IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

特開2024-156383情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156383
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H02J13/00 301J
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070797
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】垣内 峻
【テーマコード(参考)】
5G064
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064BA02
5G064BA07
5G064CB01
5G064CB06
5G064CB21
5G064DA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】視認性を向上させるユーザインターフェースを実現する情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】エネルギーマネジメントシステム1において、情報処理装置であるサーバ装置は、エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリア(事業所A~F)における、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得する取得部と、取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶する記憶処理部と、前記エリアに含まれる複数のエネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的又は3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における第1時点とそれより後の第2時点とのエネルギー関連値の差異を各オブジェクトの表示色で表現する画像を含む画面情報を、ネットワークを介して通信端末装置であるクライアント装置に送信する送信処理部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得する取得部と、
取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶する記憶処理部と、
前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における第1時点とそれより後の第2時点との前記エネルギー関連値の差異を各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信する送信処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記複数のオブジェクトとして、各エネルギー管理単位を表現する四角形または直方体が、第1方向およびそれと交差する第2方向に隣接して並べられる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記複数のオブジェクトとして、各エネルギー管理単位における容量を、第1方向の寸法および/または前記第1方向と交差する第2方向の寸法で表現する四角形または直方体が、前記第1方向および前記第2方向に並べられる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数のオブジェクトは、前記エリア内で、距離が近接しているまたは同じ建屋に備えられるエネルギー管理単位を表現するオブジェクトが近接するように並べられる、請求項2または請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画面情報は、前記第1時点および/または前記第2時点の変更を受け付ける変更受付部をさらに含む、請求項2または請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得し、
取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶させ、
前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における第1時点とそれより後の第2時点との前記エネルギー関連値の差異を各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信する、
情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得するステップ、
取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶させるステップ、
前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における第1時点とそれより後の第2時点との前記エネルギー関連値の差異を各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信するステップ、
を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、エネルギーマネジメントシステム(EMS)やグリーントランスフォーメーション(GX)システムに好適に用いられる情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、EMS、設備監視システム、保全システム、および他のサブシステムの、表示画面を並べた、統合ユーザインターフェースを開示している。
EMSの表示画面では、エネルギーマネジメントの対象エリアにおいてエネルギーを消費または供給する設備の斜視図と、各設備の消費電力量や発電量が表示される。
対象エリアの受電電力が基準値(例えば、電力会社との契約電力)を超えることが予想されたタイミングで、警告が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-36970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピークカットやピークシフトといったエネルギーマネジメントを促進したり、カーボンニュートラルの実現を促進したりするために、ユーザインターフェースに改善の余地がある。
【0005】
本発明の一態様は、視認性が向上されたユーザインターフェースを実現可能な情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得する取得部と、取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶する記憶処理部と、前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における第1時点とそれより後の第2時点との前記エネルギー関連値の差異を各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信する送信処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、視認性が向上されたユーザインターフェースを提供して、エネルギーマネジメント、カーボンニュートラルの実現、を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】製造事業者におけるEMSの全体像を説明する図である。
図2】サーバ装置(情報処理装置)とクライアント装置(通信端末装置)とを示すブロック図である。
図3】一つの事業所における電力供給の流れを説明する図である。
図4】一つの事業所において複数のエリアに点在するサブ変電所(トランス)を示す図である。
図5】画面情報に基づく通信端末装置における表示画面の例を示す図である。
図6】画面情報に基づく通信端末装置における表示画面の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の概要を説明する。
(1)情報処理装置は、エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得する取得部と、取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶する記憶処理部と、前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における第1時点とそれより後の第2時点との前記エネルギー関連値の差異を各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信する送信処理部と、を備える。
【0010】
ここで、「エネルギー関連値」は、消費および/または供給される時系列の電力値(単位:kW)であってもよいし、電力量(単位:kWh、MWhなど)であってもよいが、それらに限定はされず、グリーンハウスガス(例えば、CO2)の排出量および/または削減量が関連付けられた情報であってもよい。
「エネルギー管理単位」は、サブ変電所であってもよいし、変圧器(いわゆる、トランス)であってもよい。エネルギー管理単位は、複数の分電盤や複数のブレーカーを備えてもよい。分電盤に、複数の設備(電気負荷または発電源)が接続されてもよい。
「表示色」は、各オブジェクトの全体の表示色であってもよいし、各オブジェクトの一部の表示色であってもよいし、各オブジェクトに重畳されたまたは近接したグラフィックの表示色であってもよい。
情報処理装置は、画面情報を、外部からの要求に応じてまたはイベントとして、通信端末装置に送信してもよい。
【0011】
上記(1)の情報処理装置により、エリアにおける複数のエネルギー管理単位の第1時点と第2時点とのエネルギー関連値の差異を、通信端末装置において一目で把握できる。すなわち、通信端末装置で表示画面を切り替えることなくまたは切替を最小限に抑えつつ、複数のエネルギー管理単位の第1時点(例えば、過去の時点)と第2時点(例えば、現時点(数秒刻み、1分刻み、または数分刻みの時点)、または将来の時点)とのエネルギー関連値の差異を表示色から直感的に把握できる。
本発明者は、このようなユーザインターフェースが、エネルギーマネジメントの促進や、カーボンニュートラル実現の促進のために、効果的であることを見出した。
【0012】
例として、製造事業者の、工場におけるエネルギーマネジメントを以下に説明する。
工場は、コミュニティにおいて大電力を消費する。そのため、工場でエネルギー情報を考慮して生産を行うことで、コミュニティにおける電力需要の平滑化に貢献できる。
【0013】
受注生産品の受注を契機に、または販売計画に従って、製造事業者の生産管理部門は工場における生産計画をたてる。多くの場合、同一工場内で、多品種の製品が生産される。
エネルギー情報を考慮することなく、多種製品の生産計画をたて、製造実行システム(MES)を利用して生産を行うと、レシピや手順によっては、電力会社との契約電力を超える電力が消費される。
工場において、生産数量を確保しつつ、エネルギー情報に基づくピークカットやピークシフトを実現することが望まれる。
【0014】
例えば、バッテリーの製造工場では、バッテリーへの充電の工程で多くの電力量が必要とされる。
通常、所定値の電流で所定時間をかけてバッテリーへの充電が行なわれる。それに対し、所定値の半分の電流で、倍の時間をかけて充電を行うように生産計画を変更すれば、消費電力のピーク低減(ピークカット)を実現できる。
【0015】
上記(1)の構成によるユーザインターフェースでは、例えば、充電設備が接続されたトランス、電灯設備が接続されたトランス、空調設備が接続されたトランスの、第1時点と第2時点との電力差を一目で把握できる。そのため、契約電力を超えなかった過去の時点と比較し、現在のレシピや手順ではどこのトランスの電力消費が大きいか、などを特定して、充電レートを下げる、電灯や空調の出力レベルを下げるまたは運転を停止する、などの対策を施せる。
【0016】
工場の各建屋や各設備の電力需給を、折れ線グラフや棒グラフ(例えば、積み上げグラフ)で示す従来技術では、第1時点(例えば、前週の同じ曜日の同じ時点)と第2時点(例えば、現時点)との電力差を把握しにくい。
従来のEMSユーザインターフェースでは、一つのエネルギー管理単位の第1時点と第2時点との電力差を把握するために、画面の切替や、別途計算が求められた。エネルギー関連値は時々刻々と変化するため、画面を切り替えている間に、しかるべき対策を施す機会を逸する場合が生じる。
【0017】
従来技術に比較し、上記(1)の構成によるユーザインターフェースでは、複数のオブジェクトを並べた画像の表示色から、複数のエネルギー管理単位の第1時点と第2時点とのエネルギー関連値の差異を、画面を切り替えることなく直感的に把握できる。そのため、時期を逸することなくしかるべき対策を施すことができ、ピークカットなどのエネルギーマネジメントが促進される。本技術は、電力市場における電力取引にも有用である。
【0018】
(2)上記(1)の情報処理装置において、前記複数のオブジェクトとして、各エネルギー管理単位を表現する四角形または直方体が、第1方向およびそれと交差(例えば、直交)する第2方向に隣接して並べられてもよい。
【0019】
ここで、「四角形」や「直方体」は、コーナーが面取りされたりラウンド形状に丸められたりしてもよいし、同じサイズであってもよい。
上記(2)の構成によるユーザインターフェースでは、高い密度で複数のオブジェクト(板またはブロック)を配置できるため、通信端末装置の表示画面において、多数のエネルギー管理単位を一目で把握しやすい。本技術に比較し、第1方向(例えば、縦方向)のみに多数のエネルギー管理単位の状態を通信端末装置の表示画面に表示すると、一画面におさまらず、マウスをスクロールするなど、画面の切替が必要となる。そのため、画面を切り替えている間に、しかるべき対策を施す機会を逸する場合が生じる。本技術によれば、このような機会ロスを低減できる。
【0020】
(3)上記(1)の情報処理装置において、前記複数のオブジェクトとして、各エネルギー管理単位における容量を、第1方向の寸法および/または前記第1方向と交差(例えば、直交)する第2方向の寸法で表現する四角形または直方体が、前記第1方向および前記第2方向に並べられてもよい。
【0021】
ここで、「各エネルギー管理単位における容量」は、設備容量(単位:VA)であってもよいし、所定期間(例えば、1年間)の消費電力量または供給電力量であってもよい。
「四角形」や「直方体」は、コーナーが面取りされたりラウンド形状に丸められたりしてもよい。
上記(3)の構成によるユーザインターフェースでは、例えば各エネルギー管理単位の設備容量をオブジェクト(板またはブロック)のサイズで表現することで、各エネルギー管理単位が、システム全体に対してどの程度のインパクトを持つかを把握できる。大きい板またはブロックの表示色が変化した場合、システム全体に大きい影響を及ぼすエネルギー管理単位のエネルギー関連値が変化したと把握して、例えば充電設備の充電レートを下げる、電灯や空調を停止する、などの対策を施せる。小さい板またはブロックのみ、表示色が変化した場合、すぐに対策を施す代わりに、しばらく様子を見てもよい。
【0022】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの情報処理装置において、前記複数のオブジェクトは、前記エリア内で、距離が近接しているまたは同じ建屋に備えられるエネルギー管理単位を表現するオブジェクトが近接するように並べられてもよい。
【0023】
上記(4)の構成によるユーザインターフェースでは、エリア内における実際のエネルギー管理単位の位置と通信端末装置の表示画面上の位置とを直感的に対応付けることができる。そのため、表示画面を切り替えることなくまたは切替を最小限に抑えつつ、視認性をさらに向上できる。
【0024】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの情報処理装置において、前記画面情報は、前記第1時点および/または前記第2時点の変更を受け付ける変更受付部をさらに含んでもよい。
【0025】
変更受付部は、後述するように、スライダーバーやスライダーを含んでもよいが、その形態に限定はされず、数値の入力や選択を受け付けるものであってもよい。
上記(5)の構成によるユーザインターフェースでは、第1時点や第2時点を適宜変更することで、エネルギーマネジメントのために様々な分析を行うことができる。そのため、エネルギーマネジメント、カーボンニュートラルの実現をさらに促進できる。
【0026】
(6)情報処理方法は、エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得し、取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶させ、前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における第1時点とそれより後の第2時点との前記エネルギー関連値の差異を各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信する。
【0027】
(7)コンピュータプログラムは、コンピュータに、エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得するステップ、取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶させるステップ、前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における第1時点とそれより後の第2時点との前記エネルギー関連値の差異を各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信するステップ、を実行させる。
【0028】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。本発明は、以下に説明する実施形態に限定されない。
図1に示すように、製造事業者におけるエネルギーマネジメントシステム(EMS)1は、サーバ装置2を備える。サーバ装置2は、1台のサーバコンピュータでもよいが、それに限定されず、複数台のサーバコンピュータで、例えばクラウド・コンピューティングによって、構成して、クラウドサービスを提供してもよい。
【0029】
サーバ装置2は、事業所A~Fそれぞれから(すなわち、各エリアから)、複数のエネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得する。
図1の例では、事業所A,Cが、後述する電気負荷に加えて、発電設備(例えば、太陽電池)や電源(例えば、蓄電池などの蓄電設備)を備える。事業所A~Fは電力線で繋がれて、互いに電力を融通(例えば、電力託送)できてもよい。
【0030】
図2に示すように、サーバ装置2は、制御部20、記憶部21、および通信部22を備える。サーバ装置2には、ローカルエリアネットワークなどのネットワークNを介して、クライアント装置3や、図示しないPLC(Programmable Logic Controller)が接続される。サーバ装置2はWebサーバ機能を含み、各事業所から得た情報を、クライアント装置3からのアクセスに応じて、またはイベントとして(例えば、所定周期の到来時に)、提示する。
【0031】
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成することができ、内蔵するROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、サーバ装置2全体を制御する。制御部20は、記憶部22に記憶されているサーバプログラム2Pに基づく情報処理を実行する。サーバプログラム2PにはWebサーバプログラムが含まれ、制御部20は、クライアント装置3へのWebページの提供、Webサービスへのログインの受け付け等を実行する。
【0032】
記憶部21には、例えばハードディスクまたはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることができる。記憶部22には、制御部20の処理によって収集される情報、イベントログ等の情報が記憶される。
【0033】
通信部22は、例えば、Ethernet(登録商標)通信インタフェースを用い、ネットワークNを介した通信接続およびデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には、通信部21は、ネットワークNに対応したネットワークカードである。
【0034】
クライアント装置3は、デスクトップ型またはラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォンまたはタブレット型の通信端末であってもよい。クライアント装置3は、制御部30、記憶部31、通信部32、表示部33、および操作部34を備える。
【0035】
制御部30は、CPUを用いたプロセッサである。制御部30は、記憶部31に記憶されているWebブラウザプログラムに基づき、サーバ装置2により提供されるWebページを表示部33に表示させる。
【0036】
記憶部31には、例えばハードディスクまたはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部31には、Webブラウザプログラムを含む各種プログラムが記憶されている。
【0037】
通信部32には、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイス、基地局に接続する移動通信用の無線通信デバイス、またはアクセスポイントへの接続に対応する無線通信デバイスを用いることができる。制御部30は、通信部32により、ネットワークNを介してサーバ装置2との間で通信接続または情報の送受信が可能である。
【0038】
表示部33には、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを用いることができる。表示部33は、制御部30のWebブラウザプログラムに基づく処理により、サーバ装置2で提供されるWebページのイメージを表示する。
【0039】
操作部34は、制御部30との間で入出力が可能なキーボードおよびポインティングデバイス、若しくは音声入力部等のユーザインターフェースである。操作部34は、表示部33のタッチパネル、または筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部34は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
【0040】
図3に示すように、各事業所(図3では事業所A)には、電力系統200からの電力(例えば、6600V)を受ける受電室(受電点)に、複数のトランス(サブ変電所)が接続されている。トランスは、受電室からの電力を、それぞれに接続されている電気負荷(生産設備、動力設備、電灯設備)に適合した電圧(例えば、100V、200V、400V)に降圧する。各トランスには、1ないし複数の分電盤が接続されている。各分電盤に、1ないし複数の生産設備が接続されている。バッテリーの製造工場では、生産設備は、バッテリー充電設備、モーターを有するボールミルなどを含む。
【0041】
動力設備は、空調設備やエレベータなどの三相負荷を含む。電灯設備は、照明設備やコンセントなどの単相負荷を含む。電力を消費するこれら生産設備、動力設備、電灯設備に対する電力の向きは順方向である。電力を消費したり供給したりする蓄電設備における電力の向きは双方向であり、電力を供給する発電設備における電力の向きは逆方向である。
【0042】
受電室には図示しない電力メーターが備えられて、その事業所の電力デマンド値を計測する。また、それぞれの分電盤または設備に、図示しない電力計測用の装置が備えられて、それら計測装置による計測値が、図示しないPLCを介してサーバ装置2(図2参照)に送信される。
【0043】
図4に、事業所Bにおけるトランスの配置を黒丸で示す。事業所Bにおける、複数のエリアのうちのWEST AREAに着目すると、建屋1に、生産設備用のトランス1,2(Load 1,Load 2)と、空調設備用のトランス(aircon 1)と、電灯設備用のトランス(light 1)とが配置されている。建屋2に、生産設備用のトランス1(Load 1)と、空調設備用のトランス(aircon 1)と、電灯設備用のトランス(light 1)とが配置されている。建屋3に、生産設備用のトランス1(Load 1)と、空調設備用のトランス(aircon 1)と、電灯設備用のトランス(light 1)とが配置されている。
【0044】
充電設備、ボールミルなどの生産設備が接続されるトランスは、空調設備用のトランスや電灯設備用のトランスに比較して、大きな設備容量を有する。
【0045】
CENTRAL AREAおよびEAST AREAにも、同様に、それぞれの建屋1,2,3に黒丸で示すトランスが配置されている。
このように製造事業者の工場には、多数のトランス(サブ変電所)が、建屋またはキュービクルに配置される。
【0046】
エネルギーマネジメントの第一歩として、工場エリアの多数のトランスの状態(エネルギー関連値)を監視する。
クライアント装置3(図2参照)の表示部33の、第1方向(例えば、縦方向)のみに多数のトランスの状態を表示すると、一画面におさまらず、マウスをスクロールするなど、画面の切替が必要となる。画面を切り替えている間に、エネルギーマネジメントや電力取引のための、しかるべき対策を施す機会を逸する場合が生じる。
【0047】
そこで本実施形態では、クライアント装置3の表示部33に、図5に示すようなユーザインターフェースを表示させる。
このユーザインターフェースは、工場エリアに含まれる複数のトランスを表現する複数のオブジェクト40を、2次元的に並べた画像であって、各トランスにおける第1時点とそれより後の第2時点とのエネルギー関連値の差異を各オブジェクト40の表示色で表現する画像、を含む。
【0048】
より具体的には、複数のオブジェクト40として、各トランスを表現する同じサイズの四角形(板)が、第1方向(縦方向)およびそれと直交する第2方向(横方向)にほぼ隙間なく隣接して並べられている。
図4に示した工場エリアに対応するように、6列の板のうち、左2列の板はWEST AREAのトランスを表現し、中2列の板、右2列の板はCENTRAL AREA、EAST AREAのトランスをそれぞれ表現する。すなわち、距離が近接しているトランスを表現するオブジェクト40が近接するように、WEST、CENTRAL、EASTの列にオブジェクト40が配置されている。
【0049】
図5では、WEST AREAのトランスを表現する左2列の板に、第2時点(現時点)の電力値と、電力値の第1時点(過去の時点)と第2時点(現時点)との差異値とが示されている。中2列、右2列の板には、具体的な数値を省略してアスターリスクが示されているが、実際には左2列の板と同様に数値が表示される。
【0050】
それぞれのトランスの、電力値の第1時点と第2時点との差異は、板の表示色によっても表現されている。
例えば、エネルギー関連値の差異を、グラデーションを用いて、表示する。エネルギー関連値の差異に応じて、表示色の彩度(色の濃さ)を変更してもよいし、表示色の色相(色の様相)を変更してもよいし、彩度と色相の双方を変更してもよい。
【0051】
図5における左上の板は、WEST AREAの建屋1に配置された生産設備用のトランス1(W1 Load 1)の状態を表す。電力値の、過去の第1時点と現在の第2時点との差異はマイナスである(-126kW)ため、表示色はデフォルトのまま(例えば、緑色)である。差異がプラスであっても、閾値以下であれば、表示色はデフォルトのままにしてもよい。
【0052】
W1 Load 1の右隣の板は、WEST AREAの建屋1に配置された生産設備用のトランス2(W1 Load 2)の状態を表す。電力値の、過去の第1時点と現在の第2時点との差異が、閾値を大きく超えるプラスである(+100kW)ため、表示色がデフォルトから別の色(例えば、赤色)に変わっている。
【0053】
W1 Load 1のすぐ下の板は、WEST AREAの建屋2に配置された生産設備用のトランス1(W2 Load 1)の状態を表す。電力値の、過去の第1時点と現在の第2時点との差異が、閾値をやや超えるプラスである(+22kW)ため、表示色がデフォルトから別の色(例えば、橙色)に変わっている。
【0054】
それぞれの板の表示色は、サーバ装置2の記憶媒体に記憶される最新情報に基づいて、定期的に更新される。すなわち、サーバ装置2から定期的に、更新された画面情報がクライアント装置3に送信される。
【0055】
本実施形態のユーザインターフェースによれば、高い密度で複数のオブジェクト(板)40を配置できるため、クライアント装置3の表示部33において、多数のトランスの状態を、画面を切り替えることなく一目で視認できる。表示色の変化によって、各エネルギー管理単位におけるエネルギーの消費状態および/または供給状態を、直感的に把握できる。
また、距離が近接しているトランスを表現するオブジェクト40が近接するように配置されるため、エリア内の実際のトランスの位置とクライアント装置3の表示画面上の位置とを直感的に対応付けることができる。そのため、視認性がさらに向上されている。
【0056】
図6に、画面情報に基づくクライアント装置3における表示画面の別の例を示す。
本実施形態では、複数のオブジェクト50として、各トランスにおける容量(設備容量)を、第1方向(縦方向)の寸法および第2方向(横方向)の寸法で表現する四角形が、第1方向および第2方向に並べられる。言い換えれば、各トランスにおける容量に基づき、ツリーマップ形式でオブジェクト50が表示される。
【0057】
WEST AREAの建屋2に配置された空調設備用のトランス(W2 a1)は、表示色が赤色に変化しているが、設備容量がそれほど大きくないことが一目でわかる。同じくWEST AREAの建屋2に配置された、生産設備用のトランス(W2 Load 1)は、表示色がまだ橙色であるものの、設備容量が大きいため、エネルギーマネジメントに大きい影響を及ぼす可能性があることが一目でわかる。
【0058】
また、同じ建屋に備えられるトランスを表現するオブジェクト50が近接するように表示画面に並べられるため、エリア内の実際のトランスの位置とクライアント装置3の表示画面上の位置とを直感的に対応付けることができる。そのため、視認性がさらに向上されている。
【0059】
表示部33はさらに、スライダーバー61、スライダー62を有する変更受付部60を含む。スライダー62を、マウス等のポインティングデバイスを用いてスライダーバー61上で移動させることで、第1時点や第2時点を適宜変更することで、エネルギーマネジメントのために様々な分析を行うことができる。
【0060】
このような変更受付部は、図5に示したユーザインターフェースに設けられてもよい。
【0061】
本発明者は、上述した実施形態によるユーザインターフェースを、以下の考えに基づいて着想した。
エネルギーの需給管理のためには、多数の監視対象(サブ変電所など)を効率よく監視する必要がある。従来のEMSのユーザインターフェースは、豊富な経験をもつエネルギー管理者向けに設計されており、未経験者が使いこなすことは難しい。
【0062】
そこで本発明者は、未経験者でもすぐに使えるEMS用ユーザインターフェースの実現のために、異分野である株式取引に用いられている各種ツールを参考に、上述した実施形態を着想した。株式取引ツールのユーザインターフェースは、未経験者でも使いやすいように設計されており、さらに使い方の情報は、参考書やインターネットを通じて容易に入手できる。
他方、従来のEMSのユーザインターフェースは、EMSを実際に導入する前に未経験者が使用感をイメージすることは難しく、EMS導入後も未経験者が使いこなすには相当のトレーニングが求められる。
【0063】
未経験者でもすぐに使える、異分野で長い実績があるユーザインターフェースを参考に着想された、上述した実施形態は、エネルギー管理分野における人材不足という社会的課題の解決に貢献する。
【0064】
本発明は、さらに以下の(A)~(D)の実施形態を含んでもよい。
【0065】
(A)エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得する取得部と、
取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶する記憶処理部と、
前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における前記エネルギー関連値の、基準値と所定時点の計測値との差異を、各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信する送信処理部と、
を備える情報処理装置。
【0066】
(B)エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得し、
取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶させ、
前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における前記エネルギー関連値の、基準値と所定時点の計測値との差異を、各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信する、
情報処理方法。
【0067】
(C)コンピュータに、
エネルギー関連値を監視可能なエネルギー管理単位を複数含むエリアにおける、各エネルギー管理単位の情報を所定時間間隔で通信により取得するステップ、
取得した情報を、各エネルギー管理単位を識別する情報と対応付けて記憶媒体に記憶させるステップ、
前記エリアに含まれる複数の前記エネルギー管理単位を表現する複数のオブジェクトを2次元的または3次元的に並べた画像であって、各エネルギー管理単位における前記エネルギー関連値の、基準値と所定時点の計測値との差異を、各オブジェクトの表示色で表現する画像、を含む画面情報を通信端末装置に送信するステップ、
を実行させるコンピュータプログラム。
【0068】
(D)上記(A)~(C)のいずれかの構成において、前記画面情報は、前記所定時点の変更を受け付ける変更受付部をさらに含んでもよい。
【0069】
「基準値」は、第1時点のエネルギー関連値の上位概念であり、第1時点のエネルギー関連値をその意味に包含する。
【符号の説明】
【0070】
1 エネルギーマネジメントシステム
2 サーバ装置(情報処理装置)
2P サーバプログラム(取得部、記憶処理部、送信処理部)
3 クライアント装置(通信端末装置)
33 表示部
21 記憶部(記憶処理部)
22 通信部(取得部、送信処理部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6