(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001564
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】四肢用装具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/10 20060101AFI20231227BHJP
A61F 5/01 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61F5/10
A61F5/01 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100297
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】小沼 賢治
(72)【発明者】
【氏名】助川 浩士
(72)【発明者】
【氏名】大竹 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】高平 尚伸
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB10
4C098BB12
4C098BC08
4C098BC46
4C098BD13
(57)【要約】
【課題】使用者の指に対して開く方向への付勢力を与えつつ、使用者の煩わしさが低減された四肢用装具を提供する。
【解決手段】四肢用装具は、手掌または足底に取り付けられる硬質のベース20と、ベース20から間隔を空けて立ち上がる4つの硬質の支持壁30A、30B、30C、30Dとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手掌または足底に取り付けられる硬質のベースと、
前記ベースから間隔を空けて立ち上がる4つの硬質の支持壁と、
を備える、
四肢用装具。
【請求項2】
前記ベースにおいて、前記支持壁が立ち上がる側の面に配置された弾性体をさらに備える、
請求項1に記載の四肢用装具。
【請求項3】
前記支持壁の上端部が、折れ曲がっており、折れ曲がった部位によって前記支持壁間の隙間の上側が覆われている、
請求項1に記載の四肢用装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢や下肢に装着される四肢用装具に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、滑膜の炎症により軟骨や骨が破壊され関節が変形する疾患である。変形の一つとして、拇指を除く4本の指の向きが尺側(小指側)に傾く尺側偏位がある。尺側偏位が重度となると人工関節置換術等の外科的治療が必要となるため、尺側偏位の進行を抑制できる装具が望まれている。
特許文献1の上肢保持装具は、手に装着するものではあるが、その主要な目的とは、前腕部と手掌部とがなす角度を所望の値で保持することであり、尺側偏位を抑制する機能はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この他に、人工指関節置換術後のリハビリテーションに用いられるアウトリガ付き伸展ダイナミック装具があるが、非常に大掛かりであり、装着した状態では日常生活における動作の大きな妨げとなる。
【0005】
上記事情を踏まえ、本発明は、装着することで尺側偏位を抑制でき、装着した状態でも日常生活への支障が少ない四肢用装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、手掌または足底に取り付けられる硬質のベースと、ベースから間隔を空けて立ち上がる4つの硬質の支持壁とを備える四肢用装具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の四肢用装具は、装着することで尺側偏位を抑制でき、装着した状態でも日常生活への支障が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る四肢用装具を示す図である。
【
図2】同四肢用装具を異なる方向から見た図である。
【
図3】同四肢用装具を装着した状態を示す図である。
【
図4】(a)および(b)は、本発明の変形例に係る四肢用装具の本体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、本発明の四肢用装具1を示す図である。四肢用装具1は、ベース20および支持壁30を有する本体10と、本体10に配置された弾性シート(弾性体)40と、本体10に取り付けられた支持バンド50とを備えている。
【0010】
ベース20は硬質な材料で一方向に延びる面状に形成されている。ベース20は、手掌に取り付けられる前側の第一領域21と、前腕に取り付けられる後側の第二領域22とが接続された構成を有する。第一領域21は平坦であってもよいし、一般的なヒトの手掌の面に近い曲面状であってもよい。
【0011】
第二領域22は、ハーフパイプ状の基本形状を有し、前腕に沿わせやすく形成されている。ベース20の材料は、一定の剛性を有するものであれば特に制限はなく、合成樹脂、金属、木材等を使用できる。熱可塑性樹脂とニットとを組み合わせた熱可塑性ニット等も使用できる。
【0012】
支持壁30は、第一領域21の一方の面側に、第一領域が延びる面方向と交差する方向に延びている。本実施形態においては、
図2に示すように、第一領域21の上面側に、第一領域21に対して概ね垂直かつ上方に延びる4つの支持壁30Aないし30Dが設けられている。4つの支持壁30Aないし30Dは、第一領域21の面方向においても概ね同一の方向に延びており、概ね平行な位置関係にある。各支持壁は、成人の平均的な指の幅寸法と同程度の隙間を空けて配置されている。各支持壁の上端部は、同一方向に折れ曲がっている。これにより、各支持壁間に存在する隙間の上側は、折れ曲がった部位によって覆われている。
【0013】
弾性シート40は、第一領域21の上面側に取り付けられている。
図2に示すように、弾性シート40は、各支持壁の基部よりも高い位置にあり、その一部は第一領域21の前端よりも前方に位置している。弾性シート40は、例えば天然ゴム、合成ゴム、エラストマー等で形成でき、ネオプレンとも称されるクロロプレンゴム等を好適に用いることができる。
【0014】
支持バンド(支持体)50は、帯状であり、本体10を装着した手掌および前腕に巻き付けることにより、本体10を装着者に支持する。本実施形態では支持バンド50として面ファスナーが用いられているが、巻き付け状態を維持する構成はこれには限られず、例えばバックルを用いたベルト様の構造等であってもよい。
【0015】
上記の様に構成された四肢用装具1の使用時の動作について説明する。
使用者は、第一領域21および第二領域22に、それぞれ手掌および前腕を沿わせつつ、支持壁間の隙間に指を進入させる。このとき、中指を支持壁30Aと30Bとの間に、薬指を支持壁30Bと30Cとの間に、小指を支持壁30Cと30Dとの間に、それぞれ進入させ、人差し指は支持壁30Aのうち、支持壁30Bと対向していない面に沿わせる。
この状態で支持バンド50を手掌および前腕に巻き付けて留めると、四肢用装具1の装着が完了する。
【0016】
四肢用装具1の装着状態においては、人差し指の尺側に支持壁30Aが存在する。同様に、中指の尺側に支持壁30Bが、薬指の尺側に支持壁30Cが、小指の尺側に支持壁30Dが、それぞれ存在する。このように、拇指を除くすべての指の尺側に支持壁が配置されるため、各指が尺側に変位しようとすると支持壁に当たって干渉し、変位できなくなる。その結果、尺側偏位が好適に抑制される。
【0017】
本発明の四肢用装具1は、上述したように、4本の指の尺側偏位を好適に抑制できる。また、ベースから立ち上がる支持壁によって尺側偏位を抑制する構成であるため、指を手背側から橈側に牽引するアウトリガ付き伸展ダイナミック装具のように装具が大掛かりでなく、装着した状態でも問題なく日常生活における諸動作を行うことができる。
【0018】
さらに、支持壁の上端部が折れ曲がり、支持壁間に存在する隙間の上側を覆っているため、装着中に意図せず指が支持壁間の空間から逸脱することが好適に防止され、尺側偏位が抑制された状態を好適に保持できる。
【0019】
四肢用装具1においては、弾性シート40の一部がベース20の第一領域21よりも前方に突出しているため、装着時において第一領域21よりも前方に位置する装着者の指の下側、より具体的には、MP関節およびその周辺を含む指の基部が、硬質の部材でなく弾性シート40により支持される。このため、人工関節置換術後患者等の、指の位置保持力が低下した装着者であっても、指を水平に近い状態に保持しやすく、リハビリテーション等を円滑に行うことができる。
【0020】
第一領域21よりも前方において、弾性シート40は、支持壁と接触する部位においてのみ下方から支持され、支持壁間においてはベースにより下方から支持されていない。このため、支持壁間においては、指の重さや指に加えられた力等により、ベース20に制約されずに下方に変形できる。これにより、第一領域21よりも前方で弾性シートと接触する部位は、例えるならハンモックに載せられたような状態で支持される。その結果、装着した指の他動伸展が補助されるとともに自動屈曲運動の妨げも低減され、人工指関節置換術後のリハビリテーションに大きく寄与できる。
【0021】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。以下にそのような変更の一部を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0022】
・本発明のベースにおいては、第二領域は必須ではない。したがって、ベースが第一領域のみを有してもよいし、手掌の前側の一部を覆う程度に小さく構成されてもよい。このような構成とすると、装着操作がより簡便となるため、人工関節置換術前のリウマチ患者等を対象とした保存療法や、それよりも軽症の患者を対象とした尺側偏位予防等の用途に好適である。
【0023】
・支持壁において、支持壁間に存在する隙間の上側が折れ曲がった上端部により覆われていることは必須ではなく、隙間の上側が解放されていてもよい。
さらに、隙間の上側が覆われる場合も、その態様は上述したものには限られず、様々な態様とできる。例えば、
図4の(a)に示す変形例の支持壁130のように、支持壁間に存在する隙間の上側が完全に閉じた構造とされてもよい。この場合、支持壁間の隙間はトンネル状となるため、装着者は、指をトンネルに通すような動作で指を支持壁間に配置することができ、装着後の意図しない指の逸脱はほぼ完全に防止できる。
あるいは、
図4の(b)に示す変形例の支持壁230のように、一つの支持壁30Dがすべての隙間の上側を覆うように長く延びる構造とされてもよい。この場合、隙間の上側を覆う部分を支持壁30Dとは別体としてヒンジ等で支持壁30Dと接続し、かつ隙間の上側を覆う部分を他の支持壁と係止可能に構成して、装着中は閉じた状態が保持されるように構成してもよい。
その他、上記実施形態では支持壁の上端部が橈側に折れ曲がる例を示したが、上端部が尺側に折れ曲がって隙間の上側を覆ってもよいし、支持壁によって折れ曲がる方向が異なっていてもよい。
【0024】
・本発明に係る四肢用装具の適用範囲は、上述した関節リウマチの人工MP関節置換術後や、保存療法や予防的使用には限られない。例えば、MP関節の軟部組織縫縮後の装具治療、総伸筋腱断裂後の装具治療、橈骨神経麻痺による下垂手に対する装具治療等においても、尺側偏位を好適に抑制し、治療効果を高めることができる。
【0025】
・上記実施形態では、手に装着される構成例を示したが、本発明に係る四肢用装具は、ベースや支持壁等の形状を適切に変更することにより、下肢に適用することも可能である。すなわち、足に装着することで、足指の尺側偏位を治療または予防することができ、外反母趾等の各種疾患への効果が期待できる。
【0026】
上述した関節リウマチ以外の適応疾病等においては、上述した弾性シートによるハンモック様の支持が必ずしも必要ない場合がある。そのような場合、四肢用装具は弾性シートを備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 四肢用装具
20 ベース
30、30A、30B、30C、30D、130 支持壁
40 弾性シート(弾性体)