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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156364
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】加熱調理器及び加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/00 20060101AFI20241029BHJP
   A47J 31/52 20060101ALI20241029BHJP
   A47J 31/18 20060101ALI20241029BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A47J31/00 302
A47J31/52
A47J31/18
A47J31/00 307
A23L2/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070764
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】守岩 和秋
(72)【発明者】
【氏名】森井 彰
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大治
(72)【発明者】
【氏名】石原 杏子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 史朗
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】香内 由美子
(72)【発明者】
【氏名】宮下 健一
(72)【発明者】
【氏名】木皿 倫子
(72)【発明者】
【氏名】落合 祐美子
【テーマコード(参考)】
4B104
4B117
【Fターム(参考)】
4B104AA12
4B104AA19
4B104AA25
4B104BA05
4B104BA15
4B104BA21
4B104BA23
4B104BA33
4B104BA35
4B104CA02
4B104CA10
4B104DA10
4B104DA11
4B104DA23
4B104DA45
4B104DA47
4B104DA56
4B104EA23
4B104EA30
4B104EA33
4B117LP19
4B117LP20
4B117LT02
4B117LT05
(57)【要約】
【課題】ユーザが喫する飲料の製造にあたって、素材に含まれる成分を効率的に抽出することができる加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器は、溶媒と素材とを格納する容器と、容器を加熱する加熱装置と、容器内を減圧する減圧装置と、加熱装置及び減圧装置を制御して、溶媒に素材の成分が抽出された飲料を製造する飲料製造機能を実行する制御装置と、飲料製造機能の実行の指示を受け付ける入力装置と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と素材とを格納する容器と、
前記容器を加熱する加熱装置と、
前記容器内を減圧する減圧装置と、
前記加熱装置及び前記減圧装置を制御して、前記溶媒に前記素材の成分が抽出された飲料を製造する飲料製造機能を実行する制御装置と、
前記飲料製造機能の実行の指示を受け付ける入力装置と、を備える
加熱調理器。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記加熱装置の加熱制御工程として、
前記容器を目標温度まで加熱するように前記加熱装置を制御する立ち上げ工程と、
前記容器の温度を前記目標温度で加熱維持時間維持するように前記加熱装置を制御する加熱維持工程と、を行う
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記加熱制御工程として、更に前記加熱装置を寝かせ時間停止させる寝かせ工程を行う
請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記立ち上げ工程を開始する前に前記容器内を減圧するように前記減圧装置を制御する
請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記立ち上げ工程中又は前記加熱維持工程中に前記容器内を減圧するように前記減圧装置を制御する
請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記寝かせ工程中に前記容器内を減圧するように前記減圧装置を制御する
請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記制御装置は、製造する前記飲料、前記素材、抽出する前記成分、前記溶媒の容量、又は前記素材の重量を特定する情報に基づいて、前記加熱維持時間又は前記寝かせ時間を設定する
請求項3又は6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記制御装置は、製造する前記飲料、前記素材、又は抽出する前記成分を特定する情報に基づいて、前記目標温度を設定する
請求項2~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記制御装置は、前記減圧装置が前記容器内を減圧する作動状態と停止状態とを交互にとるように制御する
請求項1~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記制御装置は、製造する前記飲料、前記素材、抽出する前記成分、前記溶媒の容量、又は前記素材の重量を特定する情報に基づいて、前記作動状態時の設定圧力、前記作動状態の時間、又は前記停止状態の時間を決定する
請求項9に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記容器は、容積の変更が可能である
請求項1~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記容器を冷却する冷却装置を更に備える
請求項2~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記冷却装置を、前記立ち上げ工程の開始前に作動させる
請求項12に記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記冷却装置を、前記寝かせ工程中に作動させる
請求項12に記載の加熱調理器。
【請求項15】
前記素材を粉砕する粉砕装置を更に備える
請求項1~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項16】
前記溶媒又は前記素材の重量を計測する重量計測装置を更に備える
請求項1~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項17】
前記入力装置は、前記飲料の味又はにおいの強さの指示を受け付け、
前記制御装置は、前記飲料の味又はにおいの強さの指示を、ユーザの嗜好情報として記憶する
請求項1~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項18】
前記制御装置は、通信可能に接続された他の調理機器から、前記他の調理機器で調理されたメニューを示すメニュー情報を受信する
請求項1~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項19】
前記制御装置は、通信可能に接続されたサーバ装置から、前記飲料の調理シーケンスを示す情報を受信する
請求項1~6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項20】
請求項1~6の何れか1項に記載の加熱調理器と、
前記加熱調理器と通信可能に接続された前記他の調理機器と、
前記加熱調理器と通信可能に接続されたサーバ装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記他の調理機器から、前記他の調理機器で調理されたメニューを示すメニュー情報を受信し、
前記サーバ装置から、前記飲料の調理シーケンスを示す情報を受信する
加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飲料を製造する加熱調理器及び加熱調理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、素材に含まれる成分を溶媒に抽出することで飲料を製造する方法が知られている。特許文献1には、粉砕したコーヒー豆に加温された水を送出して、コーヒー抽出液を抽出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-250447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法において、コーヒー豆に対して加温された水を送出したのみでは、コーヒー豆に含まれる成分を十分に抽出できない。また、植物の種子又は葉等のスパイスに含まれる成分についても、コーヒー豆と同様に成分の抽出が十分でない場合がある。
【0005】
本開示は、上記従来の技術における課題に鑑みてなされたものであって、ユーザが喫する飲料の製造にあたって、素材に含まれる成分を効率的に抽出することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の加熱調理器は、溶媒と素材とを格納する容器と、容器を加熱する加熱装置と、容器内を減圧する減圧装置と、加熱装置及び減圧装置を制御して、溶媒に素材の成分が抽出された飲料を製造する飲料製造機能を実行する制御装置と、飲料製造機能の実行の指示を受け付ける入力装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、加熱調理器は、減圧装置を制御して飲料製造機能を実行する。容器内が減圧されることで、素材に含まれている空気が除かれ、素材の空隙に溶媒が浸潤する。つまり、素材と溶媒との接触面積が増え、素材の成分の溶媒への浸出が促される。したがって、加熱調理器は、ユーザが喫する飲料の製造にあたって、素材に含まれる成分を効率的に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る加熱調理器を示す概略構成図である。
図2】実施の形態1に係る加熱調理器を示す概略構成図である。
図3】実施の形態1に係る加熱調理器の構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施の形態1に係る加熱装置の加熱制御工程について説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る減圧装置の作動パターンについて説明するための図である。
図6】実施の形態1に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1の変形例1に係る減圧装置の作動パターンについて説明するための図である。
図8】実施の形態1の変形例2に係る減圧装置の作動パターンについて説明するための図である。
図9】実施の形態1の変形例3に係る減圧装置の作動パターンについて説明するための図である。
図10】実施の形態1の変形例4に係る減圧装置の作動パターンについて説明するための図である。
図11】実施の形態2に係る容器を説明するための図である。
図12】実施の形態2に係る加熱調理器を示す概略構成図である。
図13】実施の形態2に係る容器を説明するための図である。
図14】実施の形態3に係る加熱調理器を示す概略構成図である。
図15】実施の形態3に係る加熱調理器の構成の一例を示すブロック図である。
図16】実施の形態4に係る加熱調理器を示す概略構成図である。
図17】実施の形態4に係る加熱調理器の構成の一例を示すブロック図である。
図18】実施の形態5に係る加熱調理器を示す概略構成図である。
図19】実施の形態6に係る加熱調理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0010】
実施の形態1.
図面を用いて、実施の形態1に係る加熱調理器1について説明する。図1は、実施の形態1に係る加熱調理器1を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1に係る加熱調理器1を示す概略構成図である。なお、図1は加熱調理器1の斜視図であって、図2は加熱調理器1の側視図である。実施の形態1にかかる加熱調理器1は、溶媒に素材の成分を抽出した飲料を製造する飲料製造機能を主な機能とした飲料製造装置である。実施の形態1にかかる加熱調理器1は、溶媒及び素材を変えて、様々な種類の飲料を作ることができる。
【0011】
加熱調理器1が製造する飲料には、例えばコーヒー豆を素材としたコーヒーがある。また、加熱調理器1は、植物の葉、蕾及び種子等からなるスパイス(例えばクローブ及びカルダモン等)、レモン、並びに砂糖を素材としたコーラ、及び茶葉を素材とした緑茶又は紅茶等を製造する。これらの飲料を製造する場合、溶媒は、例えば水である。
【0012】
図1及び図2に示すように、加熱調理器1は、本体2及び容器3を有する。本体2は、容器3及び容器3に収容される溶媒及び素材の加熱と、容器3の内部の減圧とを行って、容器3の内部に飲料を製造するものである。本体2は、容器3を載置するための載置部21を有している。載置部21は、例えば、本体2の下部に形成されている。載置部21の上面には、載置面21aが形成されている。
【0013】
本体2は、操作表示装置22、加熱装置23、温度検出装置24、減圧装置25、ノズル26、報知装置27、及び圧力検出装置28を有する。操作表示装置22は、表示部22a及び操作部22bを有する。表示部22aは、加熱調理器1の飲料製造機能に関する情報を表示するものである。具体的には、調理対象、現在の容器温度、現在の容器内圧力、現在の調理時間、残りの調理時間、及び実行中の工程番号等が表示される。調理メニューは、製造する飲料の種類を示すものである。工程番号は、後述する加熱制御工程を識別するための番号である。操作部22bは、加熱調理器1に対するユーザの指示を入力するものである。具体的に、ユーザは、飲料製造の開始及び終了の指示、並びに調理対象の選択を行う。調理対象は、製造する飲料の種類を示す情報である。調理対象は、調理メニューとして表示部22aに示された加熱調理器1が調理可能な複数の飲料から選択される。調理メニューとして、例えば「クラフトコーラ」「コーヒー」「緑茶」又は「紅茶」等が表示部22aに表示される。
【0014】
加熱装置23は、本体2の載置部21の内部に設けられ、載置面21aに載置された容器3を加熱するものである。加熱装置23は、加熱コイル(図示せず)を有する電磁誘導加熱式、又はシーズヒータ(図示せず)を載置面21aに鋳込んだヒータ式等である。加熱装置23は、例えば環状に形成される。
【0015】
温度検出装置24は、容器3に当接するように設けられ、容器3の温度を検出するセンサである。温度検出装置24は、例えばサーミスタである。温度検出装置24は、例えば、載置面21aの裏側において、環状に形成された加熱装置23の内側に配置されている。温度検出装置24は、検出した容器温度を示す信号を制御装置70に送信する。
【0016】
減圧装置25は、本体2の内部に設けられ、容器内の空気を吸引して本体2の外部に排出するポンプである。減圧装置25は、本体2の内部に形成された連通路25aを介してノズル26と接続されている。ノズル26は、容器3を接続するための部品であって、本体2の上部に設けられている。ノズル26は、内部が空洞になった筒状である。ノズル26の先端は、容器3の上部に形成された開口に挿入される。これにより、容器3の開口が閉塞されるとともに、減圧装置25が容器内の空気を吸引することができるようになる。減圧装置25は、内部に、閉状態と開状態との切り替えが可能な弁体(図示せず)を有する。減圧装置25は、弁体を閉状態にすることで、容器内の空間と本体2の外部の空間との間で空気が流通しないようにする。つまり、容器4を密閉する。また、減圧装置25は、弁体を開状態にすることで、容器内の空間と本体2の外部の空間との間で空気が流通できるようにする。なお、ノズル26と容器3との接続方法は特に限定されない。例えば、ノズル26と容器3とは、それぞれにスクリュー溝を形成して接続するようにしてもよい。
【0017】
報知装置27は、例えばブザーであって、本体2に設けられる。報知装置27は、制御装置70から指示に基づいて、飲料の製造が完了したことを音で報知する。なお、報知装置27は、音声での報知を行うスピーカーであってもよい。
【0018】
圧力検出装置28は、例えばノズル26の先端に設けられ、容器3の内部の圧力を検出するセンサである。圧力検出装置28は、検出した容器内圧力を示す信号を制御装置70に送信する。
【0019】
容器3は、溶媒及び素材を格納するものである。容器3の材質は、炭素、ステンレス等の金属、又はガラス等であって、加熱装置23の加熱方式によって決定される。
【0020】
本体2は、制御装置70を有する。制御装置70は、マイクロコンピュータ等の演算装置上でソフトウェアを実行することにより各種機能が実現され、もしくは各種機能を実現する回路デバイス等のハードウェア等で構成されている。図3を用いて、制御装置70について説明する。図3は、実施の形態1に係る加熱調理器1の構成の一例を示すブロック図である。制御装置70は、操作部22bから調理対象の選択、及び飲料製造の開始指示を受けると、飲料の種類ごとに予め記憶された調理シーケンスに基づいて、減圧装置25と加熱装置23とを制御して、飲料製造機能を実行する。制御装置70は、温度検出装置24が検出した容器温度が、調理シーケンスが定める目標温度になるように加熱装置23の制御を行う。制御装置70は、圧力検出装置28が検出した容器内圧力が、調理シーケンスが定める目標圧力になるように減圧装置25の制御を行う。
【0021】
制御装置70は、操作表示装置22の表示部22aに加熱調理器1の飲料製造機能に関する情報を表示させる。制御装置70は、後述する寝かせ工程が終了したときに、報知装置27に飲料が出来上がったことを報知させる。これにより、飲料が出来上がった後に、素材を取り除きシロップとして濾すような作業が必要な場合においても、ユーザは必要な寝かせ時間を計らなくても、寝かせ時間の経過を知ることができる。このため、加熱調理器1の使い勝手が向上する。
【0022】
ここで、昨今家庭用飲料として注目されているクラフトドリンクの1例として、クラフトコーラの製造方法を説明する。クラフトコーラに用いられる主な素材は、特徴のある風味を持つスパイス類、さわやかな風味を加えるレモン、砂糖等の甘味料である。また、溶媒としては、水が用いられる。前準備として、植物の種子又は葉の表面又は内部から香り成分及び栄養素が抽出し易いように、スパイス類を切る、又はつぶして割れ目を入れる。レモンは輪切りにする。前準備が完了すると、容器内にスパイス類、レモン、砂糖、及び水を入れ、加熱調理器1の所定の位置へセットして、容器3にノズル26を挿しこんで、容器3を密閉する。そして、操作部22bを介して、表示部22aに表示された調理メニュー「クラフトコーラ」を選択し、調理開始の指示を行う。
【0023】
調理開始の指示を受けた制御装置70は、予め記憶部に格納された「クラフトコーラ」に対応した制御シーケンスを呼び出して飲料製造機能を実行する。飲料製造機能のすべての工程が終了すると、制御装置70は報知装置27を鳴らし、ユーザに調理の終了を報知する。
【0024】
報知装置27による報知を受けたユーザは、飲料を濾して、スパイス類及びレモン等の素材を取り除く。これにより、クラフトコーラのシロップが完成する。クラフトコーラのシロップは、炭酸水又は水等で適宜希釈してコーラとして飲まれる。
【0025】
加熱装置23の制御について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態1に係る加熱装置23の加熱制御工程について説明するための図である。飲料製造機能における加熱装置23の加熱制御工程として、立ち上げ工程、加熱維持工程、及び寝かせ工程の3つが行われる。立ち上げ工程は、容器3を調理シーケンスが定める目標温度まで加熱するための工程である。なお、立ち上げ工程の開始前において、容器3の温度は、常温(室温)である。制御装置70は、立ち上げ工程において、加熱装置23に通電して目標温度になるまで容器3を加熱させる。加熱装置23による容器3の加熱が継続して、容器温度が設定された目標温度に達すると、制御装置70は、立ち上げ工程を終了させる。
【0026】
加熱維持工程は、立ち上げ工程の後に行われ、加熱装置23を制御して容器3の温度を目標温度で維持することで、素材に含まれる成分の抽出を行うための工程である。加熱維持工程は、調理シーケンスが定める加熱維持時間行われる。具体的に、制御装置70は、温度検出装置24から入力される信号に基づいて、容器温度が目標温度以上であれば加熱装置23に動作を停止させ、容器温度が目標温度からヒステリシス温度を減じた温度未満であれば加熱装置23に動作を行わせる。ヒステリシス温度は、目標温度のみで加熱装置23のON又はOFFの切り替えを行った場合に発生するチャタリングを抑制するために設定されたもので、例えば、2℃である。ヒステリシス温度を設定することで、加熱装置23の動作の安定性を確保し、容器3、及び容器内に収容される溶媒及び素材の温度を、目標温度に安定して維持することができる。加熱維持時間が経過すると、制御装置70は、加熱維持工程を終了させる。
【0027】
寝かせ工程は、加熱維持工程の後に行われ、加熱装置23を停止させ、素材に含まれる成分の更なる抽出を行うための工程である。寝かせ工程は、調理シーケンスが定める寝かせ時間行われる。また、寝かせ工程では、容器3は、いわゆる粗熱が取られる。つまり、容器3は、寝かせ工程中、自然放置又は冷却庫に格納されて、冷蔵庫での保存が可能な程度の温度まで冷却される。
【0028】
目標温度の設定方法について説明する。目標温度は、調理対象ごとに調理シーケンスとして記憶されている。具体的に、目標温度は、事前の実験又は研究報告等に基づいて、調理対象に用いる素材の成分が効率的に抽出できるように設定されたものである。また、目標温度は、抽出した香り成分又は栄養素が失活しないように設定されたものである。図4では、目標温度が第1温度である場合を実線で示し、第1温度より低い第2温度である場合を破線で示し、第2温度よりも低い第3温度である場合を一点鎖線で示している。例えば、素材Aを用いる飲料では目標温度が第3温度に設定され、素材Aよりも高い温度で成分が溶け出す素材Bを用いる飲料が目標温度を第2温度に設定され、素材Bよりも高い温度で成分が溶け出す素材Cを用いる飲料では目標温度が第1温度に設定される。
【0029】
加熱維持時間及び寝かせ時間の設定方法について説明する。加熱維持時間及び寝かせ時間は、調理対象ごとに調理シーケンスとして記憶されている。具体的に、加熱維持時間及び寝かせ時間は、事前の実験又は研究報告等に基づいて、調理対象に用いる素材に含まれる香り成分及び栄養素が効率的に抽出できるように設定されたものである。特に、加熱維持時間又は寝かせ時間は、これらの時間が短過ぎて成分の抽出が不足したり、長過ぎて一度抽出された香り成分又は栄養素を失活させてしまったりしないように設定される。例えば、目標温度が何れも第1温度である場合、素材Aを用いる飲料では加熱維持時間を5分に設定され、素材Aよりも成分の抽出に時間を要する素材Bを用いる飲料では加熱維持時間を10分に設定され、素材Bよりも成分の抽出に時間を要する素材Cを用いる飲料では加熱維持時間を20分に設定されている。
【0030】
また、加熱維持時間及び寝かせ時間は、溶媒の容量に基づいて設定されてもよい。具体的に、加熱維持時間及び寝かせ時間には、溶媒の容量が大きいほど、より長い時間が設定される。これにより、素材又は溶媒によっては、容器3の内部の温度ムラが生じたり、容器3の内部の攪拌が十分ではなかったりすることを抑制することができる。例えば、調理対象が何れも同じ、且つ目標温度が何れも第1温度である場合、溶媒が少量であれば加熱維持時間を10分に設定し、溶媒が中量であれば加熱維持時間を20分に設定し、溶媒が多量であれば加熱維持時間を30分に設定する。なお、容量の判定は、立ち上げ工程における、容器3の温度の単位時間当たりの温度上昇率等から判定すれば良い。
【0031】
次に、減圧装置25の制御について図5を用いて説明する。図5は、実施の形態1に係る減圧装置25の作動パターンについて説明するための図である。制御装置70は、調理シーケンスに基づいて、減圧装置25の減圧期間、及び作動パターンを制御する。作動パターンは、作動状態の時間、停止状態の時間、周期数、及び目標圧力の組み合わせで定義される。
【0032】
減圧期間は、減圧装置25が容器内の減圧を行う期間である。制御装置70は、減圧期間中に、作動状態と停止状態とをとるように減圧装置25を制御する。作動状態は、減圧装置25に通電して容器内を減圧し、目標圧力に到達後、減圧装置25に通電せず容器内の減圧を停止し、弁体を閉状態にすることで容器内の減圧状態を維持する状態である。停止状態は、弁体を開状態にすることで容器内の圧力を大気圧にする状態である。周期数は、1回の作動状態と1回の停止状態とを1周期として、減圧期間中に周期が繰り返される回数である。目標圧力は、作動状態において減圧装置25が容器内を減圧する際における容器内圧力の目標値である。
【0033】
図5の例では、作動状態の時間をT_on1で示し、停止状態の時間をT_off1で示している。そして目標圧力は、容器内を、減圧装置25を作動させていないときの大気圧(1気圧)よりも低い第1気圧に設定される。つまり、減圧装置25が作動状態であるときに容器内は第1気圧に保たれ、この状態が作動状態の時間T_on1継続すると、減圧装置25が停止状態に切り替わる。減圧装置25が停止状態であるときに容器内は大気圧に保たれ、この状態が停止状態の時間T_off1継続すると、減圧装置25が再び作動状態に切り替わる。そして、周期数が5回、即ち作動状態と停止状態とが5回繰り返される。なお、図5では、容器内圧力の変化に伴う時間は考慮していない。
【0034】
減圧装置25の減圧期間は、加熱装置23の立ち上げ工程を行う前、又は加熱装置23の加熱制御工程の何れかを行っている最中である。減圧期間は、調理対象に基づいて設定される。もっとも、減圧期間を、複数の加熱制御工程中に設定してもよいし、加熱装置23の立ち上げ工程前と、何れかの加熱制御工程の最中との両方に設定してもよい。
【0035】
減圧期間を何れのタイミングに設定した場合であっても、容器内を減圧することで、素材に含まれている空気を除き、素材の空隙に溶媒を浸潤することができる。つまり、素材と溶媒との接触面積を増やし、素材の成分の溶媒への浸出を促すことができる。また、減圧装置25の動作時には容器内が密閉状態に保たれているため、香り成分が容器内部に閉じ込められ、容器3が大気へ開放されている場合と比較してより香り成分を多く含んだ飲料が作られる。更に、減圧装置25を作動状態と停止状態とに周期的に制御することで、容器内の状態を、減圧状態と大気圧状態とに繰り返し変化させ、素材の内部の空隙への溶媒の浸潤をより活性化することができる。
【0036】
特に、減圧期間を、立ち上げ工程を行う前までに設定した場合、加熱前に容器内が減圧されることで、低温時に素材から溶け出し易い成分を効率よく抽出することができる。このため、所謂水出しに要する時間を短くすることができる。
【0037】
また、減圧期間を、立ち上げ工程又は加熱維持工程中に設定した場合、溶媒が100℃以下の状態であっても沸騰状態とすることができる。また、沸騰の程度を調整することができる。具体的に、沸騰の有無及び程度は、加熱装置23の目標温度と減圧装置25の目標圧力とから決定される。例えば、第1気圧に対する沸点が図4で説明した第2温度と第3温度との間にある場合を仮定する。このとき、溶媒を沸騰させる場合、目標温度を第1温度又は第2温度に設定することで沸騰させることができる。また、目標温度を第1温度に設定することで、第2温度に設定する場合よりも、沸騰の程度を強くすることができる。また、第2温度よりも低温かつ、第1気圧よりも低圧に制御して溶媒を沸騰させるようにしてもよい。
【0038】
溶媒を沸騰させることで、容器内の素材と溶媒とを攪拌でき、素材から成分を抽出する過程で容器内に温度の偏りが生じることを抑制できる。また、素材に対して攪拌による衝撃を加えることで、香り成分又は栄養素を効率的に抽出することができる。更に、減圧装置25を作動状態と停止状態とに周期的に制御することで、容器内の沸騰状態の有無を繰り返し変化させて溶媒の攪拌を促進し、素材全体からの香り成分又は栄養素の抽出を更に効率よく抽出することができる。なお、溶媒を沸騰させるか否かは、調理対象に基づいて設定される。溶媒を沸騰させない場合、目標圧力が第1気圧であれば、目標温度は第3温度に設定される。このように、目標圧力及び目標温度の設定により沸騰の有無及びその程度も変化するため、容器内に収容される素材又は溶媒の性質によって、目標圧力及び目標温度の設定の組み合わせを選択して、香り成分又は栄養素の抽出により効果的な条件を設定すればよい。
【0039】
更に、減圧期間を、加熱維持工程終了後から寝かせ時間の終了までに設定した場合、調理後の容器3の密閉性が向上し、出来上がった飲料の衛生を保つことができる。このため、寝かせ時間中に飲料が腐敗することを抑制することができる。また、調理終了後に容器3を開放しないで飲料を保存する場合も飲料が腐敗することを抑制することができる。加えて、出来上がった飲料から抽出された香り成分が空気中に逃げ出すことを抑制することができる。
【0040】
図6を用いて、制御装置70による加熱装置の動作の制御について説明する。図6は、実施の形態1に係る制御装置70の動作を示すフローチャートである。なお、ここでは、減圧装置25の動作についての説明は、省略する。先ず、制御装置70は、操作部22bを介してユーザからの飲料製造の開始の指示、及び調理対象の選択を受け付ける(ステップS1)。飲料製造の開始の指示が入力されると、制御装置70は、立ち上げ工程を行う(ステップS2)。容器温度が目標温度になった場合、制御装置70は、加熱維持工程を行う(ステップS3)。加熱維持時間が終了すると、制御装置70は、寝かせ工程を行う(ステップS4)。寝かせ時間が終了すると、制御装置70は、調理の終了を報知する(ステップS5)。
【0041】
以上のように、実施の形態1によれば、容器内が減圧されることで、素材に含まれている空気が除かれ、素材の空隙に溶媒が浸潤する。つまり、素材と溶媒との接触面積が増え、素材の成分の溶媒への浸出が促される。したがって、加熱調理器1は、ユーザが喫する飲料の製造にあたって、素材に含まれる成分を効率的に抽出することができる。
【0042】
また、素材の成分を効率的に抽出することができるため、調理時間が短縮され、加熱調理器1の使い勝手が向上する。よって、ユーザが飲料を作る機会を増やすことができる。
【0043】
また、加熱調理器1は、容器3を加熱する加熱装置23と、容器内を減圧する減圧装置25とを有する。このため、例えば、加熱された溶媒を、ポンプによって素材を保持するブリューチャンバに流入させることで、飲料を製造する装置と比較して、簡素な構成とすることができる。このため、加熱調理器1は、小型かつ安価に製造することができる。
【0044】
(実施の形態1の変形例1)
図7は、実施の形態1の変形例1に係る減圧装置25の作動パターンについて説明するための図である。図7で示すように、減圧装置25の作動パターンは、調理対象に応じて、実施の形態1で説明したものと異なる作動パターンにしてもよい。具体的に、実施の形態1の変形例1の作動状態の時間T_on2は、実施の形態1の作動状態の時間T_on1よりも短く、実施の形態1の変形例1の停止状態の時間T_off2は、実施の形態1の停止状態の時間T_off1よりも長い。なお、1周期に要する時間は、実施の形態1と、実施の形態1の変形例1とで同じである。したがって、実施の形態1と、実施の形態1の変形例1とでは、減圧装置25の作動パターンにおけるデューティ比が異なっている。なお、デューティ比を固定したまま減圧装置25の作動状態及び停止状態の時間を調整してもよい。また、デューティ比を固定せずに減圧装置25の作動状態及び停止状態の時間を調整してもよい。
【0045】
実施の形態1の変形例1によれば、調理対象に基づいて、減圧装置25の作動状態及び停止状態の時間を変更することで、調理対象に用いられる素材に含まれる香り成分又は栄養素を効率的に抽出することができる。また、香り成分の抽出量を変化させることで、飲料から感じられる香りの強弱を調整することができる。
【0046】
(実施の形態1の変形例2)
図8は、実施の形態1の変形例2に係る減圧装置25の作動パターンについて説明するための図である。図8で示すように、減圧装置25の作動パターンは、調理対象に応じて、実施の形態1で説明したものと異なる作動パターンにしてもよい。具体的に、減圧装置25の作動状態における目標圧力は、所定の時間、第1気圧よりも高い第2気圧に設定される。続いて、目標圧力は、所定の時間、第1気圧に設定される。そして、減圧装置25は、所定の時間、停止状態に制御される。実施の形態1の変形例2では、この一連の動作を1周期として、減圧期間中に5周期繰り返される。なお、能力が異なる2つの減圧装置25を、ノズル26に並列に接続し、容器内を第2気圧に保つ能力を有する減圧装置25の動作が終了した後に、容器内を第1気圧に保つ能力を有する減圧装置25に切り替えて動作させることで、容器内の圧力を段階的に調整するようにしてもよい。
【0047】
実施の形態1の変形例2によれば、調理対象に基づいて、容器内の圧力状態を変更することで、調理対象に用いられる素材に含まれる香り成分又は栄養素を効率的に抽出することができる。また、香り成分の抽出量を変化させることで、飲料から感じられる香りの強弱を調整することができる。さらに、容器内の圧力を緩やかに低下させるため、減圧装置25の寿命を延ばすことができる。また、減圧装置25の動作音が抑制され、静音性が高い加熱調理器1を提供することができる。
【0048】
(実施の形態1の変形例3)
図9は、実施の形態1の変形例3に係る減圧装置25の作動パターンについて説明するための図である。図9で示すように、減圧装置25の作動パターンは、調理対象に応じて、実施の形態1で説明したものと異なる作動パターンにしてもよい。具体的に、減圧装置25の作動状態における目標圧力は、所定の時間、第2気圧よりも高い第3気圧に設定される。続いて、目標圧力は、所定の時間、第1気圧よりも高い第2気圧に設定される。さらに、目標圧力は、所定の時間、第1気圧に設定される。そして、減圧装置25は、所定の時間、停止状態に制御される。実施の形態1の変形例3では、この一連の動作を1周期として、減圧期間中に5周期繰り返される。なお、能力が異なる3つの減圧装置25を、ノズル26に並列に接続し、容器内を第3気圧に保つ能力を有する減圧装置25の動作が終了した後に、容器内を第2気圧に保つ能力を有する減圧装置25に切り替えて動作させ、容器内を第2気圧に保つ能力を有する減圧装置25の動作が終了した後に、容器内を第1気圧に保つ能力を有する減圧装置25に切り替えて動作させることで、容器内の圧力を段階的に調整するようにしてもよい。
【0049】
実施の形態1の変形例3によれば、調理対象に基づいて、容器内の圧力状態を変更することで、調理対象に用いられる素材に含まれる香り成分又は栄養素を効率的に抽出することができる。また、香り成分の抽出量を変化させることで、飲料から感じられる香りの強弱を調整することができる。さらに、容器内の圧力を緩やかに低下させるため、減圧装置25の寿命を延ばすことができる。また、減圧装置25の動作音が抑制され、静音性が高い加熱調理器1を提供することができる。
【0050】
(実施の形態1の変形例4)
図10は、実施の形態1の変形例4に係る減圧装置25の作動パターンについて説明するための図である。図10で示すように、減圧装置25の作動パターンを、設定圧力が実施の形態1の変形例3では段階的に低下させていたのに対して、設定圧力が段階的に上昇させるようにしてもよい。この場合も、実施の形態1の変形例3と同様の効果を得ることができる。なお、設定圧力は、圧力の大きさで順番に設定されなくてもよい。例えば、設定圧力を、第3圧力、第2圧力、第3圧力、及び第1圧力の順に設定してもよい。
【0051】
実施の形態2.
図11は、実施の形態2に係る容器3Aを説明するための図である。図12は、実施の形態2に係る加熱調理器1Aを示す概略構成図である。図11及び図12に示すように、実施の形態2に係る加熱調理器1Aは、容器3Aの内容積が可変であり、本体2が内容積の異なる容器3Aに対応可能である点で実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
【0052】
図11に示すように、容器3Aは、上部容器3Aa及び下部容器3Abからなる。上部容器3Aaの側面と下部容器3Abの側面とが被さる部分は、摺動部5として機能する。摺動部5には、らせん状の切込みが形成されており、上部容器3Aaと下部容器3Abとを反対方向へ回転させることによって、容器3Aの深さが変化する。容器3Aを上面から見た際に、上部容器3Aaを右(ねじが進む回転方向)に回転させれば容器3Aの深さが浅くなる。同様に、上部容器3Aaを左(ねじが後退する回転方向)に回転させれば容器3Aの深さが深くなる。図11では、第1状態として容器3Aの深さが相対的に深く、内容積が相対的に大きい場合を示し、第2状態として容器3Aの深さが相対的に浅く、内容積が相対的に小さい場合を示している。摺動部5には、Oリング(図示せず)等が設けられ、容器3Aのシール性能(密閉性能)が確保される。
【0053】
図12に示すように、実施の形態2のノズル26は、本体2から引き出し可能になっており、ノズル26の先端の位置を容器3Aの上部の位置に合わせて変更することができる。これにより、容器3Aの密閉性を保ったまま、ノズル26と載置面21aとの距離を変更して、容器3Aの大きさに対応することができる。つまり、加熱装置23が誘導加熱式のものであれば、加熱装置23と容器3Aの底面部との距離を一定に保つことができる。また、加熱装置23がヒータ式のものであれば、加熱装置23と容器3Aの底面とが当接した状態を保つことができる。
【0054】
概して、減圧装置25により容器内を減圧状態にするためには、容器内の上部に存在する空気を排出する必要がある。容器内に収容される素材及び溶媒の容量によって、容器内の溶媒の上部の空間の容量、すなわち空気の量は変化する。収容される素材及び溶媒が多量であれば上部空間の容量は小さくなり、収容される素材及び溶媒が少量であれば上部空間の容量は大きくなる。上部空間の容量が大きくなって排出すべき空気の量が多くなると、減圧装置25が動作する時間、ひいては調理時間が長くなる。また、減圧装置25は、動作する時間が長くなることで、寿命が短くなることがある。
【0055】
この点に関して、実施の形態2によれば、容器3Aは内容積が可変である。このため、容器3Aの内容積は、容器内に収容される素材及び溶媒の容量が少ない場合には相対的に小さい状態にし、素材及び溶媒の容量が多い場合には相対的に大きい状態にすることができる。このように容器3Aの内容積を調整することで、排出しなければならない容器3A上部の空気の容量を減らすことが可能となり、減圧装置25が動作する時間を短縮することができる。また、減圧装置25及び加熱調理器1Aの寿命が短くなることを抑制することができる。
【0056】
なお、図13に示すように、内容積が可変な容器3Aに代わって、内容積の異なる2つの容器3と容器3Bとを用いるようにしてもよい。図13は、実施の形態2に係る容器3Bを説明するための図である。
【0057】
また、ノズル26と載置面21aとの距離の変更は、ノズル26を引き出し可能とする以外の構造によって行われるようにしてもよい。例えば、容器3Aが、容器3Aの上部が本体2によって吊り下げた状態で固定される場合、加熱装置23の設けられた載置部21の位置を変更するようにしてもよい。この場合も、加熱装置23が加熱コイルを有する誘導加熱式のものであれば、加熱装置23と容器3Aの底面部との距離が一定に保たれる。また、加熱装置23がシーズヒータを載置面21aに鋳込んだヒータ式のものであれば、加熱装置23と容器3Aの底面とが当接した状態を保つことができる。
【0058】
実施の形態3.
図14は、実施の形態3に係る加熱調理器1Bを示す概略構成図である。図14に示すように、実施の形態3に係る加熱調理器1Bは、冷却装置29を備える点で実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
【0059】
冷却装置29は、例えば、容器3の底面と接触するように載置部21に設けられる。冷却装置29は、例えば、ペルチェ素子からなるものである。
【0060】
図15は、実施の形態3に係る加熱調理器1Bの構成の一例を示すブロック図である。図15に示すように、制御装置70は、冷却装置29を制御する。具体的に、制御装置70は、温度検出装置24が検出した容器温度に基づいて、容器温度が、調理シーケンスが定める目標温度になるように冷却装置29を制御する。例えば、冷却装置29は、寝かせ工程中に動作する。また、冷却装置29は、立ち上げ工程前に動作する。
【0061】
以上のように、実施の形態3によれば、冷却装置29は、寝かせ工程中に動作する。このため、出来上がった飲料を速やかに常温以下に冷却することで、粗熱取りを速やかに行うことができる。また、衛生性を向上させることができる。さらに、抽出する成分によっては不必要な高温状態が維持されることを抑制し、香り成分又は栄養素の失活を防ぐことができる。
【0062】
また、実施の形態3によれば、加熱調理器1Bは、冷却装置29を有し、冷却装置29は、立ち上げ工程前に動作する。この場合、加熱調理器1Bにおいて制御可能な温度範囲の下限が広がり、容器温度をさらに成分の抽出に適した温度にすることができる。また、立ち上げ工程前に減圧装置25と共に動作する場合を考えると、減圧期間が長くなった場合でも、衛生性を保つことができる。したがって、減圧期間の設定をより長い時間で行うことができ、成分の抽出をより効率的に行うことができる。
【0063】
なお、冷却装置29は、ペルチェ素子ではなく、冷却ファン又はコンプレッサを用いた冷凍サイクルであってもよい。
【0064】
実施の形態4.
図16は、実施の形態4に係る加熱調理器1Cを示す概略構成図である。実施の形態4に係る加熱調理器1Cは、粉砕装置30を備える点で実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
【0065】
図16に示すように、粉砕装置30は、本体2の内部に設けられる。粉砕装置30は、刃と刃とを擦り合わせて、粉砕装置30に格納された素材を細かく粉砕したり、つぶしたり、又は切り刻んだりする、いわゆるミル機能を有する装置である。粉砕装置30によって処理された素材は、本体2の内部に形成された連通路30a、及び素材ノズル31を介して容器内に搬送され、溶媒と一緒に容器内に収容される。素材ノズル31は、ノズル26と同様の構成であって、本体2の上部に設けられている。素材ノズル31の先端は、容器3の上部に形成された開口に挿入される。この開口は、ノズル26の先端が挿入される開口と同じ開口であってもよいし、異なった開口であってもよい。また、素材ノズル31は、粉砕装置30で処理した素材が内部を通過できるように、内径がノズル26と異なっていてもよい。
【0066】
図17は、実施の形態4に係る加熱調理器1Cの構成の一例を示すブロック図である。図17に示すように、制御装置70は、粉砕装置30を制御する。具体的に、操作部22bは、ユーザによる粉砕装置30の使用有無の選択を受け付ける。制御装置70は、粉砕装置30の使用、及び飲料の製造開始が指示されると、加熱装置23及び減圧装置25を動作させる前に粉砕装置30を動作させ、素材の粉砕を行う。所定時間が経過すると、加熱装置23又は減圧装置25を動作させて、飲料の製造を開始する。所定時間は、素材の粉砕に必要な時間であって、例えば調理対象ごとにあらかじめ定められている。また、処理後の素材の細かさが変わるように、調理対象ごとに処理方法を変えるようにしてもよい。
【0067】
以上のように、実施の形態4では、加熱調理器1Cは、粉砕装置30を有している。このため、素材を細かくし、溶媒と素材の表面との接触面積を増加させることで、素材に含まれる香り成分及び栄養素の抽出を促進することができる。
【0068】
また、実施の形態4では、粉砕した素材を容器内に搬送し、自動的に飲料の製造を開始している。このため、保存時間が長くなった素材が酸化等することで、飲料の風味が劣化することを抑制することができる。
【0069】
なお、粉砕された素材は、加熱調理器1Cの内部に設けられた貯蔵部(図示せず)に一時的に保存されるようにしてもよい。これにより、粉砕装置30によって処理された粉末を不織布でできたティーバッグ等に入れることができる。
【0070】
実施の形態5.
図18は、実施の形態5に係る加熱調理器1Dを示す概略構成図である。実施の形態5に係る加熱調理器1Dは、炊飯又はおかずの調理を行う、いわゆる真空低温調理器(電気調理鍋とも呼ばれる)である点で実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
【0071】
実施の形態5の加熱調理器1Dは、調理モードとして、従来の加熱調理器1Dが行う炊飯、又はおかず等の調理を行うモードに加えて、飲料製造機能を実現する飲料製造モードを有する。図18に示すように、加熱調理器1Dは、本体41と、本体41に開閉自在に係止された外蓋42とを備えている。
【0072】
本体41の内側には、容器カバー43が設けられている。容器カバー43には、有底筒状で上面が開口した鍋状の容器44が着脱自在に収納されている。容器44内には、被加熱物である食材等の内容物が収容される。なお、飲料製造モードでは、被加熱物として、素材及び溶媒が収容される。容器カバー43の外壁には、加熱装置45が設けられている。加熱装置45は、例えば、容器カバー43にスパイラル状に旋回された加熱コイル45aであり、高周波電流が供給されることにより発生する磁界で容器44を誘導加熱する。加熱装置45の加熱動作は、制御装置70Aによって制御される。なお、加熱装置45として、この例に限られず、電流が供給されることによって熱を発生するヒータ等が用いられてもよい。
【0073】
容器カバー43の底面の中央部には貫通孔が形成され、貫通孔内に温度検出装置46が配置されている。温度検出装置46は、圧縮ばね47によって下方から支持され、容器44の底部に接触するように配置される。温度検出装置46は、容器44の温度を計測する。
【0074】
容器44には取っ手部48が設けられている。取っ手部48は、容器カバー43に設けられた図示しない保持部上に係止される。これにより、容器44が本体41内に保持される。容器44の上面開口の周囲には、外方に延出するフランジ部44aが形成されている。
【0075】
外蓋42には、容器44の上面開口を覆う蓋体である内蓋49が連結されている。内蓋49の周縁には、シール材である蓋パッキン50が設けられている。蓋パッキン50は、外蓋42を閉じた際に、容器44のフランジ部44a及び内壁と内蓋49との密閉性が得られるようになっている。
【0076】
内蓋49には、貫通する内蓋通気孔56が設けられている。外蓋42には、外面に開口する外蓋通気孔57a~57cと、内蓋通気孔56と外蓋通気孔57a~57cのそれぞれとの間に設けられた、容器44の内外を連通する連通管58a~58cとが形成されている。連通管58a~58cは、中空状に形成され、内蓋通気孔56側の端部には、内蓋通気孔56に密閉接続するための経路パッキン59が配置されている。
【0077】
連通管58aには、減圧装置60と、経路切替弁61が配置されている。減圧装置60は、内蓋通気孔56を介して容器44内の空気を吸引し、吸引した空気を連通管58a及び外蓋通気孔57aを介して外部に排出することにより、容器44内を減圧する。減圧装置60の駆動は、制御装置70Aによって制御される。減圧装置60は、容器内の空気を吸引し、容器内を減圧するという点で、実施の形態1で説明した減圧装置25と同様の機能を有する。
【0078】
経路切替弁61は、減圧装置60よりも内蓋通気孔56側に設けられ、減圧装置60の吸気口と、外蓋通気孔57cとに接続されている。経路切替弁61は、制御装置70Aの制御に基づき、減圧装置60と、外蓋通気孔57c又は内蓋通気孔56とを連通する。
【0079】
連通管58bには、開閉弁62が配置されている。開閉弁62は、連通管58bの内蓋通気孔56から外蓋通気孔57bに至る流路を開閉する。開閉弁62の開閉動作は、制御装置70Aによって制御される。
【0080】
内蓋49には蒸気孔51が形成されている。蒸気孔51には蒸気排出弁52が配置されている。蒸気排出弁52は、容器44内を密閉又は非密閉とする。経路切替弁61及び開閉弁62によって内蓋通気孔56が閉じた状態で、容器44内の内容物が加温されて蒸気が発生し、容器44内の圧力が1atmを超えた際に、蒸気排出弁52が開く。また、容器44内が低圧となった場合、蒸気排出弁52は自重によって閉じる。
【0081】
蒸気排出弁52の下流には、カートリッジ53が配置されている。カートリッジ53は、蒸気排出口54を備えている。蒸気排出口54は、蒸気排出弁52が開いた際に、蒸気排出弁52を介して容器44内の蒸気を排出する。カートリッジ53には、蒸気の排出経路を密閉するためのカートリッジパッキン55が設けられている。
【0082】
内蓋49には、貫通するセンサ孔63が設けられている。外蓋42には、蓋センサ64と蓋センサパッキン65とが配置されている。蓋センサ64は、センサ孔63を介して容器44内の温度又は圧力を計測する。蓋センサパッキン65は、センサ孔63と外蓋42とを密閉するために設けられている。
【0083】
外蓋42には、操作表示装置66が設置されている。操作表示装置66は、ユーザによる調理モードの選択操作等の入力、ならびに動作状態等の表示を行う。操作表示装置66には、操作部22bとしての各種ボタンと、表示部22aとしてのLED(Light Emitting Diode)及びLCD(Liquid Crystal Display)等(いずれも図示せず)が設けられている。
【0084】
加熱調理器1Dは、制御装置70Aを備えている。制御装置70Aは、加熱調理器1D全体を制御する。制御装置70Aは、マイクロコンピュータ等の演算装置上でソフトウェアを実行することにより各種機能が実現され、もしくは各種機能を実現する回路デバイス等のハードウェア等で構成されている。
【0085】
制御装置70Aは、操作部22bを介して設定された調理モードで調理動作が行われるように、加熱装置45、減圧装置60、経路切換弁61、及び開閉弁62の動作を制御する。飲料製造モードにおいて、制御装置70Aは、実施の形態1と同様に、飲料の種類ごとに予め記憶された調理シーケンスに基づいて、減圧装置60と加熱装置45とを制御する。また、飲料製造モードにおいて、減圧装置60を動作させるとき、制御装置70Aは、経路切替弁61を制御して、減圧装置60と内蓋通気孔56とを連通させる。また、制御装置70Aは、開閉弁62を制御して、連通管58bの内蓋通気孔56から外蓋通気孔57bに至る流路を開放する。
【0086】
以上のように、実施の形態5によれば、加熱調理器1Dは、炊飯又はおかずの調理を行う、いわゆる真空低温調理器である。この場合でも、実施の形態1で説明した加熱調理器1と同様に、飲料製造モードにおいて、減圧装置60を用いて容器44内が減圧されることで、素材に含まれている空気が除かれ、素材の空隙に溶媒が浸潤する。つまり、素材と溶媒との接触面積が増え、素材の成分の溶媒への浸出が促される。したがって、加熱調理器1Dは、ユーザが喫する飲料の製造にあたって、素材に含まれる成分を効率的に抽出することができる。
実施の形態6.
図19は、実施の形態6に係る加熱調理システム100を示すブロック図である。図19に示すように、加熱調理システム100は、加熱調理器1、サーバ装置8、及び調理機器9を有する。加熱調理器1と、サーバ装置8と、調理機器9とは、インターネットと有線あるいは無線通信手段を介して通信可能に接続されている。
【0087】
サーバ装置8は、それぞれの飲料の制御シーケンスが記憶されている。サーバ装置8は、制御シーケンスを加熱調理器1の制御装置70に送信する。加熱調理器1の制御装置70は、サーバ装置8から新たな制御シーケンスを受信することで、調理可能な飲料の種類を増やし、調理メニューを充実させることができる。
【0088】
調理機器9は、加熱調理器1とは別の機器であって、例えば、炊飯器、IHグリル、又は真空低温調理器である。調理機器9は、当該調理機器9で調理したメニューを示すメニュー情報を、サーバ装置8及び加熱調理器1の制御装置70に送信する。加熱調理器1は、メニュー情報を受信することで、調理対象とする飲料の種類の提案を行うことができる。提案内容は、例えば次のようにして生成される。例えば、サーバ装置8は、ユーザの加熱調理器1及び調理機器9での調理内容を集計し、同じ時間帯で調理されたメニューと飲料とから、調理機器9で調理されたメニューに対して好まれる飲料の種類を学習する。そして、加熱調理器1は、サーバ装置8から、学習結果を受信して、ユーザに提案を行う。また、加熱調理器1には、メニュー情報に対応する飲料が提案内容として、あらかじめ記憶されていてもよい。
【0089】
以上のように、実施の形態6によれば、調理可能な飲料の種類を増やし、ユーザに対して新しい飲料を飲む機会を提供することができる。また、加熱調理器1と異なる他の調理機器9で調理されたメニューに合う飲料の種類又は風味を提案することができる。
【0090】
以上、実施の形態1~6について説明したが、本開示は、上述した実施の形態1~6に限定されるものではなく、本開示要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、実施の形態1~6で説明した構成は、それぞれ組み合わせることができる。
【0091】
例えば、実施の形態1では、操作表示装置66から調理対象が入力されるものとして説明したが、調理対象以外にも、素材、溶媒、抽出する成分、又は素材の重量を特定する情報を入力できるようにしてもよい。例えば、ユーザは、表示部22aに表示された候補から、素材、溶媒、抽出する成分、又は素材の重量を選択する。この場合、制御装置70は、調理対象以外にも、素材、抽出する成分、又は素材の重量を特定する情報に基づいて、加熱維持時間又は寝かせ時間を設定するようにしてもよい。また、制御装置70は、調理対象以外にも、素材、溶媒、抽出する成分を特定する情報に基づいて、目標温度を設定するようにしてもよい。さらに、制御装置70は、調理対象以外にも、素材、溶媒、抽出する成分、又は素材の重量を特定する情報に基づいて、減圧装置60の作動状態時の設定圧力、作動状態の時間、又は停止状態の時間を決定するようにしてもよい。つまり、調理対象に基づいてあらかじめ定まっていた制御シーケンスではなく、直接的に選択された素材、溶媒、抽出する成分、又は素材の重量に基づく制御シーケンスによって飲料の製造が行われるため、素材に含まれる成分をより効率的に抽出することができる。
【0092】
素材及び溶媒の重量は、例えば本体2に容器3の重量の変化を計測する重量計測装置を設けることで計測するようにしてもよい。また、本体2に取り付けられたカメラ等の撮影装置で取られた容器内の映像を分析することで、素材又は溶媒を特定するようにしてもよい。
【0093】
なお、加熱維持時間、寝かせ時間、若しくは目標温度、又は減圧装置60の作動状態時の設定圧力、作動状態の時間、若しくは停止状態の時間は、ユーザが操作部22bを介して直接入力できるようになっていてもよい。
【0094】
また、調理対象の味又はにおいの強さの指示を受け付けるようにしてもよい。この場合、制御装置70は、味又はにおいの強さの指示に基づいて、目標温度、加熱維持時間、又は寝かせ時間を設定する。例えば、味又はにおいを通常より強くするよう指示された場合、目標温度は味又はにおいの強さの指示が通常である場合より高く、加熱維持時間及び寝かせ時間は味又はにおいの強さの指示が通常である場合より長く設定される。また、制御装置70は、味又はにおいの強さの指示をユーザの嗜好情報として記憶し、次回以降同じ飲料の製造が選択された際に、前回製造した飲料の味又はにおいの強さを表示部22aに表示するようにしてもよい。また、ユーザの嗜好情報を実施の形態6で説明したサーバ装置8に送信することで、サーバ装置8にユーザの嗜好情報をメニュー情報と対応して学習させるようにしてもよい。加熱調理器1は、サーバ装置8から学習結果を受信する。これにより、加熱調理器1は、調理機器9から調理機器9が調理したメニューを受信した際に、ユーザに対して飲料の味又はにおいの強さを提案することができる。
【0095】
また、調理対象によっては、寝かせ工程を省略するようにしてもよい。この場合、加熱維持時間が経過したときに、飲料の製造が完了する。また、加熱維持工程の終了時に報知装置27を用いて、飲料の製造が完了したことが報知される。
【0096】
温度検出装置24は、載置部21に設けられて容器3の底面の温度を検出する形態ではなく、容器3の側面の温度の検出できるように、本体2の側部に取り付けられてもよい。
【0097】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0098】
(付記1)
溶媒と素材とを格納する容器と、
前記容器を加熱する加熱装置と、
前記容器内を減圧する減圧装置と、
前記加熱装置及び前記減圧装置を制御して、前記溶媒に前記素材の成分が抽出された飲料を製造する飲料製造機能を実行する制御装置と、
前記飲料製造機能の実行の指示を受け付ける入力装置と、を備える
加熱調理器。
(付記2)
前記制御装置は、
前記飲料製造機能における加熱装置の加熱制御工程として、
前記容器を目標温度まで加熱するように前記加熱装置を制御する立ち上げ工程と、
前記容器の温度を前記目標温度で加熱維持時間維持するように前記加熱装置を制御する加熱維持工程と、を行う
付記1に記載の加熱調理器。
(付記3)
前記制御装置は、
前記加熱制御工程として、更に前記加熱装置を寝かせ時間停止させる寝かせ工程を行う
付記2に記載の加熱調理器。
(付記4)
前記制御装置は、
前記立ち上げ工程を開始する前に前記容器内を減圧するように前記減圧装置を制御する
付記2又は3に記載の加熱調理器。
(付記5)
前記制御装置は、
前記立ち上げ工程中又は前記加熱維持工程中に前記容器内を減圧するように前記減圧装置を制御する
付記2~4の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記6)
前記制御装置は、
前記寝かせ工程中に前記容器内を減圧するように前記減圧装置を制御する
付記3に記載の加熱調理器。
(付記7)
前記制御装置は、製造する前記飲料、前記素材、抽出する前記成分、前記溶媒の容量、又は前記素材の重量を特定する情報に基づいて、前記加熱維持時間又は前記寝かせ時間を設定する
付記3又は6に記載の加熱調理器。
(付記8)
前記制御装置は、製造する前記飲料、前記素材、又は抽出する前記成分を特定する情報に基づいて、前記目標温度を設定する
付記2~7の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記9)
前記制御装置は、前記減圧装置が前記容器内を減圧する作動状態と停止状態とを交互にとるように制御する
付記1~8の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記10)
前記制御装置は、製造する前記飲料、前記素材、抽出する前記成分、前記溶媒の容量、又は前記素材の重量を特定する情報に基づいて、前記作動状態時の設定圧力、前記作動状態の時間、又は前記停止状態の時間を決定する
付記9に記載の加熱調理器。
(付記11)
前記容器は、容積の変更が可能である
付記1~10の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記12)
前記容器を冷却する冷却装置を更に備える
付記1~11の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記13)
前記制御装置は、
前記冷却装置を、前記立ち上げ工程の開始前に作動させる
付記12に記載の加熱調理器。
(付記14)
前記制御装置は、
前記冷却装置を、前記寝かせ工程中に作動させる
付記12又は13に記載の加熱調理器。
(付記15)
前記素材を粉砕する粉砕装置を更に備える
付記1~14の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記16)
前記溶媒又は前記素材の重量を計測する重量計測装置を更に備える
付記1~15の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記17)
前記入力装置は、前記飲料の味又はにおいの強さの指示を受け付け、
前記制御装置は、前記飲料の味又はにおいの強さの指示を、ユーザの嗜好情報として記憶する
付記1~16の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記18)
前記制御装置は、通信可能に接続された他の調理機器から、前記他の調理機器で調理されたメニューを示すメニュー情報を受信する
付記1~17の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記19)
前記制御装置は、通信可能に接続されたサーバ装置から、前記飲料の調理シーケンスを示す情報を受信する
付記1~18の何れか1つに記載の加熱調理器。
(付記20)
付記1~19の何れか1つに記載の加熱調理器と、
前記加熱調理器と通信可能に接続された前記他の調理機器と、
前記加熱調理器と通信可能に接続されたサーバ装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記他の調理機器から、前記他の調理機器で調理されたメニューを示すメニュー情報を受信し、
前記サーバ装置から、前記飲料の調理シーケンスを示す情報を受信する
加熱調理システム。
【符号の説明】
【0099】
1、1A、1B、1C、1D 加熱調理器、2 本体、3、3A、3B 容器、3Aa 上部容器、3Ab 下部容器、5 摺動部、8 サーバ装置、9 調理機器、21 載置部、21a 載置面、21b 距離調整機構、22 操作表示装置、22a 表示部、22b 操作部、23 加熱装置、24 温度検出装置、25 減圧装置、25a 連通路、26 ノズル、27 報知装置、28 圧力検出装置、29 冷却装置、30 粉砕装置、30a 連通路、31 素材ノズル、41 本体、42 外蓋、43 容器カバー、44 容器、44a フランジ部、45 加熱装置、45a 加熱コイル、46 温度検出装置、47 圧縮ばね、48 取っ手部、49 内蓋、50 蓋パッキン、51 蒸気孔、52 蒸気排出弁、53 カートリッジ、54 蒸気排出口、55 カートリッジパッキン、56 内蓋通気孔、57a、57b、57c 外蓋通気孔、58a、58b、58c 連通管、59 経路パッキン、60 減圧装置、61 経路切替弁、62 開閉弁、63 センサ孔、64 蓋センサ、65 蓋センサパッキン、66 操作表示装置、70、70A 制御装置、100 加熱調理システム。
図1
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