(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156387
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】可変バンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/205 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H01P1/205 B
H01P1/205 D
H01P1/205 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070803
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】横野 聡
(72)【発明者】
【氏名】羽生田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】山下 和郎
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HA02
5J006HA15
5J006JA01
5J006LA05
5J006LA12
5J006LA25
5J006MA01
5J006NB01
5J006NE02
5J006NE13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中心周波数の広帯域な可変設定を容易にするとともに、中心周波数の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅の一定設定を可能にすることができる空洞共振器を用いた可変バンドパスフィルタを提供する。
【解決手段】。可変バンドパスフィルタFにおいて、空洞共振器R1~R5を備える複同調器では、固定長さを有する共振棒B1、B2又は共振コイルと、可変キャパシタンスを有する共振コンデンサC1、C2と、が並列接続される空洞共振器R1、R2が、導体壁に形成され「固定」位置を有するアイリスI1を介して、複数段に渡って互いに電磁界結合され可変キャパシタンスの可変範囲「のみ」に応じた、中心周波数f
0の可変範囲内において、通過帯域幅BWがほぼ一定である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複同調器と、前記複同調器のインピーダンスと入出力側のソースインピーダンスとの間の整合を図るインピーダンス整合回路と、を備える可変バンドパスフィルタであって、
前記複同調器では、固定長さを有する共振棒又は共振コイルと、可変キャパシタンスを有する共振コンデンサと、が並列接続される空洞共振器が、導体壁に形成され固定位置を有する結合窓を介して、複数段に渡って互いに電磁界結合され、
前記可変バンドパスフィルタでは、前記可変キャパシタンスの可変範囲のみに応じた、中心周波数の可変範囲内において、通過帯域幅がほぼ一定である
ことを特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記空洞共振器の電磁界結合係数は、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲内において、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数にほぼ逆比例する
ことを特徴とする、請求項1に記載の可変バンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記空洞共振器の磁界結合極性は、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲内において、同相結合であり、前記空洞共振器の電磁界結合係数は、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲外において、ヌル点を有する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の可変バンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記共振棒又は前記共振コイルの固定長さは、前記可変バンドパスフィルタの所定中心周波数に対応する所定中心波長のほぼ1/4倍であり、前記空洞共振器の磁界結合極性は、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲内において、同相結合である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の可変バンドパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広帯域な送受信回路等に用いる可変バンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
広帯域な送受信回路等に用いる可変バンドパスフィルタが、特許文献1等に開示されている。可変バンドパスフィルタは、複同調器と、複同調器のインピーダンスと入出力側のソースインピーダンスとの間の整合を図るインピーダンス整合回路と、を備える。
【0003】
複同調器では、固定長さを有する共振棒と、可変キャパシタンスを有する共振コンデンサと、が並列接続される空洞共振器が、隣接する共振棒の間に設置される誘電体結合棒又は金属結合棒の長さに応じて、複数段に渡って互いに電磁界結合される。
【0004】
可変バンドパスフィルタでは、中心周波数が可変に設定されるために、可変キャパシタンス、空洞共振器の電磁界結合係数及びインピーダンス整合回路が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、空洞共振器の電磁界結合係数及びインピーダンス整合回路の調整は、高い技量を要するうえに、空洞共振器の外導体の取り外しを伴う。よって、可変バンドパスフィルタの中心周波数の広帯域な可変設定は、作業性が悪く長時間を要するという課題がある。
【0007】
そして、UHF帯での地上デジタルTV放送等の可変バンドパスフィルタでは、中心周波数の広帯域な可変範囲内において、通過帯域幅がほぼ一定であることが望ましい。
【0008】
しかし、可変バンドパスフィルタの通過帯域幅の一定設定は、空洞共振器の電磁界結合係数の大きな変更を伴う。よって、可変バンドパスフィルタの通過帯域幅の一定設定は、可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲を狭くするという課題がある。
【0009】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、空洞共振器を用いる可変バンドパスフィルタにおいて、中心周波数の広帯域な可変設定を容易にするとともに、中心周波数の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅の一定設定を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、可変キャパシタンスの可変範囲「のみ」に応じた、中心周波数の可変範囲内において、通過帯域幅がほぼ一定となるように、導体壁に形成され「固定」位置を有する結合窓を介して、空洞共振器が互いに電磁界結合される。
【0011】
具体的には、本開示は、複同調器と、前記複同調器のインピーダンスと入出力側のソースインピーダンスとの間の整合を図るインピーダンス整合回路と、を備える可変バンドパスフィルタであって、前記複同調器では、固定長さを有する共振棒又は共振コイルと、可変キャパシタンスを有する共振コンデンサと、が並列接続される空洞共振器が、導体壁に形成され固定位置を有する結合窓を介して、複数段に渡って互いに電磁界結合され、前記可変バンドパスフィルタでは、前記可変キャパシタンスの可変範囲のみに応じた、中心周波数の可変範囲内において、通過帯域幅がほぼ一定であることを特徴とする可変バンドパスフィルタである。
【0012】
この構成によれば、中心周波数の広帯域な可変設定を容易にするとともに、中心周波数の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅の一定設定を可能にすることができる。
【0013】
また、本開示は、前記空洞共振器の電磁界結合係数は、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲内において、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数にほぼ逆比例することを特徴とする可変バンドパスフィルタである。
【0014】
この構成によれば、電磁界結合係数を中心周波数にほぼ逆比例させて、中心周波数の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅の一定設定を可能にすることができる。
【0015】
また、本開示は、前記空洞共振器の磁界結合極性は、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲内において、同相結合であり、前記空洞共振器の電磁界結合係数は、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲外において、ヌル点を有することを特徴とする可変バンドパスフィルタである。
【0016】
この構成によれば、磁界結合極性を同相結合にすることにより、電磁界結合係数にヌル点を形成して、電磁界結合係数を中心周波数にほぼ逆比例させることができる。
【0017】
また、本開示は、前記共振棒又は前記共振コイルの固定長さは、前記可変バンドパスフィルタの所定中心周波数に対応する所定中心波長のほぼ1/4倍であり、前記空洞共振器の磁界結合極性は、前記可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変範囲内において、同相結合であることを特徴とする可変バンドパスフィルタである。
【0018】
この構成によれば、共振棒又は共振コイルの固定長さをほぼλg/4とすることにより、磁界結合極性を同相結合にして、電磁界結合係数にヌル点を形成することができる。
【0019】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本開示は、空洞共振器を用いる可変バンドパスフィルタにおいて、中心周波数の広帯域な可変設定を容易にするとともに、中心周波数の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅の一定設定を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の可変バンドパスフィルタの構成を示す図である。
【
図2】本開示の可変バンドパスフィルタの構成を示す図である。
【
図3】本開示の可変バンドパスフィルタの原理を示す図である。
【
図4】本開示の可変バンドパスフィルタのアイリスの設計を示す図である。
【
図5】本開示の可変バンドパスフィルタのアイリスの設計を示す図である。
【
図6】本開示の可変バンドパスフィルタの共振コンデンサの調整を示す図である。
【
図7】本開示の可変バンドパスフィルタの通過特性を示す図である。
【
図8】本開示の可変バンドパスフィルタの結合係数を示す図である。
【
図9】本開示の可変バンドパスフィルタの結合係数を示す図である。
【
図10】本開示の可変バンドパスフィルタの整合回路の設計を示す図である。
【
図11】本開示の可変バンドパスフィルタの反射特性を示す図である。
【
図12】本開示の可変バンドパスフィルタの反射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0023】
(本開示の可変バンドパスフィルタの原理)
本開示の可変バンドパスフィルタの構成を
図1、2に示す。可変バンドパスフィルタFは、複同調器(後述の空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5を備える。)と、複同調器のインピーダンスと入出力側のソースインピーダンスとの間の整合を図るインピーダンス整合回路M1、M5と、入力側ポートPIと、出力側ポートPOと、を備える。
【0024】
図1では、複同調器では、固定長さを有する共振棒B1、B2、B3、B4、B5と、可変キャパシタンスを有する共振コンデンサC1、C2、C3、C4、C5と、が並列接続される空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5が、導体壁に形成され「固定」位置を有するアイリスI1、I2、I3、I4を介して、複数段に渡って互いに電磁界結合される。共振棒B1、B2、B3、B4、B5の一端は、空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5の外導体の底面に接地され、共振棒B1、B2、B3、B4、B5の他端は、空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5の空洞内の上部で開放される。共振コンデンサC1、C2、C3、C4、C5のネジの先端は、共振棒B1、B2、B3、B4、B5の他端に接近され、共振コンデンサC1、C2、C3、C4、C5のネジの支持部は、空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5の外導体の上面に接地される。
【0025】
図2では、複同調器では、固定長さを有する共振コイルH1、H2、H3、H4、H5と、可変キャパシタンスを有する共振コンデンサC1、C2、C3、C4、C5と、が並列接続される空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5が、導体壁に形成され「固定」位置を有するアイリスI1、I2、I3、I4を介して、複数段に渡って互いに電磁界結合される。共振コイルH1、H2、H3、H4、H5の一端は、空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5の外導体の底面に接地され、共振コイルH1、H2、H3、H4、H5の他端は、空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5の空洞内の上部で開放され、共振コイルH1、H2、H3、H4、H5において隣り合うコイルの巻き方向は逆巻きになっている。共振コンデンサC1、C2、C3、C4、C5のネジの先端は、共振コイルH1、H2、H3、H4、H5の他端に接近され、共振コンデンサC1、C2、C3、C4、C5のネジの支持部は、空洞共振器R1、R2、R3、R4、R5の外導体の上面に接地される。
【0026】
本開示の可変バンドパスフィルタの原理を
図3に示す。可変バンドパスフィルタFでは、共振コンデンサC1、C2(以下では2段)の可変キャパシタンスの可変範囲「のみ」に応じた、中心周波数f
0の可変範囲内において、通過帯域幅BWがほぼ一定である。
【0027】
よって、中心周波数f0の広帯域な可変設定を容易にするとともに、中心周波数f0の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅BWの一定設定を可能にすることができる。
【0028】
ここで、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数krは、空洞共振器R1、R2の正規化ローパスフィルタのgパラメータをg1、g2とすると、BW/f0√g1g2と表わされる。よって、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数krは、可変バンドパスフィルタFの通過帯域幅BWをほぼ一定とすると、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f0の可変範囲内において、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f0にほぼ逆比例する。
【0029】
よって、電磁界結合係数krを中心周波数f0にほぼ逆比例させて、中心周波数f0の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅BWの一定設定を可能にすることができる。
【0030】
図3の左欄では、可変バンドパスフィルタFの模式回路を示す。固定長さを有する(後述のλ
g/4を有する。)共振棒B1、B2と、可変キャパシタンスを有する共振コンデンサC1、C2と、が並列接続される空洞共振器R1、R2が、導体壁に形成され「固定」位置を有するアイリスI1を介して、複数段に渡って互いに電磁界結合される。
【0031】
図3の右欄では、可変バンドパスフィルタFの等価回路を示す。可変インダクタンスL
rを有する(中心周波数f
0に依存する。)共振インダクタと、可変キャパシタンスC
rを有する(中心周波数f
0に依存する。)共振コンデンサと、が並列接続される空洞共振器R1、R2が、後述の結合回路を介して、複数段に渡って互いに電磁界結合される。
【0032】
ここで、共振棒B1、B2の電圧分布は、空洞共振器R1、R2の空洞内の上部で開放される他端で最大となる。一方で、共振棒B1、B2の電流分布は、空洞共振器R1、R2の外導体の底面に接地される一端で最大となる。よって、空洞共振器R1、R2の空洞内の上部に近い高さに、アイリスI1が形成されるときには、空洞共振器R1、R2の間の電磁界結合として、電界結合が磁界結合と比べて強くなる。一方で、空洞共振器R1、R2の外導体の底面に近い高さに、アイリスI1が形成されるときには、空洞共振器R1、R2の間の電磁界結合として、磁界結合が電界結合と比べて強くなる。
【0033】
つまり、アイリスI1の固定位置を調整することにより、空洞共振器R1、R2の間の電界結合及び磁界結合間の割合を調整することができる。そして、空洞共振器R1、R2の間の結合回路は、アイリスI1の固定位置に応じて、インダクタンスmを有するインダクタと、キャパシタンスcを有するコンデンサと、を備える並列共振回路となる。
【0034】
なお、上述の効果を有するためには、空洞共振器R1、R2の磁界結合極性は、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f0の可変範囲内において、同相結合であることが望ましい。すると、インダクタンスm及びキャパシタンスcは、いずれも正の値となる。そして、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数krは、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f0の可変範囲外において、ヌル点fnull=1/2π√mc(実数)を有する。
【0035】
ここで、空洞共振器R1、R2の磁界結合極性が、同相結合であるためには、空洞共振器R1、R2の発生磁界方向は、アイリスI1で逆方向である必要がある。よって、共振棒B1、B2の接地位置及び開放位置は、上下関係を同様とすればよい。そして、共振コイルH1、H2の接地位置及び開放位置は、上下関係を同様とすればよく、共振コイルH1、H2の巻き方向は、
図2に示したように逆方向とすればよい。
【0036】
よって、磁界結合極性を同相結合にすることにより、電磁界結合係数krにヌル点fnullを形成して、電磁界結合係数krを中心周波数f0にほぼ逆比例させることができる。
【0037】
また、上述の効果を有するためには、共振棒B1、B2又は共振コイルH1、H2の固定長さは、可変バンドパスフィルタFの所定中心周波数f0に対応する所定中心波長λgのほぼ1/4倍であることが望ましい。すると、空洞共振器R1、R2の磁界結合極性は、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f0の可変範囲内において、同相結合である。
【0038】
ここで、共振棒B1、B2又は共振コイルH1、H2の固定長さが、ほぼλg/4であるときには、アイリスI1が固定位置に形成されるのみにより、空洞共振器R1、R2の磁界結合極性は、同相結合となる。一方で、共振棒B1、B2又は共振コイルH1、H2の固定長さが、ほぼλg/8であるときには、アイリスI1のみならず結合コンデンサが追加されなければ、空洞共振器R1、R2の磁界結合極性は、逆相結合となり得る。
【0039】
よって、共振棒又は共振コイルの固定長さをほぼλg/4とすることにより、磁界結合極性を同相結合にして、電磁界結合係数krにヌル点fnullを形成することができる。
【0040】
なお、共振棒B1、B2又は共振コイルH1、H2の固定長さは、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f0の可変範囲内のうち、上限に近い周波数、中央の付近の周波数又は下限に近い周波数に対応する、所定中心波長λgのほぼ1/4倍であればよい。
【0041】
(本開示の可変バンドパスフィルタのアイリスの設計)
本開示の可変バンドパスフィルタのアイリスの設計を
図4、5に示す。空洞共振器R1、R2の長さはL
О=71.1mmであり、空洞共振器R1、R2の断面の一辺の長さはD
О=34.2mmであり、空洞共振器R1、R2の外導体の厚さはt=1.0mmである。共振棒B1、B2の長さはL
О=71.1mmであり、共振棒B1、B2の直径は2D
I=12.0mmである。空洞共振器R1、R2の外導体の底面から測ったアイリスI1の位置はZ
irisであり、空洞共振器R1、R2の長さ方向に測ったアイリスI1の寸法はW
irisであり、空洞共振器R1、R2の幅方向に測ったアイリスI1の寸法はL
iris=34.2mmである。ただし、W
iris+Z
iris<65mmであるとする。
【0042】
以下では、電磁界シミュレーションを実行し、アイリスI1の位置及び寸法Ziris、Wirisを最適化し、可変バンドパスフィルタFを設計する。可変バンドパスフィルタFの中心周波数f0の所望可変範囲として、450MHz程度~740MHz程度を設定し、可変バンドパスフィルタFの所望通過帯域幅BWとして、5.8MHz程度を設定する。
【0043】
本開示の可変バンドパスフィルタの共振コンデンサの調整を
図6に示す。可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0[MHz]を実現するために、共振コンデンサC1、C2の可変キャパシタンスC[pF]として、f
0=0.317C
4-6.9516C
3+59.316C
2-270.84C+1048.9を満たすCを設定すればよい。
【0044】
本開示の可変バンドパスフィルタの通過特性を
図7に示す。
図7では、入出力側のソースインピーダンスR
S=100MΩであり、アイリスI1の寸法W
iris=10mmであり、アイリスI1の位置Z
iris=55mmである。そして、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0を変化させ、可変バンドパスフィルタFの通過特性S21を計算する。さらに、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0の近傍の双峰周波数f
1、f
2を計算し、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数k
r=|f
1-f
2|/√f
1f
2を計算する。ここで、入出力側のソースインピーダンスR
S=100MΩであることから、空洞共振器R1、R2の外部負荷Qe値は、空洞共振器R1、R2の無負荷Qu値とほぼ等しいため、空洞共振器R1、R2の電磁界結合は、疎結合であることに留意する。
【0045】
本開示の可変バンドパスフィルタの結合係数を
図8、9に示す。
図8、9では、入出力側のソースインピーダンスR
S=100MΩであり、アイリスI1の寸法W
iris=10mmである。そして、アイリスI1の各位置Z
iris=5mm~55mmにおいて、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0を変化させ、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数k
rを計算する。ここで、空洞共振器R1、R2の結合回路のインピーダンスZは、jωm/(1-ω
2mc)である。そして、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数k
rは、jωL
r/Z=L
r/m×(1-ω
2mc)である。よって、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数k
rは、概略的には、低周波数においてほぼ一定であり、ヌル点f
nullへと近づくにつれて小さくなり、ヌル点f
nullから遠ざかるにつれて大きくなる。
【0046】
図8では、アイリスI1の各位置Z
iris=5mm~30mmにおいて、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数k
rは、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0=450MHz~740MHzの範囲内において、ヌル点f
nullから遠ざかるにつれて大きくなる。一方で、アイリスI1の各位置Z
iris=30~55mmにおいて、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数k
rは、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0=450MHz~740MHzの範囲内において、ヌル点f
nullへと近づくにつれて小さくなる。
【0047】
図8では、アイリスI1の位置Z
iris=55mmにおいて、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数k
rは、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0=450MHz~740MHzの範囲内において、BW/f
0√g
1g
2=5.8MHz/f
0√g
1g
2∝1/f
0とほぼ等しくなる。
図9では、アイリスI1の位置Z
iris=55mmにおいて、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数k
rは、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0=450MHz~740MHzの範囲内において、(5.8MHz-7%)/f
0√g
1g
2と比べて大きくなり、(5.8MHz+7%)/f
0√g
1g
2と比べて小さくなり、可変バンドパスフィルタFの通過帯域幅BW=5.8MHz±7%を満たしている。
【0048】
このように、アイリスI1の位置及び寸法Ziris、Wiris、Lirisを設計段階で固定したうえで、共振コンデンサC1、C2の可変キャパシタンスを使用段階で調整するのみでよく、空洞共振器R1、R2の電磁界結合係数krを使用段階で調整しなくてもよい。そのうえで、中心周波数f0の広帯域な可変設定を容易にするとともに、中心周波数f0の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅BWの一定設定を可能にすることができる。さらに、従来技術と比べて、材料、材質及び製法は同様であり、製造コストは上昇しない。
【0049】
(本開示の可変バンドパスフィルタの整合回路の設計)
本開示の可変バンドパスフィルタの整合回路の設計を
図10に示す。空洞共振器R1、R2とインピーダンス整合回路M1、M2とを隔てた距離はdMであり、空洞共振器R1、R2の長さ方向に測ったインピーダンス整合回路M1、M2の寸法はIMであり、インピーダンス整合回路M1、M2の直径はΦ=1.6mmである。インピーダンス整合回路M1、M2の接地端から測った入力側ポートPI及び出力側ポートPOの位置はa×IMであり、インピーダンス整合回路M1、M2の開放端から測った入力側ポートPI及び出力側ポートPOの位置は(1-a)×IMであり、入力側ポートPI及び出力側ポートPOの内径及び外径はΦ
I=1.6mm、Φ
O=3.2mmである。
【0050】
以下では、電磁界シミュレーションを実行し、インピーダンス整合回路M1、M2の距離及び寸法dM、IM並びに入力側ポートPI及び出力側ポートPOの位置a×IMを最適化し、可変バンドパスフィルタFを設計する。可変バンドパスフィルタFの中心周波数f0の所望可変範囲として、450MHz程度~740MHz程度を設定し、可変バンドパスフィルタFの所望通過帯域幅BWとして、5.8MHz程度を設定する。
【0051】
本開示の可変バンドパスフィルタの反射特性を
図11に示す。
図11では、インピーダンス整合回路M1、M2の距離dM=4mmであり、インピーダンス整合回路M1、M2の寸法IM=40mmであり、入力側ポートPI及び出力側ポートPOの位置a×IM=0.4×40mmである。そして、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0を変化させ、可変バンドパスフィルタFの反射特性S11を計算する。さらに、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0(中心周波数f
0の近傍の双峰周波数f
1、f
2ではない。)における、可変バンドパスフィルタFの反射特性S11(f
0)をプロットする。
【0052】
本開示の可変バンドパスフィルタの反射特性を
図12に示す。
図12では、インピーダンス整合回路M1、M2の距離dM=6mmであり、インピーダンス整合回路M1、M2の寸法IM=60mmである。そして、入力側ポートPI及び出力側ポートPOの各位置a×IM=0.1×60mm~0.9×60mmにおいて、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0を変化させ、可変バンドパスフィルタFの反射特性S11を計算する。
【0053】
図12では、入力側ポートPI及び出力側ポートPOの位置a×IM=0.7×60mmにおいて、可変バンドパスフィルタFの反射特性S11は、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0=450MHz~740MHzの範囲内において、-25dBを下回る。一方で、入力側ポートPI及び出力側ポートPOの他の位置a×IMにおいて、可変バンドパスフィルタFの反射特性S11は、可変バンドパスフィルタFの中心周波数f
0=450MHz~740MHzの一部又は全ての範囲内において、-25dBを上回る。
【0054】
このように、インピーダンス整合回路M1、M2の距離及び寸法dM、IM並びに入力側ポートPI及び出力側ポートPOの位置a×IMを設計段階で固定したうえで、共振コンデンサC1、C2の可変キャパシタンスを使用段階で調整するのみでよく、インピーダンス整合回路M1、M2の距離及び寸法dM、IM等を使用段階で調整しなくてもよい。そのうえで、中心周波数f0の広帯域な可変設定を容易にするとともに、中心周波数f0の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅BWの一定設定を可能にすることができる。さらに、従来技術と比べて、材料、材質及び製法は同様であり、製造コストは上昇しない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の可変バンドパスフィルタは、UHF帯での地上デジタルTV放送等の広帯域な送受信回路等において、中心周波数の広帯域な可変設定を容易にするとともに、中心周波数の広帯域な可変範囲内において通過帯域幅の一定設定を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0056】
F:可変バンドパスフィルタ
R1、R2、R3、R4、R5:空洞共振器
B1、B2、B3、B4、B5:共振棒
H1、H2、H3、H4、H5:共振コイル
C1、C2、C3、C4、C5:共振コンデンサ
I1、I2、I3、I4:アイリス
M1、M2、M5:インピーダンス整合回路
PI:入力側ポート
PO:出力側ポート