチ(S2L)と、
第3上アームスイッチ(S3H)及び第3下アームスイッチ(S3L)と、
上アーム整流部(S4H,D4H)及び下アーム整流部(S4L,D4L)と、
前記第1,第2,第3上アームスイッチの高電位側端子、前記上アーム整流部の高電位側端子及び前記高電位側直流端子を接続する高電位側経路(30H)と、
前記第1,第2,第3下アームスイッチの低電位側端子、前記下アーム整流部の低電位側端子及び前記低電位側直流端子を接続する低電位側経路(30L)と、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを接続する第1経路(41)と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを接続する第2経路(42)と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを接続する第3経路(43)と、
前記第1経路に設けられた第1インダクタ(31)と、
前記第2経路に設けられた第2インダクタ(32)と、
前記第3経路に設けられた第3インダクタ(33)と、
接続経路(44)と、
切替経路(50)と、
前記切替経路に設けられた開閉スイッチ(51)と、
第1コンデンサ(34A)と、
第2コンデンサ(34B)と、
切替スイッチ(52)と、
を備え、
前記第1コンデンサの第1端は、前記高電位側経路に接続されており、
前記上アーム整流部及び前記下アーム整流部の接続点と、前記第4交流端子とは、前記接続経路によって接続されており、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側の部分又は前記第3交流端子と、前記第2コンデンサの第1端とは、前記切替経路によって接続されており、
前記第2コンデンサの第2端は、前記低電位側経路に接続されており、
前記切替スイッチ(52)は、前記第1コンデンサの第2端の接続先を、前記第2コンデンサの第1端又は前記低電位側経路のいずれかに切り替えるスイッチであり、
前記コンピュータに、前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に前記3相交流部が電気的に接続されていると判定した場合、前記開閉スイッチをオフするとともに、前記第1コンデンサの第2端の接続先を前記第2コンデンサの第1端とするように前記切替スイッチを制御する処理を実行させる、プログラム。
【請求項11】
電力変換装置(10)に適用されるコンピュータ(100a)により実行されるプログラムにおいて、
前記電力変換装置は、
第1交流端子(Tac1)、第2交流端子(Tac2)、第3交流端子(Tac3)及び第4交流端子(Tac4)と、
高電位側直流端子(TdcH)及び低電位側直流端子(TdcL)と、
を備え、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に3相の交流電流を流す3相交流部(200)が電気的に接続可能であり、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に単相交流電流を流す単相交流部(210)が電気的に接続可能なように前記電力変換装置が構成されており、
前記電力変換装置は、
第1上アームスイッチ(S1H)及び第1下アームスイッチ(S1L)と、
第2上アームスイッチ(S2H)及び第2下アームスイッチ(S2L)と、
第3上アームスイッチ(S3H)及び第3下アームスイッチ(S3L)と、
上アーム整流部(S4H,D4H)及び下アーム整流部(S4L,D4L)と、
前記第1,第2,第3上アームスイッチの高電位側端子、前記上アーム整流部の高電位側端子及び前記高電位側直流端子を接続する高電位側経路(30H)と、
前記第1,第2,第3下アームスイッチの低電位側端子、前記下アーム整流部の低電位側端子及び前記低電位側直流端子を接続する低電位側経路(30L)と、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを接続する第1経路(41)と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを接続する第2経路(42)と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを接続する第3経路(43)と、
前記第1経路に設けられた第1インダクタ(31)と、
前記第2経路に設けられた第2インダクタ(32)と、
前記第3経路に設けられた第3インダクタ(33)と、
接続経路(44)と、
切替経路(50)と、
前記切替経路に設けられた開閉スイッチ(51)と、
第1コンデンサ(34A)と、
第2コンデンサ(34B)と、
切替スイッチ(52)と、
を備え、
前記第1コンデンサの第1端は、前記高電位側経路に接続されており、
前記上アーム整流部及び前記下アーム整流部の接続点と、前記第4交流端子とは、前記接続経路によって接続されており、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側の部分又は前記第3交流端子と、前記第1コンデンサの第2端とは、前記切替経路によって接続されており、
前記第2コンデンサの第2端は、前記低電位側経路に接続されており、
前記切替スイッチ(53)は、前記第2コンデンサの第1端の接続先を、前記第1コンデンサの第2端又は前記高電位側経路のいずれかに切り替えるスイッチであり、
前記コンピュータに、前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に前記3相交流部が電気的に接続されていると判定した場合、前記開閉スイッチをオフするとともに、前記第2コンデンサの第1端の接続先を前記第1コンデンサの第2端とするように前記切替スイッチを制御する処理を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3相交流電源及び単相交流電源の双方に対応した電力変換装置が知られている。なお、このような電力変換装置の例として、特許文献1に開示された電力変換装置が挙げられる。
【0003】
電力変換装置は、3相それぞれに対応して設けられた上,下アームスイッチを備えている。各相の上アームスイッチの高電位側端子は、高電位側直流端子に接続され、各相の下アームスイッチの低電位側端子は、低電位側直流端子に接続されている。高電位側経路及び低電位側経路は平滑コンデンサによって接続されている。
【0004】
電力変換装置は、各相に対応して設けられたインダクタと、各相のうちいずれか1相に対応して設けられた補償用コンデンサ及び切替スイッチとを備えている。切替スイッチの操作により、補償用コンデンサは、1相分のインダクタ及び下アームスイッチの直列接続体に並列接続されたり、この直列接続体から切り離されたりする。
【0005】
入力側となる交流端子に単相交流電源が電気的に接続される場合、インダクタ及び下アームスイッチの直列接続体に補償用コンデンサが並列接続されるように切替スイッチが操作される。この操作状態において、補償用コンデンサが接続された相の上,下アームスイッチのスイッチング制御が行われる。これにより、交流端子から入力された交流電力を直流電力に変換して直流端子から出力する場合において、直流端子から出力される直流電力の脈動を低減できる。これにより、平滑コンデンサの静電容量を低減でき、平滑コンデンサの小型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
交流端子に3相交流電源が電気的に接続される場合、インダクタ及び下アームスイッチの直列接続体から補償用コンデンサが切り離されるように切替スイッチが操作される。この場合、補償用コンデンサが用いられなくなる。このため、電力変換装置の構成部品を有効利用することについては、未だ改善の余地を残すものとなっている。
【0008】
本開示は、構成部品を有効利用できる電力変換装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、複数相の交流端子と、
高電位側直流端子及び低電位側直流端子と、
を備え、
複数相の交流電流を流す複数相交流部又は単相交流電流を流す単相交流部が前記交流端子に電気的に接続可能に構成された電力変換装置において、
各相に対応して設けられた上,下アームスイッチと、
各相の前記上アームスイッチの高電位側端子及び前記高電位側直流端子を接続する高電位側経路と、
各相の前記下アームスイッチの低電位側端子及び前記低電位側直流端子を接続する低電位側経路と、
各相に対応して設けられ、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチの接続点と前記交流端子とを接続する電気経路と、
各相の前記電気経路に設けられたインダクタと、
第1コンデンサと、
第2コンデンサと、
前記高電位側経路と前記低電位側経路とを接続するコンデンサが、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの直列接続体、又は前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサのいずれかとなるように切り替える切替スイッチと、
を備える。
【0010】
交流端子に単相交流部が電気的に接続される場合、切替スイッチの操作により、高電位側経路と低電位側経路とを接続するコンデンサが、第1,第2コンデンサのいずれかとなるようにすることができる。この場合、第1,第2コンデンサのうち、高電位側経路及び低電位側経路の間を接続する平滑コンデンサとして用いられないコンデンサを、各直流端子の直流電力の脈動を低減するための補償用コンデンサとして用いることができる。つまり、電力変換装置の構成部品を有効利用することができる。
【0011】
また、交流端子に3相交流部が電気的に接続される場合、切替スイッチの操作により、高電位側経路と低電位側経路とを接続するコンデンサが、第1コンデンサ及び第2コンデンサの直列接続体となるようにすることができる。この場合、第1,第2コンデンサの直列接続体が平滑コンデンサとして機能するため、第1,第2コンデンサとして耐電圧の低いコンデンサを用いることができる。その結果、第1,第2コンデンサを小型化することができ、ひいては電力変換装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る車載充電器の全体構成図。
【
図4】蓄電池の充放電制御の手順を示すフローチャート。
【
図5】単相充電制御時における脈動補償制御処理のブロック図。
【
図6】単相充電制御時における電流,電圧等の推移を示すタイムチャート。
【
図7】単相放電制御時における脈動補償制御処理のブロック図。
【
図8】第2実施形態に係る車載充電器の全体構成図。
【
図9】蓄電池の充放電制御の手順を示すフローチャート。
【
図10】第3実施形態に係る車載充電器の全体構成図。
【
図11】3相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図12】単相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図13】第4実施形態に係る3相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図14】単相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図15】蓄電池の充放電制御の手順を示すフローチャート。
【
図16】第5実施形態に係る3相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図17】単相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図18】第6実施形態に係る3相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図19】単相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図20】その他の実施形態に係る3相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図21】その他の実施形態に係る単相充放電時における車載充電器を示す図。
【
図22】その他の実施形態に係る車載充電器の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、電気自動車などの車両に備えられ、具体的には車載充電器を構成するAC-DCコンバータである。車載充電器は、オンボードチャージャとも呼ばれる。
【0015】
電力変換装置は、交流端子及び直流端子を備えている。電力変換装置は、車両外部の交流電源に接続された交流端子を介して入力された交流電力を直流電力に変換して直流端子から出力する機能を備えている。直流端子から出力された直流電力は、車両に備えられた蓄電池に供給される。また、電力変換装置は、直流端子から入力された直流電力を交流電力に変換して交流端子から出力する機能を備えている。交流端子から出力された交流電力は、外部の交流電源を介して外部の電力系統に供給される。電力変換装置は、3相交流電源又は単相交流電源に接続可能である。
【0016】
図1に示すように、電力変換装置10は、交流端子として第1交流端子Tac1、第2交流端子Tac2、第3交流端子Tac3及び第4交流端子Tac4を備えている。第1~第4交流端子Tac1~Tac4のうち第1~第3交流端子Tac1~Tac3は、
図2に示すように、外部の3相交流電源200に接続可能である。第1~第4交流端子Tac1~Tac4のうち第1,第4交流端子Tac1,Tac4は、
図3に示すように、外部の単相交流電源210に接続可能である。
【0017】
電力変換装置10は、直流端子として高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLを備えている。高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLは、車載充電器を構成するDCDCコンバータ24の入力部に接続されている。DCDCコンバータ24の出力部は、車両に搭載された充放電可能な蓄電池20に接続されている。DCDCコンバータ24は、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから入力された直流電圧を変圧し、変圧した直流電圧を蓄電池20に供給する。また、DCDCコンバータ24は、蓄電池20から入力された直流電圧を変圧して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLに供給する。DCDCコンバータ24は、例えば、入力部と出力部とが電気的に絶縁された絶縁型DCDCコンバータであり、入力部と出力部とを接続するトランスを備えている。
【0018】
電力変換装置10は、4相分の上,下アームスイッチとして、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lの直列接続体と、第2上アームスイッチS2H及び第2下アームスイッチS2Lの直列接続体と、第3上アームスイッチS3H及び第3下アームスイッチS3Lの直列接続体と、第4上アームスイッチS4H(「上アーム整流部」に相当)及び第4下アームスイッチS4L(「下アーム整流部」に相当)の直列接続体とを備えている。本実施形態において、各上,下アームスイッチS1H~S4Lは、ボディダイオードを有するNチャネルMOSFETである。このため、各上,下アームスイッチS1H~S4Lにおいて、高電位側端子はドレインであり、低電位側端子はソースである。第1~第3相のうち、例えば、第1相がU相であり、第2相がV相であり、第3相がW相である。
【0019】
電力変換装置10は、第1,第2,第3,第4上アームスイッチS1H,S2H,S3H,S4Hの高電位側端子と高電位側直流端子TdcHとを接続する電気経路である高電位側経路30Hと、第1,第2,第3,第4下アームスイッチS1L,S2L,S3L,S4Lの低電位側端子と低電位側直流端子TdcLとを接続する電気経路である低電位側経路30Lとを備えている。高電位側経路30H及び低電位側経路30Lは、例えばバスバー等の導電部材である。
【0020】
電力変換装置10は、第1経路41、第2経路42及び第3経路43を備えている。第1経路41は、第1相に対応する電気経路であり、第1上アームスイッチS1Hの低電位側端子及び第1下アームスイッチS1Lの高電位側端子と、第1交流端子Tac1とを接続する。第2経路42は、第2相に対応する電気経路であり、第2上アームスイッチS2Hの低電位側端子及び第2下アームスイッチS2Lの高電位側端子と、第2交流端子Tac2とを接続する。第3経路43は、第3相に対応する電気経路であり、第3上アームスイッチS3Hの低電位側端子及び第3下アームスイッチS3Lの高電位側端子と、第3交流端子Tac3とを接続する。
【0021】
電力変換装置10は、第1経路41に設けられた第1インダクタ31、第2経路42に設けられた第2インダクタ32、及び第3経路43に設けられた第3インダクタ33を備えている。なお、各インダクタ31~33のインダクタンス値が同じ値であってもよく、各インダクタ31~33の定格電流(具体的には、温度上昇定格電流)が同じ値であってもよい。
【0022】
電力変換装置10は、第4上アームスイッチS4Hの低電位側端子及び第4下アームスイッチS4Lの高電位側端子と、第4交流端子Tac4とを接続する電気経路である接続経路44を備えている。
【0023】
電力変換装置10は、第1直流側コンデンサ34A(「第1コンデンサ」に相当)及び第2直流側コンデンサ34B(「第2コンデンサ」に相当)を備えている。第1直流側コンデンサ34A及び第2直流側コンデンサ34Bは、例えば電解コンデンサである。第1直流側コンデンサ34Aの第1端には、高電位側経路30Hが接続されている。
【0024】
電力変換装置10は、切替経路50を備えている。切替経路50は、第3経路43のうち第3インダクタ33よりも第3交流端子Tac3側の部分と、第2直流側コンデンサ34Bの第1端とを接続する電気経路である。なお、切替経路50は、第3交流端子Tac3と第2直流側コンデンサ34Bの第1端とを接続していてもよい。
【0025】
第2直流側コンデンサ34Bの第2端には、低電位側経路30Lが接続されている。電力変換装置10は、切替経路50に設けられた開閉スイッチ51を備えている。開閉スイッチ51は、オンされている場合に双方向の電流の流通を許可し、オフされている場合に双方向の電流の流通を阻止する。
【0026】
電力変換装置10は、第1直流側コンデンサ34A及び第2直流側コンデンサ34Bの接続状態を切り替えるための切替スイッチ52を備えている。切替スイッチ52は、第1直流側コンデンサ34Aの第2端を、第2直流側コンデンサ34Bの第1端又は低電位側経路30Lに選択的に接続する。切替スイッチ52が第1状態に制御されることにより、第1直流側コンデンサ34Aの第2端と、第2直流側コンデンサ34Bの第1端とが直列接続される。一方、切替スイッチ52が第2状態に制御されることにより、第2直流側コンデンサ34Bを介すことなく、高電位側経路30Hと低電位側経路30Lとが第1直流側コンデンサ34Aにより接続される。
【0027】
電力変換装置10は、第1~第3電流センサ71~73を備えている。第1電流センサ71は、第1インダクタ31に流れる電流を検出し、第2電流センサ72は、第2インダクタ32に流れる電流を検出し、第3電流センサ73は、第3インダクタ33に流れる電流を検出する。本実施形態において、第1,第2,第3電流センサ71,72,73により検出された電流(以下、第1,第2,第3電流検出値i1r,i2r,i3r)は、第1,第2,第3交流端子Tac1,Tac2,Tac3側から第1,第2,第3インダクタ31,32,33側に向かって流れる場合を正とする。
【0028】
電力変換装置10は、第1直流側電圧センサ81、第2直流側電圧センサ82及び交流側電圧センサ83を備えている。第1直流側電圧センサ81は、高電位側経路30H及び低電位側経路30Lの間の電圧差を検出する。第2直流側電圧センサ82は、第2直流側コンデンサ34Bの端子電圧を検出する。交流側電圧センサ83は、第1交流端子Tac1と第4交流端子Tac4との電圧差を検出する。各センサ71~73,81~83の検出値は、電力変換装置10が備える制御装置100に入力される。
【0029】
制御装置100は、マイコン100aを主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置100は、制御装置100よりも上位の上位制御装置101と情報のやり取りが可能になっている。上位制御装置101は、マイコン101aを主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)であり、電力変換装置10の外部に設けられている。
【0030】
各マイコン100a,101aは、CPU(Central Processing Unit)を備えている。各マイコン100a,101aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコンがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコンは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する
図4等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムを構成するインストラクションのセットが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0031】
制御装置100は、交流端子からの入力電力を電力変換装置10及びDCDCコンバータ24を介して蓄電池20に供給する充電制御、又は蓄電池20からの入力電力をDCDCコンバータ24及び電力変換装置10を介して交流端子から出力する放電制御を行う。この際、DCDCコンバータ24は、制御装置100によりスイッチング制御される。なお、電力変換装置10及びDCDCコンバータ24のそれぞれは、個別の制御装置により制御され得る。ただし、個別に制御されることは要部ではないため、
図1には、電力変換装置10及びDCDCコンバータ24を制御する制御装置100が1つ示されている。
【0032】
電力変換装置10の外部には、第1遮断スイッチ92A、第2遮断スイッチ92B、第3遮断スイッチ92C及び第4遮断スイッチ92Dが備えられている。本実施形態において、各遮断スイッチ92A~92Dはリレーである。各遮断スイッチ92A~92Dは、オンされている場合に双方向の電流の流通を許可し、オフされている場合に双方向の電流の流通を阻止する。第1~第4遮断スイッチ92A~92Dは、第1~第4交流端子Tac1~Tac4に接続されている。
【0033】
図2に示すように、第1~第3交流端子Tac1~Tac3には、第1~第3遮断スイッチ92A~92Cを介して3相交流電源200(「複数相交流部,3相交流部」に相当)が電気的に接続可能である。3相交流電源200は、例えば系統電源である。3相交流電源200において、3相の出力電圧の振幅及び周波数は同じであり、出力電圧及び出力電流の位相は各相で120°ずつずれている。図示しないが、第1~第3交流端子Tac1~Tac3には、第1~第3遮断スイッチ92A~92Cを介して3相交流負荷(「3相交流部」に相当)が電気的に接続可能である。
【0034】
図3に示すように、第1交流端子Tac1及び第4交流端子Tac4には、第1,第4遮断スイッチ92A,92Dを介して単相交流電源210(「単相交流部」に相当)が電気的に接続可能である。本実施形態において、単相交流電源210の出力電圧の振幅は3相交流電源200の出力電圧の振幅と同じである。また、単相交流電源210の出力電圧の周波数は3相交流電源200の出力電圧の周波数と同じである。図示しないが、第1交流端子Tac1及び第4交流端子Tac4には、第1,第4遮断スイッチ92A,92Dを介して単相交流負荷(「単相交流部」に相当)が電気的に接続可能である。
【0035】
制御装置100は、3相/単相充電制御又は3相/単相放電制御を行う。以下、
図4のフローチャートを用いて、この制御について説明する。
【0036】
ステップS10では、3相充電制御又は3相放電制御の指示がなされているか否かを判定する。本実施形態では、上位制御装置101からCAN通信等を介して送信される指示を受信し、受信した指示に基づいて、3相充電制御又は3相放電制御の指示がなされているか否かを判定する。
【0037】
3相充電制御は、電力変換装置10及びDCDCコンバータ24それぞれのスイッチング制御により、3相交流電源200からの電力を蓄電池20に充電する制御である。
【0038】
3相放電制御は、DCDCコンバータ24及び電力変換装置10それぞれのスイッチング制御により、蓄電池20からの電力を車両外部の系統電源である3相交流電源200に供給する制御である。この制御は、V2G(Vehicle to Grid)とも呼ばれる。また、3相放電制御は、DCDCコンバータ24及び電力変換装置10それぞれのスイッチング制御により、蓄電池20からの電力を3相交流負荷に供給する制御である。3相交流負荷が住居等の建物の電気機器の場合、この制御は、V2H(Vehicle to Home)とも呼ばれる。
【0039】
3相充放電指示がなされている場合、
図2に示すように、第1遮断スイッチ92A、第2遮断スイッチ92B及び第3遮断スイッチ92Cが上位制御装置101によってオンされ、第4遮断スイッチ92Dが上位制御装置101によってオフされる。
【0040】
ステップS10において肯定判定した場合には、ステップS11に進み、開閉スイッチ51をオフする。なお、第4上アームスイッチS4H及び第4下アームスイッチS4Lもオフにする。
【0041】
ステップS12では、第1直流側コンデンサ34Aと第2直流側コンデンサ34Bとが直列接続されるように切替スイッチ52を制御する(
図2参照)。これにより、第1直流側コンデンサ34A及び第2直流側コンデンサ34Bの直列接続体が電力変換装置10の平滑コンデンサとして機能する。
【0042】
ステップS13では、3相充電制御又は3相放電制御を行う。まず、3相充電制御について説明すると、第1交流端子Tac1、第2交流端子Tac2及び第3交流端子Tac3から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1,第2,第3上アームスイッチS1H,S2H,S3H及び第1,第2,第3下アームスイッチS1L,S2L,S3Lのスイッチング制御を行う。この際、第1直流側電圧センサ81により検出された電圧Vdcrを目標直流電圧VdcrefH(例えば800V)にフィードバック制御するように、各スイッチS1H,S2H,S3H,S1L,S2L,S3Lのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとはデッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。各相において、上,下アームスイッチの1スイッチング周期は同じである。
【0043】
続いて、3相放電制御について説明すると、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから入力された直流電力を交流電力に変換して第1交流端子Tac1、第2交流端子Tac2及び第3交流端子Tac3から出力すべく、第1,第2,第3上アームスイッチS1H,S2H,S3H及び第1,第2,第3下アームスイッチS1L,S2L,S3Lのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとはデッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。各相において、上,下アームスイッチの1スイッチング周期は同じである。
【0044】
ステップS10において否定判定した場合には、ステップS14に進み、上位制御装置101から受信した指示に基づいて、単相充電制御又は単相放電制御の指示がなされているか否かを判定する。
【0045】
単相充電制御は、電力変換装置10及びDCDCコンバータ24それぞれのスイッチング制御により、単相交流電源210からの電力を蓄電池20に充電する制御である。
【0046】
単相放電制御は、DCDCコンバータ24及び電力変換装置10それぞれのスイッチング制御により、蓄電池20からの電力を単相交流負荷に供給する制御である。単相交流負荷が住居等の建物の電気機器の場合、この制御は、V2Hとも呼ばれる。
【0047】
単相充放電指示がなされている場合、
図3に示すように、第1遮断スイッチ92A及び第4遮断スイッチ92Dが上位制御装置101によってオンされ、第2遮断スイッチ92B及び第3遮断スイッチ92Cが上位制御装置101によってオフされる。
【0048】
ステップS14において肯定判定した場合には、ステップS15に進み、開閉スイッチ51をオンする。なお、第2上アームスイッチS2H及び第2下アームスイッチS2Lをオフする。
【0049】
ステップS16では、第1直流側コンデンサ34Aの第2端と低電位側経路30Lとが電気的に接続されるように切替スイッチ52を制御する(
図3参照)。これにより、第1直流側コンデンサ34Aが電力変換装置10の平滑コンデンサとして機能する。一方、第2直流側コンデンサ34Bは、後述する脈動補償制御に用いられる補償用コンデンサとなる。
【0050】
ステップS17では、単相充電制御又は単相放電制御を行う。まず、単相充電制御について説明すると、第1交流端子Tac1及び第4交流端子Tac4から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lのスイッチング制御を行う。この際、第1直流側電圧センサ81により検出された電圧Vdcrを目標直流電圧VdcrefL(例えば、VdcrefHよりも低い400V)にフィードバック制御するように、各スイッチS1H,S1Lのスイッチング制御を行う。第1上アームスイッチS1Hと第1下アームスイッチS1Lとは、デッドタイムを挟みつつ、同期して交互にオンされる。第1上,下アームスイッチS1H,S1Lの1スイッチング周期は同じであり、3相充電制御時の1スイッチング周期と同じである。
【0051】
単相充電制御において、第4交流端子Tac4から単相交流電源210を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に電流が流れている第1期間において、第4下アームスイッチS4Lをオンするとともに第4上アームスイッチS4Hをオフする。一方、第1交流端子Tac1から単相交流電源210を介して第4交流端子Tac4へと向かう方向に電流が流れている第2期間において、第4上アームスイッチS4Hをオンするとともに第4下アームスイッチS4Lをオフする。現在のタイミングが第1期間及び第2期間のいずれに含まれているかは、例えば、第1電流センサ71の検出値に基づいて判定されればよい。
【0052】
続いて、単相放電制御について説明すると、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから入力された直流電力を交流電力に変換して第1交流端子Tac1及び第4交流端子Tac4から出力すべく、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lのスイッチング制御を行う。第1上アームスイッチS1Hと第1下アームスイッチS1Lとは、デッドタイムを挟みつつ、同期して交互にオンされる。第1上,下アームスイッチS1H,S1Lの1スイッチング周期は同じであり、3相放電制御時の1スイッチング周期と同じである。
【0053】
単相放電制御において、第4交流端子Tac4から単相交流電源210を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に電流が流れている第3期間において、第4上アームスイッチS4Hをオンするとともに第4下アームスイッチS4Lをオフする。一方、第1交流端子Tac1から単相交流電源210を介して第4交流端子Tac4へと向かう方向に電流が流れている第4期間において、第4下アームスイッチS4Lをオンするとともに第4上アームスイッチS4Hをオフする。現在のタイミングが第3期間及び第4期間のいずれに含まれているかは、例えば、第1電流センサ71の検出値に基づいて判定されればよい。
【0054】
なお、第4上,下アームスイッチS4H,S4Lの1スイッチング周期は、単相交流電源210の出力電圧1周期と同じ周期であり、第1,第2,第3上、下アームスイッチS1H,S1L,S2H,S2L,S3H,S3Lの1スイッチング周期よりも長い。これは、第1~第3相については、インダクタ31~33に流れる電流のリプルを低減するための高周波数(例えば、数十kHz~数百kHz)のスイッチングが必要な一方、第4相については、単相交流電源210の出力電圧の基本周波数(例えば、50Hz又は60Hz)と同等の周波数のスイッチングで足りるためである。
【0055】
単相充電制御又は単相放電制御時においては、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLを伝達される直流電力の脈動を低減するための第3上アームスイッチS3H及び第3下アームスイッチS3Lのスイッチング制御として、脈動補償制御を行う。第3上アームスイッチS3Hと第3下アームスイッチS3Lとは、デッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。第3上,下アームスイッチS3H,S3Lの1スイッチング周期は同じであり、第1,第2上、下アームスイッチS1H,S1L,S2H,S2Lの1スイッチング周期と同じである。
【0056】
続いて、単相充電/放電制御における脈動補償制御について説明する。脈動補償制御は、電力変換装置10の直流電力Pdcの脈動を低減するための制御である。この制御により、平滑コンデンサである第1直流側コンデンサ34Aの端子電圧の脈動を低減する。
図5は、単相充電制御における脈動補償制御の一例を示すブロック図である。
【0057】
目標補償電圧算出部110は、直流電力Pdcの脈動を低減するための第2直流側コンデンサ34Bの端子電圧の目標値である目標補償電圧Vcprefを算出する。具体的には例えば、目標補償電圧算出部110は、脈動補償振幅Ppeakと、電気角θeと、下式(eq1)とに基づいて、目標補償電圧Vcprefを算出する。
【0058】
【数1】
脈動補償振幅Ppeak[W]は、単相交流電源210の出力電圧Vacの振幅に基づいて設定される値であり、具体的には出力電圧Vacの振幅と同等(例えば同じ)の値である。上式(eq1)において、ωは出力電圧Vacの角周波数[rad./sec]を示し、tは出力電圧Vacが負から正に切り替わるゼロアップクロスタイミングからの経過時間[sec.]を示し、電気角θeに基づいて把握することができる。また、「θe=ω×t」の関係がある。Ccprは第2直流側コンデンサ34Bの静電容量[F]を示す。Kは、1以上の実数であり、例えば1に設定されている。目標補償電圧算出部110は、脈動補償振幅Ppeak及び電気角θeと紐付けられて目標補償電圧Vcprefが規定されたマップ情報に基づいて、目標補償電圧Vcprefを算出すればよい。電気角θeは、交流側電圧センサ83により検出された電圧(以下、交流電圧検出値V1r)に基づいて算出されればよい。本実施形態では、交流電圧検出値V1rのゼロクロスタイミング(具体的には例えば、ゼロアップクロスタイミング)の電気角θeを0°とし、次のゼロアップクロスタイミングにおける電気角θeを360°とする。これにより、交流電圧検出値V1rの1周期が電気角1周期(0°~360°)に対応する。
【0059】
電圧制御部111は、補償電圧偏差算出部112と、補償電圧フィードバック制御部113とを備えている。補償電圧偏差算出部112は、目標補償電圧Vcprefから、第2直流側電圧センサ82により検出された第2直流側コンデンサ34Bの端子電圧(以下、補償電圧検出値Vcpr)を差し引くことにより、補償電圧偏差ΔVpを算出する。補償電圧フィードバック制御部113は、補償電圧偏差ΔVpを0にフィードバック制御するための操作量として目標フィードバック電流I3fbを算出する。補償電圧フィードバック制御部113におけるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0060】
フィードフォワード電流算出部114は、脈動補償振幅Ppeakと、電気角θeと、下式(eq2)とに基づいて、目標フィードフォワード電流I3ffを算出する。
【0061】
【数2】
フィードフォワード電流算出部114は、脈動補償振幅Ppeak及び電気角θeと紐付けられて目標フィードフォワード電流I3ffが規定されたマップ情報に基づいて、目標フィードフォワード電流I3ffを算出すればよい。
【0062】
電流制御部115は、加算部116と、補償電流偏差算出部117と、補償電流フィードバック制御部118とを備えている。加算部116は、目標フィードバック電流I3fbに目標フィードフォワード電流I3ffを加えることにより、目標補償電流I3refを算出する。なお、フィードフォワード電流算出部114は必須ではない。この場合、「I3ref=I3fb」となる。
【0063】
補償電流偏差算出部117は、目標補償電流I3refから、第3電流センサ73により検出された第3電流検出値i3rを差し引くことにより、補償電流偏差ΔIpを算出する。補償電流フィードバック制御部118は、補償電流偏差ΔIpを0にフィードバック制御するための操作量として第3目標電圧Vleg1ref3を算出する。補償電流フィードバック制御部118におけるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0064】
PWM生成部119は、第3目標電圧Vleg3refと、キャリア信号との大小比較に基づくパルス幅変調により、第3上,下アームスイッチS3H,S3Lのゲートに供給する第3上,下アーム駆動信号を生成する。第3上,下アームスイッチS3H,S3Lのゲートに第3上,下アーム駆動信号が供給されることにより、脈動低減制御が行われる。
【0065】
図6に、単相充電制御時における補償電圧検出値Vcpr、単相交流電源210の出力電圧Vac,出力電流iac、第2直流側コンデンサ34Bに流れる電流icpr、第1電流検出値i1r、単相交流電源210の出力電力Pac、第2直流側コンデンサ34Bの電力Pcpr(=Vcpr×icpr)、及び各直流端子TdcH,TdcLから出力された直流電力Pdcの推移を示す。補償電圧検出値Vcprは、第2直流側コンデンサ34Bの両端のうち、切替経路50側の電圧よりも低電位側経路30L側の電圧が高い場合を正とする。単相交流電源210の出力電圧Vacは、第4交流端子Tac4側の電圧よりも第1交流端子Tac1側の電圧が高い場合を正とする。単相交流電源210の出力電流iacは、第4交流端子Tac4側から第1交流端子Tac1側に向かって流れる場合を正とする。第2直流側コンデンサ34Bに流れる電流icprは、第2直流側コンデンサ34Bの両端のうち、切替経路50側から低電位側経路30L側に向かって流れる場合を正とする。
【0066】
第1上,下アームスイッチS1H,S1Lの高周波スイッチング制御及び第4上,下アームスイッチS4H,S4Lの低周波のスイッチング制御により、
図6に示すように、単相交流電源210の出力電圧Vacと、第1電流検出値i1rとの位相差が0(つまり、力率が1)になるような単相充電制御が実行されている。
【0067】
図6に示す例では、単相交流電源210の出力電力Pac(つまり、電力変換装置10の入力電力)は、単相交流電源210の出力電圧Vacの基本周波数の2倍の周波数で脈動する。この脈動成分を低減するための目標補償電圧Vcprefに補償電圧検出値Vcprが制御されるように、第3上,下アームスイッチS3H,S3Lがスイッチング制御される。これにより、入力電力の脈動成分が第2直流側コンデンサ34Bに無効電力として吸収され、各直流端子TdcH,TdcLへ伝達される直流電力Pdcは、概ね一定となる。その結果、第1直流側コンデンサ34Aの静電容量を低減でき、第1直流側コンデンサ34Aを小型化できる。
【0068】
続いて、
図7を用いて、単相放電制御における脈動補償制御について説明する。単相放電制御の脈動低減制御においては、目標補償電圧算出部110に入力される電気角に関するパラメータは、θに代えて「θ+90°」となる。これは、第2直流側コンデンサ34Bの電力Pcpr(=Vcpr×icpr、
図6参照)の正負を反転させるためである。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、第1,第4交流端子Tac1,Tac4に単相交流電源210が電気的に接続される場合、切替スイッチ52の操作により、高電位側経路30Hと低電位側経路30Lとを接続する平滑コンデンサが第1直流側コンデンサ34Aとなるようにすることができる。この場合、平滑コンデンサとして用いられない第2直流側コンデンサ34Bを脈動補償制御用の補償用コンデンサとして用いることができる。つまり、電力変換装置10の構成部品を有効利用することができる。
【0070】
また、第1~第3交流端子Tac1~Tac3に3相交流電源200が電気的に接続される場合、切替スイッチ52の操作により、高電位側経路30Hと低電位側経路30Lとを接続する平滑コンデンサが、第1直流側コンデンサ34A及び第2直流側コンデンサ34Bの直列接続体となるようにすることができる。この場合、各直流側コンデンサ34A,34Bとして耐電圧の低いコンデンサを用いることができる。その結果、各直流側コンデンサ34A,34Bを小型化することができ、ひいては電力変換装置10の小型化を図ることができる。
【0071】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、制御装置100における3相/単相充放電制御指示の判定方法が変更されている。
【0072】
図8に、本実施形態に係る車載充電器の全体構成を示す。
【0073】
電力変換装置10は、電圧検出回路84を備えている。電圧検出回路84は、接続経路44の電圧を基準とした第1~第3経路41~43の電圧を検出する。電圧検出回路84の検出値は、制御装置100に入力される。
【0074】
図9に、制御装置100によって実行される3相/単相充放電制御のフローチャートを示す。
【0075】
ステップS18では、各遮断スイッチ92A~92Dがオンされている場合における電圧検出回路84の検出値を取得する。
【0076】
ステップS19では、電圧検出回路84の検出値に基づいて、3相充電制御又は3相放電制御の指示がなされているか否かを判定する。具体的には、第1~第3相のうち2相以上について交流電圧を検出したと判定した場合、3相充電制御又は3相放電制御の指示がなされていると判定する。
【0077】
ステップS20では、電圧検出回路84の検出値に基づいて、単相充電制御又は単相放電制御の指示がなされているか否かを判定する。具体的には、第1~第3相のうち第1相のみについて交流電圧を検出したと判定した場合、単相充電制御又は単相放電制御の指示がなされていると判定する。
【0078】
ちなみに、ステップS19,S20において、充電制御又は放電制御のいずれを行うかの指示は、例えば、上位制御装置101からCAN通信等を介して送信される準備指令を受信し、受信した準備指令に基づいて判定すればよい。放電制御が行われない仕様の電力変換装置10の場合、この準備指令に基づいて充電制御又は放電制御のいずれを行うかの判定処理は不要となり、制御装置100自身で充電制御が指示されているか否かを判定できる。
【0079】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図10に示すように、切替スイッチ53及び切替経路50等の接続関係が変更されている。
【0080】
切替経路50は、第3経路43のうち第3インダクタ33よりも第3交流端子Tac3側の部分と、第1直流側コンデンサ34Aの第2端とを接続する。
【0081】
切替スイッチ53は、第2直流側コンデンサ34Bの第1端を、第1直流側コンデンサ34Aの第2端又は高低電位側経路30Hに選択的に接続する。切替スイッチ53が第1状態に制御されることにより、第2直流側コンデンサ34Bの第1端と、第1直流側コンデンサ34Aの第2端とが直列接続される。一方、切替スイッチ53が第2状態に制御されることにより、第1直流側コンデンサ34Aを介すことなく、高電位側経路30Hと低電位側経路30Lとが第2直流側コンデンサ34Bにより接続される。
【0082】
制御装置100は、3相/単相充放電制御を行う。ただし、
図4の処理のうち、以下に説明する点が変更されている。
【0083】
ステップS12では、
図11に示すように、第1直流側コンデンサ34Aと第2直流側コンデンサ34Bとが直列接続されるように切替スイッチ53を制御する。ステップS16では、
図12に示すように、第2直流側コンデンサ34Bの第1端と高電位側経路30Hとが電気的に接続されるように切替スイッチ53を制御する。
【0084】
本実施形態の第2直流側電圧センサ82は、第1直流側コンデンサ34Aの端子電圧を検出する。第2直流側電圧センサ82の検出値は、脈動補償制御において補償電圧検出値Vcprとして用いられる。
【0085】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0086】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図13に示すように、第4上アームスイッチS4H及び第4下アームスイッチS4Lと、第4交流端子Tac4と、接続経路44とが電力変換装置10に備えられていない。第4遮断スイッチ92Dは、第2交流端子Tac2と3相交流電源200の中性点とを電気的に接続する。
【0087】
図15に、制御装置100によって実行される3相/単相充放電制御のフローチャートを示す。
【0088】
ステップS13では、
図13に示すように、3相充電制御又は3相放電制御を行う。
【0089】
一方、ステップS21では、
図14に示すように、単相充電制御又は単相放電制御を行う。この場合、第1遮断スイッチ92A及び第4遮断スイッチ92Dがオンされ、第2遮断スイッチ92B及び第3遮断スイッチ92Cがオフされる。
【0090】
まず、単相充電制御について説明すると、第1交流端子Tac1及び第2交流端子Tac2から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lのスイッチング制御を行う。この際、第1直流側電圧センサ81により検出された電圧Vdcrを目標直流電圧VdcrefLにフィードバック制御するように、各スイッチS1H,S1Lのスイッチング制御を行う。
【0091】
単相充電制御において、第2交流端子Tac2から単相交流電源210を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に電流が流れている第1期間において、第2下アームスイッチS2Lをオンするとともに第2上アームスイッチS2Hをオフする。一方、第1交流端子Tac1から単相交流電源210を介して第2交流端子Tac2へと向かう方向に電流が流れている第2期間において、第2上アームスイッチS2Hをオンするとともに第2下アームスイッチS2Lをオフする。
【0092】
続いて、単相放電制御について説明すると、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから入力された直流電力を交流電力に変換して第1交流端子Tac1及び第2交流端子Tac2から出力すべく、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lのスイッチング制御を行う。
【0093】
単相放電制御において、第2交流端子Tac2から単相交流電源210を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に電流が流れている第3期間において、第2上アームスイッチS2Hをオンするとともに第2下アームスイッチS2Lをオフする。一方、第1交流端子Tac1から単相交流電源210を介して第2交流端子Tac2へと向かう方向に電流が流れている第4期間において、第2下アームスイッチS2Lをオンするとともに第2上アームスイッチS2Hをオフする。
【0094】
単相充電制御又は単相放電制御時においては、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLを伝達される直流電力の脈動を低減するための第3上アームスイッチS3H及び第3下アームスイッチS3Lのスイッチング制御として、脈動補償制御を行う。
【0095】
以上説明した本実施形態によれば、電力変換装置10を構成する脈動補償制御用の部品を削減することができる。
【0096】
<第4実施形態の変形例>
切替経路50は、第3経路43のうち第3インダクタ33よりも第3交流端子Tac3側の部分と、第1直流側コンデンサ34Aの第2端とを接続していてもよい。この場合、切替スイッチ52は、第2直流側コンデンサ34Bの第1端を、第1直流側コンデンサ34Aの第1端又は高電位側経路30Hに選択的に接続するスイッチであればよい。なお、この場合、脈動補償制御は、第3実施形態と同様の方法で実施されればよい。
【0097】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図16に示すように、第4交流端子Tac4、接続経路44、切替経路50及び開閉スイッチ51が電力変換装置10に備えられていない。第4遮断スイッチ92Dは、第3交流端子Tac3と3相交流電源200の中性点とを電気的に接続する。
【0098】
電力変換装置10は、インダクタ60、開閉スイッチ61、切替スイッチ62、第1直流側コンデンサ34C及び第2直流側コンデンサ34Dを備えている。第1直流側コンデンサ34Cの第1端は、高電位側経路30Hに接続されている。インダクタ60の第1端は、第4上アームスイッチS4Hのソース及び第4下アームスイッチS4Lのドレインに接続されている。開閉スイッチ61は、インダクタ60の第2端を第2直流側コンデンサ34Dの第1端に接続したり、インダクタ60の第2端を第2直流側コンデンサ34Dの第1端から切り離したりする。第2直流側コンデンサ34Dの第2端は、低電位側経路30Lに接続されている。
【0099】
切替スイッチ62は、第1直流側コンデンサ34Cの第1端を、第2直流側コンデンサ34Dの第1端又は低電位側経路30Lに選択的に接続する。
【0100】
続いて、制御装置100によって実行される3相/単相充放電制御について説明する。
【0101】
制御装置100は、3相充電制御又は3相放電制御を行う場合、
図16に示すように、インダクタ60の第2端が第2直流側コンデンサ34Dの第1端から切り離されるように開閉スイッチ61を制御する。また、制御装置100は、3相充電制御又は3相放電制御を行う場合、第1直流側コンデンサ34C及び第2直流側コンデンサ34Dが直列接続されるように切替スイッチ62を制御する。
【0102】
単相充電制御又は単相放電制御を行われる場合、
図17に示すように、第1遮断スイッチ92A及び第4遮断スイッチ92Dがオンされ、第2遮断スイッチ92B及び第3遮断スイッチ92Cがオフされる。
【0103】
制御装置100は、単相充電制御又は単相放電制御を行う場合、
図17に示すように、インダクタ60の第2端が第2直流側コンデンサ34Dの第1端に接続されるように開閉スイッチ61を制御する。また、制御装置100は、単相充電制御又は単相放電制御を行う場合、第1直流側コンデンサ34Cの第2端が低電位側経路30Lに接続されるように切替スイッチ62を制御する。
【0104】
まず、単相充電制御について説明すると、制御装置100は、第1交流端子Tac1及び第3交流端子Tac3から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lのスイッチング制御を行う。この際、第1直流側電圧センサ81により検出された電圧Vdcrを目標直流電圧VdcrefLにフィードバック制御するように、各スイッチS1H,S1Lのスイッチング制御を行う。
【0105】
制御装置100は、単相充電制御において、第3交流端子Tac3から単相交流電源210を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に電流が流れている第1期間において、第3下アームスイッチS3Lをオンするとともに第3上アームスイッチS3Hをオフする。一方、制御装置100は、第1交流端子Tac1から単相交流電源210を介して第3交流端子Tac3へと向かう方向に電流が流れている第2期間において、第3上アームスイッチS3Hをオンするとともに第3下アームスイッチS3Lをオフする。
【0106】
続いて、単相放電制御について説明すると、制御装置100は、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから入力された直流電力を交流電力に変換して第1交流端子Tac1及び第3交流端子Tac3から出力すべく、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lのスイッチング制御を行う。
【0107】
制御装置100は、単相放電制御において、第3交流端子Tac3から単相交流電源210を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に電流が流れている第3期間において、第3上アームスイッチS3Hをオンするとともに第3下アームスイッチS3Lをオフする。一方、制御装置100は、第1交流端子Tac1から単相交流電源210を介して第3交流端子Tac3へと向かう方向に電流が流れている第4期間において、第3下アームスイッチS3Lをオンするとともに第3上アームスイッチS3Hをオフする。
【0108】
なお、制御装置100は、単相充電制御又は単相放電制御において、第2上アームスイッチS2H及び第2下アームスイッチS2Lをオフする。
【0109】
制御装置100は、単相充電制御又は単相放電制御時において、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLを伝達される直流電力の脈動を低減するための第4上アームスイッチS4H及び第4下アームスイッチS4Lのスイッチング制御として、脈動補償制御を行う。
【0110】
本実施形態の第2直流側電圧センサ82は、第2直流側コンデンサ34Dの端子電圧を検出する。第2直流側電圧センサ82の検出値は、脈動補償制御において補償電圧検出値Vcprとして用いられる。
【0111】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に準じた効果を奏することができる。
【0112】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第5実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図18に示すように、開閉スイッチ61及び切替スイッチ62等の接続関係が変更されている。
【0113】
開閉スイッチ61は、インダクタ60の第2端を第1直流側コンデンサ34Cの第1端に接続したり、インダクタ60の第2端を第1直流側コンデンサ34Cの第1端から切り離したりする。切替スイッチ62は、第2直流側コンデンサ34Dの第1端を、第1直流側コンデンサ34Cの第1端又は高電位側経路30Hに選択的に接続する。
【0114】
制御装置100は、3相充電制御又は3相放電制御を行う場合、
図18に示すように、インダクタ60の第2端が第1直流側コンデンサ34Cの第2端から切り離されるように開閉スイッチ61を制御する。また、制御装置100は、3相充電制御又は3相放電制御を行う場合、第1直流側コンデンサ34C及び第2直流側コンデンサ34Dが直列接続されるように切替スイッチ62を制御する。
【0115】
制御装置100は、単相充電制御又は単相放電制御を行う場合、
図19に示すように、インダクタ60の第2端が第1直流側コンデンサ34Cの第2端に接続されるように開閉スイッチ61を制御する。また、制御装置100は、単相充電制御又は単相放電制御を行う場合、第2直流側コンデンサ34Dの第1端が高電位側経路30Hに接続されるように切替スイッチ62を制御する。
【0116】
本実施形態の第2直流側電圧センサ82は、第1直流側コンデンサ34Cの端子電圧を検出する。第2直流側電圧センサ82の検出値は、脈動補償制御において補償電圧検出値Vcprとして用いられる。
【0117】
以上説明した本実施形態によれば、第5実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0118】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0119】
・第1実施形態の電力変換装置10は、
図20及び
図21に示すように、単相スイッチ63を備えていてもよい。単相スイッチ63は、単相充電制御時において、電力変換装置10の直流電力Pdcを増加させるために用いられるスイッチである。単相スイッチ63は、第1経路41のうち第1インダクタ31よりも第1交流端子Tac1側の部分と、第2経路42のうち第2インダクタ32よりも第2交流端子Tac2側の部分とを接続する。
【0120】
制御装置100は、3相充放電制御の指示がなされていると判定した場合、単相スイッチ63をオフにする。一方、制御装置100は、単相充放電制御の指示がなされていると判定した場合、単相スイッチ63をオンにする。制御装置100は、
図4のステップS17の単相充放電制御において、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lに加え、第2上アームスイッチS2H及び第2下アームスイッチS2Lのスイッチング制御を行う。なお、単相スイッチ63を備える構成は、第1実施形態以外の実施形態においても適宜採用されればよい。
【0121】
・第1上アームスイッチが複数のNチャネルMOSFETの並列接続体で構成されていてもよい。第1下アームスイッチ及び第2~第4上,下アームスイッチについても同様である。
【0122】
・上,下アームスイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えば、フリーホイールダイオードが逆並列接続されたIGBTであってもよい。この場合、IGBTのコレクタが高電位側端子に相当し、エミッタが低電位側端子に相当する。
【0123】
・直流側コンデンサに代えて、例えば、充放電可能な小容量の蓄電池が備えられていてもよい。
【0124】
・各直流側コンデンサは、
図1等に示したように1つのコンデンサで構成されるものに限らず、複数のコンデンサの直列接続体で構成されるものであってもよい。
【0125】
・単相充電制御時において、双方向の電力変換を行わず、交流電力から直流電力へと単方向の電力変換のみ行う場合、第4上,下アームスイッチS4H,S4Lに代えて、
図22に示すように、上,下アームダイオードD4H,D4L(「上,下アーム整流部」に相当)が設けられていてもよい。この場合、各ダイオードD4H,D4Lのカソードが高電位側端子に相当し、アノードが低電位側端子に相当する。
【0126】
・電力変換装置が搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、電力変換装置の搭載先は、移動体に限らず、定置式の装置であってもよい。
【0127】
・電力変換装置としては、3相の交流電源及び交流負荷に対応可能なものに限らず、4相以上の交流電源及び交流負荷に対応可能なものであってもよい。
【0128】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10…電力変換装置、31~33…第1~第3インダクタ、34A,34B…第1,第2直流側コンデンサ、51…開閉スイッチ、52…切替スイッチ、100…制御装置、S1H,S2H,S3H,S4H…第1~第4上アームスイッチ、S1L,S2L,S3L,S4L…第1~第4下アームスイッチ。