(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156373
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241029BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20241029BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20241029BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
H05K1/16 D
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/30 547
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070777
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 智之
【テーマコード(参考)】
4E351
5E001
5E082
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA13
4E351BB03
4E351BB33
4E351CC06
4E351DD04
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4E351GG09
5E001AB01
5E001AC09
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5E316AA02
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5E316GG23
5E316HH40
5E316JJ14
5E316JJ23
(57)【要約】
【課題】 キャパシタと絶縁層との剥離を抑制しつつ、キャパシタの電気特性を向上させる。
【解決手段】 配線基板は、表面が絶縁性を有する基板10と、基板10上に設けられた第1シード層12と、第1シード層12上に設けられた第1導電層13と、第1導電層13上に設けられた第1絶縁層15と、第1絶縁層15上に設けられた第2シード層17と、第2シード層17上に設けられた第2導電層18と、第1導電層13、第1絶縁層15、及び第2導電層18の周囲に設けられた第2絶縁層19とを含む。第1絶縁層15の面積は、第1導電層13の面積より小さく、第2導電層18の面積は、第1絶縁層15の面積より小さい。第1絶縁層15のうち第2導電層18と重なっていない領域は、第2導電層18を囲む第1領域15Aと、第1領域15Aより外側の第2領域15Bとを含む。第2領域15Bの表面粗さは、第1領域15Aの表面粗さより大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が絶縁性を有する基板と、
前記基板上に設けられた第1シード層と、
前記第1シード層上に設けられた第1導電層と、
前記第1導電層上に設けられた第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に設けられた第2シード層と、
前記第2シード層上に設けられた第2導電層と、
前記第1シード層、前記第1導電層、前記第1絶縁層、前記第2シード層、及び前記第2導電層の周囲に設けられた第2絶縁層と、
を具備し、
前記第1絶縁層の面積は、前記第1導電層の面積より小さく、
前記第2導電層の面積は、前記第1絶縁層の面積より小さく、
前記第1絶縁層のうち前記第2導電層と重なっていない領域は、前記第2導電層を囲む第1領域と、前記第1領域より外側の第2領域とを含み、
前記第2領域の表面粗さは、前記第1領域の表面粗さより大きい
配線基板。
【請求項2】
前記第2領域の厚さは、前記第1領域の厚さより薄い
請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第2領域の四隅の幅は、前記第2領域の直線部分の幅より大きい
請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第2領域と前記第1領域の表面粗さの比は、1.2以上10以下である
請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第2領域の幅は、1μm以上10μm以下である
請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
前記第1絶縁層の下面の表面粗さは、前記第2領域の表面粗さより小さい
請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
前記第1絶縁層の側壁は、順テーパ形状を有する
請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第1導電層は、前記第1絶縁層の端部の下に設けられたサイドエッチング部を有する
請求項1に記載の配線基板。
【請求項9】
前記第1導電層のうち前記サイドエッチング部が設けられた領域の表面粗さは、前記サイドエッチング部以外の領域の表面粗さより大きい
請求項8に記載の配線基板。
【請求項10】
前記サイドエッチング部の幅と高さの比は、0.03以上50以下である
請求項8に記載の配線基板。
【請求項11】
前記第2絶縁層は、前記サイドエッチング部に設けられた1個以上のフィラーを含む
請求項8に記載の配線基板。
【請求項12】
前記フィラーのサイズは、前記サイドエッチング部の高さの1/2以上である
請求項11に記載の配線基板。
【請求項13】
表面が絶縁性を有する基板上に、第1シード層を形成する工程と、
前記第1シード層上に、第1導電層を形成する工程と、
前記第1導電層上に、第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層上に、第2シード層を形成する工程と、
前記第2シード層上に、第2導電層を形成する工程と、
前記第2シード層及び前記第2導電層上に、前記第1絶縁層の形成予定領域を覆うマスク層を形成する工程と、
前記基板に加熱処理を実施する工程と、
前記マスク層をマスクとして、前記第2シード層及び前記第1絶縁層をエッチングする工程と、
前記第1シード層、前記第1導電層、前記第1絶縁層、前記第2シード層、及び前記第2導電層の周囲に、第2絶縁層を形成する工程と、
を具備する配線基板の製造方法。
【請求項14】
前記第1絶縁層をエッチングする工程の後に、前記第1シード層の露出した部分をエッチングし、前記第1導電層にサイドエッチング部を形成する工程をさらに具備する
請求項13に記載の配線基板の製造方法。
【請求項15】
表面が絶縁性を有する基板上に、第1シード層を形成する工程と、
前記第1シード層上に、第1導電層を形成する工程と、
前記第1導電層上に、第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層上に、マスク層を形成する工程と、
前記基板に加熱処理を実施する工程と、
前記マスク層をマスクとして、前記第1絶縁層をエッチングする工程と、
前記第1絶縁層上に、第2シード層を形成する工程と、
前記第2シード層上に、第2導電層を形成する工程と、
前記第1シード層、前記第1導電層、前記第1絶縁層、前記第2シード層、及び前記第2導電層の周囲に、第2絶縁層を形成する工程と、
を具備する配線基板の製造方法。
【請求項16】
前記第2導電層を形成する工程の後に、前記第2導電層をマスクとして、前記第2シード層の露出した部分をエッチングし、前記第1導電層にサイドエッチング部を形成する工程をさらに具備する
請求項15に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス材料をコア基板として用いた配線基板がインターポーザとして多用されている。このような配線基板には、受動回路の一部として、誘電体層を下部電極と上部電極とで挟持するMIM(Metal-Insulator-Metal)構造を有するキャパシタが形成されていることがある。特許文献1には、絶縁基板上にMIMキャパシタが設けられた積層基板構造の製造方法が開示されている。
【0003】
絶縁基板上にMIMキャパシタを形成し、MIMキャパシタ上に配線などを形成するには、MIMキャパシタと周囲の絶縁層との密着性の確保が必要である。そのため、いわゆる黒化処理や還元処理などにより、配線および下部電極の表面に細かな凹凸を形成し、アンカー効果による機械的接合強度を向上させる手法が知られている。しかしながら、前述の細かな凹凸がMIMキャパシタの誘電体層を形成する領域における下部電極の表面にあると、電界集中によるリーク電流が増加し、MIMキャパシタの特性および信頼性を大きく低下させる。
【0004】
このため、特許文献1では、誘電体層の下部に保護導電層を形成し、下部電極の表面を平滑化した状態で、上部電極および下部電極に細かな凹凸を形成することで、信頼性の高いMIMキャパシタを得る製造方法を開示している。しかし、MIMキャパシタと周囲の絶縁層との密着性の確保には、配線、下部電極および上部電極と絶縁層との界面の機械的接合強度の向上だけではなく、誘電体層と絶縁層との界面の密着性の確保も必要となる。
【0005】
次に、
図30を参照して、MIMキャパシタを有する配線基板の従来例について説明する。
図30は、MIMキャパシタの部分断面図であり、下部電極としての第1導電層13、誘電体層としての第1絶縁層15、及びMIMキャパシタの周囲を覆う第2絶縁層19を示している。従来例のように、第1絶縁層15と第2絶縁層19との密着性が十分に確保されない場合、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面にボイド36が発生したり、MIMキャパシタと第2絶縁層19との界面で剥離37が発生する虞がある。また、ボイド36に応力が掛かり、第1絶縁層15に割れ38が発生する虞がある。
【0006】
さらに、MIMキャパシタに通電した際に、上部電極から誘電体層の上面および側面を経由して下部電極にリーク電流が発生し、MIMキャパシタの耐電力特性が低下する虞がある。また、MIMキャパシタの上部電極および下部電極と誘電体層との界面の粗さが大きい場合には、MIMキャパシタの寄生抵抗が大きくなり、キャパシタのQ値などの特性が低下する虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、キャパシタと絶縁層との剥離を抑制しつつ、キャパシタの電気特性を向上させることが可能な配線基板及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によると、表面が絶縁性を有する基板と、前記基板上に設けられた第1シード層と、前記第1シード層上に設けられた第1導電層と、前記第1導電層上に設けられた第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に設けられた第2シード層と、前記第2シード層上に設けられた第2導電層と、前記第1シード層、前記第1導電層、前記第1絶縁層、前記第2シード層、及び前記第2導電層の周囲に設けられた第2絶縁層とを具備し、前記第1絶縁層の面積は、前記第1導電層の面積より小さく、前記第2導電層の面積は、前記第1絶縁層の面積より小さく、前記第1絶縁層のうち前記第2導電層と重なっていない領域は、前記第2導電層を囲む第1領域と、前記第1領域より外側の第2領域とを含み、前記第2領域の表面粗さは、前記第1領域の表面粗さより大きい、配線基板が提供される。
【0010】
本発明の第2態様によると、前記第2領域の厚さは、前記第1領域の厚さより薄い、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0011】
本発明の第3態様によると、前記第2領域の四隅の幅は、前記第2領域の直線部分の幅より大きい、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0012】
本発明の第4態様によると、前記第2領域と前記第1領域の表面粗さの比は、1.2以上10以下である、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0013】
本発明の第5態様によると、前記第2領域の幅は、1μm以上10μm以下である、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0014】
本発明の第6態様によると、前記第1絶縁層の下面の表面粗さは、前記第2領域の表面粗さより小さい、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0015】
本発明の第7態様によると、前記第1絶縁層の側壁は、順テーパ形状を有する、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0016】
本発明の第8態様によると、前記第1導電層は、前記第1絶縁層の端部の下に設けられたサイドエッチング部を有する、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0017】
本発明の第9態様によると、前記第1導電層のうち前記サイドエッチング部が設けられた領域の表面粗さは、前記サイドエッチング部以外の領域の表面粗さより大きい、第8態様に係る配線基板が提供される。
【0018】
本発明の第10態様によると、前記サイドエッチング部の幅と高さの比は、0.03以上50以下である、第8態様に係る配線基板が提供される。
【0019】
本発明の第11態様によると、前記第2絶縁層は、前記サイドエッチング部に設けられた1個以上のフィラーを含む、第8態様に係る配線基板が提供される。
【0020】
本発明の第12態様によると、前記フィラーのサイズは、前記サイドエッチング部の高さの1/2以上である、第11態様に係る配線基板が提供される。
【0021】
本発明の第13態様によると、表面が絶縁性を有する基板上に、第1シード層を形成する工程と、前記第1シード層上に、第1導電層を形成する工程と、前記第1導電層上に、第1絶縁層を形成する工程と、前記第1絶縁層上に、第2シード層を形成する工程と、前記第2シード層上に、第2導電層を形成する工程と、前記第2シード層及び前記第2導電層上に、前記第1絶縁層の形成予定領域を覆うマスク層を形成する工程と、前記基板に加熱処理を実施する工程と、前記マスク層をマスクとして、前記第2シード層及び前記第1絶縁層をエッチングする工程と、前記第1シード層、前記第1導電層、前記第1絶縁層、前記第2シード層、及び前記第2導電層の周囲に、第2絶縁層を形成する工程とを具備する配線基板の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の第14態様によると、前記第1絶縁層をエッチングする工程の後に、前記第1シード層の露出した部分をエッチングし、前記第1導電層にサイドエッチング部を形成する工程をさらに具備する第13態様に係る配線基板の製造方法が提供される。
【0023】
本発明の第15態様によると、表面が絶縁性を有する基板上に、第1シード層を形成する工程と、前記第1シード層上に、第1導電層を形成する工程と、前記第1導電層上に、第1絶縁層を形成する工程と、前記第1絶縁層上に、マスク層を形成する工程と、前記基板に加熱処理を実施する工程と、前記マスク層をマスクとして、前記第1絶縁層をエッチングする工程と、前記第1絶縁層上に、第2シード層を形成する工程と、前記第2シード層上に、第2導電層を形成する工程と、前記第1シード層、前記第1導電層、前記第1絶縁層、前記第2シード層、及び前記第2導電層の周囲に、第2絶縁層を形成する工程とを具備する配線基板の製造方法が提供される。
【0024】
本発明の第16態様によると、前記第2導電層を形成する工程の後に、前記第2導電層をマスクとして、前記第2シード層の露出した部分をエッチングし、前記第1導電層にサイドエッチング部を形成する工程をさらに具備する第15態様に係る配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、キャパシタと絶縁層との剥離を抑制しつつ、キャパシタの電気特性を向上させることが可能な配線基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る配線基板の断面図である。
【
図2】
図2は、第1導電層、第1絶縁層、及び第2導電層の平面図である。
【
図4】
図4は、第1絶縁層の端部領域の寸法を説明する図である。
【
図5】
図5は、他の実施例に係る第1導電層及び第1絶縁層を中心に示した部分断面図である。
【
図6】
図6は、第1絶縁層の端部領域及びサイドエッチング部の寸法を説明する図である。
【
図7】
図7は、多層配線を備えた配線基板の断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図18】
図18は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図19】
図19は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図24】
図24は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図25】
図25は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図26】
図26は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図27】
図27は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図28】
図28は、第2実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【
図29】
図29は、MIMキャパシタの試験結果を説明する図である。
【
図30】
図30は、従来例に係るMIMキャパシタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
なお、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0029】
ある要素と他の要素との位置関係を規定する際、「上」または「下」は、一方の要素の直上または直下に他の要素が配置される場合に限らず、要素間にさらに他の要素を介在する場合を含む。対照的に、上または下に直接設けられると言及する場合は、介在する要素は存在しない。
【0030】
「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面の上方又は下方に示される面を意味する。なお、「上面」、「下面」については、「第1面」、「第2面」と称することもある。
【0031】
「側面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層における面や層の厚みの部分を意味する。さらに、面の一部及び側面を合わせて「端部」ということがある。
【0032】
また、「平面形状」、「平面視」とは、上方からつまりZ軸の正方向から負方向に向かって面又は層を視認した場合の形状を意味する。さらに、「断面形状」、「断面視」とは、板状部材又は層を特定の方向で切断した場合の水平方向から視認した場合の形状を意味する。
【0033】
[1] 第1実施形態
[1-1] 配線基板1の構成
本明細書において、配線基板は、基板と、この基板上に設けられかつ絶縁層及び導電層を含む積層体とを含む構造を意味する。基板上に設けられる積層体には、電子部品(キャパシタを含む)、及び配線が含まれる。配線基板は、例えば、配線のデザインルールが互いに異なる集積回路(IC)チップ及びプリント配線基板のように、端子間距離が異なる部品を中継するインターポーザとして利用可能である。
【0034】
本発明の一実施形態に係る配線基板は、絶縁層を、金属等を含む導電層で挟んだMIM構造を備える。以下、MIM構造は、誘電体層である絶縁層を上部電極と下部電極とで挟んだMIMキャパシタであるものとして説明する。以下、このようなMIMキャパシタを含む配線基板の構造について、具体的に説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る配線基板1の断面図である。なお、
図1は、配線基板1の一部を抽出した断面図である。
図1において、X方向は、配線基板1のある1辺に沿った方向であり、Y方向は、配線基板1の水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向である。
【0036】
配線基板1は、基板10と、基板10上に設けられたMIMキャパシタ2とを備える。MIMキャパシタ2は、基板10上にこの順に積層された、第1シード層12、第1導電層13、第1絶縁層15、第2シード層17、及び第2導電層18を備える。基板10上には、MIMキャパシタ2を覆う第2絶縁層19が設けられる。第1導電層13は、MIMキャパシタ2の下部電極となり、第1絶縁層15は、MIMキャパシタ2の誘電体層となり、第2導電層18は、MIMキャパシタ2の上部電極となる。
【0037】
本実施形態では、一例として、基板10上に密着層11が設けられ、第1絶縁層15の下に下部密着層14が設けられ、第1絶縁層15上に上部密着層16が設けられる。密着層は、自身の上下の層の密着性を向上させるためのものである。密着層11、下部密着層14、及び上部密着層16は、配置してもよいし、配置しなくてもよい。
【0038】
以下に、MIMキャパシタ2の各要素の構成、材質、及び形状等について詳細に説明する。
【0039】
(基板10)
基板10は、表面に絶縁性を有する。基板10は、光透過性を有する透明のガラスを材料としたものが望ましい。ガラスの成分またはガラスに含有される各成分の配合比率、さらにガラスの製造方法は特に限定されない。
【0040】
ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、又は感光性ガラス等が挙げられるが、ケイ酸塩を主成分とするいずれのガラス材料を用いてもよい。さらに、その他のいわゆるガラス材料を用いてもよい。ただし、本実施形態の基板10に半導体を実装して用いる場合は、無アルカリガラスを用いるのが望ましい。
【0041】
ガラス基板の厚さは、1mm以下であることが望ましい。ガラス基板の厚さは、ガラスに貫通孔を形成する工程の容易性や製造時のハンドリング性を考慮して、0.1mm以上0.8mm以下であることがより望ましい。
【0042】
ガラス基板の製造方法としては、フロート法、ダウンドロー法、フュージョン法、アップドロー法、又はロールアウト法等が挙げられるが、いずれの方法によって作製されたガラス材料を用いてもよく、本実施形態のものに限定されない。
【0043】
ガラスの線膨張係数は、-1ppm/K以上15.0ppm/K以下であることが望ましい。その理由として、-1ppm/K以下である場合、ガラス材料自体を選定することが困難となり安価に作成できない。一方、15.0ppm/K以上である場合、他層との線膨張係数の差異が大きくなり、信頼性が低下する。また、基板10にシリコンチップを実装する場合は、シリコンチップとの接続信頼性が低下する。
【0044】
ガラスの線膨張係数は、0.5ppm/K以上8.0ppm/K以下であることがより望ましく、さらに望ましくは1.0ppm/K以上4.0ppm/K以下である。
【0045】
ガラス基板には、予め反射防止膜またはIRカットフィルタ等の機能膜が形成されていてもよい。また、強度付与、帯電防止付与、着色、又はテクスチャー制御等の機能が付与されてもよい。これら機能膜の例として、強度付与についてはハードコート膜、帯電防止付与については帯電防止膜、着色については光学フィルタ膜、テクスチャー制御についてはアンチグレア/光散乱膜等が挙げられるが、この限りではない。これら機能膜の形成方法としては、蒸着、スパッタリング法、又はウエット方式等の成膜技術が用いられる。
【0046】
(第1シード層12)
第1シード層12は、第1導電層13をセミアディティブ法で形成する工程において、電解めっきの給電層として機能する。
【0047】
基板10上及び基板10に形成された貫通孔の内壁に設けられるシード層は、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO、IZO、AZO、ZnO、PZT、TiN、Cu3N4、又はCu合金の単体、若しくはこれらのうち複数を積層したものが用いられる。シード層は、例えば、スパッタ法、又はCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成される。第1シード層12は、不要部分のエッチングが簡便となるため、Cuであることが望ましい。
【0048】
第1シード層12の上方に、無電解めっき層が形成されてもよい。この無電解めっき層としては、無電解銅めっき、又は無電解ニッケルめっき等が挙げられる。
【0049】
(密着層11、下部密着層14、上部密着層16)
本実施形態では、基板10上に第1シード層12を形成する前に、基板10の上面に、電気特性、製造の容易性の観点、及びコスト面を考慮して、密着層11として形成することが望ましい。密着層11としては、例えば、スパッタリング法によって成膜されたチタン層が用いられる。
【0050】
また、第1導電層13上に第1絶縁層15を形成する前に、第1導電層13上に、下部密着層14を形成することが望ましい。さらに、第1絶縁層15上に第2シード層17を形成する前に、第1絶縁層15上に、上部密着層16を形成することが望ましい。下部密着層14は、下部電極としての第1導電層13と誘電体層としての第1絶縁層15との密着性を向上させる機能を有する。上部密着層16は、誘電体層としての第1絶縁層15と第2シード層17との密着性を向上させる機能を有する。
【0051】
下部密着層14及び上部密着層16は、例えばTiで構成される。この他、例えば、Cu、Ni、Al、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、又はCu合金の単体、若しくはこれらのうち複数を積層したものを用いてもよい。Tiは、密着性、電気伝導性、製造の容易性の観点、及びコスト面から優れている。
【0052】
下部密着層14及び上部密着層16の各々の厚さは、例えば、10nm以上1μm以下であることが望ましい。厚さが10nm未満である場合、密着強度が不十分となる虞がある。厚さが1μmを超える場合、後述する製造工程において、成膜時間がかかりすぎて量産性に欠けるばかりでなく、不要部分を除去する工程でさらに時間がかかる虞がある。下部密着層14及び上部密着層16の各々の厚さは、10nm以上500nm以下であることがより望ましい。下部密着層14及び上部密着層16はそれぞれ厚さが異なってもよいが、構造上単純になるため同じ厚さであることが望ましい。
【0053】
第1導電層13と第1絶縁層15との密着が十分である場合は、下部密着層14はなくても構わない。第1絶縁層15と第2シード層17との密着が十分である場合は、上部密着層16はなくても構わない。
【0054】
(第1導電層13、下部電極)
基板10上に設けられた密着層11、第1シード層12、及び第1導電層13は、MIMキャパシタ2が設けられる基板10上の領域では、MIMキャパシタ2の下部電極となる。
【0055】
第1導電層13としては、例えば、Cu、Ni、Cr、Pd、Au、Rh、又はIrが用いられる。第1導電層13は、電気伝導性が良好であり、安価であることから、Cuであることが望ましい。第1導電層13は、第1シード層12を給電に用い、電解めっき法により形成される。
【0056】
第1導電層13の厚さは、3μm以上30μm以下であることが望ましい。厚さが3μm未満である場合、第1導電層13を形成した後のエッチング処理によっては回路が消失してしまう虞がある。さらに、回路の接続信頼性、及び電気伝導性が低下する危険性がある。厚さが30μmよりも大きい場合、厚さ30μm以上のレジスト層を形成する必要があり、製造コストが増加する。さらに、レジスト解像性が低下することから、ピッチ30μm以下の微細な配線形成が困難となる。第1導電層13の厚さは、5μm以上25μm以下であることがより望ましい。さらに望ましくは10μm以上20μm以下である。
【0057】
(第1導電層13、配線)
基板10上に設けられた密着層11、第1シード層12及び第1導電層13は、MIMキャパシタ2が設けられる領域以外の基板10上の領域において、回路形成のための配線として用いられる。
【0058】
配線用の第1導電層13としては、例えば、Cu、Ni、Cr、Pd、Au、Rh、又はIrが用いられる。配線用の第1導電層13としては、回路として用いることを考慮すれば、電気伝導性が良好であり、安価であることから、Cuであることが望ましい。配線用の第1導電層13は、第1シード層12を給電に用い、電解めっき法により形成される。
【0059】
配線用の第1導電層13の厚さは、3μm以上30μm以下であることが望ましい。厚さが3μm未満である場合、第1導電層13を形成した後のエッチング処理によっては回路が消失してしまう虞がある。さらに、回路の接続信頼性、及び電気伝導性が低下する危険性がある。厚さが30μmよりも大きい場合、厚さ30μm以上のレジスト層を形成する必要があり、製造コストが増加する。さらに、レジスト解像性が低下することから、ピッチ30μm以下の微細な配線形成が困難となる。配線用の第1導電層13の厚さは、5μm以上25μm以下であることがより望ましい。さらに望ましくは10μm以上20μm以下である。
【0060】
(第1絶縁層15)
誘電体層としての第1絶縁層15は、絶縁性、比誘電率の観点から、例えば、酸化アルミニウム、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタル、酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、又はチタン酸ストロンチウムで構成される。
【0061】
第1絶縁層15の厚さは、10nm以上5μm以下であることが望ましい。第1絶縁層15の厚さが10nm未満である場合、絶縁性を保つことができずにキャパシタとしての機能が発現しない。第1絶縁層15の厚さが5μmよりも大きい場合、成膜時間がかかりすぎて量産性に欠けるばかりでなく、不要部分を除去する工程でさらに時間がかかってしまう。第1絶縁層15の厚さは、50nm以上1μm以下であることがより望ましい。
なお、第1絶縁層15の詳細な構成については後述する。
【0062】
(第2シード層17)
第2シード層17は、第2導電層18をセミアディティブ法で形成する工程において、電解めっきの給電層として機能する。
【0063】
第2シード層17は、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、又はCu合金の単体、若しくはこれらのうち複数を積層したものが用いられる。第2シード層17は、不要部分のエッチングが簡便となるため、Cuであることが望ましい。
【0064】
第2シード層17の厚さは、50nm以上5μm以下であることが望ましい。第2シード層17の厚さが、50nm未満である場合、続く電解めっき工程において通電不良が発生する可能性がある。第2シード層17の厚さが5μmよりも大きい場合、エッチングによる除去に時間がかかってしまう。第2シード層17の厚さは、100nm以上500nm以下であることがより望ましい。
【0065】
(第2導電層18)
上部電極としての第2導電層18は、例えば、Cu、Ni、Cr、Pd、Au、Rh、又はIrで構成される。第2導電層18は、電気伝導性が良好であり、安価であることから、Cuであることが望ましい。第2導電層18は、第2シード層17を給電に用い、電解めっき法により形成される。
【0066】
第2導電層18の厚さは、3μm以上30μm以下であることが望ましい。厚さが3μm未満である場合、第2導電層18を形成した後のエッチング処理によっては回路が消失してしまう虞がある。さらに、回路の接続信頼性、電気伝導性が低下する危険性がある。厚さが30μmよりも大きい場合、厚さ30μm以上のレジスト層を形成する必要があり、製造コストがかかる。さらに、レジスト解像性が低下することから、ピッチ30μm以下の微細な配線形成が困難となる。第2導電層18の厚さは、5μm以上25μm以下であることがより望ましい。さらに望ましくは10μm以上20μm以下である。
【0067】
(第2絶縁層19)
第2絶縁層19は、基板10の上面及びMIMキャパシタ2を被覆する。すなわち、第2絶縁層19は、基板10の上面、密着層11、第1シード層12、第1導電層13、下部密着層14、第1絶縁層15、上部密着層16、及び第2導電層18を被覆する。第2絶縁層19には、第1導電層13および第2導電層18の位置に、ビアホール(貫通孔)が設けられていてもよい。
【0068】
第2絶縁層19は、絶縁樹脂で構成することが望ましい。絶縁樹脂の成分および各成分の配合比率、並びに絶縁樹脂の製造方法は、特に限定されない。第2絶縁層19としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、マレイミド樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、これらの複合材料、感光性ポリイミド樹脂、感光性ポリベンゾオキサゾール、又は感光性アクリル-エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0069】
第2絶縁層19の厚さは、100μm以下であることが望ましい。第2絶縁層19の厚さは、第2絶縁層19にビアホールを形成する工程の容易性や製造時のハンドリング性を考慮して、10μm以上50μm以下であることがより望ましい。
【0070】
[1-2] 第1導電層13及び第1絶縁層15の詳細な構成
次に、第1導電層13及び第1絶縁層15の詳細な構成について説明する。
図2は、第1導電層13、第1絶縁層15、及び第2導電層18の平面図である。
図3は、
図2のI-I’線に沿った部分断面図である。
図4は、第1絶縁層15の端部領域の寸法を説明する図である。
図3に示す実施例では、下部密着層14及び上部密着層16は設けていない。
【0071】
第1導電層13、第1絶縁層15、及び第2導電層18の各々は、例えば、平面形状が四角形である。
図2では、第1導電層13、第1絶縁層15、及び第2導電層18の各々の平面形状が正方形である一例を示している。第1絶縁層15の面積は、第1導電層13の面積より小さい。第2導電層18の面積は、第1絶縁層15の面積より小さい。
【0072】
平面視において、第1絶縁層15のうち第2導電層18と重なっていない領域は、第2導電層18を囲む第1領域15Aと、第1領域15Aの外側の第2領域15Bとを含む。第2領域15Bは、第1絶縁層15の端部領域である。
【0073】
図4において、位置Aは、第1絶縁層15の下面の端部、すなわち第2領域15Bの端部である。位置Bは、第1絶縁層15の上面の端部である。位置Cは、第1領域15Aの端部、すなわち第1領域15Aと第2領域15Bとの境界である。幅aは、第2領域15Bの上面の幅である。厚さbは、第2領域15Bの厚さであり、本実施形態では、第2領域15Bの上面の端部の厚さである。第2領域15Bの上面は、外側に行くにつれて厚さが薄くなるように傾斜している。厚さcは、第1領域15Aの厚さである。第1領域15Aの厚さcは、ほぼ一定である。第1絶縁層15のうち第2導電層18と重なっている中央領域も厚さcを有する。角度fは、第1絶縁層15の底面と側壁(第2領域15Bの側面)とのなす角度である。すなわち、角度fは、第1絶縁層15の側壁の角度である。
【0074】
第1絶縁層15の第2領域15Bは、第1絶縁層15の第1領域15Aより表面粗さが大きく設定される。第2領域15Bの厚さbは、第1領域15Aの厚さcより小さく設定される。本明細書において、表面粗さは、算術平均粗さRaに対応する。算術平均粗さRaは、JIS規格「JIS B 0601:2001」の定義に従う。
【0075】
第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性を担保する必要があるが、絶縁樹脂層(第2絶縁層19)形成時の樹脂の流動性が不十分による界面のボイドの発生、および第1絶縁層15と第2絶縁層19との接触面積の不足などに起因して、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面で剥離が生じる虞がある。また、MIMキャパシタ2に通電した際に、上部電極から第1絶縁層15の上面および側面を経由して下部電極にリーク電流が発生し、MIMキャパシタ2の耐電力特性が低下する虞がある。
【0076】
本実施形態では、第2領域15Bが第1領域15Aよりも表面粗さが大きいことで、第2領域15Bの表面積を増加させることができる。これにより、絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が向上し、界面のボイドの発生を抑制できる。また、第1絶縁層15と第2絶縁層19との接触面積が増加することで、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が向上し、剥離を抑制することができる。また、第2領域15Bの表面積が増加することで、MIMキャパシタ2に通電した際に、上部電極と下部電極との間の第1絶縁層15の上面および側面の経由距離が増加するため、リーク電流を抑制し、MIMキャパシタ2の耐電力特性を向上することができる。
【0077】
また、第2領域15Bの厚さbが第1領域15Aの厚さcより小さいことで、第2領域15Bの上面が傾斜を有する構造となる。これにより、絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が向上し、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面におけるボイドの発生を抑制することができる。このため、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が向上し、剥離を抑制することができる。また、第2領域15Bの上面が傾斜を有することで、傾斜を有しない場合よりも第2領域15Bの表面積を増加させることができる。これにより、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が向上し、剥離を抑制することができる。また、MIMキャパシタ2に通電した際に、リーク電流を抑制し、MIMキャパシタ2の耐電力特性を向上することができる。
【0078】
第2領域15Bの表面粗さは、2.4nm以上400nm以下であることが望ましい。この範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。第2領域15Bの表面粗さが2.4nm未満である場合、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が不十分となる。第2領域15Bの表面粗さが400nmよりも大きい場合、絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が逆に低下し、界面のボイドが発生しやすくなる。
【0079】
第2領域15Bの表面粗さと第1領域15Aの表面粗さの比は、1.2以上10以下であることが望ましい。この範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。表面粗さの比が1.2未満である場合、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が不十分となる。表面粗さの比が10よりも大きい場合、絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が逆に低下し、界面のボイドが発生しやすくなる。
【0080】
第2領域15Bの厚さbと第1領域15Aの厚さcの比は、0.6以上であることが望ましい。この範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。厚さの比が0.6未満である場合、第2領域15Bの傾斜が付き過ぎ、第1絶縁層15の強度が低下し、第1絶縁層15の割れが発生する虞がある。
【0081】
図2に示すように、幅aは、第2領域15Bの辺(直線部分)の幅である。幅a’は、第2領域15Bの四隅の幅である。第2領域15Bの辺の幅aは、1μm以上10μm以下であることが望ましい。第2領域15Bの四隅の幅a’は、辺の幅aより大きく設定される。
【0082】
第1絶縁層15の四隅では第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面で生じる応力が大きくなるため、第1絶縁層15の4辺よりも剥離が発生しやすくなる。また、第1絶縁層15の四隅に応力が集中すると、第1絶縁層15に割れが発生する虞もある。
【0083】
本実施形態では、第2領域15Bの四隅の幅a’が辺の幅aより大きいことで、第2領域15Bの四隅の表面積を辺の表面積より増加させることができ、第2領域15Bの四隅において第1絶縁層15と第2絶縁層19との接触面積を増加させることができる。これにより、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が向上し、第1絶縁層15の四隅における剥離を抑制することができる。さらに、界面の密着性が向上するため、第1絶縁層15が四隅に発生する応力に抗することができ、第1絶縁層15の割れも抑制することができる。
【0084】
また、第2領域15Bの辺の幅aを1μm以上10μm以下の範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。幅aが1μm未満である場合、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が不十分となる。幅aが10μmよりも大きい場合、表面粗さが大きい第2領域15Bが上部電極と近くなり、上部電極周囲の第1絶縁層15の厚さが不均一となり、静電容量の精度が低下する。
【0085】
次に、第1絶縁層15の上面のうち第2領域15Bより内側の領域(第1領域15Aを含む)は、第2領域15Bより表面粗さが小さく設定される。また、第1絶縁層15の下面は、第2領域15Bより表面粗さが小さく設定される。
【0086】
MIMキャパシタの上部電極および下部電極と第1絶縁層15との界面の粗さが大きい場合には、MIMキャパシタの寄生抵抗が大きくなり、MIMキャパシタのQ値などの特性が低下する虞がある。
【0087】
本実施形態では、第1絶縁層15の上面のうち第2領域15Bより内側の領域は、第2領域15Bより表面粗さが小さい。また、第1絶縁層15の下面は、第2領域15Bより表面粗さが小さい。これにより、上部電極および下部電極と第1絶縁層15との界面の粗さをより平滑に維持することができる。よって、MIMキャパシタ2の寄生抵抗の増加を抑制することができ、MIMキャパシタ2のQ値などの特性の低下を抑制することができる。
【0088】
第1絶縁層15の上面のうち第2領域15Bより内側の領域と第1絶縁層15の下面との表面粗さは、5nm以上50nm以下であることが望ましい。この範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。表面粗さが5nm未満である場合、第1絶縁層15と上部電極および下部電極との密着性が不十分となる。表面粗さが50nmよりも大きい場合、MIMキャパシタ2の寄生抵抗が大きくなり、MIMキャパシタ2のQ値などの特性が低下する。
【0089】
次に、第2領域15Bの表面粗さと第1絶縁層15の上面のうち第2領域15Bより内側の表面粗さの比、及び第2領域15Bの表面粗さと第1絶縁層15の下面の表面粗さの比はそれぞれ、0.048以上80以下であることが望ましい。この範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。表面粗さの比が0.048未満である場合、第1絶縁層15と上部電極および下部電極との密着性が不十分となる。表面粗さの比が80よりも大きい場合、MIMキャパシタ2の寄生抵抗が大きくなり、MIMキャパシタ2のQ値などの特性が低下する。
【0090】
また、第1絶縁層15の厚さcが大きいほど、第1絶縁層15の上面のうち第2領域15Bより内側の領域の表面粗さが小さくなる傾向がある。第1領域15Aの厚さcが第2領域15Bの厚さbより大きいことで、第1絶縁層15のうち上部電極と接する領域の表面粗さが小さくなる。これにより、電圧印加時の上部電極と第1絶縁層15との界面抵抗を低減でき、MIMキャパシタ2のQ値などの特性を向上させることができる。
【0091】
次に、第1絶縁層15の側壁(すなわち、第2領域15Bの側面)は、順テーパ形状を有するように構成される。
【0092】
第1絶縁層15上に第2シード層17を形成する工程において、第1絶縁層15の側壁の断面形状が膜面に対して垂直や逆テーパ形状であると、第1絶縁層15の側壁への第2シード層17の付きまわり性が低下し、第2シード層17が電解めっきの給電層として機能せず、上部電極が適切に形成されず、製品加工性が低下する虞がある。
【0093】
第1絶縁層15の側壁を順テーパ形状にすることで、絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が向上し、界面のボイドの発生およびリーク電流を抑制することができる。さらに、第1絶縁層15上に第2シード層17を形成する工程において、第1絶縁層15の側壁への第2シード層17の付きまわり性が向上し、第2シード層17が電解めっきの給電層として機能するため、上部電極が適切に形成され、製品加工性が向上する。
【0094】
第1絶縁層15の側壁の順テーパ形状は、具体的には、断面視において第1絶縁層15の下面の端部Aが第1絶縁層15の上面の端部Bよりも外側にあることを示している。第1絶縁層15の側壁の角度fは、60°以上85°以下であることが望ましい。この範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。角度fが85°よりも大きい場合、第1絶縁層15の側壁への第2シード層17の付きまわり性が不十分となり、第2シード層17が電解めっきの給電層として機能しない場合がある。角度fが60°未満である場合、側壁の傾斜が付き過ぎ、第1絶縁層15の強度が低下し、第1絶縁層15の割れが発生する虞がある。
【0095】
[1-3] 第1導電層13のサイドエッチング部20の構成
次に、第1導電層13のサイドエッチング部20の具体的な構成について説明する。
【0096】
図5は、他の実施例に係る第1導電層13及び第1絶縁層15を中心に示した部分断面図である。
図6は、第1絶縁層15の端部領域及びサイドエッチング部20の寸法を説明する図である。
図5及び
図6は、
図2のI-I´線に沿った断面図である。
図6に示す実施例では、下部密着層14及び上部密着層16は設けていない。サイドエッチング部20以外の構成及び条件は、前述した
図3の実施例と同じである。
【0097】
第1導電層13は、サイドエッチング部20を有する。サイドエッチング部20は、第1絶縁層15の端部から面内方向に窪んだ領域である。サイドエッチング部20は、第1絶縁層15の端部と同じ四角形の領域に設けられる。具体的には、サイドエッチング部20は、平面視において、第1絶縁層15の第2領域15Bと重なる領域に設けられる。第1導電層13のサイドエッチング部20には、第2絶縁層19が設けられる。
【0098】
図6において、位置A~C、幅a、厚さb、厚さc、角度fは、
図3と同じである。位置Dは、サイドエッチング部20の端部である。高さdは、サイドエッチング部20の高さ(Z方向の深さ)である。長さeは、サイドエッチング部20の水平方向の長さである。
【0099】
第1導電層13と第2絶縁層19との界面の密着性を担保する必要があるが、第1導電層13と第2絶縁層19との接触面積の不足などに起因して、第1導電層13と第2絶縁層19との界面で剥離が生じる虞がある。また、第1絶縁層15の端部Aと第1導電層13との界面に応力が集中し、第1絶縁層15に割れが発生する虞がある。また、MIMキャパシタ2の端部では、電圧印加時の電磁力線が上部電極から第1絶縁層15に回り込み下部電極まで形成されるため、MIMキャパシタ2の静電容量は、電磁力線が第1絶縁層15に回り込んだ分だけ大きくなり、静電容量の設計値に対する精度が低下する虞がある。また、第1導電層13の表面粗さが大きい場合、表面粗さ分だけ電極面積も大きくなるため、静電容量およびQ値の設計値に対する精度が低下する虞がある。また、印加する信号が高周波になるほど、表皮効果の影響を大きく受け、下部電極および下部電極に接続される配線でもある第1導電層13の表面粗さが大きいほど、下部電極および配線での伝送損失が大きくなるため、伝送特性が低下する虞がある。
【0100】
本実施形態では、第1導電層13のサイドエッチング部20が形成された領域は、サイドエッチング部20が形成されていない領域よりも表面粗さが大きく設定される。これにより、第1導電層13のサイドエッチング部20の表面積を増加させることができ、第1導電層13と第2絶縁層19との接触面積を増加させることができる。このため、第1導電層13と第2絶縁層19との界面の密着性が向上し、界面の剥離を抑制することができる。また、第1導電層13にサイドエッチング部20が形成されたことにより、絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が向上し、サイドエッチング部20の界面のボイドの発生を抑制できる。このため、界面の密着性が向上し、第1導電層13と第2絶縁層19との界面での剥離を抑制することができる。さらに、ボイドへの応力集中がなくなるため、第1絶縁層15の割れを抑制することができる。
【0101】
また、MIMキャパシタ2の端部では、サイドエッチング部20がない場合と比較して、電圧印加時の第1絶縁層15への電磁力線の回り込みが小さくなる。これにより、電磁力線の回り込みによる静電容量の増加が抑制され、静電容量の設計値に対する精度を向上することができる。また、第1導電層13のサイドエッチング部20が形成されていない領域が、サイドエッチング部20が形成された領域よりも表面粗さが小さいため、第1絶縁層15と第1導電層13とが接している領域の表面粗さによる電極面積の変動が抑制され、静電容量およびQ値の設計値に対する精度を向上することができる。また、下部電極および配線での伝送損失が抑制され、伝送特性の低下を抑制することができる。
【0102】
また、第1導電層13のサイドエッチング部20において、絶縁樹脂中のフィラー21の流動性が抑制され、フィラー21がサイドエッチング部20に留まりやすくなる。そのフィラー21が単体または複数個に連なり、第1絶縁層15と第1導電層13とに接している。このフィラー21により、第1絶縁層15の応力が緩和され、第1絶縁層15の割れを抑制することができる。また、サイドエッチング部20を形成したことで、第1絶縁層15の表面積を増加させることができるため、MIMキャパシタ2に通電した際に、上部電極と下部電極との間の第1絶縁層15を経由した距離が増加する。これにより、リーク電流を抑制し、MIMキャパシタ2の耐電力特性を向上することができる。
【0103】
また、第1導電層13にサイドエッチング部20を形成することで、第1絶縁層15で応力が集中する箇所を、第1絶縁層15の端部Aから第1絶縁層15の内側にすることができるとともに、第1絶縁層15の端部Aの下面を第2絶縁層19で包埋することができる。これにより、第1絶縁層15に掛かる応力が低減され、第1絶縁層15の割れを抑制することができる。また、MIMキャパシタ2に通電した際に、上部電極と下部電極との間の第1絶縁層15の上面および側面の経由距離が増加するため、リーク電流を抑制し、MIMキャパシタ2の耐電力特性を向上することができる。
【0104】
次に、第1導電層13のサイドエッチング部20の表面粗さは、51nm以上300nm以下であることが望ましい。第1導電層13のサイドエッチング部20以外の領域の表面粗さは、5nm以上50nm以下であることが望ましい。第1導電層13のサイドエッチング部20が前述の表面粗さを有することで、絶縁樹脂中のフィラー21の流動性が抑制され、フィラー21がサイドエッチング部20に留まりやすくなる。表面粗さがサイドエッチング部20で51nm未満、サイドエッチング部20以外の領域で5nm未満である場合、第1導電層13と第2絶縁層19との界面の密着性が不十分となり、絶縁樹脂中のフィラー21の流動性が向上し、フィラー21がサイドエッチング部20に留まりにくくなる。表面粗さがサイドエッチング部20で300nmよりも大きく、サイドエッチング部20以外の領域で50nmよりも大きい場合、絶縁樹脂中のフィラー21の流動性が低下し、フィラー21がサイドエッチング部20の内部まで侵入できない。このため、サイドエッチング部20にボイドが発生し、第1絶縁層15と第1導電層13とが接している領域の表面粗さによる電極面積の変動が十分に抑制できず、静電容量およびQ値の設計値に対する精度の向上効果が低くなり、下部電極および配線での伝送損失の抑制効果も低くなる。
【0105】
次に、第1導電層13のサイドエッチング部20の表面粗さとサイドエッチング部20以外の領域の表面粗さの比は、1.02以上60以下であることが望ましい。この範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。比が1.02未満である場合、第1導電層13と第2絶縁層19との界面の密着性が不十分となり、絶縁樹脂中のフィラー21の流動性が向上し、フィラー21がサイドエッチング部20に留まりにくくなる。また、比が60よりも大きい場合、絶縁樹脂中のフィラー21の流動性が低下し、フィラー21がサイドエッチング部20の内部まで侵入できない。このため、サイドエッチング部20にボイドが発生し、第1絶縁層15と第1導電層13とが接している領域の表面粗さによる電極面積の変動が十分に抑制できず、静電容量およびQ値の設計値に対する精度の向上効果が低くなり、下部電極および配線での伝送損失の抑制効果も低くなる。
【0106】
前述の各部位の特徴から、第1導電層13のサイドエッチング部20の表面粗さとサイドエッチング部20以外の領域の表面粗さの比と、第2領域15Bの表面粗さと第1領域15Aの表面粗さの比と、第2領域15Bの表面粗さと第1絶縁層15の下面の表面粗さの比とを乗じた値が0.06以上48000以下の範囲であれば、上記の効果を奏することができる。
【0107】
次に、第1絶縁層15の厚さcとサイドエッチング部20の高さdの比は、0.07以上20以下であることが望ましい。また、第1絶縁層15の厚さcと第1シード層12の厚さgの比は、0.1以上40以下であることが望ましい。第1絶縁層15の厚さcは、100nm以上2000nm以下であることが望ましい。第1シード層12の厚さgは、50nm以上1000nm以下であることが望ましい。
【0108】
サイドエッチング部20の第2絶縁層19にボイドが発生し、第1絶縁層15および第1導電層13と第2絶縁層19との界面で剥離が生じる虞、さらにボイドに応力が集中し、第1絶縁層15に割れが発生する虞がある。また、第1絶縁層15の端部Aと第1導電層13との界面には応力が集中しやすいため、第1絶縁層15に応力が掛かり、第1絶縁層15に割れが発生する虞がある。また、MIMキャパシタ2に通電した際に、上部電極から第1絶縁層15の上面および側面を経由して下部電極にリーク電流が発生し、MIMキャパシタ2の耐電力特性が低下する虞がある。
【0109】
本実施形態では、第1絶縁層15の厚さcとサイドエッチング部20の高さdの比、及び第1絶縁層15の厚さcと第1シード層12の厚さgの比が上記範囲にあることで、サイドエッチング部20において絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が向上し、サイドエッチング部20の界面のボイドの発生を抑制できる。このため、界面の密着性が向上し、第1絶縁層15および第1導電層13と第2絶縁層19との界面での剥離を抑制することができる。さらにボイドへの応力集中もなくなるため、第1絶縁層15の割れも抑制することができる。
【0110】
第1絶縁層15の厚さcとサイドエッチング部20の高さdの比が0.07未満、第1絶縁層15の厚さcと第1シード層12の厚さgの比が0.1未満である場合、相対的に第1絶縁層15厚さcが薄くなり、第1絶縁層15の強度低が下し、第1絶縁層15の割れを抑制することが困難となる。また、第1絶縁層15の厚さcとサイドエッチング部20の高さdの比が20より大きく、第1絶縁層15の厚さcと第1シード層12の厚さgの比が40よりも大きい場合、相対的にサイドエッチング部20の高さdが小さくなり、絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が低下する。このため、樹脂がサイドエッチング部20の内部まで侵入できず、サイドエッチング部20にボイドが発生し、第1絶縁層15および第1導電層13と第2絶縁層19との界面で剥離が発生する。また、ボイドへの応力集中により、第1絶縁層15の割れも抑制することが困難となる。さらに、MIMキャパシタ2に通電した際に、第1絶縁層15の下面と第1導電層13との経由距離が短くなるため、リーク電流を抑制することが困難となる。
【0111】
次に、第1導電層13にサイドエッチング部20が形成され、サイドエッチング部20の端部Dが第1絶縁層15の端部Aよりも内側に形成され、サイドエッチング部20の幅eと高さdの比は、0.03以上50以下であることが望ましい。
【0112】
第2絶縁層19は、下部電極、配線、上部電極、及び第1絶縁層15を包埋するように形成されている。配線や上部電極に電圧が印加される場合には、下部電極や配線の端部に電界が集中し、その周辺の第2絶縁層19に絶縁破壊やマイグレーションが発生し、MIMキャパシタの信頼性が低下する虞がある。また、サイドエッチング部20における第1導電層13と第2絶縁層19との界面の密着性を担保する必要があるが、湿式法による密着性を付与する表面処理では、サイドエッチング部20の端部まで液が侵入しないことに起因して、第1導電層13と第2絶縁層19との界面で剥離が生じる虞がある。また、サイドエッチング部20の第2絶縁層19にボイドが発生し、第1絶縁層15および第1導電層13と第2絶縁層19との界面で剥離が生じる虞、さらにボイドに応力が集中し、第1絶縁層15に割れが発生する虞がある。また、第1絶縁層15の端部Aと第1導電層13との界面には応力が集中しやすいため、第1絶縁層15に応力が掛かり、第1絶縁層15に割れが発生する虞がある。
【0113】
本実施形態では、サイドエッチング部20の幅eと高さdの比が0.03以上50以下の範囲にあることで、配線や上部電極に電圧が印加される場合には、下部電極や配線の端部に電界が集中しても、その周辺には第1絶縁層15が形成されているため、第2絶縁層19へ印加される電界が緩和される。このため、第2絶縁層19への絶縁破壊やマイグレーションの発生が抑制され、MIMキャパシタ2の信頼性を向上することができる。また、湿式法による密着性を付与する表面処理において、サイドエッチング部20の端部まで液が浸透して密着性を付与することができ、第1導電層13と第2絶縁層19との界面での剥離を抑制することができる。また、サイドエッチング部20において絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性が向上し、サイドエッチング部20の界面のボイドの発生を抑制できるため、界面の密着性が向上し、第1絶縁層15および第1導電層13と第2絶縁層19との界面での剥離を抑制することができる。また、ボイドへの応力集中もなくなるため、第1絶縁層15の割れも抑制することができる。また、第1絶縁層15で応力が集中する箇所を第1絶縁層15の端部Aと第1導電層13の界面から第1絶縁層15の内側にすることができ、第1絶縁層15の端部Aの下面を第2絶縁層19で包埋することができるため、第1絶縁層15に掛かる応力が低減され、第1絶縁層15の割れを抑制することができる。
【0114】
次に、サイドエッチング部20の幅eと高さdの比は、0.03以上50以下であることが望ましく、サイドエッチング部20の幅eは、50nm以上5μm以下であることが望ましく、サイドエッチング部20の高さdは、100nm以上1500nm以下であることが望ましい。この範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。サイドエッチング部20の幅eと高さdの比が0.03未満である場合、第2絶縁層19へ印加される電界の緩和が不十分で、絶縁破壊やマイグレーションの発生の抑制効果が低下し、第1絶縁層15に掛かる応力の低減も不十分で、第1絶縁層15の割れの抑制が困難となる。サイドエッチング部20の幅eと高さdの比が50よりも大きい場合、湿式法による密着性を付与する表面処理において、サイドエッチング部20の端部まで液が浸透せず、第1導電層13と第2絶縁層19との界面での剥離の抑制が困難となる。また、絶縁樹脂層形成時の樹脂の流動性も低下し、樹脂がサイドエッチング部20の内部まで侵入できず、サイドエッチング部20にボイドが発生し、第1絶縁層15および第1導電層13と第2絶縁層19との界面での剥離が発生する。また、ボイドへの応力集中により、第1絶縁層15の割れも抑制することが困難となる。
【0115】
次に、第1導電層13のサイドエッチング部20と第1絶縁層15との間の第2絶縁層19に、サイドエッチング部20の高さdの1/2以上のフィラー21が1個以上充填されることが望ましい。
【0116】
第1絶縁層15の端部Aと第1導電層13との界面には応力が集中しやすいため、第1絶縁層15に応力が掛かり、第1絶縁層15に割れが発生する虞がある。また、サイドエッチング部20内に形成された第2絶縁層19は、MIMキャパシタの寄生静電容量に関わり、サイドエッチング部20内のフィラー21のサイズおよびフィラー21の含有率の違いにより、第2絶縁層19の誘電特性が局所的に変動し、寄生静電容量も変動するため、MIMキャパシタの特性精度が低下する虞がある。
【0117】
本実施形態では、サイドエッチング部20にフィラー21が留まりやすくなり、そのフィラー21が単体または複数個に連なり、第1絶縁層15と第1導電層13とに接している。このフィラー21により、第1絶縁層15の応力が緩和され、第1絶縁層15の割れを抑制することができる。また、サイドエッチング部20の高さdより大きなフィラー21はサイドエッチング部20に形成されないため、サイドエッチング部20内のフィラー21のサイズや含有率の変動および局所的な誘電特性の変動を抑制できる。これにより、MIMキャパシタ2の寄生静電容量の変動を抑制することができるため、MIMキャパシタ2の特性精度を向上することができる。
【0118】
次に、サイドエッチング部20の高さdは、100nm以上1500nm以下であることが望ましく、フィラー21のサイズは、50nm以上750nm以下であることが望ましい。そして、上記サイズ範囲のフィラー21がサイドエッチング部20に1個以上充填されていることが望ましい。フィラー21を上記サイズ範囲にすることで、前述の効果を奏することができる。フィラー21のサイズがサイドエッチング部20の高さdの1/2未満である場合、フィラー21がサイドエッチング部20に留まりにくくなり、そのフィラー21が単体または複数個に連なり、第1絶縁層15と第1導電層13とに接する頻度が低くなる。このため、第1絶縁層15の応力の緩和および第1絶縁層15の割れを抑制することが困難となる。
【0119】
なお、
図5に示したサイドエッチング部20を有する実施例は、第1導電層13のサイドエッチング部20と第2絶縁層19との構成、及びサイドエッチング部20に設けられたフィラー21の構成のみの実施例としても成立し、サイドエッチング部20に関する効果を奏することができる。この実施例の場合、第1絶縁層15の上面の構成は特に限定されない。
【0120】
[1-4] 配線基板1の具体的な構成
次に、配線基板1の具体的な構成について説明する。
図7は、多層配線を備えた配線基板1の断面図である。
【0121】
基板10の上面には、MIMキャパシタ2が設けられる。MIMキャパシタ2の構成は、
図1に示した通りである。MIMキャパシタ2の周囲には、第2絶縁層19が設けられる。
【0122】
基板10上には、複数の配線22が設けられる。各配線22は、例えば、MIMキャパシタ2の下部電極と同じ構成を有する。本実施形態では、配線22は、密着層11、第1シード層12、及び第1導電層13が積層されて構成される。
【0123】
基板10には、複数の貫通孔23が設けられる。各貫通孔23は、基板10の上面と下面とを貫通する。
【0124】
貫通孔23の内壁には、貫通孔内導電層24が設けられる。貫通孔内導電層24は、基板10の上面に配置された配線と、基板10の下面に配置された配線とを電気的に接続するように構成される。貫通孔内導電層24は、例えば、配線22と同じ構成を有する。本実施形態では、貫通孔内導電層24は、密着層11、第1シード層12、及び第1導電層13が積層されて構成される。
【0125】
第2絶縁層19内には、配線22及びMIMキャパシタ2の上部電極を露出するビアホール25が設けられる。ビアホール25内には、シード層26が設けられる。シード層26上には、ビアホール25を埋め込むように構成されたビア27が設けられる。シード層26は、第1シード層12と同じ材料を用いることが可能である。ビア27は、第1導電層13と同じ材料を用いることが可能である。
【0126】
第2絶縁層19上には、複数のシード層26が設けられる。第2絶縁層19上の複数のシード層26上には、複数の配線28が設けられる。配線28は、第1導電層13と同じ材料を用いることが可能である。複数の配線28の一部は、ビア27に電気的に接続される。
【0127】
第2絶縁層19上及び複数の配線28上には、絶縁層29が設けられる。絶縁層29は、第2絶縁層19と同じ材料を用いることが可能である。
【0128】
絶縁層29内には、複数の配線28の一部を露出するビアホール30が設けられる。図示は省略するが、ビア、配線、及び絶縁層をさらに形成し、さらに多層配線層を形成してもよい。最上層の複数の配線は、パッド部を含んでいてもよい。パッド部は、外部接続端子として形成してもよい。
【0129】
基板10の下面側の構成も上面側の構成と同じである。基板10の下面にも、MIMキャパシタ2、第2絶縁層19、及び配線22などが設けられる。
【0130】
本実施形態の配線基板1は、片面のみに積層導体回路層(MIMキャパシタ2、及び配線22、27を含む)、外部接続端子、及びはんだボールが設けられていてもよく、他の実施例として両面に積層導体回路層が設けられていてもよい。さらに、配線基板1は、半導体チップ、及びチップ部品を搭載してもよい。
【0131】
[1-5] 製造方法
次に、配線基板1の製造方法について説明する。以下、製造方法における工程1~工程17について、
図8~
図19等を参照して説明する。なお、以下の製造方法の説明では、基板10の上面に形成するMIMキャパシタ及び配線を形成する工程を中心に説明する。基板10の下面にさらにMIMキャパシタ及び配線を形成する場合は、基板10の上面に形成するMIMキャパシタ及び配線と同じ製造工程を用いて形成することができる。
【0132】
(工程1)
基板10は、ガラス基板で構成される。基板10は、基板10の上面から下面に貫通する貫通孔を有することができる。貫通孔の断面形状および径は、例えば、貫通孔のトップ径およびボトム径よりも中央部の径が狭くなるような形状でもよく、トップ径に対しボトム径が小さい形状でもよい。さらに、貫通孔のトップ径およびボトム径よりも中央部の径が広くなるような形状でもよい。
【0133】
(工程2)
次に、
図8に示すように、基板10の上面に、密着層11、及び第1シード層12を形成する。基板10に貫通孔が形成されている場合には、貫通孔内にも密着層11、及び第1シード層12を形成する。密着層11、及び第1シード層12は、セミアディティブ法における配線形成工程において、電解めっきの給電層として機能する。
【0134】
具体的には、基板10の上面に、密着層11としてチタン層をスパッタリング法により形成し、その後、第1シード層12として銅層をスパッタリング法により形成する。さらにその後に、無電解めっきにより、金属層を形成するのが望ましい。チタン層および銅層をスパッタリング法のみで形成すると、貫通孔の内壁に金属層を均一に形成することができない場合がある。このため、無電解めっき法によって金属層を増強することが望ましい。無電解めっき層としては無電解銅めっき、又は無電解ニッケルめっきが挙げられるが、ガラス、チタン層、及び銅層との密着性がよいことから無電解ニッケルめっきが望ましい。
【0135】
ニッケルめっき層が厚過ぎると、微細な配線形成が困難となる場合がある。また、膜の応力増加によって、密着性が低下する場合がある。そのため、ニッケルめっき層の厚さは、1μm以下であることが望ましい。より望ましくは0.5μm以下であり、さらに望ましくは0.3μm以下である。
【0136】
また、ニッケルめっき層には、還元剤に由来する共析物であるリン、若しくは無電解ニッケルめっき液中に含まれる硫黄、鉛、又はビスマス等が含まれていてもよい。以上の工程を経て、貫通孔にもシード層が形成されたガラス基板が得られる。
【0137】
(工程3)
続いて、第1シード層12上に、所望のレジストパターンを有するレジスト層31を形成する。レジスト層31の形成方法は、まず、第1シード層12の全面にレジスト層31を形成する。レジスト層31は、ネガ型ドライフィルムレジスト、ネガ型液状レジスト、又はポジ型液状レジストが挙げられるが、レジスト層の形成が簡便でかつ安価であるためネガ型フォトレジストであることが望ましい。
【0138】
(工程4)
続いて、レジスト層31に所望の導体回路層を形成するためのレジストパターンを公知のフォトリソグラフィー法により形成する。すなわち、レジスト層31のレジストパターンは、導体回路層が形成される部分が露出するように位置合わせを行い、露光および現像処理することにより、レジスト層31をパターニングする。レジスト層31の厚さは、導体回路層の厚さにも依存するが、5μm以上25μm以下であることが望ましい。厚さが5μm未満である場合、導体回路層となる電解めっき層を5μm以上に増膜できなくなり、回路の接続信頼性が低下する可能性がある。厚さが25μmよりも大きい場合、ピッチ30μm以下の微細配線を形成することが困難となる。このようにして、レジストパターンが形成された基板が得られる。
【0139】
(工程5)
続いて、
図9に示すように、第1シード層12に給電し、メッキ液に浸漬することにより、レジスト層31が形成されていない第1シード層12の上面に、第1導電層13である電解めっき層を形成する。
【0140】
(工程6)
続いて、
図10に示すように、レジスト層31を除去し、第1シード層12を露出させる。レジスト層31の除去方法は、何ら特定の方法に限定されるものではないが、例えば、アルカリ水溶液によって剥離除去することができる。
【0141】
(工程7)
続いて、
図11に示すように、第1導電層13上及び第1シード層12上に、下部密着層14、第1絶縁層15、上部密着層16、及び第2シード層17を順次形成する。上記層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、レーザブレーション法、又はCVD法が挙げられる。
【0142】
第1絶縁層15の下層である下部密着層14は、第1絶縁層15と第1導電層13との密着性を向上させる機能を有する。しかし、第1絶縁層15と第1導電層13との密着性が十分である場合は、下部密着層14は無くても構わない。
【0143】
本実施形態では、第1導電層13形成後に、第1シード層12をエッチングすることなく、第1絶縁層15及び第2シード層17などを形成している。このため、第2シード層17を形成する際に、第2シード層17の付きまわり性の異常を抑制することができる。その結果、第2導電層18についても安定して形成することができる。第2シード層17は、MIMキャパシタ2の上部電極をセミアディティブ法で形成するための給電層として機能する。
【0144】
(工程8)
続いて、
図12に示すように、第2シード層17上に、第2導電層18の形成予定領域以外の領域を覆うレジスト層32を形成する。レジスト層32のレジストパターンの形成は、前述したレジストパターンと同じ方法で行うことができる。この工程において、レジスト層32の開口領域は、下部電極としての第1導電層13より内側となるように形成され、Y方向においても、MIMキャパシタ2の外部への接続配線の部分を除いては、第1導電層13より内側になるように形成される。
【0145】
(工程9)
続いて、電解めっき法により、第2シード層17に給電して、第2シード層17上に、第2導電層18を形成する。
【0146】
(工程10)
続いて、
図13に示すように、レジスト層32を除去する。レジスト層32の除去は、公知の方法、例えば、アルカリ水溶液によって剥離除去することができる。
【0147】
(工程11)
続いて、
図14に示すように、第2シード層17上及び第2導電層18上に、第2導電層18を囲むようにレジスト層33のパターンを形成する。レジスト層33のレジストパターンの形成は、前述したレジストパターンと同じ方法で行うことができる。この工程において、レジスト層33の開口領域(第1絶縁層15の形成予定領域)は、第2導電層18より外側、かつ第1導電層13より内側となるように形成され、Y方向においても、MIMキャパシタ2の外部への接続配線の部分を除いては、第1導電層13より内側になるように形成される。
【0148】
(工程12)
続いて、レジスト層33が形成された被処理基板に、加熱処理を実施する。加熱処理により、レジスト層33と、第2シード層17、第1絶縁層15および第1導電層13との線膨張係数の差によって、レジスト層33と第2シード層17との界面に応力が発生する。
【0149】
図15は、加熱処理後のレジスト層33の様子を説明する部分断面図である。
図15は、
図2のI-I’線に対応する部分断面図である。
図15に示す実施例では、下部密着層14及び上部密着層16は設けていない。
【0150】
図15に示すように、発生する応力がレジスト層33と第2シード層17との界面の密着力よりも大きくなることで、レジスト層33の端部に剥離が生じ、空隙が形成される。また、発生する応力はレジスト層33の直線部分の端部よりも四隅のほうが大きくなるため、四隅のほうがより剥離が生じやすくなる。このため、空隙の幅はレジスト層33の直線部分の端部よりも四隅のほうが大きくなる。
【0151】
加熱処理の条件は、処理温度が50℃以上200℃以下の範囲で、処理時間が1分以上5分以下の範囲で実施することが望ましい。そうすることで、レジスト層33の端部に剥離が生じ、空隙を形成することができる。処理温度が50℃未満である場合、剥離を生じさせるほどの応力が発生せず、剥離が生じにくくなる。処理温度が200℃よりも高い場合、レジスト層33が軟化し、剥離を生じさせるほどの応力が発生せず、剥離が生じにくくなる。
【0152】
また、処理時間が1分未満である場合、第1絶縁層15のうち表面粗さが大きい第2領域15Bの幅が1μm未満となる。処理時間が5分よりも長い場合、表面粗さが大きい第2領域15Bの幅が10μmより大きくなり、表面粗さが大きい領域が上部電極と近くなる。このため、上部電極周囲の第1絶縁層15の厚さが不均一となり、静電容量の精度が低下する。
【0153】
なお、加熱処理の方法は、特に限定されず、オーブン等の一般的な加熱装置を用いて実施される。
【0154】
(工程13)
続いて、
図16に示すように、レジスト層33をマスクとして、第2シード層17、上部密着層16、第1絶縁層15、及び下部密着層14をエッチングする。このエッチング工程により、第2シード層17、上部密着層16、第1絶縁層15、及び下部密着層14の側面はそれぞれ、第2導電層18より外側、かつ第1導電層13より内側になる。
【0155】
第2シード層17および上部密着層16の不要部分の除去は、本工程13で実施することに限定されず、例えば工程11の前に第2導電層18をマスクとして、第2シード層17および上部密着層16の不要部分をエッチングしてもよい。このようにすると、MIMキャパシタの外表面における第1絶縁層15の面積が大きくなり、上部電極および下部電極間の側面からのリーク電流などを抑制することができる。
【0156】
ここで、第1絶縁層15をエッチングする際には、ドライエッチングで実施することが望ましい。そうすることで、
図17に示すように、第1絶縁層15とレジスト層33とのわずかな空隙に軽度のドライエッチング処理が施される。これにより、第1絶縁層15の第2領域15Bの上面が荒らされ、第2領域15Bの厚さが減膜され、順テーパ形状の側壁を形成することができる。
【0157】
また、前述したように空隙の幅はレジスト層33の直線部分の端部よりも四隅のほうが大きくなるため、ドライエッチング処理される領域も四隅のほうが大きくなる。これにより、第1絶縁層15の上面の表面粗さが大きい領域は、直線部分の端部よりも四隅のほうが大きくなる。
【0158】
(工程14)
続いて、
図18に示すように、レジスト層33を除去する。レジスト層33の除去は、公知の方法、例えば、アルカリ水溶液によって剥離除去することができる。
【0159】
(工程15)
続いて、
図19に示すように、第1シード層12の露出した部分を除去する。本実施形態では、基板10上に、密着層11としてのチタン層、第1シード層12としての銅層、及び密着層としての無電解ニッケル層がこの順に積層されている。無電解ニッケル層、銅層、及びチタン層は、順次化学エッチングにより除去する方法を用いることができる。エッチング液の種類は除去する金属種により適宜選択され、除去方法は、本実施形態に記載された方法に限定されない。
【0160】
第1シード層12と第2シード層17とが同じ材料および同じ厚さであり、密着層11と上部密着層16とが同じ材料および同じ厚さである場合、このエッチング工程において、第2シード層17および上部密着層16の露出した部分も同時にエッチングされる。この場合、第2導電層18と第2シード層17および上部密着層16とが面一に形成される。
【0161】
このエッチング工程において、第1導電層13と第1絶縁層15の端部との界面にサイドエッチング部20を形成することができる。このようにして、基板10上にMIMキャパシタ2が形成される。
【0162】
(工程16)
続いて、
図1に示すように、基板10およびMIMキャパシタ2上に、第2絶縁層19を形成する。第2絶縁層19は、真空ラミネーター、又はロールコーターなどの公知の技術を用いて形成することができる。このようにして、MIMキャパシタ2が形成された配線基板1が形成される。
【0163】
(工程17)
続いて、
図7に示すように、第2絶縁層19にビアホール25を形成し、ビア27及び配線28を形成する。その後、前述の配線と絶縁樹脂層とを繰り返して形成することにより、多層配線を備えた配線基板1が形成される。配線基板1上の多層配線は、公知のセミアディティブ法又はサブトラクティブ法を用いて形成することができる。
【0164】
さらに、配線基板1を形成した後に、外部接続端子を形成することも可能である。さらに、外部接続端子にはんだボールを形成することも可能である。
【0165】
[1-6] 第1実施形態の効果
第1実施形態では、第1絶縁層15の第2領域15Bの表面粗さを第1領域15Aの表面粗さよりも大きく設定している。よって、第2領域15Bの表面積を増加させることができるとともに、第1絶縁層15と第2絶縁層19との接触面積を増加することができる。これにより、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が向上し、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面での剥離を抑制することができる。また、第2領域15Bの表面積が増加することで、MIMキャパシタ2に通電した際に、上部電極と下部電極との間の第1絶縁層15の上面および側面の経由距離が増加するため、リーク電流を抑制し、MIMキャパシタ2の耐電力特性を向上することができる。
【0166】
また、第2領域15Bの厚さbが第1領域15Aの厚さcより小さく設定されることで、第2領域15Bの上面が傾斜を有する構造となる。これにより、第2絶縁層19としての絶縁樹脂層を形成する際、樹脂の流動性が向上し、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0167】
また、第1絶縁層15の第2領域15Bの四隅の幅a’が辺の幅aより大きく設定される。これにより、第2領域15Bの四隅において第1絶縁層15と第2絶縁層19との接触面積を増加させることができる。これにより、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の密着性が向上し、第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面での剥離を抑制することができる。
【0168】
また、第1導電層13は、第1絶縁層15の端部の下に設けられたサイドエッチング部20を有する。第1導電層13のサイドエッチング部20が形成された領域は、サイドエッチング部20が形成されていない領域よりも表面粗さが大きく設定される。これにより、第1導電層13と第2絶縁層19との界面の密着性が向上し、界面の剥離を抑制することができる。また、第2絶縁層19形成時、サイドエッチング部20の樹脂の流動性が向上し、サイドエッチング部20の界面のボイドの発生を抑制できる。
【0169】
また、第1導電層13にサイドエッチング部20を形成したことにより、第1絶縁層15の端部を第2絶縁層19で包埋することができる。これにより、第1絶縁層15に掛かる応力が低減され、第1絶縁層15の割れを抑制することができる。
【0170】
また、サイドエッチング部20には、第2絶縁層19に含まれるフィラー21が設けられる。このフィラー21により第1絶縁層15の応力が緩和され、第1絶縁層15の割れを抑制することができる。
【0171】
また、第1実施形態によれば、MIMキャパシタ2の電気特性を向上させることができる。
【0172】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、配線基板1の他の製造方法である。
【0173】
[2-1] 製造方法
以下、
図20~
図28等を参照して第2実施形態に係る製造方法について説明する。
【0174】
第2実施形態においては、工程1から工程6は第1実施形態と同一であるため、工程1から工程6については、説明を省略する。第2実施形態においては、
図7に示した第1実施形態の工程6の後に、以下に説明する工程18を継続する。
【0175】
(工程18)
図20に示すように、第1導電層13をマスクとして、第1シード層12、及び密着層11を除去する。本実施形態では、基板10上に、密着層11としてのチタン層、第1シード層12としての銅層、及び密着層としての無電解ニッケル層がこの順に積層されている。第1シード層12、及び密着層11の除去は、無電解ニッケル層、銅層、チタン層を順次化学エッチングにより除去する方法を用いることができる。エッチング液の種類は除去する金属種により適宜選択され、除去方法は、本実施形態に記載された方法に限定されない。
【0176】
(工程19)
続いて、
図21に示すように、第1導電層13及び基板10上に、下部密着層14、及び第1絶縁層15を順次形成する。上記層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザブレーション法、又はCVD法が挙げられる。
【0177】
第1絶縁層15の下層である下部密着層14は、第1絶縁層15と第1導電層13との密着性を向上させる機能を有する。しかし、第1絶縁層15と第1導電層13との密着性が十分である場合は、下部密着層14は無くても構わない。
【0178】
(工程20)
続いて、
図22に示すように、第1絶縁層15上に、第1絶縁層15の形成予定領域を覆うレジスト層34を形成する。レジスト層34のレジストパターンの形成は、前述したレジストパターンと同じ方法で行うことができる。この工程において、レジスト層34の開口領域は、下部電極としての第1導電層13より内側となるように形成され、Y方向においても、MIMキャパシタ2の外部への接続配線の部分を除いては、第1導電層13より内側になるように形成される。
【0179】
(工程21)
続いて、レジスト層34が形成された被処理基板に、加熱処理を実施する。加熱処理により、レジスト層34と、第1絶縁層15および第1導電層13との線膨張係数の差によって、レジスト層34と第1絶縁層15との界面に応力が発生する。
【0180】
図23は、加熱処理後のレジスト層34の様子を説明する部分断面図である。
図23は、
図2のI-I’線に対応する部分断面図である。
図23に示す実施例では、下部密着層14及び上部密着層16は設けていない。
【0181】
図23に示すように、発生する応力がレジスト層34と第1絶縁層15との界面の密着力よりも大きくなることで、レジスト層34の端部に剥離が生じ、空隙が形成される。また、発生する応力はレジスト層34の直線部分の端部よりも四隅のほうが大きくなるため、四隅のほうがより剥離が生じやすくなる。このため、空隙の幅はレジスト層34の直線部分の端部よりも四隅のほうが大きくなる。
【0182】
加熱処理の条件は、処理温度が50℃以上200℃以下の範囲で、処理時間が1分以上5分以内の範囲で実施することが望ましい。そうすることで、レジスト層34の端部に剥離が生じ、空隙を形成することができる。処理温度が50℃未満である場合、剥離を生じさせるほどの応力が発生せず、剥離が生じにくくなる。処理温度が200℃よりも高い場合、レジスト層34が軟化し、剥離を生じさせるほどの応力が発生せず、剥離が生じにくくなる。
【0183】
また、処理時間が1分未満である場合、第1絶縁層15のうち表面粗さが大きい第2領域15Bの幅が1μm未満となる。処理時間が5分よりも長い場合、表面粗さが大きい第2領域15Bの幅が10μmより大きくなり、表面粗さが大きい領域が上部電極と近くなる。このため、上部電極周囲の第1絶縁層15の厚さが不均一となり、静電容量の精度が低下する。
【0184】
なお、加熱処理の方法は、特に限定されず、オーブン等の一般的な加熱装置を用いて実施される。
【0185】
(工程22)
続いて、
図24に示すように、レジスト層34をマスクとして、第1絶縁層15、及び下部密着層14の不要部分を除去する。第1絶縁層15、及び下部密着層14の除去は、化学エッチング法、又はドライエッチング法を用いることができ、いずれも公知の方法を用いることができる。また、各層毎で異なった除去方法を用いてもよいし、全ての層で同じ除去方法を用いてもよい。
【0186】
上述したように、レジスト層34は第1導電層13(下部電極)の内側に形成にされているため、レジスト層34をマスクとして不要部分を除去しても、第1絶縁層15は第1導電層13の内側にのみに残存して形成される。
【0187】
ここで、第1絶縁層15をエッチングする際には、ドライエッチングで実施することが望ましい。そうすることで、
図25に示すように、第1絶縁層15とレジスト層34とのわずかな空隙に軽度のドライエッチング処理が施される。これにより、第1絶縁層15の第2領域15Bの上面が荒らされ、第2領域15Bの厚さが減膜され、順テーパ形状の側壁を形成することができる。
【0188】
また、前述したように空隙の幅はレジスト層34の直線部分の端部よりも四隅のほうが大きくなるため、ドライエッチング処理される領域も四隅のほうが大きくなる。これにより、第1絶縁層15の上面の表面粗さが大きい領域は、直線部分の端部よりも四隅のほうが大きくなる。
【0189】
(工程23)
続いて、レジスト層34を除去する。レジスト層34の除去は、公知方法、例えば、アルカリ水溶液で除去剥離することができる。
【0190】
(工程24)
続いて、
図26に示すように、基板10、第1導電層13、及び第1絶縁層15上に、上部密着層16、及び第2シード層17を順次形成する。上記層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザブレーション法、又はCVD法が挙げられる。
【0191】
第2シード層17は、MIMキャパシタ2の上部電極をセミアディティブ法で形成するための給電層として機能する。
【0192】
(工程25)
続いて、
図27に示すように、第2シード層17上に、第2導電層18の形成予定領域以外の領域を覆うレジスト層35を形成する。レジスト層35のレジストパターンの形成は、前述したレジストパターンと同じ方法で行うことができる。この工程において、レジスト層35の開口領域は、下部電極としての第1導電層13より内側、かつ第1絶縁層15より内側となるように形成され、Y方向においても、MIMキャパシタ2の外部への接続配線の部分を除いては、第1導電層13より内側、かつ第1絶縁層15より内側になるように形成される。
【0193】
(工程26)
続いて、電解めっき法により、第2シード層17に給電して、第2シード層17上に、第2導電層18を形成する。
【0194】
(工程27)
続いて、
図28に示すように、レジスト層35を除去する。レジスト層35の除去は、公知方法、例えば、アルカリ水溶液で除去剥離することができる。
【0195】
(工程28)
続いて、
図19に示すように、第2導電層18をマスクとして、第2シード層17、及び上部密着層16の露出した部分を除去する。第2シード層17、及び上部密着層16の除去は、化学エッチング法、又はドライエッチング法を用いることができ、いずれも公知の方法を用いることができる。各層毎で異なった除去方法を採用してもよいし、また、全ての層で同じ方法除去を行ってもよい。また、不要部分の除去は、第2導電層18をマスクとして実施してもよいし、レジスト層を再度形成し、そのレジスト層をマスクとして実施してもよい。
【0196】
このエッチング工程において、第1導電層13と第1絶縁層15の端部との界面にサイドエッチング部20を形成することができる。このようにして、基板10上にMIMキャパシタ2が形成される。
【0197】
(工程29)
続いて、
図1に示すように、基板10およびMIMキャパシタ2上に、第2絶縁層19を形成する。第2絶縁層19は、真空ラミネーター、又はロールコーターなどの公知の技術を用いて形成することができる。このようにして、MIMキャパシタ2が形成された配線基板1が形成される。
【0198】
その後の工程は、第1実施形態の工程17と同じである。
【0199】
[2-1] 第2実施形態の効果
第2実施形態による製造方法を採用した場合でも、第1実施形態で説明した配線基板1の構成を得ることができる。その他の効果も、第1実施形態と同じである。
【0200】
[3] 試験結果
以下に、本発明に関連して行った試験について説明する。
図29は、MIMキャパシタの試験結果を説明する図である。
【0201】
本発明の第1実施形態および第2実施形態による製造方法を採用して製造されたMIMキャパシタ(実施例1~3)と、本実施形態のMIMキャパシタの構造を有しないMIMキャパシタ(比較例)とについて試験を実施した。実施例1~3、及び比較例の構成は、以下の通りである。
・実施例1:第1絶縁層15の第2領域15Bに荒れを形成。第1導電層13にサイドエッチング部を未形成。
・実施例2:第1絶縁層15の第2領域15Bに荒れを未形成。第1導電層13にサイドエッチング部を形成。
・実施例3:第1絶縁層15の第2領域15Bに荒れを形成。第1導電層13にサイドエッチング部を形成。
・比較例:第1絶縁層15の第2領域15Bに荒れを未形成。第1導電層13にサイドエッチング部を未形成。
【0202】
以下に、比較試験1~5について説明する。
【0203】
(比較試験1)
比較試験1は、第1絶縁層15と第2絶縁層19との間のボイドの有無に関する試験である。実施例1~3、及び比較例の各々について、100個の検体を製造し、検体の断面観察を行った。検体の断面観察により、ボイドの有無を確認し、ボイド発生率(%)を確認した。
【0204】
図29に示すように、本実施形態(実施例1~3)では、第1絶縁層15と第1導電層13との界面、及び第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面のボイドの発生を抑制することができた。
【0205】
(比較試験2)
比較試験2は、温度サイクル試験(TCT:Thermal Cycle Test)後における第1絶縁層15と第2絶縁層19との間の剥離の有無に関する試験である。実施例1~3、及び比較例の各々について、100個の検体を製造し、検体に温度サイクル試験を実施し、温度サイクル試験後の検体の断面観察を行った。検体の断面観察により、第1絶縁層15と第2絶縁層19との間の剥離の有無を確認し、剥離発生率(%)を確認した。また、第1絶縁層15の四隅の剥離の有無も確認した。さらに、第1絶縁層15の割れの有無を確認し、割れ発生率(%)を確認した。温度サイクル試験では、-40℃以上+125℃以下の範囲で配線基板の雰囲気温度を変動させることを1サイクルとし、これを1000サイクル繰り返した。
【0206】
図29に示すように、本実施形態(実施例1~3)では、第1絶縁層15と第1導電層13との界面、及び第1絶縁層15と第2絶縁層19との界面の剥離を抑制することができた。また、本実施形態では、第1絶縁層15の割れを抑制することができた。また、本実施形態では、第1絶縁層15の四隅の剥離の発生も見られなかった。
【0207】
(比較試験3)
比較試験3は、耐電力試験での電圧と電流との線形性の有無に関する試験である。実施例1~3、及び比較例の各々について、10個の検体を製造し、耐電力試験を実施した。耐電力試験では、4GHz、30dBm以上38dBm以下の範囲で電力をMIMキャパシタに印加した。MIMキャパシタの特性が維持できた場合を「Passed」、MIMキャパシタに絶縁破壊やリーク電流が発生し、特性を維持できない場合を「Failed」として判定した。
【0208】
図29に示すように、本実施形態(実施例1、3)のMIMキャパシタにより、耐電力試験を合格することができた。
【0209】
(比較試験4)
比較試験4は、Q値(quality factor)に関する試験である。実施例1~3、及び比較例の各々について、20個の検体を製造し、Q値を測定した。MIMキャパシタの静電容量を1pFとし、測定周波数を5GHz、20個の検体の平均値を算出した。
【0210】
図29に示すように、本実施形態(実施例1、3)のMIMキャパシタにより、Q値を向上することができた。
【0211】
(比較試験5)
比較試験5は、静電容量のばらつき(精度)に関する試験である。実施例1~3、及び比較例の各々について、20個の検体を製造し、静電容量の設計値に対する実測値の差を測定した。MIMキャパシタの静電容量の設計値を1pFとし、測定周波数を5GHz、設計値との差を設計値で除して静電容量精度(%)を算出し、20個の検体の平均値を求めた。
【0212】
図29に示すように、本実施形態(実施例2、3)のMIMキャパシタにより、静電容量の設計値に対する実測値の精度を向上することができた。
【0213】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0214】
1…配線基板、2…MIMキャパシタ、10…基板、11…密着層、12…第1シード層、13…第1導電層、14…下部密着層、15…第1絶縁層、15A…第1領域、15B…第2領域、16…上部密着層、17…第2シード層、18…第2導電層、19…第2絶縁層、20…サイドエッチング部、21…フィラー、22…配線、23…貫通孔、24…貫通孔内導電層、25…ビアホール、26…シード層、27…ビア、28…配線、29…絶縁層、30…ビアホール、31~35…レジスト層、36…ボイド、37…剥離、38…割れ。