(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156397
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】光学フィルム、表示装置、および紫外線吸収層形成用組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20241029BHJP
G02B 1/16 20150101ALI20241029BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20241029BHJP
G02B 1/113 20150101ALI20241029BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20241029BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241029BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241029BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241029BHJP
C09D 5/32 20060101ALI20241029BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20241029BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20241029BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B1/16
G02B1/18
G02B1/113
G02B1/14
B32B7/023
B32B27/30 B
B32B27/30 A
B32B27/32 Z
B32B27/30 102
C09D5/32
C09D133/14
C09D7/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070822
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】二俣 開
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佳子
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA13
2H148CA14
2H148CA23
2H148CA24
2H148CA27
2H148CA29
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4J038CG141
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4J038PA17
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】紫外線を吸収する層が高い密着性を有する光学フィルムを提供する。
【解決手段】光学フィルム1は、ハードコート層20と、ハードコート層の第一面に位置する紫外線吸収層30と、ハードコート層の第二面に位置する透明基材10とを備える。紫外線吸収層は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、紫外線吸収剤とを含有する。活性エネルギー線硬化性樹脂が、所定の化学式で表される構造単位と、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、およびビニルアルコール系繰り返し単位のいずれかを有する構造単位との共重合体を含有する。光学フィルム1は、JIS L1925に準拠して測定された紫外線遮蔽率が90%以上であり、かつ第一面側の表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一機能層と、
前記第一機能層の第一面に位置する紫外線吸収層と、
前記第一機能層の第二面に位置する透明基材と、
を備え、
前記紫外線吸収層が、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、
紫外線吸収剤と、を含有し、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂が、下記式(i)で表される構造単位と、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、およびビニルアルコール系繰り返し単位のいずれかを有する構造単位との共重合体を含有し、
JIS L1925に準拠して測定された紫外線遮蔽率が90%以上であり、かつ前記第一面側の表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上である、
光学フィルム。
【化1】
[式(i)において、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ヒドロキシ基、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシカルボニル基、炭素数10以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数10以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数10以下のアルコキシ基、炭素数10以下のアルキルチオ基、炭素数10以下のアリールオキシ基、ニトロ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数10以下のアシルオキシ基、炭素数10以下のアシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数10以下のアリール基、置換アミノ基、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、又は複素環基を表し、R
2は、水素原子又は炭素数30以下のアルキル基を表し、Xは、単結合、エステル基、炭素数30以下の脂肪族アルキル鎖、芳香族鎖、ポリエチレングリコール鎖、又はこれらを組み合わせてなる連結基を表し、いずれもスピロジオキサン環を含むことができる。]
【請求項2】
前記紫外線吸収層が、帯電防止性、防汚性、防眩性のいずれか1種以上の機能を有する、
請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記第一機能層の前記第一面側に設けられ、前記第一機能層と異なる機能を有する第二機能層をさらに備える、
請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記第二機能層が、反射防止機能および防眩機能の少なくとも一方を有する、
請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記第二機能層が、帯電防止層または防汚層である、
請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記第二機能層が、酸素透過度が10cm3/(m2・day・atm)以下の酸素バリア層である、
請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記第一機能層は、第一の色材、第二の色材、および第三の色材のうち少なくとも一つを含有し、
前記第一の色材は、吸収極大波長が470~530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~45nmであり、
前記第二の色材は、吸収極大波長が560~620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~55nmであり、
前記第三の色材は、380~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が650~780nmの範囲内にある、
請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記第一機能層は、前記式(i)で表される構造単位と、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、およびビニルアルコール系繰り返し単位のいずれかを有する構造単位との共重合体を含有する、
請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記第一機能層は、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、および一重項酸素クエンチャーの少なくとも1つを含有する、
請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記一重項酸素クエンチャーは、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネート、ベンゼンジチオール、およびこれらの遷移金属錯体のいずれかを含有する、
請求項9に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記第一機能層に含まれる前記第一の色材、前記第二の色材、および前記第三の色材の少なくとも一つは、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造の何れかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含む、
請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の光学フィルムを備える、
表示装置。
【請求項13】
紫外線吸収剤と、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合性開始剤と、溶剤と、を含有し、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、式(i)で表される構造単位と、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、およびビニルアルコール系繰り返し単位のいずれかを有する構造単位との共重合体を含有し、
厚さ5μmの膜を形成した際、前記膜のJIS L1925に記載の方法に準じて測定される紫外線遮蔽率が90%以上である、
紫外線吸収層形成用組成物。
【化2】
[式(i)において、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ヒドロキシ基、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシカルボニル基、炭素数10以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数10以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数10以下のアルコキシ基、炭素数10以下のアルキルチオ基、炭素数10以下のアリールオキシ基、ニトロ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数10以下のアシルオキシ基、炭素数10以下のアシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数10以下のアリール基、置換アミノ基、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、又は複素環基を表し、R
2は、水素原子又は炭素数30以下のアルキル基を表し、Xは、単結合、エステル基、炭素数30以下の脂肪族アルキル鎖、芳香族鎖、ポリエチレングリコール鎖、又はこれらを組み合わせてなる連結基を表し、いずれもスピロジオキサン環を含むことができる。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに関する。この光学フィルムを用いた表示装置および光学フィルムに係る紫外線吸収層形成用組成物についても言及する。
【背景技術】
【0002】
ハードコートフィルムは、ディスプレイ、タッチパネル、携帯電話等の表示画面等の保護に広く使用されている。
携帯電話、スマートフォン等のモバイル製品は屋外で使用される機会が多くなっている。このような屋外用途のハードコートフィルムでは、紫外線に長時間曝露されても黄変せず、ハードコート層と基材フィルムとの剥れを生じない、優れた耐光性が必要とされる。
【0003】
特許文献1には、耐候性を付与する目的で、ハードコート層に紫外線吸収剤や光安定剤を添加することが提案されている。
特許文献2では、紫外吸収剤を添加したハードコート層をプライマー層とともに用いることで、基材だけでなく、着色性のある層の光劣化を防ぐ方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-157315号公報
【特許文献2】国際公開第2019/065833号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、紫外線吸収剤を含む光硬化層(紫外線吸収層)を形成する場合、接触する樹脂層との密着性が良好でないことが知られている。紫外線吸収剤を含む光硬化層は、硬度を増加させるために露光量や開始剤を増加させる必要があり、体積収縮や応力が通常よりも強く発生するために密着性が低下することが原因と考えられている。
この問題に対し、従来は紫外線吸収層を塗布する際の下地となる下層の処方を変更し、表面状態・柔軟性の調節を行う方法や、下層に表面処理を施す方法、下層にプライマー層を塗布し紫外吸収層とともに硬化させる等の対策が行われてきた。しかし、紫外線吸収層や下層の種類によっては密着性の改善に至らないことがあり、工程数の削減の観点からも密着力の良好な紫外線吸収層が求められている。
【0006】
上述の事情を踏まえ、本発明は、紫外線を吸収する層が高い密着性を有する光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、高い密着性を有する紫外線吸収層を形成できる紫外線吸収層形成用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、 第一機能層と、第一機能層の第一面に位置する紫外線吸収層と、第一機能層の第二面に位置する透明基材とを備えた光学フィルムである。
紫外線吸収層は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、紫外線吸収剤とを含有する。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、下記式(i)で表される構造単位と、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、およびビニルアルコール系繰り返し単位のいずれかを有する構造単位との共重合体を含有する。
この光学フィルムは、JIS L1925に準拠して測定された紫外線遮蔽率が90%以上であり、かつ前記第一面側の表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上である。
【化1】
[式(i)において、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ヒドロキシ基、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシカルボニル基、炭素数10以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数10以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数10以下のアルコキシ基、炭素数10以下のアルキルチオ基、炭素数10以下のアリールオキシ基、ニトロ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数10以下のアシルオキシ基、炭素数10以下のアシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数10以下のアリール基、置換アミノ基、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、又は複素環基を表し、R
2は、水素原子又は炭素数30以下のアルキル基を表し、Xは、単結合、エステル基、炭素数30以下の脂肪族アルキル鎖、芳香族鎖、ポリエチレングリコール鎖、又はこれらを組み合わせてなる連結基を表し、いずれもスピロジオキサン環を含むことができる。]
【0008】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る光学フィルムを備える表示装置である。
【0009】
本発明の第三の態様は、紫外線吸収剤と、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合性開始剤と、溶剤とを含有する紫外線吸収層形成用組成物である。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、上述の式(i)で表される構造単位と、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、およびビニルアルコール系繰り返し単位のいずれかを有する構造単位との共重合体を含有する。
この組成物で厚さ5μmの膜を形成した際、膜のJIS L1925に記載の方法に準じて測定される紫外線遮蔽率は90%以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線を吸収する層が高い密着性を有する光学フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る光学フィルムの模式断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る光学フィルムの模式断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る光学フィルムの模式断面図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係る光学フィルムの模式断面図である。
【
図5】実施例において有機EL光源及びカラーフィルタを通して出力された白色表示のスペクトルを示したグラフである。
【
図6】実施例において有機EL光源及びカラーフィルタを通して出力された赤色表示時、緑色表示時、青色表示時の各々のスペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一実施形態について
図1を参照して説明する。
【0013】
[光学フィルム]
図1は、本発明の第一実施形態に係る光学フィルム1の模式断面図である。
光学フィルム1は、
図1に示すように、透明基材10と、ハードコート層(第一機能層)20と、紫外線吸収層30とを備え、透明基材10の上に、ハードコート層20および紫外線吸収層30がこの順で積層された積層体である。すなわち、ハードコート層20の一方の面(第一面)上に紫外線吸収層30が、他方の面(第二面)上に透明基材10が、それぞれ位置している。
【0014】
光学フィルム1の厚さは、例えば、10~140μmが好ましく、15~120μmがより好ましく、20~100μmがさらに好ましい。光学フィルム1の厚さが上記下限値以上であると、光学フィルム1の強度をより高められる。光学フィルム1の厚さが上記上限値以下であると、光学フィルム1をより軽量にできるだけでなく、表示装置の薄型化に有利である。
以下、光学フィルム1を構成する各層について説明する。
【0015】
≪透明基材≫
透明基材10は、シート状の部材である。
透明基材10の材質としては、透光性を有する樹脂フィルムを採用することができる。透明基材10の形成材料としては、透明樹脂や無機ガラスを利用できる。透明樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。ポリアクリレートとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルム(PET)、トリアセチルセルロースからなるフィルム(TAC)、ポリメチルメタクリレートからなるフィルム(PMMA)、PETを除くポリエステルからなるフィルムを好適に利用できる。
透明基材10の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~100μmが好ましい。
透明基材10の透過率としては、例えば、90%以上であることが好ましい。
【0016】
透明基材10には、紫外線吸収能を付与してもよい。透明基材10の原料となる樹脂に、紫外線吸収剤を添加することで、透明基材10に紫外線吸収能を付与できる。
【0017】
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾトリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
透明基材10に紫外線吸収能を付与する場合、紫外線遮蔽率は、85%以上であることが好ましい。ここで、紫外線遮蔽率は、JIS L1925に準拠して測定される値であり、下記式により算出される。
紫外線遮蔽率(%)=100-波長290~400nmの紫外線の平均透過率(%)
【0019】
≪ハードコート層≫
ハードコート層20は、透明基材10上に形成され、透明基材10と接触している。ハードコート層20は、光学フィルム1において、傷つき等を抑制する強化層として機能する層である。ハードコート層20としては、例えば、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートを含むハードコート剤で形成された層が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方又はいずれか一方を意味する。
【0020】
≪紫外線吸収層≫
紫外線吸収層30は、ハードコート層20上に形成され、ハードコート層20と接触している。
紫外線吸収層30は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、紫外線吸収剤とを含有する。
【0021】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する樹脂である。
本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性樹脂は、ラジカル捕捉剤と、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、およびビニルアルコール系繰り返し単位のいずれかを有する構造単位との共重合体を含有する。
【0022】
本実施形態に係るラジカル捕捉剤は、ラジカル捕捉能を有するアミン構造含有ポリマーであり、下記式(i)で表される構造単位を含む。
【0023】
【0024】
上記式(i)において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ヒドロキシ基、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシカルボニル基、炭素数10以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数10以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数10以下のアルコキシ基、炭素数10以下のアルキルチオ基、炭素数10以下のアリールオキシ基、ニトロ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数10以下のアシルオキシ基、炭素数10以下のアシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数10以下のアリール基、置換アミノ基、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、又は複素環基を表し、R2は、水素原子又は炭素数30以下のアルキル基を表し、Xは、単結合、エステル基、炭素数30以下の脂肪族アルキル鎖、芳香族鎖、ポリエチレングリコール鎖、又はこれらを組み合わせてなる連結基を表し、いずれもスピロジオキサン環を含んでもよい。
【0025】
R1としては、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数10以下のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数としては、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
R2としては、水素原子、炭素数10以下のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数としては、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
Xとしては、単結合又は炭素数30以下の脂肪族アルキル鎖が好ましい。脂肪族アルキル鎖の炭素数としては、10以下が好ましく、1~6が好ましく、2~4がより好ましい。
【0026】
式(i)で表される構造単位の分子量は、2000以上であることが好ましい。分子量が2000以上であると、紫外線吸収剤の劣化抑制効果が向上する。これは、紫外線吸収層30内に留まる分子が多くなり、充分な劣化抑制効果が得られるためであると考えられる。
式(i)で表される構造単位の分子量の上限値は特に限定されないが、例えば10万以上程度とできる。
本明細書において、「分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でポリスチレンを標準物質として測定される「質量平均分子量」を意味する。
【0027】
共重合体に係る繰り返し単位としては、例えば、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、ビニルアルコール系繰り返し単位等が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリレート系繰り返し単位としては、例えば、直鎖または分岐アルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位、水酸基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位等が挙げられる。
【0029】
上記直鎖または分岐アルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等のモノマー由来成分が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上併用してもよい。上記の中でも炭素数が1以上4以下の直鎖または分岐アルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位を好適に用いることができる。
【0030】
上記水酸基を側鎖に有する(メタ)アクリル系モノマー由来の繰り返し単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシフェニル等のモノマー由来成分が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
オレフィン系繰り返し単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等のオレフィン系モノマー由来成分が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ハロゲン原子含有繰り返し単位としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のモノマー由来成分が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
スチレン系繰り返し単位としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー由来成分が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酢酸ビニル系の繰り返し単位としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和カルボン酸とビニルアルコールのエステル体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニルアルコール系繰り返し単位としては、例えば、ビニルアルコールが挙げられ、側鎖に1,2-グリコール結合を有していてもよい。
【0034】
共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、および、グラフト共重合体のいずれの構造を有していてもよい。共重合体の構造がランダム共重合体であれば、製造工程およびその他成分との調製が容易である。そのため、ランダム共重合体は、他の共重合体よりも好ましい。
【0035】
共重合体を得るための重合方法には、ラジカル重合を用いることができる。ラジカル重合は、工業的な生産が容易である点で好ましい。ラジカル重合は、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、および、懸濁重合法などであってよい。ラジカル重合には、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いることによって、共重合体における分子量の制御が容易である。
【0036】
ラジカル重合では、上述したモノマーを重合溶剤によって希釈した後に、重合開始剤を加えてモノマーの重合を行ってもよい。
重合溶剤は、例えば、エステル系溶剤、アルコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、アミド系溶剤、および、アルコール系溶剤などであってよい。エステル系溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、乳酸メチル、および、乳酸エチルなどであってよい。アルコールエーテル系溶剤は、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、および、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどであってよい。ケトン系溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンなどであってよい。芳香族系溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、および、キシレンなどであってよい。アミド系溶剤は、例えば、ホルムアミド、および、ジメチルホルムアミドなどであってよい。アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ジアセトンアルコール、および、2-メチル-2-ブタノールなどであってよい。なお、上述した重合溶剤において、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
ラジカル重合開始剤は、例えば、過酸化物およびアゾ化合物などであってよい。過酸化物は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、および、ジ-t-ブチルパーオキシドなどであってよい。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアミジノプロパン塩、アゾビスシアノバレリックアシッド(塩)、および、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などであってよい。
【0038】
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの合計を100質量部に設定した場合に、0.0001質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、0.005質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤は、モノマーおよび重合溶剤に対して、重合開始前に添加されてもよいし、重合反応系中に滴下されてもよい。ラジカル重合開始剤をモノマーおよび重合溶剤に対して重合反応系中に滴下することは、重合による発熱を抑制することができる点で好ましい。
【0039】
ラジカル重合の反応温度は、ラジカル重合開始剤および重合溶剤の種類によって適宜選択される。反応温度は、製造上の容易性、および、反応制御性の観点から、60℃以上110℃以下であることが好ましい。
【0040】
式(i)で表されるラジカル捕捉剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂を構成するモノマーの総モル量に対して、1~95モル%が好ましく、10~90モル%がより好ましい。
【0041】
紫外線吸収剤としては、透明基材の説明で例示したものと同様のものを用いることができる。
【0042】
上記構成を備えた本実施形態の光学フィルム1は、紫外線吸収層30により、JIS L1925に準拠して測定される紫外線遮蔽率として90%以上の十分な紫外線遮蔽能を発揮するとともに、紫外線吸収層30とハードコート層20とが十分密着している。活性エネルギー線硬化性樹脂に含まれる共重合体が、紫外線吸収層30とハードコート層20との密着性を向上させ、式(i)で表されるラジカル捕捉剤が紫外線吸収剤の劣化を抑制して耐光性を向上させる。
光学フィルム1においては、紫外線吸収層30が接する面の表面処理やプライマー層の形成を行わなくても紫外線吸収層30が良好な密着性を有する。さらに、ハードコート層20と活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化後の硬さとにより、JIS-K5400-1990に準拠した荷重500gの鉛筆硬度試験において、紫外線吸収層30側がH以上の十分な表面硬度を有する。
【0043】
本発明に係る紫外線吸収層30においては、所定の物質を添加することにより、帯電防止性、防汚性、防眩性等が付与されてもよい。
帯電防止性を付与するための添加物としては、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物微粒子、高分子型導電性組成物、4級アンモニウム塩等の各種帯電防止剤を例示できる。
防汚性を付与するための添加物としては、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤等の各種防汚剤を例示できる。
【0044】
防眩性を付与するための添加物としては、有機微粒子や無機微粒子等を使用できる。
有機微粒子は、表面に微細な凹凸を形成し、外光を散乱させる機能を付与する材料である。有機微粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子が挙げられる。屈折率や樹脂粒子の分散性を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用してもよい。
無機微粒子は、有機微粒子の沈降や凝集を調整する材料である。無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)や酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア(二酸化チタン)、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであってもよく、両者の混合物を使用してもよい。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。
【0045】
本発明の第二実施形態について、
図2を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
図2は、本実施形態に係る光学フィルム2の模式断面図である。光学フィルム2においては、紫外線吸収層30上に形成された第二機能層40を有する。
【0047】
第二機能層40が発揮する機能は光学フィルムの用途等に応じて様々に変更できる。第二機能層の具体例としては、低屈折率層、防眩層、帯電防止層、防汚層等を例示でき、二つ以上の機能を有してもよい。
帯電防止層、防汚層、および防眩層については、層を構成するベース樹脂に上述の各種添加剤を加えた組成物を用いて形成できる。
【0048】
第二機能層40を低屈折率層とする場合、その屈折率は、例えば1.20~1.55とできる。屈折率調整に用いる添加剤としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、ヘキサフルオロアルミニウムナトリウム(氷晶石、クリオライト、3NaF・AlF3、Na3AlF6)、フッ化アルミニウム(AlF3)等の微粒子や、シリカ微粒子等を例示できる。シリカ微粒子としては、多孔質シリカ微粒子や中空シリカ微粒子等の粒子内部に空隙を有するものが好適である。
【0049】
低屈折率層の形成方法に制限はなく、低屈折率層形成用組成物を紫外線吸収層30に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、プラズマ気相成長法等を使用できる。
低屈折率層の厚さは、特に限定されないが、例えば、40nm~1μmが好ましい。
低屈折率層を設けることにより、光学フィルム2は、反射防止機能を発揮する。
【0050】
本発明の第三実施形態について、
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る光学フィルム3の模式断面図である。光学フィルム3は、光学フィルム1のハードコート層20に代えて着色層50を備えた構成を有する。
【0051】
第一機能層である着色層50は、着色層形成用組成物の硬化物であり、色素(A)と、活性エネルギー線硬化性樹脂(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する。
着色層50の厚さは、例えば、0.5~10μmが好ましい。着色層50の厚さが上記下限値以上であると、着色層50の外観に異常を発生させることなく色素を含有でき、色素の光吸収性により反射特性や色再現性を向上させることができる。着色層50の厚さが上記上限値以下であると、表示装置の薄型化に有利である。
着色層50の厚さは、光学フィルムの厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0052】
<色素(A)>
色素(A)は、以下に示す第一の色材、第二の色材、および第三の色材のうち、少なくとも一つを含有する。
第一の色材の吸収極大波長は、470nm以上530nm以下の範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上45nm以下である。吸収極大波長は、上記下限値未満であると青色発光の輝度効率を低下させやすく、上記上限値超であると緑色発光の輝度効率を低下させやすい。吸光スペクトルの半値幅は、上記下限値未満であると外光に対する反射特性への抑制効果が小さく、上記上限値超であると外光に対する反射特性は向上しやすいが、輝度効率を低下させやすい。
【0053】
第二の色材の吸収極大波長は、560nm以上620nm以下の範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上55nm以下である。吸収極大波長は、上記下限値未満であると緑色発光の輝度効率を低下させやすく、上記上限値超であると赤色発光の輝度効率を低下させやすい。吸光スペクトルの半値幅は、上記下限値未満であると外光に対する反射特性への抑制効果が小さく、上記上限値超であると外光に対する反射特性は向上しやすいが、輝度効率を低下させやすい。
【0054】
第三の色材は、380~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が650以上780nm以下の範囲内にある。第三の色材の400~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が、上記下限値未満であると赤色発光の輝度効率を低下させやすく、上記上限値超であると外光に対する反射特性への抑制効果が小さくなる。
【0055】
色素(A)は、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造、インジゴ構造のいずれかを有する化合物、又はその金属錯体を含有することが好ましい。特に、ポルフィリン構造やピロメテン構造、フタロシアニン構造を有する金属錯体や、スクアリリウム構造を有する化合物を用いることが、信頼性に優れるため、より好ましい。色素(A)は、これらの化合物又はその金属錯体を1種単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。これらの化合物又はその金属錯体は、第一の色材に含まれていてもよく、第二の色材に含まれていてもよく、第三の色材に含まれていてもよく、これらの色材の2種以上に含まれていてもよい。
【0056】
<エネルギー線硬化型化合物(B)>
エネルギー線硬化型化合物(B)は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する樹脂である。例えば、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート等を使用できる。
【0057】
エネルギー線硬化型化合物(B)に含むことができる単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の双方又はいずれか一方を意味するものとする。
【0058】
エネルギー線硬化型化合物(B)に含むことができる2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
エネルギー線硬化型化合物(B)に含むことができる3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0060】
その他、エネルギー線硬化型化合物(B)に含むことができる樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0062】
上述したその他エネルギー線硬化型化合物(B)に含むことができる単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート等は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、一部が重合したオリゴマーであってもよい。
紫外線吸収層30に用いられる各種繰り返し単位を含む共重合体も、エネルギー線硬化型化合物(B)に含むことができる。
【0063】
エネルギー線硬化型化合物(B)の含有量は、着色層形成用組成物の総質量に対して、20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。エネルギー線硬化型化合物(B)の含有量が上記下限値以上であると、退色抑制効果をより高められる。エネルギー線硬化型化合物(B)の含有量が上記上限値以下であると、着色層形成用組成物の取扱い性をより高められる。
【0064】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)は、例えば、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものである。
光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類等)、フェニルケトン類[例えば、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等)、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン等のアルキルフェニルケトン類;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のシクロアルキルフェニルケトン類等]、アミノアセトフェノン類{2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノアミノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1等}、アントラキノン類(アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等)、チオキサントン類(2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン等)、キサントン類、ホスフィンオキサイド類(例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
光重合開始剤(C)の含有量は、着色層形成用組成物の固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が上記下限値未満であると、硬化性が不足する。光重合開始剤(C)の含有量が上記上限値超であると、未反応の光重合開始剤(C)が残留し、耐熱性等の信頼性が悪化する。
【0066】
着色層10には、溶剤(D)や添加剤(E)が含まれてもよい。以下、これらの詳細について説明する。
<溶剤(D)>
溶剤(D)は、着色層の形成時に必要であり、塗工後の乾燥においてその多くが揮発等により着色層から消失するが、一部は着色層に残留するため、その成分について記載する。
溶剤(D)としては、エーテル類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール又はフェネトール等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン又はエチルシクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類としては、例えば、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n-ペンチル又はγ-ブチロラクトン等が挙げられる。セロソルブ類としては、例えば、メチルセロソルブ、セロソルブ(エチルセロソルブ)、ブチルセロソルブ又はセロソルブアセテート等が挙げられる。溶剤(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
溶剤(D)の含有量は、上記(A)ないし(C)を含む着色層形成用組成物の総質量に対して、20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。溶剤(D)の含有量が上記下限値以上であると、着色層形成用組成物の取扱い性をより高められる。溶剤(D)の含有量が上記上限値以下であると、着色層を形成するための時間を短縮できる。
【0068】
<添加剤(E)>
添加剤(E)としては、少なくとも下記式(ii)で示される構造を有する化合物(以下「化合物A」と称する。)や、ラジカル補捉剤、一重項酸素クエンチャー、過酸化物分解剤等を例示できる。
【0069】
【0070】
式(ii)において、R1は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、R9CO-、R10SO2-、およびR11NHCO-で表される基のいずれかである(R9、R10、R11は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、およびへテロ環基のいずれかである。)。R2およびR3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、およびアルケニルオキシ基のいずれかである。R4~R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、およびアリール基のいずれかである。
【0071】
ラジカル補捉剤としては、例えば、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン系光安定剤、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、6,6’-ジ-t-ブチル-4,4’-ブチリデネジ-m-クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0072】
一重項酸素クエンチャーとしては遷移金属錯体、色素類、アミン類、フェノール類、スルフィド類が挙げられるが、特に好適に用いられる材料としては、ジアルキルジチオホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネート又はベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体を例示でき、これらの遷移金属錯体の中心金属としてはニッケル、亜鉛、銅又はコバルトが好適に用いられる。
【0073】
過酸化物分解剤としては、色素が酸化劣化した際に発生する過酸化物を分解し、自動酸化サイクルを停止させ、色素劣化(退色)を抑制する働きがある。過酸化物分解剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を用いることができる。
【0074】
リン系酸化防止剤としては、例えば2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及び6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。
【0075】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル-ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0076】
着色層50にこれらの添加剤を含有させることにより、色素(A)の耐光性および耐熱性を向上できる。
【0077】
添加剤(E)には、その他の添加剤として、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光増感剤、導電材料等が含まれてもよい。
【0078】
本実施形態に係る光学フィルム3は、着色層50を備えることにより、各種表示装置に取り付けることで、反射抑制と輝度効率とを両立でき、表示品位を向上に寄与できる。また、外光が入射する側に紫外線吸収層30を位置させて取り付けることで、着色層の劣化を抑制し、効果を長期間持続させることができる。
【0079】
本発明の第四実施形態について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る光学フィルム4の模式断面図である。光学フィルム4は、光学フィルム3の構成において、紫外線吸収層30と着色層50との間に酸素バリア層(第二機能層)60を設けた構成を有する。
【0080】
酸素バリア層60は光透過性を有する透明な層であり、第二機能層の一態様である。酸素バリア層60の酸素透過度は、10cm3/m2・day・atm以下であり、5cm3/(m2・day・atm)以下であることがより好ましく、1cm3/(m2・day・atm)以下であることがさらに好ましい。酸素バリア層60の酸素透過度が上記上限値以下であると、充分な酸素バリア性を発現できる。酸素バリア層60の酸素透過度の下限値は、特に限定されず、0cm3/(m2・day・atm)であってもよい。
酸素バリア層60の形成材料は、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビリニデン、シロキサン樹脂等を含有するのが好ましく、三菱ガス化学社製のマクシーブ(登録商標)、株式会社クラレ製のエバール、旭化成株式会社のサランラテックス、サランレジン等を用いることができる。また、酸素バリア層60の厚さは特に限定されず、所望の酸素バリア性が得られる厚さとすればよい。
本明細書において、酸素バリア層60の酸素透過度は、酸素透過度測定装置を用いて、30℃、相対湿度60%の条件下で測定される値とする。
【0081】
また、酸素バリア層60には、無機物粒子(無機化合物からなる粒子)が分散していてもよい。無機物粒子により、酸素透過度をより低くでき、着色層50の酸化劣化(退色)をより抑制することができる。無機物粒子の大きさや含有量は、特に限定されず、酸素バリア層60の厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。酸素バリア層60に分散させる無機物粒子の大きさ(最大長)は、酸素バリア層60の厚さ未満であるのが好ましく、小さいほど有利である。なお、酸素バリア層60に分散させる無機物粒子の大きさは、均一でも不均一でもよい。酸素バリア層60に分散する無機物粒子としては、具体的には、シリカ粒子、アルミナ粒子、銀粒子、銅粒子、チタン粒子、ジルコニア粒子、スズ粒子等が挙げられる。
【0082】
本実施形態に係る光学フィルム4は、酸素バリア層60を備える。このため、酸素バリア層60が着色層50よりも観察者に近くなるように表示装置に取り付けることにより、外気に含まれる酸素は、酸素バリア層60を透過しなければ着色層50に到達しなくなる。その結果、着色層50に含まれる色材が酸素により劣化することが抑制され、色補正機能をより長時間持続させることができる。
本実施形態において、酸素バリア層60の数や位置は適宜設定できる。
【0083】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の各実施形態に係る光学フィルムは、従来公知の方法により製造できる。
例えば、光学フィルム1の場合、まず透明基材10の一方の面にハードコート剤を塗布して硬化させることによりハードコート層20を形成する。
その後、紫外線吸収層形成用組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより紫外線吸収層30を得る。
【0084】
本発明に係る紫外線吸収層形成用組成物は、紫外線吸収剤と、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、溶剤とを含有する。活性エネルギー線硬化性樹脂は、式(i)で表される構造単位と、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、オレフィン系繰り返し単位、ハロゲン原子含有繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、酢酸ビニル系繰り返し単位、およびビニルアルコール系繰り返し単位のいずれかを有する構造単位との共重合体を含有する。
光重合開始剤としては、上述した光重合開始剤(C)で記載したものを使用できる。
紫外線吸収層30を形成するための光源は、活性エネルギー線を発生する光源であれば制限なく使用できる。活性エネルギー線としては、放射線(ガンマ線、X線等)、紫外線、可視光線、電子線(EB)等の光エネルギー線が使用でき、通常、紫外線、電子線である場合が多い。例えば、紫外線を放射するランプとして低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を使用できる。照射条件として紫外線照射量は、通常100~1000mJ/cm2である。
この紫外線吸収層形成用組成物で形成した厚さ5μmの膜は、JIS L1925に記載の方法に準じて測定される紫外線遮蔽率が90%以上である。
【0085】
[表示装置]
本発明の表示装置は、本発明の光学フィルムを備える。表示装置の具体例としては、例えば、テレビ、モニタ、携帯電話、携帯型ゲーム機器、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤ等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、自動販売機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、個人認証機器、光通信機器、ICカード等が挙げられる。中でも、金属製の電極や配線により、外光反射の影響を受けやすいLED、有機EL、無機蛍光体、量子ドット等の自発光素子を備える表示装置に好適に用いられる。
【0086】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ等も含まれる。
【実施例0087】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の技術的範囲は、これら実施例の具体的内容のみを根拠として何ら限定されるものではない。
【0088】
[実施例1~13、比較例1~5]
以下の実施例及び比較例では、表1、表2に示す層構成の光学フィルムA~Rを作製した。表中、「-」は、その層を有しないことを示す。
【0089】
【0090】
【0091】
表3および表4に、各例に係る層の構成を示す。
【0092】
【0093】
【0094】
≪光学フィルムの作製≫
以下、光学フィルムを構成する各層の詳細について説明する。
【0095】
<透明基材>
表1および表2に記載の材料の詳細を以下に示す。
・TAC:トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製、TG60UL、基材厚60μm、紫外線遮蔽率92.9%)
・PMMA:ポリメチルメタクリレートフィルム(住友化学(株)製、W002N80、基材厚80μm、紫外線遮蔽率13.9%)
【0096】
<ハードコート層および紫外線吸収層>
表3に記載の材料の詳細を以下に示す。
・活性エネルギー線硬化性樹脂
樹脂1:式(i)で表される構造単位を含むポリマーであり、R1はCH3、R2はCH3、Xが単結合である、アミン構造を有する樹脂(分子量120000)である。
UA-306H:ペンタエリスリトールトリアクリレート ヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製、UA-306H)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
(樹脂1の製造例)
メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル(昭和電工マテリアルズ(株)製、FA-711MM)2.4g、メタクリル酸メチル(関東化学(株)製)5.6g、シクロヘキサノン(関東化学(株)製)31g、2,2‘-アゾビス(イソブチロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製)0.11gを反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、70℃で8時間加熱攪拌した。その後、100℃で1時間加熱攪拌を行うことでポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(関東化学(株)製)400mL中へ注ぐことで生じた析出物をろ過、乾燥することでメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル:メタクリル酸メチル=15:85[mоl%]で共重合された樹脂1を得た。
・光重合開始剤
Omnirad 819:アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製)。
・紫外線(UV)吸収剤
Tinuvin477:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、Tinuvin(登録商標)477(BASFジャパン(株)製)。
Tinuvin479:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、Tinuvin(登録商標)479(BASFジャパン(株)製)。
Tinuvin970:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、Tinuvin(登録商標)970(BASFジャパン(株)製)。
・添加剤
(防汚付与剤)
オプツール(登録商標)AR-110(ダイキン工業(株)製、固形分15%、溶剤:メチルイソブチルケトン)
(HALS剤(ヒンダードアミン系光安定剤))
アデカスタブ LA-82((株)ADEKA製、分子量239)
・防眩性付与粒子
(樹脂粒子)
スチレン-メタクリル酸メチル共重合体粒子(屈折率1.515、平均粒径2.0μm)
(無機微粒子)
無機微粒子1:合成スメクタイト
無機微粒子2:アルミナナノ粒子(平均粒径40nm)
・溶剤
MEK:メチルエチルケトン
酢酸メチル:酢酸メチル
トルエン:トルエン
IPA:イソプロピルアルコール
【0097】
[ハードコート層・紫外線吸収層の形成]
各例において、表3に示す組成のハードコート層または紫外線吸収層形成用組成物を対応する層上に塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmとなるようハードコート層および紫外線吸収層を形成した。なお、表3における添加量は質量比(質量%)であり、「-」はその成分を含有しないことを示す。
【0098】
<低屈折率層>
低屈折率層形成用組成物の詳細を以下に示す。
・屈折率調整剤
多孔質シリカ微粒子(平均粒径75nm、固形分20%)メチルイソブチルケトン分散液 8.5質量部
・防汚付与剤
オプツール(登録商標)AR-110 5.6質量部
・活性エネルギー線硬化性樹脂
PETA 0.4質量部
・光重合開始剤
Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製) 0.07質量部
・レベリング剤
RS-77(DIC(株)製) 1.7質量部
・溶剤
メチルイソブチルケトン 83.73質量部
【0099】
[低屈折率層の形成]
紫外線吸収層上に上記低屈折率層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量200mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が100nmである低屈折率層を形成した。
【0100】
<防眩層>
防眩層形成用組成物の詳細を以下に示す。
・活性エネルギー線硬化性樹脂
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ライトアクリレートPE-3A(共栄社化学(株)製、屈折率1.52) 43.7質量部
・光重合開始剤
Omnirad TPO 4.55質量部
・樹脂粒子
スチレン-メタクリル酸メチル共重合体粒子(屈折率1.515、平均粒径2.0μm) 0.5質量部
・無機微粒子
合成スメクタイト 0.25質量部。
アルミナナノ粒子(平均粒径40nm) 1.0質量部
・溶剤
トルエン 15質量部
イソプロピルアルコール 35質量部
[防眩層の形成]
対応する例において、紫外線吸収層上に上記防眩層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである防眩層を形成した。
【0101】
<帯電防止・防汚層>
帯電防止・防汚層形成用組成物の詳細を以下に示す。
・防汚付与剤
オプツール(登録商標)AR-110 5.6質量部。
・活性エネルギー線硬化性樹脂
PETA 0.4質量部。
・光重合開始剤
Omnirad TPO 0.07質量部。
・レベリング剤
RS-77 1.7質量部。
・溶剤
メチルイソブチルケトン 91.6質量部。
[帯電防止・防汚層の形成]
対応する例において、紫外線吸収層上に上記帯電防止・防汚層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量200mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が100nmである帯電防止・防汚層を形成した。
【0102】
<酸素バリア層>
酸素バリア層層形成用組成物として、PVA(クラレポバール(登録商標)PVA-117(クラレ社製))の80質量%水溶液を用いた。
対応する例において、これを着色層上に塗布して乾燥させ、酸素透過度が1cm3
/(m2・day・atm)である酸素バリア層を形成した。
【0103】
<着色層>
着色層に用いた材料の詳細について以下に示す。なお、色材の吸収極大波長、半値幅、及び規定波長範囲での最小透過率波長は、厚さ5μmの硬化塗膜における値である。
<色素(A)>
・第一の色材
Dye-1:ピロメテンコバルト錯体染料(吸収極大波長493nm、半値幅26nm)
<Dye-1の製造例>
5-ホルミル-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチル(2.5g)を反応容器に封入し、メタノール(50mL)に溶解させた後、47%臭化水素酸(45g)を添加して、1時間還流を行った。析出した固体を濾別することで、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩(2.6g)を得た。
3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩(0.6g)を反応容器に封入し、メタノール(5mL)、トリエチルアミン(0.17g)、酢酸コバルト四水和物(0.18g)を添加し、2時間還流を行った。析出した固体を濾別することで、Dye-1(0.42g)を得た。
・第二の色材
Dye-2:テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山本化成(株)製、PD-311S、吸収極大波長586nm、半値幅22nm)
Dye-3:テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山田化学工業(株)製、FDG-007、吸収極大波長595nm、半値幅22nm)
・第三の色材
Dye-4:フタロシアニン銅錯体染料(山田化学工業(株)製、FDN-002、400~780nmでの最小透過率波長 780nm)
【0104】
<エネルギー線硬化型化合物(B)>
・樹脂1:紫外線吸収層に用いたものと同一
・UA-306H
・DPHA
・PETA
<光重合開始剤(C)>
・Omnirad 819
<溶剤(D)>
・MEK:メチルエチルケトン
・酢酸メチル
<添加剤(E)>
・D1781:一重項酸素クエンチャー(ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)ニッケル(II)、東京化成工業(株)製)
【0105】
[着色層の形成]
対応する例において、透明基材上に上記着色層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0nmである帯電防止・防汚層を形成した。
【0106】
各例に係る光学フィルムについて、以下の評価を行った。
[フィルム特性評価]
<紫外線吸収層の紫外線遮蔽率>
ガラス基材上に各例における第1機能層よりも上層の層構成を形成し、JIS-K5600付着性試験準拠のセロハンテープを用いて剥離した。自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて剥離したセロハンテープの透過率を測定し、セロハンテープ単体をリファレンスとして透過率を測定した。得られた透過率を用いて、紫外域(290nm~400nm)の平均透過率[%]を算出し、紫外線遮蔽率[%]を100%から紫外域(290nm~400nm)の平均透過率[%]を引いた値として算出した。紫外線遮蔽率は90%以上となるものが好ましく、95%以上となるものがさらに好ましく、100%であってもよい。
【0107】
<密着性試験>
JIS K-5600 5-6:1999に準拠して、各例に係る光学フィルムの第一面側(機能層が設けられている側)の表面に、1mm間隔の10×10クロスカットを施した後、粘着テープ付着試験を行い、塗膜の残存率を目視で評価した。評価が上記JISに記載された分類0、分類1、分類2に該当する場合を「○(合格)」、分類3、分類4、分類5に該当する場合を「×(不合格)」と記載した。
【0108】
<鉛筆硬度試験>
JIS-K5600-5-4:1999に準拠し、500gf(4.9N)の荷重をかけた鉛筆(三菱鉛筆社製UNI、鉛筆硬度H)を用いて行う鉛筆硬度試験を、クレメンス型引掻き硬度試験機(テスター産業株式会社製、HA-301)を用いて各例に係る光学フィルムの第一面側の表面に実施した。キズによる外観の変化を目視で評価し、キズが観察されない場合を「○(合格)」、キズが観察される場合を「×(不合格)」とした。
【0109】
<耐光性試験>
得られた光学フィルムの耐光性試験として、キセノンウェザーメーター試験機(スガ試験機株式会社製、X75)を用い、キセノンランプ照度60W/m2(300nm~400nm)、試験機内温度45℃・湿度50%RH条件にて120時間試験し、試験前後に自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて透過率測定を行い、試験前後の紫外線遮蔽率差ΔT(290-400nm)を算出した。紫外線遮蔽率差はゼロに近い方が良好であり、|ΔT(290-400nm)|≦10となるものが好ましく、|ΔT(290-400nm)|≦5となるものが更に好ましい。
着色層を含む実施例および比較例については、波長範囲470nm~530nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ1での試験前後透過率差ΔTλ1、波長範囲560nm~620nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ2での試験前後透過率差ΔTλ2を併せて算出した。透過率差はゼロに近い方が良好であり、|ΔTλN|≦20(N=1~2)となるものが好ましく、|ΔTλN|≦10(N=1~2)となるものがさらに好ましい。
【0110】
[表示装置特性評価]
<白表示透過特性>
得られた光学フィルムの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この透過率を用いて、白表示時に光学フィルムを透過した光の効率を算出し、白表示透過特性として評価した。基準として、
図5に示すスペクトルの白色有機EL光源とカラーフィルタを通して出力される白表示時のスペクトルの効率を100とした。100に近いほど白表示透過率が高く、輝度効率に優れる。
<表示装置反射特性>
得られた光学フィルムの透過率T(λ)及び表面反射率R2(λ)を自動分光光度計(U-4100)を用いて測定した。表面反射率R2(λ)の測定については、透明基材の紫外線吸収層等が形成されていない面につや消し黒色染料を塗布して反射防止の処理を行い、入射角5°の分光反射率を測定して表面反射率R2(λ)とした。電極反射率R
E(λ)を波長380nmから780nmまで全て100%として、光学フィルムの無い状態でのD65光源(CIE(国際照明委員会)標準光源D65)に対する表示装置反射値を100とした際の相対反射値を下記式(1)から(4)に基づいて算出し、観測者側最表層の表面反射率R(λ)を表示装置反射特性として評価した。表示装置反射特性の値が低いほど、外光反射を低減可能で、反射特性に優れる。なお、式(1)から(4)において、R1(λ)は内部反射成分を、YはD65光源の白色点における3刺激値のうちの一つを、P
D65(λ)はD65光源のスペクトルを、オーバーラインy(λ)はCIE1931等色関数を、それぞれ表す。
【0111】
【0112】
着色層を備えた実施例および比較例については、さらに下記手順で色再現性を評価した。
<色再現性>
得られた光学フィルムの透過率を、自動分光光度計(U-4100)を用いて測定し、
図5に示すスペクトルの、白色EL光源とカラーフィルタを通して出力される
図6の赤色表示、緑色表示、青色表示スペクトルを測定した。
図5および
図6のグラフの縦軸は、発光強度[a.u.](任意単位:arbitrary unit)を表す。測定した透過率と
図6の赤色表示、緑色表示、青色表示スペクトルとを用いて算出されるCIE1931色度値からNTSC(全米テレビジョン放送方式標準化委員会)比を算出し、NTSC比を色再現性の指標として評価した。NTSC比が高いほど色再現性に優れる。
【0113】
結果を表5から表9に示す。白表示透過特性および表示装置反射特性については、着色層を備えない比較例1を基準(100%)とした比率を併せて示している。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
実施例2、比較例1、および比較例2の結果より、式(i)で表される構造単位を含むことにより密着性が向上することが示された。
実施例2および比較例3の結果より、光学フィルムが十分な表面硬度を有するためには、十分な光重合が必要であることが示された。
実施例2および3の結果より、物理特性を保持しつつ紫外線吸収層に帯電防止性、防汚性、防眩性を付与できることが示された。
実施例4から13の結果より、低屈折率層、帯電防止・防汚層、防眩層等の第二機能層紫外線吸収層と別に設けても、物理特性を満足できることが示された。
実施例8、比較例4、および比較例5の結果より、式(i)で表される構造単位を含有する紫外線吸収層を持つ光学フィルムが最も着色層の耐光性を向上できることが示された。紫外線吸収層に式(i)で表される構造単位を含まない比較例5は紫外線吸収層が実施例8に比べて早く劣化したことが原因と考えられた。
実施例8および実施例10の結果より、第二機能層として酸素バリア層を設けることで着色層の耐光性がさらに向上することが示された。
実施例8、実施例11、および実施例12の結果より、着色層がラジカル捕捉剤や一重項酸素クエンチャーを含有することで着色層の耐光性が向上することが示された。
実施例2および実施例13の結果より、TAC以外の透明基材でも必要な物理特性・光学特性を満足する光学フィルムを作製できることが示された。
【0120】
第一機能層として着色層を備えた実施例7~9に係る光学フィルムを適用した表示装置においては、着色層を有さない比較例1に係る光学フィルムを適用した表示装置に比べ反射特性が大幅に改善された。
一般に、円偏光板を取り付けた表示装置では透過率が半減すると言われているのに対し、実施例7~9に係る光学フィルムを適用した表示装置では、白表示透過性の評価値に示されるように輝度効率にも優れ、さらに色再現性も向上した。
実施例7~9の結果から、吸収波長帯が広いほど反射特性に優れる傾向が認められた。