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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156396
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】バッテリ式産業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20241029BHJP
   B60K 25/00 20060101ALI20241029BHJP
   B60P 1/02 20060101ALI20241029BHJP
   B62D 21/18 20060101ALI20241029BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B60K11/04 B
B60K11/04 Z
B60K25/00 Z
B60P1/02 Z
B62D21/18 F
B66F9/075 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070820
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】松久 朋弘
【テーマコード(参考)】
3D037
3D038
3D203
3F333
【Fターム(参考)】
3D037CA08
3D037CB06
3D037CB30
3D037CB35
3D038AA10
3D038AB10
3D038AC03
3D038AC06
3D038AC11
3D038AC13
3D038AC14
3D038AC23
3D203AA28
3D203AA31
3D203BA06
3D203CB03
3D203CB29
3D203CB36
3D203CB40
3D203DB07
3D203DB08
3D203DB13
3F333AA02
3F333CA09
(57)【要約】
【課題】熱交換対象機器における熱交換のための熱交換機器をサイドフレームにおける限られた空間に効率的に収容することが可能なバッテリ式産業車両の提供にある。
【解決手段】車体の一部を構成するサイドフレーム33と、車体に搭載され、熱交換の対象となる熱交換対象機器と、液媒体により熱交換対象機器との熱交換を行う熱交換器と、液媒体を貯留する貯留タンク52と、冷却対象機器、熱交換器および貯留タンク52との間で冷却媒体の一方向への循環を可能とする配管路と、液媒体を圧送するポンプ53と、ポンプ53を駆動するポンプモータ54と、熱交換器へ向けて送風する送風機55と、を有するバッテリ式産業車両である。サイドフレーム33の内部に形成される空間に、熱交換器、貯留タンク52、ポンプ53、ポンプモータ54および送風機55が収容されている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側部に設けられ、かつ前記車体の一部を構成し、前記車体の外側に位置する外表面と、前記車体の内側に位置する内部空間が形成されたサイドフレームと、
前記車体に搭載され、液媒体による熱交換の対象となる熱交換対象機器と、
液媒体の熱交換を行う熱交換器と、
液媒体を貯留する貯留タンクと、
前記熱交換対象機器、前記熱交換器および前記貯留タンクとの間で液媒体の一方向への循環を可能とする配管路と、
液媒体を圧送するポンプと、
前記ポンプを駆動するポンプモータと、
前記熱交換器へ向けて送風する送風機と、を有するバッテリ式産業車両において、
前記サイドフレームの内部に形成される空間に、前記熱交換器、前記貯留タンク、前記ポンプ、前記ポンプモータおよび前記送風機が収容されていることを特徴とするバッテリ式産業車両。
【請求項2】
前記貯留タンクは、前記サイドフレームに溶接により固定されていることを特徴とする請求項1記載のバッテリ式産業車両。
【請求項3】
前記熱交換対象機器は、冷却の対象となる冷却対象機器であり、
前記熱交換器は、前記サイドフレームの一部を構成するように溶接により形成される冷却器であり、
前記冷却器は冷却フィンを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリ式産業車両。
【請求項4】
前記ポンプ、前記ポンプモータおよび前記送風機は、前記サイドフレームに溶接により固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリ式産業車両。
【請求項5】
前記サイドフレームは、
前記外表面を構成する外板部材と、
前記外板部材と対向し、前記内部空間を形成する内板部材と、
前記外板部材と前記内板部材の底部を覆う底板部材と、
前記外板部材と前記内板部材の上部を覆う天板部材と、を有し、
前記サイドフレームの内部に形成される空間は、前記外板部材と、前記内板部材と、前記底板部材と、前記天板部材と、により形成され、
前記熱交換器は、前記熱交換器の前記内板部材との接触面積が可及的に増大するように、前記内板部材に固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリ式産業車両。
【請求項6】
前記ポンプモータは、回転軸を備え、
前記送風機は、前記回転軸の回転の伝達を受けることにより作動することを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリ式産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリ式産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ式産業車両の従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたバッテリ式フォークリフトが知られている。特許文献1に開示されたバッテリ式フォークリフトは、車両本体と、この車両本体の前部に設けられたマストと、このマストに昇降可能に設けられ、荷物の上げ下ろしを行うフォークと、マストに設けられ、フォークの昇降をなすリフトシリンダと、を備えている。車両本体には、複数のバッテリが収納されるバッテリケースが設けられている。
【0003】
この種のバッテリ式フォークリフトは、通常、車体の側部を構成する左右一対のサイドフレームを備えている。左右一対のサイドフレームは、主に意匠的効果の目的から板金の折り曲げ加工により形成されていることが多い。因みに、エンジン式フォークリフトでは、車体の側部を構成するサイドフレームは、タンクを有しているため、溶接により形成されており、エンジン式フォークリフトのサイドフレームの板厚はバッテリ式フォークリフトのサイドフレームの板厚と比較して厚い。したがって、エンジン式フォークリフトのサイドフレームは、バッテリ式フォークリフトのサイドフレームと比べて剛性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-238084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、バッテリ式フォークリフトのパワー向上のため、走行用の電動モータおよび荷役用の電動モータの高出力化や、動力伝達系およびオイルポンプの高性能化が要請されている。このため、サイドフレームの剛性をエンジン式フォークリフトのサイドフレームと同等程度に向上させる必要がある。また、走行用の電動モータの高出力化を図る場合、走行用の電動モータ等を水冷式の冷却装置により冷却することが考えられる。水冷式の冷却装置を用いる場合、冷却装置を収容するスペースが必要となる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、熱交換対象機器における熱交換のための熱交換機器をサイドフレームにおける限られた空間に効率的に収容することが可能なバッテリ式産業車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体の側部に設けられ、かつ前記車体の一部を構成し、前記車体の外側に位置する外表面と、前記車体の内側に位置する内部空間が形成されたサイドフレームと、前記車体に搭載され、液媒体による熱交換の対象となる熱交換対象機器と、液媒体の熱交換を行う熱交換器と、液媒体を貯留する貯留タンクと、前記熱交換対象機器、前記熱交換器および前記貯留タンクとの間で液媒体の一方向への循環を可能とする配管路と、液媒体を圧送するポンプと、前記ポンプを駆動するポンプモータと、前記熱交換器へ向けて送風する送風機と、を有するバッテリ式産業車両において、前記サイドフレームの内部に形成される空間に、前記熱交換器、前記貯留タンク、前記ポンプ、前記ポンプモータおよび前記送風機が収容されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、サイドフレームの内部に形成される空間に、熱交換器、貯留タンク、ポンプ、ポンプモータおよび送風機が収容されているので、熱交換機器をサイドフレームにおける限られた空間に効率的に収容することが可能である。
【0009】
また、上記のバッテリ式産業車両において、前記貯留タンクは、前記サイドフレームに溶接により固定されている構成としてもよい。
この場合、貯留タンクがサイドフレームに溶接されていることで、サイドフレームの剛性を向上させることができる。
【0010】
また、上記のバッテリ式産業車両において、前記熱交換対象機器は、冷却の対象となる冷却対象機器であり、前記熱交換器は、前記サイドフレームの一部を構成するように溶接により形成される冷却器であり、前記冷却器は冷却フィンを備えている構成としてもよい。
この場合、熱交換対象機器は、冷却の対象となる冷却対象機器であり、熱交換器はサイドフレームを構成するように形成される冷却器であることから、サイドフレームが冷却器としての機能を果たすことができる。また、冷却器にフィンが備えられることで冷却器における液媒体に対する効率的な冷却を実現できる。
【0011】
また、上記のバッテリ式産業車両において、前記ポンプ、前記ポンプモータおよび前記送風機は、前記サイドフレームに溶接により固定されている構成としてもよい。
この場合、ポンプ、ポンプモータおよび送風機は、サイドフレームに溶接により固定されているので、サイドフレームの剛性をより一層向上させることができる。
【0012】
また、上記のバッテリ式産業車両において、前記サイドフレームは、前記サイドフレームは、前記外表面を構成する外板部材と、前記外板部材と対向し、前記内部空間を形成する内板部材と、前記外板部材と前記内板部材の底部を覆う底板部材と、前記外板部材と前記内板部材の上部を覆う天板部材と、を有し、前記サイドフレームの内部に形成される空間は、前記外板部材と、前記内板部材と、前記底板部材と、前記天板部材と、により形成され、前記熱交換器は、前記熱交換器の前記内板部材との接触面積が可及的に増大するように、前記内板部材に固定されている構成してもよい。
この場合、熱交換器が、熱交換器の内板部材との接触面積が可及的に増大するように、内板部材に固定されているので、液冷媒に対する熱交換を効率的に行うことができる。
【0013】
また、上記のバッテリ式産業車両において、前記ポンプモータは、回転軸を備え、
前記送風機は、前記回転軸の回転の伝達を受けることにより作動する構成としてもよい。
この場合、送風機はポンプモータの回転力の伝達を受けて作動するので、送風機の駆動源を別に設ける必要がないほか、送風機の省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱交換対象機器における熱交換のための熱交換機器をサイドフレームにおける限られた空間に効率的に収容することが可能なバッテリ式産業車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るバッテリ式フォークリフトの側面図である。
図2】第1の実施形態に係るバッテリ式フォークリフトの車体の斜視図である。
図3】車体が備える右サイドフレームの斜視図である。
図4】車体が備える右サイドフレームの分解図である。
図5】(a)は冷却機器が収容された右サイドフレームを模式的に示す側面図であり、(b)は冷却機器が収容された右サイドフレームを模式的に示す平面図である。
図6】第2の実施形態に係るバッテリ式フォークリフトの要部の分解図である。
図7】(a)は第3の実施形態に係るバッテリ式フォークリフトの右サイドフレームを模式的に示す側面図であり、(b)は同実施形態における冷却機器が収容された右サイドフレームを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るバッテリ式産業車両について図面を参照して説明する。本実施形態のバッテリ式産業車両は、バッテリ式フォークリフトである。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、フォークリフトのオペレータが運転席の運転シートに着座して、フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。
【0017】
図1に示すように、バッテリ式フォークリフト(以下、単に「フォークリフト」と表記する)10は、車体11の前部に荷役装置12を備えている。車体11の中央付近には運転席13が設けられている。車体11の前部には前輪としての駆動輪14が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪15が設けられている。車体11には駆動源としての走行用の電動モータ16が搭載されている。車体11にはバッテリ17が搭載されている。運転席13の床にはアクセルペダル18が備えられており、走行用の電動モータ16の回転数はアクセルペダル18の開度に応じて制御される。
【0018】
運転席13には、開閉可能なフードカバー19が備えられ、フードカバー19の上部には運転シート20が備えられている。車体11においてバッテリ17の後方にコントローラ21が搭載されている。コントローラ21は、CPUやメモリのほか各種回路を備え、フォークリフト10の各部を制御する。具体的には、コントローラ21は、走行用の電動モータ16や荷役ポンプ(図示せず)を制御する。本実施形態では、コントローラ21は、冷却の対象となる機器であって冷却対象機器に相当する。
【0019】
運転席13の上部には、ヘッドガード22が設けられ、ヘッドガード22は、車体11の前部から立設される前部ピラー23と、車体11の後部にから立設される後部ピラー24と、により支持されている。車体11の後部にはカウンタウエイト25が備えられている。
【0020】
荷役装置12はアウタマスト26およびインナマスト27を有するマスト28を備えている。左右一対のアウタマスト26には、アウタマスト26の内側にてスライド可能なインナマスト27が備えられている。マスト28には作動油により作動する単動式のリフトシリンダ29が設けられている。リフトシリンダ29の作動により、インナマスト27がアウタマスト26内でスライドして昇降する。
【0021】
マスト28には左右一対のフォーク30がリフトブラケット31を介して設けられ、リフトブラケット31はインナマスト27に対して昇降するように設けられている。車体11とアウタマスト26との間には、作動油により作動する復動式のティルトシリンダ32が設置されている。マスト28はティルトシリンダ32の作動によりマスト28の下端部を支点として前後方向に傾動する。リフトシリンダ29およびティルトシリンダ32は、荷役ポンプから送出される作動油の給排により作動する。
【0022】
ここで、車体11について説明する。図2に示すように、車体11は、左右一対のサイドフレーム33を有している。本明細書では、左右一対のサイドフレーム33の区別のため、右側のサイドフレーム33を右サイドフレーム33Rと表記し、左側のサイドフレーム33を左サイドフレーム33Lと表記することがある。車体11は、サイドフレーム33の前部を連結する前部連結部材34と、サイドフレーム33の底部を連結する底部連結部材35と、サイドフレーム33の後部を連結する後部連結部材36と、を有している。本実施形態の車体11は、エンジン式フォークリフトにて用いられる車体を流用しており、左右のサイドフレーム33は鋼板(例えば、板厚12mm)の溶接によって形成されている。左右一対のサイドフレーム33の間に形成される空間は、主にバッテリ17を収容するための空間である。
【0023】
ここで、右サイドフレーム33Rについて詳しく説明する。右サイドフレーム33Rは、車体11の側部に設けられ、かつ車体11の一部を構成し、車体11の外側に位置する外表面と、車体11の内側に位置する内部空間を形成する。図3図4に示すように、右サイドフレーム33Rは、外表面を構成する外板部材41と、前記外板部材と対向し、内部空間を形成する内板部材42と、外板部材41と内板部材42の底部を覆う底板部材43と、外板部材41と内板部材42の上部を覆う天板部材44と、前部フェンダー部材45と、前部仕切部材46と、後部仕切部材47と、を有している。右サイドフレーム33Rにおいて、外板部材41と、内板部材42と、底板部材43と、天板部材44と、前部フェンダー部材45は、右サイドフレーム33Rの内部に空間(内部空間)を区画形成する。
【0024】
外板部材41は、車体11の左右方向(幅方向)において外側に位置する板部材であり、駆動輪14と操舵輪15との間に位置する。外板部材41の下縁は路面とほぼ平行であり、外板部材41の上縁は前方から後方へ向かうにつれて下縁から離れるように上方へ向かう。外板部材41の前縁は、前部フェンダー部材45と溶接されている。外板部材41の後縁は、上方から下方へ向かい操舵輪15のホイルハウスの一部を形成する。外板部材41の前端付近には前部開口41Aが形成されている。前部開口41Aにはタンク部48への異物進入を抑制するためのメッシュ部材(図示せず)が備えられている。
【0025】
内板部材42は、外板部材41と対向する板部材であり、外板部材41とほぼ同じ形状に形成されている。内板部材42の前縁は、前部フェンダー部材45と溶接されている。底板部材43は、外板部材41と内板部材42の底部を覆う板部材である。底板部材43は、外板部材41および内板部材42の下縁付近と溶接される底部43Aと操舵輪15のホイルハウスを形成するホイルハウス部43Bとを有する。ホイルハウス部43Bには、後部開口43Cが形成されている。後部開口43Cにはタンク部48への異物進入を抑制するためのメッシュ部材(図示せず)が備えられている。
【0026】
天板部材44は、外板部材41と内板部材42の上部を覆う板部材である。天板部材44は外板部材41および内板部材42の上縁付近と溶接されている。天板部材44の前縁は、前部フェンダー部材45と溶接されている。天板部材44の後縁には切り欠き44Aが形成されている。切り欠き44Aには後部ピラー24が挿通される。前部フェンダー部材45は、駆動輪14のホイルハウスを形成する。前部フェンダー部材45は、駆動輪14の外周面と対向するフェンダー本体部45Aと、フェンダー本体部45Aにおいて車体11の中心側に設けられた内壁部45Bと、を有している。
【0027】
前部仕切部材46および後部仕切部材47は、外板部材41と、内板部材42と、底板部材43と、天板部材44と、前部フェンダー部材45と、により区画された空間を仕切る矩形の板部材である。前部仕切部材46は、前部開口41Aより前部フェンダー部材45側に近い位置に設置され、底板部材43に立設されている。前部仕切部材46は、外板部材41、内板部材42、底板部材43および天板部材44に対して溶接されている。
【0028】
後部仕切部材47は、底板部材43のホイルハウス部43Bの上端付近から天板部材44へ向けて略水平に延在する。後部仕切部材47は、外板部材41、内板部材42および天板部材44に対して溶接されている。外板部材41、内板部材42、底板部材43、天板部材44、前部仕切部材46および後部仕切部材47は、右サイドフレーム33Rにおいて密閉状のタンク部48を区画形成する。因みに、車体11がエンジン式フォークリフトに用いられる場合には、タンク部48は、燃料タンクとして使用される。
【0029】
なお、車体11における左サイドフレーム33Lについては説明しないが、左サイドフレーム33Lは、右サイドフレーム33Rの同様のタンク部(図示せず)を有する。左サイドフレーム33Lはオペレータの乗降側のサイドフレームであるので、左サイドフレーム33Lのタンク部は、タンク部48と比較して容量が小さい。左サイドフレーム33Lのタンク部は、作動油を貯留するタンクとしての機能を果たす。
【0030】
ところで、本実施形態では、熱交換対象機器であって冷却対象機器である走行用の電動モータ16を冷却するための冷却機器が備えられている。図5(a)に示すように、フォークリフト10は、液媒体の熱交換を行う熱交換器としての冷却器51と、液媒体としての冷却水を貯留する貯留タンク52と、冷却水を圧送するポンプ53と、ポンプモータ54と、送風機55と、を有している。また、図5(b)に示すように、フォークリフト10は、冷却水の一方向への循環を可能とする配管路56を有している。右サイドフレーム33Rには、冷却器51、貯留タンク52、ポンプ53、ポンプモータ54、送風機55が収容されている。冷却器51、貯留タンク52、ポンプ53、ポンプモータ54、送風機55は、冷却機器であって熱交換機器に相当する。
【0031】
冷却器51は、熱伝導率の高い金属材料(例えば、アルミニウム系合金)により形成された本体ケース51Aを備え、本体ケース51A内には冷却水流路(図示せず)が形成されている。冷却水流路の長さは可能な限り長くなるように冷却水流路は屈曲されている。本体ケース51Aは、タンク部48における内板部材42に溶接により固定されている。本体ケース51Aには、本体ケース51Aの内部と連通する流入口(図示せず)および流出口(図示せず)が設けられている。冷却器51が内板部材42に溶接されていることで、内板部材42の剛性が向上する。本体ケース51Aは、内板部材42の板面との接触面積が可及的に増大するように、内板部材42に固定されている。本体ケース51Aと内板部材42との接触面積を可及的に増大させることで冷却器51における放熱面積が増大される。冷却器51における冷却水の冷却効率の向上が可能となる。本体ケース51Aは外板部材41に対して十分に離間している。
【0032】
本実施形態では、複数の冷却フィン57が外板部材41へ向けて突出するように本体ケース51Aに取り付けられている。冷却フィン57は本体ケース51Aの冷却を促進するための板状の部材であり、熱伝導率の高い金属材料(例えば、アルミニウム系合金)により形成されている。冷却フィン57の表面は、底部43Aの上面と略平行である。
【0033】
貯留タンク52は、冷却器51で冷却された冷却水を貯留するための箱状のタンクである。貯留タンク52は、後部仕切部材47の上面に設置されている。つまり、貯留タンク52は、右サイドフレーム33Rにおけるタンク部48の外部に設置されている。貯留タンク52は、後部仕切部材47に溶接されているほか、外板部材41および内板部材42に対して溶接されている。貯留タンク52が外板部材41、内板部材42および後部仕切部材47に溶接されていることで、右サイドフレーム33Rの剛性が向上する。
【0034】
図示はしないが、貯留タンク52の溶接による複数のビードが形成されるが、後部仕切部材47に対して左右方向および前後に方向にビードがそれぞれ延在するほか、外板部材41および内板部材42に対して上下方向および左右方向にビードがそれぞれ延在する。互いに異なる方向へ溶接のビードが形成されることは、右サイドフレーム33Rの剛性の向上に寄与する。貯留タンク52は配管により冷却器51と電動モータ16に接続されている。電動モータ16と冷却水との熱交換ができるように冷却水の配管が電動モータ16に備えられている。
【0035】
ポンプ53は、ポンプモータ54と一体化されており、右サイドフレーム33Rにおいて前部仕切部材46よりも前端側にて底部43A上に設置されている。つまり、ポンプ53およびポンプモータ54は、右サイドフレーム33Rにおいてタンク部48の外部に設置されている。ポンプ53は、配管により電動モータ16および冷却器51と接続されている。ポンプ53は、電動モータであるポンプモータ54の駆動により配管路56における電動モータ16側から冷却水を吸入し、冷却器51へ向けて吐出する。したがって、ポンプ53の駆動により配管路56において一方へ向けて循環する冷却水の流れが形成される。冷却水の流れは、具体的には、電動モータ16、ポンプ53、冷却器51、貯留タンク52、電動モータ16の順に流れとなる。ポンプ53の形式は特に問われない。
【0036】
送風機55は、タンク部48内において前部仕切部材46と冷却器51との間に位置するように、底部43Aに設置されている。送風機55は、タンク部48の内部に空気流を発生させるために設けられている。送風機55の形式は特に問われない。送風機55が作動することで、前部開口41Aから外部の空気がタンク部48の内部に吸引され、吸引された空気は冷却器51と外板部材41との間を通り、後部開口43Cから排出される。タンク部48の内部を通過する空気は、冷却器51と熱交換され、冷却器51を冷却する。
【0037】
次に、本実施形態に係るフォークリフト10における走行用の電動モータ16の冷却について説明する。フォークリフト10が、例えば、荷役作業を行うことで電動モータ16の負荷が高まる場合がある。電動モータ16の負荷が高くなると、発熱により電動モータ16の温度が上昇する。電動モータ16の温度が所定温度よりも高くなると、ポンプモータ54および送風機55が駆動される。ポンプモータ54の駆動によりポンプ53が作動し、配管路56における冷却水の循環が開始される。送風機55の駆動により前部開口41Aから外部の空気が取り込まれ、取り込まれた空気は後部開口43Cへ向けてタンク部48を通過する。
【0038】
走行用の電動モータ16を冷却した高温の冷却水は、ポンプ53に吸入され、ポンプ53から吐出される。ポンプ53から吐出された冷却水は、冷却器51を通過する。冷却器51の本体ケース51Aおよび冷却フィン57は、タンク部48を通過する空気と熱交換により冷却されるので、冷却器51を通過する冷却水は冷却される。冷却された冷却水は貯留タンク52に貯留され、貯留タンク52に貯留された冷却水は電動モータ16へ送出される。電動モータ16へ送出された冷却水は、電動モータ16を冷却する。電動モータ16の温度が所定温度未満になると、ポンプ53および送風機55の作動を停止する。
【0039】
本実施形態のフォークリフト10は以下の効果を奏する。
(1)右サイドフレーム33Rの内部に形成される空間に、熱交換対象機器である電動モータ16を冷却するための熱交換機器としての冷却器51、貯留タンク52、ポンプ53、ポンプモータ54および送風機55が収容されている。このため、これらの熱交換機器を右サイドフレーム33Rにおける限られた空間に効率的に収容することが可能である。また、右サイドフレーム33Rが密閉状の空間を形成するタンク部48を有するので、右サイドフレームR33の剛性が向上する。
【0040】
(2)貯留タンク52は、右サイドフレーム33Rに溶接により固定されているので、右サイドフレーム33Rの剛性をさらに向上させることができる。後部仕切部材47に対して左右方向および前後方向に溶接のビードがそれぞれ延在するほか、外板部材41および内板部材42に対して上下方向および左右方向に溶接のビードがそれぞれ延在する。貯留タンク52における多方向への溶接のビードの存在により、右サイドフレーム33Rの剛性がより一層向上する。
【0041】
(3)右サイドフレーム33Rは、外板部材41と、内板部材42と、底板部材43と、天板部材44と、を有する。タンク部48の空間は、外板部材41と、内板部材42と、底板部材43と、天板部材44と、により形成されている。熱交換器である冷却器51は、冷却器51の内板部材42との接触面積が可及的に増大するように、内板部材42に固定されている。このため、冷却器51を通過する冷却水に対する熱交換を効率的に行うことができる。
【0042】
(4)冷却器51は冷却フィン57を備えている。このため、冷却器51における冷却水に対する効率的な冷却を実現できる。また、冷却フィン57の表面が底部43Aの上面と略平行であるので、タンク部48の内部を前方から後方へ通過する空気を整流でき、タンク部48において空気の滞留を抑制し、冷却器51の冷却に好適な空気流を形成することができる。
【0043】
(5)車体11は、エンジン式フォークリフトに用いられる車体をバッテリ式フォークリフト10に流用しているので、エンジン式フォークリフトの車体の汎用性を向上することができる。また、エンジン式フォークリフトの車体が高剛性であることから、高出力化された電動モータ16に対応する高剛性のバッテリ式フォークリフト10の車体11を実現できる。
【0044】
(6)冷却器51が内板部材42に固定されているので、冷却器51を外板部材41に固定されている場合と比較して、配管路56を形成する配管の取り回しが容易となる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るフォークリフトについて説明する。本実施形態のフォークリフトは、冷却器がサイドフレームの一部を構成するように溶接により形成される点で第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0046】
図6に示すように、本実施形態のフォークリフト60の車体61は右サイドフレーム63Rを有している。右サイドフレーム63Rは、外板部材41と、内板部材42と、底板部材43と、天板部材44と、前部フェンダー部材45と、前部仕切部材46と、後部仕切部材47と、を有しているほか、冷却器64を形成する複数の部材を有している。冷却器64を形成する複数の部材は、右サイドフレーム63Rの一部を構成する。なお、図6では、外板部材41の図示を省略している。
【0047】
冷却器64の内部には、冷却流路64Aが形成されている。冷却器64は、底板部材43と、第1板部材65と、第2板部材66と、第3板部材67と、第4板部材68と、複数の第5板部材69と、を有している。第1板部材65は、内板部材42および底板部材43に溶接される矩形の板部材であり、底部43Aの上面に立設されている。第1板部材65には、冷却器64の内部への流入口64Bが設けられている。第2板部材66は、前後方向において第1板部材65とホイルハウス部43Bとの間で内板部材42および底板部材43に溶接される矩形の板部材である。第2板部材66は、底部43Aの上面に立設されている。
【0048】
第3板部材67は、第1板部材65および第2板部材66の上端と内板部材42に溶接される矩形の板部材である。第3板部材67は、内板部材42から外板部材41に向けて突出する。第3板部材67には、冷却器64の内部からの流出口64Cが設けられている。第4板部材68は、第1板部材65、第2板部材66および第3板部材67の外板部材41側の側端および底部43Aと溶接されている矩形の板部材である。第4板部材68の外板部材41側の板面には、外板部材41へ向けて突出する複数の第5板部材69が溶接されている。内板部材42、第1板部材65、第2板部材66、第3板部材67および第4板部材68は、冷却器64を形成する複数の部材として、冷却器64の内部の空間を区画形成する。第5板部材69は、冷却フィンとして機能する。
【0049】
本実施形態のフォークリフト60によれば、第1の実施形態の効果と同等の効果を奏する。また、熱交換器は右サイドフレーム63Rを構成するように形成される冷却器64であることから、右サイドフレーム63Rの一部が冷却器としての機能を果たすことができる。また、冷却器64にフィンとしての第5板部材69が備えられることで冷却器64における液媒体に対する効率的な冷却を実現できる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るフォークリフトについて説明する。本実施形態のフォークリフトは、送風機をポンプモータの回転力を利用する構成である点で第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0051】
図7(a)、図7(b)に示すように、本実施形態のフォークリフト70の車体71は右サイドフレーム73Rを有している。ポンプモータ74の回転軸(図示せず)には、同軸状に延長軸75が接続されている。延長軸75は前部仕切部材46を貫通し、前部仕切部材46に軸支されている。タンク部48内の延長軸75には、送風機としての送風ファン76が備えられている。したがって、ポンプモータ74が駆動されることで延長軸75を介してポンプモータ74の回転力が送風ファン76に伝達されて回転される。
【0052】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果と同等の効果を奏する。また、送風機としての送風ファン76は、ポンプモータ74の回転力の伝達を受けて作動するので、送風ファン76の駆動源を別に設ける必要がないほか、送風機の省スペース化を図ることができる。さらに、ポンプモータ74の駆動によりポンプ53の作動および送風ファン76の回転が同時に行われるので、ポンプモータと送風機とを個別に設ける場合と比較して、制御を単純化することができる。
【0053】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0054】
○ 上記の実施形態では、前部開口の近くに送風機を設置したが、これに限らない。送風機は、例えば、後部開口の近くに設置してもよく、タンク部の内部の空間に空気流が生じるのであれば、設置する位置は自由である。
○ 上記の実施形態では、後部開口を底板部材に形成したがこれに限定されない。後部開口は、外板部材に形成してもよい。また、前部開口および後部開口の形状は、特に制限されず自由である。
○ 上記の実施形態では、冷却器、貯留タンクをサイドフレームに溶接したがこれに限定されない。例えば、冷却器、貯留タンクだけでなくポンプ、ポンプモータ、送風機をサイドフレームに溶接してもよい。この場合、サイドフレームの剛性は、冷却器、貯留タンクのみを溶接する場合と比較してさらに向上する。
○ 上記の実施形態では、熱交換器としての冷却器を例示して説明したが、これに限らない。熱交換器は、例えば、加熱器であってもよい。この場合、液媒体を加熱器で加熱し、熱交換対象機器を加熱された液媒体で加熱すればよい。
○ 上記の実施形態では、貯留タンクを後部仕切板の上面に設置したが、これに限定されない。貯留タンクを溶接により設置する位置は、サイドフレームの空間内であれば制限はなく自由に設置できる。
○ 上記の実施形態では、冷却対象機器として走行用の電動モータを例示して説明したが、これに限定されない。冷却対象機器としては、例えば、二次電池でもよく、あるいはバッテリ式産業車両の各部を制御するコントローラであってもよい。
○ 上記の第2の実施形態では、冷却器がサイドフレームの一部を構成するように溶接により形成される例を説明したが、これに限らない。冷却器のほか、貯留タンクがサイドフレームの一部を構成するように溶接により形成されてもよい。
○ 上記の第3の実施形態では、ポンプモータの回転軸に同軸状に接続された延長軸に送風ファンを設けるようにしたが、この限りではない。例えば、延長軸の回転をギヤにより減速する減速機を設け、減速機が備える出力軸に送風ファンを設けるようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、バッテリ式産業車両としてバッテリ式フォークリフトを例示して説明したが、これに限らない。バッテリ式産業車両としては、例えば、トーイングトラクタであってもよく、バッテリの電力によって走行することが可能な産業車両であればよい。
【符号の説明】
【0055】
10、60、70 バッテリ式フォークリフト(バッテリ式産業車両)
11、61、71 車体
12 荷役装置
13 運転席
14 駆動輪
15 操舵輪
16 走行用の電動モータ
17 バッテリ
21 コントローラ
28 マスト
30 フォーク
33、63、73 サイドフレーム
33R、63R、73R 右サイドフレーム
33L 左サイドフレーム
41 外板部材
41A 前部開口
42 内板部材
43 底板部材
43C 後部開口
44 天板部材
45 前部フェンダー部材
46 前部仕切部材
47 後部仕切部材
48 タンク部
51、64 冷却器
52 貯留タンク
53 ポンプ
54、74 ポンプモータ
55 送風機
56 配管路
57 冷却フィン
65 第1板部材
66 第2板部材
67 第3板部材
68 第4板部材
69 第5板部材
75 延長軸
76 送風ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7