(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156378
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法並びに積層体
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20241029BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241029BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20241029BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20241029BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241029BHJP
H05K 3/18 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
H05K3/38
B32B15/08 J
B32B15/088
B32B15/20
H05K1/03 610N
H05K3/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070787
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓
【テーマコード(参考)】
4F100
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AA17H
4F100AA20A
4F100AA20H
4F100AB17B
4F100AB33B
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4F100BA02
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4F100DE01H
4F100DG11A
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4F100DH02A
4F100EH71B
4F100EJ172
4F100EJ30B
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4F100EJ82A
4F100GB43
4F100JA02A
4F100JB11A
4F100JJ03
4F100JL11
5E343AA02
5E343AA15
5E343AA17
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5E343AA26
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5E343FF16
5E343GG02
5E343GG08
5E343GG11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低表面粗度、高密着性、良好なエッチング性及び耐熱性に優れる狭ピッチ回路パターンを安定的に製造する為のプリント配線板の製造方法とそれに適した積層体を提供する。
【解決手段】ポリイミド樹脂と金属酸化物粒子を含む層A 2が銅箔1上に直接形成された積層体L 10を用いたプリント配線板の製造方法であって、積層体Lの層A側の面と、回路が形成された回路基板B 3の回路形成面を対向させ、その間に耐熱性接着材料C 4が挿入された順序で積層して加熱圧着し、積層体M 20を得る工程(1)、得られた積層体Mの銅箔を除去し、層Aを露出させる工程(2)及び露出した層A上に無電解銅めっき層Dを形成する工程(3)を含む。層Aのポリイミド樹脂の線膨張係数は、30ppm以上100ppm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂と金属酸化物粒子を含む層Aが銅箔上に直接形成された積層体Lを用いたプリント配線板の製造方法であり、
工程(1)前記積層体Lの層A側の面と、回路が形成された回路基板Bの回路形成面を対向させ、その間に耐熱性接着材料Cが挿入された順序で積層し、加熱圧着し、積層体Mを得る工程、
工程(2)工程(1)で得られたものの銅箔を除去し、層Aを露出させる工程
工程(3)工程(2)で露出させた層A上に無電解銅めっき層Dを形成する工程
を含み、
層Aのポリイミド樹脂の線膨張係数が、30ppm以上100ppm以下であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記ポリイミド樹脂が非溶解性ポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物がフュームド金属酸化物であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
ポリイミド樹脂と金属酸化物粒子を含む層Aが銅箔上に直接形成された積層体(L)。
【請求項5】
前記ポリイミド樹脂が非溶解性ポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の積層体(L)。
【請求項6】
前記金属酸化物がフュームド金属酸化物であることを特徴とする請求項4または5に記載の積層体(L)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法並びに積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁基板上に金属導体からなる回路を備えるプリント配線板は、プリント配線板上に各種電子部品が実装され、電子機器の機能を発現させる部品として広く使用されている。電子機器の高機能化、高性能化、小型化に伴い、プリント配線板には、回路配線のさらなる狭ピッチ化が求められている。携帯機器のマザーボードに用いられるHDI(High Density Interconnect)や高性能半導体ベアチップを実装する半導体パッケージ基板等のプリント配線板は特に狭ピッチ化の要求が強く、従来工法であるサブトラクティブ工法に代わり、SAP(Semi Additive Process)工法やMSAP(Modified Semi Additive Process)工法が採用されている。これらのAdditive工法は給電層となる薄い銅層を形成し、同給電層上に感光性レジストによるパターンが形成され、そのレジストパターンの開口部に電解銅めっきによるパターンめっきを施し、次いでシードエッチングを行うことにより導体パターンを形成する。サブトラクティブ工法と比較し、狭ピッチ回路形成に適しているが、MSAP工法で用いるキャリア付き銅箔は現状では3ミクロン程度の厚みのグレードが入手可能であり、更には1.5ミクロン厚みグレードも開発されている。しかし、狭ピッチ回路形成の為には厚みはできるだけ薄い方が有利である為、絶縁樹脂上に直接無電解銅めっきを施すSAP工法の方が狭ピッチ回路形成には適している。特許文献1、特許文献2にSAP工法と前提とした材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-108557号公報
【特許文献2】再公表特許 WO2020/105289
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、上述のような従来技術は一長一短であり、以下に示すような改善の余地または問題点があることを見出した。
【0005】
絶縁樹脂層上に形成する微細な回路パターンを安定的に形成する為には、絶縁樹脂層と無電解銅めっき層の界面の密着強度は高ければ高いほど好ましい。特許文献1および特許文献2には絶縁樹脂層と無電解銅めっき層の界面の密着強度が記載されているが、絶縁樹脂層上に形成する微細な回路パターンを安定的に形成する為に、更なる改善が望まれている。
【0006】
本発明は、本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低表面粗度、高密着性、良好なエッチング性、耐熱性に優れる狭ピッチ回路パターンを安定的に製造する為のプリント配線板の製造方法とそれに適した積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記課題を下記構成により克服できることを見出した。
【0008】
1).ポリイミド樹脂と金属酸化物粒子を含む層Aが銅箔上に直接形成された積層体Lを用いたプリント配線板の製造方法であり、
工程(1)前記積層体Lの層A側の面と、回路が形成された回路基板Bの回路形成面を対向させ、その間に耐熱性接着材料Cが挿入された順序で積層し、加熱圧着し、積層体Mを得る工程、
工程(2)工程(1)で得られたものの銅箔を除去し、層Aを露出させる工程
工程(3)工程(2)で露出させた層A上に無電解銅めっき層Dを形成する工程
を含み、
層Aのポリイミド樹脂の線膨張係数が、30ppm以上100ppm以下であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0009】
2).前記ポリイミド樹脂が非溶解性ポリイミド樹脂であることを特徴とする1)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0010】
3).前記金属酸化物がフュームド金属酸化物であることを特徴とする1)または2)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0011】
4).ポリイミド樹脂と金属酸化物粒子を含む層Aが銅箔上に直接形成された積層体(L)。
【0012】
5).前記ポリイミド樹脂が非溶解性ポリイミド樹脂であることを特徴とする4)に記載の積層体(L)。
【0013】
6).前記金属酸化物がフュームド金属酸化物であることを特徴とする4)または5)に記載の積層体(L)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低表面粗度、高密着性、良好なエッチング性、耐熱性に優れる狭ピッチ回路パターンを有するプリント配線板を安定的に製造する為のプリント配線板の製造方法並びにその製造方法に適した積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の工程(2)および工程(3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<積層体(L)>
本発明の一実施形態に係る積層体(L)(積層体Lと表すこともある)は、ポリイミド樹脂および金属酸化物粒子を含む層Aが、銅箔上に形成されており、層A/銅箔の構成であることを特徴とする。この構成することにより、プリント配線板の製造時に、銅箔を除去することにより露出させた層Aは、低表面粗度、無電解銅めっきとの高密着性、良好なエッチング性、耐熱性に優れるという利点を有する。
【0017】
本発明はプリント配線板の製造方法に関するものであり、層Aの表面に形成した無電解銅めっき層との高い密着性を発現することが重要であり、その密着性発現メカニズムについて説明する。
【0018】
無電解銅めっきのプロセスは複数の独立した薬液浴で構成されている。これら薬液浴は所定の条件(濃度、温度等)で管理されており、被めっき物の表面は浸漬、シャワーリング等の方法でこれら薬液と所定時間接触し、同表面は化学的な変化、場合により物理的な形状変化が生じる。これら薬液は種々の成分を含んでおり、pHも薬液種により様々であり、強アルカリ性、強酸性を示す薬液もある。一方、本発明の一実施形態に必須の層Aを構成するポリイミド樹脂と金属酸化物粒子はいずれもこれら薬液と相互作用があり、化学構造の変化および物理的な形状の変化を生じており、無電解銅めっきとの密着性改善に影響していると考えている。ポリイミド樹脂および金属酸化物粒子は、共にアルカリ性環境で化学的に変化を受ける。例えば、金属酸化物粒子は、アルカリ性環境で反応し、イオン性官能基を金属酸化物粒子の固体表面に生成する。また、ポリイミド樹脂は、アルカリ性環境でイミド環が開環しイオン性のカルボキシル基を生成する。本発明の層Aはポリイミド樹脂および金属酸化物粒子を含み、アルカリ性環境でイオン性官能基を生成する。
【0019】
これら層Aの表面に生成したイオン性官能基は無電解銅めっき浴中の銅イオンとイオン結合し、「金属酸化物粒子」-「イオン性銅」-「ポリイミド樹脂」の3成分に由来する銅を含む化合物が層Aの表面に層状に生成し、生成した層の表面に無電解銅めっき層Dが生成・成長する。
「金属酸化物粒子」-「銅イオン」-「ポリイミド樹脂」の3成分に由来するイオン性銅を含んだ層は、層Aとはイオン結合により強固に密着しており、また無電解銅めっき層とはイオン性銅と金属銅との金属結合で強固に密着していると考えている。
【0020】
<ポリイミド樹脂>
次に層Aに用いるポリイミド樹脂につき説明する。本発明の一実施形態の積層体Lはプリント配線板用に使われる為、層Aのポリイミド樹脂がその加工プロセス中の高温プロセスの温度、および部品実装される際の高温にも耐えることが好ましい。それ故、層Aに用いるポリイミド樹脂はガラス転移温度が高いことが好ましく、また高温での弾性率が高い方が好ましく、これらが高いことにより、高温時における層Aと無電解銅めっき層との密着性を高く保つことができ好ましく、これにより高温プロセスの温度、および部品実装工程に耐えることが可能になり、好ましい。またこれらが高すぎることに特段の不都合はない。以上の視点より、耐熱性の指標となる耐熱性樹脂のガラス転移温度はできるだけ高いことが好ましく、例えば好ましくは180℃以上であり、更に好ましくは210℃以上、特に好ましくは230℃以上である。また、良好な半田耐熱性発現のためには層Aに用いるポリイミド樹脂は半田の融点近傍においても一定以上の弾性率を有していることが好ましい。具体的に、層A中に含まれるポリイミド樹脂は300℃における貯蔵弾性率が0.02×109Pa以上であり、0.05×109Pa以上であることが好ましく、0.08×109Pa以上であることがより好ましく、0.1×109Pa以上であることがさらに好ましい。
【0021】
ポリイミド樹脂は化学骨格中にイミド基を含んでいることが特徴である。ポリイミド樹脂中の当該イミド基(官能基)、アルカリ環境下で生成したポリアミド酸基が銅イオンと結合し、無電解銅めっき層との密着性を向上すると考えている。
【0022】
一方で、本発明者らは、鋭意検討過程で、層Aに用いるポリイミド樹脂の線膨張係数が密着性に影響し、具体的には30ppm/℃以上である場合に良好な密着性を示すことを独自に見出し、本発明の一実施形態に至っている。本明細書において、ポリイミド樹脂の線膨張係数は、層Aに用いるポリイミド樹脂をフィルム状にしたときの面方向の線膨張係数であり、ポリイミド分子鎖の層A内での面内配向の程度を反映したものである。ポリイミド樹脂の線膨張係数が小さいほどポリイミド分子鎖が面方向に配向していることを示し、逆に大きいほど厚み方向にもポリイミド分子鎖が配向していることを示している。
【0023】
ポリイミド樹脂の線膨張係数は使用するモノマー種により制御することができることができる。ポリイミド樹脂の線膨張係数を小さくするためには、剛直な化学構造を有するモノマーを使用し、その組成比を高くすることが有効である。剛直な化学構造を有するモノマーを使用し、その組成比を高くすることにより、フィルム状に加工(成型)した際に面方向にポリイミド分子鎖が配向し、更にその分子鎖が厚み方向に堆積した状態が形成され得る。
【0024】
上述したように、層Aのポリイミド樹脂の線膨張係数が小さすぎる場合、樹脂フィルムと無電解銅めっき層との密着性が低下するという知見を、本発明者らは独自に見出した。この理由を以下のように推測している。剛直な化学構造を有するモノマーを使用し、当該モノマーの組成比を高くしたモノマー混合物から得られるポリイミドをアルカリ性薬液に晒した場合、表面近傍のポリイミド分子はイミド環の開裂反応によりポリアミド酸に変性し、面方向に配向したポリアミド酸分子が厚み方向に堆積した状態が形成される。ポリアミド酸分子鎖同士の凝集力はポリイミド分子鎖同士の凝集力と比較し弱い。その為、前記ポリイミドをアルカリ性薬液に晒して得られるフィルムの表面に無電解銅めっき層(膜)を形成し、密着性を評価した場合、凝集力が弱いポリアミド酸分子鎖間で層状に破壊した界面で剥離し、結果としてフィルムとめっき層(膜)との密着強度は低くなる傾向がある、と推測される。なお、本発明は、かかる推測になんら限定されるものではない。
【0025】
逆に、ポリイミド樹脂の線膨張係数を大きくするためには、柔軟な化学構造を有するモノマーを使用し、その組成比を高くすることが有効である。柔軟な化学構造を有するモノマーを使用し、その組成比を高くすることにより、フィルム状に成型した際にポリイミド分子鎖は面方向に配向するだけではなく、厚み方向にも配向する、つまりランダム配向を示す傾向がある。
【0026】
上述したように、層Aのポリイミド樹脂の線膨張係数が大きい(例えば、30ppm/℃以上)場合、樹脂フィルムと無電解銅めっき層との密着性が増強するという知見を、本発明者らは独自に見出した。この理由を以下のように推測している。柔軟な化学構造を有するモノマーを使用し、当該モノマーの組成比を高くしたモノマー混合物から得られるポリイミドをアルカリ性薬液に晒した場合、表面近傍のポリイミド分子はイミド環の開裂反応によりポリアミド酸に変性するが、厚み方向にも高分子鎖の共有結合が数多く存在しており、従い、分子鎖同士の凝集力が高い状態を保っている。それ故、前記ポリイミドをアルカリ性薬液に晒して得られるフィルムの表面に無電解銅めっき膜を形成し、密着性を評価した場合、上述のようにポリイミド樹脂の線膨張係数が小さく、面内分子配向が進んだポリイミドの場合のようにポリアミド酸分子鎖間で層状に剥離したりすることはなく、結果として無電解銅めっきとの密着強度は大きくなる傾向がある、と推測される。なお、本発明は、かかる推測になんら限定されるものではない。
【0027】
以上より、層Aに用いるポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂をアルカリ性薬液に晒してもポリイミド樹脂自身の凝集力を低下させないとの視点より、面内分子配向が進んだポリイミド樹脂よりも、ランダム配向した傾向のあるポリイミド樹脂、つまり等方的に分子配向している傾向があるポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0028】
ポリイミド樹脂に関して、面内分子配向の程度と線膨張係数との間には相関がある。ポリイミド樹脂に関して、高度に面内分子配向が進んだ状態、結果として面配向した高分子鎖間の剥離強度も弱くなる状態の場合、線膨張係数は30ppm/℃よりも小さくなる。層Aに用いるポリイミド樹脂には面方向だけではなく、厚み方向にも配向している、ランダム配向傾向があることが好ましく、これにより無電解銅めっきとの密着性も向上する。ポリイミド樹脂の線膨張係数は30ppm/℃以上であり、30ppm/℃よりも大きいことが好ましく、35ppm/℃以上であることがより好ましく、40ppm/℃以上であると更に好ましく、45ppm/℃以上であることがより更に好ましく、50ppm/℃以上であることが特に好ましい。一方、線膨張係数が高すぎると、耐熱性、寸法安定精度等に悪影響を与える為、線膨張係数は100ppm/℃以下であり、80ppm/℃以下であることが好ましい。
【0029】
<層Aのポリイミド樹脂の処方>
次に層Aに用いるポリイミド樹脂に用いるモノマー種、重合方法等につき説明する。ポリイミド樹脂は、ガラス転移温度、高温時の貯蔵弾性率、アルカリ性薬液環境でイオン性官能基の生成性等の物性を適切に制御することが好ましい。これら物性を適切な範囲に制御する手段としては、使用する原料モノマーの選定が挙げられる。ポリイミド樹脂の原料モノマーとしては柔軟な骨格を有するモノマーと剛直な骨格を有するモノマーと、があり、これらを適宜選択し、更に配合比を調整することにより、所望の物性を実現することが可能となる。
【0030】
柔軟な骨格を有するジアミンとしては、4,4'-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2’-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、ビス{4-(3-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、などが挙げられる。
【0031】
一方、剛直な骨格を有するジアミンとしては、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン、ベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノベンズアニリド、などが挙げられる。
【0032】
これらのうち、熱特性の制御ならびに工業的に入手しやすい点から、柔軟な骨格を有するジアミンとして、4,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2’-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、ビス{4-(3-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’-ジアミノベンゾフェノンおよび4,4'-ジアミノベンゾフェノンからなる群から選択される1種以上が好ましく用いられ得る。特に、4,4'-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンおよび2,2’-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパンからなる群から選択される1種以上が好ましく用いられ得る。剛直な骨格を有するジアミンとしては、比較的少量で高分子鎖を固くする効果を発現する点、および工業的に入手しやすい点から、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼンおよび2,2’-ジメチルベンジジンからなる群から選択される1種以上が好ましく用いられ得る。特に、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)および2,2’-ジメチルベンジジンの少なくとも一方が好ましく用いられ得る。これらのジアミンは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して(組み合わせて)用いても良い。
【0033】
柔軟な骨格を有するテトラカルボン酸二無水物としては、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)フタル酸無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などが挙げられる。
【0034】
一方、剛直な骨格を有するテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0035】
これらのうち、熱特性の制御ならびに工業的に入手しやすい点から、柔軟な骨格を有するテトラカルボン酸二無水物として、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および4,4’-オキシジフタル酸無水物からなる群から選択される1種以上が好ましく用いられ得る。中でも、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、本発明の好ましい一実施形態で所望される各種物性、即ち無電解めっき膜との密着性、高温時の弾性率、ガラス転移温度、ポリイミド樹脂の線膨張係数等をバランスよく発現させるために有効に用いることができる。
【0036】
剛直な骨格を有するテトラカルボン酸二無水物としては、比較的少量で高分子鎖を固くする効果を発現する点、および工業的に入手しやすい点から、ピロメリット酸二無水物が好ましく用いられ得る。これらのテトラカルボン酸二無水物は二種以上を混合して用いても良い。
【0037】
本発明の一実施形態における密着性と層Aポリイミド樹脂化学構造との関係については不明な点も多く、明確な説明は難しい。本発明者らの鋭意検討の過程で得られた経験的にはポリイミド樹脂のイミド環の分極を低減する酸二無水物類とジアミン類とを組み合わせて用いることが良好な密着性を示す傾向がある。具体的には酸二無水物として4,4’-オキシジフタル酸二無水物および3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方と、ジアミンとして2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンと、の組み合わせが有効である。好ましいジアミンおよび酸二無水物の組合せは特に限定されるわけではない。ジアミンとして2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4'-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンおよび2,2’-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、2,2’-ジメチルベンジジンからなる群から選択される1種以上と、酸二無水物として4,4’-オキシジフタル酸二無水物および3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方との組み合わせを選択し、更に金属酸化物粒子を適切な種類と配合量で組み合わせることが好ましい。当該構成(組み合わせ)により、本発明の一実施形態の無電解銅めっき層との密着性を向上することができ、特に無電解銅めっき層形成後の初期状態を大きく改善することができ、好ましい。尚、高温時の弾性率、ガラス転移温度、線膨張係数等をバランスよく発現させるために、上述した好ましいジアミンおよび酸二無水物と共に、その他のジアミンおよび酸二無水物を併用することも好ましく実施可能である。
【0038】
層Aのポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、前記ジアミンと酸二無水物とを有機溶媒中で実質的に等モルまたは略等モルになるように混合し、これらを反応させることにより得られる。使用する有機溶媒は、ポリアミド酸を溶解できる溶媒であればいかなるものも用いることができる。前記有機溶媒としては、アミド系溶媒すなわちN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドの少なくとも一方が特に好ましく用いられ得る。ポリアミド酸の固形分濃度は特に限定されず、5重量%~35重量%の範囲内であればポリイミドとした際に十分な機械強度を有するポリアミド酸が得られる。
【0039】
原料であるジアミンおよび酸二無水物の添加順序についても特に限定されない。原料であるジアミンおよび酸二無水物の化学構造だけでなく、これらの添加順序を制御することによっても、得られるポリイミドの特性を制御することが可能である。
【0040】
また、原料として1,4-ジアミノベンゼンおよびピロメリット酸二無水物を用いる場合、両者が結合して得られるポリイミド構造はデスミア液に対する耐久性が低いため、1,4-ジアミノベンゼンおよびピロメリット酸二無水物の添加順序を調整して両者が直接結合した構造を形成しないようにすることが好ましい。
【0041】
層Aは、樹脂成分として、上述したポリイミド樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。層Aに含まれる樹脂成分中のポリイミド樹脂の含有比率は、多いことが好ましい。例えば、層Aに含まれている樹脂成分100重量%中、ポリイミド樹脂が50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが更に好ましく、95重量%以上であることがより特に好ましい。層Aに含まれている樹脂成分100重量%中、ポリイミド樹脂が100重量%であることが最も好ましく、換言すれば、層Aは、樹脂成分としてポリイミド樹脂のみを含むことが最も好ましい。
【0042】
<層Aのポリイミド樹脂の溶解性>
層Aのポリイミド樹脂として有機溶媒に可溶な溶解性ポリイミドを用い本発明の一実施形態の積層体Lを製造することは可能である。具体的には溶解性ポリイミドを有機溶媒に溶解し、得られた溶解液にさらにフュームド金属酸化物を分散させて得られた分散液を銅箔に塗布し、次いで層Aを乾燥し、本発明の一実施形態の積層体Lをえることができる。しかし、本発明により得られるプリント配線板の製造工程および実装工程における有機溶剤が用いられる工程にて樹脂溶解等の不具合が起こらないように層Aで用いるポリイミド樹脂は非溶解性であることが好ましい。非溶解性とは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶媒に対し、1重量%未満の溶解性であることを意味する。
【0043】
以上より、層Aに用いるポリイミド樹脂の溶媒は溶解性でも非溶解性でも本発明を達成することが可能であるが、好ましくは非溶解性であり、この場合、ポリイミド樹脂の前駆体の状態で銅箔に塗布・乾燥・イミド化させることで本発明の積層体Lを得ることができ、これにより溶媒に対する耐久性に優れる積層体L、更には積層体Lを用いたプリント配線板を得ることができ、好ましく実施される。
【0044】
ここで非溶解性について説明する。一般的に工業用途で使われる有機溶剤に対し溶解しないことを指している。具体的には10重量%以上溶解しないことが好ましく、更に好ましくは5重量%以上溶解しないことである。有機溶媒の種類としてはメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン、クレゾール、ベンゼン等の芳香族系溶媒、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができるがこれらに限定されるわけではない。
【0045】
〔金属酸化物粒子〕
<層Aの金属酸化物粒子>
本発明の金属酸化物粒子はシリカ、アルミナ、チタニア、銅、鉄、ジルコニア、マグネシウム、バリウム等を主成分とする金属酸化物粒子である。これら金属酸化物粒子としては一次粒子が独立して存在する球状または不定形形状の金属酸化物粒子や、一次粒子が凝集した構造体が構造単位となっているフュームド金属酸化物が使用可能である。
【0046】
層Aの金属酸化物粒子はポリイミド樹脂とともに層Aを構成するが、層Aが無電解銅めっき層と強固に密着するためには金属酸化物粒子がポリイミド樹脂と強固に密着していること、金属酸化物粒子がアルカリ性環境下で生成する官能基の数が多いことが好ましい。これを満たすためには金属酸化物粒子が構造的に複雑な形状していることが好ましく、これにより耐熱性樹脂との相互作用が大きくなり、耐熱性樹脂と強固に密着することが可能となり、また比表面積が大きくなることにより、生成する官能基の数が増える。フュームド金属酸化物はこれらを満たし好ましく使用可能である。
【0047】
本発明の一実施形態で用いるフュームド金属酸化物は、気相合成により得られる金属酸化物粒子であることが好ましい。気相合成により得られる場合、その製法上の特徴から、得られるフュームド金属酸化物は、一次粒子が凝集した構造体が構造単位となっているという特徴がある。換言すれば、フュームド金属酸化物は、一次粒子が凝集した構造体が構造単位となっている(例えば、ブドウの房のような凝集構造を有する)ことが好ましい。フュームド金属酸化物はポリイミド樹脂と混合され本発明の一実施形態の層Aを構成する。本発明者らの種々検討の結果、層Aは、(i)空隙が低い状態でフュームド金属酸化物の構造単位がポリイミド樹脂中に埋没しており、(ii)当該構造単位が層Aの表面および/または表面近傍からバルク方向にかけて存在し、かつ(iii)当該構造単位が層A中に均等に存在および分散している状態、であることが好ましく、そのような状態が本発明の一実施形態の目的である密着性発現に有効であると考えている。
【0048】
ポリイミド樹脂とフュームド金属酸化物との配合において、フュームド金属酸化物の配合比率を高くすると層A中の空隙率があがる傾向がある。層A中の空隙率が高すぎない場合、ポリイミド樹脂とフュームド金属酸化物との結着力が低下することが無く、層A自体の強度が良好となる傾向を示し、結果として無電解銅めっきとの密着性が良好となる傾向がある。そのため、ポリイミド樹脂とフュームド金属酸化物と配合において、フュームド金属酸化物の配合比率は、高すぎないことが好ましい。ポリイミド樹脂とフュームド金属酸化物と配合において、逆にフュームド金属酸化物の配合比率が低くなると空隙率は低くなる傾向がある。層A中の空隙率が低すぎない場合、無電解銅めっきとの十分な密着性を発現し易くなり好ましい。これはフュームド金属酸化物の比率が低すぎないために、「フュームド金属酸化物」-「銅イオン」-「ポリイミド樹脂」の3成分に由来する化合物の生成量が充分量となることが理由と考えている。なお、本発明は、かかる推測に限定されるものではない。
【0049】
以上より、良好な密着性発現の為にはポリイミド樹脂とフュームド金属酸化物との配合比率を適切な範囲に制御することが好ましい。一方、フュームド金属酸化物には一次粒子径、一次粒子が凝集した構造体の構造および表面処理種が異なる各種グレードがあり、これらも影響した適切な配合比率が存在すると考えている。
【0050】
<フュームド金属酸化物の一次粒子径および比表面積>
無電解銅めっきプロセスの薬液により、表面近傍のフュームド金属酸化物は一部が溶解するが、溶解しても層Aの表面粗度が大きくなり過ぎないことが好ましい。その為に、フュームド金属酸化物の一次粒子径は小さいことが好ましく、具体的に、好ましくは5ナノメートル以上1,000ナノメートル以下、より好ましくは5ナノメートル以上100ナノメートル以下、更に好ましくは5ナノメートル以上50ナノメートル以下、更に好ましくは10ナノメートル以上20ナノメートル以下である。また、フュームド金属酸化物の比表面積も一次粒子径を表現する物性値であり、一次粒子径が大きいほど比表面積は小さくなる。フュームド金属酸化物の比表面積は30平方メートル/グラム以上400平方メートル/グラム以下であることが好ましく、より好ましくは100平方メートル/グラム以上250平方メートル/グラム以下である。
【0051】
<フュームド金属酸化物の見掛比重>
フュームド金属酸化物は一次粒子径が凝集した構造体であり、フュームド金属酸化物の構造の状態を表す指標として見掛比重を用いることができる。フュームド金属酸化物の見掛比重が小さければ、フュームド金属酸化物の構造体は嵩張った構造を有しており、空隙が大きいことを表す。逆に、フュームド金属酸化物の見掛比重が大きければ、フュームド金属酸化物の構造体は嵩張りの程度が低い構造を有しており、空隙は小さいことを表す。
【0052】
フュームド金属酸化物の一次粒子径が凝集した構造体が有する空隙を耐熱性樹脂成分で満たすことにより、空隙率の小さい層Aを作製することができる。フュームド金属酸化物の見掛比重が小さいなるほど、フュームド金属酸化物の構造体の空隙が多く、多くのポリイミド樹脂成分を使用することで当該空隙を満たすことが可能となる。フュームド金属酸化物の見掛比重が大きくなるほど、少量の耐熱性樹脂成分でもフュームド金属酸化物の構造体の空隙を満たすことが可能となる。逆に表現すると、ある一定量のポリイミド樹脂にフュームド金属酸化物を配合して空隙率の小さい層Aを作製するにあたり、(i)見掛比重が小さいフュームド金属酸化物の場合、フュームド金属酸化物の配合量の上限は低くなり、逆に(ii)見掛比重が大きいフュームド金属酸化物の場合、多くのフュームド金属酸化物を配合することができ、すなわちフュームド金属酸化物の配合量の上限は高くなる。先にも記載したがフュームド金属酸化物の配合量が多すぎない場合、層A中に過剰な空隙が発生する虞がない。その結果、ポリイミド樹脂とフュームド金属酸化物との結着力が低下することが無く、層A自体の強度が良好となる傾向を示し、結果として無電解銅めっきとの密着性も良好となる傾向、および層Aと無電解銅めっき層との密着性も良好となる傾向がある。そのため、ポリイミド樹脂とフュームド金属酸化物と配合において、フュームド金属酸化物の配合比率は、高すぎないことが好ましい。逆にフュームド金属酸化物の比率が低すぎない場合、無電解銅めっきとの十分な密着性を発現し易い。つまり、ポリイミド樹脂とフュームド金属酸化物と配合において、フュームド金属酸化物を配合量の上限付近で配合することが、良好な密着性の発現に効果的である。
【0053】
空隙率の小さい層Aを作るための、ある一定量のポリイミド樹脂に対するフュームド金属酸化物の配合量の上限は、フュームド金属酸化物の見掛比重および表面処理種により変わる。つまり、フュームド金属酸化物の見掛比重および表面処理種に応じて、ある一定量のポリイミド樹脂に対するフュームド金属酸化物の配合量を調節することにより、密着性をさらに向上させることができる。本発明の一実施形態において、フュームド金属酸化物の見掛比重は20グラム/リットル以上250グラム/リットル以下であることが好ましく、20グラム/リットル以上220グラム/リットル以下であることがより好ましい。また、フュームド金属酸化物の見掛比重が大きいほど、フュームド金属酸化物の配合量の上限があがり、密着性もより改善される傾向がある。その為、フュームド金属酸化物の見掛比重が50グラム/リットルより大きく250グラム/リットル以下であることがより好ましく、60グラム/リットル以上250グラム/リットル以下であることがより好ましく、70グラム/リットル以上250グラム/リットル以下であることが更に好ましく、70グラム/リットル以上220グラム/リットル以下であることがより更に好ましい。尚、フュームド金属酸化物の見掛比重は、フュームド金属酸化物に対して機械的にせん断等の応力を加えることによるフュームド金属酸化物の構造改質により、変化させることも可能である。
【0054】
フュームド金属酸化物に対し、各種表面処理が可能である。フュームド金属酸化物の表面状態としてシラノール(未処理)、ジメチルシリル、オクチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アミノアルキルシリル、メタクリルシリル等があり、いずれも工業的に入手可能である。フュームド金属酸化物の表面処理種とポリイミド樹脂成分の極性とが近い場合、フュームド金属酸化物の配合量の上限は高くなる傾向がある。また、フュームド金属酸化物が表面未処理の場合、無電解銅めっきプロセス中のアルカリ性薬液との濡れ性が良すぎる為、フュームド金属酸化物の溶解量が多くなり、層Aの表面粗度が大きくなる傾向がある。それ故、フュームド金属酸化物の表面は、適度な疎水性処理がなされているのが好ましい。尚、フュームド金属酸化物の見掛比重はISO787/XIにより測定することが可能である。
【0055】
<フュームド金属酸化物の具体例>
以下、本発明の一実施形態において好ましく使用可能なフュームド金属酸化物について
具体例を示すが、これらに限らない。見掛比重を含む各種特性の要件を満たすフュームド金属酸化物が、本発明の一実施形態においてより好適に使用可能である。一次粒子径、比表面積、表面処理種、見掛比重および金属酸化物種の異なる各種グレードのフュームド金属酸化物を日本アエロジル社、旭化成ワッカーシリコーン社およびキャボット社から入手可能であり、好ましく使用可能である。以下日本アエロジル社製品のフュームド金属酸化物を例として具体的に説明する。見掛比重以外は略同等であるアエロジルR972、R972CF、R972Vなどを好ましく使用可能であり、この中で見掛比重の高いR972(50グラム/リットル)をより好ましく使用可能である。同様に、見掛比重以外は同等であるアエロジルR974、R9200、VP RS920などを好ましく使用可能であり、この中で見掛比重の高いアエロジルR9200(200グラム/リットル)およびアエロジルVP RS920(80グラム/リットル以上120グラム/リットル以下)をより好ましく使用可能である。また、これら以外にも本発明の一実施形態の好ましい物性の一つである見掛比重が比較的低く、70グラム/リットル以下の日本アエロジル社製フュームド金属酸化物として、アエロジルNX130、RY200S、R976、NAX50、NX90G、NX90S、RX200、RX300、R812、R812S等を好ましく使用可能である。また、見掛比重が比較的高く、70グラム/リットル以上の日本アエロジル社製フュームド金属酸化物として、アエロジル200V、AEROIDE TiO2 P90、AEROIDE TiO2 NKT90、OX50、RY50、RY51、AEROIDE TiO2 P25、R8200、RM50、RX50、AEROIDE TiO2 T805、R7200等も好ましく使用可能である。尚、アエロジルVP RS920は、2021年11月以降、「アエロジルE9200」という名称で販売されている。
【0056】
また、「アエロジル」または「AEROSIL」は、エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの登録商標である。また、フュームド金属酸化物としては、気相合成で合成されたものであり、それにより一次粒子径が凝集した構造体を有するフュームド金属酸化物が、好ましく使用可能である。
【0057】
これらのフュームド金属酸化物の中でも、アエロジルR972、972V、NX130、R9200、VP RS920、R974,R976、R8200等のフュームドシリカが、アルカリ性環境での溶解により形成される層Aの表面形状が良好で、表面粗度も適切な範囲となる点で好ましい。
【0058】
フュームド金属化合物以外に球状または不定形形状の金属酸化物粒子も使用可能であり、具体例としては、アドマテックス株式会社製アドマナノ、アドマファイン、アドマフューズの各種製品等を好ましく使用可能である。
【0059】
<金属酸化物粒子の配合部数>
層Aの耐熱性樹脂100重量部に対し、金属酸化物粒子の配合部数が10重量部以上130重量部以下であることが好ましい。金属酸化物粒子がフュームド金属酸化物の場合、上述の通り、層Aの耐熱性樹脂に対するフュームド金属酸化物の好ましい配合部数はフュームド金属酸化物の見掛比重によりある程度調整できるが、フュームド金属酸化物の表面処理の影響等もあり、明確なことは言えない。ここでは指標として、フュームド金属酸化物の好ましい配合部数につき記載する。
【0060】
フュームド金属酸化物の見掛比重が20グラム/リットル以上70グラム/リットル以下の場合のフュームド金属酸化物の配合部数は、耐熱性樹脂100重量部に対し、15重量部以上80重量部以下が好ましく、より好ましくは20重量部以上60重量部以下である。フュームド金属酸化物の見掛比重が70グラム/リットル以上250グラム/リットル以下の場合のフュームド金属酸化物の配合部数は10重量部以上130重量部以下が好ましく、より好ましくは15重量部以上120重量部以下、更に好ましくは20重量部以上100重量部以下、特に好ましくは30重量部以上90重量部以下である。
【0061】
上述の通り、フュームド金属酸化物の見掛比重により好ましい配合部数は変わり、当該見掛比重が大きいフュームド金属酸化物であるほど、その配合量を多くすることが可能となり、好ましい配合量も多くなる傾向がある。ポリイミド樹脂の前駆体100重量部に対しフュームド金属酸化物を上述の範囲で配合することにより、密着強度をより良好に発現させることが可能となり、特に無電解銅めっき膜形成後の初期状態においてより強固に密着させることが可能となる。尚、一次粒子径、比表面積、表面処理種、見掛比重、金属酸化物種等の異なる複数種類のフュームド金属酸化物を混合して(組み合わせて)用いることも可能である。
【0062】
<ポリイミド樹脂と金属酸化物粒子の混合方法、層Aの作製方法>
層Aの製造方法は、ポリイミド樹脂の特徴に応じて適切な方法を選択することができる。
i)層Aのポリイミド樹脂が溶媒可溶性を示す場合、金属酸化物粒子を有機溶媒に分散させ、同分散液をポリイミド樹脂の溶液に添加した層A分散液を得たのち、銅箔上に層A分散液を塗工し、乾燥し、層Aと銅箔からなる積層体Lを得る方法、
ii)層Aのポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸の溶液を金属酸化物粒子と混合・分散せしめ、次いで銅箔に塗布・加熱することでポリアミド酸をポリイミド樹脂にイミド化し、層Aと銅箔からなる積層体Lを得る方法、
iii)ポリイミド樹脂が熱可塑性を示す場合、金属酸化物粒子を耐熱性樹脂の融点以上の温度で混錬し、層A樹脂バルクを得たのち、加熱・加圧しながら、または溶融押出機を用いる方法でフィルム状に成型し、銅箔上に層Aを形成し、層Aと銅箔からなる積層体Lを得る方法があげられる。これら方法の中でii)の方法であれば非溶解性ポリイミド樹脂を用いることができるため好ましく実施可能である。
【0063】
高密着強度を発現させるために金属酸化物粒子は均一に分散していることが好ましく、特に金属酸化物粒子にフュームド金属酸化物を用いる場合は、一次粒子が凝集した構造体の構造単位まで分散させることが好ましく、用いる耐熱性樹脂、金属酸化物粒子の種類・性状に合わせ適切な方法を選択することが好ましい。
【0064】
i)の方法の場合、分散の方法はディスパー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ビーズミル、自転公転ミキサー、ロール、ニーダー、高圧分散機、超音波、レゾルバ、液-液せん断方式分散機クレアミックス等が挙げられる。iii)の方法の場合、スクリュ押出機、溶融混錬機等の装置を挙げることできる。
【0065】
尚、本発明の一実施形態の効果が得られる限り、フュームド金属酸化物を前記構造単位まで分散しなくても構わない。尚、フュームド金属酸化物を前記構造単位まで分散できている場合、層A中でフュームド金属酸化物が固まって存在することがなくなり、その場合、層Aの表面粗度が小さく、本発明の一実施形態の狙いである微細配線形成性に有利となり好ましい。また、フュームド金属酸化物の構造単位をさらに小さくする条件で分散および粉砕することも可能である。有機溶媒はポリアミド酸の重合に用いる溶媒などを用いることができアミド系溶媒すなわちN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが好ましく用いられ得るが、これに限定されない。
【0066】
本発明の一実施形態に係る積層体Lは、ポリイミド樹脂および金属酸化物粒子を含む層Aが、銅箔上に形成されていることを特徴とする。層Aを構成するポリイミド樹脂および金属酸化物粒子を含む溶液または層Aを構成するポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸および金属酸化物粒子を含む溶液を銅箔上に塗布・加熱することで本発明に係る積層体Lを得ることが可能である。塗布する溶液がポリアミド酸および金属酸化物粒子を含む溶液の場合、ポリアミド酸をポリイミド樹脂にイミド化することも好ましく実施可能であり、イミド化反応を促進するために適切な温度と時間で加熱することが好ましい。即ち、温度は200℃から450℃の温度範囲、時間は1秒から10分の範囲であることが好ましい。塗布する溶液がポリイミドおよび金属酸化物粒子を含む溶液の場合、溶媒を乾燥させることができる温度、時間であれば特に制限はなく、溶媒種、乾燥設備に合わせて適宜設定可能である。
【0067】
層Aの厚みは特に制約はなく、厚みによらず本発明の効果を発揮する。近年のプリント配線板の薄型化要求からは10ミクロン以下が好ましく、更に好ましくは5ミクロン以下、より好ましくは2ミクロン以下である。また、工業的に安定的に製造する為に厚みは0.1ミクロン以上が好ましく、更に好ましくは0.5ミクロン以上、より好ましくは1ミクロン以上である。
【0068】
本発明の一実施形態に係る積層体Lは、ポリイミド樹脂および金属酸化物粒子を含む層Aが、銅箔上に形成されていることを特徴とする。銅箔は特に限定されることなく、工業的に入手可能な電解銅箔、圧延銅箔を使用可能である。微細な配線を形成する為には、銅箔の表面の内、層Aを形成する面の表面粗度はできるだけ小さいことが好ましく、表面粗度Raは400ミクロン以下が好ましく、更に好ましくは200ミクロン以下、特に好ましくは100ミクロン以下である。また、銅箔の厚みも特に限定されないが、本発明のプリント配線の製造方法における、銅箔を除去する工程を生産性よく行う視点、工業的な入手のしやすさから18ミクロン程度以下が好ましく、9ミクロン厚みの銅箔も好ましく使用可能である。また、銅箔厚みが薄くなりすぎるとハンドリング性が劣るという視点から5ミクロン以上が好ましい。5ミクロンよりも薄い銅箔を本発明の積層体Lに用いる場合は、キャリア付き銅箔も好ましく使用可能であり、この場合、3ミクロン厚み以下の極薄銅箔を使用可能である。
本発明の一実施形態に係る積層体Lの層A面に保護フィルムを貼り合せることも好ましく実施可能である。
【0069】
<プリント配線板の製造方法>
本発明のプリント配線板の製造方法は、ポリイミド樹脂と金属酸化物粒子を含む層Aが銅箔上に直接形成された積層体を用いたプリント配線板の製造方法であり、
工程(1):前記積層体Lの層A側の面と、回路が形成された回路基板Bの回路形成面を対向させ、その間に耐熱性接着材料Cが挿入された順序で積層し、加熱圧着する工程(積層体Mを製造する工程)、
工程(2):工程(1)で得られたもの(積層体M)の銅箔を除去し、層Aを露出させる工程(積層体M’を製造する工程)
工程(3):工程(2)で露出させた層A上に無電解銅めっき層Dを形成する工程(積層体Nを製造する工程)を含み、層Aのポリイミド樹脂の線膨張係数が、30ppm以上100ppm以下であることを特徴とする。
【0070】
回路が形成された回路基板Bは、ガラス基材と耐熱性樹脂からなる絶縁基材の表面に銅からなる回路が形成された硬質回路基板や、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム等の耐熱性絶縁基材の表面に銅からなる回路が形成されたフレキシブル回路基板を例示することができる。回路基板Bの回路形成面と本発明に係る積層体Lの層A形成面を対向させ、その間に耐熱性接着材料Cを挿入した順に積層し、加熱圧着する。耐熱性接着材料Cは回路基板Bの回路を隙間なく埋め込むこと、回路基板Bおよび本発明に係る層Aを良好に密着することが必要であり、これを満たせば特に制約はない。例えば、ガラスクロス-エポキシ樹脂プリプレグ、ボンディングシートを例示することができ、好ましく使用可能である。また、加熱圧着条件は、耐熱性接着材料Cの特性に合わせた条件を選択することが好ましい。熱プレス装置、真空熱プレス装置、真空ラミネータ等の加熱圧着装置で積層することが好ましい。また、耐熱性接着材料Cが熱硬化性を示す場合、硬化反応の進行を前記の熱プレス装置、真空熱プレス装置、真空ラミネータ等の装置で加熱圧着し、その状態を維持し熱硬化反応させる方法、または熱プレス、真空熱プレス、真空ラミネータ等の装置で加熱圧着し、回路基板Bの回路を埋め込んだ状態、即ち仮圧着した状態とし、次いで加熱圧着を開放し、別の加熱炉、または別の加熱圧着装置で熱硬化反応させる方法を好ましく実施可能である。熱プレス装置、真空熱プレス装置を用いる場合、プレス装置の熱板間に、複数の積層対象物(ワーク)を挿入することが可能であり、同時に複数のワークの積層・加熱圧着することが可能である。従い、熱硬化反応に時間がかかる場合にも生産性よく、積層・加熱圧着が実施可能である。一方、真空ラミネータを用いる場合、真空ラミネータは一組の積層処理物しか、積層できない為、比較的短い時間で積層・仮圧着をし、熱硬化反応は別の加熱炉、または別の加熱圧着装置で行うことが好ましく実施可能である。
【0071】
工程(1)で得られたもの(積層体M)の銅箔を除去する方法は、エッチングが好ましく実施可能である。塩化銅液、塩化第二鉄液、アルカリエッチング、酸/過酸化水素(過酸化水素)エッチングを好ましく使用可能であり、これらエッチング液で銅箔を除去することで本発明に係る層Aを露出させることができる(積層体M’:工程(2))。
【0072】
図2で示したように、必要に応じて、工程(2)と工程(3)の工程の間に、レーザー加工装置、メカニカルドリル、プラズマエッチング等の方法を用いて、ヴィアホール(VIA)またはスルーホールを形成(ホール形成)し、その後工程(3)を行うことで、層間の電気的な導通をとれるようにしてもよい。
【0073】
次いで、露出させた層Aの表面に無電解銅めっき層Dを形成し、積層体Nを製造する。本発明の一実施形態の無電解銅めっきは化学反応を利用した還元型の無電解めっきを好ましく適用可能である。プリント配線板用に広く使用される無電解銅めっきプロセスはめっき薬液メーカー各社の薬液プロセスを利用することができる。また、無電解銅めっきの前にデスミア処理を行うことも一般に行われる。デスミア処理は本来、スルーホール形成工程、およびレーザーヴィア形成工程で生じた銅の表面に生じたスミアを除去する目的で行われる。デスミア処理は、本発明の一実施形態の樹脂フィルムの表面にも化学的な変化を与え、好ましく使用可能である。デスミアプロセスおよび無電解銅めっきプロセスは、それぞれ、複数の薬液で被めっき物を順に処理して行われる。例えばデスミアプロセスは、膨潤を担う薬液、エッチングを担う薬液、および還元を担う薬液で構成される。また無電解銅めっきプロセスは、クリーニングおよびコンディショナーを担う薬液、ソフトエッチングを担う薬液、プレディップを担う薬液、触媒付与を担う薬液、活性化を担う薬液、および無電解銅めっきを担う薬液など、一連の各役割を担う各々の薬液で構成されている。これらの一連のプロセスとしてめっき薬液メーカー各社の薬液プロセスを利用することができる。例えば、アトテック社製の薬液、奥野製薬工業株式会社製アドカッパーIW、上村工業株式会社製スルカップPEA、ロームアンドハース電子材料株式会社製の薬液、メルテックス株式会社製の薬液等、各薬液およびプロセスを適用可能であり、適宜組み合わせることも可能である。これらの無電解銅めっきには微量のニッケル成分が添加されていることがあるが、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲でこれらの無電解銅めっきを使用可能である。尚、層Aに対して無電解めっきをする場合、層Aに対して直接無電解めっきを施してもよいし、前処理として層Aに対してアルカリ処理、デスミア処理等の前処理を施した後、前処理後の層Aに対して無電解めっきを施してもよい。アルカリ処理のアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液など、を一例として挙げることができる。
【0074】
<無電解銅めっき層D(層D)>
本発明において層Aの表面には無電解銅めっき層Dが形成される。無電解銅めっきにより得られる無電解銅めっき層(膜)は一般の銅箔と比較して厚みを薄くすることができる。前記無電解銅めっき層の厚さは、好ましくは0.01ミクロン~10.00ミクロン、より好ましくは0.05ミクロン~2.00ミクロン、更に好ましくは、0.10ミクロン~1.00ミクロンである。
プリント配線板を製造する際、厚み方向の導通を確保するためにヴィアホールまたはスルーホールが形成(ホール形成)され、ホール内のスミアを除去するデスミア処理が行われる。本発明の製造方法におけるホール形成およびデスミア処理は、次の3種類の工法(X,Y,Z)が考えられる。
(X);工程(1)、ホール形成、デスミア処理、工程(2)、工程(3)
(Y);工程(1)、工程(2)、ホール形成、デスミア処理、工程(3)
(Z);工程(1)、ホール形成、工程(2)、デスミア処理、工程(3)
どの工法もホール形成の後でデスミア処理がなされており、ホール内のスミアは除去できる。(X)はデスミア処理後に工程(2)を経る、即ち、デスミア処理時に銅箔が除去されていない、即ち層Aが露出しておらずデスミア処理がなされない工法である。この場合、(密着性発現メカニズム)で記載した層Aのアルカリ性環境での官能基生成が生じていない為、無電解銅めっきとの密着性は劣る傾向があるが、デスミア処理による表面形状の変化は小さく、表面粗度は小さくなる傾向があり、微細配線形成性には有利な傾向がある。また、(Y)、(Z)は工程(2)の後にデスミア処理を経る、即ち、デスミア処理時に銅箔が除去されており、層Aが露出しており、デスミア処理がなされる工法である。この場合、層Aのアルカリ性環境での官能基生成が生じており、無電解銅めっきとの密着性は優れる傾向があるが、デスミア処理による表面形状の変化は(X)よりも大きくなる傾向がある。本発明において工法(X)、(Y)、(Z)のいずれを選択するかは回路の幅、密着強度に応じて適宜選択するのが好ましい。
尚、ホール形成にはレーザー加工装置、メカニカルドリル、プラズマエッチング等の方法を好ましく使用可能である。
【0075】
工程(3)により、層Aの表面に無電解銅めっき層が形成されるが、その後の回路形成はサブトラクティブ法およびアディティブ法を好ましく使用可能である。特にアディティブ法を用いた場合、狭ピッチ回路形成が可能であり、好ましく実施可能である。さらに公知の方法で多層化処理、保護膜形成処理、および表面処理などを好ましく実施可能である。
【0076】
尚、狭ピッチ回路を形成する為には本発明の一実施形態の層Aの表面粗度は小さいことが好ましい。本発明の一実施形態において、無電解銅めっき層Dをエッチングにより除去することにより露出する層Aの表面粗度Raは200ナノメートル以下であることが好ましく、150ナノメートル以下であることがより好ましく、更に好ましくは100ナノメートル以下である。前記表面粗度は、ポリイミド前駆体に対する金属酸化物粒子の添加部数、金属酸化物粒子の種類(見掛け比重、表面処理など)、層Aのポリイミド樹脂の化学構造、デスミア条件、無電解銅めっき層の形成処理の条件などを変更することにより、調節できる。
【0077】
また、本発明においては、ニッケル、クロム等の金属層を介さずに無電解銅めっき層(層D)が直接絶縁層である層Aの表面に形成されているため、ニッケル、クロム等の金属成分を溶解・除去するための特殊なエッチング液を使用する必要はなく、銅を溶解・除去する一般的なエッチング液を使用することで回路形成ができ、プリント配線板を製造でき、エッチング性は良好である。尚、前記一般的なエッチング液はプリント配線板用途で広く使用されている、主に銅をエッチングするためのエッチング液を指し、具体的には、鉄(塩化第二鉄)、塩化第二銅(塩化第二鉄)、アルカリ性アンモニア(アルカリ性アンモニア)、硫酸過酸化水素(硫酸+過酸化水素)エッチング液、過硫酸アンモニウム、硫酸(クロム酸エッチング液)、過硫酸カリウムを例示することができる。
また、表面粗度Raを200ナノメートル以下の比較的小さな値とすることが可能である為、層A上の層Dも複雑な凹凸形状をしておらず、層Dをエッチング液により除去するにおいて、必要以上にエッチング条件を強くする(時間を長くする、温度上昇によるエッチング速度上昇、薬液濃度調整によるエッチング速度上昇等)必要がなく、従い、本発明の金属化樹脂フィルムは良好なエッチング性を有している。
また、ピール強度はプリント配線板用途で求められる信頼性の観点および微細配線を形成した際に回路剥離がなく、良好に回路形成するとの視点からはできるだけ高いことが好ましい。具体的には、4N/cm以上が好ましく、より好ましくは6N/cm以上、更に好ましくは9N/cm以上である。
【実施例0078】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明の一実施形態について更に具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0079】
<層Aのポリイミド樹脂の単層フィルムの作製>
合成例で得られたポリアミド酸溶液をアルミ箔に塗工し、当該ポリアミド酸溶液を120℃で360秒、200℃で60秒、350℃で200秒、および450℃で30秒、順次加熱し、イミド化を行った。次いでエッチング液を用いてアルミ箔の溶解および除去を行い、層Aのポリイミド樹脂の30ミクロン厚みの単層フィルムを得た。当該単層フィルムを用い、貯蔵弾性率、ガラス転移温度、線膨張係数の評価を行った。
【0080】
<層Aのポリイミド樹脂の貯蔵弾性率およびガラス転移温度の測定>
前記<層Aのポリイミド樹脂の単層フィルムの作製>の項で得られた単層フィルムを試料(サンプル)として、セイコー電子(株)社製のDMS6100を用いて貯蔵弾性率およびガラス転移温度の測定を行った。サンプルサイズは、幅9mmおよび長さ50mmとした。周波数は1、5および10Hzで、昇温速度3℃/minで20℃から400℃までの温度範囲で測定し、300℃の貯蔵弾性率の値を読み取った。ガラス転移温度(以下、「Tg」という)は貯蔵弾性率の変曲点の値によりもとめた。
【0081】
<線膨張係数の測定>
前記<層Aのポリイミド樹脂の単層フィルムの作製>の項で得られた単層フィルムを試料(サンプル)として、セイコー電子(株)社製TMA120Cを用いて行った。サンプルサイズは、幅3mmおよび長さ10mmとした。サンプルに対して、荷重3gで、10℃/分で10℃から400℃までサンプルの温度を一旦昇温させた後、サンプルの温度を10℃まで冷却し、更に10℃/分でサンプルの温度を昇温させて、2回目の昇温時の100℃から200℃までにおける熱膨張率から平均値として計算した。
【0082】
<耐溶剤性>
合成例のポリアミド酸溶液から得た層Aのポリイミド樹脂の単層フィルムを以下の有機溶媒に対する溶解性を評価した。いずれか一つでも10重量%以上の濃度で溶解する有機溶媒があった場合、溶解性があり×(悪)とし、10重量%以上溶解しない場合は非溶解性であり○(良)とした。尚、本発明のプリント配線板の製造方法により得たプリント配線板の耐溶剤性はこの評価結果に準じる。つまり、溶解性評価結果が○(良)の場合、プリント配線板の耐溶剤性は良好であり、逆に溶解性評価結果が×(悪)の場合、プリント配線板の耐溶剤性も悪いものと考える。
有機溶媒種;メタノール、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド
【0083】
<ピール強度>
本発明の一実施形態では、プリント配線板の表層にある層Aと無電解銅めっき層Dとが十分な密着性を発現することができる。これにより、回路形成工程で回路が剥離する等の信頼性低下の問題を回避することができ、信頼性の高いプリント配線板を得ることができる。以上を鑑み、密着性の評価のため、以下の手順でピール強度の測定を行った。
【0084】
(ピール強度測定用サンプル作製)
実施例ならびに比較例で得られた評価用両面積層板の片方の面の銅層に対しマスキングテープを用いたエッチング法で1mm幅の銅パターンを作製し、その裏面には全面に銅層がある状態の評価用パターンを作製した。次に示す手順でピール強度を測定した。
【0085】
パターンエッチング後、両面銅張積層板の水滴を拭き取り、マスキングテープを除去した後、直ちにピール強度を測定した。乾燥も高温の加熱もしない状態、つまり無電解めっき層の形成処理のみを行った直後の両面銅張積層板の密着性の評価として実施した。
【0086】
(ピール強度測定)
一つの両面銅張積層板に対し、前記6種類のピール強度測定を行った。ピール強度はクロスヘッドスピード50mm/分および剥離角度180°で剥離し、その荷重を測定した。
【0087】
<吸湿半田耐熱性>
実施例ならびに比較例で得られた評価用両面銅張積層板について、3.5cm角に切り出した。次いで、3.5cm角の評価用両面銅張積層板について、片面(便宜的にA面とする)は2.5cm角の銅箔層がサンプル中央に残るように、反対面(便宜的にB面とする)は銅箔層が全面に残るように、エッチング処理で余分な銅箔層を除去してサンプルを15個作製した。得られたサンプルを40℃、90%R.H.の加湿条件下で、96時間放置し、吸湿処理を行った。吸湿処理後、サンプルを5つずつ、260℃又は280℃又は300℃の半田浴に10秒間浸漬させた。つまり、一つの温度条件でサンプル5つを用いた。半田浸漬後のサンプルについて、B面の銅箔層をエッチングにより完全に除去し、銅箔が重なっていた部分の外観を観察した。外観に白化、膨れ、銅箔層の剥離のいずれかが確認された場合は外観に変化があると判定した。300℃の条件で5つのサンプル全てにおいて外観に変化が無い場合は○(良)、5つのサンプルのうちいずれか1つ以上において300℃の条件で外観に変化があるが、260℃では外観に変化が無い場合は△(合格)、5つのサンプルのうちいずれか1つ以上において260℃で外観に変化がある場合は×(悪)と評価した。
【0088】
<表面粗度Ra>
実施例ならびに比較例で得られた評価用両面銅張積層板の銅層をエッチングにより、溶解除去した。露出した樹脂フィルムの表面粗度(Ra)を走査型プローブ顕微鏡(SPM、Bruker AXS製 Dimmension Icon)を用いて、JIS C 0601-2001に準拠して測定した。
【0089】
<回路形成性>
実施例ならびに比較例で得られたプリント配線板の評価用回路パターンを観察することで回路形成性の評価を行った。作製した回路パターンの剥離率に応じ、回路形成性の評価を行い、以下の評価基準とした。
◎;剥離率0%~5%、〇;剥離率5%~10%、△;剥離率10%~30%、×;剥離率30%以上
【0090】
(合成例1;層Aのポリイミド樹脂前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)を322.3gおよび1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPE-Rと称することもある)を33.9g加えた。次いで、フラスコ内の溶液を、窒素雰囲気下で撹拌しながら、フラスコ内に3,3‘、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと称することもある)33.6gを添加し、フラスコ内の溶液を25℃で1時間撹拌した。0.51gのBPDAを9.7gのDMFに溶解させた溶液(以下、BPDA溶液(1)と称することもある)を別途調製した。BPDA溶液(1)を前記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加し、フラスコ内の反応溶液の撹拌を行った。反応溶液の粘度が1000poiseに達したところでBPDA溶液(1)の添加および反応溶液の撹拌をやめた。かかる操作により、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を得た。
【0091】
(合成例2;層Aのポリイミド樹脂前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)を320.9g、ODAを10.4gおよび信越化学工業株式会社製KF-8010を18.7g加えた。次いで、フラスコ内の溶液を、窒素雰囲気下で撹拌しながら、フラスコ内に4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(以下、BPADAと称することもある)を38.1g添加し、フラスコ内の溶液を25℃で1時間撹拌した。0.58gのBPADAを11.0gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し(以下、BPADA溶液と称することもある)た。BPADA溶液を前記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加し、フラスコ内の反応溶液の撹拌を行った。反応溶液の粘度が1000poiseに達したところでBPADA溶液の添加および反応溶液の撹拌をやめた。かかる操作により、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を得た。信越化学工業株式会社製KF-8010の化学構造式を一般式(1)に示す。
【0092】
【化1】
(合成例3;層Aのポリイミド樹脂前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)を321.3g、ODAを25.8gおよびp-PDAを4.6g、加えた。次いで、フラスコ内の溶液を、窒素雰囲気下で撹拌しながら、フラスコ内にPMDAを36.9g添加し、フラスコ内の溶液を25℃で1時間撹拌した。0.56gのPMDAを10.6gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し(以下、PMDA溶液と称することもある)た。PMDA溶液を前記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加し、フラスコ内の反応溶液の撹拌を行った。反応溶液の粘度が1000poiseに達したところでPMDA溶液の添加および反応溶液の撹拌をやめた。かかる操作により、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を得た。
【0093】
(調合例1;層A用の金属酸化物粒子の分散液)
日本アエロジル株式会社製アエロジルE9200を20gとDMF80gとを混合した。得られた混合物を、回転刃式ホモジナイザー(回転刃直径は20mm)にて回転数10,000rpmで5分間攪拌を行い金属酸化物粒子の分散液を得た。
【0094】
(調合例2;層A用の金属酸化物粒子の分散液)
日本アエロジル株式会社製アエロジルR9200を20gとDMF80gとを混合した。得られた混合物を、回転刃式ホモジナイザー(回転刃直径は20mm)にて回転数10,000rpmで5分間攪拌を行い金属酸化物粒子の分散液を得た。
【0095】
(調合例3;層A用の金属酸化物粒子の分散液)
日本アエロジル株式会社製アエロジルNX130を20gとDMF80gとを混合した。得られた混合物を、回転刃式ホモジナイザー(回転刃直径は20mm)にて回転数10,000rpmで5分間攪拌を行い金属酸化物粒子の分散液を得た。
【0096】
(実施例1)
合成例1のポリアミド酸溶液40.0gと調合例1の分散液17.0gとを混合し、得られた混合物に更にDMF40gおよびルチジン2.0gを混合し、層A分散液を得た。当該層A分散液を銅箔(JX金属株式会社製BHY-HA、厚み12ミクロン)の光沢面に最終の片面の層Aの厚みが4ミクロンとなるように塗布し、120℃×2分の条件で層A分散液の乾燥を行い、次いで450℃で12秒間加熱して層Aのポリアミド酸をイミド化させ、層A(耐熱性樹脂と金属酸化物粒子とを含む)/銅箔なる構成の積層体Lを得た。
【0097】
前記積層体Lの層A側の面と、両面に回路が形成されたガラスエポキシ基材の回路形成面を対向させ、その間にガラスエポキシプリプレグ(日立化成株式会社製GEA-67N、厚み0.15mm)を挿入する形で重ね合わせ、次いで真空プレス機を用い、圧力2MPa、真空度10kPa以下、圧力室温から180℃までの昇温時間約25分、180℃で1時間、室温迄の冷却時間約10分なる条件で積層、ガラスエポキシプリプレグの熱硬化反応を行い、両面に銅箔が露出した状態の積層体Mを得た。次いで、エッチング(塩酸/塩化鉄溶液)により、両面の銅箔を除去し、層Aを両面に露出させた。次いで、表1~2に示す条件でデスミア処理、無電解銅めっきを行い、両面の層Aの上に無電解銅めっき層を形成した積層体Nを得た。
【0098】
【0099】
【表2】
<評価用両面銅張積層板の作製>
次いで、積層体Nに対し、表3に示す条件で両面の無電解銅めっき層を給電層としたパネルめっきを行い、銅厚み30ミクロンの評価用両面銅張積層板を得、ピール強度、吸湿半田耐熱性、表面粗度Raの評価を行った。
【0100】
【表3】
<プリント配線板の作製>
層Aの上に無電解銅めっき層を形成した積層体Nに表4に示すセミアディティブプロセスにより30ミクロンピッチ(Line/Space=15ミクロン/15ミクロン)の回路形成を行い、プリント配線板を得た。組成および結果を表5~表6に示す。
【0101】
【0102】
(実施例2)
実施例1で用いた調合例1の分散液を調合例2の分散液に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。組成および結果を表5~表6に示す。
【0103】
(実施例3)
実施例1で用いた調合例1の分散液を調合例3の分散液に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。組成および結果を表5~表6に示す。
【0104】
(実施例4)
実施例1で用いた調合例1の分散液の量を8.5gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。組成および結果を表5~表6に示す。
【0105】
(実施例5)
実施例1で用いた調合例1の分散液の量を11.9gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。組成および結果を表5~表6に示す。
【0106】
(実施例6)
実施例1で用いた調合例1の分散液の量を28.9gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。組成および結果を表5~表6に示す。
【0107】
(実施例7)
実施例1で用いた調合例1の分散液の量を34.0gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。組成および結果を表5~表6に示す。
【0108】
(比較例1)
実施例1で用いた調合例1の分散液を用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。ピール強度、吸湿半田性は十分なものではなく、また、回路剥離が30%以上発生した。組成および結果を表5~表6に示す。
【0109】
(比較例2)
実施例1で用いた合成例1のポリアミド酸溶液を合成例2のポリアミド酸溶液に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。良好な高いピール強度を示した。しかし、層Aのポリイミド樹脂の300℃の貯蔵弾性率が<0.01GPaと低く、吸湿半田耐熱性も十分なものではなかった。また、耐溶剤性にも劣る結果であった。組成および結果を表5~表6に示す。
【0110】
(比較例3)
実施例1で用いた合成例1のポリアミド酸溶液を合成例3のポリアミド酸溶液に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、評価用両面銅張積層板、プリント配線板を得、同様の評価を行った。ピール強度、吸湿半田性は十分なものではなく、また、回路剥離が30%以上発生した。
【0111】
【0112】